JP3676374B2 - 移植用生体内分解性遮蔽膜および製造方法 - Google Patents

移植用生体内分解性遮蔽膜および製造方法 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、移植用生体内分解性遮蔽膜およびその製造方法に関し、さらに詳細には、損傷部位で組織の分離および再生、他の移植物周辺における組織の増殖、またはこの膜に含まれる薬物の調節−放出のために手術によって挿入される生体内分解性遮蔽膜に関する。
発明の背景技術
組織は、いったん疾病や傷などで損傷するか失われると、普通の場合元の状態に完全に回復しない。たとえば、歯槽骨が歯周疾患によっていったん浸蝕されると、骨組織の損失部分における結合組織の過度な成長のために損傷した歯槽骨と歯周靭帯組織が再生し得ない。
前記問題を解決するために現在行われている組織再生方法としては、自家移植法および免疫原性のない動物やヒトの骨、またはヒドロキシアパタイトやリン酸三カルシウムのような人工骨の代用品を移植する方法がある。
一方、いろいろな遮蔽膜を用いて損傷部位において組織を周辺組織から分離し、新しい組織の再生を損傷部位で誘導する方法も開発されている。
国際特許公開第WO90-11730号は、歯槽骨組織の分離および強化のための物質として拡張(expanded)ポリテトラフルオロエチレンを用いることによって歯槽骨を再生する方法を開示している。しかし、この方法は、拡張ポリテトラフルオロエチレンのような非分解性物質を2次的な外科手術によって除去しなければならず、これによって手術部位の感染または炎症が誘発され得る。
したがって、2次的な外科手術を必要としない生体内分解性高分子からなる種々の移植製品が開発された。
国際特許公開第WO92−10218号は、遮断フィルム片方の面に積層された繊維状物質を有する、損傷部位において組織の分離および再生を行うための生体内分解性製品を開示している。この製品は、遮断フィルム上の繊維状物質内に形成された空間において、目的組織が再生できるように考案されている。周辺組織の損傷部位への成長は、周辺組織をフィルムの反対側に保持することによって防止される。
しかし、この遮断膜は物質の流れを遮ぎり、特に、フィルムの両側にある組織の適時な接合を妨げる。さらに、目的組織の増殖に必要な空間は、他の方法、たとえば、周辺組織にぴったり合うように成形されて治療部位中に空間を作り得る製品を用いることによって確保できる。このような製品を製造するためには、優れた柔軟性を有する生体内分解性高分子が要求される。
国際特許公開第WO92−15340号は、クエン酸塩のような可塑剤を含む生体内分解生高分子組成物を開示している。この高分子組成物は、覆うべき治療部位の形態によく合う移植用製品に加工できるほど十分に柔軟である。また、国際特許公開第WO92−15340号は、格子形の微細構造を有する膜と丸形の微細孔を有する膜とからなる二重層構造の膜をもって前記製品を製造しなければならないと記載している。
国際特許公開第WO92−15340号の開示は、請求の範囲に記載されている組成物に用いられいる可塑剤が、移植部位において炎症を誘発する危険性を増大させ得るという点で問題がある。
目的組織の分離および再生に用いるための生体内分解性高分子遮蔽膜は、使用の目的とする効果によって下記特性の適切な均衡を有しなければならない:即ち、これらの特性は(1)生体内分解性、(2)予め決められた期間中の生体内構造または寸法安定性、(3)柔軟性または伸縮性、(4)組織適合性および接合性(5)細胞−遮断性および(6)細胞外液およびその他の物質の透過性である。
前記特性の多くは互いに逆に作用するようであり、たとえば、優れた柔軟性を与える可塑剤は組織炎症を増大させ得、早い生体内分解速度は構造安定性を損傷させ、優れた細胞−遮断性を有する遮蔽膜は他の物質の透過を妨げ、その逆の場合もある。本発明の遮蔽膜は次のような長所がある:(1)炎症を誘発し得るいかなる可塑剤も含まない;(2)当業界で公知の生体適合性高分子を用いている;(3)繊維状マトリックスが引張強さおよび構造的安定性のような優れた物理的特性を遮蔽膜に与える;(4)高多孔構造による優れた伸縮性および細胞接合性を有する;および(5)エンボシングされた場合柔軟になる。
発明の概要
したがって、本発明の主な目的は、疾病または傷によって損傷した組織の分離および再生のための均衡のとれた好ましい物性を有する移植用生体内分解性遮蔽膜を提供することである。
本発明の他の目的は、前記移植用生体内分解性遮蔽膜の製造方法を提供することである。
