JP3682335B2 - 表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は表面プラズモン共鳴バイオセンサー及びそれに用いる測定セル、ならびにその測定セルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、臨床検査等で免疫反応を利用した測定が数多く行われているが、従来法では煩雑な操作や標識物質を必要とするため、標識物質を必要とすることなく、リガンドの変化を高感度に検出することのできる表面プラズモン共鳴(SPR)を利用した免疫センサーが使用されている。この表面プラズモン共鳴の現象は、ガラス等の光学的に透明な物質と金属薄膜層との境界から反射された単色光の強度が、金属の出射側にある試料の屈折率に依存することによるものであり、従って、反射された単色光の強度を測定することにより、試料を分析することができる。
【0003】
この表面プラズモン共鳴を利用した測定装置(表面プラズモン共鳴バイオセンサー)で一般的に使用される測定セルの光学部分は、図2に示すような構造を有する。即ち、ガラス基板1'上に成膜された金属薄膜2'の上に、多孔質材料5が形成されており、この多孔質材料5の表面及び内部に酵素、抗体等の生理活性物質4'が担持又は固定されている。この多孔質材料5としては、例えば合成繊維、天然繊維、無機繊維等からなる織物、編物、不織布や、多孔性の無機又は有機材料などが使用される(特開平3-164195号公報参照)。また、市販品(BIAcore 2000用,ファルマシアバイオセンサー社製)では、この多孔質材料5としてカルボキシメチルデキストランが用いられている。
【0004】
しかしながら、測定対象物と実質的に相互作用する生理活性物質4'というのは、多孔質材料5の表面に存在するものだけであるため、多孔質材料5の内部に担持又は固定されている生理活性物質4'は無駄なものとなり、その分感度が低下することとなる。
また、生理活性物質4'を金属薄膜2'に固定する方法として、LB(Langmuir-Blodgett )法が用いられる場合もあるが(特開平5-288672号公報参照)、LB膜と金属薄膜との結合が弱く、生理活性物質と共に脱落するという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、固定化する生理活性物質が少量であっても、良好な感度が得られる表面プラズモン共鳴バイオセンサー用の測定セルを提供すること、ならびにその測定セルの製造方法及びその測定セルを使用した表面プラズモン共鳴バイオセンサーを提供することである。
【0006】
【課題を解決する手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、プラズマ重合膜を介して生理活性物質を固定化すれば、使用する生理活性物質が少量であっても良好な感度が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、金属膜と、該金属膜の上に形成されたプラズマ重合膜と、該プラズマ重合膜の表面に固定された生理活性物質とからなる層が光学部分に設けられていることを特徴とする、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルである。
【0007】
また、本発明は、上記表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルを使用した表面プラズモン共鳴バイオセンサーである。
さらに、本発明は、光学的に透明な基板上に金属膜を形成した後、該金属膜の上にプラズマ重合膜を形成し、次いで該プラズマ重合膜の表面に生理活性物質を固定化することを特徴とする、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルの製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一例による表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルの光学部分の断面概略図を図1に示す。ここで、本明細書における測定セルの「光学部分」とは、光が照射され、エバネッセント波と表面プラズモンが生じ得る部分をいうものとする。
【0009】
本実施例による表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セル(以下、「測定セル」と略す場合がある。)の光学部分は、光学的に透明な基板(透明基板)1と、透明基板1の上に形成された金属薄膜2と、金属薄膜2の上に形成されたプラズマ重合膜3と、プラズマ重合膜3の表面に固定された生理活性物質4とを有する。
【0010】
透明基板1としては、通常表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルに使用されるものであればよく、一般的にはガラスや、レーザー光に対して透明な材料からなるものであり、その厚さは0.1 〜5mm程度である。
