JP3678959B2 - 機能材料作製装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は機能材料作製装置に関し、特に、微粒子の粒径制御、汚染軽減をなし得ることができる機能材料作製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、Si系IV族材料から構成される半導体微粒子を可視発光等が可能となる光機能素子に用いることが行われている。
【0003】
元来、IV族半導体は間接遷移型なので、バンド間遷移においてはフォノンの介在が不可欠であり、必然的に再結合過程では熱の発生が多く、輻射再結合をする確率はきわめて少ない。しかし、IV族半導体の形状を粒径が数nmレベルの微粒子にすると、バンド間遷移における波数選択則の緩和、振動子強度の増大等の効果が生じる。これにより、IV族半導体の電子−正孔対の輻射再結合過程の発生確率が増大し、強い発光を呈することが可能となる。このIV族半導体の特性を利用することで、Si系IV族材料から構成される半導体微粒子を可視発光等が可能となる光機能素子に用いることができる。
【0004】
よって、Si系IV族材料から構成される半導体微粒子を可視発光等が可能となる光機能素子に用いるためには、粒径がnmレベルで制御された球状微粒子作製が不可欠である。このnmレベルの微粒子作製には、レーザーアブレーション法が好適である。
【0005】
ターゲット材に対してレーザーアブレーション法を施すことにより作製された微粒子を堆積する機能材料作製装置は、特開平9−275075号公報に開示されたものがある。図8は、従来の機能材料作製装置の構成図である。以下、図8を用いて従来の機能材料作製装置についての説明をする。
【0006】
まず、真空反応室801内の中央付近に設けられたターゲットフォルダ802にターゲット材803を配置する。次に、真空反応室801をターボ分子ポンプを主体とした高真空排気系804により、1×10-8Torrの高真空まで排気後、高真空排気系804を閉鎖する。
【0007】
次に、希ガス導入ライン805を通じてヘリウムガス(He)を真空反応室801内に導入する。その後、マスフローコントローラ806による流量制御とドライロータリーポンプを主体とした作動排気系807による差動排気により、一定圧力(1.0〜20.0Torr)の低圧希ガス(He)雰囲気に真空反応室801を保持する。保持された数TorrのHeガス雰囲気下で、ターゲット材803表面に高エネルギー密度(例えば、1.0J/cm2以上)のレーザー光を照射する。また、レーザー光は、スリット808、集光レンズ809を通過後、ミラー810により方向を90度変えられた後、レーザー光導入窓811から真空反応室801に導入され、ターゲット材803表面に到達するようになっている。このようにして、ターゲット材803から物質の脱離、射出を行っている。
【0008】
脱離物質は、雰囲気ガス分子に運動エネルギーを散逸し、空中での凝縮、成長が促進され、堆積基板812上で粒径数nmから数十nmの微粒子に成長して堆積される。
【0009】
ここで、発光波長(発光フォトンエネルギー)の制御には、図9に示した微粒子粒径の減少に伴う量子閉じこめ効果による吸収端発光エネルギー(バンドギャップEgに対応)の増大を利用している。このため、単一発光波長を得るためには微粒子粒径の均一化が不可欠である。つまり、発光波長に対応した粒径の微粒子を可能な限り狭い粒径分布で生成、堆積できれば、単色発光する光機能素子を作製することが可能となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、半導体微粒子を用いて単一波長の発光を行う光機能素子を作製するためには、粒径分布の抑制された単一粒径の数nmレベルの微粒子の生成、堆積が要求されている。
【0011】
従来の機能材料作製装置でも、雰囲気希ガスの圧力、ターゲット材と堆積基板の距離等を適切に選んでやることによって、平均粒径をある程度制御することは可能である。しかし、従来の機能材料作製装置では、依然として粒径分布の幅が広いために、例えば幾何標準偏差σgが1.2以下であるような、均一な粒径の半導体微粒子を得ることは困難である。つまり、機能材料作製装置には、より積極的な粒径制御が必要とされている。
【0012】
また、nmレベルの微粒子はその高い表面原子割合(例えば粒径5nmで約40%)のために非常に不純物や欠陥の混入に敏感である。このため、機能材料作製装置が採用する生成堆積手法としては、より清浄でダメージの少ないプロセスが求められている。
【0013】
さらに、半導体微粒子を上記従来の機能材料作製装置のように、直接堆積基板に付着・堆積した場合には、結局は、堆積物の構造が微粒子からなる多孔質形状の薄膜を形成してしまう傾向がある。このような多孔質形状については、電極を接続して光機能素子化することを想定すると、より最適化されたものが求められる場合がある。また、このような多孔質形状の球状微粒子の元来の量子サイズ効果を引き出し、発光等に代表される新たな光機能を発現するためにも、より最適な形状・構造等が求められる場合もある。
【0014】
付け加えて、前述したようにnmレベルの微粒子は非常に表面が敏感なため、安定した透明媒質中に分散あるいは、表面を透明媒質薄膜で被覆する必要が生じることもある。
【0015】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、汚染、ダメージを軽減した状態で作製された単一粒径、均一構造を有する高純度微粒子を堆積基板に堆積することができる機能材料作製装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、低圧媒質ガス雰囲気下で第1のターゲット体にレザービームを当てることで微粒子を生成し一定流量で導入した高純度希ガスであるキャリアガスと共に排出する微粒子生成手段と、前記微粒子生成手段とパイプで接続され前記パイプを介して前記微粒子生成手段から導入された前記微粒子を含むキャリアガスから所望の粒径の微粒子を一定流量で導入したシースガス中で分級し前記キャリアガスと共に排出する微粒子分級手段と、前記微粒子分級手段と接続され前記微粒子分級手段から前記キャリアガスと共に送られてきた分級された前記微粒子を基板上に捕集するとともに第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質を前記基板上に捕集し前記分級された微粒子と前記第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質とを前記基板上に堆積する堆積手段と、前記パイプに設けられたバルブと、前記微粒子生成手段を超高真空排気する第1の排出手段と、前記微粒子分級手段に設けられた前記シースガスの流量を一定に保つように排出する第2の排出手段と、前記堆積手段を超高真空に排気するための第3の排気手段と、前記堆積手段に設けられた前記キャリアガスの流量を一定に保つように排出する第4の排出手段と、を具備し、前記バルブを閉じた状態で、前記第1の排出手段により前記微粒子生成手段を超高真空排気し前記微粒子生成手段の圧力が前記第1のターゲット体から生成される微粒子の凝集・成長に最適な圧力になった後に閉鎖することにより当該最適な圧力に保持すると共に、前記第3の排出手段により前記堆積手段の圧力を前記第2のターゲット体から生成される物質の堆積に最適な圧力にし、その後、前記バルブを開き前記第2の排出手段により前記シースガスを排出し前記第3の排出手段により前記キャリアガスを排出することにより前記キャリアガスおよび前記シースガスの流量を一定に保つと共に、前記堆積手段の圧力を前記第2のターゲット体から生成される物質の堆積に最適な圧力に保持する機能材料作製装置である。
