JP3680745B2 - トルクコンバータのスリップ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機を含む自動変速機などに用いられるトルクコンバータの入出力要素間における相対回転、つまりトルクコンバータのスリップ回転を目標値へ収束させるスリップ制御装置、特にコースト走行からドライブ走行への移行時においても当該スリップ制御が好適に行われ得るようにした改良提案に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トルクコンバータは、流体を介して入出力要素間で動力伝達を行うため、トルク変動吸収機能や、トルク増大機能を果たす反面、伝動効率が悪い。
これがため、これらトルク変動吸収機能や、トルク増大機能が不要な走行条件のもとでは、トルクコンバータの入出力要素間をロックアップクラッチにより直結するロックアップ式のトルクコンバータが今日では多用されている。
しかして、かようにトルクコンバータを入出力要素間を直結したロックアップ状態にするか、該ロックアップクラッチを釈放したコンバータ状態にするだけの、オン・オフ的な制御では、こもり音や振動の問題が生じないようにする必要性からトルクコンバータのスリップ回転を制限する領域が狭くて十分な伝動効率の向上を望み得ない。
【0003】
そこで、ロックアップクラッチを所謂半クラッチ状態(スリップ制御状態)にして、要求される必要最小限のトルク変動吸収機能や、トルク増大機能が確保されるような態様でトルクコンバータのスリップ回転を制限するスリップ制御領域を設定し、これによりスリップ回転の制限を一層低車速まで行い得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御技術も多々提案されている。
そしてトルクコンバータのスリップ制御技術は一般的に、エンジンのスロットル開度や、車速や、自動変速機の作動油温などの走行条件に応じて目標スリップ回転を決定し、上記のスリップ制御領域でトルクコンバータの実スリップ回転が最終的に目標スリップ回転に収束するようロックアップクラッチの締結力を制御するのが普通であり、かかるスリップ制御によれば理論上は、こもり音や振動の問題を生ずることなしにスリップ回転制限領域の一層の低車速化を実現して運転性の悪化を回避しつつ燃費の向上を図ることができる。
【0004】
ところで実際上は、スリップ回転を制限するためのロックアップクラッチの締結力を理論通りに制御できないことがあり、この場合、ロックアップクラッチの一時的な締結によるショックやこもり音が発生することがある。
この問題を解決するために本願出願人は先に、特開平11−82726号公報により以下のごときトルクコンバータのスリップ制御装置を提案済みである。
【0005】
この文献に記載のスリップ制御装置は、トルクコンバータのスリップ制御状態ではトルクコンバータへの入力トルク(エンジン出力トルク)が、トルクコンバータの流体伝動によるコンバータトルクとロックアップクラッチの締結容量との和値に相当するとの事実認識に基づき、
トルクコンバータの伝動性能から予め求めておいた上記コンバータトルクとスリップ回転との関係をもとに、実スリップ回転を目標スリップ回転に収束させるためのスリップ回転指令値を達成するのに必要な目標コンバータトルクを算出し、
エンジン出力トルクからこの目標コンバータトルクを差し引いて目標ロックアップクラッチ締結容量を算出し、
この目標ロックアップクラッチ締結容量が実現されるようロックアップクラッチの締結圧を制御するというものである。
このスリップ制御装置は、トルクコンバータの実スリップ回転をスリップ回転指令値に一致させる制御を線形化補償することで制御精度を高めることにより上記の問題を解消することを狙ったものである。
【0006】
しかし当該先の提案技術は、実スリップ回転を目標スリップ回転に収束させるためのスリップ回転指令値を達成するのに必要な目標コンバータトルクを算出するに当たり、上記コンバータトルクとスリップ回転との関係を表すマップとして、また
目標ロックアップクラッチ締結容量を実現するためのロックアップクラッチ締結圧を求めるに当たり、目標ロックアップクラッチ締結容量およびロックアップクラッチ締結圧間の関係を表すマップとして、
アクセルペダルを釈放したコースト状態の時もアクセルペダルを踏み込んだドライブ状態の時と同じマップを用いるため、コースト走行中において狙いとするスリップ制御を実現し得ないという問題を生ずることを確かめた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本願出願人が先に特願2000−386495号により提案済みの技術のように、上記の両マップとしてコースト状態の時のものとドライブ状態の時のものとを切り換え使用することにより、実スリップ回転をコースト走行時とドライブ走行時とで個々の目標値に向かわせるようにすることが考えられる。
この場合常識的には、前者のコースト走行用のスリップ制御を行うべきか、後者のドライブ走行用のスリップ制御を行うべきかを、スロットル開度や車速から判断するのが常套であり、言わば運転者の意思のみからどちらのスリップ制御にすべきかを判断していた。
【0008】
しかし、運転者がコースト走行中にドライブ走行を希望してアクセルペダルを踏み込んでも、これによりエンジン回転が上昇して実際にドライブ状態になるまでには応答遅れがあり、運転者がコースト走行からドライブ走行への移行を希望した時に直ちにコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への移行を行うと以下に説明するような問題を生ずる。
【0009】
図14は、瞬時t1に運転者が釈放状態のアクセルペダルを踏み込んでスロットル開度TVOが図示のごとく増大すると共にアイドルスイッチがONからOFFに切り換わった場合における上記提案技術のスリップ制御を示し、エンジン回転数(トルクコンバータ入力回転数)ωIRと、タービン回転速度(トルクコンバータ出力回転数)ωTRと、実スリップ回転ωSLPR(=ωIR−ωTR)と、目標スリップ回転ωSLPTと、ロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCの変化タイムチャートを例示するものである。
【0010】
