JP3676699B2 - 透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の連続製造方法、該組成物及び非晶性成形物 - Google Patents
透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の連続製造方法、該組成物及び非晶性成形物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物及びその連続製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート(以下、「PC」ともいう)とポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)とは、透明性を有し、基本性能に優れることから、エンジニアリングプラスチックスとして、成形材料や繊維、フィルム等の様々な用途に広く用いられている。このような2種の重合体が混ざり合った組成物であるPC/PET組成物は、PCの欠点である耐薬品性を補うことができることから、工業的に有用である。ところが、PCとPETの熱溶融条件が不十分であると、PC/PET組成物が不透明となり、外観や衝撃強度等の基本性能が充分でなくなり、有用性が低下するという問題があった。このようなPC/PET組成物について、透明にすることができる技術が種々提案されている。
【0003】
特開平5−171020号公報には、カーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合物にエステル交換触媒を配合して溶融混合すると透明な熱可塑性樹脂組成物が得られることに関し、実施例において熱可塑性樹脂の通常の成形温度の範囲内である310℃で二軸押出機を用いて溶融混合することが開示されている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート樹脂には製造時に添加されたエステル交換触媒が残存していることもあるが、この技術では、カーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とを溶融混合するときに更にエステル交換触媒を後添加(追添加)しなければならないことから、このような操作を行わなくても透明なPC/PET組成物を得ることができる製造方法を研究する余地があった。
【0004】
特開平9−183892号公報には、ポリカーボネート樹脂99〜1重量部及びポリエステル樹脂1〜99重量部に対して、エステル交換反応触媒やプロトン酸及び/又はその誘導体を含む樹脂組成物に関し、実施例においてポリカーボネート樹脂を60〜90重量部としてポリエステル樹脂よりも多く配合した樹脂組成物が開示されている。しかしながら、この技術でもエステル交換反応触媒やプロトン酸及び/又はその誘導体を後添加しなければならない。また、ポリエステル樹脂を多く配合した方が廉価となることから、透明性を高めた廉価なPC/PET組成物を研究する余地があった。
【0005】
特開平10−87973号公報には、PCとPETとをエステル交換触媒を配合せずに透明なPC/PET組成物を得ることに関し、実施例において熱可塑性樹脂の通常の溶融混合温度の範囲内である280℃で混合することが開示されている。しかしながら、この技術では、PCとPETとの反応性が低いため、反応時間が30〜60時間と長いことから、効率よく透明なPC/PET組成物を得ることができなかった。
【0006】
ところで、これらの技術では、得られるPC/PET組成物は、その分子量が安定して押出し成形等を行うことができる程度に高められることはなく、例えば、平板、波板等のシート押出しや瓶類の吹込み成形(ブロー成形)等に有用な材料とはならなかった。従って、押出し成形等の用途も含めて様々な用途で用いることができる有用なPC/PET組成物を研究する余地があった。特に、PETリッチの組成物では、安定な透明度合を有する組成物を得ることが困難な状況であった。また、このような樹脂組成物を押出成形してなる成形物の性能を高めるために靱性を強くして残留応力が発生しないように工夫する余地もあった。
【0007】
ところで、PET樹脂に関して、平成12年4月から「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」が施行されたため、PETボトル等の膨大な量の回収PETをリサイクルする技術が切望されている。また、回収PCを有効利用するために、回収PCもリサイクルすることができる技術が望まれている。従って、回収PETや回収PCを必須としてなる樹脂組成物をシートやパイプ等の形状に成形することができれば、PETやPCの粉砕物を効率よくリサイクルできることから、このような技術について研究する余地があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、透明性が高くて耐薬品性等の基本性能が優れ、しかも、押出し成形等の用途も含めて様々な用途で用いることができるPC/PET組成物をエステル交換触媒を追添しなくても効率よく廉価に提供することを目的とする。また、安定して押出成形を行うことができるポリエステル系押出成形用樹脂組成物、及び、該ポリエステル系押出成形用樹脂組成物を押出成形してなり、靱性が強く残留応力が発生しない非晶性成形物を提案することを目的とする。更に、回収PETや回収PCを有効に再利用することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々のPC/PET組成物を検討するうち、通常の成形温度や溶融混合温度を超えた温度、すなわち熱可塑性樹脂を溶融混練する際に通常では実施しない温度領域である320℃以上の特定範囲内で10分以内の短時間PCとPETとを熱溶融反応させることにより、tanδの主ピーク温度がPET固有の温度以上とPC固有の温度以下の中間に単一で存在し、且つPET固有の融点が存在しないPC/PET組成物が得られることを見いだした。このようなPC/PET組成物では、PCとPETとが反応して共重合物が形成されているか、少なくともPCとPETとが完全相容している、すなわちPCとPETとの複合化物が形成されていると考えられる。通常ではPETが300℃以上の温度で分解することになるが、熱溶融反応時に溶融混練物に対して圧力がかかっているために分解が抑制され、上記の条件であれば生成した組成物の物性を阻害することはない。また、得られたPC/PET組成物は、PCよりも耐薬品性に優れるうえに、安定して押出し成形等を行うことができるようにその分子量が高められた材料とすることができることから、上記課題をみごとに解決することができることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0010】
