JP3683086B2 - 高分子固体電解質 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は一次電池、二次電池、コンデンサーなどに用いられる高分子固体電解質に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来から、一次電池、二次電池、コンデンサーなどの電気化学素子には電解液が用いられてきた。しかしながら電解液は漏液が発生し、長期間の信頼性に欠けるという問題点がある。
【0003】
このような問題を解決する方法として、固体電解質を用いる方法が知られており、固体電解質を用いると漏液がなくなり信頼性の高い素子を提供できるとともに、素子自体の小型・軽量化が図れる。
【0004】
近年、固体の電解質として種々の高分子固体電解質が研究されている。高分子固体電解質は、可撓性を有するため電極−高分子固体電解質間のイオン電子交換反応過程で生じる体積変化にも柔軟に適用することができ、かつ上記のような固体電解質の特徴を有している。
【0005】
このような高分子固体電解質としては、ポリエーテル構造を有するポリエチレンオキサイドとリチウム塩などのアルカリ金属塩との複合体が知られている。
また、特開平5−25353号公報には、ポリオキシアルキレンのエステル化合物とジエステル化合物と、ポリメトキシオキシアルキレンのエステル化合物と、二重結合を持ったオキシ化合物との共重合体の架橋樹脂と無機塩とを主たる構成成分とする高分子固体電解質が記載されている。さらに、特開平6−223842号公報には、カーボネート基を官能基として有する有機高分子と金属塩からなる高分子固体電解質が記載されている。
【0006】
しかしながら固体電解質は、電解液に比べ一般的にイオン伝導度が低いため、放電特性に優れた一次電池および二次電池を得ることは困難であった。
このような状況の下、イオン伝導性が高く、かつ電気化学的安定性に優れるなどの要求を満たす高分子固体電解質の出現が望まれている。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、高いイオン伝導度を有し、しかも化学的に安定な高分子固体電解質を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】
本発明に係る高分子固体電解質は、
(1)ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物から誘導される構成単位を含むポリカーボネート(メタ)アクリレート重合体と、
(2)周期律表第Ia族の金属の塩とからなることを特徴としている。
【0009】
前記ポリカーボネートポリオールは、
(i)ジオール化合物と
(ii)3価以上の多価アルコールおよび3価以上の多価アルコールにアルキレンオキサイドが付加してなる多価アルコール付加物から選ばれるポリオール化合物と
(iii)カルボニル基含有化合物とを
重縮合させることにより得られるポリカーボネートポリオールであることが好ましい。
【0010】
また、前記ポリオール化合物は、3価以上の多価アルコールに水酸基数と同数以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加してなる多価アルコール付加物であることが好ましく、3価以上の多価アルコールとしてはトリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールが好ましい。
【0011】
【発明の具体的な説明】
以下、本発明に係る高分子固体電解質について具体的に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」という語は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」という語は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味するものである。さらに、本明細書において「重合」という語は、単独重合だけではなく、共重合をも包含した意味で用いられることがあり、「重合体」という語は単独重合体だけではなく、共重合体をも包含した意味で用いられることがある。
【0012】
[ポリカーボネートポリオール]
まず、本発明で使用されるポリカーボネートポリオールについて説明する。
本発明で使用されるポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合およびアルキレンオキサイド鎖を有し、かつ分子末端に水酸基を有するものである。
【0013】
このようなポリカーボネートポリオールには、分子構造により、(i)直鎖ポリカーボネートポリオールと(ii)架橋ポリカーボネートポリオールがある。
(i) 直鎖ポリカーボネートポリオール
(i)直鎖ポリカーボネートジオールは、ジオール化合物とカルボニル基含有化合物とを重縮合させることにより得られる。
【0014】
ジオール化合物としては、具体的にエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。これらは、単独または混合して使用してもよい。
【0015】
