JP3682831B2 - 双頭型研削盤およびその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二つの砥石台をもち数値制御される双頭型NC研削盤の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来からクランクシャフトやカムシャフトなど複数の被研削個所をもつ工作物を能率良く研削加工するために、二つの砥石台を持つ数値制御式の双頭型研削盤が使用されている。
通常、研削盤では、主軸方向と直交する方向の砥石台の送りを主軸の回転に同期させて制御することによって、主軸に保持された工作物に所望の加工形状を与えることができる。ここで、各被研削個所に所望の加工形状を与えるために、各被研削個所についてそれぞれ回転位相角に対応して砥石台の送り位置を指定するプロフィル値データが用意される。さらに、各被研削個所の主軸回転中心からの遠近に応じて砥石台の送り速度が変動するので、砥石台の送り速度や加速度が大きくなりすぎて加工精度の劣化を生じないようにする必要がある。そこで、主軸の回転速度をその回転位相角に応じて制限するオーバライド値データが用意され、砥石台の送り速度や加速度が所定の限界を越えないように、回転位相角に該当するオーバライド値に従って主軸の回転速度が制限される。
【0003】
ところが双頭型研削盤においては、並行して研削される二つの被研削個所のそれぞれについてプロフィル値データおよびオーバライド値データが存在する。それゆえ、単一の主軸のオーバライド値データについては、二つのオーバライド値データが存在するので、オーバライド値データをいかに設定するかは数値制御プログラムの設計者の手にゆだねられる。
【0004】
最も安易なオーバライド値データの設定の仕方は、二つのオーバライド値データのうち最低値を選んできて、回転位相角に関して一定の低いオーバライド値を設定することである。このようにして低いオーバライド値が回転位相角によらず一律に設定されていれば、砥石台の送り速度や加速度は所定の限界値を超えることがないので、加工精度を劣化させることなく二つの被研削個所を並行して加工することが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなオーバライド値データの設定の仕方では、主軸の回転速度が一律に低速に抑制されているので研削加工に時間がかかり、能率よく短時間で研削加工を完了することができない。そもそも双頭型研削盤を開発した目的は、能率良く短時間で複数の被研削個所をもつ工作物を加工し終えることであるから、能率よく短時間で研削加工を完了することができないのでは所期の目的を十分に達成することができない。
【0006】
そこで発明者らは、数値制御式の双頭型研削盤を試作するにあたり、加工能率を向上させるために、当初、二つの被研削個所のうち一方のオーバライド値データをもって主軸の回転速度を設定することを試みた。すなわち、図5に示すように、第一砥石台に関するオーバライド値と第二砥石台に関するオーバライド値とのうち、前者を採用して主軸の回転速度を制御してみた。すると、同図の右側に示すように、第一砥石台の砥石台送り速度は当然適正な範囲に収まっているが、第二砥石台の砥石台送り速度は適正な範囲を逸脱してしまい、加工精度に重大な劣化を生じることを発見した。
【0007】
そこで本発明は、このような発見に基づいて、加工精度の低下をきたすことなく能率的に二つの被研削個所を並行して研削加工することができる双頭型研削盤およびその制御方法を提供することを解決すべき課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、発明者は以下の手段を発明した。
(第1手段)
本発明の第1手段は、
複数の被研削個所をもつ工作物を保持して回転させる主軸と、
それぞれに回転砥石をもち独立して制御され得る二つの砥石台と、
該工作物の各該被研削個所についてのプロフィル値データおよびオーバライド値データを記憶する記憶手段をもち該主軸および両該砥石台を数値制御する制御装置と、
を有する双頭型研削盤において、
前記制御装置は、指定された二つの前記被研削個所に関する両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して複合オーバライド値とし、該複合オーバライド値に基づいて前記主軸の回転速度を制御することを特徴とする双頭型研削盤である。
【0009】
