JP3679440B2 - 医療用マニピュレータ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、処置手段を先端側に設け、この処置手段を支持してその処置手段の位置および向きを選択するための湾曲部を設けたアームを備えた医療用マニピュレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
腹壁等の体壁に挿入孔を開け、この挿入孔を通じて内視鏡や処置具等の器械を体腔内に誘導し、その器械による体腔内での様々な処置をマニピュレータ操作で行う経皮的内視鏡下外科手術が知られている。この種の経皮的内視鏡下外科手術は大きな切開を要しない低侵襲な術式として優れたものである。
このような術式において用いる処置用マニピュレータとして、アーム部に予め湾曲した部分を設け、その湾曲した部分を管状のハウジングから突き出すことにより湾曲をかけるものがUSP第5,254,130号明細書で知られている。
【0003】
また、挿入部に湾曲部を設け、これを挿入部内に挿通した上下または左右の操作ワイヤで湾曲操作するようにした内視鏡がある。このような内視鏡の湾曲部の構造として複数個の節輪を突き合わせてその突き合わせ連結端部分の一方に円弧状の凹部を設け、他方の連結端部分に円弧状の凸部を設けてこの凹部と凸部を突き合わせ嵌合して節輪同志を連結するものが知られている(実開昭63−182703号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の処置用マニピュレータの湾曲部構造は剛性が低いために、肝臓等の比較的重い臓器を把持したり牽引したりする場合にはその湾曲部が容易に変形し、術者の思う通りの操作ができないという問題があった。
また、後者のワイヤ操作方式の湾曲部構造では1自由度の湾曲動作に対して、1対の湾曲操作ワイヤが必要となるために、湾曲部とそれの操作部の構造が複雑なものとなってしまう。
【0005】
本発明は前記課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは比較的簡単で安価な湾曲部構造とすることができるとともにその湾曲部の湾曲力が大きく、また湾曲操作性の良い医療用マニピュレータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、処置手段を先端側に備え、前記処置手段の位置および向きを変えるための湾曲部を有するアームと、
一端に円弧状に形成された凸部を備えるとともに他端側に前記凸部と対を成す円弧状に形成された凹部を備え、順に前記凸部と前記凹部を回動可能に連結して湾曲中心軸を形成してなる、前記湾曲部を構成する湾曲部用節輪と、
前記湾曲用節輪の湾曲中心軸に対してオフセットした位置に設けられ、前記湾曲部用節輪の軸方向に貫通する第1の孔部と、
前記湾曲部用節輪の湾曲中心軸に対して前記第1の孔部とは反対側に設けられ、前記湾曲部用節輪の軸方向に貫通する第2の孔部と、
前記第1の孔部内に配設され、弾性復元力によって前記湾曲部を直線状態に保つバイアス部材と、
前記第2の孔部内に配設されるとともに、手元側に設けた駆動手段による牽引によって前記バイアス部材の弾性力に抗して前記湾曲部用節輪を回動させる湾曲操作ワイヤと、
を具備したことを特徴とする医療用マニピュレータである。
請求項2に係る発明は、前記バイアス部材と前記アームとの相対位置を変化させ、前記バイアス部材の弾性復元力を調整する調整手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の医療用マニピュレータ。
請求項3に係る発明は、処置手段を先端側に備え、前記処置手段の位置および向きを変えるための湾曲部を有するアームと、
一端に円弧状に形成された凸部を備えるとともに他端側に前記凸部と対を成す円弧状に形成された凹部を備え、順に前記凸部と前記凹部を回動可能に連結させて湾曲中心軸を形成してなる、前記湾曲部を構成する湾曲部用節輪と、
前記湾曲用節輪の湾曲中心軸に対してオフセットした位置に設けられ、前記湾曲部用節輪の軸方向に貫通する第1の孔部と、