カルボニル基含有化合物としては、炭酸ジエステル、ホスゲンまたはクロロギ酸エステルが好ましく、炭酸ジエステルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステルなどが挙げられる。また、クロロギ酸エステルとしては、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどが挙げられる。
【0016】
直鎖ポリカーボネートポリオールは、上記のようなジオール化合物とカルボニル基含有化合物とを周知の方法で重縮合させることによって得ることができる。このとき、カルボニル基含有化合物は、ジオール化合物中の水酸基に対して0.2〜2当量、好ましくは0.5〜1.5当量であることが望ましい。
【0017】
(ii) 架橋ポリカーボネートポリオール
(ii)架橋ポリカーボネートポリオールは、ジオール化合物と、ポリオール化合物と、カルボニル基含有化合物とを重縮合させることにより得られる。
【0018】
ジオール化合物およびカルボニル基含有化合物としては、前記したものと同様のものが挙げられる。
ポリオール化合物としては、3価以上の多価アルコールまたは多価アルコール付加物から選ばれる化合物が挙げられる。
【0019】
3価以上の多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトールなどが挙げられる。
【0020】
また、多価アルコール付加物は、前記のような3価以上の多価アルコールに、アルキレンオキサイドが付加したものである。
本発明では、ポリオール化合物として、前記のような3価以上の多価アルコールに、水酸基数と同数以上、好ましくは1〜10倍数のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが付加したものが好ましく、3価以上の多価アルコールとしては、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールが好ましい。
【0021】
このようなポリオール化合物をトリメチロールプロパン付加物を例にとり説明すると、下記のような化合物が例示される。
【0022】
【化1】
【0023】
このようなポリオール化合物は2種以上混合して使用してもよい。
架橋ポリカーボネートポリオールは、上記のようなジオール化合物と、ポリオール化合物と、カルボニル基含有化合物とを周知の方法で重縮合させることによって得ることができる。このとき、ジオール化合物と、ポリオール化合物との仕込みモル比は、50:50〜99:1の範囲にあることが望ましい。また、カルボニル基含有化合物は、ジオール化合物およびポリオール化合物中の全水酸基に対して0.2〜2当量、好ましくは0.5〜1.5当量であることが望ましい。
【0024】
架橋ポリカーボネートポリオールでは、ジオール化合物とカルボニル基含有化合物とが重縮合する際に、ポリオール化合物が含まれているので、重縮合が3次元的に進み、架橋ポリカーボネートポリオールが得られる。
【0025】
本発明で使用される直鎖状または架橋ポリカーボネートポリオールの分子量は、GPCのポリスチレン換算重量平均分子量で300〜100000の範囲にあることが好ましい。
【0026】
[ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物]
次に、本発明で使用されるポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物について説明する。なお、本明細書では、ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物を、『ポリカーボネート(メタ)アクリレート』ということもある。
【0027】
このようなエステル化物の製造方法としては、以下▲1▼〜▲3▼の方法が挙げられる。
▲1▼上記ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸ハライドとを塩基存在下に縮合させる方法。
【0028】
この方法では、(メタ)アクリル酸ハライドを、ポリカーボネートポリオールの水酸基に対して0.2〜5当量、好ましくは0.5〜2当量となるように仕込むことが望ましい。また、反応に用いる塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などの有機塩基、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基を挙げることができる。このような塩基は、通常、(メタ)アクリル酸ハライドに対して、0.5〜5当量の量で使用される。このときの反応は、無溶媒で行うことも可能であるが、反応に不活性な溶媒、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類の存在下に反応を行ってもよい。反応温度は、通常、−20〜100℃、好ましくは−5〜50℃の範囲にあることが望ましい。
【0029】
▲2▼ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸無水物とを触媒存在下に縮合させる方法。
