JP3683325B2 - カメラの駆動装置用パルスモータ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カメラに内蔵され、シャッタの開閉作動や、絞りの開口調整作動や、距離調整,変倍等におけるレンズの移動を電動で行うのに適したカメラの駆動装置用パルスモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近のカメラは、小型化,低コスト化が要求されている反面、上記のような各作動を電動で行えるようにすることが要求されている。そのため、それらの駆動装置も、カメラ内での取り付けスペースを極力小さくて済むようにすることは基より、部品点数を少なくし且つ組み立てをし易いように構成しなければならない。その場合において一番問題となるのがパルスモータをどのように構成するか、どのように配置するかということである。そこで、被写体光を通過させる円形状の開口部の側方位置において、光軸に対して径方向への寸法を出来るだけ小さく且つ全体を薄くコンパクトに配置できるようにするために、光軸を中心にして円弧状に配置するのに適した正逆転可能なパルスモータが開発され、実開昭60−141682号公報,実開平1−116583号公報等で提案されている。
【0003】
このタイプのパルスモータは、複数の磁極部の一つにコイルを巻回している鉄芯(ヨーク)部材を二つ設けており、それらを回転子の回転中心に対して平面上で所定の位相関係を持たせ、該回転子を挟むようにして配置し、径方向に4極に着磁された永久磁石回転子の周面に対し、それらの磁極部を対向させるようにしたものである。そして、このような構成のモータは、パルス制御によって45度ずつステップ的に回転されるが、静的安定点(コイルの無通電時において回転子が安定状態で停止できる点)は90度毎の4箇所となっている。従って、このモータを、例えばレンズの繰り出し位置を8通りに規制できるようにしたレンズ駆動装置に適用する場合には、その繰り出し調整時間は、回転子を少なくとも2回転させる時間だけ必要になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
言うまでもなく、上記のような回転子による制御時間は、出来るだけ短時間であることが要求されている。そして、その要求に応えるためには、先ず、回転子の回転速度を上げるようにすることが考えられる。しかしながら、この種のモータは極めて小型であることから、そのような制御を確実に行えるようにしようとすると大幅なコストアップとなり、通常のカメラにはとても採用することができない。
【0005】
そこで、回転速度を上げることなく、静的安定点を各ステップごと、即ち45度置きに得られるようにするために、上記した4箇所の静的安定点が得られる位置の各中間位置であって、回転子の周面に対向する位置に、磁性体部材を各々配置することが考えられる。しかしながら、回転子の周面には上記したように鉄芯部材が配置されているため、全ての中間位置に配置することが困難であり、また一部又は全部の中間位置に配置したとしても、モータが小型であるが故に、その磁性体部材が鉄芯部材の磁極部間を磁気的に短絡させてしまう可能性がでてくる。更に、そのような磁性体部材の配置は、組立構成が複雑となってコストアップを招き、且つ光軸から径方向への設置スペースを大きくするという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、複数極を有する永久磁石回転子と、少なくとも一つの磁極部にコイルを巻回した二つの鉄芯部材とを備え、該回転子を該二つの鉄芯部材の磁極部によって挟むように配置した小型のパルスモータであるにもかかわらず、各ステップごとに安定点が確実に得られるようにし、しかも構成が簡単で、スペース的に有利且つ低コストなカメラの駆動装置用パルスモータを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるカメラの駆動装置用パルスモータは、径方向に複数極に着磁されており隣接する二つの磁極に跨がる所定の角度領域を残して円柱形の平面部に磁極ごとに凸部を形成し且つ該凸部の径方向の面を該円柱形の周面よりも回転軸方向に形成した永久磁石回転子と、各々複数の磁極部を有し少なくともその一つの磁極部にコイルを巻回し該複数の磁極部を前記円柱形の周面に所定の間隔で対向させるようにして前記回転子の両側に配置された二つの鉄芯部材と、前記回転子と一体的に回転する出力歯車と、前記回転子の静的安定位置において前記回転子の隣接する二つの磁極の中間位置であって前記円柱形の周面よりも回転軸方向の位置で前記凸部の径方向の面に対向し得るようにして配置された磁性体部材とを備えるようにする。