本発明者等はまた、種々のポリエステル系樹脂組成物を検討するうち、PETとPCの特定量を必須としてなる共重合物を含むことにより、基本性能の優れた成形物を形成しうることにまず着目し、そして該共重合物のメルト・フロー・レート(MFR)を低く特定の範囲に設定することにより、すなわちMFRにより特定される共重合物の粘度を特定の高い粘度範囲で設定することにより、押出成形に適した樹脂組成物、すなわち安定して押出成形を行うことができる樹脂組成物とすることができることを見いだした。また、PETとPCを必須としてなる共重合物のメルト・フロー・レートを低く特定の範囲に設定するには、多官能性化合物を使用して高分子量化することが好適であることや、PETやPCとしてリサイクル品を用いることにより、回収PETや回収PCの有効利用を促進することができることも見いだした。更に、このような樹脂組成物を押出成形すると、非晶性成形物が得られることに着目した。成形物が非晶性であれば、靱性が強く成形物に残留応力が発生しないことから、成形物を各種の用途に好適に用いることが可能となる。このような非晶性成形物は、上記の樹脂組成物を押出成形した後の冷却条件を徐冷条件としても得られるが、必要に応じて強制冷却を併用しても得ることができることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち本発明は、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートの合計が80重量%以上でポリカーボネート5〜80重量%とポリエチレンテレフタレート20〜95重量%とを含むポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法であって、原料を320℃以下の温度で溶融混練する第一工程及び溶融混練物を320〜380℃の温度で5秒〜10分間熱処理する第二工程を含み、上記ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物は、全光線透過率が80%以上である透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の連続製造方法である。
以下に、本発明を詳述する。
【0012】
本発明の透明なPC/PET組成物の連続製造方法は、PCとPETとの溶融混練物を得る第一工程と、上記溶融混練物を熱処理する第二工程とをこの順に含むことになる。すなわち上記第一工程と上記第二工程とを必須とする。
上記PCとしては特に限定されず、例えば、二価フェノールとカーボネート先駆体とを反応させることにより製造される芳香族ホモ・ポリカーボネートやコ・ポリカーボネート等が挙げられる。また、分岐ポリカーボネートを用いることもでき、例えば、多官能性芳香族化合物を二価フェノール及びカーボネート先駆体と反応させることにより得られる分岐した熱可塑性分岐ポリカーボネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記PCの製造方法としては、公知の方法を適用することができ、例えば、二価フェノールと炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換反応させる方法や、溶液中で二価フェノールとホスゲンとを反応させる方法(特に界面法)等が挙げられる。具体的には、例えば、特開平2−175723号公報、特開平2−124934号公報や、米国特許第4,001,184号明細書、第4,238,569号明細書、第4,238,597号明細書、第4,474,999号明細書に記載されている。
【0014】
上記二価フェノールとしては1種又は2種以上を用いることができ、特に限定されず、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物を用いることが好適であり、下記一般式(1);
【0015】
【化1】
【0016】
〔式中、Rは、同一若しくは異なって、水素原子、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、フッ素、ヨウ素)、又は、炭素数1〜8のアルキル基を表す。n及びn′は、0〜4の整数を表す。Xは、単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、又は、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−O−結合を表す。〕で表される化合物を用いることが好ましい。
【0017】
上記二価フェノールの具体的な化学名としては、例えば、ビス(4ヒドロキシフェニル)メタン、1,1ビス(4ヒドロキシフェニル)エタン、1,2ビス(4ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2ビス(4ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1ビス(4ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)メタン、1,1ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)エタン、1,2ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)エタン、2,2ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3,5ジクロロ−4ヒドロキシフェニル)メタン、2,2ビス(3,5ジクロロ−4ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5ジブロモ−4ヒドロキシフェニル)メタン、2,2ビス(3,5ジブロモ−4ヒドロキシフェニル)プロパン等のジヒドロキシアリールアルカン類;ビス(4ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5ジブロモ−4ヒドロキシフェニル)スルホン等のジヒドロキシアリールスルホン類;ビス(4ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5ジブロモ−4ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類;ビス(4ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5ジメチル−4ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5ジブロモ−4ヒドロキシフェニル)スルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド類;4,4′ジヒドロキシベンゾフェノン等のジヒドロキシアリールケトン類;ビス(4ヒドロキシフェニル)スルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。
【0018】
これらの中でも、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いることが好ましい。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、上記化合物以外にも、下記一般式(2);
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、RXは、同一若しくは異なって、炭化数1〜10の炭化水素基若しくはそのハロゲン化合物、又は、ハロゲン原子を表す。mは、0〜4の整数を表す。)で表される化合物として、例えば、レゾルシン、4−メチルレゾルシン、4−エチルレゾルシン、4−プロピルレゾルシン、4−ブチルレゾルシン、4−t−ブチルレゾルシン、3−フェニルレゾルシン、4−クミルレゾルシン、2,4,5,6−テトラフルオロレゾルシン、2,3,4,6−テトラブロムレゾルシン等の置換レゾルシン;カテコール;ハイドロキノン、及び、3−メチルハイドロキノン、3−エチルハイドロキノン、3−プロピルハイドロキノン、3−ブチルハイドロキノン、3−t−ブチルハイドロキノン、3−フェニルハイドロキノン、3−クミルハイドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロハイドロキノン、2,3,5,6−テトラブロムハイドロキノン等の置換ハイドロキノン等を用いることもできる。