この方法では、(メタ)アクリル酸無水物を、ポリカーボネートポリオールの水酸基に対して0.2〜5当量、好ましくは0.5〜2当量となるように仕込むことが望ましい。また、反応に用いる触媒としては、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、あるいはピリジン、ジメチルアミノピリジンなどを挙げることができる。このような触媒は、通常、(メタ)アクリル酸無水物に対して、0.01〜0.5当量の量で使用される。この反応は、上記▲1▼と同様に、溶媒の存在下で行うことができる。
【0030】
反応温度は、通常、−5〜120℃、好ましくは25〜100℃の範囲にあることが望ましい。
▲3▼ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸とを酸触媒存在下に縮合させる方法。
【0031】
この方法では、(メタ)アクリル酸を、ポリカーボネートポリオールの水酸基に対して0.2〜10当量、好ましくは1〜5当量となるように仕込むことが望ましい。また、反応に用いる酸触媒としては、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などを挙げることができる。このような酸触媒は、通常、(メタ)アクリル酸に対して、0.01〜0.5当量の量で使用される。この反応は、平衡で水が生成するため、共沸脱水できる溶媒の存在下で行うことが好ましい。
【0032】
反応温度は、通常、25〜150℃、好ましくは50〜120℃の範囲にあることが望ましい。
上記▲1▼〜▲3▼の方法で、ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸とをエステル化する際に、重合禁止剤を使用してもよい。
【0033】
[高分子固体電解質]
本発明に係る高分子固体電解質は、前記エステル化物から誘導される構成単位を含むポリカーボネート(メタ)アクリレート重合体と、周期律表第Ia族の金属の塩とを含む。
【0034】
ポリカーボネート(メタ)アクリレート重合体としては、
▲1▼前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートの単独重合体、
▲2▼前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートの2種以上の共重合体、
▲3▼前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートと、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、
などが挙げられる。
【0035】
ポリカーボネート(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマーとしては、ビニルモノマー、ビニリデンモノマー、ビニレンモノマーなどがあり、特にビニルエステル、ビニルエーテル、(メタ)アクリル酸エステル、アリルエーテル、アリルエステルが好ましく、具体的には(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アリルアルコール、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、アクリロニトリル、シアノ酢酸ビニル、アリルアミン、イソプロピルアクリルアミドビニレンカーボネート、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0036】
このような他のモノマーは、ポリカーボネート(メタ)アクリレート重合体中に、通常0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%含まれていることが望ましい。
【0037】
周期律表第Ia族の金属塩としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3から選ばれる1種以上のLi塩が望ましい。
【0038】
本発明に係る高分子固体電解質では、周期律表第Ia族の金属塩が、高分子固体電解質の全重量に対し、1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲で含有されていることが好ましい。
【0039】
このような高分子固体電解質は、前記ポリカーボネート(メタ)アクリレートと周期律表第Ia族の金属塩と、必要に応じて重合可能な他のモノマーとの混合物を平坦な基板上に塗布し、紫外線、放射線の照射、または熱により一体重合させて製造することができる。
【0040】
紫外線照射により重合する場合には、光増感剤を用いることができ、このような光増感剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどを例示できる。また、熱により重合する場合には、熱重合開始剤を用いることができ、重合様式の違いにより過酸化ベンゾイル、パーオキシジカーボネートなどの過酸化物、2,2'-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、アルカリ金属などの求核試薬、ルイス酸などの求電子試薬を単独または併用して使用できる。また、本発明に係る高分子固体電解質は、ポリカーボネート(メタ)アクリレート重合体と周期律表第Ia族の金属塩との他に、炭酸エステルなどの非水溶媒を、ポリカーボネート(メタ)アクリレート重合体100重量部に対し、好ましくは0〜100重量部、特に好ましくは100〜700重量部含有していてもよい。非水溶媒を含有させる方法としては、たとえば、高分子固体電解質を製造する際、非水溶媒を共存させた状態で重合してもよく、また重合後に非水溶媒を含浸させてもよい。非水溶媒として炭酸エステルが好適に使用される。炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどが例示できる。