金属薄膜2としては、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。この金属薄膜2に使用することのできる金属の種類としては、金、銀、白金等が挙げられ、それらを単独で又は組み合わせて使用することができる。また、上記透明基板1への付着性を考慮して、透明基板1と金、銀等からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。
【0011】
金属薄膜2の膜厚は、100 〜2000Åであるのが好ましく、特に100 〜500 Åであるのが好ましい。3000Åを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、30〜50Åであるのが好ましい。
【0012】
プラズマ重合膜3は、モノマー原料をプラズマ重合することにより三次元架橋してなる膜である。本発明で使用することのできるモノマー原料としては、プラズマ重合することにより生理活性物質を固定化できるものであれば、いかなるものであってもよいが、例えば、下記の式(1)
CH3−(CH2)n−NH2 (但し、nは1〜6の整数である。)…(1)
で表される化合物や、下記の式(2)
NH2−(CH2)n−NH2 (但し、nは1〜6の整数である。)…(2)
で表される化合物、あるいはアセトニトリル、ビニルアミン、ピリジンなどの炭素(C)、水素(H)及び窒素(N)からなり2重結合又は3重結合を含む化合物等を用いることができる。また、後述する水溶性二価性試薬により形成される層を設ける場合には、さらに硫黄(S)、酸素(O)又は珪素(Si)を含有する化合物を使用することもできる。一般的には、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、硫黄(S)、酸素(O)及び珪素(Si)から選ばれる任意の元素を2種以上適宜含む化合物を使用することができる。
【0013】
これらの中でも、2重結合及び3重結合を有しない下記の式(1)
CH3−(CH2)n−NH2 (但し、nは1〜6の整数である。)…(1)
で表される化合物又は下記の式(2)
NH2−(CH2)n−NH2 (但し、nは1〜6の整数である。)…(2)
で表される化合物は、2重結合又は3重結合を有する化合物よりも成膜速度が遅く、均質な膜が得られるため好ましい。プラズマ重合膜3の膜厚は、100 〜3000Åであるのが好ましく、特に500 〜1000Åであるのが好ましい。
【0014】
本発明におけるプラズマ重合膜3は、以下のような利点を有する。
▲1▼ピンホールフリーの非晶質で緻密な膜である。
▲2▼膜厚500Å程度から均質な成膜が可能であり、屈折率の変動が極めて少ない。
▲3▼プラズマガスの種類を変えることにより、膜厚だけでなく、表面改質、官能基導入などの化学修飾が可能となる。
▲4▼成膜条件はドライプロセスであるため、半導体技術との併合が可能である。
▲5▼再び溶解しないので安定である。
【0015】
生理活性物質4としては、測定対象物と相互作用するものであれば特に限定されず、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、細菌等が挙げられる。免疫蛋白質としては、例えば測定対象物を抗原とする抗体を使用することができる。抗体としても特に限定されることなく、種々の免疫グロブリン、即ちIgG、IgM、IgA、IgE、IgDを使用することができる。具体的には、測定対象物がヒト血清アルブミンであれば、抗体として抗ヒト血清アルブミン抗体を使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を抗原とする場合には、例えば抗アトラジン抗体、抗カナマイシン抗体、抗メタンフェタミン抗体等の抗体を使用することができる。
【0016】
酵素としては、測定対象物又は測定対象物から代謝される物質に対して活性を示すものであれば、特に限定されることなく、種々の酵素、例えば酸化還元酵素、加水分解酵素、異性化酵素、脱離酵素、合成酵素等を使用することができる。具体的には、測定対象物がグルコースであれば、グルコースオキシダーゼを、測定対象物がコレステロールであれば、コレステロールオキシダーゼを使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を測定対象物とする場合には、それらから代謝される物質と特異的反応を示す、例えばアセチルコリンエステラーゼ、カテコールアミンエステラーゼ、ノルアドレナリンエステラーゼ、ドーパミンエステラーゼ等の酵素を使用することができる。
【0017】
微生物、細菌としては、特に限定されることなく、大腸菌をはじめとする種々の微生物、細菌を使用することができる。
このように、プラズマ重合膜3の表面上に生理活性物質4を固定化した本発明の測定セルでは、多孔質材料の表面及び内部に生理活性物質を固定化していた従来のものと比較して、使用する生理活性物質が少量で済むにもかかわらず、良好な感度が得られる。
【0018】