【0021】
上記炭酸ジエステルとしても1種又は2種以上を用いることができ、特に限定されず、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等を用いることができる。これらの中でも、ジフェニルカーボネートを用いることが好ましい。
【0022】
上記ポリカーボネートを製造する際に、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと共に、必要に応じて、1分子中に3個以上の官能基を有する多官能性化合物の1種又は2種以上を使用することもでき、例えば、フェノール性水酸基を3個有する化合物等が好適に用いられる。このような化合物の好ましい具体例としては、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2′,2″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、α−メチル−α,α′,α′−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジエチルベンゼン、α,α′,α″トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン−2、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,2−ビス−(4,4−(4,4′−ジヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル)−プロパン等が挙げられる。これらの中でも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α′,α″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等を用いることがより好ましい。
【0023】
本発明において用いるPETとしては特に限定されず、例えば、テレフタル酸やテレフタル酸ジメチルと、エチレングリコールやエチレンオキサイドとを反応させて製造される、一般的にPET、強化PET、ポリエステル等と呼ばれている材料や、酸やグリコール等で変性された材料の1種又は2種以上を用いることができる。このようなPETの中でも、本発明の作用効果を充分に発揮できることから、酸成分としてテレフタル酸を80〜100重量%含有するPETを用いることが好ましい。より好ましくは、酸成分としてテレフタル酸を90〜100重量%含有するPETを用いることである。
【0024】
本発明では、上記PC及び/又は上記PETは、リサイクル品であることが好ましい。これにより、回収PCや回収PETのリサイクルの点から有効な方法となり、また、製造コストを抑制することが可能となる。すなわち環境対策及び経済性の観点から有用な方法となる。PCのリサイクル品としては、例えば、PCシートのトリミングロスの粉砕物等が挙げられる。PETのリサイクル品としては、例えば、PETボトル、PETフィルムの端部、各種PETパーツ、成形加工時に生じるランナー等の工程廃材等を粉砕した回収PETフレーク等が挙げられる。また、リサイクル品の使用割合としては特に限定されるものではないが、例えば、PC又はPETをそれぞれ100重量%とすると、20重量%以上とすることが好ましい。より好ましくは、30重量%以上であり、更に好ましくは、40重量%以上であり、特に好ましくは、50重量%以上とすることである。
【0025】
本発明における第一工程では、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートの合計が80重量%以上でPC5〜80重量%とPET20〜95重量%とを含む原料を320℃以下の温度で溶融混練して溶融混練物を得ることになる。PCとPETとはドライブレンド等の方法により混合された後溶融混練されることになるが、PCとPETとの重量割合が上記の比率を外れると、PCとPETとを複合化することに由来する作用効果が発現しないこととなる。また、PCが80重量%を超えてPETが20重量%未満であると、アニールしたときPETが結晶化してPC/PET組成物の透明性が充分ではなくなることとなる。好ましくは、PCが10〜45重量%、PETが55〜90重量%である。なお、上記の比率は、PCとPETとを含む原料を100重量%としたときの値である。
【0026】
上記第一工程において、溶融混練の温度が320℃を超えると、すなわちPCとPETとが溶融混練して溶融混練物となる前に320℃を超える温度となると、第二工程を経た後に得られるポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の透明性や基本性能が充分ではなくなることとなる。好ましくは、第一工程における溶融混練の温度を260〜310℃とすることである。また、第一工程における混練時間としては、例えば、0.1〜0.5分とすることが好ましい。
【0027】
上記PCとPETとを含む原料には、PCとPET以外に20重量%迄の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等を含有させてもよい。
【0028】
上記PCとPETとを含む原料には、PCとPET以外に、本発明の効果を発揮することになる限り、種々の添加物を1種又は2種以上添加してもよい。添加物としては特に限定されず、例えば、安定剤、難燃剤、滑り改質剤等の他、酸化防止剤、耐熱剤、着色剤、離型剤、繊維状強化剤等の強化剤等が挙げられる。
【0029】
上記安定剤としては、例えば、Irgafos168(商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、Chelex L(商品名、坂井化学工業社製)、3P2S(商品名、イハラケミカル工業社製)、Mark 329K(商品名、旭電化工業社製)、Mark P(商品名、旭電化工業社製)、Weston618(商品名、三光化学社製)等の燐系安定剤;BHT(商品名、武田薬品工業社製)、Ionox 100(商品名、シェルケミカル社製)、Age Rite Superlite(商品名、Vander bilt社製)、Santonox R(商品名、モンサント社製)、Antioxidant ZKF(商品名、バイエル社製)、Irganox 1076、Irganox 1010(いずれも商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、Hoechst VPOSP1(商品名、へキスト社製)等のヒンダードフェノール系安定剤;Cyasorb UV−5411(商品名、A.C.C社製)、Cyasorb UV−531(商品名、A.C.C社製)、Tinuvin 326、Tinuvin 320、Tinuvin 120(いずれも商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、Uvinul D49(商品名、GAF社製)等のトリアゾール系安定剤;その他エポキシ系、チオール系、金属塩系等が挙げられる。