この図14から明らかなように上記提案技術のスリップ制御によれば、運転者がコースト走行からドライブ走行への移行を希望した瞬時t1に直ちに、未だ実スリップ回転ωSLPRが負値(ωIR<ωTR)であるのにコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への移行が行われて目標スリップ回転ωSLPTをドライブ走行用のものにして図示のごとくに与えると共にロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCもドライブ走行用のものにして図示のごとくに与えるため、つまり実スリップ回転ωSLPRが正値(ωIR>TR)になる瞬時t2までの間において負値の実スリップ回転ωSLPRを大きな正値の目標スリップ回転ωSLPTに収束させるべくロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCを瞬時t1の直後から上昇させるため、その反動として実スリップ回転ωSLPRが正値(ωIR>TR)になった瞬時t2以後における実スリップ回転ωSLPRの上昇速度が鈍くなり、コースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への移行がスムーズに行われ得ないという問題を生ずる。
【0011】
なお、この問題解決のためには実スリップ回転ωSLPRが正値(ωIR>ωTR)になった時にコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への移行を行うことが考えられるが、
このように単純に移行判定条件を変更しただけでは、運転者がコースト走行からドライブ走行への移行を希望した瞬時t1から、実スリップ回転ωSLPRが正値(ωIR>TR)になる瞬時t2までの間、実スリップ回転ωSLPRがコースト走行時用の目標スリップ回転に収束するようなスリップ制御を行うこととなり、
結果としてこの間、エンジン出力トルクの増大に伴うロックアップクラッチ締結容量の増加に呼応してロックアップクラッチの締結力が低下され、不必要なエンジン回転の上昇で燃費の悪化を招くという別の問題を生ずる。
【0012】
請求項1に記載の第1発明は、上記した何れの問題も生ずることなく適切にコースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行を行い得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案すること、およびコースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行の応答性を高めたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0013】
請求項2に記載の第2発明は、上記第1発明の作用効果を一層顕著なものにし得るようにすると共に、コースト走行からドライブ走行への移行時にトルクコンバータのトルク変動吸収性能が増大されて滑らかな伝動を可能にし得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案すること、およびコースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行の応答性を高めたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0015】
請求項3に記載の第3発明は、第1発明または第2発明の作用効果をエンジン負荷の如何にかかわらず確実に達成し得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0016】
請求項4に記載の第4発明は、第3発明の作用効果を更に確実に達成し得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0017】
請求項5に記載の第5発明は、コースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行禁止制御が何時までも続いてしまう弊害を生ずることのないようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
これらの目的のため、先ず第1発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、
トルクコンバータの入力回転速度と出力回転速度との差である実スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制限可能で、この実スリップ回転をドライブ走行時とコースト走行時とで個々の目標スリップ回転に向かわせるようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置において、
コースト走行からドライブ走行への移行があっても前記実スリップ回転が0になるまでは、前記ドライブ走行時用のスリップ制御への移行を禁止して前記ロックアップクラッチの締結力を、コースト走行からドライブ走行への移行時におけるコースト走行用のスリップ制御の最終締結力からドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させるよう構成したことを特徴とするものである。
【0019】
第2発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、
トルクコンバータの入力回転速度と出力回転速度との差である実スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制限可能で、この実スリップ回転をドライブ走行時とコースト走行時とで個々の目標スリップ回転に向かわせるようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置において、
コースト走行からドライブ走行への移行があっても前記実スリップ回転が0を超えるまでは、前記ドライブ走行時用のスリップ制御への移行を禁止して前記ロックアップクラッチの締結力を、コースト走行からドライブ走行への移行時におけるコースト走行用のスリップ制御の最終締結力からドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させるよう構成したことを特徴とするものである。
【0021】
第3発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、上記第1発明または第2発明において、
前記締結力の漸増変化割合をエンジン負荷が高いほど大きくしたことを特徴とするものである。