【0017】
これにより、単一粒径・均一構造に作製された高純度微粒子を基板上に堆積することができる。この結果、単一の波長を発光する発光素子を作製することができる。さらに、高純度微粒子を高純度微粒子とは別の媒質とともに基板上に堆積するので、機能材料の汚染、ダメージを軽減できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の態様にかかる機能材料作製装置は、低圧媒質ガス雰囲気下で第1のターゲット体にレザービームを当てることで、微粒子を生成する微粒子生成手段と、前記微粒子生成手段で生成された微粒子から所望の粒径の微粒子をシースガス中で分級する微粒子分級手段と、前記微粒子分級手段で分級された微粒子を基板上に捕集するとともに、第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質を前記基板上に捕集し、前記分級された微粒子と前記第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質とを前記基板上に堆積する堆積手段と、を具備した。
【0019】
この構成により、単一粒径・均一構造に作製された第1のターゲットからなる高純度微粒子を基板上に堆積することができる。この結果、単一の波長を発光する発光素子を作製することができる。さらに、高純度微粒子を第2のターゲット体にレーザービームを当てることで生成された物質とともに基板上に堆積するので、機能材料の汚染、ダメージを軽減できる。
【0020】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる機能材料作製装置において、前記堆積手段は、前記分級された微粒子を基板上に補集すると実質的に同時に第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質を前記基板上に捕集して、前記第2のターゲット体から構成される物質中に前記微粒子を分散して堆積する。
【0021】
この構成により、単一粒径・均一構造に作製された第1のターゲットからなる高純度微粒子を第2のターゲット体にレーザービームを当てることで生成された物質に埋め込みながら基板上に堆積できるので、機能材料の汚染、ダメージを効果的に軽減できる。
【0022】
本発明の第3の態様は、第1の態様にかかる機能材料作製装置において、前記堆積手段は、前記分級済みの微粒子を基板に堆積した後に、第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質を前記基板上に捕集し、前記分級された微粒子、および第2のターゲット体から構成される物質を交互に堆積する。
【0023】
この構成により、単一粒径・均一構造に作製された第1のターゲットからなる高純度微粒子と第2のターゲット体にレーザービームを当てることで生成された物質とを交互に基板上に堆積できるので、機能材料の汚染、ダメージを効果的に軽減できる。
【0024】
本発明の第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれかにかかる機能材料作製装置において、前記微粒子分級手段は、微分型電気移動度分級装置を用いている。
【0025】
この構成により、高い収量で第1のターゲットからなる微粒子を分級することが可能になる。よって、単一粒径、均一構造の高純度微粒子を効率的に捕集・堆積することができる。
【0026】
本発明の第5の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれかにかかる機能材料作製装置において、前記微粒子分級手段は、前記微粒子を放射性同位体を用いて荷電する微粒子荷電手段と、荷電した微粒子を分級する微分型電気移動度分級手段とを具備する。
【0027】
この構成により、微粒子を荷電できるので分級された微粒子の収率を向上することができる。
【0028】
本発明の第6の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれかにかかる機能材料作製装置において、前記微粒子分級手段は、前記微粒子を真空紫外光源を用いて荷電する微粒子荷電手段と、荷電した微粒子を分級する微分型電気移動度分級手段とを具備する。
【0029】
この構成により、荷電効率を向上させ、単極に第1のターゲットからなる微粒子を荷電することができる。
【0030】
本発明の第7の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれかにかかる機能材料作製装置において、前記微粒子生成手段は、前記レーザービームをパルスレーザー光とし生成された微粒子をパルスレーザーにより形成されたアブレーションプルーム内で荷電する。
【0031】
この構成により、放射性同位体や真空紫外光源等を用いる微粒子荷電部を装置から省くことができ、装置の小型化・低コスト化が可能となる。さらに、この構成により、第1のターゲットからなる微粒子の搬送過程を短縮可能なため、搬送中の沈着や凝集等の現象を抑制するという作用を有することができる。
【0032】
本発明の第8の態様は、第5の態様から第7の態様のいずれかにかかる機能材料作製装置において、前記堆積手段は、分級された荷電状態の微粒子が堆積される際に行われる電子の授受を電流として測定する。
【0033】
この構成により、第1のターゲットからなる微粒子の堆積量の確認、ひいては堆積量の制御が可能となる。
【0034】
本発明の第9の態様は、第1の態様から第8の態様のいずれかにかかる機能材料作製装置において、前記微粒子生成手段の圧力を、前記第1のターゲット体から生成される微粒子の凝集・成長に最適な圧力に保持し、さらに前記堆積手段の圧力を前記第2のターゲット体から生成される物質の堆積に最適な圧力に保持する。
【0035】
