JP4435454B2 - バイオセンサー用表面 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生理活性物質と結合することができるリンカー化合物で処理した金属表面又は金属膜からなるバイオセンサー用表面、該バイオセンサー用表面に生理活性物質を固定化したバイオセンサー用測定チップ、それらの製造方法、並びに、それらを用いた測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、臨床検査等で免疫反応など分子間相互作用を利用した測定が数多く行われているが、従来法では煩雑な操作や標識物質を必要とするため、標識物質を必要とすることなく、測定物質の結合量変化を高感度に検出することのできるいくつかの技術が使用されている。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術である。SPR測定技術はチップの金属膜に接する有機機能膜近傍の屈折率変化やピークシフトから、表面近傍に起こる吸着及び脱着を検知する方法である。QCM測定技術は水晶発振子の金電極(デバイス)上の物質の吸脱着による発振子の振動数変化から、ngレベルで吸脱着質量を検出できる技術である。また、金の超微粒子(nmレベル)表面を機能化させて、その上に生理活性物質を固定して、生理活性物質間の特異認識反応を行わせることによって、金微粒子の沈降、配列から生体関連物質の検出ができる。
【0003】
以上のすべての技術においては、いずれの場合、生理活性物質を固定化する表面が重要である。以下、当技術分野で最も使われている表面プラズモン共鳴(SPR)を例として、説明する。
【0004】
一般に使用される測定チップは、透明基板(例えば、ガラス)、蒸着された金属膜、及びその上に生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜からなり、その官能基を介し、金属表面に生理活性物質を固定化する。該生理活性物質とアナライト間の特異的な結合反応を測定することによって、生体分子間の相互作用を分析する。
【0005】
生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜としては、金属と結合する官能基、鎖長の原子数が10以上のリンカー、及び生理活性物質と結合できる官能基を有する化合物を用いて、生理活性物質を固定化した測定チップが報告されている(特許第2815120号を参照)。
【0006】
しかしながら、生理活性物質が金属膜に固定化される際、目的の共有結合だけで固定化されるだけでなく、部分的に物理吸着でも生理活性物質は固定化される。蛋白質が金表面へ物理吸着で固定化されると、蛋白質は変性しやすい。また、共有結合での固定化に比較し、測定中に脱落するという問題がある。これらの問題は、結果的に、測定の感度低下と再現性の劣化をもたらすため、不要な物理吸着を無くすための施策が望まれていた。
【0007】
また、この目的のため、金属表面にリンカーを介し、親水性のハイドロゲルを固定化することで、物理吸着を抑制する方法も使用されてきた(特許第2815120号、米国特許第5436161号、特開平8-193948号公報を参照)。しかしながら、この方法は、ハイドロゲルの固定化が容易ではないため、様々なユーザーが自分たちの目的に合わせ表面処理を行うには適さなかった。さらに、ハイドロゲルを用いた場合、細胞などの高分子量の分析物(アナライト)を測定する場合、アナライトがマトリックスの隙間に侵入できない問題点があった。
【0008】
一方、生理活性物質の物理吸着による非特異結合を軽減する方法として、プラスチックプレートを用いる免疫化学分析では、いわゆるウシ血清アルブミンなどによるブロッキングが用いられてきた。また、金属表面を用いる分析法では、末端をチオール化したDNAを金属膜に固定化し、SPRを用いるDNAセンサーを作製する場合、6−ヒドロキシ−1−ヘキサンチオールを添加することによって、非特異的吸着が起こらず、高感度で目的DNAを検出できることが報告されている(米国特許第5942397号、及びJ.Am.Chem.Soc., 1997,119,8916-8920を参照)。また、チオール化したビオチンと11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオールとを同時混合し、ストレプトビジンとの反応を非特異結合を抑制して検出することが報告されている(J.Am.Chem.Soc., 1999, 121, 6469-6478を参照)。しかしながら、これらは、分析対象物(アナライト)の非特異的吸着を抑制を目的にしており、固定化される生理活性物質の一部が物理吸着することによる生理活性物質の不必要な変性や脱落に関する問題点に対する解決法を与えるものではない。また、金属表面に直接固定化できる生理活性物質の誘導体の合成は容易ではなく、生理活性物質を修飾することなく固定化できる金属表面が望まれている。これらの問題点は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術だけでなく、QCM技術及び金超微粒子技術にも同様に存在している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記の従来技術の問題点を解消することである。即ち、本発明は、金属表面に生理活性物質を、ほとんどの分子が、活性を保ったまま、脱落することなく固定化するための手段であって、処理過程が簡便で信頼性の高い方法を提供することを解決すべき課題とした。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、生理活性物質を金属表面に固定化する際に、生理活性物質を共有結合を介して結合するための化合物とともに生理活性物質の物理吸着を抑制する化合物で金属表面を処理し、その後に生理活性物質を反応させることにより、生理活性物質を安定的に共有結合を介して金属表面に固定化できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、この表面を使用して作製したバイオセンサーチップも、従来の問題点を軽減することが見出された。