【0022】
第4発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、上記第1発明または第2発明において、
前記締結力の漸増変化割合をエンジン負荷およびエンジン回転数から推定したエンジン出力トルクが高いほど大きくしたことを特徴とするものである。
【0023】
第5発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、第1発明乃至第4発明のいずれかにおいて、
コースト走行からドライブ走行への移行があって制限時間が経過した後は、ドライブ走行時用のスリップ制御への移行の禁止を解除して、該移行を強制的に行わせるよう構成したことを特徴とするのである。
【0024】
【発明の効果】
第1発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、トルクコンバータの入力回転速度と出力回転速度との差である実スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制限するに際し、この実スリップ回転をドライブ走行時とコースト走行時とで個々の目標スリップ回転に向かわせる。
そして、コースト走行からドライブ走行への移行に伴うコースト走行時用のスリップ制御からドライブ走行時用のスリップ制御への切り換えに際しては、コースト走行からドライブ走行への移行と同時に当該切り換えを行わないで、実スリップ回転が0になるまでドライブ走行時用のスリップ制御への移行を禁止してロックアップクラッチの締結力を、コースト走行からドライブ走行への移行時におけるコースト走行用のスリップ制御の最終締結力からドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させる。
【0025】
かように、実スリップ回転が0になるまでロックアップクラッチの締結力を、コースト走行からドライブ走行への移行時におけるコースト走行用のスリップ制御の最終締結力からドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させる制御によれば、
図14につき前述したようにコースト走行からドライブ走行への移行時に直ちにドライブ走行用スリップ制御への切り換えを行う場合に生じていた問題、つまり負値の実スリップ回転をいきなり大きな正値の目標スリップ回転に収束させるようなスリップ制御になって、実スリップ回転が正値になった時以後における実スリップ回転の上昇速度が鈍くなり、そのためコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への移行がスムーズに行われ得ないという問題を解消することができる。
【0026】
また第1発明の上記した切り換えによれば、実スリップ回転が正値になるまでコースト走行用スリップ制御を継続し、その後にコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換えを行った場合に生ずる前記の問題、つまり、コースト走行用スリップ制御の上記継続中にエンジン出力トルクの増大に伴うロックアップクラッチ締結容量の増加に呼応してロックアップクラッチの締結力が低下されるという問題も生ずることがなく、これに伴う不必要なエンジン回転の上昇で燃費の悪化を招くという問題も回避することができる。
また、コースト走行からドライブ走行への移行時にドライブ走行時用のスリップ制御への移行を禁止する間、当該移行時におけるコースト走行時用スリップ制御の最終締結力からドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させるため、コースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行時にロックアップクラッチの締結力がドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力に接近していることとなり、コースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行の応答性を高めることができる。
【0027】
第2発明においては、コースト走行からドライブ走行への移行に伴うコースト走行時用のスリップ制御からドライブ走行時用のスリップ制御への切り換えに際し、コースト走行からドライブ走行への移行と同時に当該切り換えを行わないで、実スリップ回転が0を超えるまでドライブ走行時用のスリップ制御への移行を禁止してロックアップクラッチの締結力を、コースト走行からドライブ走行への移行時におけるコースト走行用のスリップ制御の最終締結力からドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させる。
【0028】
かように、実スリップ回転が0を超えるまでロックアップクラッチの締結力を、コースト走行からドライブ走行への移行時におけるコースト走行用のスリップ制御の最終締結力からドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させる制御によれば、ドライブ走行時用のスリップ制御への移行が上記第1発明の場合よりも更に遅延されてドライブ走行への移行時における実スリップ回転の上昇が一層促進されることから、第1発明の上記作用効果を一層顕著なものにし得ると共に、コースト走行からドライブ走行への移行時にトルクコンバータのトルク変動吸収性能が増大されて滑らかな伝動を可能にし得る。
また、コースト走行からドライブ走行への移行時にドライブ走行時用のスリップ制御への移行を禁止する間、当該移行時におけるコースト走行用のスリップ制御の最終締結力からドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させるため、コースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行時にロックアップクラッチの締結力がドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力に接近していることとなり、コースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行の応答性を高めることができる。
【0030】
第3発明においては、第1発明または第2発明における締結力の漸増変化割合をエンジン負荷が高いほど大きくしたため、
