JP2009011092A - ブラシレスモータ - Google Patents

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文徳 石橋
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Abstract

【課題】高調波は複数のn次(nは整数)の高調波成分が重なり合って形成されており、このうちの特定の高調波が振動、騒音や電圧電流の波形歪などに大きく影響を与えていたが、特定の高調波のみを低減することはできなかった。
【解決手段】そこで、本発明では、起磁力の幅、すなわちコイル幅や歯幅を減衰したい高調波次数に応じた値に設定することにより、特定の周波数の磁束の発生を減衰させ、振動、騒音や電圧・電流の波形歪などの小さい集中巻の回転電気機械を提供することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、回転電気機械の中で、集中巻を用いた場合、その回転電気機械が発生する振動や騒音の低減や電圧に含有される高調波成分の削減に関するものである。本発明は、特に電気機器(モータ、発電機など)に関する。
非特許文献1では、回転電気機械の一般的な構造を例示している。回転電気機械は、一般的構造として、歯部に巻線が巻かれて集中巻ステータ(固定子)を形成して、中央部にシャフトとシャフトを取り巻くように設けられた永久磁石にてロータ(回転子)を形成している。固定子と回転子との間は所定幅のギャップが設けられている。しかし、非特許文献1では、起磁力の幅、すなわち固定子の歯幅については特に言及されていない。
次に、高調波起磁力による不具合について説明する。固定子電流などにより発生する高調波起磁力や高調波磁束が回転電気のギャップで高調波電磁力となる。この高調波電磁力が固定子鉄心、巻線や回転子に作用して、振動や騒音を発生させる。このような振動や騒音は電磁力によるもので電磁振動や騒音と呼ばれ回転電気機械自身やその付随機器に損傷を発生させたり、周囲に対して害を及ぼしたりすることとなる。また、回転電気機械自身が発生する電圧や電流の波形を歪ませることになる。
例えば、特許文献1では、歯部を主巻線を巻く歯と補助巻線を巻く歯とを区別し、主巻線を巻く歯の幅を、補助巻線を巻く歯の幅よりも広くし、巻線を巻くために必要な有効溝面積を補助巻線の有効溝面積よりも大きくしていることから、主巻線の巻数を多くすることができ、過負荷耐量を大きくする技術が開示されている。当該技術では、巻線磁束の空間高調波を低減し、モータのトルク増大が可能となり、高効率化を図ることができる。
新・ブラシレスモータ、総合電子出版、2006.1、見城尚志著、p117 特開2001−186733号公報
しかしながら、高調波は複数のn次(nは整数)の高調波成分が重なり合って形成されており、このうちの特定の高調波が振動、騒音や電圧電流の波形歪などに大きく影響を与えていた。特許文献1に記載の技術では、空間高調波を低減することが可能であるが、より効率的に振動、騒音、電圧電流の波形歪みなどを低減するためには、特定の高調波成分を選択的に取り除くことが有効である。
そこで、本発明では、起磁力の幅、すなわちコイル幅や歯幅を特定の高調波次数に応じた値に設定することにより、特定の周波数の磁束の発生を減衰させ、振動、騒音や電圧・電流の波形歪などの小さい集中巻の回転電気機械を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、
1)第一発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
2)第二発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記歯部は固定子と回転子との間のギャップに面するギャップ面を有し、前記ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
3)第三発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
4)第四発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
5)第五発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記歯部の歯部幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
6)第六発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の歯部の一側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
7)第七発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記歯部は固定子と回転子との間のギャップに面するギャップ面を有し、前記ギャップ面の円周方向の一端部から歯部中心部までの長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、前記ギャップ面のもう一方の端部から歯部中心部までの長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
8)第八発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
9)第九発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
10)第十発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記歯部の一側面から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械を提供する。
11)第十一発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分が複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする第一発明に記載の回転電気機械を提供する。
12)第十二発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記歯部は固定子と回転子との間のギャップに面するギャップ面を有し、前記ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分が、複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする第二発明に記載の回転電気機械を提供する。
13)第十三発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分が、複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする第三発明に記載の回転電気機械を提供する。