【0008】
また、本発明におけるカメラの駆動装置用パルスモータは、好ましくは、前記磁性体部材が、前記円柱形よりも小さい径の環状又は円弧状をしており、前記中間位置において前記凸部の径方向の面に対向し得るように張出部を形成しているようにする。
また、本発明におけるカメラの駆動装置用パルスモータは、好ましくは、前記前記磁性体部材が、前記中間位置において前記張出部とは直交し前記回転軸に向けて延びた他の張出部を形成しているようにする。
更に、本発明におけるカメラの駆動装置用パルスモータは、好ましくは、前記磁性体部材が、前記回転子を軸受けしている部材に取り付けられているようにする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1乃至図4に示した一眼レフカメラの自動絞り装置の実施例で説明する。図1は最小の絞り開口状態を示している平面図であり、図2は図1の要部を一部展開状態で示した断面図であり、図3は絞りの全開状態を示す平面図である。図4はこの実施例に使用されているパルスモータの要部説明図であって、図4(a)は平面図、図4(b)は側面図である。
【0010】
図1に示すように外形が略円形をしている合成樹脂製の基板1の中央部には光軸を中心に円形状の開口部1aが形成されている。この基板1の背面側には略同一の外形形状をした合成樹脂製の補助基板2が取り付けられており、この補助基板2の中央部には図示していないが基板1の開口部1aと略同一形状の開口部が形成され、それらの開口部によって被写体光をフィルム面に導くようになっている。また、基板1と補助基板2との間には羽根室が形成され、3枚の絞り羽根3が収容されている。
【0011】
駆動リング4は基板1上で光軸を中心に回転可能に配置されており、三つのピン4aは、夫々基板1に光軸を中心にして円弧状に形成された孔1bと、各絞り羽根3に形成された円孔とを貫通し、その先端は、上記の孔1bと略同一の円弧状に補助基板2に形成された溝2a内に嵌入している。また、絞り羽根3のピン3aはカバー板2に形成されたカム溝2b内に嵌入している。枠部材5は合成樹脂製であって、2箇所において夫々可撓性を有するフック部5aを有し、それらを基板1の係合部1cに係合させることによって、基板1に取り付けられている。また、位置決めのために、基板1のピン1dが枠部材5の孔5bに嵌合している。
【0012】
枠部材5の上には二つの鉄芯部材6が載置されている。各鉄芯部材6は、孔6aをピン5cに嵌合させ、フック部5dによって取り付けられている。各鉄芯部材6は、夫々先端が磁極部となる二つの脚部6b,6cを有し、各脚部6bには夫々ボビン6dが嵌装されている。また、夫々のボビン6dはコイル6eを巻回していると共に二つの端子ピン6fを植設している。枠部材5には円筒部5eが形成されており、各鉄芯部材6の脚部6b,6cは、夫々先端部を、円筒部5eに個別に設けられた孔5fに挿入している。
【0013】
回転子7は、枠部材5の天板部5gと基板1とによって軸受けされている。この回転子7は、4極構成の永久磁石7aを有しており、その周面が各鉄芯部材6の脚部6b,6cの端面に対向している。図4に示されているように、この永久磁石7aの上面側には、隣接する二つの磁極に跨がる所定の角度領域を凹部7a1 として、磁極ごとに凸部7a2 が形成されている。そして、この各凸部7a2 は平面的に見て扇形状をしており、その外周面は、鉄芯部材6の脚部6b,6cの端面に対向している周面よりも小さい径位置に形成されている。また、この回転子7には一体的に出力歯車7bが形成されている。更に、相互に噛合している減速歯車8,9は、夫々基板1と枠部材5に軸受けされており、減速歯車8は出力歯車7bに、また減速歯車9は駆動リング4の歯部4bに噛合している。
【0014】
天板部5gの内面には、回転子7の上面に対向するようにして、磁性体部材10が圧入にて取り付けられている。接着など、その他の手段で取り付けても構わない。この磁性体部材10は、図4から分かるように、平面的には環状をしており、永久磁石7aの上面に対向させるようにして回転子7の軸方向へ延びた四つの張出部10aを90度間隔に形成しており、また、これらの張出部10aと同一角度位置にあって張出部10aに対して直角方向に延び、凸部7a2 の外周面と対向し得るようにして他の張出部10bを形成している。そして、これら各組の張出部10a,10bは、回転子7が鉄芯部材6との関係だけにおいて安定的に停止している状態において、永久磁石7aの隣接する磁極間に位置するように配置されている。
【0015】