エンジン高負荷時も含めて如何なるエンジン負荷のもとでも確実に第1発明または第2発明の作用効果を達成することができる。
【0031】
第4発明においては、第1発明における締結力の漸増変化割合をエンジン負荷およびエンジン回転数から推定したエンジン出力トルクが高いほど大きくしたため、
第1発明または第2発明における締結力の漸増変化割合を第3発明のものより更に正確にエンジン出力トルクに対応させ得て、第3発明の場合よりも更に確実に第1発明または第2発明の作用効果を達成することができる。
【0032】
第5発明においては、コースト走行からドライブ走行への移行があって制限時間が経過した後は、ドライブ走行時用のスリップ制御への移行の禁止を解除して、該移行を強制的に行わせるため、
コースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行禁止制御が何時までも続いてしまう弊害を回避することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態になるトルクコンバータのスリップ制御装置を示し、トルクコンバータ2は周知であるため詳細な図示を省略したが、エンジンクランクシャフトに結合されてエンジン駆動されるトルクコンバータ入力要素としてのポンプインペラと、自動変速機用歯車変速機構の入力軸に結合されたトルクコンバータ出力要素としてのタービンランナと、これらポンプインペラおよびタービンランナ間を直結するロックアップクラッチ2cとを具備するロックアップ式トルクコンバータとする。
【0034】
ロックアップクラッチ2cの締結力は、その前後におけるアプライ圧PAとレリーズ圧PRの差圧(ロックアップクラッチ締結圧)により決まり、アプライ圧PAがレリーズ圧PRよりも低ければ、ロックアップクラッチ2cは釈放されてポンプインペラおよびタービンランナ間を直結せず、トルクコンバータ2をスリップ制限しないコンバータ状態で機能させる。
【0035】
アプライ圧PAがレリーズ圧PRよりも高い場合、その差圧に応じた力でロックアップクラッチ2cを締結させ、トルクコンバータ2をロックアップクラッチ2cの締結力に応じてスリップ制限するスリップ制御状態で機能させる。
そして当該差圧が設定値よりも大きくなると、ロックアップクラッチ2cが完全締結されてポンプインペラおよびタービンランナ間の相対回転をなくし、トルクコンバータ2をロックアップ状態で機能させる。
【0036】
アプライ圧PAおよびレリーズ圧PRはスリップ制御弁11によりこれらを決定するものとし、スリップ制御弁11は、コントローラ12によりデューティ制御されるロックアップソレノイド13からの信号圧PSに応じてアプライ圧PAおよびレリーズ圧PRを制御するが、これらスリップ制御弁11およびロックアップソレノイド13を以下に説明する周知のものとする。
即ち、先ずロックアップソレノイド13は一定のパイロット圧PPを元圧として、コントローラ12からのソレノイド駆動デューティDの増大につれ信号圧PSを高くするものとする。
【0037】
一方でスリップ制御弁11は、上記の信号圧PSおよびフィードバックされたレリーズ圧PRを一方向に受けると共に、他方向にバネ11aのバネ力およびフィードバックされたアプライ圧PAを受け、信号圧PSの上昇につれて、アプライ圧PAとレリーズ圧PRとの間の差圧(PA−PR)で表されるロックアップクラッチ2cの締結圧を図2に示すように変化させるものとする。
【0038】
ここでロックアップクラッチ締結圧(PA−PR)の負値はPR>PAによりトルクコンバータ2をコンバータ状態にすることを意味し、逆にロックアップクラッチ締結圧(PA −PR )が正である時は、その値が大きくなるにつれてロックアップクラッチ2cの締結容量が増大され、トルクコンバータ2のスリップ回転を大きく制限し、遂にはトルクコンバータ2をロックアップ状態にすることを意味する。
【0039】
そして、ソレノイド駆動デューティDを制御するコントローラ12には、エンジン負荷を表すスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ21からの信号と、
ポンプインペラの回転速度ωIR(エンジン回転数でもある)を検出するインペラ回転センサ22からの信号と、
タービンランナの回転速度ωTR(トルクコンバータ出力回転数)を検出するタービン回転センサ23からの信号と、
自動変速機(トルクコンバータ2)の作動油温TEMPを検出する油温センサ24からの信号と、
変速機出力回転数(車速に相当する)Noを検出する変速機出力回転センサ25からの信号と、
変速機入出力回転比である変速比iP(=ωTR/No)を計算する変速比計算部26からの信号と、
電源電圧Vigを検出する電源電圧センサ27からの信号と、
アクセルペダルの釈放時にONになるアイドルスイッチ28からの信号とをそれぞれ入力することとする。
【0040】
コントローラ12はこれら入力情報をもとに、図3に示す機能ブロック線図に沿った演算により、ロックアップソレノイド13の駆動デューティDを決定すると共に、電源電圧信号Vigに応じてロックアップソレノイド駆動デューティDを補正して、以下に詳述する所定のスリップ制御を行う。
【0041】
図3における目標スリップ回転演算部31は、変速機出力回転数Noから演算して求めた車速VSPと、スロットル開度TVOと、変速比ipと、作動油温TEMPに基づき周知のごとく、トルク変動やこもり音が発生しない範囲内で最も少ないところに目標スリップ回転ωSLPTを定めて決定する。
前置補償器32は、目標スリップ回転ωSLPTを設計者の意図した応答で実現させるための補償済み目標スリップ回転ωSLPTCを設定する補償フィルターで、目標スリップ回転ωSLPTを当該フィルターに通過させることにより補償済み目標スリップ回転ωSLPTCを求めることができる。
【0042】
実スリップ回転演算部33は、ポンプインペラ2aの回転速度検出値をωIRからタービンランナ2bの回転速度検出値ωTRを減算してトルクコンバータ2の実スリップ回転ωSLPRを算出する。
従って実スリップ回転ωSLPRは、ポンプインペラ回転速度ωIRがタービンランナ回転速度ωTRよりも大きいドライブ状態の時に正の値をとり、逆にポンプインペラ回転速度ωIRがタービンランナ回転速度ωTRよりも小さいコースト状態の時に逆極性の負値となる。
これがため目標スリップ回転ωSLPTも、絶対値処理しないで、上記に符合した極性を持ったままの目標値とする。
【0043】
スリップ回転偏差演算部34は、瞬時(t)ごとに補償済み目標スリップ回転ωSLPTCと実スリップ回転ωSLPRとの間のスリップ回転偏差ωSLPERを、