生理活性物質として抗体を用いた場合、通常は図1に示されるように抗体のFcフラグメントがプラズマ重合膜3の表面のみに固定され、抗体は単分子層状態に形成される。但し、抗体のFabフラグメントがプラズマ重合膜3から離れる程、感度や反応速度が低下するため、図3に示すようにFabフラグメント(図3(a) )又はF(ab')2 フラグメント(図3(b) )を直接プラズマ重合膜3に固定化して、感度や反応速度を向上させてもよい。
【0019】
生理活性物質4の厚さは、使用する生理活性物質自体の大きさにもよるが、100 〜3000Åであるのが好ましく、特に100 〜1000Åであるのが好ましい。
本発明の他の一例による表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルの概略図を図4に示す。本実施例による表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルは、上記測定セルとほぼ同様の構成を有するが、プラズマ重合膜3の上にさらに水溶性二価性試薬により形成した膜(これを「共有結合膜」という。)6が設けられており、生理活性物質4がこの共有結合膜6を介してプラズマ重合膜3に固定されている。
【0020】
共有結合膜6を形成する水溶性二価性試薬は、生理活性物質4を共有結合的に強固に固定化できるものであれば、特に限定されない。そのような水溶性二価性試薬としては、例えばグルタルアルデヒド、過ヨウ素酸、N,N'−o−フェニレンジマレイミド、N−スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシニミジルマレイミド酢酸、N−スクシニミジル−4−マレイミド酪酸、N−スクシニミジル−6−マレイミドヘキサン酸、N−スルホスクシニミジル−4−マレイミドメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、N−スルホスクシニミジル−3−マレイミド安息香酸、N−(4−マレイミドブチリロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N−(6−マレイミドカプロイロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N−(8−マレイミドカプリロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N−(11−マレイミドウンデカノイロキシ)スルホスクシンイミド・ナトリウム塩、N[2−(1−ピペラジニル)エチル]マレイミド・二塩酸等が挙げられ、それぞれ単独で又は組み合わせて使用することができる。これらの中でも、汎用性が高く、取扱いの容易なグルタルアルデヒドが好ましい。
【0021】
このような共有結合膜6を設け、生理活性物質4を共有結合で強固に固定化することにより、当該測定セルを洗浄しても生理活性物質4の固定化を維持できるため、繰り返し測定に使用することができるという利点が得られる。共有結合膜6の厚さは、10〜100 Åであるのが好ましく、特に10〜20Åであるのが好ましい。
【0022】
本発明の測定セルの光学部分における層は、以下のようにして形成することができる。
まず、透明基板1上に金属薄膜2を形成する。金属薄膜2の形成は常法によって行えばよく、例えばスパッタリング、CVD、PVD、真空蒸着法等によって行うことができる。
【0023】
次に、金属薄膜2の上にプラズマ重合膜3を形成する。プラズマ重合膜3の形成は、前述したモノマーを原料としてプラズマ重合によって行えばよく、通常のプラズマ重合装置を使用することができる。プラズマ重合の条件としては、成膜速度が100 〜3000Å/min 、特に500 〜1000Å/min となるように設定するのが好ましい。3000Å/min を超えると、均質なプラズマ重合膜が得られにくくなる。具体的には、モノマー原料の流量を0.05〜20ml/minとし、温度を室温又は10〜20℃とし、圧力を1.0 ×10-4〜1.0 ×10-1Torrとし、放電電力を20〜50Wとし、放電周波数を10MHz 又は13.56MHzとして、シャッター時間(暴露時間)を60sec とするのが好ましい。
【0024】
プラズマ重合膜3を形成したら、最後にプラズマ重合膜3に生理活性物質4を固定化する。固定化方法は常法によって行えばよく、例えば、所定量の生理活性物質4をプラズマ重合膜3に所定時間接触させることにより固定化することができる。測定セルがフローセル型であれば、一定流量の生理活性物質4を所定時間(所定量)流してプラズマ重合膜3に接触させればよい。
生理活性物質として抗体を用いた場合であって、抗体のFabフラグメントを直接プラズマ重合膜3に固定化する場合には、パパインを用いて抗体を部分分解した後、同様の処理を行えばよい。一方、抗体のF(ab')2 フラグメントを直接プラズマ重合膜3に固定化する場合には、ペプシンを用いて抗体を部分分解した後、同様の処理を行えばよい。
【0025】
また、共有結合膜6を設ける場合には、生理活性物質4と同様の方法によって水溶性二価性試薬をプラズマ重合膜3に接触させ、続いて生理活性物質4を固定化すればよい。
