JP3683563B2 - 通帳用クロス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、銀行の預金通帳および郵便局の貯金通帳等の表紙に使用される通帳用クロスに関し、従来のオフセット印刷に加えてインクジェット印刷をも可能にしたものである。
【0002】
【従来の技術】
預金通帳や貯金通帳の表紙に用いられる通帳用クロスは、一般に良好なオフセット印刷適性を得ることを目的とし、織物や紙からなる基材シートの表裏両面にバインダー樹脂と無機充填剤との混合物からなる塗料を塗布し、カレンダー加工を施して作られ、裏面に薄葉紙が貼付けられていた。なお、上記のバインダー樹脂としては、デンプン、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等の天然樹脂または合成樹脂が用いられ、無機充填剤としては炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が用いられていた。
【0003】
そして、オフセット印刷適性に加えて磁気媒体の接着性と、ドットプリンタ(漢字プリンタ)により氏名および口座番号等を印字するためのドットプリント適性とを兼ね備えた通帳用クロスとしては、基材シートに綿織物を用い、上記のバインダー樹脂と無機充填剤との混合物からなるオフセット印刷用塗料を下引き層に用い、その表側下引き層上にポリウレタンや塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とシリカ粉末との混合物からなる表面樹脂層を設けたものが知られている(実公昭59−9910号公報、実公平3−4544号公報参照)。
【0004】
一方、印刷方式としてインクジェット印刷が知られており、このインクジェット印刷は、オンデマンド方式の印刷が可能であるため、最近はポスター、懸垂幕、横断幕、看板等の宣伝、広告分野で広く利用されるようになり、これに伴って通帳用クロスにも、従来のオフセット印刷適性に加えてインクジェット印刷適性を備えたものが市場から要求されるようになったが、上記の実公昭59−9910号公報や実公平3−4544号公報に記載された通帳用クロスは、インクジェット印刷適性を有しないため、上記最近の市場要求に応じられなかった。
【0005】
上記の市場要求に応じるものとして、基布層(例えば綿織物)の表面にアンダー層を設け、該アンダー層の上にアッパー層を設け、基布層の裏面に裏塗工層を設け、裏塗工層の上に薄葉層を設けた層状構造を有し、上記のアッパー層を、アセタール化度47モル%以上、pHが8以下のアセタール化PVAおよび無機粉末の混合塗料で形成し、その表面張力を32〜36ダイン/cmとしたものが知られている(特許第3280928号公報参照)。
【0006】
しかしながら、この通帳用クロスは、そのアンダー層および裏塗工層を、従来のオフセット印刷用の通帳用クロスおよびオフセット印刷・ドット印刷両用の通帳用クロスと同様に、デンプン、カゼイン、PVA、酢ビその他の樹脂成分と、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機充填剤や架橋剤、防カビ剤等との混合塗料によって形成し、このオフセット印刷適性を備えたアンダー層を上記のアッパー層で被覆したものであるから、インクジェット印刷適性が向上しても、オフセット印刷適性が低下する等の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、通帳用クロスにオフセット印刷適性およびインクジェット印刷適性の双方を与え、しかもそのオフセット印刷適性が従来のオフセット印刷専用の通帳用クロスに比して遜色のないようにするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の通帳用クロスは、基材シートの表面に下引き層および表面樹脂層を順に積層し、裏面に裏面樹脂層および薄葉紙を順に積層した通帳用クロスにおいて、上記の下引き層が無機充填剤としてシリカを無機充填剤全量の60重量%以上配合したインクジエット印刷適性を備えたものであり、上記の表面樹脂層が無機充填剤としてシリカの配合量を無機充填剤全量の50重量%以下としてオフセット印刷適性を備えたものであることを特徴とする。