ωSLPER(t)=ωSLPTC(t)−ωSLPR(t)・・・(1)
により算出する。
【0044】
スリップ回転指令値演算部35は、スリップ回転偏差ωSLPERを基に例えば周知の比例(P)・積分(I)制御により、スリップ回転偏差ωSLPERをなくして実スリップ回転ωSLPRを補償済み目標スリップ回転ωSLPTCに一致させるためのスリップ回転指令値ωSLPCを以下により算出する。
但し、KP:比例制御定数
KI:積分制御定数
S :微分演算子
【0045】
ここで、トルクコンバータの伝動性能から予め求め得る、コンバータトルクtCNVと、スリップ回転ωSLPと、タービン回転速度ωTRとの関係を説明するに、図4に例示するごとくコンバータトルクtCNVに対するスリップ回転ωSLPの比をスリップ回転ゲインgSLP
gSLP=ωSLP/tCNV・・・(3)
と定義すると、このスリップ回転ゲインgSLPはドライブ状態とコースト状態とで異なるものの、図4に示すようにタービン回転速度ωTRに応じて変化する。
スリップ回転ゲイン演算部36はこの事実認識に基づき、先ず現在の運転状態がドライブ状態かコースト状態かをチェックし、ドライブ状態なら図4に例示したドライブ用のマップを基にタービン回転速度ωTRからスリップ回転ゲインgSLPCを検索し、コースト状態なら図4に例示したコースト用のマップを基にタービン回転速度ωTRからスリップ回転ゲインgSLPCを検索して求める。
【0046】
目標コンバータトルク演算部37は、上記(3)式におけるgSLPにgSLPCを当てはめ、ωSLPに上記スリップ回転指令値演算部35からのスリップ回転指令値ωSLPCを当てはめることにより、タービン回転速度ωTRのもとでスリップ回転指令値ωSLPCを達成するための目標とすべきコンバータトルクtCNVCを
tCNVC(t)=ωSLPC(t)/gSLPC・・・(4)
により算出する。
【0047】
エンジン出力トルク推定部38では、先ず図5に例示したエンジン全性能線図を用いてエンジン回転数ωIRおよびスロットル開度TVOから、エンジン出力トルクの定常値tESを検索し、次いでこれを、時定数TEDがエンジンの動的な遅れに対応した値のフィルターに通してフィルター処理し、当該フィルター処理後の一層実際値に近いエンジン出力トルクtEH
tEH(t)=〔1/(TED・S+1)〕tES(t)・・・(5)
を推定して求める。
【0048】
目標ロックアップクラッチ締結容量演算部39は、エンジン出力トルクtEHから目標コンバータトルクtCNVCを減算して目標ロックアップクラッチ締結容量tLUCを求める。
tLUC(t)=tEH(t)−tCNVC(t)・・・(6)
【0049】
ロックアップクラッチ締結圧指令値演算部40は、目標ロックアップクラッチ締結容量tLUCを達成するためのロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCを図6または図7に対応するマップから検索する。
ここで図6および図7は、ドライブ状態およびコースト状態ごとにロックアップクラッチの締結圧PLUと、ロックアップクラッチ締結容量tLUとの関係を予め実験により求めておく。
ロックアップクラッチ締結圧指令値演算部40は、ドライブ状態の時、図6のドライブ用のマップから目標ロックアップクラッチ締結容量tLUCに対応するロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCを検索し、コースト状態の時、図7のコースト用のマップから目標ロックアップクラッチ締結容量tLUCに対応するロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCを検索する。
【0050】
ソレノイド駆動信号演算部41は、実際のロックアップクラッチ締結圧をロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCにするためのロックアップソレノイド駆動デューティDを決定するが、この際、電源電圧Vigの変化による影響が回避されるようロックアップソレノイド駆動デューティDを適宜補正して図1のロックアップソレノイド13に出力する。
以上により、目標スリップ回転演算部31により定めた目標スリップ回転ωSLPTを、前置補償器32により定めた応答で実現させるスリップ制御が可能である。
ところで、図4に例示するごとくトルクコンバータ出力回転数ωTRに対するスリップ回転ゲインgSLPCの関数を、ドライブ状態の時とコースト状態の時とで異ならせ、図3の演算部36でスリップ回転ゲインgSLPCを求めるに際しドライブ状態の時とコースト状態の時とでそれぞれ専用のマップを用いるため、
また、図3の演算部40でロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCを求める時に用いるマップとして、ドライブ状態の時は図6に例示するドライブ用マップを用い、コースト状態の時は図7に例示するコースト用マップを用いるため、ドライブ状態の時とコースト状態の時の双方で上記のスリップ制御を正確に実行させることができる。
【0051】
ここで本発明に係わる、コースト走行用のスリップ制御からドライブ走行用のスリップ制御への切り換え制御を説明するに、この切り換え制御を図1のコントローラ12は図8に示す制御プログラムに沿って行う。
先ずステップS1,S2で、スロットル開度TVOや車速VSPから、トルクコンバータをスリップ制御すべき運転領域(スリップ制御域)か、トルクコンバータをロックアップ状態にすべき運転領域(ロックアップ制御域)か、それともこれら以外のトルクコンバータをコンバータ状態にすべき運転領域(コンバータ制御域)かを判定する。
【0052】
ロックアップ制御域ならステップS3で、トルクコンバータをロックアップ状態にする通常通りの制御を実行し、コンバータ制御域ならステップS4で、トルクコンバータをコンバータ状態にする通常通りの制御を実行する。
スリップ制御域である場合、ステップS5においてアイドルスイッチ28がON(コースト走行)かOFF(ドライブ走行)かを判定する。
ステップS5でコースト走行と判定する場合、コースト走行用スリップ制御を行うべきであるから制御をステップS6に進めて、前記コースト用マップを用いたコースト走行用スリップ制御を行う。
ステップS5でドライブ走行と判定する場合、定常的には前記ドライブ用マップを用いたドライブ走行用スリップ制御を行うべきであるが、ここでコースト走行からドライブ走行への移行時は以下のようにしてコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換えを行う。