【0011】
即ち、本発明によれば、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理した金属表面又は金属膜から成る、生理活性物質を共有結合で固定化するためのバイオセンサー用表面が提供される。
X1−A1−Y1 (1)
[式(1)において、X1は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A1は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を示し、Y1は生理活性物質と結合することができる官能基を示す。]
X2−A2−Y2 (2)
[式(2)において、X2は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A2は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を示し、Y2はセンサーの性能を改善できる官能基を示す。]
【0012】
本発明のバイオセンサー用表面は、好ましくは非電気化学的検出に使用され、特に好ましくは、表面プラズモン共鳴分析に使用される。
好ましくは、式(1)および(2)において、X1及びX2は、チオール(−SH)、あるいは非対称又は対称ジスルフィド(−SS−)である。
好ましくは、式(1)において、Y1は、−OH、−COOH、−NH2、−CHO、−NHNH2、−NCS、エポキシ基、またはビニル基である。
好ましくは、式(2)において、Y2は、−OH、−COOH、−NH2、−SO3H、糖、核酸、蛋白質、または水溶性ポリマーである。
【0013】
好ましくは、式(1)で表される化合物は、HS−(CH2)n−COOH(nは1から20の整数を示す)、またはHS−(CH2)n−NH2(nは1から20の整数を示す)である。
好ましくは、式(2)で表される化合物は、HS−(CH2)n−OH(nは1から20の整数を示す)、HS−(CH2)n−NH2(nは1から20の整数を示す)、HS−(CH2)n−SO3H(nは1から20の整数を示す)、チオール基を有する糖又は糖誘導体、チオール基を有する蛋白質又は蛋白質誘導体、またはチオール基を有する核酸又は核酸誘導体である。
【0014】
本発明の別の側面によれば、上記した本発明のバイオセンサー用表面に生理活性物質を共有結合させて得られる、バイオセンサー用測定チップが提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明のバイオセンサー用表面又はバイオセンサー用測定チップと被験物質とを接触させる工程を含む、該バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と相互作用する物質を検出及び/又は測定する方法が提供される。
好ましくは、バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と被験物質との相互作用は非電気化学的方法により検出及び/又は測定され、特に好ましくは、バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と被験物質との相互作用は表面プラズモン共鳴分析により検出及び/又は測定される。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、金属表面又は金属膜を、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理する工程を含む、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理した金属表面又は金属膜から成る、生理活性物質を共有結合で固定化するためのバイオセンサー用表面の製造方法が提供される。
X1−A1−Y1 (1)
[(式(1)において、X1は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A1は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を示し、Y1は生理活性物質と結合することができる官能基を示す。]
X2−A2−Y2 (2)
[式(2)において、X2は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A2は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を示し、Y2はセンサーの性能を改善できる官能基を示す。]
【0016】
本発明のさらに別の側面によれば、金属表面又は金属膜を、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理する工程;及び該式(1)で表される化合物に直接あるいは架橋性化合物またはヒドロゲルを介して生理活性物質を共有結合により結合させる工程を含む、金属表面又は金属膜に生理活性物質を固定化する方法が提供される。
