JP3681239B2 - プリントコイル形トランス及びスイッチング電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スイッチング電源等に用いて好適なプリントコイル形トランスに関し、特に電界遮蔽性を兼ね備えた、安定で高精度、高耐圧なコンデンサを内蔵する改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源に用いられるトランスでは一次側で発生するスイッチング・ノイズを二次側へ伝達するのを防ぐ目的で、銅箔などを一次・二次コイル間に巻き、その一端を回路のコモン電位に接続することでシールドとしてきた。しかし巻き線コイル形トランスでは、その巻き面を平坦に保つことは現実的に不可能であり、ボビンに巻かれた一次側コイルと二次側コイルとの間に生ずる浮遊容量は個体毎にばらついている。シールドもその表面が平坦でないコイル間に巻かれるため、同様に平坦性は得られない。また、一次・二次コイル間に巻かれているとはいえ、箔自体も絶縁距離を稼ぐため通称バリアと呼ばれるテープが巻き幅の両側に配置されるため、結果的にその箔の幅は、コイルの巻き幅と同程度となる。このため一次・二次コイル間の電気力線を完全に遮断することができない。このためコイル間の浮遊容量結合は完全にはなくせず、その大きさは、一次・二次コイル間や一次コイルとシールド、二次コイルとシールド間の距離、およびそれらの面積に影響される。結果として、浮遊容量はトランス個体毎に大きくばらついていた。
【0003】
ここで、巻き面が平坦に保てない理由としては、以下の理由がある。
▲1▼ボビンにテープなどの絶縁材と、入出力の仕様に応じたさまざまな径のワイヤを、さまざまなターン数で巻き付ける構造であるため、段差や巻き乱れが生じること、
▲2▼ボビンに植え込まれた端子へワイヤを引き出すため、引き出しワイヤがコイルを横切る部分で平坦性が失われること、
▲3▼ワイヤの引き出し口付近では、絶縁強化の目的のテープの断片が貼り付けられたり、ワイヤがチューブで覆われたりされることが多く、その部分で、平坦性が失われること、である。
【0004】
図12は従来のスイッチング電源装置の回路図であり、例えば特開平6―6970号公報に開示されている。一次コイルの中央端子▲2▼に入力電圧Vinを印加し、両端▲1▼、▲3▼に接続されたスイッチング素子SW1、SW2を相補的にオンオフしている。二次コイルの中央端子▲6▼は二次側コモンに接地されており、両端▲5▼、▲7▼はカソード端子が突き合わされたダイオードD1,D2に接続されている。ダイオードD1,D2の突き合わせ電圧VRECTは、コイルL1を介して負荷側に供給されると共に、電圧調整用の抵抗R1,R2によって分圧され、一次側コモンと二次側の整流出力端子の間に接続されたコンデンサCRTNにより一次側に帰還される。トランスの一次コイルと二次コイル間の浮遊容量CCを通じて伝達されるノイズは、新たに接続したコンデンサCRTNを介して一次側に流し込んでキャンセルする。このような回路により、十分なシールド効果を持ったトランスが得られなかったため、シールドの不完全性を補っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の通り、トランスの一次・二次間に存在する浮遊容量はトランスの個体毎に大きくばらつくため、キャンセルに必要な帰還成分を個体毎に調整する事が欠かせず、可変抵抗素子などのトリマ回路R1が必要であった。また、ノイズキャンセルに用いるコンデンサCRTNは一次・二次間に挿入するため、高耐圧品である必要があり、容量値変動はノイズキャンセル性能に影響するため、例えば温度補償型コンデンサを用いるなどの必要があった。本発明は、上述する課題を解決したもので、電界遮蔽性を兼ね備えた、安定で高精度、高耐圧なコンデンサを内蔵したトランスを実現することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明は、次の通りである。
