JP3680911B2 - 金型の温度制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はダイカスト鋳造、金型鋳造や低圧鋳造、あるいは樹脂射出成形等に利用される金型の温度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイカスト鋳造、金型鋳造や低圧鋳造、あるいは樹脂射出成形において、溶湯や溶融樹脂により加熱されて高温になる金型を冷却して、金型温度を適正に維持することは製品の品質及び生産性を向上させるために重要である。例えば、金型鋳造で、金型に高温部分があると鋳造された製品の表面に焼付きやかじり等の不良が発生する。このため、金型の内部に冷却水路を設け、この冷却水路に冷却水を流通させることにより、金型を内部冷却することが行われている。
【0003】
例えば、特開平1−143750号公報には、金型内の冷却水路への冷却水供給系統、すなわち金型より上流の給水側に開閉弁を設けるとともに、金型に温度センサを設け、金型の目標温度と検出温度との偏差に応じて開閉弁の開放時の保持時間を制御する金型の温度制御方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、金型鋳造等で金型の温度が適温域よりも低いと、湯まわり不良が生じるという問題がある。このため、鋳造の作業始めや、鋳造作業の中断により金型温度が適温域よりも低くなった場合、溶湯からの受熱により金型温度を適温域まで上昇させるために数ショットの鋳込み(捨打ち)が行われる。
【0005】
かかる捨打ちに要するショット数は、多くなればそれだけ生産性が低下するため、なるべく少なくすることが望まれる。前記内部冷却により金型の温度制御を行う場合、前記開閉弁を閉じて金型内の冷却水路への冷却水の供給を止めた状態で捨打ちを行えば、溶湯により加熱された金型が冷却水により冷却されることがないため、金型の温度を速やかに上昇させることができ、その結果捨打ちに要するショット数を少なくすることが可能となる。
【0006】
しかしながら、冷却水の供給を止めた状態で捨打ちを行い金型温度を適温域まで上昇させた後、金型温度が過度に上昇することを防ぐべく冷却水路に冷却水を供給すると、金型が冷却水により急冷されることになるため、熱応力により金型が割れるという新たな問題が発生する。特に、金型の鋳抜きピン等、キャビティ内に突出する突起部は、キャビティ内に充填された溶融材料により周囲が囲まれ、しかも体積が小さいことから、該溶融材料からの受熱により他の金型部分よりも高温となるため、該突起部の内部に設けられた冷却水路に冷却水が供給されると、熱応力による割れの問題が発生し易くなる。勿論、金型の冷却水路に冷却水を流通させながら捨打ちを行えば、かかる金型の割れの問題を解消することができるが、この場合冷却水の流通により金型が冷却される分だけ金型の温度上昇が遅れ、捨打ちに要するショット数の増加により生産性が低下してしまう。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、熱応力による金型の割れの問題を解消しつつ、捨打ちに要するショット数をなるべく少なくして生産性を向上させることのできる金型の温度制御方法を提供することを解決すべき技術課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の金型の温度制御方法は、金型のキャビティ内に注入した溶融材料を冷却固化させて所定形状の成形体とした後、該成形体を脱型する1ショット工程を繰り返すサイクル過程で、該金型の内部に設けられた冷却水路に冷却水を供給して該金型を適温域に制御する金型の温度制御方法において、作業始めの段階又は作業中断後に再び作業を開始する段階で上記金型の温度が適温域よりも低い場合に捨打ちを行う際に、上記冷却水路内に冷却水を供給するとともに該冷却水路内の冷却水の圧力を上昇させることを特徴とするものである。
【0009】