X1−A1−Y1 (1)
[(式(1)において、X1は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A1は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を示し、Y1は生理活性物質と結合することができる官能基を示す。]
X2−A2−Y2 (2)
[式(2)において、X2は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A2は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を示し、Y2はセンサーの性能を改善できる官能基を示す。]
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のバイオセンサー用表面は、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理した金属表面又は金属膜から成ることを特徴とする。
X1−A1−Y1 (1)
[式(1)において、X1は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A1は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を示し、Y1は生理活性物質と結合することができる官能基を示す。]
X2−A2−Y2 (2)
[式(2)において、X2は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A2は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を示し、Y2はセンサーの性能を改善できる官能基を示す。]
【0018】
本発明のバイオセンサー用表面は、金属表面又は金属膜を本明細書に定義する少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理することにより製造される。
金属膜は好ましくは基板上に配置されている。ここで、「基板上に配置される」とは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む意味である。
【0019】
金属膜が基板上に配置されている場合、本発明のバイオセンサー用測定チップは、基板と、基板上に形成された金属膜と、金属膜上に形成されたリンカー層(一般式Iで示される化合物から成る)とを有する。
【0020】
本発明で使用することができる基板としては例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、固定化法に使用されるものであればどのようなものでもよく、一般的にはガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。基板の厚さは特には限定されないが、通常0.1 〜20mm程度である。
【0021】
本発明のバイオセンサー用測定チップにおける金属膜としては、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。この金属膜に使用することのできる金属の種類としては、金、銀、銅、アルミニウム、白金等が挙げられ、それらを単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金、銀等からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。
【0022】
金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、100 〜2000オングストロームであるのが好ましく、特に200〜600オングストロームであるのが好ましい。3000オングストロームを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、5〜50オングストロームであるのが好ましい。
金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。
【0023】
次に本発明で用いる式(1)および(2)で表される化合物について説明する。
式(1)及び式(2)において、X1及びX2は金属表面と共有結合を形成しうる官能基であればその種類は特に限定されないが、好ましくはX1及びX2は、チオール(−SH)、あるいは非対称又は対称ジスルフィド(−SS−)であり、特に好ましくはチオール(−SH)である
【0024】
式(1)及び式(2)において、A1及びA2は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基を示す。A1及びA2は炭化水素基であることが好ましい。また、A1及びA2が示す2価の連結基は好ましくは、鎖長の原子数が10以下であり、より好ましくは鎖長の原子数が8以下である。
【0025】
アミノ酸としては、グリシン、アラニンなどが挙げられ、それらが重合して形成されるペプチドでもよい。