前記湾曲部用節輪の湾曲中心軸に対して前記孔部とは反対側に設けられ、前記湾曲部用節輪の軸方向に貫通する第2の孔部と、
前記第1の孔部内に配設され、弾性復元力によって前記湾曲部を直線状態に保つバイアス部材と、
前記第2の孔部内に配設され、手元側に延出する湾曲操作ワイヤと、
前記湾曲操作ワイヤの手元側に設けられ、前記バイアス部材の弾性力に抗して前記湾曲部用節輪を回動させるように前記湾曲操作ワイヤを押し引きする駆動手段と、
前記駆動手段を構成し、前記湾曲操作ワイヤを押し引きするための駆動力を発生させるモータ部と、
を具備したことを特徴とする医療用マニピュレータである。
【0007】
【実施例】
<第1の実施例>
図1〜3を参照して、本発明の第1の実施例を説明する。
(構成)
図1は特に経皮的内視鏡下外科手術に用いる医療用マニピュレータシステムの全体的な構成を概略的に示している。この医療用マニピュレータシステムはスレーブマニピュレータ1とマスターマニピュレータ2と両マニピュレータ1,2の関連動作を制御するための制御装置3とを備えている。
【0008】
前記スレーブマニピュレータ1は手術器械4とこれを支持する移動用マニピュレータ(ロボット)5を備える。手術器械4は移動用マニピュレータ5のアーム先端に対して着脱自在に搭載される。ここでの手術器械4としては立体式内視鏡6と一対の処置具(手段)としての一対の把持鉗子7a,7bとからなる。内視鏡6における挿入部8と一対の把持鉗子7a,7bは共通のシース9の内部に挿通されて同じ向きで配置されることにより一体的なユニットとして構成されている。すなわち一対の処置具7a,7bのアーム部10は内視鏡6の挿入部8に沿うとともにその挿入部8の左右位置に隣接して並んで配置されている。図1で示すように手術器械4のシース9は患者の体壁aに形成した挿通孔bを通じて体腔cの内部に挿入される。そして、前記手術器械4においての内視鏡6と把持鉗子7a,7bの先端部分は略同じ向きで体腔c内に突き出すように設置されるようになっている。
【0009】
ところで、前記内視鏡6はシース9の先端から突き出す挿入部8の先端側途中部分に自由度が2の湾曲部11を設けてなり、この湾曲部11は上下方向B1と左右方向B2の2方向に湾曲することによりその先端部12の向きを上下左右に変向するようになっている。
前記内視鏡6の先端部12には左右一対の照明窓13と左右一対の観察窓14が設けられていて、この照明窓13から体腔c内の視野に照明光を照射する。そして、視野内を左右一対の観察窓14を通じて観察する。各観察窓14の内側にはCCD等の固体撮像素子がそれぞれ設置されており、各固体撮像素子は図示しないカメラコントロール回路によって駆動制御され、各観察窓14を通じて得られるそれぞれの視野を撮像する。
【0010】
また、左右の各把持鉗子7a,7bにおいて、シース9から突き出すアーム部10の途中でその長手方向の2箇所には湾曲部15,16を設けられ、基端側の第1の湾曲部15はC1方向に湾曲し、先端側の第2の湾曲部16はC2方向の湾曲が行われる。第1の湾曲部15が湾曲するC1方向と第2の湾曲部16が湾曲するC2方向とは通常の動作において同一の面内で互いに異なる向きに湾曲するようになっている。また、シース9から突き出す支持用アーム部10はその基端側に設けた回転部17によって自軸まわりのC3方向の回転も可能である。把持鉗子7a,7bのアーム部10の先端には処置作業用の一対の把持部材を回動可能に設けてなるグリッパ(処置部)18が設けられている。各把持鉗子7a,7bは内視鏡6の挿入部8の軸に対して左右対称の構造をとり、同様の自由度を有している。
【0011】
処置用内視鏡6はその後端に駆動部19が設けられており、この駆動部19にはエンコーダ付き電磁モータ(図示しない)を備え、この駆動力を例えばワイヤー(図示しない)等によって、前記内視鏡6の湾曲部11の湾曲と把持鉗子7a,7bの湾曲部15,16の湾曲やそのアーム部10の回転、グリッパ18の開閉などの動作を駆動可能となっている。
【0012】
