JP3681648B2 - 自動車用シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用シートに関し、特に自動車の急減速時に乗員の前方への移動を確実に阻止するようにした自動車用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車が急減速した場合に、乗員が慣性によって前方に移動するのを防止するための手段としてシートベルトが設けられているが、乗員の尻部がシートクッションに沈み込みながら前方に移動するのに対して有効に作用しないことがあるという問題があった。図5を参照して説明すると、(a)に示すようにシート31に乗員30が正規に着座し、シートベルト32を装着した状態で前面衝突を受けた場合、慣性力により(b)に示すように乗員30の尻部が沈み込みながら前方に移動し、さらに減速度が最大になったときには(c)に示すように乗員30の尻部がシートクッション31に沈み込みながらその前端まで大きく移動してしまうことになる。
【0003】
このように乗員30の尻部がシートクッション31の前方に移動するのを防止するために、図6に示すように、シートクッション31に、正規着座状態で乗員30の尻部の前部に位置するようにパイプなどのクロス部材33をシートクッション31の横幅方向にかけ渡して配設し、衝撃を吸収し、前方移動を抑制することが提案されている。
【0004】
ところが、シートクッション31の前部にパイプなどのクロス部材33を配設すると、乗員30の座り心地が悪くなり、ドライブの快適性を阻害するという問題があり、一方座り心地に影響しない位置までクロス部材33の配置位置を下げると、乗員30の前方移動防止効果が得られなくなるという問題がある。
【0005】
そこで、図7に示すように、通常は(a)のクロス部材33が低い位置に配置され、衝突時には(b)の如くインフレータ等の駆動手段35が作動して適宜リンク機構などの連動手段34を介してクロス部材33を上方に持ち上げるようにしたものが提案されている。この種の技術手段が、例えば特開平5−238297号公報や特開平7−81466号公報等に開示され、また実開平7−5898号公報には衝突時にシートクッション自体の前部を持ち上げるようにしたものが開示されている。
【0006】
また、本出願人は先に特願2000−38402号で、シートクッションの内部に左右方向に延びる受止部材をガイドにて上下方向に移動自在に配設するとともに、受止部材を上方に付勢する手段を設け、上方から荷重が作用したときは受止部材が円滑に下方に移動し、後方から荷重が作用したときは受止部材がガイドの前側縁に係合して下方移動が阻止され、この受止部材にて受け止められるようにした構成を提案している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図7に示した構成や上記各公報に開示された構成では、クロス部材33を所要時に強制的に持ち上げるための機構やその駆動手段34、35などが必要であるため、装置が複雑となってコスト高になるとともに、重量面でも重くなるという問題がある。
【0008】
一方、上記特願2000−38402号に開示した構成では、構成が簡単でかつ着座時に座り心地も悪くないが、前面衝突時に乗員の尻部が前方に移動する時に受止部材に加わる荷重の下方分力によって受止部材が下方に逃げてしまう恐れがあり、乗員の前方移動防止効果を安定的に得ることができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、座り心地を悪化することなく自動車が急減速した場合に乗員が前方に移動するのを確実に抑制でき、かつ構成が簡単で軽量・安価に構成できる自動車用シートを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動車用シートは、シートクッションの前部の内部に、全体形状が略中空筒形状でかつ軸芯と直交する方向に弾性的に撓み変形可能に構成した受止部をその軸芯を前後方向に向けて配設したものである。ここで、略中空筒形状とは、周方向に欠如部が存在して完全に一周しなくても、全体形状が筒形状で自立している形状を含むものとする。
【0011】