次に、本実施例の作動を説明する。既に述べたように、本実施例は一眼レフカメラの自動絞り装置である。このような絞り装置の場合には、カメラの不使用時には、フォーカルプレンシャッタからの漏光防止対策として、絞り羽根3を出来るだけ絞り込むようにしておくのが普通である。図1はこのような状態を示しており、3枚の絞り羽根3によって開口部1aの殆どが閉鎖され、最小開口状態となされている。しかし、この状態において開口部1aが全閉となるように構成しても差し支えない。
【0016】
そこで、撮影に先立って電源スイッチを閉じると、周知のように二つの鉄芯部材6に巻かれた夫々のコイル6eにパルス電流が供給され、回転子7は図1において時計方向へ45度のステップで回転する。この回転は、出力歯車7b,減速歯車8,9を介して駆動リング4に伝えられ、駆動リング4は反時計方向へ回転される。このとき、絞り羽根3は駆動リング4のピン4aによって動かされるが、絞り羽根3のピン3aがカム溝2bに案内されて、光軸から徐々に遠ざかっていくため、3枚の絞り羽根3によって形成されている開口の大きさが徐々に大きくなり、やがて開口部1aを全開した状態で停止する。この状態が図3に示されている。従って、この状態では、ミラーによってファインダに導かれる被写体光が最大となるので、被写体像が見やすくなる。
【0017】
このようにして被写体像を捕らえ、シャッタをレリーズすると、シャッタが開閉走行を行う前に、ミラーのはね上げと相前後して、二つのコイル6eに電流が供給され、上記とは逆のパルス制御が行われる。従って、回転子7は反時計方向へ45度のステップで回転し、出力歯車7b,減速歯車8,9を介して駆動リング4を時計方向へ回転する。そのため、3枚の絞り羽根3は徐々に開口面積を絞り込み、所定の絞り開口位置で停止する。このときの停止位置、即ち絞り開口の大きさは、予め撮影者が選択する場合もあるし、測光回路によって自動的に決定される場合もある。その後、シャッタが開閉されるが、その作動が終了するとミラーが原位置へ復帰すると共にコイル6eに通電して回転子7を時計方向へ45度のステップで回転させ、絞り羽根3を図1の状態に復帰させ、一連の作動が終了する。
【0018】
本実施例の回転子7は、上記のようにして絞り羽根3を作動させるために、45度のステップで回転するが、その各ステップごとに確実に停止させることが可能である。即ち、本実施例のようにして磁性体部材10が設けられていない場合には、静的安定位置は4箇所であり、もしそれらの安定位置間で回転子7を停止させた場合には極めて不安定な状態であり、いずれか一方の安定位置へ回転させられてしまう。しかし、本実施例によれば、永久磁石7aの隣接する磁極には、それらの間に位置する磁性体部材10の張出部10a,10bとの間に、吸引力が等しく働くため、その位置で安定して停止することができる。
【0019】
そして、この場合の吸引力は、凸部7a2 の上面側と張出部10aとの間、凸部7a2 の外周面側と張出部10bとの間、鉄芯部材6の脚部6b,6cに対向する周面を有する円柱形状の平面部と張出部10bとの間に働くので、回転子7を確実に停止させることができる。尚、この場合、どちらかというと永久磁石7aの平面側よりも周面側からの磁力の方が強く作用するので、場合によっては張出部10aを形成せず、張出部10bだけを形成するようにしてもよい。また磁性体部材10は、環状ではなく円弧状にし、張出部10a,10bを2箇所又は3箇所に形成するだけでもよく、極端な場合1箇所でも構わない。
【0020】
このように、本実施例の場合には、45度のステップごとに回転子7を確実に停止させることができるから、従来のように90度ごとに停止させる場合より、理論的には絞り制御時間を約1/2にすることが可能となる。また、本実施例によれば、磁性体部材10の張出部10a,10bを鉄芯部材6よりも回転子7に近い位置に確実に配置することができるので、鉄芯部材6と回転子7との磁界には実質的に影響を及ぼさない。更に、上記のような磁性体部材10の配置により、回転子7自体には上方向即ち軸方向への吸引力が働くから、所謂ガタ寄せが行われ、回転子7に対し常に一定の条件での回転を行わせることも可能となる。
【0021】
尚、上記の実施例においては、回転子7が4極に着磁されているが、本発明は極数に限定されない。また、凸部7a2 は扇形状をしており、張出部10bとの対向面が周面になっているが、平面としても差し支えない。更に、実施例の回転子7は、永久磁石7aと出力歯車7bとを成形技術によって一体化しているが、本発明は、プラスチックに磁性粉を混入した材料で一体成形にて製作した回転子にも適用される。また、本発明はシャッタ開閉用の駆動装置としても、またレンズ繰り出し用の駆動装置としても適用することができるものである。