本手段では、制御装置が、指定された二つの被研削個所に関する両オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して複合オーバライド値とする。そして制御装置は、この複合オーバライド値に基づいて主軸の回転速度を制御するので、主軸のオーバライド値(複合オーバライド値)の元の両オーバライド値からの低下は、最低限に抑制される。ここで、複合オーバライド値は両砥石台に関する各オーバライド値のうち小さい方が選択されて設定されている。それゆえ、主軸の回転速度は、いずれの砥石台の送り速度や加速度の限界をも越えることがない範囲に収まっているので、研削加工に際して加工精度の低下をきたすことがない。また、主軸の回転速度は、いずれの砥石台の送り速度や加速度の限界をも越えることがない範囲で、できるだけ速い回転速度に設定されている。その結果、本手段の双頭型研削盤は、能率的に二つの被研削個所を並行して研削することができる。
【0010】
したがって、本手段の双頭型研削盤によれば、加工精度の低下をきたすことなく、能率的に二つの被研削個所を並行して研削加工することができるという効果がある。
(第2手段)
本発明の第2手段は、
複数の被研削個所をもつ工作物を保持して回転させる主軸と、それぞれに回転砥石をもち独立して制御され得る二つの砥石台と、該工作物の各該被研削個所についてのプロフィル値データおよびオーバライド値データを記憶する記憶手段をもち該主軸および両該砥石台を数値制御する制御装置とを有する双頭型研削盤を制御する方法であって、
指定された二つの前記被研削個所に関する両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して前記主軸の回転速度を制御することを特徴とする双頭型研削盤の制御方法である。
【0011】
本手段では、指定された二つの被研削個所に関する両オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方が選択され、複合オーバライド値として設定される。そして、この複合オーバライド値に基づいて主軸の回転速度が制御されるので、主軸のオーバライド値(複合オーバライド値)の元の両オーバライド値からの低下は、最低限に抑制される。ここで、複合オーバライド値は両砥石台に関する各オーバライド値のうち小さい方が選択されて設定されている。それゆえ、主軸の回転速度は、いずれの砥石台の送り速度や加速度の限界をも越えることがない範囲に収まっているので、研削加工に際して加工精度の低下をきたすことがない。また、主軸の回転速度は、いずれの砥石台の送り速度や加速度の限界をも越えることがない範囲で、できるだけ速い回転速度に設定されている。その結果、主軸の回転速度の低下が比較的少ないので、能率的に二つの被研削個所が並行して研削される。
【0012】
したがって、本手段の双頭型研削盤の制御方法によれば、加工精度の低下をきたすことなく、能率的に二つの被研削個所を並行して研削加工することができるという効果がある。
(第3手段)
本発明の第3手段は、前述の第2手段において、両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して得られる複合オーバライド値を各前記位相角毎に求めて複合オーバライド値データとしていったん記憶し、しかる後、該複合オーバライド値データに基づいて前記主軸の回転速度を制御する双頭型研削盤の制御方法である。
【0013】
本手段では、指定された二つの被研削個所に関する両オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち、小さい方が選択されて複合オーバライド値とされる。そして、複合オーバライド値は各位相角毎に求められて複合オーバライド値データとしていったん記憶される。しかる後、この複合オーバライド値データに基づいて主軸の回転速度が制御されつつ、二つの砥石台によって二ヶ所の被研削個所が並行して研削加工される。
【0014】
それゆえ本手段では、指定された二つの被研削個所を研削する前に、その二つの被研削個所に関してのみ複合オーバライド値が各位相角について設定され、複合オーバライド値データとして記憶される。しかる後、指定された二つの被研削個所が研削加工されるが、研削加工に際しては、RAM等の記憶手段から複合オーバライド値データが順に読み出されるだけであるので、プロセッサに対して高速演算の要求があまりない。また、記憶手段もワンセットの複合オーバライド値データを記憶しておくだけであるので、記憶容量があまり大きいことは要求されない。すなわち本手段では、演算手段にも記憶手段にもあまり高い能力は要求されない。
【0015】
したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、比較的安価な演算手段および記憶手段が使用できるので、双頭型研削盤の制御装置を安価に構成することができるという効果がある。
(第4手段)