(1)一次コイルのコイルパターンと、前記一次コイルと絶縁を要する二次コイルのコイルパターンと、前記一次コイルと前記二次コイル間の浮遊容量とを備えるプリントコイル形トランスにおいて、前記一次コイルのコイルパターン、前記二次コイルのコイルパターン、一次側スリットパターンまたは二次側スリットパターンがそれぞれ表面に形成され、複数枚が積層されたベース材と、前記ベース材の中央を貫通し、磁性材料よりなるコアとを備え、前記一次側スリットパターンは、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンとに挟み込まれ、前記一次コイル側の前記ベース材の面に形成し、隣接する前記一次コイルのコイルパターンの属する回路側に接続され、前記浮遊容量を通じて伝達されるノイズのキャンセル用のコンデンサを形成し、前記二次側スリットパターンは、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンとに挟み込まれ、前記二次コイル側の前記ベース材の面に形成し、隣接する前記二次コイルのコイルパターンの属する回路側に接続され、前記一次側スリットパターンに対向し、前記コンデンサを形成し、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンと前記一次側スリットパターンと前記二次側スリットパターンとは前記コアを取り囲む形状であることを特徴とするプリントコイル形トランス。
(2)前記一次側スリットパターンの輪郭が隣り合う前記一次コイルのコイルパターンの輪郭を覆う形状であり、前記二次側スリットパターン輪郭が隣り合う前記二次コイルのコイルパターンの輪郭を覆う形状であることを特徴とする(1)記載のプリントコイル形トランス。
(3)一次コイルのコイルパターンと、前記一次コイルと絶縁を要する二次コイルのコイルパターンと、前記一次コイルと前記二次コイル間の浮遊容量とを備えるプリントコイル形トランスを用いると共に、前記浮遊容量を通じて伝達されるノイズのキャンセル用のコンデンサを一次・二次間に備えたスイッチング電源装置において、前記プリントコイル形トランスは、前記一次コイルのコイルパターン、前記二次コイルのコイルパターン、一次側スリットパターンまたは二次側スリットパターンがそれぞれ表面に形成され、複数枚が積層されたベース材と、前記ベース材の中央を貫通し、磁性材料よりなるコアとを備え、前記一次側スリットパターンは、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンとに挟み込まれ、前記一次コイル側の前記ベース材の面に形成し、隣接する前記一次コイルのコイルパターンの属する回路側に接続され、前記コンデンサを形成し、
前記二次側スリットパターンは、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンとに挟み込まれ、前記二次コイル側の前記ベース材の面に形成し、隣接する前記二次コイルのコイルパターンの属する回路側に接続され、前記一次側スリットパターンに対向し、前記コンデンサを形成し、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンと前記一次側スリットパターンと前記二次側スリットパターンとは前記コアを取り囲む形状であることを特徴とするスイッチング電源装置。
(4)前記一次コイルの中央端子に入力電圧を印加し、前記一次コイルのそれぞれの両端に接続されたそれぞれのスイッチング素子を相補的にオンオフし、前記二次コイルの中央端子は二次側コモンに接地され、前記二次コイルの一端は第1のダイオードのアノードに接続され、前記二次コイルの他端は第2のダイオードのアノードに接続され、前記第1のダイオードのカソードと前記第2のダイオードのカソードとの接続点はコイルを介して負荷側に供給されると共に第1の抵抗と第2の抵抗との直列接続を介して前記二次側コモンに接地され、前記コンデンサは一次側コモンと前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点との間に接続されたことを特徴とする(3)記載のスイッチング電源装置。
また、次の通りである。
(イ)互いに絶縁を要する第1のコイルパターンと第2のコイルパターンの境界に、下記(a)〜(d)の特徴を持つ同一形状の第3のコイルパターンと第4のコイルパターンを2枚挟み込むことを特徴とするプリントコイル形トランス。
記
(a)前記第3及び第4のコイルパターンは、コアを取り囲む形状であること、(b)前記第3及び第4のコイルパターンには、各々に一つ以上のスリットが存在すること、(c)前記第3及び第4のコイルパターンに備えられたスリットのパターン面内での位置は、互いに揃えられていること、(d)前記第3及び第4のコイルパターンは、それぞれ隣接するコイルパターンの属する回路側に接続されること。
(ロ)前記互いに絶縁を要する第1のコイルパターンと第2のコイルパターンは、一次コイルと二次コイルであることを特徴とする(イ)記載のプリントコイル形トランス。
(ハ)前記互いに絶縁を要する第1のコイルパターンと第2のコイルパターンは、入力電圧の印加される主コイルと制御用に用いられるバイアス用コイルであることを特徴とする(イ)記載のプリントコイル形トランス。