【0030】
上記難燃剤としては、例えば、TPP、レゾルシノールポリホスフェート、ビスフェノールーAポリホスフェート(商品名、大八化学工業社製)等の燐酸エステル系難燃剤;ブロム化BPA、ブロム化BPAボリカーボネート又は同オリゴマー等のハロゲン系難燃剤;無機難燃剤等が挙げられる。また、難燃助剤として、例えば、3酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0031】
上記滑り改質剤としては、例えば、燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等の無機化合物;架橋ポリエステル、架橋ポリアミド、架橋ポリメチルメタクリレート等を粒化した有機粒状化合物等が挙げられる。
【0032】
本発明における第二工程では、上記溶融混練物を320〜380℃の温度で5秒〜10分間熱処理することになる。これにより、溶融混練物中のPCとPETとが高温で熱溶融反応によりアロイ化されて共重合物が形成されるか、少なくともPCとPETとが完全相溶して、透明なPC/PET組成物が生成することになる。熱処理の温度が320℃未満であると、PETがアニール後に結晶化してPC/PET組成物の透明性が充分ではなくなり、380℃を超えると、PC/PET組成物の基本性能が低下することとなる。好ましくは、340〜380℃であり、より好ましくは、340〜370℃である。また、熱処理の時間が5秒未満であると、本発明の効果を得ることはできなくなり、10分を超えると、PC/PET組成物の基本性能が低下することとなる。好ましくは15秒〜7分、より好ましくは、15秒〜5分であり、より好ましくは、30秒〜3分である。本発明における第二工程では、このように熱処理の温度と時間とを適宜設定することになるが、熱処理の温度を340℃以上とする場合、この温度条件であれば熱処理時間を2分以内に短縮することができ、商業生産に適することになる。
【0033】
上記第二工程では、溶融混練物を熱処理する際に、溶融混練物中に多官能性化合物が存在する状態で行ってもよい。これにより、PC/PET組成物の分子量(Mn)を更に高くすることができることに起因して、基本性能が向上すると共に、より安定して押出し成形等を行うことができるPC/PET組成物を製造することが可能となる。また、本発明では、エステル交換触媒を使用しなくても透明性が高いPC/PET組成物を製造することができることから、エステル交換触媒を後添加しない形態が工業的な生産工程を考慮すると好ましい形態である。
【0034】
本発明で用いることができる多官能性化合物としては、例えば、ジエポキシ化合物、ビス−オキサゾリン化合物、ポリイソシアネート化合物、芳香族テトラカルボン酸の二無水物等の多価カルボン酸の二無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、多価カルボン酸の二無水物が好ましい。最も好ましくは、芳香族カルボン酸の二無水物であるピロメリット酸二無水物である。その他に有用な二無水物としては、例えば、3,3′,4,4′−ジフェニルテトラカルボン酸、(ペリレン−3,4,9,10)テトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラカルボキシヒドロフラン等が挙げられる。また、多官能性化合物の使用量としては、例えば、PCとPETとの合計重量100重量部あたり、0.05〜2重量部とすることが好ましい。
【0035】
本発明の工程では、溶融混練に用いられる装置としては特に限定されず、例えば、ニーダー、一軸又は二軸押出機、撹拌機能を有する縦型又は横型反応層、ミキサー、ロール等の溶融混練能を有する機器であればいずれも使用することができ、熱可塑性樹脂の成形に使用される押出機内で達成されることが好ましい。押出機としては一軸又は二軸押出機を使用することが好適であり、特に、反応性を高めるには二軸押出機の方が好ましい。また、少なくとも第二工程が二軸押出機で混練しながら熱処理する工程であることが好ましい。二軸押出機としては特に限定されず、二軸スクリュー押出機が好ましく、例えば、ベント付き同方向かみ合い二軸スクリュー押出機、ベント付き同方向非かみ合い二軸スクリュー押出機、ベント付き異方向かみ合い二軸スクリュー押出機、ベント付き異方向非かみ合い二軸スクリュー押出機、無ベント式同方向かみ合い二軸スクリュー押出機、無ベント式同方向非かみ合い二軸スクリュー押出機、無ベント式異方向かみ合い二軸スクリュー押出機、無ベント式異方向非かみ合い二軸スクリュー押出機等が挙げられる。
【0036】
本発明のPC/PET組成物の製造方法は、PC/PET組成物の連続製造方法である。具体的には、連続溶融混練方法によるPC/PET組成物の製造方法である。更に上記連続溶融混練工程において好ましくは、上記の特定条件による第二工程の熱処理工程を含む連続溶融混練方法を採用することが好ましい。本発明の好ましい形態で、上記第二工程では、PCとPET組成物の反応による複合化、共重合が起こっており、特にPETリッチなPC/PET組成において良好な状態で反応がおき、十分にIVが高いPC/PET組成物を得ることができる。
【0037】
本発明では、上述したように第一工程及び第二工程が熱可塑性樹脂の成形に使用される押出機内で連続して達成されることが好ましいが、この場合では、例えば、押出機のシリンダーにおいて320℃以下の溶融混練ゾーンを設けて第一工程を行い、次いで320〜380℃の反応ゾーンを設け、該反応ゾーンに溶融混練物が5秒〜10分間滞留するように設定して第二工程を行うことができる。また、反応ゾーンの後のシリンダー温度を260〜310℃とし、ダイ温度を260〜310℃と設定すると、本発明の作用効果を充分に発揮するPC/PET組成物を工業的に効率よく製造することが可能となる。このような形態は、本発明の好ましい実施形態の一つである。具体的には第一工程と第二工程が連続して含まれる押出機内でPC/PET組成物を製造することが好ましい。なお、押出機のシリンダーにおける溶融混練ゾーン及び反応ゾーンではベントを設けることにより水分を除去したり、一部のPCが分解することにより発生する二酸化炭素ガス等を除去したりすることが好ましい。得られた溶融反応物をシート用ダイに供給して、押出しシートを連続して得ることもできる。
【0038】
本発明におけるPC/PET組成物は、全光線透過率が80%以上である。すなわち本発明の連続製造方法では、第一工程や第二工程の製造条件を上述したように設定し、アニール前の全光線透過率が80%以上であるPC/PET組成物を得ることになる。80%未満であると、透明性や耐薬品性等の基本性能が低下することになる。より好ましくは、85%以上である。なお、アニールとは、熱又は機械的な応力によって生じた成形品の内部ひずみを除去するために、適当な温度に保持した後に徐冷する処理のことであり、本明細書中では、成形品の使用可能温度を判定するための評価方法を意味する。従って、アニール前とは、例えば、ペレット形状にしたPC/PET組成物を射出成形又はシート成形して成形品を得る場合には、該成形品をアニール(アニーリング)する前を意味する。本発明では、PC/PET組成物からテストピースを成形し、日本電色社製ヘーズ・メーター(商品名「NDH−200」)等を用いて全光線透過率を測定することができる。なお、本明細書中において、アニール(アニーリング)することは共重合あるいは完全相溶化状態を特定するための要件であり、PC/PET組成物をアニール(アニーリング)して用いることが必須の要件であることを意味するものではない。