14)第十四発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分が、複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする第四発明に記載の回転電気機械を提供する。
15)第十五発明では、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記歯部の歯部幅の略半分が、複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする第五発明に記載の回転電気機械を提供する。
16)第十六発明では、前記歯部は台形又は矩形である第一発明から第十五発明のいずれか一に記載の回転電気機械を提供する。
17)第十七発明では、前記集中巻として、極ごと又は相ごとに第一発明から第十五発明のいずれか一に記載の巻き方を適用した回転電気機械を提供する。
18)第十八発明では、回転電気機械はリニアモータである第一発明から第十七発明のいずれか一の回転電気機械を提供する。
19)第十九発明では、回転電気機械はアキシャルエアギャップモータである第一発明から第十七発明のいずれか一の回転電気機械を提供する。
20)第二十発明では、回転電気機械はコアレスモータである第一、第三、第四、第六、第八、第九、第十一、第十三、第十四発明のいずれか一の回転電気機械を提供する。
21)第二十一発明では、第一発明から第二十発明のいずれか一の回転電気機械を用いた発電機を提供する。
以上のような構成をとる本発明の回転電気機械では、巻線の円周方向中心間長や歯部の幅を減衰させたい高調波磁束の次数に応じた値に設定することで、その次数の高調波磁束を消滅あるいは低減することができるため、振動、騒音や電圧・電流の波形歪などの小さい集中巻の回転電気機械を提供することができる。
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施形態1は主に請求項1、16、18から21について説明する。実施形態2、17は主に請求項2から5について説明する。実施形態3は主に請求項6から10について説明する。実施形態4は請求項11から15について説明する。
≪実施形態1≫
(実施形態1の概念)本実施形態の回転電気機械は、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、巻線部分の幅が減衰させたい高調波の次数に応じて設定されていることを特徴とする。
(実施形態1の構成)図1の回転電気機械は、固定子に歯部(0102)を有し、前記歯部に集中巻の巻線(0101)が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分(0107)が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)となっている。内側の回転子(0104)は、シャフト(0105)と永久磁石(0103)などからなり、回転子と固定子の間には所定の間隔を空けて形成されたギャップ(0106)が形成される。
「回転電気機械」は、いかなる原理を利用したモータであっても良い。例えば、回転電気機械はリニアモータであっても良いし、アキシャルエアギャップモータであっても良いし、コアレスモータであっても良い。また、図1は回転子に永久磁石を用いたDCブラシレスモータであるが、永久磁石の代わりに誘導ロータを利用することで、本実施形態の回転電気機械を誘導モータ(三相、単相)として利用することも可能である。これらの回転電気機械は、発電機等に利用される。
「歯部」(0102)とは、巻線を巻いてコイルを形成するための突起部分をいう。歯部は固定子に設けられていても良いし、回転子に設けられていても良い。歯部は、柱部分が円柱又は角柱状であることを基本とするが、図2に示すように、歯部の柱(0201)の断面が台形状となるようにしても良いし、矩形状となるようにしても良い。
「ギャップ」(0106)とは、固定子と回転子の間の所定の空間をいう。
「巻線部分の円周方向中心間長」とは、一の歯部(0102)に巻かれた巻線(0101)の中心(0101a、0101b)間における回転子の回転円周方向の長さあるいは距離をいう。なお、巻線部分の円周方向中心間長は、回転子の回転円周方向における円弧上の長さ(0108a)であっても良いし、巻線部分の中心間を直線的に結んだ場合の直線距離(0108b)であっても良い。巻線部分の円周方向中心間長の略半分(0107)とは、上記長さの約半分(1/2)の長さをいい、プラスマイナス10%程度の誤差を含む。
「極ピッチ」(0109)とは、隣接する同一の相間におけるN極とS極の中心間を結んだ距離をいう。例えば、図1に示すように極数が6であり、各極に3相(U相、V相、W相)の巻線が配置されている場合には、U相の巻線が巻かれた極(0102a)の中心から隣接するU相の巻線が巻かれた極(0102b)の中心までにおけるギャップ(0106)の中心を結んだ距離の1/2となる(図1中点線で示す)。
「指定高調波次数」とは、減衰又は除去を希望する高調波として指定された高調波の次数をいう。例えば、3次の高調波を減衰させるためには、指定高調波次数を3とする。指定高調波次数は、構造の機械的固有振動数やその固有振動数における変形状態に関する情報がシミュレーションなどにより得られるため、これらの情報から低減又は消滅させる高調波磁束の次数を定めることができる。また、実際に製造されたモータの振動や騒音が大きい場合、その原因となる高調波磁束を突き止めることで、指定高調波次数を定めることもできる。さらに、電磁力の空間形状が小さい場合には、モータなどの鉄心は変形し易いため、小さい数の電磁力空間形状が発生しないように、特定の磁束の発生を低減又は消滅させるために指定高調波次数を定めることとしても良い。
「巻線部分の円周方向中心間長の略半分(a)」は「極ピッチ」と「指定高調波次数」により定められ、以下の関係式を満たす。
(式1)
a=(極ピッチ/指定高調波次数)×j (jは正の整数)
上記関係式を満たすように巻線部分の円周方向中心間長の略半分を設定することで、特定の次数の高調波を選択的に消滅あるいは低減させることができる。以下、この点について説明する。
≪説明≫
図3は集中巻の1相の起磁力波形を模式化した図を示す。図3は、磁束の方向を示しており、x軸の上側がN極、下側がS極である。極ピッチは、N極(起磁力上側)中間点とS極(起磁力下側)中間点の間の長さとなる。
この起磁力波形をフーリエ級数に展開すると(数1)のようになる。
Figure 2009011092
ここで、f:起磁力(AT)、τ:極ピッチ、n:高調波次数、x:固定子座標、a:巻線の起磁力幅の1/2、b:巻線外の起磁力の振幅、である(nは正の整数)。
ここで、b=Ni/(τ/a)とおいて、電流iを(数2)とする。
Figure 2009011092
ここで、N:コイルの巻回数、I:電流の最大値、ω:角周波数
これらと(数2)式を(数1)式に代入すると、次式(数3)を得る。
Figure 2009011092
次に、m相電源による巻線の場合について検討する(mは整数)。
