JP3682900B2 - 薬液注入ポート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、進行癌患者の化学療法における抗癌剤の動脈内注入、栄養補給のための静脈注入、鎮痛のための髄硬膜等への鎮痛剤の投与、糖尿病患者へのインシュリン投与等の如く、患者の体内の特定箇所に長期間継続して、定期的に薬液を注入するための、皮下埋め込み可能な薬液注入システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
切除不能な悪性腫瘍に対しては、抗癌剤投与による化学療法が行われているが、全身投与法では副作用を生じるため、選択的投与法としてカテーテル先端を腫瘍局所へ通じる動脈上流に留置し、端末を抗癌剤注入口として体外に露出させたままにするか、或は抗癌剤投与の都度カテーテルを再挿入していた。(動注化学療法)また、高カロリー輸液の持続注入の場合にも、カテーテル先端を中心静脈内に留置し、端末を輸液注入口として体外に露出させていた。(IVH)
このためカテーテルを挿入した皮膚創部からの感染の防止は懸案課題であるが、一方皮膚創部を常に清潔に保つことは実生活上は極めて困難であり、かつ患者の自由な行動や入浴等にも制約があり、社会復帰に大きな妨げとなっていた。
【0003】
このような問題の解決手段として、体内に長期間留置した状態で使用可能な皮下埋込型のカテーテル組立体が開発されている。このカテーテル組立体とは薬液を貯留するための内部空間と、この内部空間に連通する円柱形の弾性体を抑え部により圧縮装着した薬液注入口、およびコネクターが付設された薬液流出路を有するポート本体と、薬液注入用のルーメンが形成されたカテーテルとを、流出路にルーメンが連通するようにコネクターにカテーテルを接続したものである。
【0004】
本皮下埋込型カテーテル組立体は、カテーテルを目的の血管内等まで挿入し、薬液注入ポートを皮下組織に固定した状態で留置される。そして、薬液を注入する際は、皮膚の上から触診により薬液注入ポートの薬液注入口を確認し、薬液注入口の弾性体を注射針にて穿刺することにより薬液をポート本体内に送り込み、カテーテルを介して目的の血管内等へ薬液を注入する。薬液注入ポートは前述のように皮下に埋設された弾性体に盲目的に注射針が穿刺されるため、より穿刺部径が広いものが求められていた。
【0005】
しかしながら、穿刺部径の大きさとポートの耐圧とは相反関係にあり、造影剤注入や高粘度の薬液注入時等のポート内圧が高めの場合でも耐圧を保持するのはもちろんのこと、接続されるカテーテルが閉塞や折れ曲がりの状態に陥り、その際に薬液注入を行うことにより発生する10kg/cm2あまりの内圧に対しても耐えうることが必要であり、むやみに穿刺部径を広くすることができなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のこのような問題点を解消することを目的とするもので、従来品レベルの耐圧を保持しながら従来品よりも広い穿刺部面積を確保でき安全に注射針を穿刺できる安全な薬液注入ポートを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、薬液を貯留するための内部空間と、内部空間に連通する薬液注入口と、薬液注入口を封止する弾性体と、弾性体を上部より圧縮固定する抑え部と、内部空間に連通する薬液流出路とを有し、薬液流出路先にコネクターを備えた薬液注入ポートであって、弾性体外周に、熱変形温度の高い樹脂または金属から構成される保持リングが一体成形され、かつ、保持リング外径が抑え部内径(=穿刺部径)よりも大きくなっていることを特徴とする薬液注入ポートである。また、前記弾性体と、前記抑え部とが一体成形品である薬液注入ポートである。
さらには、抑え部内側に弾性体との接合強度を増すためのアンカーが設置されている薬液注入ポートである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面をもとに本発明について詳細に説明する。図1は本発明による薬液注入ポートの一実施例を示す図で、図2は本発明による薬液注入ポートの弾性体を示す図であり、図3は本発明による薬液注入ポートに使用する保持リングを示す図である。
【0009】
図1の如く本発明の薬液注入ポートの本体(1)は薬液を貯留するための内部空間(5)を有し、抑え部(2)で圧縮固定された弾性体(3)により封止された薬液注入口(4)を有し、更に一半径方向に薬液流出路(6)が設けてありその先にカテーテルを接続するためのコネクター(7)が付設されている。本体(1)、抑え部(2)の材質としては、生体内に長期留置することより生体適合性に優れていることが必要で、しかも熱変形温度が体温の約2倍である70℃以上であることが望ましく例えばポリウレタン、ポリエーテルスルフォン、シリコーンゴム等の樹脂やステンレス、チタニウム等の金属、或いはこれらの組合せでも何ら構わない。
【0010】