本発明の一つの側面に従えば、生体内分解性/生体適合性多孔性高分子マトリックスに封入される保持体として、生体内分解性/生体適合性繊維で製造された織物または編物の紗(ファブリック)を含む移植用生体内分解性遮蔽膜が提供される。
本発明の他の側面によれば、保持体として生体内分解性/生体適合性繊維状物質で織物または編物の紗(ファブリック)を製造し、これを生体内分解性/生体適合性高分子溶液と微細孔−形成剤でコーティングし、乾燥およびコーティングされた繊維を処理して生体内分解性遮蔽膜を得、生体内分解性遮蔽膜をエンボシングする段階からなる移植用生体内分解性/生体適合性遮蔽膜を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
本発明の前記およびその他の目的と特徴は添付の図面とともに下記説明から明らかになる。
図1は、本発明によって製造された生体内分解性/生体適合性移植用遮蔽膜に縫合糸が取り付けられたものを示す概略図であり;
図2は、遮蔽膜の硬さ測定装置の概略図を示し;
図3は、遮蔽膜の柔軟性測定装置の概略図を示し;
図4は、本発明の一つの態様によって製造された生体内分解性/生体適合性移植用遮蔽膜を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した写真(400倍率)であり;
図5は、本発明の他の態様によって生体内分解性/生体適合性移植用遮蔽膜のSEMで観察した写真(1000倍率)であり;
図6は、テトラサイクリン(TC)を含む本発明の遮蔽膜から放出されるテトラサイクリンの量を時間によって示すグラフである。
発明の詳細な説明
本発明は、生体内分解性/生体適合性多孔性高分子マトリックスに封入される保持体として生体内分解性/生体適合性繊維で作られた織物または編物の紗(ファブリック)を含む移植用生体内分解性遮蔽膜を提供する。
本発明の遮蔽膜において保持体として用いられる紗は、好ましくは、外科手術において縫合糸として用いられる公知の繊維状物質で作ることができ、このような繊維状物質の例としては、たとえば、約5.5g/デニール以上の引張強さは及び35〜150デニールの繊度を有するポリグリコール酸、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)またはポリ乳酸等のモノ/マルチフィラメント繊維またはそのブレードされた繊維である。
ポリグリコール酸またはポリ乳酸のバルク特性は、低い可塑性および伸縮性に特徴づけられるが、これから織物または編物の形に製造された紗は優れた伸縮性および引張強さを有する。ポリグリコール酸紗は高い引張強さおよび迅速な分解速度のため、本発明の目的にとってさらに好ましいものである。
本発明の織物または編物紗は、その上に高分子遮蔽膜を形成するために、生体内分解性/生体適合生高分子を含む溶液(以下、コーティング溶液という)でコーティングされる。第1の溶媒と第2の溶媒とからなる混合溶媒をコーティング溶液の製造に用いる。高分子マトリックスにおける微細孔構造は、第1の溶媒と第2の溶媒に対する高分子の溶解度の差によって誘発される相転移によって形成される。コーティング溶液は、生体内分解性高分子を第1の溶媒に溶かし、これに第2の溶媒を加えることによって簡単に製造できる。さらに、コーティング溶液は、後で適切な抽出後処理をして除去することによりマトリックスに微細孔を形成する、微細孔形成剤(ポロゲン)を含み得る。好ましくは、水溶性粒子がポロゲンとして使用され得る。
本発明のコーティング溶液に用いることができる代表的な生体内分解性/生体適合性高分子は、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリパラジオキサノン、炭酸ポリトリメチレンなどからなる群から選ばれることができる。好ましくは、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)、ポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)およびポリカプロラクトンを単独または混合して使用し得る。その生体内分解性物質の分解速度は、分子量、結晶化の程度、添加剤の量および種類などを調整することによって調節できる。
コーティング溶液の製造に用いられ得る第1の溶媒は、好ましくは、塩化メチレンである。第2の溶媒の代表的な例としては、エタノール、N−メチルピロリドンおよび酢酸エチル、およびこれらの混合物である。