m相電源の場合、隣接相との巻線の間隔は電気角で2τ/mずれており、そこに位相が2π/mだけずれた電流がその巻線に流れることになる。したがって、集中巻のm相のm相電流による合成起磁力は次式(数4)となる。
Figure 2009011092
上記数4から高調波次数が任意のn次について次式(数5)を得る。
Figure 2009011092
(数5)を±の符号をまとめて次式(数6)のように表すことができる。
Figure 2009011092
ここで、m相全て(c=0〜(m−1))のn次の起磁力の束は次式(数7)となる。
Figure 2009011092
ここで、mとnは整数なので、下記(数8)の場合以外はfmn=0となる。
Figure 2009011092
すなわち、(数8)から以下の(数9)の関係を導くことができる。
Figure 2009011092
ここで、k:整数。
したがって、以下の(数10)のようになる。
Figure 2009011092
例えば、相が3相の場合には、m=3として、(数10)に代入すると(数11)のようになる。
Figure 2009011092
したがって、(数11)で算出される次数のものは、高調波磁束として発生することになる。(数11)より、nが正の整数であることを考慮すると、3の倍数以外の次数のもの(1,2,4、5,7、8,10,11・・・)が発生する。
次に、(数7)の項のうち(数12)の項について検討する。
Figure 2009011092
ここで、n:高調波次数、τ:極ピッチ、a:1相の巻線の1極の起磁力幅の1/2である(nは正の整数)。
ここで、以下の(数13)を満たす場合には、(数12)=0となる。
Figure 2009011092
ここで、jは正の整数。
このとき、次式(数14)を得る。
Figure 2009011092
ここで、n:高調波次数、τ:極ピッチ、a:1相の巻線の1極の起磁力幅の1/2である(nは正の整数)。
1相、1極の起磁力の幅は次式となる。
Figure 2009011092
nは高調波起磁力の次数であるので、起磁力の幅の1/2を高調波次数nに対して(数12)を満足する場合、その高調波は発生しないことが分かる。
以下、具体的に数値を代入して説明する。
(1)2次(n=2)を発生させない場合
a=(τ/2)×j (jは正の整数)
したがって、a(起磁力幅の1/2)を極ピッチの1/2にすればよい。なお、起磁力幅が極ピッチ以上となることはない。
(2)3次(n=3)を発生させない場合
a=(τ/2)×j (jは正の整数)
したがって、aを極ピッチの1/3または2/3にすればよい。
(3)4次(n=4)を発生させない場合
a=(τ/2)×j (jは正の整数)
したがって、aを極ピッチの1/4、2/4、3/4にすればよい。
(4)n次を発生させない場合
a=(τ/2)×j (jは正の整数)
したがって、aを極ピッチのj/nにすればよい(j=1〜n)。
(実施形態1の具体例)上記算出結果を適用して巻線部分の設定をした場合の具体例が図1の回転電気機械である。例えば、上記(式1)において、j=1とし、指定高調波次数を5次とすると、巻線部分の円周方向中心間長の略半分(a)=(極ピッチ/5)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、巻線部分の円周方向の中心間距離の半分(a)はτ/5と定まる。
この場合(数14)により、5次の高調波の磁束でj=1の場合を(数12)に代入すると、
sin(n×(π/τ)×a)=sin(5×(π/τ)×(τ/5))=sinπ=0
となり、(数7)は0となり、この次数の高調波は発生しないことになる。
(実施形態1の効果)実施形態1の回転電気機械では、巻線の円周方向中心間長を特定の高調波磁束の次数に応じた値とすることで、その次数の高調波磁束を消滅あるいは低減することができるため、振動、騒音や電圧・電流の波形歪などの小さい集中巻の回転電気機械を提供することができる。
≪実施形態2≫(実施形態2の概念)本実施形態の回転電気機械は、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、巻線部分の幅や歯部の幅等が特定の高調波を減ずるように設定されていることを特徴とする。
(実施形態2の構成)図4の回転電気機械は、固定子に歯部(0402)を有し、前記歯部に集中巻の巻線(0401)が巻かれた回転電気機械であって、前記歯部は固定子と回転子との間のギャップ(0406)に面するギャップ面(0407)を有し、前記ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分(0408)が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)となっている。ギャップよりも内側には、シャフト(0405)と永久磁石(0403)からなる回転子(0404)が設けられている。図4は回転子に永久磁石を用いたDCブラシレスモータであるが、永久磁石の代わりに誘導ロータを利用することで誘導モータ(三相、単相)として利用することも可能である。
「ギャップ面」(0407)とは、歯部がギャップに面している部分をいう。「ギャップ面の円周方向の歯幅」とは、ギャップ面における回転子の回転円周方向の歯部の歯幅をいう。ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分とは、上記歯幅の約半分(1/2)の長さをいい、プラスマイナス10%程度の誤差を含む。なお、ギャップ面の円周方向の歯幅の距離は、回転子の回転円周方向における円弧上の長さ(0408a)であっても良いし、固定子の中心間を直線的に結んだ場合の直線距離(0408b)であっても良い。
「極ピッチ」及び「指定高調波次数」については実施形態1と同様であるため説明を省略する(以下の実施形態においても同様に省略する)。
「ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分(b)」は「極ピッチ」と「指定高調波次数」により定められ、以下の関係式を満たす。
(式2)
b=(極ピッチ/指定高調波次数)×j (jは正の整数)
上記関係式を満たすように巻線部分の円周方向中心間長の略半分を設定することで、特定の次数の高調波を選択的に消滅あるいは低減させることができる。
図4は、実施形態1に記載の算出結果を適用してギャップ面の円周方向の歯幅を設定をした場合の具体例を示したものである。例えば、(式2)において、j=1とし、指定高調波次数を5次とすると、ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分(b)=(極ピッチ/5)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分(b)はτ/5と定まる。
この場合a=bとして(数14)により、5次の高調波の磁束の場合を(数12)に代入すると、
sin(n×(π/τ)×b)=sin(5×(π/τ)×(τ/5))=sinπ=0
となり、(数7)は0となり、この次数の高調波は発生しないことになる。