【0041】
本発明に係る高分子固体電解質は、イオン伝導性が高く、電気化学的に安定である。このような高分子固体電解質は、たとえば一次電池、二次電池、コンデンサー、エレクトロクロミック表示素子などの電気化学素子、医療用アクチュエーターなどに用いることができる。
【0042】
また、本発明に係る高分子固体電解質は、リチウムイオン二次電池の有機電解液の代替として使用することができる。さらに、粉末状電極材を集電体状に分散・固定するために用いる結着材としても利用することができる。
【0043】
このような高分子固体電解質を電池に使用する場合、高分子固体電解質をあらかじめフィルム状に成形し、正極と負極との間に挟み込むことによって、電池を製造することができる。
【0044】
また、正極、セパレーター、負極の3層構造を形成した後、電解液を含浸する工程を有する電池製造プロセスでは、電解液の代わりに、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと周期律表第Ia族の金属塩と非水溶媒とからなる溶液を含浸し、その後重合させることが可能であり、プロセスの改造を最小限に抑えることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係る高分子固体電解質は、ポリカーボネート(メタ)アクリレート重合体を高分子マトリックスとして含んでいるため、イオン伝導性が高く、電気化学的に安定であり、たとえば一次電池、二次電池、コンデンサー、エレクトロクロミック表示素子などの電気化学素子、医療用アクチュエーターなどに用いることができる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【合成例1】
攪拌機、温度計および精留塔等を装備したガラス反応容器に、トリメチロールプロパン・エチレンオキサイド付加物(トリメチロールプロパン1モルに酸化エチレン3モルを付加させた化合物、日本乳化剤品)6.66g(0.025モル)と、ジエチレングリコール23.9g(0.225モル)と、炭酸ジメチル22.5g(0.25モル)と、触媒として28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.095g(ナトリウムメトキシドメタノールが0.0005モル)との混合物を充填した。混合物を、常圧下95℃で2時間保持し、5時間で150℃まで昇温したのち、150℃で4時間加熱して、生成するメタノールを留去しながら、重縮合反応を行った。さらに、反応液を5mmHgの減圧下で、150〜155℃に保ち、重縮合反応に伴って生成するジエチレングリコール4.2gを留去した。
【0048】
反応後の反応液を室温まで冷却した後、クロロホルム50mlと活性白土1gを添加し、55℃で1時間攪拌した。再び室温まで冷却した後、活性白土をろ過し、ろ液を濃縮して、粘稠オイル状のポリカーボネートポリオール24.5gを得た。得られたポリカーボネートポリオールのGPCによる重量平均分子量は4400であった。
【0049】
次いで攪拌機、温度計および滴下ロート等を装備したガラス反応容器に、ポリカーボネートポリオール24.5gと、トリエチルアミン14.9g(0.147モル)と、ジクロロメタン100mlとを充填し、5℃に冷却した。滴下ロートからメタクリロイルクロリド12.8g(0.123モル)を10分かけて滴下し、さらに5℃で1時間攪拌した。徐々に室温まで昇温し、室温でさらに2時間攪拌した。反応液をろ過し、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮することによって、粘稠オイル状のポリカーボネートメタクリレート22.1gを得た。
【0050】
得られたポリカーボネートメタクリレートの1H-NMRチャートを図1に示す。
【0051】
【合成例2】
攪拌機、温度計および精留塔等を装備したガラス反応容器に、ジエチレングリコール26.5g(0.25モル)と、炭酸ジメチル22.5g(0.25モル)と、触媒として28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.095g(0.0005モル)との混合液を充填し、常圧下95℃で2時間保持し、その後5時間で150℃まで昇温し、さらに150℃で4時間加熱して、生成するメタノールを留去しながら、重縮合反応を行った。次いで、反応液を、5mmHgの減圧下で、150〜155℃に保ち、重縮合反応に伴って生成するジエチレングリコール3.2gを留去した。
【0052】
反応後の反応液を室温まで冷却した後、クロロホルム50mlと活性白土1gを添加し、55℃に昇温して1時間攪拌した。再び室温まで冷却した後、活性白土をろ過し、ろ液を濃縮することにより粘稠オイル状のポリカーボネートジオール26.4gを得た。得られたポリカーボネートジオールのGPCの重量平均分子量は810であった。
【0053】