【0039】
本発明では、PC及びPETから形成される組成物の極限粘度(IV)が0.5dl/g以上であることが好ましい。このようなPC/PET組成物は、耐薬品性等の基本性能がより向上していると共に、安定した押出し成形を行うことが可能であることから、押出し成形に用いる成形材料として有用である。0.5dl/g未満であると、押出し成形時の溶融粘度が低すぎて、安定した押出し成形が困難となる。より好ましくは、IVが0.6dl/g以上であり、IVの上限としては、2.0dl/g以下とすることが好ましい。本発明の連続製造方法では、PC及びPETの複合化物を高分子量化することが可能であり、このようにIVが高く特定された複合化物を含むPC/PET組成物を得ることができる。この場合、IVが0.5dl/g以上であるPETを製造原料として用いることが好ましい。より好ましくは、IVが0.6dl/g以上であるPETを用いることであり、更に好ましくは0.65dl/g以上であり、特に好ましくは0.7dl/g以上であり、もっとも好ましくは0.72dl/g以上であるPETを用いることである。なお、IVとは、溶液の比粘度と溶媒濃度との比を零濃度に外挿したときの値であり、本明細書中では、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の溶媒を使用し、温度25℃で測定した値である。
【0040】
本発明はまた、PC及びPETの合計が80重量%以上でPC5〜80重量%とPET20〜95重量%とを含む組成物から形成されてなるPC/PET組成物であって、上記PC/PET組成物は、全光線透過率が80%以上であり、140℃で1時間アニール後の全光線透過率が75%以上であり、且つポリPC及びPETから形成される組成物のtanδの主ピーク温度がPET固有の温度以上とPC固有の温度以下の中間に単一で存在する透明なPC/PET組成物でもある。このようなPC/PET組成物は、廉価な工業材料として、透明性が高くて耐薬品性等の基本性能が優れ、押出し成形等の用途も含めて様々な用途で用いることが可能であり、上述した本発明の連続製造方法により好適に製造することができる有用な材料である。
【0041】
上記PC/PET組成物を形成するPETは、テレフタル酸を80〜100重量%含有する酸成分を必須として形成されてなることが好ましい。また、PCとPETとの重量割合やこれらの好ましい形態、PC/PET組成物における全光線透過率としては、上述したのと同様である。更に、製造原料として用いるPETにおけるIVの好ましい形態や、PC及びPETから形成される組成物におけるIVの好ましい形態も上述したのと同様である。
【0042】
上記PC/PET組成物では、140℃で1時間アニール後の全光線透過率が75%以上である。75%未満であると、透明性が高くて様々な用途で用いることができる材料ではなくなることとなる。好ましくは、80%以上であり、より好ましくは、85%以上である。また、PC/PET組成物を構成しているPC及びPETの組成物のtanδの主ピーク温度は、PC固有のtanδの主ピーク温度以上とPET固有のtanδの主ピーク温度以下の間に単一で存在することになる。tanδを測定する方法としては、例えば、レオメトリック社製固体粘弾性測定装置(商品名「RSA−II型」)を用い、三点曲げの測定方法にて、昇温速度2℃/分で測定する方法等が好適である。
【0043】
上記tanδの主ピーク温度について、図1〜3を用いて説明する。図1は、本発明におけるPC及びPETから形成される組成物のtanδの主ピーク温度を測定した一例であり、PET固有の温度である85℃以上とPC固有の温度である155℃以下の中間である125℃付近に単一で主ピークが存在している。このように、tanδの主ピーク温度が単一で存在するとは、実質的にtanδの主ピークを示すと認められる温度が一つであることを意味している。このように、本発明のPC/PET組成物では、PC及びPETのそれぞれに由来するtanδの主ピーク温度が存在せず、それらの中間に新たに形成された主ピーク温度が単一で存在することになる。従って、このようなPC及びPETの組成物では、PCとPETとが反応して共重合物が形成されているか、少なくともPCとPETとが完全相容していると考えられる。一方、図2は、本発明のPC/PET組成物を構成しているPC及びPETの組成物ではない、PC及びPETの混合物のtanδを測定した一例である。この場合では、PETのピークが85℃付近に存在し、PCのピークが155℃付近に存在している。すなわちPC及びPETのそれぞれに由来するtanδの主ピーク温度が存在している。また、図3は、PCのtanδを測定した一例であり、PCのピークが155℃付近に存在している。
【0044】
本発明は更に、PC及びPETの合計が80重量%以上でPC10〜45重量%とPET55〜90重量%とを含む組成物から形成されてなるPC/PET組成物であって、上記PC/PET組成物は、全光線透過率が80%以上であり、且つポリPC及びPETから形成される組成物の極限粘度が0.5dl/g以上である透明なPC/PET組成物でもある。このようなPC/PET組成物は、より廉価な工業材料として、透明性が高くて耐薬品性等の基本性能が優れ、押出し成形等の用途も含めて様々な用途で用いることが可能であり、特に、安定した押出し成形を行うことが可能であることから、押出し成形に用いる成形材料として好適であり、上述した本発明の連続製造方法により好適に製造することができる有用な材料である。
【0045】
上記PC/PET組成物を形成するPCとPETの好ましい形態、PC/PET組成物における全光線透過率としては、上述したのと同様である。また、製造原料として用いるPETにおけるIVの好ましい形態や、PC及びPETから形成される組成物におけるIVの好ましい形態も上述したのと同様である。
【0046】
本発明のPC/PET組成物は、ペレット等の形状で成形材料や繊維、フィルム等の材料として、様々な用途に広く用いることができる材料であるが、押出し成形に用いる成形材料として用いる形態が本発明の好ましい実施形態の一つである。本発明のPC/PET組成物が適用される押出し成形としては、例えば、平板、波板等のシート押出しや瓶類の吹込み成形(ブロー成形)等が挙げられる。このような好ましい実施形態は、PC及びPETの極限粘度が0.5dl/g以上であるPC/PET組成物に対して特に好適である。また、本発明のPC/PET組成物は、極限粘度が0.5dl/g以上となり、その結果組成物を用いて成形するときに組成物の溶融粘度が高くなり、そのために安定して押し出し成形ができるからである。
本発明のPC/PET組成物は、本発明に記載したPC又はPETと任意の割合で混合して使用できる。また、PCとPETとの相溶化剤としても使用できる。
【0047】
本発明はそして、ポリエチレンテレフタレート1〜99重量%とポリカーボネート99〜1重量%とを必須としてなる共重合物を含むポリエステル系押出成形用樹脂組成物であって、上記共重合物の265℃におけるメルト・フロー・レートは、0.1〜50g/10minであるポリエステル系押出成形用樹脂組成物でもある。
【0048】