【0009】
すなわち、オフセット印刷適性とインクジェット印刷適性の双方を必要とする場合、従来は、下引き層にオフセット印刷適性を与え、表面樹脂層にインクジェット印刷適性を与えていたのに対し、この発明では、下引き層および表面樹脂層に与える印刷適性を従来の反対にし、下引き層にインクジェット印刷適性を、また表面樹脂層にオフセット印刷適性を与えるものである。
【0010】
上記のとおり、この発明の通帳用クロスでは、表面樹脂層がオフセット印刷適性を備えているので、オフセット印刷を行った際、従来のオフセット印刷専用の通帳用クロスと遜色のない良好な印刷結果が得られる。そして、上記の表面樹脂層と基材シートとの間に介在する下引き層がインクジェット印刷適性を備え、インクジェット印刷用インクの受容層を構成しているため、上記の表面樹脂層上にインクジェット印刷を行った場合も、良好な印刷結果が得られる。
【0011】
この発明に使用される基材シートには特に限定がなく、従来の通帳用クロスと同様に、織物、不織布、紙等が用いられ、その原料繊維としては綿やレーヨン等のセルロース系繊維、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維のいずれかが単独で、またはその2以上が混合して使用される。ただし、上記の繊維からなる紡績糸(混紡糸を含む)、モノフィラメント糸またはマルチフィラメント糸からなる織物は、寸法安定性や生産性の点で好ましい。特に綿繊維の紡績糸からなるローン程度の薄地の平織物は、風合いや汎用性、生産性等の点で好ましく、またポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートの紡績糸、綿繊維との混紡糸、ポリエステルのモノフィラメント糸またはマルチフィラメント糸からなるタフタ程度の平織物は、寸法安定性と生産性の点で好ましい。
【0012】
上記基材シートの表面に設けられる下引き層は、インクジェット印刷適性を備えたものであれば特に限定はなく、基材シートに対して親和性を備えたバインダー樹脂と吸水性の無機充填剤との混合物を主体とし、これに好ましくはインクセット剤、耐水化剤およびその他の添加剤を加えてなる公知の塗工液を基材シートに塗布、乾燥し、カレンダ加工を施して形成される。
【0013】
上記のバインダー樹脂としては、デンプン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸エステルおよび前記特許第3280928号公報に記載されたアセタール化ポリビニルアルコール等が例示され、特にポリエステルおよびポリアクリル酸エステルは、塗膜の表面強度およびインクの受理性に優れる点で好ましい。なお、これらの樹脂は、いずれか1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
一方、無機充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルクおよびクレー等が例示され、特にシリカはインクジェット用インクの受容性に優れる点で好ましい。したがって、シリカを無機充填剤の主体として用いることが好ましく、その配合比率は無機充填剤全量の60%以上、特に80%以上が好ましく、90%以上が最も好ましい。これらの無機充填剤は、粉末の形で配合され、その平均粒径は、0.01〜30μm、特に0.1〜10μmが好ましく、0.01μm未満では印刷画像の白化現象が強くなり、反対に30μmを超えると印刷画像の鮮明性および加工性が低下し、いずれも好ましくない。
【0015】
上記の下引き層用塗料における無機充填剤の配合比率は、前記のバインダー樹脂分100重量部に付き、好ましくは50〜200重量部、特に80〜130重量部が好ましい。この比率が50重量部未満ではインクジェット用インクの受容性が低下し、反対に200重量部を超えると塗膜強度が不足し、いずれも好ましくない。なお、上記のバインダー樹脂および無機充填剤の混合物には、必要に応じて印刷性向上用のインクセット剤としてカチオン系樹脂、例えば変成ポリアミン樹脂等を、またバインダー樹脂の耐水化剤として尿素・グリオキザール・アクリルアミド重縮合物等をそれぞれ適量加えることができる。