脂肪族基としては、アルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基等を包含し、鎖の形態は直鎖、分岐鎖、環状鎖又はこれらの組み合わせの何れでもよい。脂肪族基としてはアルキレン基が特に好ましく、最も好ましくは直鎖のアルキレン基である。脂肪族基の長さは特に限定されないが、例えば、炭素数1〜20であり、より好ましくは炭素数1〜10程度であり、特に好ましくは炭素数2〜10程度である。
芳香族基としては、アリーレン基などが挙げられ、具体的にはフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
【0026】
ヘテロ環としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子から選ばれる1種以上のヘテロ原子を1個以上含む5または7員の飽和または不飽和の単環または縮合環などが挙げられ、具体的には、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、フタラジン、トリアジン、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、チアジアゾール、トリアゾール等が挙げられる。ヘテロ環基とは上記したようなヘテロ環から誘導される2価の基を言う。
A1及びA2で表される2価の連結基は、上記したような脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基の組み合わせから構成されるものでもよい。
【0027】
式(1)において、Y1は生理活性物質と結合することができる官能基を示し、その官能基の種類は固定化する生理活性物質の種類に応じて適宜選択することができる。一般的には、Y1は、−OH、−COOH、−NH2、−CHO、−NHNH2、−NCS、エポキシ基、またはビニル基などである。
式(2)において、Y2はセンサーの性能を改善できる官能基を示し、例えば、生理活性物質の金属表面への物理吸着を抑制することができる官能基などが挙げられる。このような官能基は、Y1で示される生理活性物質と結合することができる官能基とは異なる基として、固定化する生理活性物質の種類に応じて適宜選択することができる。一般的には、Y2は、−OH、−COOH、−NH2、−SO3H、糖、核酸、蛋白質、または水溶性ポリマー(例えば、ポリオキシエチレンなどの親水性基)である。
【0028】
本発明の特に好ましい態様によれば、式(1)で表される化合物は、HS−(CH2)n−COOH、またはHS−(CH2)n−NH2である。ここで、nは1から20の整数を示すが、好ましくは1から10の整数を示し、さらに好ましくは1から8の整数を示す。
本発明の特に好ましい態様によれば、式(2)で表される化合物は、HS−(CH2)n−OH、HS−(CH2)n−NH2、HS−(CH2)n−SO3H、チオール基を有する糖又は糖誘導体、チオール基を有する蛋白質又は蛋白質誘導体、またはチオール基を有する核酸又は核酸誘導体である。ここで、nは1から20の整数を示すが、好ましくは1から10の整数を示し、さらに好ましくは1から8の整数を示す。
【0029】
本発明では、生理活性物質を共有結合することができる官能基をもつ化合物(即ち、上記の式(1)で表される化合物)とセンサーの性能を改善できる官能基をもつ化合物(即ち、上記の式(2)で表される化合物であり、好ましくは、生理活性物質の物理吸着を抑制できる化合物である)を一定の比率で混合した溶液で金属膜を処理することにより、生理活性物質を安定的に共有結合を介して金属表面に固定化できる。
【0030】
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の混合比(モル比)は、生理活性物質の種類、実験条件などに応じて適宜選択することができる。一般的には、式(1)で表される化合物:式(2)で表される化合物のモル比で1:100から100:1の範囲内であり、好ましくは1:10から10:1の範囲内である。式(1)で表される化合物の比率がこれより高いと、生理活性物質の物理吸着を抑制するという式(2)で表される化合物の作用効果が低くなるため好ましくなく、また式(1)で表される化合物の比率がこれより低いと、生理活性物質の固定化の効率が低下し、好ましくない。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の混合比(モル比)は、生理活性物質の固定化の効率と、生理活性物質の物理吸着を抑制する作用効果とのバランスを考慮して決定することが望ましい。
【0031】
本発明では、上記式(1)および(2)で表される2種類の化合物の混合物を用いて金属表面又は金属膜を処理することにより、バイオセンサー用表面を作製する。具体的には、式(1)および(2)で表される2種類の化合物を上記した適当な範囲のモル比で適当な溶媒(例えば、エタノールなど)中に混合した溶液中に金属表面又は金属膜を浸し、一定時間表面処理を行うことにより、バイオセンサー用表面を作製することができる。
【0032】
式(1)および(2)で表される2種類の化合物の混合物を用いて金属表面又は金属膜を処理する方法としては、上記のように該化合物を含む混合溶液中に金属膜等を一定時間浸漬する方法(浸漬法)以外にも、スピンコータを用いる方法(スピンコーティング法)、グラビア印刷機を用いる方法(グラビア法)などを例示することができる。
【0033】
上記のようにして得られたバイオセンサー用表面はその表面に式(1)で表される化合物を有する。本発明によれば、バイオセンサー用表面に固定化された式(1)で表される化合物に直接あるいは架橋性化合物(例えば、水溶性多価性試薬等)またはヒドロゲルを介して生理活性物質を共有結合により結合させることによって、金属表面又は金属膜に生理活性物質を固定化する方法が提供される。