【0053】
先ず当該切り換え時であるか否かのチェックのためにステップS7で、前回の制御がコースト走行用スリップ制御であったか否かを判定する。
前回がコースト走行用スリップ制御であった場合は、コースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換え時であるから、ステップS8で、詳しくは後述する当該切り換え時のロックアップクラッチ締結圧の保持を許容できる締結圧保持制限時間を設定し、次にステップS9で、当該ロックアップクラッチ締結圧の保持を解除すべきと判定するためのスリップ回転(締結圧保持解除判定用スリップ回転)を設定する。
この締結圧保持解除判定用スリップ回転は、0または、ドライブ走行用スリップ制御への切り換え時における目標スリップ回転ωSLPTを考慮してその近辺に定めた正の値とする。
【0054】
次のステップS10では、実スリップ回転ωSLPRが締結圧保持解除判定用スリップ回転以上になったか否かを判定し、ステップS11では、ドライブ走行への移行時から上記締結圧保持制限時間内であるか否かを判定する。
ステップS10で実スリップ回転ωSLPRが締結圧保持解除判定用スリップ回転未満であると判定し、且つ、ステップS11で締結圧保持制限時間内であると判定する間は、ステップS12で、コースト走行用スリップ制御の最終締結圧を保持するよう指令してロックアップソレノイド13の駆動デューティDを対応した値に決定する。
【0055】
ところで以後は最早コースト走行用スリップ制御ではないから、ステップS7が前回コースト走行用スリップ制御であったと判定しなくなり、ステップS8,S9は、コースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換えがあった時の1回のみ実行されることになる。
よって2回目以後ステップS7は制御をステップS13に進め、ここでステップS12の締結圧保持作用が継続中か否かを判定する。そして締結圧保持作用が継続中である限り、ステップS10,S11で実スリップ回転ωSLPRが締結圧保持解除判定用スリップ回転未満であると判定し、且つ、ステップS11で締結圧保持制限時間内であると判定する間、ステップS12の締結圧保持作用を継続する。
【0056】
かかる締結圧保持作用により実スリップ回転ωSLPRが締結圧保持解除判定用スリップ回転未満になると、ステップS10が制御をステップS14に進め、またこの条件が満たされなくてもステップS11が締結圧保持制限時間の経過を判定すると無条件に制御をステップS14に進め、当該ステップS14でスリップ制御系を初期化することにより、ステップS12で行っていた締結圧保持作用を解除すると共に、ステップS15で前記ドライブ用マップを用いたドライブ走行用スリップ制御を行う。
なおステップS14で行う制御系の初期化は、ドライブ走行用スリップ制御を開始する時点での実スリップ回転で図3における前置補償器32を初期化し、また、ロックアップクラッチ実締結圧相当のスリップ回転で図3におけるスリップ回転指令値演算部35を初期化することにより行うことができる。
【0057】
上記した実施の形態において上記のごとくに行われるコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換えによれば、以下のような作用効果を奏し得る。
図12は、図14におけると同様、瞬時t1に運転者が釈放状態のアクセルペダルを踏み込んでスロットル開度TVOが図示のごとく増大すると共にアイドルスイッチがONからOFFに切り換わった場合における、本実施の形態になるコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換え作用を示し、エンジン回転数(トルクコンバータ入力回転数)ωIRと、タービン回転速度(トルクコンバータ出力回転数)ωTRと、実スリップ回転ωSLPR(=ωIR−ωTR)と、目標スリップ回転ωSLPTと、ロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCの変化タイムチャートとして示す。
【0058】
この図12から明らかなように本実施の形態になるコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換え作用によれば、運転者がコースト走行からドライブ走行への移行を希望した瞬時t1に直ちに当該切り換えを実行させず、実スリップ回転ωSLPRが0または正値(ωIR≧ωTR)になる瞬時t2までの間は、ロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCをコースト走行からドライブ走行への移行瞬時t1における値に保持しておき、瞬時t2にコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御へ切り換えるから、
未だ実スリップ回転ωSLPRが負値(ωIR<ωTR)である瞬時t2以前において当該負の実スリップ回転ωSLPRを、いきなりドライブ走行用スリップ制御のための大きな正値の目標スリップ回転ωSLPTに収束させるようなスリップ制御になることがなく、
従って、実スリップ回転ωSLPRが正値(ωIR>ω TR)になった瞬時t2以後における実スリップ回転ωSLPRの上昇速度が素早いものとなり、コースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への移行をスムーズに行わせることができる。
【0059】
また本実施の形態になるコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換え作用によれば、前記したごとく実スリップ回転ωSLPRが正値になるまで締結圧保持の代わりにコースト走行用スリップ制御を継続し、その後にコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換えを行った場合に生ずる問題、つまり、コースト走行用スリップ制御の上記継続中にエンジン出力トルクの増大に伴うロックアップクラッチ締結容量の増加に呼応してロックアップクラッチの締結力が低下されるという問題も生ずることがなく、これに伴う不必要なエンジン回転の上昇で燃費の悪化を招くという問題も回避することができる。
【0060】