この構成により、第1のターゲットからなる微粒子および第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質媒質をそれぞれに最適な雰囲気ガス圧力下で生成および堆積可能になる。さらに、微粒子生成室と堆積室の間に圧力差を生じさせることができ、生じた圧力差を利用して効率的に微粒子を搬送するという作用を有することができる。
【0036】
本発明の第10の態様は、第1の態様から第9の態様のいずれかにかかる機能材料作製装置において、前記堆積手段は、前記第2のターゲット体を第3のターゲット体と交換するターゲット交換機構をさらに具備し、
前記分級済みの微粒子および前記第2のターゲット体から構成される物質の堆積後に、前記第2のターゲット体を第3のターゲット体と交換し、第3のターゲット材である透明電極材にレーザービームを当てることで生成された物質を前記分級済みの微粒子および前記第2のターゲット体から構成される物質上に堆積して透明電極を形成する。
【0037】
この構成により、汚染・ダメージを軽減した状態で作製された機能材料に接続される透明電極をも堆積手段内で形成することが可能とする。
【0038】
本発明の第11の態様は、第10の態様にかかる機能材料作製装置において、前記堆積手段は、前記第2のターゲット体と、第3のターゲット体との双方あるいは、片方の堆積をスパッタリングによって行う。
【0039】
このように、第2のターゲットおよび第3のターゲット材の堆積をスパッタリングによって行うと、従来の半導体装置の技術の流用ができる。また、機能材料作製装置の機構部品や光学部品を簡素化することができる。
【0040】
本発明の第12の態様は、第1の態様から第11の態様のいずれかにかかる機能材料作製装置において、前記堆積手段は、前記分級済みの微粒子および第2のターゲット体から構成される物質の堆積を前記基板に対して法線方向から行う。
【0041】
この構成により、第1のターゲットからなる微粒子および第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質の基板への付着や堆積の効率をより向上することが可能となる。
【0042】
本発明の第13の態様は、第1の態様から第12の態様にかかる機能材料作製装置において、前記微粒子分級手段は、前記微粒子の材料のバンドギャップエネルギーが可視光領域になるような平均粒径で分級を行う。
【0043】
この構成により、可視光領域の波長を発光する機能材料を作製することができる。
【0044】
本発明の第14の態様にかかる機能材料は、微粒子生成手段内で、微粒子を媒質ガス雰囲気下で生成し、前記微粒子を前記微粒子分級手段に導入し、前記微粒子分級手段内において前記微粒子をにシースガス中で所望の粒径に分級し、分級された微粒子を基板上にレーザアブレーションにより生成された物質と共に堆積することによって作製される。
【0045】
このように作製された機能材料は、単一粒径・均一構造の高純度微粒子が堆積されるので、単一の波長を発光する発光素子に用いることができる。さらに、高純度微粒子がレーザーアブレーションにより生成された物質とともに堆積されるので、汚染、ダメージが軽減される。
【0046】
本発明の第15の態様は、第14の態様にかかる機能材料において、前記微粒子のバンドギャップエネルギーが可視光領域になるような平均粒径で分級を行う。
【0047】
このように作製された機能材料は、可視光領域の波長を発光することができる。
【0048】
本発明の第16の態様にかかる光機能素子は、微粒子生成手段内で、微粒子を媒質ガス雰囲気下で生成し、前記微粒子を微粒子分級手段に導入し、前記微粒子分級手段内において前記微粒子をシースガス中において前記微粒子のバンドギャップエネルギーが可視光領域になるような平均粒径で分級し、前記分級された微粒子をレーザアブレーションにより生成された物質中に分散させた層を基板上に形成することで作成される。
【0049】
このように作製された光機能素子は、可視光領域の波長を発光することができる。
【0050】
本発明の第17の態様は、第16の態様にかかる光機能素子において、前記可視光領域が赤、青、及び緑にそれぞれ対応する波長領域である。
【0051】
このように作製された光機能素子は、赤、青、及び緑にそれぞれ対応する波長を発光することができる。
【0052】
以下、本発明の機能材料作製装置を、実施の形態として、図1から図4を用いて詳細に説明する。
【0053】
図1は、本実施の形態における機能材料作製装置の堆積室の内部構成を示したものである。堆積室101の左側部上方には、微粒子堆積用ノズル102が設けられている。微粒子堆積用ノズル102から、後述する微粒子分級装置で単一な粒径に分級済みの微粒子を含む一定質量流量Qa(標準状態1l/min.)のキャリアガスが堆積室101内部に噴出される。
【0054】
また、堆積室101の中心に対して微粒子堆積用ノズル102と対象の位置には、エキシマレーザー光103を導入するためのレーザー光導入窓104が設けられている。また、レーザー光導入窓104の近傍であって、堆積室101の外部には、エキシマレーザー光103の進行方向を90度変化させるためのミラー105が設けられている。また、ミラー105の近傍には、エキシマレーザー光103を集光するための集光レンズ106が設けられている。
【0055】
そして、集光レンズ106で集光されたエキシマレーザー光103は、ミラー105で方向を90度変化させられ、レーザー光導入窓104を介して堆積室101内に導入される。堆積室101内に導入されたエキシマレーザー光103は、透明媒質ターゲット107に到達する。
【0056】
透明媒質ターゲット107は、ターゲットの駆動・交換を行うターゲット駆動・交換機構108に固定されている。ターゲット駆動・交換機構108は、導入されたエキシマレーザー光103が透明媒質ターゲット107を照射できるような位置に配置されている。詳細には、ターゲット駆動・交換機構108は、堆積室101の微粒子堆積用ノズル102が設けられている側面と反対側の側面上部近傍に設けられている。また、ターゲット駆動・交換機構108には、透明媒質ターゲットである透明電極材ターゲット109が固定されている。ターゲット駆動・交換機構108を駆動することで、透明媒質ターゲット107の位置と透明電極材ターゲット109の位置を入れ替えることができる。これにより、エキシマレーザー光103を透明電極材ターゲット109に照射することができる。
【0057】
透明媒質ターゲット107は、エキシマレーザー光103によって励起されてアブレーションプルーム110を形成する。アブレーションブルーム110の成長方向に、堆積室101の略中央部に配置された微粒子および透明媒質、透明電極が堆積される堆積基板111が位置するように透明媒質ターゲット107および透明電極材ターゲット109が配置されている。また、堆積基板111は、堆積基板フォルダー112に固定されている。