【0034】
架橋性化合物としては、例えば、グルタルアルデヒド、過ヨウ素酸、N−スクシニミジル−2−マレイミド酢酸、N−スクシニミジル−4−マレイミド酪酸、N−スクシニミジル−6−マレイミドヘキサン酸、N−スクシニミジル−4−マレイミドメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、N−スルホスクシニミジル−4−マレイミドメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、N−スクシニミジル−4−マレイミドメチル安息香酸、N−スクシニミジル−3−マレイミド安息香酸、N−スルホスクシニミジル−3−マレイミド安息香酸、N−スクシニミジル−4−マレイミドフェニル−4−酪酸、N−スルホスクシニミジル−4−マレイミドフェニル−4−酪酸、NN'−オキシジメチレン−ジマレイミド、NN'−O-フェニレン−ジマレイミド、N,N'−m-フェニレン−ジマレイミド、N,N'−p-フェニレン−ジマレイミド、N,N'−ヘキサメチレン−ジマレイミド、N−スクシニミジルマレイミドカルボン酸、N−スクシニミジル−S−アセチルメルカプト酢酸、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート、S−アセチルメルカプトスクシニックアンヒドライド、メチル−3−(4'−ジチオピリジル)プロピオニミデート、メチル−4−メルカプトブチルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオニミデート、イミノチオレン、O−カルボキシメチル−ヒドロキシルアミン、アゾジフェニルビルマレイミド、ビス(スルホサクシニイミジル)スペレイト、4,4'−ジイソチオシアノ−2,2'−ジスルホン酸スチルベン、4,4'−ジフルオロ−3,3'−ジニトロジフェニルスルホン、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、p−フェニレンジイソチオシアネイト、ジメチルアジピミデイト、ジメチルピメルイミデイト、ジメチルスベルイミデイト、p−アジドフェナアシルブロマイド、p−アジドフェニルグリオキサル、N−ヒドロキシサクシニイミジル−4−アジドベンゾエイト、4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド、メチル−4−アジドベンゾイミデイト、N−5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシスクシイミド、N−スクシイミジル6−(4'−アジドー2'−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエイト、1、4ベンゾキノン、N−スクシンイミジル−3−(2'-ピリジルジチオ)プロピオネート、N−(4−マレイミドブチリロキシ)スルホスクシンイミドナトリウム塩、N−(6−マレイミドカプロイロキシ)スルホスクシンイミドナトリウム塩、N−(8−マレイミドカプロイロキシ)スルホスクシンイミドナトリウム塩、N−(11−マレイミドウンデカノイロキシ)スルホスクシンイミドナトリウム塩、N−[2−(1−ピペラジニル)エチル]マレイミド二塩酸、ビスジアゾベンジジン、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N'−エチレンビスマレインイミド、N,N'−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、2、4−ジニトロベンゼンスルフォネートナトリウム塩、ジアゾ化合物あるいは縮合試薬がRN=C=NR(又はR')で表されるカルボジイミド誘導体、N−ヒドロキシスクシイミド、トリ−n−ブチルアミン、ブチルクロロフォルメーテ、イソブチルイソシアニドなどが挙げられる。
【0035】
ヒドロゲルとしては、アガロース、デキストラン、キチン、キトサン、カラゲナン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、澱粉及びセルロースからなる群より選択される多糖類もしくはこれらのいずれかの誘導体、並びにポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの合成ポリカルボン酸、ポリHEMAなどのポリヒドロキシアルキルカルボン酸エステル、ポリアクリルアミドなどの合成ポリカルボン酸アミド、ポリビニルアルコール、エチレングリコール単位を有するオリゴマー及びポリマー、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ゼラチン、コラーゲンなどのポリペプチド、デンドリマーから選ばれた少なくとも一の化合物及び/又は該化合物の誘導体からなる親水性ポリマーなどが挙げられる。
ヒドロゲルは所望の生理活性物質を固定化するために、水酸基、カルボキシル、アミノ、アルデヒド、カルボニル、エポキシ又はビニル基などの反応性基を含むように誘導体化されていることが好ましい。
【0036】
本発明のバイオセンサー用表面上に固定される生理活性物質としては、測定対象物と相互作用するものであれば特に限定されず、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、核酸、低分子有機化合物、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいはリガンド結合能を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドなどが挙げられる。