【0016】
上記のバインダー樹脂、無機充填剤およびその他添加剤の混合物は、適量の水を加えて塗工液とし、これを前記の基材シートの表面に塗布し、カレンダー加工を施して下引き層に形成される。なお、その塗布量(固形分付き量)は、10〜50g/m2 が好ましく、10g/m2 未満ではインクジェット出力適性が悪くなり、反対に50g/m2 を超えるとオフセット印刷適性が失われる。
【0017】
上記表面側下引き層の上に積層される表面樹脂層は、オフセット印刷適性を備えたものであれば特に限定はなく、バインダー樹脂と無機充填剤との混合物を主体とし、これに必要に応じて着色剤を添加してなる公知の塗工液を上記の表面側下引き層の上に塗布し、乾燥して形成される。
【0018】
例えば、上記の表面樹脂層にオフセット印刷適性のみを求める場合、そのバインダー樹脂としては、デンプン、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体が例示され、そのいずれか1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。そして、上記のバインダー樹脂100重量部に対し、無機充填剤として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、クレー等のいずれか1種または2種以上を50〜250重量部の割合で配合し、これに従来と同様に顔料、油剤、活性剤、耐水硬化剤等を適宜に添加し、水と混合して前記下引き層の上に好ましくは3〜30g/m2 の固形分付き量で塗工し、表面樹脂層に形成する。なお、上記無機充填剤の一部、50%以下をシリカで置換するともできるが、50%を超えると、オフセット印刷適性が低下する。
【0019】
一方、オフセット印刷適性およびドットプリント適性の両者を必要とする場合は、バインダー樹脂として、ボリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、塩化ビニル・アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体およびポリアクリル酸エステルのいずれか1種を単独で、または2以上を混合して使用することが好ましく、必要に応じて着色剤を添加する。
【0020】
この場合の無機充填剤は、シリカおよび炭酸カルシウムの混合使用が好ましく、上記シリカの混合比率は無機充填剤全量に対して5〜50%が好ましく、5%未満ではドットプリント適性が低下し、反対に50%を超えるとオフセット印刷適性が低下する。上記のシリカは、湿式シリカおよび乾式シリカのいずれでもよい。一方、炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムが好ましい。この沈降炭酸カルシウムには、紡錘形構造と立方形構造とが存在するが、その両者の混合使用が好ましい。そして、この沈降炭酸カルシウムには若干量の重質炭酸カルシウムを混合することができる。
【0021】
これらの無機充填剤は、平均粒径0.05〜15μmの粉末の形で前記のバインダー樹脂に配合される。その配合量は、前記バインダー樹脂の100重量部に対し50〜250重量部、特に100〜200重量部が好ましく、50重量部未満ではオフセット用インクの乾燥性が悪くなり、反対に250重量部を超えると塗膜強度が不足する。そして、上記の無機充填剤は、10〜60重量部をシリカとし、残り40〜190重量部を沈降炭酸カルシウムとし、かつ沈降炭酸カルシウムを紡錘形構造および立方形構造の混合物とし、その混合比率を2/8〜8/2に設定することが特に好ましく、この場合はオフセット印刷適性およびドットプリント適性の双方が向上する。
【0022】
上記表面樹脂層用のバインダー樹脂および無機充填剤は、必要に応じて白色顔料用の酸化チタンを適宜添加した後、適量の水と混合して塗工液とし、前記下引き層の上に好ましくは固形分付き量が3〜30g/m2 となるように塗布し、乾燥して表面樹脂層に形成される。上記の固形分付き量が3g/m2 未満では、ドットプリント適性が低下し、反対に30g/m2 を超えると、オフセット印刷適性が低下し、いずれも好ましくない。