【0022】
【発明の効果】
上記のように、本発明は、複数極を有する永久磁石回転子と、少なくとも一つの磁極部にコイルを巻回した二つの鉄芯部材とを備え、該回転子を該二つの鉄芯部材の磁極部によって挟むように配置した小型のパルスモータであるにもかかわらず、各ステップごとに安定点が確実に得られるようにしたので、従来よりも制御時間を短くすることが可能となり、しかも構成が極めて簡単で低コストで製作できるという利点がある。また、磁性体部材を回転子の外周面より内側に配置することも可能であるため、スペース的にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を、自動絞りの駆動装置に適用した実施例の平面図であって、最小の絞り開口状態を示している。
【図2】図1の要部を一部展開状態で示した断面図である。
【図3】図1に示した自動絞り駆動装置の絞り全開状態を示す平面図である。
【図4】実施例におけるパルスモータの要部説明図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は側面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 補助基板
3 絞り羽根
4 駆動リング
5 枠部材
5g 天板部
6 鉄芯部材
6b,6c 脚部
7 回転子
7a 永久磁石
7a1 凹部
7a2 凸部
7b 出力歯車
10 磁性体部材
10a,10b 張出部
【発明の属する技術分野】
本発明は、カメラに内蔵され、シャッタの開閉作動や、絞りの開口調整作動や、距離調整,変倍等におけるレンズの移動を電動で行うのに適したカメラの駆動装置用パルスモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近のカメラは、小型化,低コスト化が要求されている反面、上記のような各作動を電動で行えるようにすることが要求されている。そのため、それらの駆動装置も、カメラ内での取り付けスペースを極力小さくて済むようにすることは基より、部品点数を少なくし且つ組み立てをし易いように構成しなければならない。その場合において一番問題となるのがパルスモータをどのように構成するか、どのように配置するかということである。そこで、被写体光を通過させる円形状の開口部の側方位置において、光軸に対して径方向への寸法を出来るだけ小さく且つ全体を薄くコンパクトに配置できるようにするために、光軸を中心にして円弧状に配置するのに適した正逆転可能なパルスモータが開発され、実開昭60−141682号公報,実開平1−116583号公報等で提案されている。
【0003】
このタイプのパルスモータは、複数の磁極部の一つにコイルを巻回している鉄芯(ヨーク)部材を二つ設けており、それらを回転子の回転中心に対して平面上で所定の位相関係を持たせ、該回転子を挟むようにして配置し、径方向に4極に着磁された永久磁石回転子の周面に対し、それらの磁極部を対向させるようにしたものである。そして、このような構成のモータは、パルス制御によって45度ずつステップ的に回転されるが、静的安定点(コイルの無通電時において回転子が安定状態で停止できる点)は90度毎の4箇所となっている。従って、このモータを、例えばレンズの繰り出し位置を8通りに規制できるようにしたレンズ駆動装置に適用する場合には、その繰り出し調整時間は、回転子を少なくとも2回転させる時間だけ必要になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
言うまでもなく、上記のような回転子による制御時間は、出来るだけ短時間であることが要求されている。そして、その要求に応えるためには、先ず、回転子の回転速度を上げるようにすることが考えられる。しかしながら、この種のモータは極めて小型であることから、そのような制御を確実に行えるようにしようとすると大幅なコストアップとなり、通常のカメラにはとても採用することができない。
【0005】