本発明の第4手段は、前述の第2手段において、予め前記被研削個所の特定の組み合わせについて指定し、該特定の組み合わせに関する両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して得られる複合オーバライド値を各前記位相角毎に求めて複合オーバライド値データセットとして記憶しておき、しかる後、該複合オーバライド値データセットのうち指定された二つの該被研削個所の組み合わせに該当する複合オーバライド値データを読み出して前記主軸の回転速度を制御する双頭型研削盤の制御方法である。
【0016】
本手段では、研削加工を始める前に、予め前記被研削個所の予想される全ての組み合わせに関する複合オーバライド値を各位相角毎に求められ、予想される全ての組み合わせに関する複合オーバライド値データセットが記憶される。それゆえ、被研削個所を変更する毎に複合オーバライド値データを演算する必要がなく、新たな二つの被研削個所に関する複合オーバライド値データが複合オーバライド値データセットから読み出されるだけで主軸の回転速度が設定される。その結果、記憶手段にはある程度の大容量が要求され、また、短時間で研削加工を開始するためには演算手段にもある程度高速性が要求される。しかしながら、予め前記被研削個所の予想される全ての組み合わせに関する複合オーバライド値データセットが記憶手段に用意されているので、任意の二つの被研削個所の切削にあたり、記憶手段から該当する複合オーバライド値データを読み出すだけでよい。それゆえ、ある二つの被研削個所の研削加工を終えた後、すぐさま新たな二つの被研削個所の研削加工に取りかかることができる。
【0017】
したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、研削加工に取りかかってしまえば途中に演算等のための時間を要することなく、次々に研削加工を行うことができるという効果がある。この効果は、特に同一の工作物を連続して研削加工する場合には顕著であり、さらに被研削個所の組み合わせを変えて同一の工作物を連続して研削加工する場合にはいっそう顕著である。
【0018】
(第5手段)
本発明の第5手段は、前述の第2手段において、両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して得られる複合オーバライド値を各位相角毎にリアルタイムで求め、該複合オーバライド値に基づいて前記主軸の回転速度を制御する双頭型研削盤の制御方法である。
【0019】
本手段では、指定された二つの被研削個所を並行して研削加工するにあたり、位相角毎に複合オーバライド値がリアルタイムで求められて、主軸の回転速度および各砥石台の送り速度が制御される。それゆえ、演算手段には研削加工中における主軸の最大回転速度においてもリアルタイムで複合オーバライド値等を求めることができるだけの高速性が求められる。しかし、現在のMPUの演算速度をもってすれば、この程度の高速性は容易に達成される。また、このような高速の演算手段の価格は低廉化の一途をたどりつつあり、双頭型研削盤の全体価格に占める割合は小さいので、双頭型研削盤を高価にする様なことはない。さらに、記憶手段の容量も最低限で済むので、この点では経済的である。
【0020】
そればかりではなく、工作物の種類が毎回変更されても、全く待ち時間なしに次々と能率良く研削加工を進めることができる。
したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、工作物の種類が毎回変更されても全く待ち時間なしに次々と能率良く研削加工を進めることができ、最も柔軟性に富む運用が可能になるという効果がある。
【0021】
(第6手段)
本発明の第6手段は、前述の第2手段ないし第5手段において、両前記砥石台のうち前記オーバライド値が低減された方について、理想的な送り位置を規定する前記プロフィル値データと該プロフィル値データによって送られる各該砥石台の実際の送り位置との誤差を補正する補正データを、前記各位相角に相当するそれぞれの前記オーバライド値のうち小さい方を大きい方で除算した比率に比例して再設定して複合補正データとし、該複合補正データに基づいて両該砥石台の送り制御を行う双頭型研削盤の制御方法である。
【0022】
本手段では、各砥石台について補正データが用意されている場合に、新たに設定された複合オーバライド値に基づいて、補正データが新たな複合オーバライド値に適合するように複合補正データとして再設定される。すなわち、オーバライド値が低減された場合には、その低減の割合に応じて補正データが再設定される。その結果、補正データが適正に再設定されて複合補正データとされ、複合補正データに基づいて砥石台の送りが行われるので、砥石台の送り位置がより理想的なプロフィル値データに近くなる。換言すれば、オーバライド値が複合オーバライド値として再設定されたことに伴う補正データの狂いが適正に修正されるので、二つの被研削個所を同時に研削加工しても、一箇所ずつ被研削個所を研削加工したのと同程度の研削加工精度が得られる。