【0023】
前記基材シートの裏面に設けられる裏面樹脂層は、基材シートの目を詰められるものであれば特に限定がなく、基材シートに対して親和性を備えたパインダー樹脂と任意の無機充填剤との混合物からなる塗工液、例えば前記の下引き層用塗工液や表面樹脂層用塗工液その他を塗布、乾燥し、カレンダー加工を行って形成することができる。この裏面樹脂層に積層する薄葉紙は、従来と同様に坪量15〜20g/m2 のものであり、従来と同様に酢酸ビニル系またはエチレン・酢酸ビニル共重合体系等の接着剤で貼着される。
【0024】
得られた通帳用クロスは、表面にオフセット印刷により所望の文字や、記号、図形等を印刷した後、裏面の薄葉紙上に、あらかじめ本文用紙と共に中綴じされた見返用紙を貼合わせ、中央で二つ折りにし、プレス、裁断を施して通帳とし、しかるのち上記のオフセット印刷面にインクジェット印刷で任意の文字、記号、図形等を追加印刷することができる。また、所望によって上記のオフセット印刷に続いて直ちにインクジェット印刷を行ってもよく、反対にインクジェット印刷を先に行い、しかるのちオフセット印刷を行うこともできる。
【0025】
【発明の実施の形態】
実施形態1
基材シートとして、綿繊維およびポリエステル繊維のいずれか一方または両者の混紡糸を経糸および緯糸に用いた薄地の平織物を用意し、この基材シートの表面にポリビニルアルコールおよびシリカを主成分とする下引き層を、また裏面にポリビニルアルコールおよび任意の無機充填剤を主成分とする裏面樹脂層をそれぞれ形成し、上記下引き層の上にポリエステル、炭酸カルシウムおよびシリカの混合物を主成分とする表面樹脂層を形成し、上記裏面樹脂層の上に薄葉紙を貼着して通帳用クロスとする。なお、上記の裏面樹脂層は、ポリビニルアルコール100重量部に対し、無機充填剤として例えば炭酸カルシウム粉末150〜250重量部および水450〜550重量部からなる塗工液を塗布量(固形分付き量)3〜40g/m2 で塗布、乾燥し、カレンダー加工を行って形成される。
【0026】
上記の下引き層は、ポリビニルアルコール100重量部、粒径0.1〜10μmのシリカ粉末80〜130重量部および水600〜1000重量部からなる塗工液を、上記基材シートの表面に塗布量(固形分付き量)10〜50g/m2 で塗布、乾燥し、カレンダー加工を行って形成される。なお、上記の塗工液には、印刷性向上用のインクセット剤として例えばカチオン系の変成ポリアミン樹脂0.1〜20重量部を、またポリビニルアルコールの耐水化剤として例えば尿素・グリオキザール・アクリルアミド重縮合物0.1〜20重量部をそれぞれ添加することができる。
【0027】
また、前記の表面樹脂層は、上記下引き層の上に、ポリエステル100重量部に対し、ポリビニルアルコール5〜50重量部、平均粒径0.05〜15μmのシリカ粉末と炭酸カルシウム粉末との混合粉末50〜250重量部および水50〜250重量部からなる塗工液を3〜30g/m2 の塗布量(固形分付き量)で塗布、乾燥して形成される。ただし、上記の混合粉末において、シリカ粉末の配合量は10〜60重量部に、また炭酸カルシウムの配合量は40〜190重量部にそれぞれ設定される。そして、この炭酸カルシウム粉末は、紡錘形構造および立方形構造の沈降炭酸カルシウムを2/8〜8/2の重量比で混合したものが使用される。また、上記の塗工液には、印刷性向上用のインクセット剤として例えばカチオン系のポリビニルアルコール5〜50重量部を、また白色顔料として例えば酸化チタン0.1〜5重量部をそれぞれ添加することができる。
【0028】
得られた実施形態1の通帳用クロスは、インクジェット印刷適性とオフセット印刷適性とを兼備しており、表面樹脂層の上にインクジェット印刷、オフセット印刷およびドットプリントのいずれを行っても、良好な印刷結果が得られる。なお、上記の実施形態1において、表面樹脂層のバインダー樹脂は、ポリエステルに代えてポリアクリル酸エステルを用いることができ、またポリエステルおよびポリアクリル酸エステルの混合物を用いることができる。