一方、前記移動用マニピュレータ5はベッドサイドに設置される支持機構とし用いられるものであり、次に述べる如く、直動および回転の自由度を有する複数の軸を備えた多関節アーム構造で構成されている。つまり、これは基部20、水平旋回方向A1と垂直移動方向A2に動作する第1の動作軸21、この第1の動作軸21に対して水平方向A3に移動しかつ自軸周りの旋回方向A4に回転可能な第2の動作軸22とを備えてなり、さらに第2の動作軸22の先端にはその軸方向に直交した旋回方向A5とその旋回方向A5の軸に直交する軸まわりの旋回方向A6に回転可能ないわゆる手首機能を持つ器具装着部材23が取り付けられている。この器具装着部材23に対して前記手術器械4のシース9を挿通し、その状態で手術器械4が支持されるようになっている。また、内視鏡6と一対の把持鉗子7a,7bからなる手術器械4のユニットは、移動用マニピュレータ5の先端に設けられた器具装着部材23に対して着脱可能に取り付けられている。この移動用マニピュレータ5の各軸には各方向に駆動する電磁モータ等のアクチュエータ(図示せず)とその回転角を検出するアブソリュート型エンコーダ(図示せず)および減速機(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0013】
一方、操作手段のマスターマニピュレータ2は移動用マスターアーム31と、これの先端に設けられたHMD用アーム32及び一対の処置手段操作用アーム33a,33bとによって構成されている。前記移動用マスターアーム31はリンク機構から構成されており、これは手術室の壁部や架台等の基台34に取り付けられ、その軸まわりのD1方向に回転する第1の軸部材36と、この第1の軸部材36の先端に関節37を介してD2方向に回転するように連結された第2の軸部材38と、この第2の軸部材38の先端に関節39を介してD3方向に回転するように連結された第3の軸部材40と、この第3の軸部材40の先端にD4方向に回転するように連結された装着用先端部材41を連結してなる。また、これらの各回転軸部分にはその回転角度を検出可能なようにエンコーダ42がそれぞれ取り付けられていて、これの検出データによって移動用マスターアーム31の先端の位置と向きとを検出可能になっている。
【0014】
前記HMD用アーム32は複数の回転関節51,52を持つアーム53とこのアーム53の先端に固定された表示手段としてのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)54とによって構成されている。このアーム53の各回転関節51,52の回転方向E1,E2は互いに直交する向きにあり、それぞれにはエンコーダ55,56が設けられ、これによってHMD54の各回転方向E1,E2の回転量をそれぞれ検出可能になっている。
【0015】
また、一方の処置手段操作用アーム33aは3つの回転関節61,62,63を持つアーム64と、そのアーム64の先端に設けられた開閉可能な操作用グリッパ65によって構成されている。各回転関節61,62,63によってそれぞれF3,F1,F2の3つの方向への動きが可能になっている。また、3つの回転関節61,62,63と操作用グリッパ65にはそれぞれエンコーダが設けられ、その各回転関節61,62,63の回転角度やグリッパ65の開き角度がそれぞれ検出可能になっている。他方の処置手段操作用アーム33bは一方の処置手段用アーム33aに対して前記回転方向D4の回転軸に対して左右対称の構造をとり、これら両者の構成は同様であるため、この他方の処置手段操作用アーム33bについての説明を省略する。
【0016】
次に、前記スレーブマニピュレータ1とマスターマニピュレータ2の関連動作を制御するための制御装置3の構成について説明する。図1で示すように制御装置3は第1の制御装置71、第2の制御装置72、第3の制御装置73の部分からなり、制御対象の役割分担がなされている。まず、第1の制御装置71は移動用マスターアーム31の各エンコーダ42と電気的に接続され、そのエンコーダ42により回転角を検出することにより、移動用マスターアーム31の先端の位置を検出することができる。さらに第1の制御装置71は移動用マニピュレータ5の各電磁モータとこのモータに付いているエンコーダとも電気的に接続され、そのエンコーダで移動量を検出しながらそのモータを駆動し、移動用マニピュレータ5の先端の位置を決める。