【0023】
したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、より精密に双頭型研削盤による研削加工が行われるという効果がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の双頭型研削盤およびその制御方法の実施の形態については、当業者に実施可能な理解が得られるよう、以下の実施例で明確かつ十分に説明する。
[実施例1]
(実施例1の双頭型研削盤)
本発明の実施例1としての双頭型研削盤は、図1に示すように、複数の被研削個所をもつ工作物Wを保持して回転させる主軸34と、それぞれに回転砥石311,321をもち独立して制御され得る二つの砥石台31,32と、工作物Wの各被研削個所についてのプロフィル値データおよびオーバライド値データを記憶する記憶手段としてのRAMをもち主軸34および両砥石台31,32を数値制御する制御装置1とを有する。制御装置1は、指定された二つの被研削個所に関する両オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して複合オーバライド値とし、この複合オーバライド値に基づいて主軸34の回転速度を制御する。
【0025】
本実施例の双頭型研削盤の構成について以下により詳しく説明する。
本実施例の双頭型研削盤は、二つの砥石台31,32をもった研削盤3と、研削盤3を制御する制御装置1と、制御装置1に付帯し制御装置1への入力および研削盤3のモニタを行う操作盤2とからなる。
研削盤3は、ベッド30’上に設けられた主軸34と主軸34を駆動するモータとをもつ主軸台33と、主軸34に対向して工作物Wを主軸34に同軸に支持する心押台35と有する。研削盤3はまた、砥石台テーブル30上に設けられた一対の回転砥石台31,32を有する。主軸34は、制御装置1から信号を受け取るドライブユニット6によってモータ駆動される。
【0026】
研削盤3はまた、一対の回転砥石311,321をそれぞれに搭載し回転駆動する二つの砥石台31,32を有する。砥石台31,32は、それぞれドライブユニット51,52に駆動されるモータにより、水平なZ軸方向(図中左右方向)に独立して移動可能である。砥石台31,32はまた、それぞれドライブユニット41,42に駆動されるモータにより、Z軸に直交して水平なX軸方向(図中前後方向)に独立して移動可能である。すなわち、二つの砥石台31,32は、主軸34の回転と同期を取りつつ、それぞれの回転砥石311,321をX軸方向に送ったり戻したりして工作物Wの研削加工を行う。
【0027】
制御装置1は、演算手段としてのCPU10と、記憶手段としてのRAM11と、制御プログラムを内蔵したROM12と、CPU10と研削盤3および操作盤1とをそれぞれ互いに連絡する二つのインターフェース13,14とを有する。
RAM11には、プロフィル値データ領域111およびオーバライド値データ領域112が形成されており、それぞれに工作物Wの各被研削個所毎のプロフィル値データおよびオーバライド値データが記憶されている。RAM11にはまた、指定された二ヶ所の被研削個所に関する複合オーバライド値データを記憶するように、複合オーバライド値データ113が形成されている。図示されてはいないが、RAM11にはさらに、各被研削個所に対応する補正データが記憶されている補正データ領域と、指定された二ヶ所の被研削個所に関して補正された複合補正データが記憶される複合補正データ領域とが形成されている。
【0028】
操作盤2は、操作員が工作物Wに関するデータセットをフレキシブルディスク等により入力し、指定した順番で二ヶ所ずつ工作物Wの被研削個所を研削する手順等を入力することができるパネルである。操作盤2には、ディスプレイが装備されており、同ディスプレイを通して操作員は入力の確認や動作状態のモニタを行うことができる。
【0029】
(実施例1の制御方法)
本実施例の双頭型研削盤の制御方法は、前述のように、複数の被研削個所をもつ工作物Wを保持して回転させる主軸34と、それぞれに回転砥石311,321をもち独立して制御され得る二つの砥石台31,32と、工作物Wの各被研削個所についてのプロフィル値データおよびオーバライド値データを記憶する記憶手段としてのRAM11をもち主軸34および両砥石台31,32を数値制御する制御装置1とを有する双頭型研削盤を制御する方法である。
【0030】