選択的な態様として、溶媒後処理段階で除去できるポロゲンを、コーティングされたフィルムに微細孔を形成する目的でコーティング溶液に使用し得る。本発明に使用され得るポロゲンの例としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどのような塩;フルクトース、マルトース、デキストラン、ペクチン、キシラン、アルギネート、カラギーナンなどのような糖類およびポリビニルピロリドンの水溶性粒子を含む。
本発明の生体内分解性遮蔽膜は、前記ポロゲンを任意に含有するコーティング溶液で織物または編物紗をコーティングして、相互連結した微細孔で形成されたチャンネルを有する遮蔽膜を調製することにより製造できる。
前記ポロゲンのうちの一つを用いる場合、遮蔽膜は噴霧乾燥機または製粉機を使って目的する粒子の大きさを有するポロゲンを製造し;ポロゲンを高分子溶液に加え;この混合物を紗上にコーティングし;コーティングされた紗を乾燥して溶媒を除去し;乾燥した紗を水または他の適切な溶媒で洗浄して遮蔽膜に封入されているポロゲンを除去することにより、紗を乾燥してポロゲンの大きさと実質的に同一な大きさの微細孔を有する多孔性遮蔽膜を製造できる。
本発明の生体内分解性遮蔽膜は相互連結された微細孔を有しており、この微細孔は遮蔽膜を貫く開かれたチャンネルを提供する。したがって、この膜は、遮蔽膜両側の組織間の酸素および他の栄養素を含む細胞外液のような物質の交換を可能にする。このような特徴は、本発明の遮蔽膜が損傷部位で組織の治療および接合に特に効果的であるという理由を理解するのに重要である。
また、本発明の高多孔性遮蔽膜は、損傷した組織の再生、また周辺組織の遮蔽膜への接合をさらに促進させるのに有効な優れた組織接合性を有している。
本発明で用いられ得る生体内分解性物質は使用される高分子の疎水性のために水に対する低い湿潤性を有している。湿潤性を改善するために、本発明によって製造された多孔性遮蔽膜は、ガラス転移温度(Tg)以上に加熱されたエンボシング板上に押し付けてエンボシングすることが好ましい。このようなエンボシング処理は水と水溶性物質の透過を促進させるだけでなく、本発明の遮蔽膜の堅固さと柔軟性を向上させ、これによって遮蔽膜を治療部位の形に合わせ、目的組織の再生のための空間を確保できる。
典型的な生体内分解性高分子は、45℃以上のガラス転移温度をもつため室温において低い伸縮性を有する。この伸縮性の問題を解決するため、国際特許公開第WO92−15340号は、種々のクエン酸エステル、またはエチル末端基を有する乳酸のオリゴマーのような可塑剤を加える方法を開示している。しかし、前記開示で用いられた可塑剤は移植部位で炎症を引き起こし得る。さらに、米国特許第5250584号は、室温で伸縮的なラクチド/グリコリドおよびラクチド/カプロラクトンの共重合体を開示している。しかし、請求の範囲に記載された高分子の室温での改善された伸縮性は、これらの高分子で製造された遮蔽膜の寸法安定性を低下させ得る。
前記先行技術文献に付随する問題を避けるために、本発明は、多孔性生体内分解性遮蔽膜の柔軟性および寸法安定性をともに改善させるエンボシング処理段階を含む新しい方法を提供する。したがって、本発明のエンボシング処理は、好ましくない副作用を誘発し得る可塑剤の使用を避けながら、同時に、優れた柔軟性、寸法安定性、および水または水溶性物質の透過性のような好ましい特性を多孔性生体内分解性遮蔽膜に与える。
好ましくは、手術の便宜のため、本発明の遮蔽膜に生体内分解性縫合糸を取り付けることができる。たとえば、損傷した歯槽骨の再生のために、本発明の遮蔽膜を挿入する際には、図1に示した方法を用いることができる。図1では、本発明の遮蔽膜(2)が縫合糸(3)と追加の多孔性フィルム(1)の使用を通じて歯根にしっかりと結合される。このような方法は遮蔽膜の動きを制限し、上皮細胞が成長して歯根と遮蔽膜の境界部位に接合することを可能にする。
本発明の遮蔽膜は挿入部位での感染および炎症の予防、組織再生の促進などの目的で薬物をさらに含み得る。遮蔽膜に含まれ得る代表的な薬物には、フルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、メフェナム酸などの消炎剤;テトラサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリンなどの抗生剤;メトロニダゾール;血小板由来成長因子;インシュリン類似成長因子;上皮成長因子;腫瘍増殖因子;骨形態形成蛋白質;およびこれらの混合物が含まれ得る。