本発明のポリエステル系押出成形用樹脂組成物におけるポリエチレンテレフタレート(PET)とポリカーボネート(PC)とを必須としてなる共重合物は、PETとPCとが反応して形成されてなる共重合物であるが、少なくともPETとPCとが完全相溶している状態すなわちPETとPCとから形成されてなる複合化物であってもよい。本発明では、PET1〜99重量%とPC99〜1重量%とから形成されてなる共重合物を含むことになる。このような共重合物は、本発明の作用効果を発揮することになる限り、PETとPC以外の構成要素が含まれていてもよい。PETとPCとの重量割合の好ましい範囲としては、例えば、PET20〜95重量%、PC80〜5重量%とすることが好ましい。より好ましくは、PET55〜90重量%、PC45〜10重量%である。PETをPCよりも多く設定すると、共重合物のメルト・フロー・レート(MFR)を低くしやすくなるが、PETが多すぎると、ポリエステル系押出成形用樹脂組成物から非晶性成形物を得ることが困難となるおそれがある。
なお、上記重量割合は、PCとPETとの合計重量を100重量%としたときの値である。
【0049】
本発明におけるPC及びPETや、これら以外の構成要素としては、上述したのと同様のもの等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。本発明ではまた、上記PET及び/又は上記PCは、リサイクル品であることが好ましい。PC及びPETのリサイクル品としては、上述したのと同様のもの等が挙げられる。
【0050】
本発明において、PETとPCとを必須としてなる共重合物を製造する方法としては、例えば、(1)PCとPETとの溶融混練物を得る第一工程と、上記溶融混練物を熱処理する第二工程とをこの順に含む方法や、(2)特開平5−171020号公報、特開平9−183892号公報、特開平10−87973号公報に記載されているような方法、すなわちPETとPCとを溶融下にてエステル交換反応を行う方法等が挙げられる。
【0051】
本発明におけるPETとPCとを必須としてなる共重合物の製造方法においては、溶融状態で多官能性化合物により高分子量化することが好ましい。これにより、共重合物のMFRの値を低く設定しやすくなる。
本発明で用いることができる多官能性化合物としては、例えば、ジエポキシ化合物等のエポキシ化合物、ビス−オキサゾリン化合物、ポリイソシアネート化合物、芳香族テトラカルボン酸の二無水物等の多価の無水カルボン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、多価の無水カルボン酸、ポリイソシアネート、エポキシ化合物が好ましい。すなわち、本発明におけるPETとPCとを必須としてなる共重合物は、溶融状態で多価の無水カルボン酸、ポリイソシアネート及びエポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物により高分子量化したものであることが好ましい。より好ましくは、多価カルボン酸の二無水物であり、最も好ましくは、芳香族カルボン酸の二無水物であるピロメリット酸二無水物(以下、無水ピロメリット酸ともいう)である。この場合、本発明におけるPETとPCとを必須としてなる共重合物は、溶融状態で無水ピロメリット酸により高分子量化されたものとなる。このような共重合物を用いることが本発明の最も好ましい形態の1つである。
【0052】
その他に有用な二無水物としては、例えば、3,3′,4,4′−ジフェニルテトラカルボン酸、(ペリレン−3,4,9,10)テトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラカルボキシヒドロフラン等が挙げられる。多官能性化合物の使用量としては、例えば、PCとPETとの合計重量100重量部あたり、0.05〜2重量部とすることが好ましい。
【0053】
上記の製造方法において、溶融状態で無水ピロメリット酸により高分子量化する場合、無水ピロメリット酸の反応温度としては、例えば、260〜330℃が適用されることになる。好ましくは、290〜310℃である。このような無水ピロメリット酸の溶融反応は、PETとPCとを必須とした共重合物(PET/PC共重合物)のペレットと無水ピロメリット酸とのドライブレンド物を所定の温度に再溶融させて反応させる方法により達成することができる。また、無水ピロメリット酸を予めドライブレンドせず、溶融したPET/PC共重合物に連続して供給して反応させる方法や、PETとPCとを必須とした原料を溶融反応した後に、溶融した共重合物に連続して無水ピロメリット酸を供給して反応させる方法により達成することもできる。例えば、上記(1)の製造方法では、第二工程の熱処理工程に引き続いて、溶融混練物中に無水ピロメリット酸を連続して供給することにより達成することができる。
【0054】
本発明におけるPETとPCを必須としてなる共重合物の265℃におけるメルト・フロー・レート(MFR)は、0.1〜50g/10minである。0.1g/10min未満であると、MFRにより特定される共重合物の粘度が押出成形を行うには高すぎることから、ポリエステル系押出成形用樹脂組成物を押出成形する際に、製造効率が低下することになり、50g/10minを超えると、該粘度が低くなって、ロール間にバンク(樹脂溜まり)が蓄積したり、ドローダウンが発生したりして安定して押出成形を行うことができないこととなる。好ましくは、0.2〜35g/10minであり、より好ましくは、0.2〜20g/10minである。なお、本発明における共重合物のMFRを上記の範囲内とするには、例えば、上述したように共重合物を高分子化することが好適である。
【0055】
本発明のポリエステル系押出成形用樹脂組成物が適用される押出成形の方法としては特に限定されず、例えば、平板、波板等のシート形状に押出成形する方法、パイプ形状に賦型して押出成形する方法等が挙げられる。このような方法により、本発明のポリエステル系押出成形用樹脂組成物を用いて押出成形すると、非晶性成形物を製造することができる。このように製造されてなる非晶性成形物、すなわち上記ポリエステル系押出成形用樹脂組成物を押出成形してなる非晶性成形物もまた本発明の1つであり、非晶性であることから、靱性が強く残留応力が発生しないため、成形材料や繊維、フィルム等の様々な用途に好適に用いることができる。このような非晶性成形物を得る場合、上記ポリエステル系押出成形用樹脂組成物を押出成形した後の冷却条件を徐冷条件としても得られるが、必要に応じて強制冷却を併用しても得ることができる。
【0056】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
実施例においてPC/PET組成物の製造に用いた装置や、PC/PET組成物の成形条件、評価方法等を以下に示す。
(二軸押出機の反応条件)
PC/PET組成物の製造に用いた二軸押出機の各部の温度を表1に示す。
二軸押出機:プラスチック工学研究所社製、PLABOR BT−30−S2/C−30L
なお、表1中、「H」は、ヘッド部を意味する。
【0058】
【表1】
【0059】
(テストピース成形条件)
射出成形機:日精樹脂社製、PS40E5ANE(商品名)
温度条件:シリンダー;250℃、金型;75℃
金型:三段プレート(1mm、2mm、3mm)
【0060】
(シート押出成形条件)
ベント押出機及びシート成形機:IKG社製、PMS 50−32
