JP3684547B2 - 永久磁石モータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は永久磁石モータ、特に磁束量を向上し、コギングトルクを低減できる永久磁石リングロータを用いた永久磁石モータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド(HB)形ステータの内部に永久磁石(PM)リングロータを装着した3相ステッピングモータは,特開平6−14514号あるいは特開平7−131968号公報などによって既知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、従来このようなモータについて磁束量向上とコギングトルクの低減のための効果的手段は得られていない。
【0004】
本発明の目的は上記要望を達成できる永久磁石モータを得るにある。
【0005】
本発明者等は上記目的を達成するため現在生産されているHB形ステータの内部にPMリングロータを装着したタイプのモータについて2次元磁場解析を行なった結果、予想外の磁束流が観察され、最適磁極形状について検討したところ、まだ、かなり改良の余地があることも判明した。
【0006】
図1は、計算に用いたオリジナル設計の鉄心構造を示す。この永久磁石式ステッピングモータは、円筒状のステータヨークと、複数個の小歯3をその先端に有し、上記ステータヨークの内周面から半径方向内方に突出する6個の巻線磁極2を持つステータ鉄心1と、この各巻線磁極に巻回した励磁コイル(図示されない)と、上記小歯の内周面にエアギャップを介してその外周面を対向配置せしめた円筒状の永久磁石5と、この永久磁石5の内周面に密着せしめた磁性材料のバックヨーク6を持つロータ4とより成る。そして、上記永久磁石5には円周方向に交互に等ピッチでp個のN極とp個のS極が着磁されている。
【0007】
また、小歯3の溝の深さは0.4mm、ステータ鉄心1とロータ4間空隙長は0.06mmである。
【0008】
永久磁石5は32極のラジアル異方性で、材質はネオジボンド材である。なお、角形コアや局部的なカットなどの形状は計算結果にあまり影響しないと思われるので、計算効率向上のために省略した。
【0009】
FEM計算用の分割は、周期性を利用して上半分を対象とし、空隙部分はコギングトルクの精度を確保するために3層を0.25°間隔で分割し、0.75°おきに一周期22.5°まで回転して、コイル鎖交磁束及びコギングトルクを計算した。
【0010】
図2A及び図2Bに解析結果の磁束流線図を示す。これを見て次のことがわかる。
【0011】
(1)小歯3間の溝部分にもかなり大きい磁束が流れている。
【0012】
(2)隣接磁極間で閉じる磁束が存在する。
【0013】
(3)巻線極鎖交磁束の約75%が中央小歯、残りの約25%が両側小歯より入っている。
【0014】
(4)中央小歯を通る磁束が溝部を通りながら蛇行して、両側小歯を再度通過する。
【0015】
一般に溝部には殆んど磁束が通らず、各小歯には略均等に有効磁束が流れるものとして磁気回路を構成していると思われていたが、実際のモータは上記のように予期せぬ磁束の流れが発生していることがわかった。なお、この状態の鎖交磁束計算値3.36E−5(Wb)は、誘起電圧実測値から計算した鎖交磁束値3.18E−5(Wb)と比較的良く一致しているので、本計算の妥当性が検証されている。
【0016】
そこで、表1の改造案について検討した。第1案は、まず小歯間隔は現行の88.9%ショートピッチから磁極周期と同じフルピッチに変更し、小歯幅と溝深さは溝部での磁束漏れを極小化すること、バックヨークおよび肩部厚さは飽和の影響をなくすことをねらったものである。
【0017】
【表1】
Figure 0003684547
【0018】
この結果、鎖交磁束は40%も増加したが、一方でコギングトルクが8倍近くに増加するので、この案は好ましくないことがわかった。このときのコギングトルク波形計算値を図3に示す。ここで〇は現流品、▲1▼は第1案、▲2▼は第2案、▲3▼は第3案である。
【0019】
これより、他の3相ハイブリッドステッピングモータと同様に、コギングトルクは6倍調波の振動を持つことがわかる。これは一般にm相モータの場合、2m倍調波になる。従って、この場合に6倍調波を除去する案として第6調波平面で各ベクトルが360°/s=120°でバランスする偏差角(120°/2m/p=1.25°)を選び、第2、第3案では360°/p(1−1/2ms)=21.25°のピッチとした。ここに、s:巻線極あたりの小歯数、m:相数=3、p:極対数=16である。この結果、コギングトルクも現流品並で鎖交磁束を30数%増加できることがわかった。トルクは磁束に比例するので、30%以上の出力アップが期待できる。また、小歯幅は多少広くても良いことがわかった。なお、ここではロータ磁極対ピッチ360°/pから偏差角だけ小さいピッチを選んだが、偏差角だけ大きいピッチ360°/p(1+1/2ms)=23.75°にしても同じ効果が得られる。
【0020】
以上より、小歯ピッチ21.25°の改善第2案と第3案の付近に最適値のあることがうかがえるが、次のような疑問点を検討して最適設計値を決める必要がある。
【0021】
(1)小歯の幅はいくらがよいか。
【0022】
(2)溝深さはいくらがよいか。
【0023】
(3)磁石のバックヨークの厚さはいくらにすべきか。
【0024】
(4)巻線極の小歯をつなぐ肩部の厚さはいくらにすべきか。
【0025】
そこで次に、これらが鎖交磁束に与える影響を磁場解析で究明することにした。ここでは、表1で最も良好な第3案の形状を基準にして上記の諸元を変更して、鎖交磁束を計算した結果を以下に示す。
【0026】
(小歯幅の影響)
【0027】
小歯幅を1.6mmから2.4mmまで変更した場合の鎖交磁束とコギングトルクの計算値を図4に示す。
【0028】