【0058】
さらに、堆積室101の微粒子堆積用ノズル102側の側部には、堆積室101を光機能素子作製前に<1×10-7Torrの超高真空に排気するための高真空排気系113が設けられている。堆積室101の堆積基板111の下方の側部には、一定圧力P2に保持されるようにキャリアガスの差動排気を行うためのキャリアガス差動排気系114が設けられている。
【0059】
また、堆積室101の底部には、後述する微粒子分級装置にて分級された荷電状態の微粒子が堆積基板111に堆積される際に行われる荷電粒子の授受を測定するための微小電流計115が設けられている。微小電流計115は、この電子の授受を電流として測定する。
【0060】
本実施の形態における機能材料作製装置200は、図2に示した全体構成図のように微粒子生成室201と、微粒子荷電部202と微分型電気移動度分級装置203から成る微粒子分級室204と、堆積室101とで構成されている。微粒子生成室201と微粒子分級室204とは、微粒子取り込みパイプ209によって接続されている。
【0061】
ここで、図3に示すような断面構造を有する光機能素子の作製に関して図1から図4を用いて説明する。まず、光機能素子の作製プロセス前に、ダメージ・汚染等の影響を排除するために図2に示すバルブ205を閉じ、微粒子生成室201をターボ分子ポンプを主体とした超高真空排気系206によって<1×10-8Torrの超高真空に排気後、超高真空排気系206を閉鎖する。
【0062】
同時に、微粒子分級室204および堆積室101をターボ分子ポンプを主体とした超高真空排気系113によって<1×10-7Torrの超高真空に排気後、超高真空排気系113を閉鎖する。
【0063】
次に、マスフローコントローラ207を用いて微粒子生成室201に一定質量流量Qa(200sccm)でキャリアガス208(高純度希ガス、例えば純度99.9999%のHe)を導入する。
【0064】
ここで、上記実施の形態にかかる微粒子生成室の構成について図4を用いて詳細に説明する。微粒子生成室201の左側面部にはガス導入系401が接続されている。ガス導入系401の一端部には、マスフローコントローラ207が設けられている。マスフローコントローラ207は、微粒子生成室201内に一定質量流量Qaでキャリアガス208を導入する設定になっている。マスフローコントローラ207には、微粒子生成室201の内部方向に略垂直に延びる雰囲気希ガス導入管402が接続されている。雰囲気希ガス導入管402は、微粒子生成室201の内部の中央よりやや側面よりで、リング状の雰囲気希ガス噴出管403に接続されている。雰囲気希ガス導入管402は、微粒子生成室201の側面に平行に配置されている。雰囲気希ガス噴出管403には、8つの雰囲気希ガス噴出口404a〜404hが形成されている。雰囲気希ガス噴出口404a〜404hは、後述する固体ターゲットである半導体ターゲット406を挟んで、略等間隔に配置されるようにリング状の雰囲気ガス排出管403に8等配されて設けられている。また、図面では、説明の便宜上、雰囲気希ガス噴出口404bと404c、雰囲気希ガス噴出口404dと404e、および雰囲気希ガス噴出口404fと404gとが、それぞれ近接して図示されているが、実際は雰囲気希ガス導入管402がリング状形状のため、雰囲気希ガス噴出口404bは404cに対して、雰囲気希ガス噴出口404dは404eに対して、および雰囲気希ガス噴出口404fは404gに対して図面手前に配置されている。これにより、半導体ターゲット406に対して、キャリアガス208が対称な流れを形成するようになっている。
【0065】
また、微粒子生成室201の底部には、石英製のレーザー光導入窓407が設けられており、パルスレーザー光408が集光レンズ409で集光され、レーザー光導入窓407を介して微粒子生成室201に導入される。微粒子生成室201の略中央には、自転機構を有するターゲットフォルダー410に固定された半導体ターゲット406が配置されている。また、半導体ターゲット406は、ターゲットフォルダー410により、微粒子生成時には8rpm(回転/分)の速度で自転するようになっている。半導体ターゲット406としては高純度Si単結晶基板(面方位(100)、比抵抗10Ω・cm)を使用している。
【0066】
パルスレーザビーム408の集光照射としては、Q−スイッチNd:YAGレーザの第2高調波(波長:532nm、パルスエネルギー:10mJ、パルス幅:40ns、繰り返し周波数:10Hz)を、半導体ターゲット406の表面上で10J/cm2のエネルギー密度になるよう集光照射している。
【0067】
半導体ターゲット406は、微粒子生成室201内に導入されたパルスレーザー光408によって励起される。パルスレーザー光408によって励起された半導体ターゲット406は、アブレーションプルーム411を形成する。また、微粒子生成室201のアブレーションプルーム411の成長方向には、微粒子取り込みパイプ412が配置されている。また、微粒子生成室201の左側部には、光機能素子の作製プロセス前に微粒子生成室201を超高真空排気する、ターボ分子ポンプを主体とした超高真空排気系206が設けられている。また、微粒子生成室201の右側部には、ドライスクロールポンプを主体とした差動排気系413が設けられている。
【0068】
次に、機能材料作製装置200の動作の説明に戻る。図2に示すバルブ205を閉じた状態で、図4に示すドライスクロールポンプを主体とした差動排気系413を開き、微粒子生成室201を一定圧力P1(例えば5.0Torr)に保持する。
【0069】
ここで、集光されたパルスレーザー光408によって半導体ターゲット406の表面を励起し、アブレーション反応を生じさせる。これによって、半導体ターゲット406の表面に形成されている自然酸化膜、およびターゲット表面に付着している金属・炭素化合物等の不純物を完全に除去し、その後、差動排気系413を閉鎖する。この時点では、パルスレーザー光408の発振は停止している。
【0070】
上記のように、半導体ターゲット406表面に形成されている自然酸化膜、および半導体ターゲット406表面に付着している金属・炭素化合物等の不純物を除去することにより、半導体微粒子に混入する可能性のある、半導体微粒子にとっての不純物である酸化物、およびターゲット表面に付着している金属・炭素化合物等の影響を取り除くことができる。
【0071】
次に、図2に示すバルブ205を開き、微粒子分級室204、および堆積室101にキャリアガス208を一定質量流量Qaで導入する。
【0072】
同時に、マスフローコントローラ210を用いて微分型電気移動度分級装置203に質量流量Qc(標準状態5l/min.)でシースガス211(高純度希ガス、例えば純度99.9999%のHe)を導入する。