なお既に上記していることであるが、締結圧保持制御を解除してコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御へ切り換える瞬時t2を、実スリップ回転ωSLPRが0ではなくて正値になる(0を超える)瞬時とする場合は特に、
実スリップ回転ωSLPRが0を超えるまでロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCを、コースト走行からドライブ走行への移行時t1における値に保持することとなり、ドライブ走行用のスリップ制御への移行が更に遅延されてドライブ走行への移行時における実スリップ回転ωSLPRの上昇が一層促進されることにより上記作用効果を一層顕著なものにし得るし、合わせてコースト走行からドライブ走行への移行時にトルクコンバータのトルク変動吸収性能が増大されて滑らかな伝動を可能にし得る。
【0061】
図9は本発明の他の実施の形態を示し、本実施の形態は図8のステップS8〜ステップS13をそれぞれステップS18〜ステップS23に置換したものである。
ステップS18においては、上記ロックアップクラッチ締結圧の保持の代わりに行うべきロックアップクラッチ締結圧の昇圧を許容できる締結圧昇圧制限時間を設定すると共に該昇圧速度を決める単位時間当たりの昇圧量を設定する。
この単位時間当たりの昇圧量は、ロックアップクラッチの締結力がコースト走行からドライブ走行への移行時における締結力からドライブ走行用スリップ制御開始時における目標スリップ回転に対応した締結力を超えないように漸増する程度の昇圧量とし、例えば図10に例示するようにスロットル開度TVO(エンジン負荷)の増大につれて大きくする。
なお単位時間当たりの昇圧量は、例えば図11に例示するように図3の推定部38で推定したエンジン出力トルク推定値tEHに応じて定め、その増大につれて大きくなるようなものにすることができる。
【0062】
次のステップS19では、当該ロックアップクラッチ締結圧の昇圧を解除すべきと判定するためのスリップ回転(締結圧昇圧解除判定用スリップ回転)を設定する。
この締結圧保持解除判定用スリップ回転も、0または、ドライブ走行用スリップ制御への切り換え時における目標スリップ回転ωSLPTを考慮してその近辺に定めた正の値とする。
【0063】
次のステップS20では、実スリップ回転ωSLPRが締結圧昇圧解除判定用スリップ回転以上になったか否かを判定し、ステップS21では、ドライブ走行への移行時から上記締結圧昇圧制限時間内であるか否かを判定する。
ステップS20で実スリップ回転ωSLPRが締結圧昇圧解除判定用スリップ回転未満であると判定し、且つ、ステップS21で締結圧昇圧制限時間内であると判定する間は、ステップS22で、ロックアップクラッチの締結圧をコースト走行用スリップ制御の最終締結圧からステップS18で定めた単位時間当たりの昇圧量ずつ昇圧するよう指令してロックアップソレノイド13の駆動デューティDを対応した値に決定する。
ステップS23では上記の昇圧が継続されているか否かをチェックし、継続されている間ステップS22を実行し続け、昇圧が終了した段階で制御をステップS15に進めてドライブ走行用スリップ制御に切り換える。
【0064】
上記した実施の形態においては、コースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換えが以下のようにして行われる。
つまり図13のごとくスロットル開度TVOを瞬時t1に開いてコースト走行からドライブ走行へ移行し、実スリップ回転ωSLPRが瞬時t2に負値から0を経て正値になる場合について説明すると、前記した図8に示す実施の形態においては瞬時t1〜t2間においてロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCが破線αで示すように瞬時t1の値に保持されるのに対し、本実施の形態においては瞬時t1〜t2間においてロックアップクラッチ締結圧指令値PLUCが実線βで示すように瞬時t1の時の値からステップS18における単位時間当たりの昇圧量により決まる時間変化勾配で漸増される。
【0065】
従って本実施の形態においては、コースト走行からドライブ走行への移行時t1にドライブ走行用のスリップ制御への移行を禁止するt2までの間、ロックアップクラッチの締結力をドライブ走行への移行時t1における締結力からドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させることとなり、
コースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行時t2にロックアップクラッチの締結力がドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力に接近していることとなり、コースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行の応答性を高めことができる。
【0066】
ところで本実施の形態においては、ロックアップクラッチ締結圧の昇圧量(ロックアップクラッチの締結力漸増割合)を図10のごとくエンジン負荷が高いほど大きくしたため、
エンジン高負荷時も含めて如何なるエンジン負荷のもとでも確実に上記の作用効果を達成することができる。
なお図11に示すように、ロックアップクラッチ締結圧の昇圧量(ロックアップクラッチの締結力漸増割合)をスロットル開度TVO(エンジン負荷)およびエンジン回転数ωIRから推定したエンジン出力トルクtEHが高いほど大きくし、これからロックアップクラッチ締結圧の昇圧量(ロックアップクラッチの締結力漸増割合)を求める場合、
ロックアップクラッチ締結力の漸増変化割合を上記のものより更に正確にエンジン出力トルクに対応させ得て、更に確実に上記の作用効果を達成することができる。
【0067】
なお、何れの実施の形態においてもコースト走行からドライブ走行への移行時t1から制限時間が経過した後は(ステップS11、ステップS21)、ステップS10,S20の条件が満たされていなくても、ドライブ走行時用のスリップ制御への移行の禁止を解除して(ステップS14)、該移行を強制的に行わせるため、コースト走行時用スリップ制御からドライブ走行時用スリップ制御への移行禁止制御が何時までも続いてしまう弊害を回避することができる。