本発明の表面プラズモン共鳴バイオセンサーは、以上説明したような本発明の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルを使用してなるものである。
【0026】
本発明の一実施例による表面プラズモン共鳴バイオセンサーの概念図を図5に示す。本表面プラズモン共鳴バイオセンサーは、カートリッジブロック7と、光源8と、検出器9とを有し、カートリッジブロック7の上に測定チップ10を設置してなる。カートリッジブロック7の上面には凹部が設けられており、この凹部と上記測定チップ10とで測定セル71が構成される。
【0027】
測定チップ10の本体は透明基板からなり、その光学部分(カートリッジブロック7の凹部に対応する部分)における裏面には、金属薄膜と、その下に形成されたプラズマ重合膜と、その表面に固定された生理活性物質とからなる層が設けられている(図示せず)。本実施例によるセンサーでは、測定セル71はカートリッジブロック7の凹部と測定チップ10とで構成されており、またカートリッジブロック7には測定セル71及びカートリッジブロック7の外部に連通した流路72,73が設けられ、測定セル71はフローセル型となっているが、本発明はこれに限定されることなく、バッチ型セルからなる構造のものであってもよい。このように測定セル71をフローセル型とすることにより、試料を連続的又は断続的に測定することができる。本センサーでは、試料は流路72を通じて測定セル71中に流れ込み、測定に供された後流路73を通じて外部に排出される。試料の流速は、0.5 〜5μl /分であるのが好ましい。流速の調節は、例えばコンピュータの指令により作動するポンプを使用すればよい。
【0028】
光源8からは、測定チップ10の光学部分に向かって単色光が照射され(入射光80)、測定チップ10の裏面に設けられた金属薄膜で反射したその反射光90が、検出器9に入光する。検出器9では、反射光90の強度を検出することができる。光源8及び検出器9は、通常表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用されるものであれば、いかなるものであってもよい。本発明のセンサーでは、くさび型の光を入射させ、いろいろな方向への反射光を一度に測定することができるようになっているが、本発明はこれには限定されない。このような構造にすれば可動部分を設ける必要がないため、安定性及び耐久性に優れたものとなり、またリアルタイムで試料を測定することができる。
【0029】
上記のような構造によって、ある入射角θに対して谷を形成する反射光強度曲線が得られる(図6参照)。反射光強度曲線における谷は、表面プラズモン共鳴によるものである。即ち、光が測定チップ10の透明基板と外との界面で全反射するときに、その界面にエバネッセント波といわれる表面波が生じ、一方、金属薄膜にも表面プラズモンといわれる表面波が生じる。この2つの表面波の波数が一致すると共鳴が起こり、光のエネルギーの一部が表面プラズモンを励起するために使用され、反射光の強度が低下する。ここで、表面プラズモンの波数は、金属薄膜表面のごく近くにある媒質の屈折率の影響を受けるため、測定対象物質と生理活性物質との相互作用により媒質の屈折率が変化すると、表面プラズモン共鳴が生じる入射角θが変化する。従って、反射光強度曲線の谷のずれによって、測定対象物質の濃度の変化を検知することができる。入射角θの変化量は共鳴シグナルといわれ、10-4°の変化を1RUとして表す。
【0030】
本実施例の表面プラズモン共鳴バイオセンサーにおいて、測定チップ10を脱着自在の使い捨て型のものにすれば、効率良く、信頼度の高い測定を行うことができる。また、プラズマ重合膜と生理活性物質との間に共有結合膜を設ければ、測定セル71内を洗浄することにより測定チップ10を繰り返し使用することができ、コストの低下を図ることができる。
本発明の表面プラズモン共鳴バイオセンサーは、試料中における目的物質の定量、定性及び同定などに使用することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
本実施例では、図1に示されるような層を光学部分に有する測定チップを作製した。
透明基板としては、厚さ0.15mmのガラス板(18mm×18mm)を使用した。この透明基板上に、スパッタリングによりクロムからなる層、次いで金からなる層を形成した。スパッタリングの条件としては、クロムの場合で100 W,40秒間であり、金の場合で100 W,2分30秒間であった。得られたクロム層の厚さは40Åであり、金層の厚さは500 Åであった。
【0033】
次に、金層の上にプラズマ重合膜を成膜した。プラズマ重合には、図7に示されるような装置を用いた。プラズマ重合膜のモノマー原料としては、エチレンジアミンを使用した。プラズマ重合の条件は、以下のとおりであった。
モノマー原料の流量:15ml/min
温度:15℃
圧力:3.5 ×10-2Torr
放電電力:40W
放電周波数:10MHz
シャッター時間:60 sec