本実施例の制御方法では、図2に示すように、指定された二つの被研削個所に関する両オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して複合オーバライド値を設定する。すなわち、処理ステップS1,S2で、主軸34(図1参照)の各位相角に対応する指定された二つの被研削個所に関する各オーバライド値データ一式を読み込む。そして、処理ステップS3で、それぞれのオーバライド値のうち小さい方が選択され複合オーバライド値として設定される。すなわち、複合オーバライド値が各位相角毎に求められて、複合オーバライド値データとしてまとめられ、いったんRAM11に記憶させる。
【0031】
しかる後、RAM11に記憶された複合オーバライド値データから主軸34の位相角に対応する複合オーバライド値が読み出され、主軸34の回転速度が制御される。すなわち、基準となる研削速度を100%とすると、100%以下の各複合オーバライド値に対応した回転速度に主軸34の回転速度が調整される。
以上の作用は、図3に示すように、二つの表T1,T2に収容された各オーバライド値のうち小さい方(太字の方)を選定して、複合オーバライド値を設定して主軸34の回転速度を制御することに等しい。ここで、二つの表T1,T2には、主軸34の位相角(主軸角度)0.5°毎に、主軸台31,32の理想的な送り位置を指定するプロフィル値とオーバライド値とが収容されている。
【0032】
すなわち、処理ステップS31では、第一砥石台31のプロフィル値データおよびオーバライド値データが読み出される。続く処理ステップS32では、第二砥石台32のプロフィル値データおよびオーバライド値データが読み出される。そして処理ステップS33では、主軸34の各位相角に対応するオーバライド値のうち小さい値の方(太字の方)が複合オーバライド値として選択され、主軸34の各位相角に対応する複合オーバライド値データの表(図略)が作成される。しかる後、処理ステップS34で、複合オーバライド値に基づいて主軸34が速度制御されつつ、回転駆動される。
【0033】
実際の各被研削個所毎に設定されている表には、プロフィル値データおよびオーバライド値データの他に、プロフィル値によって送られる各砥石台31,32の位置誤差を補正する補正データが含まれている。この補正データは、理想のプロフィル値データで加工を行っても機械系の慣性や制御系の追随遅れなどにより砥石台31,32の送りに誤差が生じるので、この誤差を補正するためのものである。それゆえ、補正データもオーバライド値データから複合オーバライド値データへの変換に伴い、複合補正データに変換されて記憶され、研削加工に当たって使用される。
【0034】
すなわち、砥石台31,32のうちオーバライド値が低減された方について、理想的な送り位置を規定するプロフィル値データとプロフィル値データによって送られる各砥石台31,32の実際の送り位置との誤差を補正する補正データが用意されている。この補正データは、主軸34の各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を大きい方で除算した比率に比例して再設定されて複合補正データとされ、複合補正データに基づいて両砥石台31,32の送り制御が行われる。
【0035】
また、当然のことながら、各砥石台31,32の砥石送り速度も、オーバライド値から複合オーバライド値への変換比率に基づいて適正に再設定される。
その結果、図4に示すように、第一砥石台31の各データおよび第二砥石台32の各データは、各砥石台31,32のオーバライド値データから統合された複合オーバライド値データへの変換に伴い、再設定される。
【0036】
以上の制御方法は、被研削個所としてクランクシャフトを想定すると、ステップ・バイ・ステップで次のようになされても良い。
まず、準備段階では、双頭型研削盤により同時研削する二つのクランクピンの番号(ピン番号)を操作盤2から入力する。すると、入力された二つのピン番号に対応する各オーバライド値データが読み込まれ、各クランクピンの同位相角におけるオーバライド値が比較されて小さい方の値が選択され、複合オーバライド値データとして記憶される。
【0037】
次に研削加工に移行すると、各クランクピンの同位相角におけるオーバライド値と複合オーバライド値とが比較され、複合オーバライド値の低減割合が算出される。次いで各クランクピンの補正データが読み込まれ、複合オーバライド値の低減割合に比例して補正データが修正され、複合補正データとされる。そして、複合オーバライド値データと複合補正データとに基づいて、両クランクピンが研削加工される。
【0038】
その結果、主軸34(図1参照)の回転速度は、複合オーバライド値データによって制限され、いずれの砥石台31,32の送り速度や加速度の限界をも越えることがない範囲に収まっている。それゆえ、研削加工に際して加工精度の低下をきたすことがない。また、主軸34の回転速度は、いずれの砥石台31,32の送り速度や加速度の限界をも越えることがない範囲で、できるだけ速い回転速度に設定されている。それゆえ、主軸34の回転速度の低下が比較的少なく、工作物Wの二つの被研削個所が能率的に並行して研削される。