(ニ)前記主コイルは、バイアス用コイルの電圧に比較して、高い入力電圧であることを特徴とする(ハ)記載のプリントコイル形トランス。
(ホ)互いに絶縁を要する第1のコイルパターンと第2のコイルパターンの境界に、下記(a)〜(d)の特徴を持つ同一形状の第3のコイルパターンと第4のコイルパターンを2枚挟み込むプリントコイル形トランスであって、この第3及び第4のコイルパターンの境界に、この第3及び第4のコイルパターンと同一形状の第5及び第6のコイルパターンを一組若しくは複数組交互に積層されるように挟み込み、この第3及び第5のコイルパターンを相互に接続し、この第4及び第6のコイルパターンを相互に接続することを特徴とするプリントコイル形トランス。
記
(a)前記第3及び第4のコイルパターンは、コアを取り囲む形状であること、(b)前記第3及び第4のコイルパターンには、各々に一つ以上のスリットが存在すること、(c)前記第3及び第4のコイルパターンに備えられたスリットのパターン面内での位置は、互いに揃えられていること、(d)前記第3及び第4のコイルパターンは、それぞれ隣接するコイルパターンの属する回路側に接続されること。
【0007】
本発明の構成によれば、スリットを備えたパターンには鎖交磁束により誘起される電位が生ずるが、対向するスリットパターン間で形状とスリット位置が同じため、対向するスリットパターン間にはスイッチングに伴う動的な電位傾斜は発生せず、従来の巻線型トランスに比較して安定なシールド効果を発揮する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて、本発明を説明する。図1は本発明の一実施例を示すプリントコイル形トランスの断面図である。ここでは、5枚のベース材が積層されており、ベース材の中央を磁性材料よりなるコアが貫通している。第1層のベース材には二次コイルS1,S2が表裏面に形成されており、第2層のベース材には二次コイルS3,S4が表裏面に形成されており、第4層のベース材には一次コイルP1,P2が表裏面に形成されており、第5層のベース材には一次コイルP3,P4が表裏面に形成されている。第3層のベース材には、二次コイル側の面には二次側スリットパターンSLsが形成されており、一次コイル側の面には一次側スリットパターンSLpが形成されている。ここで、スリットパターンSLはコイルパターンの1種で、幅の広い1ターンのコイルパターンが形成されていて、単一又は複数のスリットによりコイルパターンが分断されているものである。尚、実際のプリントコイル形トランスでは、各コイル間(例えばS2とS3間)にプリプレグシートおよびプリプレグシートに含浸されたエポキシなどの樹脂が絶縁材として存在するが、図では省略する。
【0009】
図2は各層のパターン図である。二次コイルS1では、端子▲6▼が形成されると共に、3ターンのコイルパターンが形成されており、中央のスルーホールを介して二次コイルS2と接続されている。二次コイルS2では、3ターンのコイルパターンが形成されると共に、端子▲7▼が設けられている。二次コイルS3では、端子▲5▼が形成されると共に、3ターンのコイルパターンが形成されており、中央のスルーホールを介して二次コイルS4と接続されている。二次コイルS4では、3ターンのコイルパターンが形成されると共に、端子▲6▼が設けられている。
【0010】
一次コイルP1では、端子▲2▼が形成されると共に、二次コイルと逆方向の3ターンのコイルパターンが形成されており、中央のスルーホールを介して一次コイルP2と接続されている。一次コイルP2では、3ターンのコイルパターンが形成されると共に、端子▲1▼が設けられている。一次コイルP3では、端子▲3▼が形成されると共に、3ターンのコイルパターンが形成されており、中央のスルーホールを介して一次コイルP4と接続されている。一次コイルP4では、3ターンのコイルパターンが形成されると共に、端子▲2▼が設けられている。二次側スリットパターンSLsでは、半径方向にスリットを有する全幅のパターンが形成されている。一次側スリットパターンSLpでは、半径方向にスリットを有する全幅のパターンが形成されている。
【0011】
このように構成されたトランスの動作原理について説明する。
(1) スリットを備えたパターンには鎖交磁束により誘起される電位が生ずるが、対向するスリットパターン間で形状とスリット位置が同じため、対向するスリットパターン間にはスイッチングに伴う動的な電位傾斜は発生しない。
【0012】