【0034】
上記条件の下では、プラズマ重合膜の成膜速度は1000Å/min であった。即ち、成膜されたプラズマ重合膜の厚さは1000Åであった。ここで、プラズマ重合膜形成前及び形成後における反射光強度曲線(入射角θに対応した反射光の強度を表す曲線)を図6に示す。図6の反射光強度曲線より、金表面上にプラズマ重合膜が形成されたことを確認することができる。また、Δθよりプラズマ重合膜の膜厚を見積もることができる。
【0035】
得られた測定チップ10を、図5に示されるような表面プラズモン共鳴バイオセンサーのカートリッジブロック7上に設置した。流路72から50μg/mlの抗ヒト血清アルブミン抗体750 μl を流速1μl/min で測定セル71に流し込み、プラズマ重合膜の表面に抗ヒト血清アルブミン抗体を固定化した。ここで、固定されていない余分な抗体を洗い流すために、0.1 Nの塩酸5μl を流速5μl/min で測定セル71に流し込んだ。
【0036】
このようにして得られた表面プラズモン共鳴バイオセンサーの測定セル71に、0.01〜100 μg/mlに希釈したヒト血清アルブミン(HSA)35μl を流速5μl/min で流しながら検出器9で測定した結果、図8に示されるような検量線(横軸:HSAの濃度,縦軸:共鳴シグナル(単位:RU),○でプロット)が得られた。なお、対照としてウシ血清アルブミン(BSA)についても同様にして測定したが、共鳴シグナルは変化しなかったため(図8中×でプロット)、上記検量線の傾きはモノクローナル抗体の特異的反応に起因するものであることが分かる。
以上より、本実施例による表面プラズモン共鳴バイオセンサーによれば、得られる共鳴シグナルの値を測定することにより抗原を定量できることが分かる。
【0037】
(実施例2)
本実施例では、図3に示されるような層を光学部分に有する測定チップを作製した。
プラズマ重合膜の成膜まで実施例1と同様にして測定チップを作製した。得られた測定チップ10を表面プラズモン共鳴バイオセンサーのカートリッジブロック7上に設置し、流路72から5%のグルタルアルデヒド(pH7.4 )100 μl を流速5μl/min で測定セル71に流し込み、プラズマ重合膜の上(図中では下)にグルタルアルデヒド膜を形成した。次いで、抗ヒト血清アルブミン抗体及び塩酸を実施例1と同様にして流し込み、本発明の表面プラズモン共鳴バイオセンサーとした。
【0038】
得られた表面プラズモン共鳴バイオセンサーの測定セル71に、実施例1と同様にしてHSAを流しながら検出器9で測定した結果、図8に示されるような検量線(横軸:HSAの濃度,縦軸:共鳴シグナル(単位:RU),●でプロット)が得られた。従って、本実施例による表面プラズモン共鳴バイオセンサーによれば、得られる共鳴シグナルの値を測定することにより抗原を定量することができる。
【0039】
(比較例1)
市販の表面プラズモン共鳴バイオセンサー(BIAcore 2000,ファルマシアバイオセンサー社製)を用意し、該センサー用の測定チップをカートリッジブロックに設置した。この表面プラズモン共鳴バイオセンサーは図5に示されるような構造を有し、この測定チップにおける光学部分は図9に示されるような構造を有する。
【0040】
測定チップが有する多孔質材料(カルボキシメチルデキストラン)を活性化するために、流路72から1−エチル−2,3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(400 mM/H2O )とN−ヒドロキシスクシンイミド(100 mM/H2O )との混合物35μl を流速5μl/min で測定セル71に流し込んだ。次いで、50μg/mlの抗ヒト血清アルブミン抗体35μl を流速5μl/min で測定セル71に流し込み、カルボキシメチルデキストランに抗ヒト血清アルブミン抗体を固定化した。
【0041】
その後、固定化した抗体をブロッキングするためにエタノールアミン35μl を流速5μl/min で測定セル71に流し込み、次いで固定されていない余分な抗体を洗い流すために、0.1 Nの塩酸5μl を流速5μl/min で測定セル71に流し込んだ。
【0042】
この表面プラズモン共鳴バイオセンサーの測定セル71に、実施例1と同様にしてHSAを流しながら検出器で測定した結果、図10に示されるような検量線(横軸:HSAの濃度,縦軸:共鳴シグナル(単位:RU))が得られた。なお、対照としてウシ血清アルブミン(BSA)についても同様にして測定したが、共鳴シグナルは変化しなかったため(図10中×でプロット)、上記検量線の傾きはモノクローナル抗体の特異的反応に起因するものであることが分かる。
【0043】
図8の検量線と図10の検量線とを比較してみると、実施例1,2の表面プラズモン共鳴バイオセンサーと比較例1の表面プラズモン共鳴バイオセンサーは同程度の感度を有することが分かる。しかしながら、実施例1,2の表面プラズモン共鳴バイオセンサーでは、プラズマ重合膜の表面上に抗体を固定化しているのに対し、比較例1の表面プラズモン共鳴バイオセンサーでは、カルボキシメチルデキストランの表面及び内部に生理活性物質を固定化している。抗体の固定化直後であって抗原を流す前に、実施例1,2のセンサーと比較例1のセンサーの共鳴シグナル(RU)を測定して比較したところ、比較例1のセンサーは実施例1,2のセンサーの約2倍の値を示した。これらにより、比較例1のセンサーは実施例1,2のセンサーの約2倍もしくはそれ以上の抗体を含んでいると考えられる。