そこで、回転速度を上げることなく、静的安定点を各ステップごと、即ち45度置きに得られるようにするために、上記した4箇所の静的安定点が得られる位置の各中間位置であって、回転子の周面に対向する位置に、磁性体部材を各々配置することが考えられる。しかしながら、回転子の周面には上記したように鉄芯部材が配置されているため、全ての中間位置に配置することが困難であり、また一部又は全部の中間位置に配置したとしても、モータが小型であるが故に、その磁性体部材が鉄芯部材の磁極部間を磁気的に短絡させてしまう可能性がでてくる。更に、そのような磁性体部材の配置は、組立構成が複雑となってコストアップを招き、且つ光軸から径方向への設置スペースを大きくするという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、複数極を有する永久磁石回転子と、少なくとも一つの磁極部にコイルを巻回した二つの鉄芯部材とを備え、該回転子を該二つの鉄芯部材の磁極部によって挟むように配置した小型のパルスモータであるにもかかわらず、各ステップごとに安定点が確実に得られるようにし、しかも構成が簡単で、スペース的に有利且つ低コストなカメラの駆動装置用パルスモータを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるカメラの駆動装置用パルスモータは、径方向に複数極に着磁されており隣接する二つの磁極に跨がる所定の角度領域を残して円柱形の平面部に磁極ごとに凸部を形成し且つ該凸部の径方向の面を該円柱形の周面よりも回転軸方向に形成した永久磁石回転子と、各々複数の磁極部を有し少なくともその一つの磁極部にコイルを巻回し該複数の磁極部を前記円柱形の周面に所定の間隔で対向させるようにして前記回転子の両側に配置された二つの鉄芯部材と、前記回転子と一体的に回転する出力歯車と、前記回転子の静的安定位置において前記回転子の隣接する二つの磁極の中間位置であって前記円柱形の周面よりも回転軸方向の位置で前記凸部の径方向の面に対向し得るようにして配置された磁性体部材とを備えるようにする。
【0008】
また、本発明におけるカメラの駆動装置用パルスモータは、好ましくは、前記磁性体部材が、前記円柱形よりも小さい径の環状又は円弧状をしており、前記中間位置において前記凸部の径方向の面に対向し得るように張出部を形成しているようにする。
また、本発明におけるカメラの駆動装置用パルスモータは、好ましくは、前記前記磁性体部材が、前記中間位置において前記張出部とは直交し前記回転軸に向けて延びた他の張出部を形成しているようにする。
更に、本発明におけるカメラの駆動装置用パルスモータは、好ましくは、前記磁性体部材が、前記回転子を軸受けしている部材に取り付けられているようにする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1乃至図4に示した一眼レフカメラの自動絞り装置の実施例で説明する。図1は最小の絞り開口状態を示している平面図であり、図2は図1の要部を一部展開状態で示した断面図であり、図3は絞りの全開状態を示す平面図である。図4はこの実施例に使用されているパルスモータの要部説明図であって、図4(a)は平面図、図4(b)は側面図である。
【0010】
図1に示すように外形が略円形をしている合成樹脂製の基板1の中央部には光軸を中心に円形状の開口部1aが形成されている。この基板1の背面側には略同一の外形形状をした合成樹脂製の補助基板2が取り付けられており、この補助基板2の中央部には図示していないが基板1の開口部1aと略同一形状の開口部が形成され、それらの開口部によって被写体光をフィルム面に導くようになっている。また、基板1と補助基板2との間には羽根室が形成され、3枚の絞り羽根3が収容されている。
【0011】
駆動リング4は基板1上で光軸を中心に回転可能に配置されており、三つのピン4aは、夫々基板1に光軸を中心にして円弧状に形成された孔1bと、各絞り羽根3に形成された円孔とを貫通し、その先端は、上記の孔1bと略同一の円弧状に補助基板2に形成された溝2a内に嵌入している。また、絞り羽根3のピン3aはカバー板2に形成されたカム溝2b内に嵌入している。枠部材5は合成樹脂製であって、2箇所において夫々可撓性を有するフック部5aを有し、それらを基板1の係合部1cに係合させることによって、基板1に取り付けられている。また、位置決めのために、基板1のピン1dが枠部材5の孔5bに嵌合している。
【0012】
枠部材5の上には二つの鉄芯部材6が載置されている。各鉄芯部材6は、孔6aをピン5cに嵌合させ、フック部5dによって取り付けられている。各鉄芯部材6は、夫々先端が磁極部となる二つの脚部6b,6cを有し、各脚部6bには夫々ボビン6dが嵌装されている。また、夫々のボビン6dはコイル6eを巻回していると共に二つの端子ピン6fを植設している。枠部材5には円筒部5eが形成されており、各鉄芯部材6の脚部6b,6cは、夫々先端部を、円筒部5eに個別に設けられた孔5fに挿入している。
【0013】