温度条件:シリンダー、アダプター、ギアポンプ 250℃
Tダイス 240℃
ロール温度 80、100、140℃
ラインスピード:0.7m/min
押出量:40kg/hr
成形板厚:3mm
【0061】
(tanδ測定条件)
固体粘弾性測定装置:レオメトリック社製、RSA−II型(商品名)
測定方法:三点曲げ
昇温速度:2℃/min
【0062】
(全光線透過率)
ヘーズ・メーター:日本電色社製、NDH−200(商品名)
(融点)
DSC装置:MAC SCIENCE社製、DSC3100(商品名)
昇温速度:5℃/min
【0063】
(耐薬品性)
作製した射出成形品の耐薬品性を以下の方法により評価した。
125×12.5×4.0mmの試験片を124mm間隔の治具に挟んで応力を負荷し、少しわん曲させた状態で四塩化炭素を試験片の表面に1cc滴下し、破壊状態を評価する。
【0064】
(アニール条件)
乾燥機:タバイ社製、HIGH−TEMP OVEN PHH−200(商品名)
条件:140℃、30分間
【0065】
(メルト・フロー・レート(MFR)の測定方法)
オリフィス:1mmΦ×10mml
荷重:5kg
測定温度:265℃
なお、測定機器としては、テクノセブン社製メルトインデクサ(商品名)を用いることができる。
【0066】
実施例1
PC(住友ダウ社製、商品名「カリバー302−4」)70重量%と、PET(よのペットボトルリサイクル社製、商品名「クリアフレーク」、極限粘度:0.7dl/g)30重量%とをドライブレンドし、この混合物を5kg/hで二軸押出し機に供給し、C3〜C6を340℃に設定した反応ゾーンに5分間滞留させた後、ペレット化した。得られた反応物のtanδのピークは単一で125℃であった。また、得られた反応物の極限粘度は0.66dl/gであった。ペレットの射出成形品のアニール前後の全光線透過率はそれぞれ85%と83%と透明であり、四塩化炭素を接触させてもPCのように破断せず、亀裂が発生する程度であった。また、該組成物をシート押し出しすることにより、外観が良好で透明な成形品を得た。
【0067】
実施例2
PC70重量%と、PET30重量%とをドライブレンドし、この混合物を25kg/hで二軸押出し機に供給し、C3〜C6を360℃に設定した反応ゾーンに1分間滞留させた後、ペレット化した。得られた反応物のtanδのピークは単一で124℃であった。また、得られた反応物の極限粘度は0.64dl/gであった。ペレットの射出成形品のアニール前後の全光線透過率はそれぞれ89%と88%と透明であり、四塩化炭素を接触させてもPCのように破断せず、亀裂が発生する程度であった。
【0068】
実施例3
PC50重量%と、PET50重量%とをドライブレンドし、この混合物を10kg/hで二軸押出し機に供給し、C3〜C6を340℃に設定した反応ゾーンに2.5分間滞留させた後、ペレット化した。得られた反応物のtanδのピークは単一で109℃であった。また、得られた反応物の極限粘度は0.65dl/gであった。ペレットの射出成形品のアニール前後の全光線透過率はそれぞれ89%と88%と透明であり、四塩化炭素を接触させてもPCのように破断せず、亀裂が発生する程度であった。
【0069】
実施例4
PC30重量%と、PET70重量%とをドライブレンドし、この混合物を10kg/hで二軸押出し機に供給し、C3〜C6を360℃に設定した反応ゾーンに2.5分間滞留させた後、ペレット化した。得られた反応物のtanδのピークは単一で97℃であった。また、得られた反応物の極限粘度は0.70dl/gであった。ペレットの射出成形品のアニール前後の全光線透過率はそれぞれ85%と78%と透明であり、四塩化炭素を接触させてもPCのように破断せず、亀裂が発生する程度であった。
【0070】
実施例5
PC20重量%と、PET80重量%とをドライブレンドし、この混合物を10kg/hで二軸押出し機に供給し、C3〜C6を360℃に設定した反応ゾーンに2.5分間滞留させた後、ペレット化した。得られた反応物のtanδのピークは単一で92℃であった。また、得られた反応物の極限粘度は0.74dl/gであった。ペレットの射出成形品の全光線透過率は82%と透明であり、四塩化炭素を接触させてもPCのように破断せず、亀裂が発生する程度であった。
【0071】
比較例1
PC30重量%と、PET70重量%とをドライブレンドし、この混合物を2.5kg/hで二軸押出し機に供給し、C3〜C6を280℃に設定した反応ゾーンに10分間滞留させた後、ペレット化した。得られた反応物のtanδのピークは単一で82℃と156℃とにあり、PETとPC固有のピークがそのまま現れ、両者はほとんど反応しなかった。ペレットの射出成形品のアニール後の全光線透過率は3%であり、系中のPETが結晶化して不透明となった。
【0072】
比較例2
PC90重量%と、PET10重量%とをドライブレンドし、この混合物を5kg/hで二軸押出し機に供給し、C3〜C6を340℃に設定した反応ゾーンに5分間滞留させた後、ペレット化した。得られた反応物のtanδのピークは単一で82℃と154℃とにあり、PETとPC固有のピークがそのまま現れ、両者はほとんど反応しなかった。ペレットの射出成形品のアニール後の全光線透過率は15%であり、系中のPETが結晶化して不透明となった。
【0073】
上記実施、比較の物性値を表2に示した。なお、耐薬品性についての指標は、耐薬品性試験結果において、破断せず、亀裂が発生する程度が○、破断せず、亀裂も発生しないが◎、亀裂が発生し破断したが×とした。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例6
実施例3で得られた共重合物(PC/PET=50/50)60重量%とPC(住友ダウ社製、商品名「カリバー302−4」)40重量%とをドライブレンドし、上記の押出成形条件でシート押出しした。得られたシートの外観は良好で、アニール前後の全光線透過率はそれぞれ84.9%、83.9%と透明な成形品であった。
【0076】
実施例7
PC(住友ダウ社製、商品名「カリバー302−4」)63重量%とPET(よのペットボトルリサイクル社製、商品名「クリアフレーク」)27重量%に、実施例3で得られた共重合物(PC/PET=50/50)を相溶化剤として10重量%ドライブレンドし、上記の押出成形条件でシート押出しした。得られたシートの外観は良好で、アニール前の全光線透過率は80.4%と透明な成形品が得られた。
【0077】
実施例8
PC(住友ダウ社製、商品名「カリバー302−4」)20重量%と、PET(よのペットボトルリサイクル社製、商品名「クリアフレーク」、極限粘度:0.7dl/g)80重量%とをドライブレンドし、この混合物を25kg/hで二軸押出機に供給し、C3〜C6を360℃に設定した反応ゾーンに1分間滞留させた後、ペレット化した。得られた反応物は、265℃でのメルト・フロー・レート(MFR)が100g/10minであった。この反応物を共重合物1とした。
【0078】
共重合物1に無水ピロメリット酸(PMDA)を0.2重量%ドライブレンドした混合物を二軸押出機に供給し、300℃の温度で2分間反応させ、通常の方法でペレットにした。得られた反応物のMFRは、30g/10minであり、押出成形に適した組成物であった。この組成物を240℃の樹脂温度で重力方向に押出し、100℃の3本ロールでシートに成形し空冷した。押出物はシート状に賦型するロールの間で過剰のバンク(樹脂溜まり)を形成せずに安定して成形でき、得られたシートは非晶性で、DSCの結晶融解ピークは存在しなかった。