ここに、上記適温域とは、金型温度が低すぎて溶融材料の湯まわり不良等の欠陥が発生することがなく、かつ、金型温度が高すぎて焼付きやかじり等の欠陥が発生することがない温度域をいう。
【0010】
【発明の実施の形態】
この金型の温度制御方法では、金型の温度が適温域よりも低い場合に冷却水路内の冷却水の圧力を上昇させる。金型の温度が適温域よりも低い場合とは、鋳造等の作業始めの段階や、作業中断により金型温度が適温域よりも低下した後、再び作業を開始する段階をいい、本発明方法ではこれらの段階で捨打ちを行う際に、金型の冷却水路内にある冷却水の圧力を上昇させる。
すなわち、本発明の金型の温度制御方法では、作業始めの段階又は作業中断後に再び作業を開始する段階で上記金型の温度が適温域よりも低い場合に捨打ちを行う際に、上記冷却水路内に冷却水を供給するとともに該冷却水路内の冷却水の圧力を上昇させる。
【0011】
冷却水路内の冷却水の圧力を上昇させるためには、金型内部に設けられた冷却水路の排水口に接続された排水路に、該排水路を開閉制御できる開閉弁や開度を調整できる比例弁等の弁手段を設けることにより行うことができる。すなわち、排水路に設けられた開閉弁を閉じた状態で冷却水路内に冷却水を供給すれば、冷却水路内の冷却水の圧力を上昇させることができる。また、排水路に設けられた比例弁の開度を縮小させた状態で冷却水路内に冷却水を供給すれば、冷却水路内の冷却水の圧力を該開度の縮小量に応じて上昇させることができる。かかる弁手段としては、電磁式のものでも、手動式のものでもよい。また、金型内部に設けられた冷却水路の給水口に接続された給水路にポンプを設け、このポンプにより高圧の冷却水を冷却水路に供給するようにしてもよい。
【0012】
冷却水の圧力が上昇すれば、それに伴い冷却水の沸点が上昇する。このため、冷却水路内において、冷却水を蒸気化させることなくより高温の水(圧縮水)として存在させることができる。すなわち、冷却水路内の冷却水は、蒸気化することを回避しつつ、圧力上昇分だけより高温の水(圧縮水)とすることができる。冷却水路内の冷却水の温度が上昇すれば、その分だけ金型の冷却能力が低下する。したがって、冷却水路内の冷却水の圧力を上昇させることにより、溶融材料からの受熱による金型の温度上昇をより速やかに達成させることができ、捨打ちに要するショット数を減少させて生産性を向上させることが可能となる。
【0013】
また、冷却水路内の冷却水が蒸気化してしまうと、蒸気は圧力一定下で液体状態にある場合よりも高温となって過熱蒸気となるため、また金型から冷却水への伝熱や冷却水の流通が水蒸気により妨げられるため、水蒸気が発生した部分だけ金型が局部的に過度に加熱されて熱応力による金型の割れの問題が発生し易くなる。この点、本発明方法では、冷却水の圧力が上昇した分だけ冷却水路内の冷却水が蒸気化することを回避することができるため、冷却水の蒸気化による金型の割れの発生を抑えることができる。
【0014】
さらに、本発明方法では、冷却水路内に冷却水を供給しながら捨打ちを行って金型の温度を適温域まで上昇させる。このため、冷却水路への冷却水の供給を止めた状態で捨打ちを行う場合のように金型が冷却水で急冷されることがなく、熱応力により金型が割れることを効果的に防止することができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の金型の温度制御方法を具現化した実施例について説明する。
なお、本実施例はいずれもダイカスト鋳造用の金型の温度制御に本発明を適用したものである。
(実施例1)
本実施例では、図1の模式図に示すように、金型1の内部に冷却水路2が設けられている。この冷却水路2は、金型1の上流側で冷却水供給源3に接続された給水路4に接続され、金型1の下流側で排水路5に接続されている。
【0016】
そして、排水路5には、手動式の絞り弁6が設けられると共に、この絞り弁6の下流側に電磁式の開閉弁7が設けられている。なお、開閉弁7は図示しない制御手段により開閉制御が行われる。