【0073】
ここで、図1に示すドライポンプを主体としたキャリアガス差動排気系114を開き、堆積室101内が一定圧力P2(例えば2.0Torr)に保持されるようにキャリアガスを一定質量流量Qaで排気する。
【0074】
同時に、図2に示すドライポンプを主体としたシースガス差動排気系212を開き、シースガスを一定質量流量Qcで排気する。この時点で、微粒子生成室210は一定圧力P1に、堆積室101は一定圧力P2に保持される。
【0075】
次に、図4に示すパルスレーザー光408を発振させ、微粒子生成室201に導入する。この時、図4に示す微粒子生成室201内では、半導体ターゲット406がパルスレーザー光408によって励起され、アブレーション反応を起こす。このようにして半導体ターゲット406から脱離・射出された物質は、雰囲気希ガス分子に運動エネルギーを散逸するため、空中での凝縮・成長が促され、数nmから数十nmの微粒子に成長する。
【0076】
ここで、上記のような手段で微粒子生成室201を一定圧力P1に制御・保持することにより、半導体微粒子が最適な条件下で凝集・成長することが可能となる。
【0077】
次に、図4に示す微粒子生成室201で生成された高純度半導体微粒子は、微粒子取り込みパイプ412を介して一定質量流量Qaのキャリアガスとともに、図3に示す微粒子荷電部202に搬送され、放射性同位体によって両極に荷電される。
【0078】
微粒子荷電部202で荷電された高純度半導体微粒子は微分型電気移動度分級装置203に送られる。上記実施の形態では、微分型電気移動度分級装置203に、二重円筒型分級装置を採用している。微分型電気移動度分級装置203の二重円筒部分には、シースガス211の流れの方向と垂直に、直流電源により静電界が印可されている。従って荷電された高純度半導体微粒子は各々の電気移動度に応じた軌道を描く。この電気移動度は高純度半導体微粒子の粒径に依存しているため、ある特定粒径の高純度半導体微粒子だけが微分型電気移動度分級装置203のシースガス流の下流に側に設けられたスリットに達し、分級されて、スリットに接続された微粒子堆積用ノズル102から取り出される。その他の粒径の微粒子は、シースガス211と共にシースガス差動排気系212から排気されるか、あるいは、二重円筒部内側の集電極へ移動、付着する。このようにして、微粒子は所望の単一粒径に分級される。
【0079】
ここで、微粒子荷電部202で高純度半導体微粒子をArFエキシマレーザー光(波長193nm)のような真空紫外光源で荷電することにより、高効率で微粒子を単極荷電することができる。これにより、分級された微粒子の収率を向上することができる。なお、ここではArFエキシマレーザー光を用いたが、真空紫外光源としてエキシマランプや真空紫外(Deep Ultra Violet: DUV)ランプを用いることもできる。
【0080】
加えて、上記のような手段で導入されるキャリアガス・シースガスの質量流量と、排気されるキャリアガス・シースガスの質量流量がそれぞれ等しくなるように制御してやることにより、微分型電気移動度分級装置203における分級精度を理論上の値に近づけることができる。
【0081】
次に、図2に示す微粒子分級室204で分級された高純度半導体微粒子は、図1に示す堆積室101内に、一定質量流量Qaのキャリアガスとともに、微粒子堆積用ノズル102を介して搬送され、堆積基板111上に捕集・堆積される。
【0082】
この時、透明媒質ターゲット107がエキシマレーザー光103によって励起される。ここで、アブレーション反応によって射出された透明媒質は、堆積基板111上に高純度半導体微粒子が捕集・堆積されるのと同時に、堆積基板111上に捕集・堆積される。
【0083】
ここで、上述した手段で堆積室101を一定圧力P2に制御・保持することにより、透明媒質を最適な条件下で堆積することが可能となる。
【0084】
上記のように分級された高純度半導体微粒子と透明媒質の捕集・堆積を同時に行うことにより、図3(a)に示すように、半導体微粒子分散透明媒質層301中にIV族半導体微粒子302が分散した構造を、下部電極層303が表面に形成された堆積基板111上に形成することができる。下部電極層303は、スパッタリングなどにより堆積基板111に形成されている。また、下部電極層303は、珪化金属などで構成されており、耐腐食性や耐熱性が高くなっている。
【0085】
なお、上記実施の形態では、図1に示す堆積室101内で、高純度半導体微粒子と透明媒質の捕集・堆積を同時に行っている。これに対し、まず、微粒子堆積用ノズル102から高純度半導体微粒子の堆積を行い、一定量の高純度半導体微粒子を堆積させる。そして、その後、堆積基板上への透明媒質の堆積を行うことによって微粒子と透明媒質の層状構造を形成することもできる。さらに、高純度半導体微粒子と透明媒質の堆積を交互に複数回繰り返すことによって、図3(b)に示すように、IV族半導体微粒子層304と透明媒質層305が層状に積み重なった構造を形成することができる。
【0086】
なお、上記実施の形態では、半導体微粒子分散透明媒質層301中にIV族半導体微粒子302が分散した構造を堆積基板111上に直接に形成しているが、堆積基板111上に何らかの媒質層を形成し、この媒質層上にIV族半導体微粒子302が分散した構造の半導体微粒子分散透明媒質層301を形成してもよい。
【0087】
ここで、高純度半導体微粒子の捕集・堆積と同時に微小電流計115によって、電流を測定する。電流の測定は、分級された荷電状態の微粒子が基板上に捕集・堆積される際に行われる電子の授受を測定することで行う。電流の測定をすることで、微粒子の堆積量の確認・制御を行うことができる。
【0088】
次に、以上のように高純度半導体微粒子および透明媒質を捕集・堆積した後、図1のターゲット駆動・交換機構108を用いて、透明媒質ターゲット107を透明電極材ターゲット109と交換する。
【0089】
そして、透明電極材ターゲット109はエキシマレーザー光103によって励起され、アブレーション反応によって透明電極材料を射出する。噴出された透明電極材料は、図3のように半導体微粒子分散媒質層301あるいは透明媒質層305上に透明電極層306を形成する。この時、堆積室101内の雰囲気ガス種類、および圧力P2は透明電極材量を最適な条件下で堆積することが可能なように制御されている(例えば雰囲気ガスは純度99.999%のO2、圧力10−200mTorr)。
【0090】
このように、汚染・ダメージを軽減した状態で光機能素子に接続される透明電極をも単一の装置で形成することができる。
【0091】