【0039】
また、本実施例では、工作物Wの指定された二つの被研削個所を研削する前に、その二つの被研削個所に関してのみ複合オーバライド値が各位相角について設定され、複合オーバライド値データとして記憶される。しかる後、指定された二つの被研削個所が研削加工されるが、研削加工に際しては、RAM11から複合オーバライド値データおよび複合補正データが順に読み出されるだけであるので、CPU10に対して高速演算の要求があまりない。また、RAM1もワンセットの複合オーバライド値データおよび複合補正データを記憶しておくだけであるので、記憶容量があまり大きいことは要求されない。すなわち本実施例では、CPU10にもRAM11にもあまり高い能力は要求されない。
【0040】
(実施例1の効果)
以上詳述したように、本実施例の双頭型研削盤およびその制御方法によれば、加工精度の低下をきたすことなく、工作物Wの二つの被研削個所を能率的に並行して研削加工することができるという効果がある。また、比較的安価なCPU10およびRAM11が使用できるので、双頭型研削盤の制御装置を安価に構成することができるという効果もある。そればかりではなく、補正データが複合オーバライド値の低減率に比例して修正され、複合補正データに基づいて各砥石台31,32の送りがより精密に制御されるので、加工精度がいっそう向上するという効果もある。
【0041】
(実施例1の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、予め工作物Wの被研削個所の全ての組み合わせについて指定し、特定の組み合わせに関する複合オーバライド値を各位相角毎に求めて複合オーバライド値データセットとして記憶しておく双頭型研削盤の制御方法の実施が可能である。しかる後、研削加工の際に、複合オーバライド値データセットのうち指定された二つの被研削個所の組み合わせに該当する複合オーバライド値データが読み出され、複合オーバライド値データに基づいて主軸34の回転速度が制御される。
【0042】
本変形態様では、研削加工を始める前に、予め被研削個所の予想される全ての組み合わせに関する複合オーバライド値を各位相角毎に求められ、このような特定の組み合わせに関する複合オーバライド値データセットが記憶される。それゆえ、被研削個所を変更する毎に複合オーバライド値データを演算する必要がなく、新たな二つの被研削個所に関する複合オーバライド値データが複合オーバライド値データセットから読み出されるだけで、主軸34の回転速度が設定される。その結果、RAM11にはある程度大きな記憶容量が要求され、また、短時間で研削加工を開始するためにはCPU11にもある程度高速性が要求される。しかしながら、予め被研削個所のうち予想される全ての組み合わせに関する複合オーバライド値データセットがRAM11に用意されているので、任意の二つの被研削個所の切削にあたっては、RAM11から該当する複合オーバライド値データを読み出すだけでよい。それゆえ、ある二つの被研削個所の研削加工を終えた後、すぐさま新たな二つの被研削個所の研削加工に取りかかることができる。
【0043】
なお、本変形態様では、補正データに関しても、オーバライド値データに準ずる取り扱いがなされ、全ての組み合わせについて複合補正データが用意されるものとする。
したがって本変形態様によれば、効率良く高精度で研削加工が可能であり、さらに、研削加工に取りかかってしまえば途中に演算等のための時間を要することなく、次々に研削加工を行うことができるという効果がある。この効果は、特に同一の工作物を連続して研削加工する場合には顕著であり、さらに被研削個所の組み合わせを変えて同一の工作物を連続して研削加工する場合にはいっそう顕著である。
【0044】
(実施例1の変形態様2)
本実施例の変形態様2として、複合オーバライド値を主軸34の各位相角毎にリアルタイムで求め、複合オーバライド値に基づいて主軸34の回転速度を制御する双頭型研削盤の制御方法の実施が可能である。
本変形態様では、指定された二つの被研削個所を並行して研削加工するにあたり、位相角毎に複合オーバライド値がリアルタイムで求められて、主軸34の回転速度および各砥石台31,32の送り速度が制御される。また、本変形態様では、補正データに関しても、オーバライド値データに準ずる取り扱いがなされ、リアルタイムで複合補正データが用意されるものとする。
【0045】
それゆえ、CPU10には研削加工中における主軸34の最大回転速度においてもリアルタイムで複合オーバライド値等を求めることができるだけの高速性が求められる。しかし、現在のCPUの演算速度をもってすれば、この程度の高速性の達成は困難ではない。また、このような高速のCPUないしMPUの価格は低廉化の一途をたどりつつあり、双頭型研削盤の全体価格に占める割合は小さいので、双頭型研削盤の価格を高騰させるようなことはない。さらに、RAM11の容量も最低限で済むので、この点では経済的である。