【0017】
第2の制御装置72は、HMD用アーム32の各エンコーダ55,56と電気的に接続され、そのエンコーダ55,56の回転角を検出することにより、HMD54の向きを検出することができる。さらに第2の制御装置72は駆動部19内に設けられたモータと、このモータに付いているエンコーダと電気的に接続され、エンコーダで移動量を検出しながらそのモータを駆動できるので、指定された方向に処置用内視鏡6の挿入部8における湾曲部11を湾曲させることが可能である。
【0018】
また、第3の制御装置73は処置手段操作用アーム33a,33bの各エンコーダ74と電気的に接続され、このエンコーダ74により回転関節61,62,63と操作用グリッパ65の回転角を検出することにより、そのグリッパ65の向きと位置およびグリッパ65の開く角度を検出することができる。さらに第3の制御装置73は駆動部19内に設けられた処置手段駆動用の各電磁モータと、このモータに付いているエンコーダと電気的に接続され、エンコーダで移動量を検出しながらそのモータを駆動できるので、処置手段としての把持鉗子7a,7bの位置と方向を決めることが可能である。
【0019】
また、前記内視鏡6の左のCCDの出力は図示しないビデオプロセッサによりTV信号に変換され、HMD54の左目の表示部の例えばLCDにその映像を表示することが可能になっている。また、右のCCDの出力は図示しないビデオプロセッサによりTV信号に変換され、HMD54の右目の表示部の例えばLCDにその映像を表示することが可能になっている。したがって、HMD54を装着した術者80は3次元的(立体的)に観察することが可能である。
【0020】
図2および図3は前述した処置具たる同様な構成の把持鉗子7a,7bの一方を取り上げて示し、特にその湾曲部15,16を備えた支持用アーム部10を示すものである。この支持用アーム部10に直列に設けられた2つの湾曲部15,16はそれぞれ異なる方向、例えば互いに直角な向きに湾曲するように構成されている。また、湾曲部15,16の間を第1の支持アーム部10aとし、先端側の湾曲部16と最先端のグリッパ18との間に第2の支持アーム10bを形成している。グリッパ18の一方の部材の外面には触覚センサ25が取り付けられており、グリッパ18の一方の部材に接触する生体組織の触覚を検知できるようになっている。触覚センサ25にはこれへの電源供給と電気信号の取出しのためのリード線26が接続されており、このリード線26はアーム部10内を通ってその基端部側へ導かれて前記制御装置3に結線されている。
【0021】
次に、アーム部10に設けられた湾曲部15,16の構成を詳細に説明する。湾曲部15,16は略同様に構成されているので、第2の湾曲部16付近を示す図3を参照して説明する。すなわち、この第2の湾曲部16は図3(b)で示すように略円柱状に形成された複数個の節輪27を軸方向へ同軸的に1列に並べてあり、各節輪27の一方の端面にはその端面を直線的に横切る断面形状が円弧状の凸部28を形成し、他方の端面にはその端面を直線的に横切る断面形状が円弧状の凹部29が設ける。そして、複数の節輪27を同じ向きで一列に並べることによりその凸部28と凹部29を回動自在に嵌合して係合するようにする。また、凸部28と凹部29が嵌合する回転中心軸は湾曲部15の中心軸L1に対して僅かに偏り、これに直交してこれらを繋ぐ湾曲中心軸L2が湾曲部15の中心軸L1に対して偏位して配設されている。つまり、各々の節輪27の凸部28と凹部29を形成する円弧の中心を通る面内を前記湾曲中心軸L2が通り、その面は湾曲部15が真直な時、湾曲な時にかかわらずその軸方向長さが変化しない湾曲中立面30を形成する。
【0022】