なお、ここまでに透明媒質ならびに透明電極材量の堆積はレーザー光によるアブレーションを用いて行ったが、図1に示す堆積室101において、透明媒質ターゲット107、および透明電極材ターゲット109の堆積を多元系スパッタリングによって行うことも考えられる。これにより、従来の半導体装置の技術の流用ができ、さらに機構部品・光学部品を簡素化することができる。このスパッタリングの導入は、特に透明電極を形成する際の半導体微粒子に対する酸化の影響を軽減することができ有効である。
【0092】
ここで、上記実施の形態の変形にかかる堆積室について図5を用いて説明する。図5は、上記実施の形態にかかる堆積室のその他の例の構成図である。なお、すでに説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付与し、説明を省く。
【0093】
図5に示すように堆積室501の上面部略中央には、微粒子堆積用ノズル502が設けられている。微粒子堆積用ノズル502から堆積室501の内部に、分級済みの微粒子が一定質量流量Qaのキャリアガスとともに流入し、噴出される。
【0094】
一方、堆積基板111は、堆積室501の略中央部に配置されている。堆積基板111は、堆積基板フォルダー112に固定されている。このため、微粒子堆積用ノズル502の噴出口が堆積基板111の法線方向に位置するようになっている。
【0095】
透明媒質ターゲット107は、ターゲットフォルダー503に固定されている。ターゲットフォルダー503は、モーター504によってターゲットの駆動を行う。また、透明媒質ターゲット107は、エキシマレーザー光103によって励起される。励起された透明媒質ターゲット107は、アブレーションプルーム110を生成する。ここで、アブレーションプルーム110の成長方向が堆積基板111の法線方向となるようにターゲットフォルダー503が配置されている。また、透明媒質ターゲット107はリング形状になされている。
【0096】
このように堆積室501の内部を構成することで、高純度半導体微粒子、透明媒質の堆積がともに堆積基板111に対しての放線方向から行われる。これにより、高純度半導体微粒子、透明媒質の堆積効率が向上する。さらに、高純度半導体微粒子、透明媒質からなる堆積物の分布を均質化することができる。
【0097】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、汚染・ダメージを軽減した状態で単一粒径・均一構造の高純度微粒子を効率的に作製し、基板上に透明媒質と同時に堆積することができ、形状・構造を最適化した光機能素子を作製することができる。
【0098】
さらに、上記実施の形態によれば、汚染・ダメージを軽減した状態で単一粒径・均一構造の高純度半導体微粒子を効率的に作製し、基板上に透明媒質と交互に堆積することができ、形状・構造を最適化した光機能素子を作製することができる。
【0099】
次に、上記実施の形態の機能材料作製装置を用いて、実際に生成したnm領域Si微粒子の粒径分布の一例を図6(a)に示す。この際の分級・堆積条件は以下のとおりである。
【0100】
生成室Heガス圧力:5.0Torr、堆積室Heガス圧力:4.5Torr、キャリアガス流量:He 0.33SLM(標準状態,l/min)、シースガス流量:He 1.67SLM、DMA分級領域印加電圧:−2.5V、堆積基板印加電圧:−100V、および堆積基板温度:常温である。その他、励起レーザーの照射条件等のSi微粒子生成に関する条件は,図4の詳細説明においてすでに述べたものと同様となっている。
【0101】
図6(a)においては、生成直後のSi微粒子の粒径分布を黒丸で表わし、分級後のSi微粒子の粒径分布を白いヒストグラムで表している。ここで,生成直後のSi微粒子の粒径分布は、DMA分級領域印加電圧(静電場強度)をスイープしながら、堆積基板ホルダー112での荷電粒子の入射による電流を微小電流計115により計測した値をもとに算出した。一方、分級後の粒径分布は、固定したDMA分級領域印加電圧(−2.5V)で堆積基板111上に堆積し続けたSi微粒子を電子顕微鏡観察することで得た。
【0102】
生成されたSi微粒子群の粒径分布の幅は極めて広い(黒丸:幾何標準偏差sg=1.8)。しかし、生成されたSi微粒子群にDMA分級を施すことにより、極めて先鋭な粒径分布(白ヒストグラム:幾何標準偏差sg=1.2)を得ることができる。このように先鋭な粒径分布は、単一粒径あるいは単分散と呼ばれている。
【0103】
また、図6(a)において、生成直後のSi微粒子群の平均粒経は5.8nmである。なお、DMA分級を施す際にDMA分級領域印加電圧を−2.5Vに設定することで、分級後の平均粒径をより小粒径の3.8nmに移動することも可能となった。
【0104】
ところで量子力学的原理から,半導体が微粒子化することでその粒径が,内在するキャリアに付随するド・ブロイ波長あるいは内在するエキシトンのボーア半径と同等の領域になると、粒径dmに応じてエネルギーバンドギャップEgが変化することが知られている。すなわち、dmが小さくなるにつれて,Egが増大する。微粒子の材料がSiである場合、dmが2−10nmの領域では,有効質量近似(effective−mass approximation)と強結合近似(tight−binding approximation)を組合わせた解析により、Egが1.7−3.0eVといった可視光領域の中で変化することが判明している。Egはまさしく光吸収や発光の波長(あるいはphoton energy)を決定する物理量である。
【0105】
図6(b)は、図6(a)における分級前後のSi微粒子の粒径(dm)分布に対応するエネルギーバンドギャップ(Eg)の分布を示す図である。図6(b)から、生成直後(分級前)のSi微粒子群(黒丸)のEg分布の中心は、近赤外領域(1.4eV)にあることがわかる。このフォトンエネルギー1.4eVは、図6(a)における粒径の5.8nmに対応している。これに対し、分級後のSi微粒子群(白ヒストグラム)のEg分布の中心は、可視光領域の赤の波長領域にある。このフォトンエネルギー1.8eVは、図6(a)における粒径の3.8nmに対応している。これは、生成された直後のSi微粒子群では,可視光域での光機能を持たせることが不可能であるのに対し、Si微粒子群にDMA分級を施すことにより可視光域での光機能(光吸収や発光など)を発現できることを示している。Si微粒子群が可視光域での光機能(光吸収や発光など)を発現できることは、工業上極めて有用な価値をもたらす。
【0106】
上述したように、生成直後のSi微粒子を分級することにより、微粒子を単分散させることができる。このように微粒子が単分散の状態になる、すなわち粒径分布において特定粒径にピークが存在するようになると、粒径に対応するエネルギーバンドギャップの分布も揃うことになる。このため、分級された微粒子が多数存在することにより、エネルギーバンドギャップに相当する波長の光を強く発するようになる。したがって、微粒子を分級する際に、可視光域の光の波長相当のエネルギーバンドギャップに対応する粒径に微粒子を分級することにより、可視光域において光機能を発揮する微粒子を実現することができる。なお、ド・ブロイ波長は材料により異なるため、粒径とエネルギーバンドギャップとの間の相対関係は、微粒子の材料により異なる。