【0037】
免疫蛋白質としては、測定対象物を抗原とする抗体やハプテンなどを例示することができる。抗体としては、種々の免疫グロブリン、即ちIgG、IgM、IgA、IgE、IgDを使用することができる。具体的には、測定対象物がヒト血清アルブミンであれば、抗体として抗ヒト血清アルブミン抗体を使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を抗原とする場合には、例えば抗アトラジン抗体、抗カナマイシン抗体、抗メタンフェタミン抗体、あるいは病原性大腸菌の中でO抗原26、86、55、111 、157 などに対する抗体等を使用することができる。
【0038】
酵素としては、測定対象物又は測定対象物から代謝される物質に対して活性を示すものであれば、特に限定されることなく、種々の酵素、例えば酸化還元酵素、加水分解酵素、異性化酵素、脱離酵素、合成酵素等を使用することができる。具体的には、測定対象物がグルコースであれば、グルコースオキシダーゼを、測定対象物がコレステロールであれば、コレステロールオキシダーゼを使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を測定対象物とする場合には、それらから代謝される物質と特異的反応を示す、例えばアセチルコリンエステラーゼ、カテコールアミンエステラーゼ、ノルアドレナリンエステラーゼ、ドーパミンエステラーゼ等の酵素を使用することができる。
【0039】
微生物としては、特に限定されることなく、大腸菌をはじめとする種々の微生物を使用することができる。
核酸としては、測定の対象とする核酸と相補的にハイブリダイズするものを使用することができる。核酸は、DNA(cDNAを含む)、RNAのいずれも使用できる。DNAの種類は特に限定されず、天然由来のDNA、遺伝子組換え技術により調製した組換えDNA、又は化学合成DNAの何れでもよい。
低分子有機化合物としては通常の有機化学合成の方法で合成することができる任意の化合物が挙げられ、好ましくは、本発明で使用する一般式Iのリンカー化合物と直接又は架橋性化合物を介して結合することができるような官能基を有する化合物である。
【0040】
非免疫蛋白質としては、特に限定されることなく、例えばアビジン(ストレプトアビジン)、ビオチン又はレセプターなどを使用できる。
免疫グロブリン結合性蛋白質としては、例えばプロテインAあるいはプロテインG、リウマチ因子(RF)等を使用することができる。
糖結合性蛋白質としては、レクチン等が挙げられる。
脂肪酸あるいは脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸エチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸エチル等が挙げられる。
【0041】
生理活性物質が抗体や酵素などの蛋白質又は核酸である場合、その固定化は、生理活性物質のアミノ基、チオール基等を利用し、金属表面の官能基に共有結合させることで行うことができる。
【0042】
上記のようにして生理活性物質を固定化されたバイオセンサー用表面は、バイオセンサー用測定チップとして、当該生理活性物質と相互作用する物質の検出及び/又は測定のために使用することができる。
【0043】
即ち、本発明によれば、生理活性物質が固定化された本発明のバイオセンサー用測定チップを用いて、これに被験物質を接触させることにより、該バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と相互作用する物質を検出及び/又は測定する方法が提供される。
被験物質としては例えば、上記した生理活性物質と相互作用する物質を含む試料などを使用することができる。
【0044】
本発明では、バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と被験物質との相互作用を非電気化学的方法により検出及び/又は測定することが好ましい。非電気化学的方法としては、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術などが挙げられる。
【0045】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のバイオセンサー用測定チップは、例えば、透明基板上に配置される金属膜を備えていることを特徴とする表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チップ等として用いることができる。
表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チップとは、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用されるチップであって、該センサーより照射された光を透過及び反射する部分、並びに生理活性物質を固定する部分とを含む部材を言い、該センサーの本体に固着されるものであってもよく、また脱着可能なものであってもよい。
【0046】
表面プラズモン共鳴の現象は、ガラス等の光学的に透明な物質と金属薄膜層との境界から反射された単色光の強度が、金属の出射側にある試料の屈折率に依存することによるものであり、従って、反射された単色光の強度を測定することにより、試料を分析することができる。