【0044】
従って、単位面積(体積)当たりの抗体量、あるいは絶対量の抗体に対して反応に寄与する抗体量に換算すると、実施例1,2の表面プラズモン共鳴バイオセンサーの方が比較例1の表面プラズモン共鳴バイオセンサーよりも圧倒的に有利であることが分かる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルを使用した表面プラズモン共鳴バイオセンサーによれば、固定化する生理活性物質が少量であっても、良好な感度で検体を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例による表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルの光学部分の概略断面図である。
【図2】従来の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルの光学部分の概略断面図である。
【図3】本発明の他の例による表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルの光学部分の概略断面図である。(a) は抗体のFabフラグメントを固定化した例、(b) は抗体のF(ab')2 フラグメントを固定化した例を示す図である。
【図4】本発明の別の例による表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルの光学部分の概略断面図である。
【図5】本発明の一例による表面プラズモン共鳴バイオセンサーの概念図である。
【図6】プラズマ重合膜形成前及び形成後における反射光強度曲線を示すグラフである。
【図7】実施例1で使用したプラズマ重合装置を示す概略図である。
【図8】実施例1及び2で得られた、HSA濃度と共鳴シグナルとの関係を示すグラフである。
【図9】比較例1で使用した測定チップの光学部分の層構成を示す概略図である。
【図10】比較例1で得られた、HSA濃度と共鳴シグナルとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1,1'…透明基板
2…金属薄膜
2'…金属薄膜
3…プラズマ重合膜
4,4'…生理活性物質(抗体)
5…多孔質材料
6…共有結合膜
7…カートリッジブロック
71…測定セル
72,73…流路
8…光源
80…入射光
9…検出器
90…反射光
10…測定チップ
Claims (8)
- 表面プラズモン共鳴バイオセンサー用の測定セルにおいて、金属膜と、該金属膜の上に形成されたプラズマ重合膜と、該プラズマ重合膜の表面に固定された生理活性物質とからなる層が光学部分に設けられていることを特徴とする、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セル。
- 前記生理活性物質が抗ヒト血清アルブミン抗体であることを特徴とする、請求項1記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セル。
- 前記プラズマ重合膜のモノマー原料がエチレンジアミンであることを特徴とする、請求項1記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セル。
- 前記プラズマ重合膜と前記生理活性物質との間に、さらに水溶性二価性試薬により形成した層が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セル。
- 前記水溶性二価性試薬がグルタルアルデヒドであることを特徴とする、請求項4記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セル。
- 請求項1乃至5いずれか記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルを使用した表面プラズモン共鳴バイオセンサー。
- 表面プラズモン共鳴バイオセンサー用の測定セルの製造方法において、光学的に透明な基板上に金属膜を形成した後、該金属膜の上にプラズマ重合膜を形成し、次いで該プラズマ重合膜の表面に生理活性物質を固定化することを特徴とする、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルの製造方法。
- 前記プラズマ重合膜の原料としてエチレンジアミンを使用することを特徴とする、請求項7記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定セルの製造方法。
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