【0046】
そればかりではなく、工作物Wの種類が毎回変更されても、全ての工作物Wに関するデータセットがRAM11にローディングされていれば、全く待ち時間なしに次々と能率良く研削加工を進めることができる。
したがって本手段によれば、効率良く高精度で研削加工が可能であるばかりではなく、工作物Wの種類が毎回変更されても全く待ち時間なしに次々と能率良く研削加工を進めることができ、最も柔軟性に富む運用が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1としての双頭型研削盤の構成を示す模式図
【図2】 実施例1の複合オーバライド値データの設定方法を示す模式図
【図3】 実施例1の複合オーバライド値の選択方法を示す模式図
【図4】 実施例1の数値制御データの生成方法を示す模式図
【図5】 先行技術の問題点を示す模式図
【符号の説明】
1:制御装置
10:CPU
11:RAM(数値データを記憶)
111:プロフィル値データ
112:オーバライド値データ
113:複合オーバライド値データ
12:ROM(プログラムを内蔵)
13,14:インターフェース
2:操作盤(マンマシン・インターフェース)
3:研削盤
30:砥石台テーブル 30’:ベッド
31:第一砥石台 32:第二砥石台 311,321:回転砥石
33:主軸台 34:主軸 34:心押台
41,42,51,52,6:ドライブユニット
W:工作物
Claims (6)
- 複数の被研削個所をもつ工作物を保持して回転させる主軸と、
それぞれに回転砥石をもち独立して制御され得る二つの砥石台と、
該工作物の各該被研削個所についてのプロフィル値データおよびオーバライド値データを記憶する記憶手段をもち該主軸および両該砥石台を数値制御する制御装置と、
を有する双頭型研削盤において、
前記制御装置は、指定された二つの前記被研削個所に関する両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して複合オーバライド値とし、該複合オーバライド値に基づいて前記主軸の回転速度を制御することを特徴とする双頭型研削盤。 - 複数の被研削個所をもつ工作物を保持して回転させる主軸と、それぞれに回転砥石をもち独立して制御され得る二つの砥石台と、該工作物の各該被研削個所についてのプロフィル値データおよびオーバライド値データを記憶する記憶手段をもち該主軸および両該砥石台を数値制御する制御装置とを有する双頭型研削盤を制御する方法であって、
指定された二つの前記被研削個所に関する両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して前記主軸の回転速度を制御することを特徴とする双頭型研削盤の制御方法。 - 両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して得られる複合オーバライド値を各前記位相角毎に求めて複合オーバライド値データとしていったん記憶し、しかる後、該複合オーバライド値データに基づいて前記主軸の回転速度を制御する、
請求項2記載の双頭型研削盤の制御方法。 - 予め前記被研削個所の特定の組み合わせについて指定し、該特定の組み合わせに関する両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して得られる複合オーバライド値を各前記位相角毎に求めて複合オーバライド値データセットとして記憶しておき、
しかる後、該複合オーバライド値データセットのうち指定された二つの該被研削個所の組み合わせに該当する複合オーバライド値データを読み出して前記主軸の回転速度を制御する、
請求項2記載の双頭型研削盤の制御方法。 - 両前記オーバライド値データの各位相角に相当するそれぞれのオーバライド値のうち小さい方を選択して得られる複合オーバライド値を各位相角毎にリアルタイムで求め、該複合オーバライド値に基づいて前記主軸の回転速度を制御する、
請求項2記載の双頭型研削盤の制御方法。 - 両前記砥石台のうち前記オーバライド値が低減された方について、理想的な送り位置を規定する前記プロフィル値データと該プロフィル値データによって送られる各該砥石台の実際の送り位置との誤差を補正する補正データを、前記各位相角に相当するそれぞれの前記オーバライド値のうち小さい方を大きい方で除算した比率に比例して再設定して複合補正データとし、該複合補正データに基づいて両該砥石台の送り制御を行う、
請求項2乃至5記載の双頭型研削盤の制御方法。
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