図5の回転電気機械は、固定子に歯部(0502)を有し、前記歯部に集中巻の巻線(0501)が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)となっている。内側の回転子(0504)は、シャフト(0505)と永久磁石(0503)などからなり、回転子と固定子の間には所定の間隔を空けて形成されたギャップ(0506)が形成される。図5は回転子に永久磁石を用いたDCブラシレスモータであるが、永久磁石の代わりに誘導ロータを利用することで誘導モータ(三相、単相)として利用することも可能である。
「一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅」とは、一の歯部(0502)に巻かれた巻線(0501)のコイル外形幅(0508)における回転子の回転円周方向の長さあるいは距離をいう。なお、コイル外形幅の円周方向の長さとは、コイル外形幅の円周方向における円弧上の長さ(0508a)であっても良いし、コイル外形幅を直線的に結んだ場合の直線距離(0508b)であっても良い。一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分(0507)とは、前記コイル外形幅の約半分(1/2)の長さをいい、プラスマイナス10%程度の誤差を含む。
「一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分(c)」は「極ピッチ」と「指定高調波次数」により定められ、以下の関係式を満たす。
(式3)
c=(極ピッチ/指定高調波次数)×j (jは正の整数)
上記関係式を満たすように一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分を設定することで、特定の次数の高調波を選択的に消滅あるいは低減させることができる。
図5は、実施形態1に記載の算出結果を適用してコイル外形幅を設定した場合の具体例を示したものである。例えば、(式3)において、j=1とし、指定高調波次数を5次とすると、一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分(c)=(極ピッチ/5)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分(c)はτ/5と定まる。
この場合a=cとして(数14)により、5次の高調波の磁束の場合を(数12)に代入すると、
sin(n×(π/τ)×c)=sin(5×(π/τ)×(τ/5))=sinπ=0
となり、(数7)は0となり、この次数の高調波は発生しないことになる。
図6の回転電気機械は、固定子に歯部(0602)を有し、前記歯部に集中巻の巻線(0601)が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)となっている。内側の回転子(0604)は、シャフト(0605)と永久磁石(0603)などからなり、回転子と固定子の間には所定の間隔を空けて形成されたギャップ(0606)が形成される。図6は回転子に永久磁石を用いたDCブラシレスモータであるが、永久磁石の代わりに誘導ロータを利用することで誘導モータ(三相、単相)として利用することも可能である。
「一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅」(0608)とは、一の歯部(0602)に巻かれた巻線(0601)のコイル内側同士の幅における回転子の回転円周方向の長さあるいは距離をいう。なお、コイル内側同士の幅とは、回転子の回転円周方向における円弧上の長さ(0608a)であっても良いし、コイル内側同士の幅を直線的に結んだ場合の直線距離(0608b)であっても良い。一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分(0607)とは、前記コイル内側同士の幅の約半分(1/2)の長さをいい、プラスマイナス10%程度の誤差を含む。また、一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅は、歯部幅として捉えることも可能であり、「一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分」を「歯部幅の略半分」に置き換えることも可能である。
「一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分(d)」は「極ピッチ」と「指定高調波次数」により定められ、以下の関係式を満たす。
(式4)
d=(極ピッチ/指定高調波次数)×j (jは正の整数)
上記関係式を満たすように一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分を設定することで、特定の次数の高調波を選択的に消滅あるいは低減させることができる。
図6は、実施形態1に記載の算出結果を適用してコイル内側同士の幅を設定した場合の具体例を示したものである。例えば、(式4)において、j=1とし、指定高調波次数を5次とすると、一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分(d)=(極ピッチ/5)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分(d)はτ/5と定まる。
この場合a=dとして(数14)により、5次の高調波の磁束の場合を(数12)に代入すると、
sin(n×(π/τ)×d)=sin(5×(π/τ)×(τ/5))=sinπ=0
となり、(数7)は0となり、この次数の高調波は発生しないことになる。
(実施形態2の効果)実施形態2の回転電気機械では、巻線部分のコイル外形幅又は内側同士の幅、歯部の歯部幅又はギャップ面の歯幅等を特定の高調波磁束の次数に応じた値とすることで、その次数の高調波磁束を消滅あるいは低減することができるため、振動、騒音や電圧・電流の波形歪などの小さい集中巻の回転電気機械を提供することができる。
≪実施形態3≫(実施形態3の概念)本実施形態の回転電気機械は、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、歯部中心部から巻線部分の幅等が特定の高調波次数に応じて歯部の左右で異なる値に設定されていることを特徴とする。
(実施形態3の構成)図7の回転電気機械は、固定子に歯部(0702)を有し、前記歯部に集中巻の巻線(0701)が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の歯部の一側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(0707a)が(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(0707b)が(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)となっている。すなわち、図7では歯部中心部から巻線部分の中心までの距離が歯部の左右で異なっている。なお、ギャップよりも内側には、シャフト(0705)と永久磁石(0703)からなる回転子(0704)が設けられている。歯部中心部から巻線部分の中心までの距離は厚さ調整用の絶縁性の補助部材(0708)等を用いることで歯部の左右で異ならせることができるし、これらの補助部材を用いずにコイル径、重ね合わせる範囲等を調節することで歯部の左右で異ならせるようにしても良い。なお、「歯部の一側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(f)」と「歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(g)」は、回転子の回転円周方向における円弧上の長さ(0709a)であっても良いし、直線距離(0709b)であっても良い。また、図7は回転子に永久磁石を用いたDCブラシレスモータであるが、永久磁石の代わりに誘導ロータを利用することで誘導モータ(三相、単相)として利用することも可能である。