(2) 図3は、図1の実施例におけるコイル間の電気力線を説明する斜視図で、回路図の要部も対応するコイルに対して記入してある。スリットを備えたパターンを絶縁を要するコイル境界に配置するため、このスリットパターンはコイル間の電気力線を遮蔽する静電シールドとなる。それにも関らず、トランスコイルが安全規格を満たす範囲でコイル基板面積を有効に使うべく比較的広い面積で形成されることが多いことから、コイル間に配置するスリットパターンの面積もコイル面積と同じか、やや覆う程度の大きさとなり、スリットパターンの外周側および内周側から、絶縁を要するコイル間の電気力線が漏れることになる。
【0013】
しかし、巻き線型トランスと異なり一次・二次コイル間の距離は安定しており、スリットパターンと一次コイル、スリットパターンと二次コイルの距離も同様に安定に形成できる。更に、その面積や形状も、プリント基板プロセスを用いるため、ワイヤを巻く構造に比べてはるかに精度よく形成できる。この事から、完全ではないが、巻き線型トランスに比べてはるかに安定なシールド効果が得られる。また、スリットパターンに隣接するコイル間距離が安定しているため、漏れる電気力線の個体差も極めてばらつきが小さい。
【0014】
(3) 単純に適当な位置に複数枚のパターンを対向させれば、コンデンサが形成できることは容易に考えられる。しかし、この複数枚のスリットパターンを例えばコイル境界でない層に配置して高耐圧のコンデンサを形成しようとすると、その間に必要な絶縁を満たす厚みの絶縁材を挟み込む必要があるため、トランスの積層厚みは、トランス本来の厚みに加えてコンデンサの厚みを加えたものとなり、商品価値が低下する。しかし本実施例では、本来絶縁を要するコイル境界に配置するため、コイル間に備えられた絶縁材により、そのスリットパターン間に何も追加することなく、自動的にコイルと同等の絶縁耐力を備えられる。しかもそのスリットパターン同士の距離は、前述のコイルの説明で用いたのと同様に、極めて安定である。
【0015】
(4) プリントコイル形トランスは、その絶縁材料として、プリプレグシートおよび、エポキシ樹脂を用いており、それらの比誘電率は標準的なもので4前後である。また、一般的なコンデンサ部品に比べて、電極となる一つのスリットパターン面積を大きく作成できる。このため、例えば比誘電率が1000〜20000のような高誘電率体のチタン酸バリウム系セラミックを用いて何層にも積層する構造であるセラミックコンデンサが、温度や印加電圧によって容量が大きく変動するのに対して、安定である。
【0016】
(5) スリットパターンは多層積層プリント板と同様のプロセスで作成できるため、スリットパターンの追加はコストの上昇に影響しない。
【0017】
次に、スイッチング電源に図1のプリントコイル形トランスを装着する場合を説明する。図4は、図11のプリントコイル形トランスを装着するスイッチング電源の回路図である。図4において前記図12と相違する点を説明すると、図12のトランス部分とノイズキャンセル用のコンデンサCRTNを、図1に示すトランスで置き換えている。
【0018】
このように構成した本適用例について説明する。図12の回路は、巻き線型トランスの構造に由来する一次・二次コイル間の浮遊容量の個体差が大きく、ノイズキャンセル成分もトランスの個体差に合わせて調整することが不可欠であるため、可変抵抗素子R1が必要である。これに対して、図1のトランスはその構造上、一次・二次間コイルの浮遊容量のトランス個体差が小さい。と同時に、コイル間にスリットパターンを少なくとも2枚配置して形成されたコンデンサは比較的面積が広く、誘電率も低く、安定な性能が得られる。このため、図4に示すように、巻き線トランスでは不可欠であった可変抵抗素子R1を付加することなくノイズキャンセルが可能となる。
【0019】
図5は本発明の第2の実施例を示すトランスの断面図で、通常一次側に属するバイアスコイルを含んだ3コイルトランスを示している。ここでは、6枚のベース材が積層されており、ベース材の中央を磁性材料よりなるコアが貫通している。図1の実施例と同様に、第1層のベース材には二次コイルS1,S2が表裏面に形成され、第2層のベース材には二次コイルS3,S4が表裏面に形成され、第4層のベース材には一次コイルP1,P2が表裏面に形成され、第5層のベース材には一次コイルP3,P4が表裏面に形成され。第3層のベース材には二次側スリットパターンSLsと一次側スリットパターンSLpが形成されている。更に第6層のベース材にはバイアスコイルB1,B2が表裏面に形成されている。
【0020】
図6は、図5のトランスの各層のパターン図である。図2と相違する点について説明すると、バイアスコイルB1では、端子▲8▼が形成されると共に、一次コイルと同一方向の3ターンのコイルパターンが形成されており、中央のスルーホールを介してバイアスコイルB2と接続されている。バイアスコイルB2では、3ターンのコイルパターンが形成されと共に、端子▲9▼が形成されている。