この構成によれば、シートクッション上に乗員が着座したときには受止部に上方から押圧力が作用するので、受止部は容易に弾性的に撓み変形して扁平になるため、座り心地が悪化することはなく、かつ急減速時に乗員の尻部が前方に移動しようとすると中空筒形状の受止部はその軸芯方向には変形困難であるため尻部がこの受止部で受け止められ、したがって乗員が前方に移動するのを確実に抑制でき、また押し上げ機構や駆動手段を別に設けていないので構成が簡単で軽量・安価に構成できる。
【0012】
また、受止部を、6枚の板状体を5つの平行なヒンジにより連結するとともに、両端の板状体を外向き姿勢で互いに間隔をあけてシートクッション内部の部材に固定し、かつ中央の2枚の板状体が互いに近づくように付勢する付勢手段と一定以上近づくのを阻止するストッパ部とを設けて構成すると、剛性の高い板状体の連結により前後方向に高い剛性が得られ、かつ上方に位置する中央の2枚の板状体が中央から両側に向けて下方に傾斜するので乗員の大腿部への異物感を少なくでき、またストッパ部にて受止部の形状を安定させることができて、尻部を確実に支持することができる。
【0013】
なお、受止部は、シートクッションの幅方向に複数配列してもよいが、シートクッションの幅方向の中央部に配設すると、乗員が着座した状態で乗員の大腿部間に受止部が位置するので受止部の下降量が少なくて済み、急減速時に尻部が前方に移動しようとすると、骨盤が受止部にて確実に受けられるため、尻部の前方移動をより一層安定的に抑制できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の自動車用シートの一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0015】
図1において、1は自動車用シートのシートクッションで、左右両側のシートレール(図示せず)にて前後位置を調整可能にフロア上に取付けられている。2はシートクッション1の鋼板製のフレーム部で、その上部に発泡ウレタンなどのクッションパッド(図示せず)が装着され、さらにその外面が外装材(図示せず)にて被覆されている。フレーム部2の外周部には上方に膨出成形された周堤部2aが設けられ、クッションパッドはその内外周面に嵌合するように形成されている。
【0016】
フレーム部2の周堤部2a内の空間3の前部の中央部には、全体形状が略中空筒形状でかつ軸芯と直交する方向に弾性的に撓み変形可能に構成した受止部4がその軸芯方向を前後方向に向けて配設されている。クッションパッド(図示せず)には、この受止部4を収容配置する凹部が形成されている。
【0017】
本実施形態の受止部4は、図2、図3に示すように、6枚の板状体5a〜5fを5つの平行なヒンジ6a〜6eにより一連に連結して構成されている。連結された6枚の板状体5a〜5fの内、両端の板状体5a、5fは外向き姿勢で互いに適当な間隔をあけてシートクッション1のフレーム部2に固定されている。7は、これら板状体5a、5fに設けられた取付穴である。各ヒンジ6a〜6eは、板状体5a〜5fの連結端部に同一軸芯上で交互に嵌まり合うように形成したリング部8にヒンジピン9を挿通して構成されている。
【0018】
中央の2枚の板状体5c、5dの前後方向の両端部には、これら板状体5c、5dが互いに一定角度をなした状態でそれ以上近づかないように互いに係合する三角形状のストッパ部10a、10bが折り曲げ形成され、かつこれら2枚の板状体5c、5dを互いに近づけるように付勢する付勢手段としての引張ばね11が、板状体5c、5dの外側のヒンジ6b、6dのヒンジピン9、9間に張設されている。受止部4は、これらストッパ部10a、10bと引張ばね11にて全体として断面5角形の中空筒形状を呈して自立している。なお、付勢手段は引張ばね11に限らず、適当なヒンジ6a〜6eにねじりばねを配設して構成してもよい。
【0019】
以上の構成によれば、自動車用シートのシートクッション1上に乗員が座ったときや乗員がペダル操作した時には、図1に示すように、クッションパッドを介して下向きに押圧力F1 が加わり、クッションパッドが圧縮されながら下方に変位する。その際に、受止部4は、図4の(a)の状態から図4の(b)に示すように、引張ばね11の付勢力に抗して容易に扁平な状態に弾性的に撓み変形するので、乗員が違和感を感じたり、座り心地が悪化するようなことはない。特に、シートクッション1の幅方向の中央部に1つの受止部4が配設され、かつその受止部4の上部を構成する2枚の板状体5c、5dが中央から両側に向けて下方に傾斜しているので、乗員の大腿部への異物感がなく、座り心地が良好である。