「歯部の一側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(f)」と「歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(g)」は「極ピッチ」と「高調波次数」により定められ、以下の関係式を満たす。
(式5)
f=(極ピッチ/n次高調波次数)×j (n、jは正の整数)
(式6)
g=(極ピッチ/m次高調波次数)×i (m、iは正の整数)
上記関係式を満たすように歯部の各側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さを設定することで、特定の次数の高調波を選択的に消滅あるいは低減させることができる。
図7は、実施形態1に記載の算出結果を適用して歯部の各側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さを設定した場合の具体例を示したものである。例えば、(式5)において、j=1とし、n次高調波次数を5次とすると、歯部の一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(f)=(極ピッチ/5)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、歯部の一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(f)はτ/5と定まる。一方、(式6)において、i=1とし、m次高調波次数を7次とすると、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(g)=(極ピッチ/7)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さ(g)はτ/7と定まる。
この場合a=fとして(数14)により、5次の高調波の磁束の場合を(数12)に代入すると、一方の側面においては、
sin(n×(π/τ)×f)=sin(5×(π/τ)×(τ/5))=sinπ=0
となり、一方の側面において(数7)は0となり、5次の高調波は発生しないことになる。
また、7次の高調波の磁束の場合はa=gとして(数12)に代入すると、もう一方の側面においては、
sin(n×(π/τ)×g)=sin(7×(π/τ)×(τ/7))=sinπ=0
となり、もう一方の側面において(数7)は0となり、7次の高調波は発生しないことになる。
しかし、歯部の左右において、消滅あるいは減少させる高調波が異なるため、歯部の左右における一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さを特定の一の次数に応じて設定した場合よりも、各次数の高調波を約50%程度ずつ低減させることができる。
図8の回転電気機械は、固定子に歯部(0802)を有し、前記歯部に集中巻の巻線(0801)が巻かれた回転電気機械であって、前記歯部は固定子と回転子との間のギャップ(0806)に面するギャップ面(0807)を有し、前記ギャップ面の円周方向の一端部から歯部中心部までの長さ(0808a)が(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、前記ギャップ面のもう一方の端部から歯部中心部までの長さ(0808b)が(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)となっている。すなわち、図8では、歯部中心部からギャップ面端部までの距離が歯部の左右で異なっている。なお、ギャップよりも内側には、シャフト(0805)と永久磁石(0803)からなる回転子(0804)が設けられている。なお、「ギャップ面の円周方向の一端部から歯部中心部までの長さ(h)」と「ギャップ面のもう一方の端部から歯部中心部までの長さ(k)」は、回転子の回転円周方向における円弧上の長さ(0808a)であっても良いし、直線距離(0808b)であっても良い。図8は回転子に永久磁石を用いたDCブラシレスモータであるが、永久磁石の代わりに誘導ロータを利用することで誘導モータ(三相、単相)として利用することも可能である。
「ギャップ面の円周方向の一端部から歯部中心部までの長さ(h)」と「ギャップ面のもう一方の端部から歯部中心部までの長さ(k)」は「極ピッチ」と「高調波次数」により定められ、以下の関係式を満たす。
(式7)
h=(極ピッチ/n次高調波次数)×j (n、jは正の整数)
(式8)
k=(極ピッチ/m次高調波次数)×i (m、iは正の整数)
上記関係式を満たすようにギャップ面の円周方向の各端部から歯部中心部までの距離を設定することで、特定の次数の高調波を選択的に消滅あるいは低減させることができる。
図8は、実施形態1に記載の算出結果を適用してギャップ面の円周方向の各端部から歯部中心部までの距離を設定した場合の具体例を示したものである。例えば、(式8)において、j=1とし、n次高調波次数を5次とすると、ギャップ面の円周方向の一端部から歯部中心部までの長さ(h)=(極ピッチ/5)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、ギャップ面の円周方向の一端部から歯部中心部までの長さ(h)はτ/5と定まる。一方、(式9)において、i=1とし、m次高調波次数を7次とすると、ギャップ面のもう一方の端部から歯部中心部までの長さ(k)=(極ピッチ/7)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、ギャップ面のもう一方の端部から歯部中心部までの長さ(k)はτ/7と定まる。
この場合a=hとして(数14)により、5次の高調波の磁束の場合を(数12)に代入すると、一方の側面においては、
sin(n×(π/τ)×h)=sin(5×(π/τ)×(τ/5))=sinπ=0
となり、一方の側面において(数7)は0となり、5次の高調波は発生しないことになる。
また、7次の高調波の磁束の場合はa=kとして(数12)に代入すると、もう一方の側面においては、
sin(n×(π/τ)×k)=sin(7×(π/τ)×(τ/7))=sinπ=0
となり、もう一方の側面において(数7)は0となり、7次の高調波は発生しないことになる。