また、各節輪27にはその軸方向に複数の孔45があけられており、これらを利用して後述するバイアス材46、処置具(手段)操作ワイヤ47、湾曲操作ワイヤ48及び前述したリード線26などが湾曲部16の中心軸L1に平行に挿通されている。つまり、湾曲部15の内部には前記湾曲中立面30よりその偏り側に位置して直線的なくせを付けた線状の弾性バイアス材46が2本に平行に挿通されており、この2本のバイアス材26の後端側は第1の支持アーム10aの部材にねじ締結された調節部材49に対して回転自在な固定部材50に固定され、2本のバイアス材26の先端側は第2の支持アーム10bの部材に対して固定されている。バイアス材26の素材にはニッケルチタン合金製の超弾性合金が使用されている。さらに、各節輪27の表面に対してそれの回動性を向上させるために減摩表面処理、例えば、フッ素樹脂コーティング(テフロンコーティング)、二硫化モリブデンコーティング、窒化チタン蒸着等を行ってもよい。ここでは2本のバイアス材46を設けたが、1本でも3本以上でも良い。
【0023】
さらに、湾曲部16の内部には湾曲操作ワイヤ48が2本並列に挿通されているが、この2本の湾曲操作ワイヤ48と前記バイアス材46は互いに中立面30を間に挟んで互いに反対側に配置されている。湾曲操作ワイヤ48の先端側は第2の支持アーム10bに固定されている。湾曲操作ワイヤ48の基端側はアーム部10内を通じて前記駆動部19に導かれている。なお、湾曲操作ワイヤ48は1本でも3本以上でも良い。また、中立面30上には処置具操作ワイヤ47が位置して挿通されている。凸部28と凹部29の円弧中心軸は中立面30上に存在するが、円弧中心軸とアーム10および湾曲部15,16の中心軸L1とは互いにねじれの関係にあり、交叉することはない。
(作用)
前述した医療用マニピュレータシステムを使用する際、まず、術者80はHMD54を頭にかぶり、左手で左のグリッパ65を持ち、右手で右のグリッパ65を持つ。このとき、術者80はHMD54により内視鏡6により得られた体腔内の映像を立体視することができる。
【0024】
ついで、術者80がその頭部の位置を変えると、その位置の変化を移動用マスターアーム31の各軸のエンコーダ42が検知し、第1の制御装置71はこれにより移動用マスターアーム31の先端位置を計算し、これに対応して内視鏡6における挿入部8の先端の位置が動くようにスレーブ側の移動用マニピュレータ5の各電磁モータを制御する。このとき、先端同士の座標系がそれぞれ対応するように制御を行う。
【0025】
また、術者80が首の向きを変えると、HMD用アーム32のエンコーダ55,56がこの動きを検出し、第2の制御装置72はHMD54の回転E1,E2と、内視鏡6の湾曲B1,B2が1対1に対応して動くように駆動部19内の図示しないエンコーダ付きモータを制御する。これらにより、処置用内視鏡6の位置及び向きが、術者80の頭の位置及び向きに対応して動くので、術者80はその頭の位置や向きを変えることによって患部に処置用内視鏡6を誘導し、様々な角度から患部を立体的に観察することが可能になる。
【0026】
次に、術者80が処置するときの動作を説明する。術者80が、例えば右の操作用グリッパ65の位置を変えたり、そのグリッパ65を開閉させたときの動きを処置手段操作用アーム33aの各関節61,62,63等に設けられたエンコーダ74が検知し、第3の制御装置73は右の処置手段操作用アーム33aの回転F1,F2,F3と、右の把持鉗子7aの回転C1、C2、C3が1対1に対応し、さらに操作用グリッパ65の開閉F4が、右の処置用グリッパ18の開閉C4の開閉量と一致して動作するように駆動部19内の図示しないエンコーダ付きモータを制御する。また、第3の制御装置73cは左の処置手段操作用アーム33bと右の処置用把持鉗子7bも同様に1対1に対応して動くように、駆動部19内の図示しないエンコーダ付きモータを制御するが、右側と同様のため、これの説明は省略する。このように術者80の手の動きと処置具の動きが1対1に対応するので、術者80はHMD54の立体映像を観察しながら、例えば左の把持鉗子7bで患部を押さえ、右の把持鉗子7aで患部の剥離を行うなどの動作が可能である。
【0027】
次に、処置具たる把持鉗子7a,7bの作用を説明する。湾曲操作ワイヤ48を基端側の駆動部19にて図示しないアクチュエータによって引き加減を調節して各節輪27にモーメントを与えて回動する。この作用が連続的に行われることによって結果として湾曲部15,16は湾曲する。湾曲時において、湾曲操作ワイヤ48に対して中立面30をはさんで反対側において挿通されて両端を固定されたバイアス材46が引張られ、軸方向に伸びる。