【0029】
実施形態2
上記の実施形態1で得られた下引き層の上に、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、炭酸カルシウムおよび酸化チタンの混合物を主成分とする表面樹脂層を形成し、その他は実施形態1と同様にして実施形態2の通帳用クロスを得る。ここで、上記の表面樹脂層は、デンプン100重量部、ポリビニルアルコール40〜250重量部、ポリ酢酸ビニル80〜120重量部、炭酸カルシウム100〜200重量部、酸化チタン30〜50重量部および水600〜800重量部からなる塗工液を、上記下引き層の上に3〜30g/m2 の塗布量(固形分付き量)で塗布、乾燥することにより形成することができる。
【0030】
得られた実施形態2の通帳用クロスにおいて、表面樹脂層の配合は、オフセット印刷専用の通帳用クロスに採用されていた塗工液の配合であり、良好なオフセット印刷適性を備えている。そして、下引き層が実施形態1と同じ配合で、インクジェット印刷適性を備えているため、インクジェット印刷およびオフセット印刷のいずれを行っても、良好な印刷結果が得られる。
【0031】
【実施例】
実施例1
基材シートとして、60番手綿糸を経糸および緯糸とし、経糸密度が90本/インチ、緯糸密度が88本/インチの平織物を用意した。また、下引き層用の塗工液として、ポリビニルアルコール10部(重量部、以下同じ)、平均粒径9〜12μmの粉末シリカ8部、平均粒径3.5〜3.9μmの粉末シリカ2部、インクセット剤用の変成ポリアミン樹脂1.5部、耐水化剤用の尿素・グリオキザール・アクリルアミド重縮合物1.5部および水70部の混合液(配合A)を用意した。
【0032】
また、表面樹脂層用の塗工液として、ポリビニルアルコール5.5部、ポリエステルディスパージョン(固形分35%)66部、沈降炭酸カルシウム30部、平均粒径1〜2μmの粉末シリカ12部、酸化チタン1部および水80部の混合液(配合B)を用意した。ただし、上記の沈降炭酸カルシウムは、紡錘形構造および立方形構造の混合比率が3/7のものを用いた。
【0033】
上記基材シートの表裏両面に上記の下引き層用塗工液を塗布、乾燥し、カレンダー加工を施して表側に固形分付量28g/m2 の下引き層を、また裏側に固形分付量23g/m2 の裏面樹脂層をそれぞれ形成し、裏面樹脂層の上に薄葉紙を酢酸ビニル系接着剤で貼付け、しかるのち表側の下引き層上に上記の表面樹脂層用塗工液を塗布、乾燥して固形分付量15g/m2 の表面樹脂層を形成し、実施例1の通帳用クロスを得た。
【0034】
実施例2
基材シートとして、84デシテックスのポリエステルマルチフィラメント糸を経糸、緯糸に用いた経糸密度88本/インチ、緯糸密度75本/インチの平織物を用意し、その他は実施例1と同様にして実施例2の通帳用クロスを得た。
【0035】
実施例3
表面樹脂層用の塗工液として、小麦粉デンプン5部、ポリビルニアルコール2部、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂4部、アクリル樹脂10部、炭酸カルシウム7部、酸化チタン2部および水37部の混合液(配合C)を用意し、その他は実施例1と同様にして実施例3の通帳用クロスを得た。
【0036】
比較例1
上記の実施例1における表面樹脂層の形成を省略する以外は、実施例1と同様にして比較例1の通帳用クロスを得た。
【0037】
比較例2
下引き層用の塗工液として、上記実施例3の表面樹脂層用塗工液(配合C)を用意し、この塗工液を実施例1の基材シートの表裏両面に塗布、乾燥し、カレンダー加工を施して表側に固形分付量50g/m2 の下引き層を、また裏側に固形分付量23g/m2 の裏面樹脂層をそれぞれ形成し、以下実施例1と同じ表面樹脂層と薄葉紙を備えた比較例2の通帳用クロスを得た。
【0038】
比較例3
上記比較例2の下引き層(配合C)上に実施例1の下引き層用塗工液(配合A)を塗布、乾燥して固形分付量15g/m2 の表面樹脂層を形成し、その他は比較例2と同様にして比較例3の通帳用クロスを得た。
【0039】