しかし、歯部の左右において、消滅あるいは減少させる高調波が異なるため、歯部の左右における一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さを特定の一の次数に応じて設定した場合よりも、各次数の高調波を50%程度ずつ低減させることができる。
図9の回転電気機械は、固定子に歯部(0902)を有し、前記歯部に集中巻の巻線(0901)が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(0907a)が(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(0907b)が(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)となっている。すなわち、図9では、歯部中心部から巻線部分の外側部までの距離が歯部の左右で異なっている。なお、ギャップ(0906)よりも内側には、シャフト(0905)と永久磁石(0903)からなる回転子(0904)が設けられている。歯部中心部から巻線部分の中心までの距離はコイル径、重ね合わせる範囲の調節、厚さ調整用の補助部材等を用いることで歯部の左右で異ならせることができる。なお、「一側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(o)」と「もう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(p)」は、回転子の回転円周方向における円弧上の長さ(0908a)であっても良いし、直線距離(0908b)であっても良い。また、図9は回転子に永久磁石を用いたDCブラシレスモータであるが、永久磁石の代わりに誘導ロータを利用することで誘導モータ(三相、単相)として利用することも可能である。
「一側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(o)」と「もう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(p)」は「極ピッチ」と「高調波次数」により定められ、以下の関係式を満たす。
(式9)
o=(極ピッチ/n次高調波次数)×j (n、jは正の整数)
(式10)
p=(極ピッチ/m次高調波次数)×i (m、iは正の整数)
上記関係式を満たすように各側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さを設定することで、特定の次数の高調波を選択的に消滅あるいは低減させることができる。
図9は、実施形態1に記載の算出結果を適用して各側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さを設定した場合の具体例を示したものである。例えば、(式9)において、j=1とし、n次高調波次数を5次とすると、一側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(o)=(極ピッチ/5)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、一側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(o)はτ/5と定まる。一方、(式10)において、i=1とし、m次高調波次数を7次とすると、もう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(p)=(極ピッチ/7)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、もう一方の一側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さ(p)はτ/7と定まる。
この場合a=oとして(数14)により、、5次の高調波の磁束の場合を(数12)に代入すると、一方の側面においては、
sin(n×(π/τ)×o)=sin(5×(π/τ)×(τ/5))=sinπ=0
となり、一方の側面において(数7)は0となり、5次の高調波は発生しないことになる。
また、7次の高調波の磁束の場合はa=pとして(数12)に代入すると、もう一方の側面においては、
sin(n×(π/τ)×p)=sin(7×(π/τ)×(τ/7))=sinπ=0
となり、もう一方の側面において(数7)は0となり、7次の高調波は発生しないことになる。
図10の回転電気機械は、固定子に歯部(1002)を有し、前記歯部に集中巻の巻線(1001)が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(1007a)が(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(1007b)が(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)となっている。すなわち、図10では、歯部の各側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さが歯部の左右で異なっている。なお、ギャップ(1006)よりも内側には、シャフト(1005)と永久磁石(1003)からなる回転子(1004)が設けられている。歯部中心部から巻線部分の中心までの距離は厚さ調整用の補助部材(1008)等を用いることで歯部の左右で異ならせることができるし、これらの補助部材を用いずにコイル径、重ね合わせる範囲等を調節することで歯部の左右で異ならせるようにしても良い。なお、「一側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(q)」と「もう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(r)」は、回転子の回転円周方向における円弧上の長さ(1009a)であっても良いし、直線距離(1009b)であっても良い。また、一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅は、歯部幅として捉えることも可能であり、「一側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ」を「歯部の一側面から歯部中心部までの円周方向長さ」に置き換え、「もう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ」を「歯部のもう一方の側面から歯部中心部までの円周方向長さ」に置き換えることも可能である。この場合には、図10に示す補助部材(1008)は不要である。ここでいう「歯部中心部」とは、本実施形態を適用しない場合の歯部における中心部を指す。すなわち、「歯部の一側面から歯部中心部までの円周方向長さ」とは、図6における歯部中心部を基準とし、該歯部中心部と歯部の一側面までの円周方向の長さを指す。また、「歯部のもう一方の側面から歯部中心部までの円周方向長さ」とは、図6における歯部中心部を基準とし、該歯部中心部ともう一方の歯部の側面までの円周方向の長さを指す。該歯部中心部からそれぞれの側面までの円周方向長さがそれぞれ別の高調波次数に応じて設定されることになる。このため、ここでいう「歯部中心部」は、実際の歯部における中心部とは相違することになる。