このような弊害は、ドライブ走行用スリップ制御でもアクセルペダルの踏み込み量が少なくて、いわゆるロードロード線以下での運転である場合に、エンジン回転数がタービン回転速度以下に維持されることがあって、このような場合に発生するが、本実施の形態によればこのような条件の時は、ロックアップクラッチ締結圧の保持または昇圧を継続せずに制限時間経過時に終了させるため、上記の弊害を回避することができる。
【0068】
上記した何れの実施形態においても、上記の締結圧保持制限時間や締結圧昇圧制限時間を一定値としたが、適用するエンジンや、トランスミッション等の組み合わせに応じて、適宜パラメータを設定し、例えば、締結圧保持または昇圧開始時の実スリップ回転に応じて、締結圧保持または昇圧制限時間を変更するようにしてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態になるスリップ制御装置を示す概略系統図である。
【図2】 同実施の形態においてロックアップソレノイドから出力される信号圧とロックアップクラッチ締結圧との関係を示す線図である。
【図3】 同実施の形態においてコントローラが実行するスリップ制御の機能別ブロック線図である。
【図4】 スリップ回転ゲインの特性図を示す線図である。
【図5】 エンジンのスロットル開度と、回転数と、出力トルクとの関係を示す全性性能線図である。
【図6】 ドライブ状態でのロックアップクラッチの締結圧と、締結容量との関係を例示する特性図である。
【図7】 コースト状態でのロックアップクラッチの締結圧と、締結容量との関係を例示する特性図である。
【図8】 図3に示すスリップ制御のうち、特にコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換え制御の詳細を示すフローチャートである。
【図9】 本発明の他の実施の形態におけるスリップ制御のうち、特にコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換え制御の詳細を示すフローチャートである。
【図10】 図9の切り換え制御において用いるロックアップクラッチ締結圧の単位時間当たりの昇圧量に係わる特性線図である。
【図11】 図9の切り換え制御において用いるロックアップクラッチ締結圧の単位時間当たりの昇圧量に係わる他の特性線図である。
【図12】 図8に示すコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換え制御の動作タイムチャートである。
【図13】 図9に示すコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換え制御の動作タイムチャートである。
【図14】 従来のコースト走行用スリップ制御からドライブ走行用スリップ制御への切り換え制御を示す動作タイムチャートである。
【符号の説明】
2 トルクコンバータ
2c ロックアップクラッチ
11 スリップ制御弁
12 コントローラ
13 ロックアップソレノイド
21 スロットル開度センサ
22 インペラ回転センサ
23 タービン回転センサ
24 油温センサ
25 変速機出力回転センサ
26 変速比計算部
27 電源電圧センサ
28 アイドルスイッチ
31 目標スリップ回転演算部
32 前置補償器
33 実スリップ回転演算部
34 スリップ回転偏差演算部
35 スリップ回転指令値演算部
36 スリップ回転ゲイン演算部
37 目標コンバータトルク演算部
38 エンジン出力トルク推定部
39 目標ロックアップクラッチ締結容量演算部
40 ロックアップクラッチ締結圧指令値演算部
41 ソレノイド駆動信号演算部
Claims (5)
- トルクコンバータの入力回転速度と出力回転速度との差である実スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制限可能で、この実スリップ回転をドライブ走行時とコースト走行時とで個々の目標スリップ回転に向かわせるようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置において、
コースト走行からドライブ走行への移行があっても前記実スリップ回転が 0 になるまでは、前記ドライブ走行時用のスリップ制御への移行を禁止して前記ロックアップクラッチの締結力を、コースト走行からドライブ走行への移行時におけるコースト走行用のスリップ制御の最終締結力から、ドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させるよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。 - トルクコンバータの入力回転速度と出力回転速度との差である実スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制限可能で、この実スリップ回転をドライブ走行時とコースト走行時とで個々の目標スリップ回転に向かわせるようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置において、
コースト走行からドライブ走行への移行があっても前記実スリップ回転が0を超えるまでは、前記ドライブ走行時用のスリップ制御への移行を禁止して前記ロックアップクラッチの締結力を、コースト走行からドライブ走行への移行時におけるコースト走行用のスリップ制御の最終締結力から、ドライブ走行時の目標スリップ回転に対応した締結力を超えない範囲で漸増させるよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。 - 請求項1または2に記載のトルクコンバータのスリップ制御装置において、
前記締結力の漸増変化割合をエンジン負荷が高いほど大きくしたことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。 - 請求項1または2に記載のトルクコンバータのスリップ制御装置において、
前記締結力の漸増変化割合をエンジン負荷およびエンジン回転数から推定したエンジン出力トルクが高いほど大きくしたことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトルクコンバータのスリップ制御装置において、
コースト走行からドライブ走行への移行時から制限時間が経過した後は、ドライブ走行時用のスリップ制御への移行の禁止を解除して、該移行を強制的に行わせるよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
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