【0020】
一方、自動車が前突して急減速が発生し、乗員の尻部が前方に移動しようとした時には、受止部4に対して後方から押圧力F2 が加わることになるが、受止部4は図4の(a)に示すようにその中空筒状の形状を維持しているため、前後方向に高い剛性を有し、尻部はこの受止部4にて受け止められる。特に、ストッパ部10a、10bと引張ばね11にて受止部4の断面形状が安定しているため、乗員の尻部を確実に支持することができる。また、受止部4に加わる押圧力F2 に下方分力があっても、受止部4は押圧力F2 の主要な方向によってその筒形状が規制されるためにそれ以上の変形を生じることはなく、受止部4が容易に下方に逃げるようなことはない。かくして、受止部4にて乗員の前方移動が受け止められ、受止部4の弾性変形にて乗員の前方への移動エネルギーが吸収され、前方移動量が抑制される。
【0021】
また、以上の構成によれば、従来例のような押し上げ機構や駆動手段を別に設けていないので構成が簡単で軽量・安価に構成できる。
【0022】
なお、上記実施形態の説明では、受止部4を6枚の板状体5a〜5fをヒンジピン9によるヒンジ6a〜6eで連結して構成した例を示したが、各板状体をインテグラルヒンジにて連結した合成樹脂の一体成形品で構成してもよい。
【0023】
更に、上記実施形態では、受止部4を6枚の板状体5a〜5fにて構成した例を示したが、全体形状が略中空筒形状でかつ軸芯と直交する方向に弾性的に撓み変形可能な構成であれば、任意の構成を採用することができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の自動車用シートによれば、以上のようにシートクッションの前部の内部に、全体形状が略中空筒形状でかつ軸芯と直交する方向に弾性的に撓み変形可能に構成した受止部をその軸芯を前後方向に向けて配設したので、シートクッション上に乗員が着座したときには受止部が容易に弾性的に撓み変形して扁平になるため、座り心地が悪化することはなく、かつ急減速時に乗員の尻部が前方に移動しようとすると中空筒形状の受止部にて尻部が受け止められ、したがって乗員が前方に移動するのを確実に抑制でき、また押し上げ機構や駆動手段を別に設けていないので構成が簡単で軽量・安価に構成できる。
【0025】
また、受止部を6枚の板状体を5つの平行なヒンジにより連結し、中央の2枚の板状体が互いに近づくように付勢する付勢手段と一定以上近づくのを阻止するストッパ部とを設けて構成すると、剛性の高い板状体の連結により前後方向に高い剛性が得られ、かつ上方に位置する中央の2枚の板状体が中央から両側に向けて下方に傾斜するので乗員の大腿部への異物感を少なくでき、またストッパ部にて受止部の形状を安定させることができて、尻部を確実に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用シートの一実施形態の斜視図である。
【図2】同実施形態の受止部の斜視図である。
【図3】同実施形態の受止部の分解斜視図である。
【図4】同実施形態の受止部の動作説明図である。
【図5】自動車用シートにおける急減速時の乗員の挙動の説明図である。
【図6】従来例の急減速時の乗員の前方移動を防止する手段の説明図である。
【図7】他の従来例の急減速時の乗員の前方移動を防止する手段を設けた自動車用シートの動作説明図である。
【符号の説明】
1 シートクッション
2 フレーム部
4 受止部
5a〜5f 板状体
6a〜6e ヒンジ
10a、10b ストッパ部
11 引張ばね(付勢手段)

Claims (2)

  1. シートクッションの前部の内部に、全体形状が略中空筒形状でかつ軸芯と直交する方向に弾性的に撓み変形可能に構成した受止部をその軸芯方向を前後方向に向けて配設したことを特徴とする自動車用シート。
  2. 受止部は、6枚の板状体を5つの平行なヒンジにより連結するとともに、両端の板状体を外向き姿勢で互いに間隔をあけてシートクッション内部の部材に固定し、かつ中央の2枚の板状体が互いに近づくように付勢する付勢手段と一定以上近づくのを阻止するストッパ部とを設けて構成したことを特徴とする請求項1記載の自動車用シート。
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