この実施例では、鋳造作業を開始する際、まず金型1の冷却水路2内に冷却水を供給する。このときの冷却水は、捨打ちが終了した後、良品の鋳物品を鋳造する段階で、鋳物品の離型時に金型1の表面温度が適温域(設定温度)になるように、予め設定された流量に制御される。そして、排水路5に設けられた開閉弁7を閉じた状態とし、冷却水路2内に冷却水を供給しつつ、捨打ちを行う。これにより、金型1の冷却水路2内にある冷却水の圧力を上昇させた状態で、捨打ちを行うことができる。なお、冷却水路2内の圧力が所定量上昇した後は、冷却水供給源3から冷却水路2内への冷却水の供給を止め、圧力が上昇した冷却水を冷却水路2内に封入した状態で捨打ちを行えばよい。また絞り弁6は、必要に応じて開度を絞ることにより、開閉弁7におけるパッキン等の耐久性を向上させるためのものであり、必ずしも必須のものではない。
【0017】
このように本実施例では、排水路5に設けられた開閉弁7を閉じて圧力が上昇した冷却水を冷却水路2内に封入した状態で捨打ちを行う。このため、金型1の冷却水路2内にある冷却水は、圧力上昇に伴って沸点が上昇する。したがって、冷却水路2内において、冷却水を蒸気化させることなくより高温の水(圧縮水)として存在させることができる。すなわち、冷却水路2内の冷却水は、蒸気化することを回避しつつ、圧力上昇分だけより高温の水(圧縮水)とすることができる。冷却水路内の冷却水の温度が上昇すれば、その分だけ金型の冷却能力が低下する。よって、冷却水路2内の冷却水の圧力を上昇させることにより、溶湯からの受熱による金型1の温度上昇をより速やかに達成させることができ、捨打ちに要するショット数を減少させて生産性を向上させることが可能となる。
【0018】
また、冷却水路2内の冷却水が蒸気化してしまうと、水蒸気が発生した部分だけ金型1が局部的に過度に加熱されて熱応力による金型1の割れの問題が発生し易くなる。この点、本実施例では、冷却水の圧力が上昇した分だけ冷却水路2内の冷却水が蒸気化することを回避することができるため、冷却水の蒸気化による金型1の割れの発生を抑えることができる。
【0019】
さらに、本実施例では、冷却水路2内に冷却水を供給しながら捨打ちを行って金型1の温度を適温域まで上昇させるため、冷却水路2への冷却水の供給を止めた状態で捨打ちを行う場合のように金型1が冷却水で急冷されることがなく、熱応力により金型1が割れることを効果的に防止することができる。
そして、上記捨打ちが終了した後は、開閉弁7を開いて適正な鋳造作業を行えばよい。このとき、冷却水路2内を流れる冷却水により、金型1の表面温度は適温域に制御される。
【0020】
また、鋳造作業を中断して金型1の温度が適温域よりも低下した場合は、その後に鋳造作業を再開する際に、上述した鋳造作業を開始する際の操作を同様に行えばよい。
(実施例2)
図2に示す本実施例は、絞り弁6及び開閉弁7の代わりに、開度を調整できる電磁式流量調整弁としての比例弁8を排水路5に設けたものであり、その他の構成は上記実施例1と同様である。なお、比例弁8は図示しない制御手段によりその開度が調整される。
【0021】
したがって、本実施例は上記実施例1と同様の作用、効果を奏する他、以下に示す作用効果も奏する。
すなわち、本実施例では、比例弁8の開度を適宜調整することにより、比例弁8の開度に応じて冷却水路2内の冷却水の圧力を調整することができる。このため、鋳物品の離型時に金型1の表面温度が適温域(設定温度)になるように予め設定された一定の流量で冷却水を冷却水路2内に供給しつつ、比例弁8の開度の調整により冷却水路2内の冷却水の圧力を適宜調整することができる。
【0022】
(実施例3)
図3に示す本実施例は、上記実施例2において、比例弁8よりも上流側の排水路5に分岐排水路5’を設け、この分岐排水路5’にリリーフ弁9をさらに設けたものである。その他の構成は上記実施例2と同様である。
この実施例では、冷却水路2内の冷却水の圧力が所定圧力以上になると、リリーフ弁9が作動するため、比例弁8におけるパッキン等が高圧の冷却水により損傷することを防ぐことができ、したがって比例弁8の耐久性を向上させることが可能となる。