【0079】
実施例9
実施例8と同様にして共重合物1を製造した。共重合物1にPMDAを0.4重量%ドライブレンドした混合物を実施例8と同じ条件で反応させた。得られた反応物のMFRは12g/10minであり、押出成形に適した組成物であった。この組成物を実施例8と同じ条件でシート押出ししたところ、バンクはより安定し、非晶性の成形品が得られた。
【0080】
実施例10
PC50重量%と、PET50重量%とをドライブレンドし、この混合物を25kg/hで二軸押出機に供給し、C3〜C6を360℃に設定した反応ゾーンに1分間滞留させた後、ペレット化した。得られた反応物は、MFRが150g/10minであった。この反応物を共重合物2とした。
【0081】
共重合物2にPMDAを0.4重量%ドライブレンドした混合物を実施例8と同じ条件で反応させた。得られた反応物のMFRは20g/10minであり、押出成形に適した組成物であった。この組成物をロール温度を150℃とした以外は実施例8と同じ条件でシート押出しした。バンクは安定し、実施例8より徐冷条件にもかかわらず非晶性の成形品が得られた。
【0082】
比較例3
実施例8と同様にして共重合物1を製造した。共重合物1(100g/10min)を実施例8と同じ条件でシート押出しした。押出物は、ドローダウンが著しく、ロール間にバンクが蓄積して、安定してシート成形できなかった。
【0083】
【発明の効果】
本発明の透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の連続製造方法により、透明性が高くて耐薬品性等の基本性能が優れ、しかも、押出し成形等の用途も含めて様々な用途で用いることができるPC/PET組成物をエステル交換触媒を追添しなくても効率よく廉価に製造することが可能となる。また、本発明のポリエステル系押出成形用樹脂組成物は、上述のような構成よりなり、安定して押出成形を行うことができ、しかも、回収PETや回収PCを有効に再利用することができるうえに、靱性が強く残留応力が発生しない非晶性成形物を製造することができるものである。このようなポリエステル系押出成形用樹脂組成物を押出成形してなる非晶性成形物は、成形材料や繊維、フィルム等の様々な用途に好適に用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透明なPC/PET組成物におけるPC及びPETから形成される組成物のtanδを測定した一例である。
【図2】PCとPETとを混合した混合物のtanδを測定した一例である。
【図3】PCのtanδを測定した一例である。
Claims (8)
- ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートの合計が80重量%以上でポリカーボネート5〜80重量%とポリエチレンテレフタレート20〜95重量%とを含むポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法であって、
原料を320℃以下の温度で溶融混練する第一工程及び溶融混練物を320〜380℃の温度で5秒〜10分間熱処理する第二工程を含み、
該ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物は、全光線透過率が80%以上である
ことを特徴とする透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の連続製造方法。 - 前記ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の連続製造方法は、少なくとも第二工程が二軸押出機で混練しながら熱処理する工程である
ことを特徴とする請求項1記載の透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の連続製造方法。 - 前記ポリカーボネート及び/又は前記ポリエチレンテレフタレートは、リサイクル品である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物の連続製造方法。 - ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートの合計が80重量%以上でポリカーボネート5〜80重量%とポリエチレンテレフタレート20〜95重量%とを含む組成物から形成されてなるポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物であって、
該ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物は、全光線透過率が80%以上であり、140℃で1時間アニール後の全光線透過率が75%以上であり、且つポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートから形成される組成物のtanδの主ピーク温度がポリエチレンテレフタレート固有の温度以上とポリカーボネート固有の温度以下の中間に単一で存在する
ことを特徴とする透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物。 - ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートの合計が80重量%以上でポリカーボネート10〜45重量%とポリエチレンテレフタレート55〜90重量%とを含む組成物から形成されてなるポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物であって、
該ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物は、全光線透過率が80%以上であり、且つポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートから形成される組成物の極限粘度が0.5dl/g以上である
ことを特徴とする透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物。 - 前記ポリエチレンテレフタレート及び/又は前記ポリカーボネートは、リサイクル品である
ことを特徴とする請求項4又は5記載の透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物。 - 前記ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物は、溶融状態で多価の無水カルボン酸、ポリイソシアネート及びエポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物により高分子量化したものである
ことを特徴とする請求項4、5又は6記載の透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物。 - 請求項4、5、6又は7記載の透明なポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート組成物を押出成形してなる
ことを特徴とする非晶性成形物。
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