回転子7は、枠部材5の天板部5gと基板1とによって軸受けされている。この回転子7は、4極構成の永久磁石7aを有しており、その周面が各鉄芯部材6の脚部6b,6cの端面に対向している。図4に示されているように、この永久磁石7aの上面側には、隣接する二つの磁極に跨がる所定の角度領域を凹部7a1 として、磁極ごとに凸部7a2 が形成されている。そして、この各凸部7a2 は平面的に見て扇形状をしており、その外周面は、鉄芯部材6の脚部6b,6cの端面に対向している周面よりも小さい径位置に形成されている。また、この回転子7には一体的に出力歯車7bが形成されている。更に、相互に噛合している減速歯車8,9は、夫々基板1と枠部材5に軸受けされており、減速歯車8は出力歯車7bに、また減速歯車9は駆動リング4の歯部4bに噛合している。
【0014】
天板部5gの内面には、回転子7の上面に対向するようにして、磁性体部材10が圧入にて取り付けられている。接着など、その他の手段で取り付けても構わない。この磁性体部材10は、図4から分かるように、平面的には環状をしており、永久磁石7aの上面に対向させるようにして回転子7の軸方向へ延びた四つの張出部10aを90度間隔に形成しており、また、これらの張出部10aと同一角度位置にあって張出部10aに対して直角方向に延び、凸部7a2 の外周面と対向し得るようにして他の張出部10bを形成している。そして、これら各組の張出部10a,10bは、回転子7が鉄芯部材6との関係だけにおいて安定的に停止している状態において、永久磁石7aの隣接する磁極間に位置するように配置されている。
【0015】
次に、本実施例の作動を説明する。既に述べたように、本実施例は一眼レフカメラの自動絞り装置である。このような絞り装置の場合には、カメラの不使用時には、フォーカルプレンシャッタからの漏光防止対策として、絞り羽根3を出来るだけ絞り込むようにしておくのが普通である。図1はこのような状態を示しており、3枚の絞り羽根3によって開口部1aの殆どが閉鎖され、最小開口状態となされている。しかし、この状態において開口部1aが全閉となるように構成しても差し支えない。
【0016】
そこで、撮影に先立って電源スイッチを閉じると、周知のように二つの鉄芯部材6に巻かれた夫々のコイル6eにパルス電流が供給され、回転子7は図1において時計方向へ45度のステップで回転する。この回転は、出力歯車7b,減速歯車8,9を介して駆動リング4に伝えられ、駆動リング4は反時計方向へ回転される。このとき、絞り羽根3は駆動リング4のピン4aによって動かされるが、絞り羽根3のピン3aがカム溝2bに案内されて、光軸から徐々に遠ざかっていくため、3枚の絞り羽根3によって形成されている開口の大きさが徐々に大きくなり、やがて開口部1aを全開した状態で停止する。この状態が図3に示されている。従って、この状態では、ミラーによってファインダに導かれる被写体光が最大となるので、被写体像が見やすくなる。
【0017】
このようにして被写体像を捕らえ、シャッタをレリーズすると、シャッタが開閉走行を行う前に、ミラーのはね上げと相前後して、二つのコイル6eに電流が供給され、上記とは逆のパルス制御が行われる。従って、回転子7は反時計方向へ45度のステップで回転し、出力歯車7b,減速歯車8,9を介して駆動リング4を時計方向へ回転する。そのため、3枚の絞り羽根3は徐々に開口面積を絞り込み、所定の絞り開口位置で停止する。このときの停止位置、即ち絞り開口の大きさは、予め撮影者が選択する場合もあるし、測光回路によって自動的に決定される場合もある。その後、シャッタが開閉されるが、その作動が終了するとミラーが原位置へ復帰すると共にコイル6eに通電して回転子7を時計方向へ45度のステップで回転させ、絞り羽根3を図1の状態に復帰させ、一連の作動が終了する。
【0018】
本実施例の回転子7は、上記のようにして絞り羽根3を作動させるために、45度のステップで回転するが、その各ステップごとに確実に停止させることが可能である。即ち、本実施例のようにして磁性体部材10が設けられていない場合には、静的安定位置は4箇所であり、もしそれらの安定位置間で回転子7を停止させた場合には極めて不安定な状態であり、いずれか一方の安定位置へ回転させられてしまう。しかし、本実施例によれば、永久磁石7aの隣接する磁極には、それらの間に位置する磁性体部材10の張出部10a,10bとの間に、吸引力が等しく働くため、その位置で安定して停止することができる。
【0019】
そして、この場合の吸引力は、凸部7a2 の上面側と張出部10aとの間、凸部7a2 の外周面側と張出部10bとの間、鉄芯部材6の脚部6b,6cに対向する周面を有する円柱形状の平面部と張出部10bとの間に働くので、回転子7を確実に停止させることができる。尚、この場合、どちらかというと永久磁石7aの平面側よりも周面側からの磁力の方が強く作用するので、場合によっては張出部10aを形成せず、張出部10bだけを形成するようにしてもよい。また磁性体部材10は、環状ではなく円弧状にし、張出部10a,10bを2箇所又は3箇所に形成するだけでもよく、極端な場合1箇所でも構わない。