また、弾性体(3)は図2に示すように外周内部に保持リング(8)がインサートされており、その製作方法は例えば予め成形、または加工された保持リング(8)を弾性体(3)を作製する金型に装着し弾性体(3)を成形するインサート成形が一般的である。なお、保持リング(8)は図3の(a)、(b)に示すように窓部(9)を設けておくことにより弾性体(3)との分離が弾性体(3)の破断により行われることになり接合強度が上がるため望ましい。弾性体(3)の材質としては、自己封止性を有する弾性状物質であり、例えばシリコーン、イソプレーン、ラテックス等のゴムが考えられるが軟質の塩化ビニルやポリウレタン樹脂でも針刺し耐久性および生体適合性に優れていれば使用可能である。
【0011】
そして保持リング(8)の材質としては、前記弾性体(3)の成形時の温度や圧力に耐えうることが絶対条件であり、例えばポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアセタール等の硬質かつ熱変形温度の高い樹脂やステンレス、チタニウム等の金属、或いはこれらの組合せにより選択される。また、保持リング(8)の外径は前記抑え部(2)の内径よりも大きく設計されておりポート内にかかりうる内圧では保持リング(8)は脱落しない。
【0012】
更にコネクター(7)の材質としては、強度的にステンレスやチタニウム等の金属が望ましいが限定されるものではない。薬液注入ポートは以上の構成部品をインサート成形や接着及び溶着等により組み立てられる。
また、図面をもとに本発明の別法についても詳細に説明する。図4は本発明による薬液注入ポートの一実施例を示す図で、図5は本発明による薬液注入ポートに使用する抑え部と弾性体との一体品を示す図であり、図6は本発明による薬液注入ポートに使用する抑え部を示す図である。
【0013】
図4の如く本発明の薬液注入ポートの構成に関しては前述と同様であるが、弾性体(3)は図6に示すように抑え部(2)と一体となっており、その製作方法についても同様に例えば予め成形、または加工された抑え部(2)を弾性体(3)を作製する金型に装着し弾性体(3)を成形するインサート成形が考えられ、本体(1)、弾性体(3)、コネクター(7)の材質としては先の実施例と同様であるが抑え部(2)の材質としては先の実施例の保持リング(8)と同様となる。
【0014】
なお、抑え部(2)の内側に一体もしくは別部品のアンカー(10)を備え、弾性体(3)との接合強度を物理的に上げることも望ましい実施例の一つであり、アンカー(10)の形状も特に限定されないが、弾性体(3)との分離が剥離のみでは行われずに、弾性体(3)の破断をもってはじめて分離されるよう窓部(9)が設けられている形状であることが双方の接合強度を増すことができるのでより望ましい。 次に使用方法について述べる。薬液注入ポートは皮下脂肪層と筋膜層の間に埋め込まれ、皮膚の上から触診により薬液注入口(4)を確認し、薬液注入口(4)の弾性体(3)を注射針にて穿刺することにより薬液をポート本体内に送り込み、接続カテーテルを介して目的の血管内等へ薬液を注入する。
【0015】
【発明の効果】
以上に述べた如く、本発明による薬液注入ポートは、穿刺部径が大きいため針刺しミスを減らすことができ、より安全に選択的薬液注入が行える用具として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例となる薬液注入ポートを示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施例となる薬液注入ポートの弾性体を示す側断面図である。
【図3】本発明の他の実施例となる薬液注入ポートの保持リングを示す側断面図および上面図である。
【図4】本発明の別法の一実施例となる薬液注入ポートを示す側断面図である。
【図5】本発明の別法の一実施例となる薬液注入ポートに使用される抑え部と弾性体の一体成型品を示す側断面図である。
【図6】本発明の別法の他の実施例となる薬液注入ポートに使用される抑え部を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 本体
2 抑え部
3 弾性体
4 薬液注入口
5 内部空間
6 薬液流出路
7 コネクター
8 保持リング
9 窓部
10 アンカー
Claims (3)
- 薬液を貯留するための内部空間と、内部空間に連通する薬液注入口と、薬液注入口を封止する弾性体と、弾性体を上部より圧縮固定する抑え部と、内部空間に連通する薬液流出路とを有し、薬液流出路先にコネクターを備えた薬液注入ポートであって、弾性体外周に、熱変形温度の高い樹脂または金属から構成される保持リングが一体成形され、かつ、保持リング外径が抑え部内径(=穿刺部径)よりも大きくなっていることを特徴とする薬液注入ポート。
- 前記弾性体と、前記抑え部とが一体成形品である請求項1に記載の薬液注入ポート。
- 抑え部内側に弾性体との接合強度を増すためのアンカーが設置されている請求項2に記載の薬液注入ポート。
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