下記実施例は本発明をさらに詳細に例示するのみであり、本発明の範囲を制限するものではない。
参照例1:遮蔽膜の試験管内細胞接合性
高分子遮蔽膜に接合した細胞の数は次のように測定した;表1に示す高分子または高分子混合物を各々塩化メチレンに溶かし、混合物をキャスティングし、乾燥して、約100μm厚さを有するフィルムを製造した。フィルムをペトリ皿の底面上に塗布し、その上にラットの皮膚層に由来する繊維芽細胞を培地とともに載せた。最後に、高分子遮蔽膜に接合した細胞の数を数えた。その結果は表1に示す。
Figure 0003676374
表1から分かるように、比較的低い分子量と結晶化度を有するポリ−D,L−乳酸、ポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)およびポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)が一般に優れた細胞接合性を有している。さらに、ポリ−L−乳酸をポリ(乳酸−co−グリコール酸と1:9ないし4:6の比率で混合した場合には、ポリ−L−乳酸の細胞接合性が低下しなかった。したがって、これらの高分子の混合物は移植用遮蔽膜を製造するのに用いられ得る。
参照例2:加水分解による遮蔽膜の試験管内膨張
生体内分解性高分子物質の加水分解による膨張率を調査するため、表2に示す種々の組成の高分子物質を塩化メチレンに溶かし、キャスティングした後、乾燥して100μm厚さのフィルムを製造した。各々のフィルムを攪拌中のリン酸塩緩衝液(PBS)(pH7.4、37℃)に入れ、1日および3日後に2回試料を採取してフィルム厚さの変化を決定し、その結果は表2に示す。
Figure 0003676374
表2から分かるように、最も高い細胞接合性を示すポリ−D,L−乳酸フィルムが最も高い膨張率を示した。ポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)、およびポリ(D,L−乳酸−co−グリコール酸)のフィルムは厚さにおいて大きな変化を示した反面、ポリ−L−乳酸のフィルムは徐々に膨張した。ポリ(乳酸−co−グリコール酸)のフィルムがポリ−L−乳酸を含む場合には膨張率の減少が観察された。
参照例3:多孔性構造およびエンボシング処理と関連した遮蔽膜の物理的特性
遮蔽膜内微細孔形成およびエンボシング処理によって起る特性変化を調査するため、非−孔性遮蔽膜、多孔性遮蔽膜、およびエンボシングされた多孔性遮蔽膜を製造し、これらの硬さおよび柔軟性を次のように測定した。
ポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)(iv 0.8)1.6gとポリ−L−乳酸(iv 6.3)0.4gを塩化メチレン25mlに溶かし、この溶液をキャスティングした後、乾燥して200μm厚さのフィルムを製造した。得られたフィルムを真空オーブンで1日間乾燥して残留溶媒を除去して非孔性遮蔽膜を製造した。
ポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)(iv 0.8)1.6gとポリ−L−乳酸(iv 6.3)0.4gを塩化メチレン25mlに溶かし、これにクエン酸ナトリウム20gを微細粉末の形に加えた。この混合溶液を均一に分散した後、キャスティングし、乾燥して200μm厚さのフィルムを製造した。フィルムを真空オーブンで1日間乾燥して残留溶媒を除去し、水槽で6時間攪拌してクエン酸ナトリウムを抽出し、乾燥して多孔性遮蔽膜を製造した。
さらに、遮蔽膜を、150℃に予め加熱した200突出/cm2の板上に押し付けてエンボシングされた多孔性遮蔽膜を製造することによって多孔性遮蔽膜をさらにエンボシング処理したことを除いては前記と同様な方法を繰り返した。
製造した各々の遮蔽膜を切断して12mm x 60mm試料を得、図2に示す装置に載せた。各遮蔽膜の硬さは遮蔽膜の断片上に1.4gの分銅を載せ、押し下った深さ(L)を測定した。
遮蔽膜の柔軟性は図3に示す装置を使って遮蔽膜を90°に曲げた後、試料を放し、10秒後の曲がった角度を測定して調査した。このような硬さおよび柔軟性測定結果を表3に示す。
Figure 0003676374
表3は多孔性遮蔽膜Bは硬さは低いが、非−孔性遮蔽膜より一層高い柔軟性を有することを示す。エンボシングされた多孔性遮蔽膜は向上された硬さおよび柔軟性を有することを示す。
実施例1
繊度75デニールのポリグリコール酸マルチフィラメントで編んだ紗線形密度45本/インチを有する編物紗を製造した。
