JP3680958B2 - セメント製造方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば構造物の解体時に排出される石綿を含有する廃材を使用したセメントの製造技術に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
石綿には、クリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)といった種類があり、これらは他の材料と複合させることで耐熱性や抄造性、保形性が向上し、しかも長期間にわたって強度低下が起き難くいことから、従来より様々な分野で広く利用されて来た。
【0003】
しかし、近年になって石綿の人体に対する有害性が指摘され、代替材料の開発が急がれている。これと並行して、既存の構造物解体時に排出される石綿を含有する廃材(以下、石綿廃材)の処理が緊急の課題となっている。
石綿廃材の処理は、セメントによる固化後、地中に埋設する方法が一般的であるが、セメントを必要とすること、及び埋立地の確保が非常に困難である現状を考慮すると、今後見込まれる大量の石綿廃材の処理を埋立てに頼ることはできない。
【0004】
ところで、石綿による障害は、体内に取り込まれた針状の繊維が肺を刺激することで引き起こされる。従って、人体に悪影響を及ぼさないよう無害化することが研究され、ロータリーキルンで焼成することにより石綿廃材を溶融固結化し、針状繊維でなくすることが提案された。
しかし、この処理方法によっても、石綿廃材の無害化は困難であった。これは次のような理由による。焼成温度と無害化率との関係を示す図4のグラフから判るように、石綿は、例えば800℃で約90%、1000℃で約98%、そして1450℃でほぼ100%無害化できる。従って、投入された石綿廃材が1450℃以上の温度で焼成されれば無害化される。ところが、実際には、投入された石綿廃材の一部は燃焼ガスと共に排出されることが多い。そして、石綿廃材を含んだ燃焼ガスはプレヒータを経て排出されるが、このプレヒータ内の温度は最高でも1200℃程度であるから、石綿廃材の無害化は困難であり、改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、石綿廃材を無害化して利用できるセメントの製造技術を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の目的は、ロータリーキルンを用いたセメントの製造方法であって、
前記ロータリーキルンの排出口側に設けた燃焼手段の近傍から石綿廃材を前記ロータリーキルン内に供給し、
この供給された石綿廃材、及びセメント原料を前記燃焼手段によって処理する
ことを特徴とするセメント製造方法によって達成される。
【0008】
又、ロータリーキルンを用いたセメントの製造方法であって、
石綿廃材を前記ロータリーキルンの排出口側に設けた燃焼手段から燃料と共に前記ロータリーキルン内に供給し、
この供給された石綿廃材、及びセメント原料を前記燃焼手段によって処理することを特徴とするセメント製造方法によって達成される。
【0009】
又、ロータリーキルンを備えたセメントの製造装置であって、
前記ロータリーキルンの排出口側に設けられた燃焼手段と、
この燃焼手段の近傍に設けられた石綿廃材の供給手段とを具備し、
セメント原料を供給された石綿廃材と共に前記ロータリーキルン内で前記燃焼手段によって処理するようにしたことを特徴とするセメント製造装置によって達成される。
【0010】
又、ロータリーキルンを備えたセメントの製造装置であって、
前記ロータリーキルンの排出口側に設けられ、石綿廃材を燃料と共に前記ロータリーキルン内に供給するよう構成された燃焼手段を具備し、
セメント原料を供給された石綿廃材と共に前記ロータリーキルン内で前記燃焼手段によって処理するようにしたことを特徴とするセメント製造装置によって達成される。
【0011】
すなわち、本発明では、石綿廃材とセメント原料とは別の経路からではあるが、ロータリーキルン内に投入し、焼成帯で処理するようにしたので、石綿廃材のみをロータリーキルンに投入した場合の問題はなく、例えば針状繊維構造を有する石綿廃材が熱風により外部に噴き出されようとしても、投入されて来るセメント原料により阻止され、排出されることがない。つまり、ロータリーキルン内に供給された石綿廃材は全て1450℃以上の高温にさらされ、無害化される。更に、このものは投入されて来たセメント原料に包含され、針状繊維構造は喪失し、セメントクリンカとして一体のものとなる。従って、石綿廃材は無害なものとなり、かつ、これを格別な手段で処理する必要はなく、例えば埋め立て処理する必要はなく、セメントとして利用できるようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1実施形態に係るセメント製造装置の概略図である。
同図中、1はセメント原料(石灰石、粘土など)の粉末を予備加熱するプレヒータ、2は予備加熱されたセメント原料が投入、焼成されるロータリーキルンである。
【0013】
このロータリーキルン2とプレヒータ1との間には、ロータリーキルン2によるセメント原料の焼成を補助するための仮焼炉3が設けられている。
4は重油又は微粉炭を燃料とするバーナ、5はバーナ4の近傍に設けられた石綿廃材供給管である。
6は空気圧を利用して石綿廃材を輸送するエジェクタであり、最大粒径が10mm程度に破砕されてホッパ7に収められた石綿廃材はエジェクタ6によって石綿廃材供給管5からロータリーキルン2内に供給されるようになっている。
【0014】
8はセメント原料を焼成して得られたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラ、9aは燃焼ガスを、9bはクリンカ冷却空気を排出するためのファンである。
