JP3681770B2 - 老年性痴呆症又はアルツハイマー病治療剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、神経細胞脱落抑制作用及び脳機能改善作用に優れた老年性痴呆症又はアルツハイマー病治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、老年者人口の増加に伴い、記憶障害を主症状とする老年性痴呆症及びアルツハイマー病が大きな社会問題になっている。
老年性痴呆症やアルツハイマー病の神経病理的変化の特徴として、脳神経細胞の著しい脱落が挙げられる。また、最近の研究により、老年性痴呆症やアルツハイマー病の脳機能障害において各種神経伝達物質系の異常が関与していることが明らかとなってきた。特に脳機能の中でも学習や記憶に関しては脳内アセチルコリン含量が重要で、事実、これらの疾患を有する患者では脳内アセチルコリン含量が減少していることが示された。
【0003】
このため、神経細胞脱落の抑制作用や脳内アセチルコリン系の異常の抑制作用を有し、老年性痴呆症やアルツハイマー病の治療薬として有用な化合物の検討が行われている。しかしながら、未だ十分な効果を有する薬剤は見い出されていない。
従って、優れた効果を有する老年性痴呆症やアルツハイマー病の治療剤の開発が望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、後記一般式(1)で表わされる化合物又はその酸付加塩が、加齢に伴う神経細胞脱落に対する抑制作用及び脳内アセチルコリン系や脳波を賦活することによる脳機能改善作用を有し、老年性痴呆症やアルツハイマー病の治療剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、次の一般式(1)
【0006】
【化2】
【0007】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 及びR6 は、同一又は異なって、炭素数1〜6の低級アルコキシル基を示し、A及びA’は同一又は異なって、n−ブチレン基を示す)
で表わされる化合物又はその酸付加塩を有効成分として含有するアルツハイマー病治療剤を提供するものである。また、本発明は、N,N′−ビス−〔4−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ブチル〕ホモピペラジン又はその酸付加塩を有効成分として含有する加齢に伴う神経細胞脱落抑制剤を提供するものである。
【0008】
本発明で用いられる前記一般式(1)で表わされる化合物(以下、化合物(1)という)は、公知の化合物であり、例えば特開平3−2144号公報に記載されている。この公報には、当該化合物が脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血、一過性脳虚血発作、脳血管障害に伴う脳機能障害などの改善あるいは進展防止のために有効に使用できる脳保護剤として有用であることが示されているが、加齢に伴う神経細胞脱落に対する抑制作用及び脳内アセチルコリン系や脳波を賦活することによる脳機能改善作用を有することについては示唆されていない。
【0009】
化合物(1)において、式中R1 〜R6 で示される低級アルコキシル基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基が好ましい。また、A及びA′で示される低級アルキレン基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましく、特にn−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基が好ましい。
これらのうち、化合物(1)としては、R1 〜R6 がメトキシ基で、A及びA′がブチレン基のもの、特にN,N′−ビス−〔4−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ブチル〕ホモピペラジンが好ましい。
【0010】
化合物(1)は、例えば特開平3−2144号公報に記載の方法、好ましくは該公報に記載の方法(1)に従って製造することができる。
【0011】
本発明においては、これら化合物(1)の酸付加塩を用いることもでき、酸付加塩は常法により得ることができる。ここで酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;酢酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、フマール酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸などが挙げられる。
【0012】
本発明の治療剤は、このような化合物(1)又はその酸付加塩を有効成分とするものであり、この有効成分を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、担体、希釈剤等を用いて錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、注射剤、坐剤等の任意の剤型とすることができる。これらの製剤は公知の方法によって製造することができる。例えば、経口投与用製剤とする場合には、化合物(1)又はその酸付加塩をデンプン、マンニトール、乳糖等の賦形剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤;結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤;タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;軽質無水ケイ酸等の流動性向上剤等を適宜組み合わせて処方することにより製造することができる。
【0013】
本発明の治療剤の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状等によって異なるが、化合物(1)として、通常成人の場合、1日0.1〜1,000mgを1〜3回に分けて投与するのが好ましい。
【0014】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0015】
製造例1
N,N′−ビス−〔4−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ブチル〕ホモピペラジン・2塩酸塩の製造:
1−クロル−4−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ブタン7.5g、ホモピペラジン1.3g、炭酸カリウム4.5g及びヨウ化カリウム5.3gを、ジメチルホルムアミド4.2mlに加え、100℃で1時間攪拌した。反応液を食塩水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を希塩酸で抽出し、水層を酢酸エチルで洗浄したのち、水酸化ナトリウムで塩基性として、エーテルで抽出した。エーテル層を食塩水で洗浄し、乾燥したのち、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、遊離塩基4.7gを得た。
このものを常法により塩酸塩とし、メタノール−エーテルより再結晶することにより、融点191〜194℃(分解)の目的化合物3.2gを得た。