【0047】
【実施例】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、表1で示されるような2種の化合物の混合比で生理活性物質の固定化用チップを作製した。
(1)非特異結合を抑制したバイオセンサーチップの作製:
基板としては、10mm×10mm、厚さ0.2mmのガラス板に50nmの金が蒸着された50nmの金蒸着ガラス板(ビアコア社)を、Model-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分処理した後、7−カルボキシ−1−ヘキサンチオール(同仁化学)と6−ヒドロキシ−1−ヘキサンチオール(同仁化学)を表1記載のモル比(総モル濃度1mM)で混合したエタノール溶液中に浸し、25℃で18時間表面処理を行った。その後、40℃でエタノール5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回チップを洗浄し、生理活性物質固定用チップを作製した。比較例としては、7−カルボキシ−1−ヘキサンチオールだけを用いて、チップを作製した。
【0048】
(2)バイオセンサーチップの性能評価:
この測定チップを、市販の表面プラズモン共鳴バイオセンサー(ビアコア社製、BIAcore3000)のカートリッジブロック上に設置した。
【0049】
(2−a)固定化用チップへの蛋白質の非特異結合の測定
固定化用チップへの蛋白質の非特異結合の測定は以下の通り行った(固定化用チップを、活性化剤を使用せず蛋白質と反応させた。蛋白質が吸着されないほうが望ましい)。
作製したチップをそのまま、40mg/mlのプロテインAの10mM酢酸緩衝液(pH4.5)を10分間流し込み、プロテインAの吸着量を測定した。また、15μg/mlのウサギIgGのpH7のHBS緩衝液を10分間流し込み、ウサギIgGの吸着量を測定した。流速は10μL/分を用いた。それぞれ、10分後の共鳴シグナル(RU)を、物理吸着の指標として表1に記す。
【0050】
(2−b)蛋白質相互作用の測定
蛋白質相互作用の測定は以下の通り行った。
生理活性物質固定化用チップを、1−エチル−2,3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(400mM)とN−ヒドロキシスクシンイミド(100mM)との混合液70μLを流速10μL/minで測定セルに流し込み、40mg/mlのプロテインAの10mM酢酸緩衝液溶液(pH4.5)を30分間流し込むことで、チップにプロテインAを固定した。その後、固定化したプロテインAを70μLの1Mエタノールアミン(pH8)で未反応成分を分解後、10μLの10mMグリシン・塩酸緩衝液(pH2)を測定セルに流し込み、洗浄した。プロテインAを固定化した測定セルに、15μg/mlに希釈したウサギIgGを流速10μL/分で10分間流しながら、光強度を測定し、共鳴シグナルを求めた。プロテインA固定化による共鳴シグナル(RU)、および、プロテインAの残存結合活性の指標として、結合したIgGの共鳴シグナル(RU)と固定化されたプロテインAの共鳴シグナル(RU)との比を表2に記す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1の結果から、6−ヒドロキシ−1−ヘキサンチオールを混合することにより、チップへの蛋白質の物理吸着が減少することがわかる。
また、表2の結果から、6−ヒドロキシ−1−ヘキサンチオールを混合することにより、チップに固定化されたプロテインAの残存活性が、相対的に向上することがわかる。
【0054】
【発明の効果】
本発明により、金属表面に生理活性物質を、ほとんどの分子が、活性を保ったまま、脱落することなく固定化するための手段であって、処理過程が簡便で信頼性の高い方法を提供することが可能になった。
Claims (15)
- 少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理した金属表面又は金属膜から成る、生理活性物質を共有結合で固定化するためのバイオセンサー用表面。
X1−A1−Y1 (1)
[式(1)において、X1は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A1は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基(但し、鎖長の原子数が8以下)を示し、Y1は生理活性物質と結合することができる官能基を示す。]
X2−A2−Y2 (2)
[式(2)において、X2は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A2は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基(但し、鎖長の原子数が8以下)を示し、Y2は、−OH、−COOH、−NH 2 、−SO 3 H、糖、核酸、蛋白質、または水溶性ポリマーであり、かつY 1 とは異なる基を示す。] - 表面プラズモン共鳴分析に使用される、請求項1に記載のバイオセンサー用表面。
- 式(1)および(2)において、X1及びX2が、チオール(−SH)、あるいは非対称又は対称ジスルフィド(−SS−)である、請求項1又は2に記載のバイオセンサー用表面。
- 式(1)において、Y1が、−OH、−COOH、−NH2、−CHO、−NHNH2、−NCS、エポキシ基、またはビニル基である、請求項1から3のいずれかに記載のバイオセンサー用表面。