【0107】
また、光吸収や発光の波長を決定する物理量であるEgが、Si微粒子の粒径dmに応じて変化することを利用して、Si微粒子群を所望の粒径に分級することで、所望の波長の光を発する光機能素子を作製することもできる。すなわち、可視光域での光機能を発現できるような粒径に分級したSi微粒子群を堆積基板111上に堆積することで、可視光域で光機能を発現する光機能素子を作製できる。
【0108】
上記実施の形態における生成−分級−堆積連続プロセスシステムを用いて、図7(a)に示すような、3つのSi微粒子群を作製する。これらSi微粒子群は、平均粒径を3.9nm、2.4nm、および1.9nmに設定して分級を行ったものである。各々のSi微粒子群のsgは、すべて1.2以内に収まっている。Si微粒子群の平均粒径の制御は、DMA分級を施す際にDMA分級領域印加電圧を制御することで行うことができる。これらの3つのSi微粒子群は,図6と同様の解析により、Eg(対応フォトンエネルギー)分布の中心値がそれぞれ、1.91eV、2.25eV、および2.76eVに対応する(図7(b))。これらのEgの値は、波長としてはそれぞれ、650nm、550nm、および450nmに対応する。これらの波長は、正しく赤、緑、および青の3原色の光の波長である。このような粒径に分級されたSi微粒子群を媒質とともにレーザーアブレーションにより堆積基板111上に堆積して光機能層を堆積基板111上に形成することで、赤、緑、および青の波長の光を発する光機能素子を作製できる。
【0109】
以上のように,Si微粒子により可視光域の3原色を発光する光機能素子を実現できることは,光・電子産業において極めて大きな意義を有するものである。
【0110】
以上説明したように、上記実施の形態は、半導体ターゲット406から生成・分級された微粒子が堆積基板111上に捕集すると、実質的に同時に透明媒質ターゲット107のアブレーション反応によって生成された堆積基板111上に捕集する。これにより、透明媒質ターゲット107から構成される物質中に半導体ターゲット406から生成・分級された微粒子を分散して堆積することができる。この結果、汚染・ダメージを軽減した状態で単一粒径・均一構造の高純度微粒子を効率的に作製し、基板上に透明媒質と同時に堆積することができる。これにより、光機能素子の形状・構造を高度に構成できるという作用を有することができる。
【0111】
また、上記実施の形態は、半導体ターゲット406から生成・分級された微粒子および透明媒質ターゲット107から構成される薄膜を交互に堆積する。これによっても、汚染・ダメージを軽減した状態で単一粒径・均一構造の高純度微粒子を効率的に作製し、基板上に透明媒質と交互に堆積することができる。
【0112】
また、上記実施の形態にかかる微粒子分級室204に、微分型電気移動度分級装置203を採用している。これにより、高い収量で微粒子を分級することが可能である。この結果、単一粒径・均一構造の高純度微粒子を効率的に捕集・堆積することができる。
【0113】
さらに、上記実施の形態によれば、微粒子生成室201の圧力を、半導体ターゲット406から生成される微粒子の凝集・成長に最適な圧力に保持できる。また、堆積室101の圧力を透明媒質ターゲット107から生成される物質の堆積に最適な圧力に保持できる。これにより、微粒子・透明媒質をそれぞれに最適な雰囲気ガス圧力下で生成・堆積可能である。さらに微粒子生成室201と堆積室101の間に圧力差を生じさせることができる。この生じた圧力差を利用して、効率的に微粒子を微粒子生成室201から堆積室101へ搬送するという作用を有することができる。
【0114】
また、上記実施の形態によれば、堆積室101に設けたターゲット駆動・交換機構108により、透明媒質ターゲット107と透明電極材ターゲット109との位置を交換することができる。これにより、半導体ターゲット406および透明媒質ターゲット107から構成される物質の堆積後に、透明電極材ターゲット109をエキシマレーザー光103で励起することができる。そして、励起した透明電極材ターゲット109がアブレーション反応を起こすことによって生成された物質を、半導体ターゲット406および透明媒質ターゲット107から構成される物質に堆積して透明電極を形成することができる。これにより、機能材料としての活性領域を大気にさらすことなく、汚染・ダメージを軽減した状態で光機能素子に接触される透明電極をも単一の装置で形成することを可能にできる。
【0115】
さらに、上記実施の形態の変形例においては、半導体ターゲット406および透明媒質ターゲット107から構成される物質の堆積を基板に対して法線方向から行えることができる。これにより、微粒子・透明媒質の基板への付着・堆積効率を向上することが可能となる。
【0116】
また、上記実施の形態は、微粒子を放射性同位体を用いて荷電する方式の微粒子荷電部202を有している。また、微粒子荷電部202が微粒子を真空紫外光源を用いて荷電する形態をとることで、荷電効率を向上させることができる。
【0117】
また、上記実施の形態の変形例として、生成された微粒子をパルスレーザーによるアブレーションプルーム内で荷電する形態も考えられる。これにより、放射性同位体や真空紫外光源等を用いる微粒子荷電部202を装置から省くことも可能である。これにより、装置の小型化・低コスト化が可能となる。さらに、微粒子の搬送過程を短縮可能になる。この結果、搬送中の微粒子の沈着・凝集等の現象を抑制するという作用を有する。
【0118】
さらに、上記実施の形態のおいて、透明媒質ターゲット107および透明電極材ターゲット109の堆積をスパッタリングによって行うようにすることも考えられる。これにより、従来の半導体装置の技術の流用ができ、さらに機構部品・光学部品を簡素化することができる。
【0119】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、汚染、ダメージを軽減した状態で作製された単一粒径、均一構造を有する高純度微粒子を堆積基板に堆積することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる機能材料作製装置の堆積室の構成を示す図
【図2】上記実施の形態にかかる機能材料作製装置の構成を示す図
【図3】(a) 上記実施の形態にかかる機能材料作製装置で作製された第1の機能材料の拡大断面図
(b) 上記実施の形態にかかる機能材料作製装置で作製された第2の機能材料の拡大断面図