【0016】
1H−NMR(CDCl3);δ
2.60(4H,br.t.J=8Hz)
3.82(6H,s)
3.86(12H,s)
6.37(4H,s)
IR(KBr);cm-1
1587,1238,1122
【0017】
実施例1
(加齢に伴う神経細胞脱落に対する抑制作用)
N,N′−ビス−〔4−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ブチル〕ホモピペラジン・2塩酸塩(以下、試験化合物という)について、マウスの加齢に伴う海馬CA3神経細胞脱落に及ぼす影響を調べた。
25週齢のddY系マウスに、1日当たり10、20、40mg/kgに相当する用量の試験化合物を15週間(40週齢まで)混餌投与した。対照として10、20、30、40週齢の無処置群を設定した。
【0018】
無処置対照群では、加齢に伴い海馬CA3領域(6136μm2)内の正常神経細胞数の減少が認められ、特に30及び40週齢で有意な減少が観察された。40週齢(15週間投与)における、海馬CA3領域内の正常神経細胞数を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1から明らかなように、試験化合物の15週間投与(40週齢)時において、40mg/kg投与群では、無処置対照群に比較して正常神経細胞は有意に保たれていた。
このように、試験化合物は神経細胞の加齢性脱落を抑制する作用を有することが確認された。
【0021】
実施例2
(脳機能改善作用)
(1)アセチルコリン系賦活作用:
(i)オキソトレモリン振戦に対する作用;
ICR系マウスを1群12〜20匹として用い、試験化合物を経口投与し、投与60分後にオキソトレモリン0.05mg/kgを腹腔内投与し、その10分後より10分間観察して、振戦の有無を記録した。結果を表2に示す。なお、オキソトレモリンによる振戦に対する増強作用は、中枢アセチルコリン系賦活作用の指標となるものである。
【0022】
【表2】
【0023】
表2から明らかなように、試験化合物を投与することにより、振戦を増強することが確認された。
【0024】
(ii)スコポラミンによる記憶障害に対する作用;
ddY系雄性マウスを1群10〜20匹として用い、スコポラミン投与による受動的回避反応障害に対する試験化合物の作用を検討した。マウスの学習行動は一試行性受動的回避反応により行った。すなわち、中央に自由に行き来のできるopen gateのある明暗箱を用いた。マウスが暗箱に入った直後にギロチンドアをおろし、床グリッドを介して10mA,0.4ms,50cps の矩形波電流を1秒間通電した。その後、速やかに動物を取り出して飼育ケージに戻し、獲得試行とした。なお、60秒以内に暗箱に入らなかった動物は実験例から除外した。獲得試行の約24時間後に、前日同様明箱にマウスを静置した。マウスが暗箱に入るまでの時間を反応潜時として最大600秒まで測定し、記憶の指標とした。
スコポラミンの投与量を設定するために、獲得試行30分前にスコポラミンの各用量を腹腔内投与し、翌日、反応潜時を測定した。スコポラミン0.25、0.5mg/kg投与により用量に依存した反応潜時の短縮が見られ、学習障害が作成されることが確認された。試験化合物の評価実験には0.5mg/kgのスコポラミンを用いた。
なお、試験化合物は獲得試行後に腹腔内投与した。
結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
表3から明らかなように、試験化合物を投与することにより、反応潜時を延長することが確認された。
【0027】
(2)脳波賦活作用:
ウレタンによる脳機能低下モデルに対する試験化合物の作用を検討した。
ラットにウレタン1.5g/kgを腹腔内投与したのち、背位に固定し、一側大腿静脈内へ薬物注入用カニューレを留置した。その後、脳定位固定装置に固定し、前頭葉皮質に皮質電極を置き、脳波を記録した。ウレタン1.5g/kg投与により、1.1g/kg投与時の正常な麻酔時脳波に比較してフラットな脳波が混入し、電位発現頻度の減少が見られた。この脳機能低下モデルに、パパベリン0.3及び1mg/kgを静脈内投与しても脳波は影響を受けなかったが、アセチルコリン系賦活剤であるオキソトレモリン0.003mg/kgを静脈内投与すると、電位発現の抑制は改善された。従って、本モデルは低下した脳機能に対する賦活作用を評価する上で有用である。
試験化合物は、3mg/kgを静脈内投与することにより、オキソトレモリンと同様に明らかな脳波改善作用を示した。
【0028】
実施例3
(急性毒性試験)
約10週令のSlc:ウィスター系雄性ラット1群5匹を用い、試験化合物を5%アラビアゴムに懸濁して300又は1000mg/kg経口投与した。投与後0.5、1、2及び4時間の各時期に行動観察を行い、その後3日間動物を飼育し、観察した。
その結果、試験化合物は300及び1000mg/kg経口投与によって行動異常及び死亡を認めなかった。
【0029】
実施例4(カプセル剤)
【表4】
【0030】
上記成分を常法により混合したのちゼラチンカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0031】
実施例5(錠剤)
【表5】
【0032】
上記成分を常法により混合し、錠剤を得た。
【0033】
実施例6(注射剤)
N,N′−ビス−〔4−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ブチル〕ホモピペラジン・2塩酸塩100mg及び塩化ナトリウム900mgを約80mlの注射用蒸留水に溶かし、次いで得られた溶液に注射用蒸留水を加え、総量100mlにする。これを無菌濾過したのち遮光アンプル10本に分注、シールし、無菌の注射剤を得た。
【0034】
【発明の効果】
本発明の治療剤は、加齢に伴う神経細胞脱落に対する抑制作用、及び脳機能改善作用に優れ、しかも毒性の少ないものであり、老年性痴呆症、アルツハイマー病の治療剤として極めて有用なものである。
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JP21089794A JP3681770B2 (ja) | 1994-09-05 | 1994-09-05 | 老年性痴呆症又はアルツハイマー病治療剤 |
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JPH0873357A JPH0873357A (ja) | 1996-03-19 |
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WO1997007806A1 (fr) * | 1995-08-29 | 1997-03-06 | Kowa Co., Ltd. | Agent de prevention ou remede contre les maladies des reins |
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1994
- 1994-09-05 JP JP21089794A patent/JP3681770B2/ja not_active Expired - Fee Related
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