上記の実施例1〜3および比較例1〜3の通帳用クロスについて、印刷適性、ピック強度および磁気テープ接着力等の性能を以下の方法で比較し、結果を下記の表1に示した。
【0040】
オフセット印刷適性:RIテスト印刷機を用いて印刷し、結果を目視で4段階に評価し、非常に優れているを◎、優れているを○、やや劣るを△、劣るを×とした。
【0041】
インクジェット印刷適性:SHARP UX−EICLで油性顔料インクを用いて印刷し、またEPSON MJ−6000Cで水性染料インクを用いて印刷し、結果をオフセット印刷適性と同様に4段階に評価した。
【0042】
ドットプリント適性:デジタルプリンタDP−223P−26(ボン電気社製)で印字した直後に、その印字面上でウレタンゴムローラを転がし、該ローラから通帳用クロス表面の他部に転写される印字影の有無を観察し、印字影がほとんど認められないものを良、認められたものを不可とした。
【0043】
ピック強度(表面塗膜の強度):JIS P8129−1994のワックス法で試験した。このワックス法の試験で9A以下は、オフセット印刷時に塗膜が破壊し、実用に不適とされる。
【0044】
磁気テープ接着力:JIS−C2167の電気絶縁用粘着力試験方法に準拠し、日立マクセル社製磁気テープを使用して剥離速度200mm/分で試験した。
【0045】
【表1】
【0046】
上記の表1に示すとおり、実施例1〜3の通帳用クロスは、実施例3のドットプリント適性が不良であることを除き、その他のすべてにおいて優れていた。そして、実施例3は、ドットプリント適性が不良でも、オフセット印刷適性およびインクジェット印刷適性に優れるため、将来においてドット印刷に代わってインクジェット印刷が採用になれば、印字可能となり、良好な印字結果が得られる。
【0047】
これに対して比較例1は、実施例1と同じ下引き層のみを有し、表面樹脂層を有しないため、インクジェット印刷適性は有するものの、オフセット印刷適性を有しない。また、比較例2は、表面樹脂層が実施例1と同じ配合Bからなり、オフセット印刷適性に優れる反面、下引き層のシリカが不足し、インクジェット用インクの受容性に乏しいため、インクジェット印刷適性が劣っていた。また、比較例3は、表面樹脂層が実施例1の下引き層と同じ配合Aで、インクジェット印刷適性を備えるため、インクジェット適性に優れる反面、下引き層が比較例2と同じ配合Cで、オフセット印刷適性を有するものの、この配合Cが下引き層として用いられ、その表面がインクジェット印刷適性を備えた配合Aの表面樹脂層で被覆されているため、オフセット印刷適性が劣っていた。
【0048】
【発明の効果】
上記のとおり、この発明に係る通帳用クロスは、オフセット印刷適性およびインクジェット印刷適性の両者を備えている。特に、請求項2の通帳用クロスは、風合いが良好で、汎用性および生産性に優れている。また、請求項3の通帳用クロスは、インクジェット印刷適性の付与が容易であり、請求項4の通帳用クロスは、オフセット印刷適性の付与が容易である。
Claims (4)
- 基材シートの表面に下引き層および表面樹脂層を順に積層し、裏面に裏面樹脂層および薄葉紙を順に積層した通帳用クロスにおいて、上記の下引き層が無機充填剤としてシリカを無機充填剤全量の60重量%以上配合したインクジエット印刷適性を備えたものであり、上記の表面樹脂層が無機充填剤としてシリカの配合量を無機充填剤全量の50重量%以下としてオフセット印刷適性を備えたものであることを特徴とする通帳用クロス。
- 基材シートが綿繊維およびポリエステル繊維のいずれか一方または両者の混紡糸からなる薄地の平織物である請求項1に記載の通帳用クロス。
- 下引き層がポリビニルアルコールと無機充填剤との混合物を主成分として形成され、上記無機充填剤の60重量%以上がシリカである請求項1または2に記載の通帳用クロス。
- 表面樹脂層がポリエステルおよびポリアクリル酸エステルのいずれか一方または両者の混合物と無機充填剤との混合物を主体として形成され、上記無機充填剤の50重量%以上が炭酸カルシウムである請求項1または3のいずれかに記載の通帳用クロス。
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