次に、ポリ−L−乳酸0.3gとポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)1.7gとを塩化メチレン30mlに溶かし;これに微細粉末の形のクエン酸ナトリウム22gを微細粉末の形に加え、機械的に攪拌して分散して高分子コーティング溶液を製造した。
こうして製造した高分子コーティング溶液を前記ポリグリコール酸編物紗上に塗布した。コーティングされた紗を乾燥して残留溶媒を除去し、水槽に入れてクエン酸ナトリウムを抽出して多孔性遮蔽膜を製造した。
このように得られた遮蔽膜の微細孔を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。前記遮蔽膜の走査電子顕微鏡写真(400倍率)は図4に示す。直径100μm以下の数多くの微細孔が観察され、これらは相互連結されて遮蔽膜を横切るチャンネルを形成する。
前記遮蔽膜を5mm x 60mm試料に切断し、攪拌中のPBS(ph7.4、37℃)に入れた。試料は2週間間隔で取り出して引張強さおよび伸びを測定した。時間による物理的特性の変化を表4に示す。
Figure 0003676374
前記結果から分かるように、本発明によって製造された遮蔽膜は、十分な時間の間適切に高い強さを維持している。したがって、手術の際または移植の初期段階における遮蔽膜の突然な破壊は起らないと予測される。
実施例2
繊度75デニールのポリグリコール酸マルチフィラメントを編んで紗線形密度45本/インチを有する編物紗を製造した。
次に、ポリ−L−乳酸0.3gとポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)1.7gとを塩化メチレン30mlに溶かし、これに酢酸エチル10mlとポリビニルピロリドン0.8gを加え、攪拌して高分子コーティング溶液を製造した。
この高分子コーティング溶液を前記の編物紗上に塗布し、コーティングされた紗を乾燥して残留溶媒を除去した後、攪拌中の水槽に入れてポリビニルピロリドンを抽出して多孔性遮蔽膜を製造した。
このように得られた遮蔽膜の微細孔を走査電子顕微鏡で観察した。前記遮蔽膜の走査電子顕微鏡写真(1000倍率)は図5に示す。遮蔽膜の表面で直径10μm以下の均一な微細孔が存在し、この微細孔は相互連結されて遮蔽膜を横切るチャンネルを形成していることが分かる。
実施例3
ポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)2gを塩化メチレン25mlに溶かし、これに微細粉末の形のクエン酸ナトリウム20gを加えた。この混合物を均一に分散した後、キャスティングし、乾燥して200μm厚さのフィルムを製造した。このフィルムを真空オーブンで1日間乾燥して残留溶媒を除去し、水槽で6時間攪拌してクエン酸ナトリウムを抽出し、再び乾燥して多孔性膜を製造した。次いで、前記遮蔽膜を、20突出/cm2を有する板上に150℃で押し付けてエンボシング処理して多孔性遮蔽膜を作った。
エンボシング処理前/後の遮蔽膜の透過度は遮蔽膜をフランツ・セル(Frantz cell)細胞に入れ、時間によるウシ血清アルブミンの透過量を測定して評価した。その結果を表5に示す。
Figure 0003676374
表5から分かるように、エンボシングされていない遮蔽膜の場合には、透過率が初期に遅い反面、エンボシングされた遮蔽膜は相対的に持続的で、高い水溶液の透過率を示す。
実施例4
繊度50ないし110デニールのポリグリコール酸マルチフィラメントを編物で編んで紗線形密度45本/インチを有する編物紗を製造した。
次に、ポリ−L−乳酸0.3gとポリ(L−乳酸−co−グリコール酸)1.7gを塩化メチレン30mlに溶かした。これに酢酸エチル10mlとテトラサイクリン0.2gを加えて均一に懸濁した。
この溶液を前記のポリグリコール酸編織紗上に塗布し、コーティングされた紗を乾燥し、残留溶媒を除去して薬物を含む多孔性遮蔽膜を製造した。
前記遮蔽膜を攪拌中のリン酸塩緩衝液(pH7.4、37℃)に入れ、一定時間間隔で試料を採取した。放出されたテトラサイクリンの量はUV分光光度計を用いて定量した。
図6は、遮蔽膜から放出されたテトラサイクリンの量の時間による変化を示すグラフである。テトラサイクリンが初期に放出される傾向が明らかであり、これは遮蔽膜移植初期段階で感染または炎症の危険を効果的に防ぐことができることを示す。