【0028】
逆に、湾曲操作ワイヤ48を緩めると、延びているバイアス材46の縮もうとする力によって、湾曲部15,16は真直に戻る。また、バイアス材46の張力は調節部材49を第1の支持アーム10aの部材に対してねじ込み量を調節し、軸方向の相対位置を変えることによって調節することができる。この場合、バイアス材46が固定されている固定部材50は、調節部材49に対して回転自在なため、第1の支持アーム10aの内部で湾曲操作ワイヤ48、バイアス材46等が捩じれてしまうことはない。
【0029】
また、各節輪27の表面を減摩表面処理することによって、その節輪27の回動時の滑りを良くすることができる。
バイアス材46、湾曲操作ワイヤ48をそれぞれ2本ずつ並列に配置することによって、同じ断面積の1本のバイアス材46、湾曲操作ワイヤ48を用いるよりも狭い断面内に効率良く配置することができる。
【0030】
処置具操作ワイヤ47が、中立面30を通っているために、湾曲部15,16の湾曲動作によっても、その張力が変化することはない。この結果、駆動部19での処置具操作ワイヤ47の押し引きで行うグリップ18の開閉操作を一意的に正確に操作できる。
【0031】
凸部28と凹部29の円弧中心軸つまり湾曲中心軸L2を湾曲部15,16の中心軸L1とは交わらないように湾曲操作ワイヤ48の配置位置から離れる側に偏位させる構成とすることによって、湾曲操作ワイヤ48と円弧中心軸の距離をより大きくして湾曲操作ワイヤ48を牽引するときのモーメントを大きくすることができる。
(効果)
各節輪27はその凸部28と凹部29によって互いに嵌合しているために、湾曲部15,16の剛性を高めることができる。また、湾曲構造が簡単なため、安価な医療用マニピュレータとすることができる。
【0032】
バイアス材46の張力を調節することができるために、組立性の高い医療用マニピュレータとすることができる。
各節輪27の回動摩擦を低下させる処理を施すことによって、湾曲部15,16の湾曲の動きがスムーズな医療用マニピュレータとすることができる。回動に要する力が小さくて済むために、湾曲操作ワイヤ48を細くすることができ、結果として、支持アームの外形の細径化が可能となる。
【0033】
また、バイアス材46や湾曲操作ワイヤ48を効率良く配設することによって、アーム部10の外径を細くすることができ、狭所での操作やデリケートな操作が可能な医療用マニピュレータとすることができる。
【0034】
湾曲時に処置手段、例えばグリップ18の開閉が変化しない操作性の良い医療用マニピュレータとすることができる。
牽引時のモーメントを大きくすることによって湾曲の力の強い、操作性の高い医療用マニピュレータとすることができる。
<第2の実施例>
図4および図5を参照して、本発明の第2の実施例を説明する。
(構成)
この実施例では内視鏡下外科手術のための処置具の例であり、この処置具100はその挿入部101の先端に処置手段としてのグリップ102を設けてある。挿入部101の基端には固定ハンドル103と可動ハンドル104を備えた操作部105が取り付けられている。挿入部101を構成するアーム106の先端側部分には湾曲部107が形成されている。この湾曲部107の構成は以下に述べる点を除き前述した第1の実施例でのものと略同じである。
【0035】
すなわち、湾曲部107には複数の節輪27、バイアス材46、処置手段操作ワイヤ47および湾曲操作ワイヤ48が組み込まれており、前記処置手段操作ワイヤ47は、凸部28と凹部29を備えた節輪27における回転中心軸が通る湾曲中立面に沿って延設されている。また、その湾曲中立面を間にしてバイアス材46と湾曲操作ワイヤ48が配置されている。湾曲操作ワイヤ48の先端は前記グリップ102の部材108に取着されている。湾曲操作ワイヤ48の基端部側は挿入部101内を通じて前記操作部105に導かれ、その操作部105に軸方向にスライド可能に取り付けられた湾曲操作レバー110に固定されている。
【0036】