【0020】
このように、本実施例の場合には、45度のステップごとに回転子7を確実に停止させることができるから、従来のように90度ごとに停止させる場合より、理論的には絞り制御時間を約1/2にすることが可能となる。また、本実施例によれば、磁性体部材10の張出部10a,10bを鉄芯部材6よりも回転子7に近い位置に確実に配置することができるので、鉄芯部材6と回転子7との磁界には実質的に影響を及ぼさない。更に、上記のような磁性体部材10の配置により、回転子7自体には上方向即ち軸方向への吸引力が働くから、所謂ガタ寄せが行われ、回転子7に対し常に一定の条件での回転を行わせることも可能となる。
【0021】
尚、上記の実施例においては、回転子7が4極に着磁されているが、本発明は極数に限定されない。また、凸部7a2 は扇形状をしており、張出部10bとの対向面が周面になっているが、平面としても差し支えない。更に、実施例の回転子7は、永久磁石7aと出力歯車7bとを成形技術によって一体化しているが、本発明は、プラスチックに磁性粉を混入した材料で一体成形にて製作した回転子にも適用される。また、本発明はシャッタ開閉用の駆動装置としても、またレンズ繰り出し用の駆動装置としても適用することができるものである。
【0022】
【発明の効果】
上記のように、本発明は、複数極を有する永久磁石回転子と、少なくとも一つの磁極部にコイルを巻回した二つの鉄芯部材とを備え、該回転子を該二つの鉄芯部材の磁極部によって挟むように配置した小型のパルスモータであるにもかかわらず、各ステップごとに安定点が確実に得られるようにしたので、従来よりも制御時間を短くすることが可能となり、しかも構成が極めて簡単で低コストで製作できるという利点がある。また、磁性体部材を回転子の外周面より内側に配置することも可能であるため、スペース的にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を、自動絞りの駆動装置に適用した実施例の平面図であって、最小の絞り開口状態を示している。
【図2】図1の要部を一部展開状態で示した断面図である。
【図3】図1に示した自動絞り駆動装置の絞り全開状態を示す平面図である。
【図4】実施例におけるパルスモータの要部説明図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は側面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 補助基板
3 絞り羽根
4 駆動リング
5 枠部材
5g 天板部
6 鉄芯部材
6b,6c 脚部
7 回転子
7a 永久磁石
7a1 凹部
7a2 凸部
7b 出力歯車
10 磁性体部材
10a,10b 張出部
Claims (4)
- 径方向に複数極に着磁されており隣接する二つの磁極に跨がる所定の角度領域を残して円柱形の平面部に磁極ごとに凸部を形成し且つ該凸部の径方向の面を該円柱形の周面よりも回転軸方向に形成した永久磁石回転子と、各々複数の磁極部を有し少なくともその一つの磁極部にコイルを巻回し該複数の磁極部を前記円柱形の周面に所定の間隔で対向させるようにして前記回転子の両側に配置された二つの鉄芯部材と、前記回転子と一体的に回転する出力歯車と、前記回転子の静的安定位置において前記回転子の隣接する二つの磁極の中間位置であって前記円柱形の周面よりも回転軸方向の位置で前記凸部の径方向の面に対向し得るようにして配置された磁性体部材とを備えていることを特徴とするカメラの駆動装置用パルスモータ。
- 前記磁性体部材が、前記円柱形よりも小さい径の環状又は円弧状をしており、前記中間位置において前記凸部の径方向の面に対向し得るように張出部を形成していることを特徴とする請求項1に記載のカメラの駆動装置用パルスモータ。
- 前記磁性体部材が、前記中間位置において前記張出部とは直交し前記回転軸に向けて延びた他の張出部を形成していることを特徴とする請求項2に記載のカメラの駆動装置用パルスモータ。
- 前記磁性体部材が、前記回転子を軸受けしている部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカメラの駆動装置用パルスモータ。
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