【図4】上記実施の形態にかかる機能材料作製装置の微粒子生成室の構成を示す図
【図5】上記実施の形態にかかる機能材料作製装置のその他の例の堆積室の構成を示す図
【図6】(a) 生成直後の微粒子の粒径分布と分級後の微粒子の粒径分布を示す図
(b) 生成直後の微粒子の光学ギャップの分布と分級後の微粒子の光学ギャップの分布を示す図
【図7】 (a) 多色発光を目的として作製された、3種のSi微粒子群の粒径分布を示す図
(b) 多色発光を目的として作製された、3種のSi微粒子群の光学ギャップの分布を示す図
【図8】従来の機能材料作製装置の構成を示す図
【図9】微粒子粒径とその吸収端発光エネルギーの相関図
【符号の説明】
101、501 堆積室
102、502 微粒子堆積用ノズル
103 エキシマレーザー光
104 レーザー光導入窓
107 透明媒質ターゲット
108 ターゲット駆動・交換機構
109 透明電極材ターゲット
110 アブレーションプルーム
111 堆積基板
112 堆積基板フォルダー
113 超高真空排気系
114 キャリアガス差動排気系
115 微小電流計
201 微粒子生成室
202 微粒子荷電部
203 微分型電気移動度分級装置
204 微粒子分級室
205 バルブ
206 超高真空排気系
207、210 マスフローコントローラ
209 微粒子取り込みパイプ
212 シースガス差動排気系
503 ターゲットフォルダー

Claims (10)

  1. 低圧媒質ガス雰囲気下で第1のターゲット体にレザービームを当てることで微粒子を生成し一定流量で導入した高純度希ガスであるキャリアガスと共に排出する微粒子生成手段と、前記微粒子生成手段とパイプで接続され前記パイプを介して前記微粒子生成手段から導入された前記微粒子を含むキャリアガスから所望の粒径の微粒子を一定流量で導入したシースガス中で分級し前記キャリアガスと共に排出する微粒子分級手段と、前記微粒子分級手段と接続され前記微粒子分級手段から前記キャリアガスと共に送られてきた分級された前記微粒子を基板上に捕集するとともに第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質を前記基板上に捕集し前記分級された微粒子と前記第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質とを前記基板上に堆積する堆積手段と、前記パイプに設けられたバルブと、前記微粒子生成手段を超高真空排気する第1の排出手段と、前記微粒子分級手段に設けられた前記シースガスの流量を一定に保つように排出する第2の排出手段と、前記堆積手段を超高真空に排気するための第3の排気手段と、前記堆積手段に設けられた前記キャリアガスの流量を一定に保つように排出する第4の排出手段と、を具備し、
    前記バルブを閉じた状態で、前記第1の排出手段により前記微粒子生成手段を超高真空排気し前記微粒子生成手段の圧力が前記第1のターゲット体から生成される微粒子の凝集・成長に最適な圧力になった後に閉鎖することにより当該最適な圧力に保持すると共に、前記第3の排出手段により前記堆積手段の圧力を前記第2のターゲット体から生成される物質の堆積に最適な圧力にし、
    その後、前記バルブを開き前記第2の排出手段により前記シースガスを排出し前記第3の排出手段により前記キャリアガスを排出することにより前記キャリアガスおよび前記シースガスの流量を一定に保つと共に、前記堆積手段の圧力を前記第2のターゲット体から生成される物質の堆積に最適な圧力に保持することを特徴とする機能材料作製装置。
  2. 前記堆積手段は、前記分級された微粒子を基板上に補集すると実質的に同時に第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質を前記基板上に捕集して、前記第2のターゲット体から構成される物質中に前記微粒子を分散して堆積することを特徴とする請求項1に記載の機能材料作製装置。
  3. 前記堆積手段は、前記分級済みの微粒子を基板に堆積した後に、第2のターゲット体にレザービームを当てることで生成された物質を前記基板上に捕集し、前記分級された微粒子、および第2のターゲット体から構成される物質を交互に堆積することを特徴とする請求項1に記載の機能材料作製装置。
  4. 前記微粒子分級手段は、微分型電気移動度分級手段を用いていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の機能材料作製装置。
  5. 前記微粒子分級手段は、前記微粒子を放射性同位体を用いて荷電する微粒子荷電手段と、荷電した微粒子を分級する微分型電気移動度分級手段とを具備することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の機能材料作製装置。
  6. 前記微粒子分級手段は、前記微粒子を真空紫外光源を用いて荷電する微粒子荷電手段と、荷電した微粒子を分級する微分型電気移動度分級手段とを具備することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の機能材料作製装置。
  7. 前記微粒子生成手段は、前記レーザービームをパルスレーザー光とし生成された微粒子をパルスレーザーにより形成されたアブレーションプルーム内で荷電することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の機能材料作製装置。
  8. 前記堆積手段は、分級された荷電状態の微粒子が堆積される際に行われる電子の授受を電流として測定することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の機能材料作製装置。
  9. 前記堆積手段は、前記第2のターゲット体を第3のターゲット体と交換するターゲット交換機構をさらに具備し、前記分級済みの微粒子および前記第2のターゲット体から構成される物質の堆積後に、前記第2のターゲット体を第3のターゲット体と交換し、第3のターゲット体である透明電極材にレーザービームを当てることで生成さ れた物質を前記分級済みの微粒子および前記第2のターゲット体から構成される物質上に堆積して透明電極を形成することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の機能材料作製装置。
  10. 前記堆積手段は、前記分級済みの微粒子および第2のターゲット体から構成される物質の堆積を前記基板に対して法線方向から行うことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の機能材料作製装置。
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