また、処置手段操作ワイヤ47の基端側は挿入部101内を通じて操作部105に導かれ、可動ハンドル104に接続されている。
前記バイアス材46の先端は前記グリップ102の部材108に取着され、また、バイアス材46の基端はアーム106の部材に取着されている。バイアス材46の部分は湾曲部107内では直線的な形状であり、これより基端側部分はコイル部109となっている。コイル部109の部分は湾曲部107を経てアーム106内に入り込み、そのアーム106内に形成された孔部分111内に収納されている。
(作用)
図4で示すように、処置具100を使用する場合には患者の体壁aの挿入孔bに穿刺したトラカール112を通じて体腔c内にその挿入部101を挿入し、術者が体外部に出たハンドル103,104を操作して、臓器の把持や剥離等を行う。そして、湾曲操作レバー110を後方へ移動する操作を行うことによって湾曲操作ワイヤ48を牽引し、各節輪27に回転モーメントを与え、湾曲部107を湾曲する。
[付記]
1.処置手段を先端側に設け、この処置手段を支持してその処置手段の位置および向きを選択するための湾曲部を設けたアームを備えた医療用マニピュレータにおいて、前記湾曲部はその湾曲中立面からオフセットされた位置でかつ前記アームの略軸方向に延設されたバイアス部材と、前記湾曲部の湾曲中立面に対して前記バイアス部材とは反対側にオフセットされた位置でかつ前記アームの略軸方向に延設された湾曲操作ワイヤと、一端側に円弧状の凸部を設け他端側に凹部を設け前記アームの略軸方向に沿って配置され隣接するものの凸部と凹部を互いに嵌合して係合するとともに前記バイアス部材と前記湾曲操作ワイヤを内包する複数個の湾曲部用節輪とを具備したことを特徴とする医療用マニピュレータ。
2.第1項に記載の医療用マニピュレータであって、前記バイアス部材は超弾性素材で構成されていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
3.第1〜2項に記載の医療用マニピュレータであって、前記節輪が減摩擦表面処理されていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
4.第1〜2項に記載の医療用マニピュレータであって、前記節輪がフッ素樹脂コーティングされていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
5.第1〜2項に記載の医療用マニピュレータであって、前記節輪が二硫化モリブデンコーティングされていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
6.第1〜2項に記載の医療用マニピュレータであって、前記節輪が窒化チタン表面処理されていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
7.第1〜6項に記載の医療用マニピュレータであって、前記湾曲操作ワイヤが複数本有することを特徴とする医療用マニピュレータ。
8.第1〜7項に記載の医療用マニピュレータであって、前記バイアス部材が前記湾曲部の前後で、それぞれの両端が前記アーム部に固定されていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
9.第1〜8項に記載の医療用マニピュレータであって、前記バイアス部材の端部にそのバイアス部材を固定するための固定部材を有し、この固定部材が前記アーム部内で、軸方向に移動可能であり、その任意位置に固定可能であることを特徴とする医療用マニピュレータ。これによれば、バイアス材の張力調節ができるために組立性が高い。
10.第9項に記載の医療用マニピュレータであって、前記バイアス部材を固定するための固定部材と前記アーム部とがねじ係合により嵌合していることを特徴とする医療用マニピュレータ。
11.第1〜10項に記載の医療用マニピュレータであって、先端処置部を操作するための処置手段用操作ワイヤがアーム部内に挿通されており、前記処置手段用操作ワイヤが湾曲部内の湾曲中立面内に挿通されていることを特徴とする医療用マニピュレータ。処置手段用操作ワイヤが湾曲部内で湾曲中立面内に挿通されているため、湾曲部の湾曲の度合いに関係なく、処置手段の動作を一意的に行うことができる。