なお、図10は回転子に永久磁石を用いたDCブラシレスモータであるが、永久磁石の代わりに誘導ロータを利用することで誘導モータ(三相、単相)として利用することも可能である。
「一側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(q)」と「もう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(r)」は「極ピッチ」と「高調波次数」により定められ、以下の関係式を満たす。
(式11)
q=(極ピッチ/n次高調波次数)×j (n、jは正の整数)
(式12)
r=(極ピッチ/m次高調波次数)×i (m、iは正の整数)
上記関係式を満たすように歯部の各側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さを設定することで、特定の次数の高調波を選択的に消滅あるいは低減させることができる。
図10は、実施形態1に記載の算出結果を適用して各側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さを設定した場合の具体例を示したものである。例えば、(式11)において、j=1とし、n次高調波次数を5次とすると、一側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(q)=(極ピッチ/5)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、一側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(q)はτ/5と定まる。一方、(式12)において、i=1とし、m次高調波次数を7次とすると、もう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(r)=(極ピッチ/7)×1と定まる。また、極ピッチをτとすると、もう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さ(r)はτ/7と定まる。
この場合a=qとして(数14)により、7次の高調波の磁束の場合を(数12)に代入すると、歯部の一方の側面においては、
sin(n×(π/τ)×q)=sin(5×(π/τ)×(τ/5))=sinπ=0
となり、一方の側面において(数7)は0となり、5次の高調波は発生しないことになる。
また、7次の高調波の磁束の場合はa=rとして(数12)に代入すると、もう一方の側面においては、
sin(n×(π/τ)×r)=sin(7×(π/τ)×(τ/7))=sinπ=0
となり、もう一方の側面において(数7)は0となり、7次の高調波は発生しないことになる。
(実施形態3の効果)実施形態3の回転電気機械では、歯部中心部から巻線部分のコイル外形までの幅又は巻線部分の内側までの幅、歯部のギャップ面の端部までの歯幅等をn次及びm次の高調波磁束の次数に応じた値とすることで、各次数の高調波磁束を50%程度低減することができるため、振動、騒音や電圧・電流の波形歪などの小さい集中巻の回転電気機械を提供することができる。
≪実施形態4≫(実施形態4の概念)本実施形態の回転電気機械は、固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の巻線部分の幅等が複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値に設定されていることを特徴とする。
(実施形態4の構成)図11の回転電気機械は、固定子に歯部(1102)を有し、前記歯部に集中巻の巻線(1101)が巻かれた回転電気機械であって、前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分が複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっている。なお、集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長は、回転子の回転円周方向における円弧上の長さ(1104a)であっても良いし、直線距離(1104b)であっても良い。重み付けは以下のようにして行う。
図11は、実施形態1に記載の算出結果を適用して集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分(1103)が複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値を設定した場合の具体例を示したものである。
例えば、特定のn次の指定高調波を消滅又は低減させるためには、集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分をaとすると、
(式13)
a=(極ピッチ/指定高調波次数)×j (jは正の整数)
として定められるaの値を集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分とすることで、その指定高調波次数を消滅又は低減させることができる。
このとき、j=1、極ピッチ=τとし、指定高調波次数を5次、7次、11次とした場合の(式13)の算出結果をそれぞれ、s、t、uとすると、s=τ/5、t=τ/7、u=τ/11となる。ここで、各次数の低減の割合を、それぞれ50%、30%、20%とすると、一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分(d)を以下のように定める。
d=0.5×s+0.3×t+0.2×u≒0.16τ
上記dは特定の高調波に対応したものではないため、高調波磁束の低減率はそれぞれの割合に応じたものとなる。
なお、上記図11は「集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分」を複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となるように設定した場合を例示したものであるが、同様に、「ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分」、「集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分」、「集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分」、「歯部の歯部幅の略半分」をそれぞれ重み付けを行って設定することで、複数の高調波を、それぞれの割合に応じて低減させることができる。
以上のとおり、実施形態1から4に記載の集中巻の巻線方法は様々な形態を適用することができる。このため、極ごと又は相ごとにいずれか一の巻き方を適用することもできる。極ごと又は相ごとにいずれかの巻き方を適用した場合、低減することができる高調波とその低減割合は、極ごと又は相ごとに異なる。