すなわち、プレヒータ1に投入されたセメント原料は、実線で示す経路を通ってロータリーキルン2内に送り込まれるが、この際、破線で示す経路を通って流れる燃焼ガスとの間で熱交換がなされ、予備加熱される。そして、この予備加熱によって、セメント原料の温度は1000〜1200℃となる。
【0015】
ロータリーキルン2は2〜3rpmで回転しており、この回転に伴って、プレヒータ1から送り込まれたセメント原料は徐々にその排出口側に送り出される。これとは別にロータリーキルン2内には、バーナ4の近傍に設けた石綿廃材供給管5から石綿廃材が供給されている。そして、この石綿廃材はプレヒータ1側から送られて来るセメント原料に取り込まれると共に、ロータリーキルン2内の焼成帯において1450℃以上の温度で熱処理され、クリンカクーラ8に排出される。このようにして、無害化された石綿廃材を含むセメントクリンカが得られる。
【0016】
上述した如く、本発明のセメント製造技術では、未処理の石綿廃材が燃焼ガスと共に排出されてしまうといった不具合が起きず、石綿廃材のリサイクルが容易に行える。
尚、上記実施形態において、石綿廃材供給管5から吹き込まれる石綿廃材の搬送速度は、バーナ4から供給される燃料のそれと同程度であることが好ましいが、±20%の範囲で増減することができる。特に、石綿廃材の粒径によっては、±50%の範囲で増減できる。
【0017】
図2及び図3は、燃料として微粉炭を使用するバーナを備えた本発明の第2実施形態に係るもので、図2はセメント製造装置におけるバーナの断面図、図3はX−X線でのバーナの正面図である。
この第2実施形態の装置でも、その基本的な技術思想は上記第1実施形態とほぼ同じであり、石綿廃材を燃料と共にロータリーキルン内に供給するようにしたことを特徴とするものであるから、以下、要部(バ−ナ部分)についてのみ説明する。
【0018】
図2及び図3中、10a,10bは微粉炭着火用の重油が送り込まれる油送管であり、この油送管10a,10bは管11に挿入され、更にその先端部には位置決め用のプレート11aが取り付けられている。
12,13はエアが送り込まれる管であり、管11と管12との間には旋回流を発生させるためのフィン14が設けられている。
【0019】
15は破砕された石綿廃材及び微粉炭が送り込まれる管であり、管13と管15との間には一定間隔で多孔板16が設けられている。そして、管15に送り込まれた石綿廃材及び微粉炭は、多孔板16間に存在する開口16aから噴出するようになっている。
17はエアが送り込まれる管であり、この管17から送り込まれたエアの一部は分割され、多孔板16から吹き出すようになっている。
【0020】
18は防護用の管である。
上記バーナを備えたセメント製造装置では、燃料と共に石綿廃材がロータリーキルン内に噴出し、2000℃以上に達するバーナの火炎によって無害化させられる。
そして、プレヒータ側から送られて来るセメント原料が、無害化された石綿廃材を取り込み、焼成帯において1450℃以上の温度で熱処理され、セメントクリンカとなる。この方法を用いた場合には、上記第1実施形態よりも一層無害化の程度が高く、更に効率良く石綿廃材を処理できる。
【0021】
尚、微粉炭に着火後、油送管10a,10bをプレート11aと共に管11から引き抜き、この管11を利用して石綿廃材を送り込むようにすることもでき、これによっても上記第2実施形態と同等の効果が得られる。
【0022】
【発明の効果】
石綿廃材は無害化され、セメントとして取り込まれたものになるので、従来のような埋め立てといった格別な処理が不要であり、石綿廃材の処理に無駄がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セメント製造装置(第1実施形態)の概略図である。
【図2】セメント製造装置(第2実施形態)におけるバーナの断面図である。
【図3】図2におけるX−X線での正面図である。
【図4】焼成温度と石綿廃材の無害化率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 プレヒータ
2 ロータリーキルン
3 仮焼炉
4 バーナ
5 石綿廃材供給管
6 エジェクタ
7 ホッパ
8 クリンカクーラ
9a,9b ファン

Claims (4)

  1. ロータリーキルンを用いたセメントの製造方法であって、
    前記ロータリーキルンの排出口側に設けた燃焼手段の近傍から石綿廃材を前記ロータリーキルン内に供給し、
    この供給された石綿廃材、及びセメント原料を前記燃焼手段によって処理する
    ことを特徴とするセメント製造方法。
  2. ロータリーキルンを用いたセメントの製造方法であって、
    石綿廃材を前記ロータリーキルンの排出口側に設けた燃焼手段から燃料と共に前記ロータリーキルン内に供給し、
    この供給された石綿廃材、及びセメント原料を前記燃焼手段によって処理する
    ことを特徴とするセメント製造方法。
  3. ロータリーキルンを備えたセメントの製造装置であって、
    前記ロータリーキルンの排出口側に設けられた燃焼手段と、
    この燃焼手段の近傍に設けられた石綿廃材の供給手段とを具備し、
    セメント原料を供給された石綿廃材と共に前記ロータリーキルン内で前記燃焼手段によって処理するようにしたことを特徴とするセメント製造装置。
  4. ロータリーキルンを備えたセメントの製造装置であって、
    前記ロータリーキルンの排出口側に設けられ、石綿廃材を燃料と共に前記ロータリーキルン内に供給するよう構成された燃焼手段を具備し、
    セメント原料を供給された石綿廃材と共に前記ロータリーキルン内で前記燃焼手段によって処理するようにしたことを特徴とするセメント製造装置。
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