【0023】
(実施例4)
図4に示す本実施例は、上記実施例3において、金型1の冷却水路2の出口に集流弁10を設けたものである。その他の構成は上記実施例3と同様である。
すなわち、金型1内に4本に分岐した第1〜第4冷却水路2a〜2dを設けた場合、第1〜第4冷却水路2a〜2dの出口に第1〜第4配管11a〜11dをそれぞれ接続する。そして、第1及び第2配管11a及び11bを第1集流弁10a内で第1接続管12aに接続し、第3及び第4配管11c及び11dを第2集流弁10b内で第2接続管12bに接続する。さらに、第1及び第2接続管12a及び12bを第3集流弁10c内で排水路5に接続する。
【0024】
かかる第1〜第3集流弁10a〜10cは、集流弁よりも上流側にある二つの管路のうちの一つで異物等が詰まったり、あるいは漏れが発生したりすると、その集流弁よりも下流側にある管路への冷却水の流れを止める構造とされている。したがって、例えば第1冷却水路2a内に異物等が詰まったり、あるいは漏れが発生したりすると、第1集流弁10aが作動して第1接続管12aへの冷却水の流れが止まる。そして、第1接続管12aへの冷却水の流れが止まれば、第3集流弁10cが排水路5への冷却水の流れが止まる。
【0025】
よって、この実施例では、第1〜第4冷却水路2a〜2dのうちの一つでも異物等が詰まったり、漏れが発生したりすると、その異常を速やかに検出することができる。
なお、金型1の冷却水路2の入口に上記集流弁10を設けて分流弁として機能させても同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
また上述した実施例1〜4は、ダイカスト鋳造用金型を冷却する際に本発明方法を適用する例について説明したが、本発明はその他の金属鋳造用金型や樹脂の射出成形用金型等にも適用できる。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の金型の温度制御方法では、作業始めの段階又は作業中断後に再び作業を開始する段階で金型の温度が適温域よりも低い場合に捨打ちを行う際に、冷却水路内に冷却水を供給するとともに該冷却水路内の冷却水の圧力を上昇させる。その結果、該冷却水の沸点を上昇させることにより、冷却水路内において、冷却水を蒸気化させることなくより高温の水(圧縮水)とすることができ、溶融材料からの受熱による金型の温度上昇をより速やかに達成させることが可能となる。したがって、捨打ちに要するショット数を減少させて生産性を向上させることができる。
【0028】
また、冷却水路に冷却水を供給しつつ捨打ちを行うため、熱応力による金型の割れの問題も解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例1に係る金型の温度制御方法を模式的に示す説明図である。
【図2】本実施例2に係る金型の温度制御方法を模式的に示す説明図である。
【図3】本実施例3に係る金型の温度制御方法を模式的に示す説明図である。
【図4】本実施例4に係る金型の温度制御方法を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1…金型 2…冷却水路 4…給水路
5…排水路 7…開閉弁 8…比例弁
9…リリーフ弁 10…集流弁
Claims (1)
- 金型のキャビティ内に注入した溶融材料を冷却固化させて所定形状の成形体とした後、該成形体を脱型する1ショット工程を繰り返すサイクル過程で、該金型の内部に設けられた冷却水路に冷却水を供給して該金型を適温域に制御する金型の温度制御方法において、
作業始めの段階又は作業中断後に再び作業を開始する段階で上記金型の温度が適温域よりも低い場合に捨打ちを行う際に、上記冷却水路内に冷却水を供給するとともに該冷却水路内の冷却水の圧力を上昇させることを特徴とする金型の温度制御方法。
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