- 式(1)で表される化合物が、HS−(CH2)n−COOH(nは1から8の整数を示す)、またはHS−(CH2)n−NH2(nは1から8の整数を示す)である、請求項1から4のいずれかに記載のバイオセンサー用表面。
- 式(2)で表される化合物が、HS−(CH2)n−OH(nは1から8の整数を示す)、HS−(CH2)n−NH2(nは1から8の整数を示す)、HS−(CH2)n−SO3H(nは1から8の整数を示す)、チオール基を有する糖又は糖誘導体、チオール基を有する蛋白質又は蛋白質誘導体、またはチオール基を有する核酸又は核酸誘導体である、請求項1から5のいずれかに記載のバイオセンサー用表面。
- 請求項1から6のいずれかに記載のバイオセンサー用表面に生理活性物質を共有結合させて得られる、バイオセンサー用測定チップ。
- 請求項1から6のいずれかに記載のバイオセンサー用表面又は請求項7に記載のバイオセンサー用測定チップと被験物質とを接触させる工程を含む、該バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と相互作用する物質を検出及び/又は測定する方法。
- バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と被験物質との相互作用を表面プラズモン共鳴分析により検出及び/又は測定する、請求項8に記載の方法。
- 金属表面又は金属膜を、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理する工程を含む、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理した金属表面又は金属膜から成る、生理活性物質を共有結合で固定化するためのバイオセンサー用表面の製造方法。
X1−A1−Y1 (1)
[(式(1)において、X1は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A1は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基(但し、鎖長の原子数が8以下)を示し、Y1は生理活性物質と結合することができる官能基を示す。]
X2−A2−Y2 (2)
[式(2)において、X2は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A2は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基(但し、鎖長の原子数が8以下)を示し、Y2は−OH、−COOH、−NH 2 、−SO 3 H、糖、核酸、蛋白質、または水溶性ポリマーであり、かつY 1 とは異なる基を示す。] - 金属表面又は金属膜を、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物および少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物を含む混合物で処理する工程;及び該式(1)で表される化合物に直接あるいは架橋性化合物またはヒドロゲルを介して生理活性物質を共有結合により結合させる工程を含む、金属表面又は金属膜に生理活性物質を固定化する方法。
X1−A1−Y1 (1)
[(式(1)において、X1は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A1は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基(但し、鎖長の原子数が8以下)を示し、Y1は生理活性物質と結合することができる官能基を示す。]
X2−A2−Y2 (2)
[式(2)において、X2は金属表面と共有結合を形成しうる官能基を示し、A2は、置換又は未置換のアミノ酸、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基またはこれらの組み合わせから選ばれる2価の連結基(但し、鎖長の原子数が8以下)を示し、Y2は−OH、−COOH、−NH 2 、−SO 3 H、糖、核酸、蛋白質、または水溶性ポリマーであり、かつY 1 とは異なる基を示す。] - 式(1)および(2)において、X1及びX2が、チオール(−SH)、あるいは非対称又は対称ジスルフィド(−SS−)である、請求項10または11に記載の方法。
- 式(1)において、Y1が、−OH、−COOH、−NH2、−CHO、−NHNH2、−NCS、エポキシ基、またはビニル基である、請求項10から12のいずれかに記載の生理活性物質を固定化する方法。
- 式(1)で表される化合物が、HS−(CH2)n−COOH(nは1から8の整数を示す)、またはHS−(CH2)n−NH2(nは1から8の整数を示す)である、請求項11から13のいずれかに記載の生理活性物質を固定化する方法。
- 式(2)で表される化合物が、HS−(CH2)n−OH(nは1から8の整数を示す)、HS−(CH2)n−NH2(nは1から8の整数を示す)、HS−(CH2)n−SO3H(nは1から8の整数を示す)、チオール基を有する糖又は糖誘導体、チオール基を有する蛋白質又は蛋白質誘導体、またはチオール基を有する核酸又は核酸誘導体である、請求項11から14のいずれかに記載の生理活性物質を固定化する方法。
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