12.第1〜11項に記載の医療用マニピュレータであって、複数個の互いに嵌合する円弧状の凸部と同じく円弧状の凹部とを有する節輪が互いに回転する回転の中心軸が前記アーム部の中心軸と交叉しないことを特徴とする医療用マニピュレータ。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、体腔内での自由度を高め剛性の高い湾曲部によって操作性を向上させることができる。また、湾曲部の構造が簡単であるために、安価な医療用マニピュレータとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る医療用マニピュレータシステムの全体的な構成を概略的に示す説明図。
【図2】前記医療用マニピュレータシステムにおける把持鉗子の断面図。
【図3】(a)は前記把持鉗子の湾曲部付近の断面図、(b)はその節輪の斜視図、(c)は(a)中にA−A線に沿う横断面図、(d)は(a)中にB−B線に沿う横断面図。
【図4】本発明の第2の実施例に係る処置具の使用状態の説明図、(b)はその操作部の側面図。
【図5】前記第2の実施例に係る処置具の湾曲部の断面図。
【符号の説明】
1…スレーブマニピュレータ、2…マスターマニピュレータ、3…制御装置、4…手術器械、5…移動用マニピュレータ、6…処置用内視鏡、7a,7b…把持鉗子、10…アーム部、15,16…湾曲部、27…節輪、28…凸部、29…凹部、47…バイアス材、47…処置具(手段)操作ワイヤ、48…湾曲操作ワイヤ。
Claims (3)
- 処置手段を先端側に備え、前記処置手段の位置および向きを変えるための湾曲部を有するアームと、
一端に円弧状に形成された凸部を備えるとともに他端側に前記凸部と対を成す円弧状に形成された凹部を備え、順に前記凸部と前記凹部を回動可能に連結させて湾曲中心軸を形成してなる、前記湾曲部を構成する湾曲部用節輪と、
前記湾曲用節輪の湾曲中心軸に対してオフセットした位置に設けられ、前記湾曲部用節輪の軸方向に貫通する第1の孔部と、
前記湾曲部用節輪の湾曲中心軸に対して前記孔部とは反対側に設けられ、前記湾曲部用節輪の軸方向に貫通する第2の孔部と、
前記第1の孔部内に配設され、弾性復元力によって前記湾曲部を直線状態に保つバイアス部材と、
前記第2の孔部内に配設されるとともに、手元側に設けた駆動手段による牽引によって前記バイアス部材の弾性力に抗して前記湾曲部用節輪を回動させる湾曲操作ワイヤと、
を具備したことを特徴とする医療用マニピュレータ。 - 前記バイアス部材と前記アームとの相対位置を変化させ、前記バイアス部材の弾性復元力を調整する調整手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の医療用マニピュレータ。
- 処置手段を先端側に備え、前記処置手段の位置および向きを変えるための湾曲部を有するアームと、
一端に円弧状に形成された凸部を備えるとともに他端側に前記凸部と対を成す円弧状に形成された凹部を備え、順に前記凸部と前記凹部を回動可能に連結させて湾曲中心軸を形成してなる、前記湾曲部を構成する湾曲部用節輪と、
前記湾曲用節輪の湾曲中心軸に対してオフセットした位置に設けられ、前記湾曲部用節輪の軸方向に貫通する第1の孔部と、
前記湾曲部用節輪の湾曲中心軸に対して前記第1の孔部とは反対側に設けられ、前記湾曲部用節輪の軸方向に貫通する第2の孔部と、
前記第1の孔部内に配設され、弾性復元力によって前記湾曲部を直線状態に保つバイアス部材と、
前記第2の孔部内に配設され、手元側に延出する湾曲操作ワイヤと、
前記湾曲操作ワイヤの手元側に設けられ、前記バイアス部材の弾性力に抗して前記湾曲部用節輪を回動させるように前記湾曲操作ワイヤを押し引きする駆動手段と、
前記駆動手段を構成し、前記湾曲操作ワイヤを押し引きするための駆動力を発生させるモータ部と、
を具備したことを特徴とする医療用マニピュレータ。
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