【0021】
図7は、本発明の第3の実施例を示すトランスの断面図である。二次コイルSecと一次コイルPrmの境界にスリットパターンを有するコイルを挿入すると共に、一次コイルPrmとバイアスコイルBiasの境界にもスリットパターンを有するコイルを挿入している。
【0022】
図8は、本発明の第4の実施例を示すトランスの断面図である。二次コイルSecと一次コイルPrmの境界にスリットパターンを有するコイルは存在しないが、一次コイルPrmとバイアスコイルBiasの境界にスリットパターンを有するコイルが挿入されている。
【0023】
図9は、スリットパターンの第1の変形実施例を説明するパターン図である。図2で示した少なくとも一つのスリットを含むパターンは円盤状に限らず、矩形状でもよい。矩形状の場合には、その輪郭が隣り合うコイルパターンの輪郭を覆う形状であればよい。図10は、スリットパターンの第2の変形実施例を説明するパターン図である。ここでは、スリットを複数含んでいる。
【0024】
図11は、本発明の第5の実施例を示すトランスの断面図である。図一の実施例と比較すると、図1の実施例ではスリットパターンの数は、第3層のベース材の裏表に形成された二次側スリットパターンSLsと一次側スリットパターンSLpの2枚である。これに対して、第5の実施例ではスリットパターンの数が六枚であり、積層の順序は、SLs1、SLp1、SLs2、SLp2、SLs3、SLp3のように交互に積層してある。これは、二次側スリットパターンSLs1と一次側スリットパターンSLp3の間に、一次側及び二次側スリットパターンSLp1、SLs2、SLp2、SLs3を4枚挿入する構造になっている。
【0025】
尚、上記第3及び第4の実施例においては、二次コイルSec、一次コイルPrm、若しくはバイアスコイルBiasの境界にスリットパターンを有するコイルを挿入する場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一次側・二次側を問わずそれ以上(4つ以上)のコイルを備えていてもよい。また、図1や図5で示した一次コイルや二次コイル、バイアスコイルの積層順番が求めるアプリケーションによって異なっていても、交互にサンドイッチされた状態であってもよい。また、上記のいずれに対しても、一次側や二次側のコイルの積層枚数は問わない。
【0026】
更に、図1の実施例においては、スリットパターンが1つのベース材の裏表に配置されているが、スリットパターン間はプリプレグだけであっても、ベース材料とプリプレグの組合せであっても所望の耐電圧をみたすのであれば材料の組合せは問わない。これは上記のコイル枚数や、コイルの積層順番などに関わらず当てはまる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、プリントコイル形トランスは、コイル間で絶縁を要する箇所にコンデンサの電極となるパターンを形成する構造のため、本来のコイル間の絶縁に必要な絶縁材を使用するだけで、コンデンサも自ずと同じ絶縁耐力を得ることができる。そのため余分な絶縁材を必要とせず、トランスの積層厚みを増すことなく高機能化できる効果を持つ。これは電子機器・素子の小型化要求を満たしつつ高機能化できることを意味する。
【0028】
加えて、プリント基板製造プロセスを用いたプリントコイル形トランスは、一次・二次コイル間の容量の個体差が、従来型巻き線トランスに比べて極めて小さいため、例えば、実施例に示した回路では、トランス個体毎でノイズキャンセル成分を調整する可変素子が不要となる効果が得られる。さらに、図11の第5の実施例によれば、偶数枚のスリットパターンを交互に挟み込むことによって、挟み込まないときに比較してスリットパターン間の容量を増大できるという特有の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すプリントコイル形トランスの断面図である。
【図2】各層のパターン図を示している。
【図3】図1の実施例におけるコイル間の電気力線を説明する斜視図である。
【図4】スイッチング電源に図1のプリントコイル形トランスを装着する場合を説明する。
【図5】本発明の第2の実施例を示すトランスの断面図である。
【図6】図5のトランスの各層のパターン図である。
【図7】本発明の第3の実施例を示すトランスの断面図である。
【図8】本発明の第4の実施例を示すトランスの断面図である。
【図9】スリットパターンの第1の変形実施例を説明するパターン図である。
【図10】スリットパターンの第2の変形実施例を説明するパターン図である。
【図11】本発明の第5の実施例を示すトランスの断面図である。