次に、攪拌機、温度計および滴下ロート等を装備したガラス反応容器に、上記ポリカーボネートジオール26.4g、トリエチルアミン16.0g(0.158モル)およびジクロロメタン100mlを充填し、5℃に冷却した。滴下ロートからメタクリロイルクロリド13.8g(0.132モル)を10分かけて滴下し、さらに5℃で1時間攪拌した。徐々に室温まで昇温し、室温でさらに2時間攪拌した。反応液をろ過し、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮することによって、粘稠オイル状のポリカーボネートメタクリレート27.3gを得た。
【0054】
得られたポリカーボネートメタクリレートの1H-NMRチャートを図2に示す。
【0055】
【合成例3】
合成例2において、メタクリロイルクロリド13.8g(0.132モル)の代わりに、アクリロイルクロリド11.9g(0.132モル)を用いた以外は合成例2と同様にして、ポリカーボネートアクリレートの合成を行ったところ、粘稠オイル状のポリカーボネートアクリレート27.1gが得られた。
【0056】
得られたポリカーボネートアクリレートの1H-NMRチャートを図3に示す。
【0057】
【実施例1】
合成例1で製造したポリカーボネートメタクリレート22.2重量部、プロピレンカーボネート66.6重量部、LiPF611.3重量部とを混合し、パーロイルIPP−50(日本油脂(株)製)をポリカーボネートメタクリレート中の重合性二重結合の含量に対し2モル%となるように添加して均一にした溶液を、不活性ガス雰囲気中、ガラス板上にキャストし、ホットプレート上70℃で30分間熱硬化させ、厚さ約0.5mmの高分子固体電解質を製造した。
【0058】
得られた高分子電解質を10mmφの円盤状に打ち抜き、伝導度測定ホルダーに設けられた電極に挟み、この電極をペルチェ素子により25℃にコントロールしてインピーダンスアナライザー(HP4285A)で複素インピーダンス測定(測定電圧10mV)を行い、解析的にイオン伝導度を求めた。
【0059】
結果を表1に示す。
【0060】
【実施例2】
合成例2で製造したポリカーボネートメタクリレート25重量部と、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合溶媒(重量比1:1)にLiPF6を1モル/lの濃度で溶解した電解液75重量部とを混合し、パーロイルIPP−50を、ポリカーボネートメタクリレート中の重合性二重結合の含量に対し2モル%となるように添加して均一にした溶液を不活性ガス雰囲気中で、ガラス板上にキャストし、ホットプレート上70℃で30分硬化させ、厚さ約0.5mmの高分子固体電解質を製造した。
【0061】
得られた高分子固体電解質について、実施例1と同様にして複素インピーダンス測定(測定電圧10mV)を行い、イオン伝導度を求めた。
結果を表1に示す。
【0062】
【実施例3】
実施例2において、合成例2で製造したポリカーボネートメタクリレートの代わりに、合成例3で製造したポリカーボネートアクリレートを使用して実施例2と同様にして高分子固体電解質を製造した。
【0063】
得られた高分子固体電解質を実施例1と同様にして複素インピーダンス測定(測定電圧10mV)を行い、イオン伝導度を求めた。
結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】 合成例1で得られたポリカーボネートメタクリレートの1H−NMRチャートを示す。
【図2】 合成例2で得られたポリカーボネートメタクリレートの1H−NMRチャートを示す。
【図3】 合成例3で得られたポリカーボネートアクリレートの1H−NMRチャートを示す。
Claims (4)
- (1)ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物から誘導される構成単位を含むポリカーボネート(メタ)アクリレート重合体であり、
(i) ポリカーボネートポリオールが、ジオール化合物とカルボニル基含有化合物とから得られた直鎖ポリカーボネートジオールであるか、あるいは (ii) ジオール化合物と、ポリオール化合物と、カルボニル基含有化合物とから得られた架橋ポリカーボネートポリオールであり、
(2)周期律表第Ia族の金属の塩とを含むことを特徴とする高分子固体電解質。 - 前記ポリカーボネートポリオールが、
(i)ジオール化合物と(ii)3価以上の多価アルコールおよび3価以上の多価アルコールにアルキレンオキサイドが付加してなる多価アルコール付加物から選ばれるポリオール化合物と(iii)カルボニル基含有化合物とを重縮合させることにより得られるポリカーボネートポリオールであることを特徴とする請求項1に記載の高分子固体電解質。 - 前記ポリオール化合物が、3価以上の多価アルコールに水酸基数と同数以上のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加してなる多価アルコール付加物であることを特徴とする請求項2に記載の高分子固体電解質。
- 前記3価以上の多価アルコールが、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールであることを特徴とする請求項3に記載の高分子固体電解質。
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