(実施形態4の効果)実施形態4の回転電気機械では、歯部中心部から巻線部分のコイル外形までの幅又は巻線部分の内側までの幅、歯部のギャップ面の端部までの歯幅等を複数の高調波磁束の次数に対して重み付けを行って算出された値とすることで、各次数の高調波磁束を重み付けに応じて低減させることができるため、振動、騒音や電圧・電流の波形歪などの小さい集中巻の回転電気機械を提供することができる。
実施形態1の回転電気機械の断面図 歯部が台形である回転電気機械の断面図 集中巻の1相の起磁力分布を示す波形を表す図 実施形態2の回転電気機械の断面図(1) 実施形態2の回転電気機械の断面図(2) 実施形態2の回転電気機械の断面図(3) 実施形態2の回転電気機械の断面図(4) 実施形態3の回転電気機械の断面図(1) 実施形態3の回転電気機械の断面図(2) 実施形態3の回転電気機械の断面図(3) 実施形態3の回転電気機械の断面図(4)
符号の説明
0101 巻線
0102 歯部
0103 永久磁石
0104 回転子
0105 シャフト
0106 ギャップ

Claims (21)

  1. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  2. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記歯部は固定子と回転子との間のギャップに面するギャップ面を有し、
    前記ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  3. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  4. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  5. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記歯部の歯部幅の略半分が、(極ピッチ/指定高調波次数)×j(jは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  6. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記集中巻の歯部の一側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の中心から歯部中心部までの円周方向の長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  7. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記歯部は固定子と回転子との間のギャップに面するギャップ面を有し、
    前記ギャップ面の円周方向の一端部から歯部中心部までの長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、前記ギャップ面のもう一方の端部から歯部中心部までの長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  8. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記集中巻の一側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の外側部から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  9. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記集中巻の一側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面に巻かれている一相の巻線部分の内側部から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  10. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記歯部の一側面から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/n次高調波次数)×j(n、jは正の整数)であり、歯部のもう一方の側面から歯部中心部までの円周方向長さが(極ピッチ/m次高調波次数)×i(m、iは正の整数)であることを特徴とする回転電気機械。
  11. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向中心間長の略半分が複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする請求項1に記載の回転電気機械。
  12. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記歯部は固定子と回転子との間のギャップに面するギャップ面を有し、
    前記ギャップ面の円周方向の歯幅の略半分が、複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする請求項2に記載の回転電気機械。
  13. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル外形幅の略半分が、複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする請求項3に記載の回転電気機械。
  14. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記集中巻の一相の巻線部分の円周方向のコイル内側同士の幅の略半分が、複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする請求項4に記載の回転電気機械。
  15. 固定子又は回転子のいずれかに歯部を有し、前記歯部に集中巻の巻線が巻かれた回転電気機械であって、
    前記歯部の歯部幅の略半分が、複数の高調波次数に対して重み付けを行って算出された値となっていることを特徴とする請求項5に記載の回転電気機械。
  16. 前記歯部は台形又は矩形である請求項1から15のいずれか一に記載の回転電気機械。
  17. 前記集中巻として、極ごと又は相ごとに請求項1から15のいずれか一に記載の巻き方を適用した回転電気機械。
  18. 回転電気機械はリニアモータである請求項1から17のいずれか一の回転電気機械。
  19. 回転電気機械はアキシャルエアギャップモータである請求項1から17のいずれか一の回転電気機械。
  20. 回転電気機械はコアレスモータである請求項1、3、4、6、8、9、11、13、14のいずれか一の回転電気機械。
  21. 請求項1から20のいずれか一の回転電気機械を用いた発電機。
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