【図12】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
【符号の説明】
B1 バイアスコイル
P1 一次コイル
S1 二次コイル
SL スリットコイル
Claims (4)
- 一次コイルのコイルパターンと、前記一次コイルと絶縁を要する二次コイルのコイルパターンと、前記一次コイルと前記二次コイル間の浮遊容量とを備えるプリントコイル形トランスにおいて、
前記一次コイルのコイルパターン、前記二次コイルのコイルパターン、一次側スリットパターンまたは二次側スリットパターンがそれぞれ表面に形成され、複数枚が積層されたベース材と、前記ベース材の中央を貫通し、磁性材料よりなるコアとを備え、
前記一次側スリットパターンは、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンとに挟み込まれ、前記一次コイル側の前記ベース材の面に形成し、隣接する前記一次コイルのコイルパターンの属する回路側に接続され、前記浮遊容量を通じて伝達されるノイズのキャンセル用のコンデンサを形成し、
前記二次側スリットパターンは、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンとに挟み込まれ、前記二次コイル側の前記ベース材の面に形成し、隣接する前記二次コイルのコイルパターンの属する回路側に接続され、前記一次側スリットパターンに対向し、前記コンデンサを形成し、
前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンと前記一次側スリットパターンと前記二次側スリットパターンとは前記コアを取り囲む形状である
ことを特徴とするプリントコイル形トランス。 - 前記一次側スリットパターンの輪郭が隣り合う前記一次コイルのコイルパターンの輪郭を覆う形状であり、
前記二次側スリットパターン輪郭が隣り合う前記二次コイルのコイルパターンの輪郭を覆う形状である
ことを特徴とする請求項1記載のプリントコイル形トランス。 - 一次コイルのコイルパターンと、前記一次コイルと絶縁を要する二次コイルのコイルパターンと、前記一次コイルと前記二次コイル間の浮遊容量とを備えるプリントコイル形トランスを用いると共に、
前記浮遊容量を通じて伝達されるノイズのキャンセル用のコンデンサを一次・二次間に備えたスイッチング電源装置において、
前記プリントコイル形トランスは、
前記一次コイルのコイルパターン、前記二次コイルのコイルパターン、一次側スリットパターンまたは二次側スリットパターンがそれぞれ表面に形成され、複数枚が積層されたベース材と、前記ベース材の中央を貫通し、磁性材料よりなるコアとを備え、
前記一次側スリットパターンは、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンとに挟み込まれ、前記一次コイル側の前記ベース材の面に形成し、隣接する前記一次コイルのコイルパターンの属する回路側に接続され、前記コンデンサを形成し、
前記二次側スリットパターンは、前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンとに挟み込まれ、前記二次コイル側の前記ベース材の面に形成し、隣接する前記二次コイルのコイルパターンの属する回路側に接続され、前記一次側スリットパターンに対向し、前記コンデンサを形成し、
前記一次コイルのコイルパターンと前記二次コイルのコイルパターンと前記一次側スリットパターンと前記二次側スリットパターンとは前記コアを取り囲む形状である
ことを特徴とするスイッチング電源装置。 - 前記一次コイルの中央端子に入力電圧を印加し、
前記一次コイルのそれぞれの両端に接続されたそれぞれのスイッチング素子を相補的にオンオフし、
前記二次コイルの中央端子は二次側コモンに接地され、
前記二次コイルの一端は第1のダイオードのアノードに接続され、
前記二次コイルの他端は第2のダイオードのアノードに接続され、
前記第1のダイオードのカソードと前記第2のダイオードのカソードとの接続点はコイルを介して負荷側に供給されると共に第1の抵抗と第2の抵抗との直列接続を介して前記二次側コモンに接地され、
前記コンデンサは一次側コモンと前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点との間に接続された
ことを特徴とする請求項3記載のスイッチング電源装置。
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Cited By (1)
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