なお、小歯ピッチは、0.944mm、小歯溝深さは1.0mm、巻線極肩部厚さは1.5mm、バックヨーク厚さは1.75mmである。
【0029】
鎖交磁束は、小歯の幅が2.2mmのとき最大になっている。これは、磁極ピッチ22.5°に対して0.431の比率になる。また、コギングトルクはあまり歯幅の影響を受けない。
【0030】
(小歯溝深さの影響)
【0031】
小歯部分の溝の深さを0.4mmから1.6mmまで変化させた場合の鎖交磁束の計算値と現流品(表1)に対する比率を図5に示す。
【0032】
なお、小歯ピッチは0.944mm、小歯幅は2.2mm、巻線極肩部厚さは1.5mm、バックヨーク厚さは1.75mmである。
【0033】
これより、鎖交磁束は溝深さとともに一様に増加することがわかる。溝深さが大きくなると、その効果は飽和気味になるので、1.0mmあたりが適当である。1.0mmの場合でも、現流品に対しては35%程度増加する値になっている。
【0034】
(巻線極肩部厚さとバックコア厚さの影響)
【0035】
巻線極の肩部厚さおよびロータ磁石のバックコア厚さの鎖交磁束に対する影響を、夫々図6及び図7に示す。図の範囲ではこれらの影響はほとんど見られないことがわかる。バックヨーク厚さは、0.75mmでは磁束がわずかに低下するので、0.9mm以上が必要である。
【0036】
以上の結果、最適値として表1の推奨値欄に示した諸元が適当であるということができる。このときの誘起電圧波形を現流品と比較して図8に示す。振幅が約37%大きくなり、波形も正弦波に近くなっていることがわかる。
【0037】
また、磁束流線の様子を図9に示す。図2Bの現流品と比較して、各小歯の磁束分配が改善され、溝部を通って蛇行する磁束が減少している。なお、巻線極肩部厚さは磁気回路的には0.9mmでよいが、機械的に薄すぎるようならば、現流品と同程度まで多少厚くすることも考えられる。
【0038】
本発明は上記知見をもとになされたものである。
【0039】
【課題を解決するための手段】
本発明の永久磁石モータは、円周方向に交互に等ピッチでN極とS極が着磁された永久磁石ロータと、それに対向して、s個の小歯をその先端に有し、回転子周面に向かって半径方向に突出した巻線磁極を有するステータとより成る m 相永久磁石モータにおいて、ステータ小歯のピッチがロータ磁極対ピッチの1±1/(2ms)倍であることを特徴とする。また、本発明の永久磁石モータは、円周方向に交互に等ピッチでN極とS極が着磁された永久磁石ロータと,それに対向して、s個の小歯をその先端に有し、回転子周面に向かって半径方向に突出した巻線磁極を有するステータとより成る3相永久磁石モータにおいて、ステータ小歯のピッチがロータ磁極対ピッチの1±1/6s倍であることを特徴とする。
【0040】
上記ステータ小歯の幅が磁極ピッチの37〜47%であることを特徴とする。
【0041】
また、上記小歯の溝深さがステータとロータ間の空隙長の15倍以上であることを特徴する。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下図面によって本発明の実施例を説明する。
【0043】
本発明の実施例においては以下の通りとする。
【0044】
(1)歯幅は2.2とする。(現流:2.0)
【0045】
(2)歯溝深さは1.0以上とする(現流:0.4)
【0046】
(3)歯ピッチは94.4%とする。(現流:88.9%)
【0047】
(4)巻線極肩部厚さは0.9程度とする。(現流:1.1)
【0048】
(5)内部バックコア厚さは1.0とする。(現流:1.0)
【0049】
また好ましくは、ステータ小歯4のピッチをロータ磁極ピッチの1±1/(2ms)(ここでmは相数、sはステータ極の小歯数)倍とする。
【0050】
また、ステータ小歯の幅を磁極ピッチの37〜47%とする。
【0051】
更に、小歯の溝深さをステータとロータ間の空隙長の15倍以上とする。
【0052】
【発明の効果】
上記のように本発明によれば磁束量向上とコギングトルク低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁場解析用鉄心の構造説明図である。
【図2A】磁束流線図である。
【図2B】図2Aの一部の拡大図である。
【図3】コギングトルク波形図である。
【図4】小歯幅と鎖交磁束及びコギングトルクの関係を示す線図である。
【図5】小歯の溝深さと鎖交磁束の関係を示す線図である。
【図6】巻線極の肩厚と鎖交磁束の関係を示す線図である。
【図7】磁石バックヨークと鎖交磁束の関係を示す線図である。
【図8】誘起電圧波形の比較図である。
【図9】磁束流線図である。
【符号の説明】
1 ステータ鉄心
2 巻線極
3 小歯
4 ロータ
5 永久磁石
6 バックヨーク

Claims (4)

  1. 円周方向に交互に等ピッチでN極とS極が着磁された永久磁石ロータと、それに対向して、s個の小歯をその先端に有し、回転子周面に向かって半径方向に突出した巻線磁極を有するステータとより成るm相永久磁石モータにおいて、ステータ小歯のピッチがロータ磁極対ピッチの1±1/(2ms)倍であることを特徴とする永久磁石モータ。
  2. 円周方向に交互に等ピッチでN極とS極が着磁された永久磁石ロータと,それに対向して、s個の小歯をその先端に有し、回転子周面に向かって半径方向に突出した巻線磁極を有するステータとより成る相永久磁石モータにおいて、ステータ小歯のピッチがロータ磁極対ピッチの1±1/6s倍であることを特徴とする永久磁石モータ。
  3. ステータ小歯の幅が磁極ピッチの37〜47%であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の永久磁石モータ。
  4. 小歯の溝深さがステータとロータ間の空隙長の15倍以上であることを特徴する請求項1、請求項2または請求項3記載の永久磁石モータ。
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