前記実施例から分かるように、本発明の多孔性遮蔽膜は、優れた柔軟性および向上した強さを有し、これによって遮蔽膜を覆う部位の形にきっちりと合わせることができ、また移植後の処方期間中その形を維持することができる。
さらに、本発明によると、微細孔チャンネルを通した容易な物質運送によって、治療部位での目的組織の成長が妨げれることはない。しかも、本発明の遮蔽膜の硬さおよび柔軟性はエンボシング処理によって改善され得る。
したがって、本発明によって製造されたエンボシングされた多孔性遮蔽膜は、組織のガイドされた再生誘導、組織の保持およびカバー、人体に挿入された人工器官の維持および支持に用いられるか、薬物の担体として使用され得る。
本発明を前記特定実施態様と関連させて記述したが、添付した特許請求範囲によって定義される本発明の範囲内で、当該分野の熟練者が本発明を多様に変形および変化させ得ることは勿論である。

Claims (8)

  1. 高い引張強さ、優れた柔軟性および寸法安定性を有する、損傷部における組織の分離および再生のためのエンボスされた移植用生体内分解性遮蔽膜であって、
    (a)多孔性生体内分解性高分子マトリックスと、
    (b)前記マトリックスに封入された生体内分解性繊維からなる強化用織物または編物と
    を具備し、
    栄養素の透過を可能にし、かつ細胞/組織接合性を促進させるために相互連結された平均直径100μm未満の微細孔が前記多孔性生体分解性高分子マトリックスの全厚みを通して分布している移植用生体内分解性遮蔽膜。
  2. 前記生体内分解性繊維が、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびポリ乳酸からなる群から選ばれた高分子で製造されたモノフィラメント、マルチフィラメント、またはこれらのブレードされた形のものである請求項1に記載の移植用生体内分解性遮蔽膜。
  3. 前記生体内分解性繊維が、ポリグリコール酸で製造されたモノフィラメント、マルチフィラメント、またはこれらのブレードされた形のものである請求項1に記載の移植用生体内分解性遮蔽膜。
  4. 前記生体内分解性高分子マトリックスが、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリパラジオキサノン、炭酸ポリトリメチレンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれた生体内分解性高分子を含む請求項1に記載の移植用生体内分解性遮蔽膜。
  5. 前記生体内分解性高分子がポリ乳酸およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)の混合物である請求項4に記載の移植用生体内分解性遮蔽膜。
  6. フルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、メフェナム酸、テトラサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、メトロニダゾール、血小板由来成長因子、インシュリン類似成長因子、上皮成長因子、腫瘍増殖因子、骨形態形成蛋白質、およびこれらの混合物からなる群から選ばれた添加物をさらに含む、請求項1に記載の移植用生体内分解性遮蔽膜。
  7. エンボスされた移植用生体内分解性遮蔽膜の製造方法であって:
    生体内分解性繊維物質からなる強化用織物または編物の紗を、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、フルクトース、マルトース、デキストラン、ペクチン、キシラン、アルギネート、カラキーナン、ポリビニルピロリドンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれた化合物の水溶性粒子を平均直径100μm未満の微細孔形成添加剤として含む生体内分解性高分子溶液に入れることと;
    溶媒を除去して乾燥した遮蔽膜を得ることと;
    乾燥した遮蔽膜を水または適切な水溶液で抽出して水溶性粒子を除去して多孔性遮蔽膜を得ることと;
    多孔性遮蔽膜を乾燥すること;および乾燥した多孔性遮蔽膜をエンボシングすることとを具備した方法。
  8. 前記生体内分解性高分子溶液が塩化メチレンおよび第2の溶媒を含み、前記第2の溶媒がエタノール、N−メチルピロリドン、酢酸エチルまたはこれらの混合物である請求項7に記載の方法。
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