JP3675734B2 - 船体振動軽減装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、船尾プロペラの回転による船尾船底に激しく作用する圧力変動を軽減できる装置に関するものである。さらに詳細には本発明は、船尾プロペラと船尾船体との間に弾性体で構成したフィンを設けることにより、船尾船底に激しく作用する圧力変動を軽減し、かつ、当該圧力変動を推進力に変換できる船体振動軽減装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、船舶では、船尾プロペラが回転することにより船尾船底に激しく圧力変動が作用し、船体が大きく振動するすることが知られている。これは、船尾プロペラが回転することにより、プロペラの回転数とプロペラの枚数とに応じて船尾船体付近の流体が圧縮/膨張を繰り返すことにより発生するものである。
【0003】
図5は、上述した圧力変動を吸収軽減する従来装置の例を示す図である。この図5において、この船体振動軽減装置101は、船尾プロペラ102の直上における船尾103の船底104に配置したほぼ円形のゴム膜105と、当該ゴム膜105の内部に水を封入し、当該ゴム膜105の内部の水の体積を振動数に応じた調整できる水体積調整装置106とから構成したものである(特開平8−188192号公報)。
【0004】
この水体積調整装置106は、バラストタンク107と、給水ポンプ108と、開閉弁109と、制御弁110と、給水パイプ111と、戻しパイプ112とから構成されている。この給水ポンプ108と開閉弁109を備えた給水パイプ111はバラストタンク107とゴム膜105とを連通しており、給水ポンプ108によりバラストタンク107の水をゴム膜105に給水できるようになっている。また、制御弁110を備えた戻しパイプ112はゴム膜105とバラストタンク107とを連通し、当該制御弁110の作用によりゴム膜105内の水をバラストタンク107に戻すことができるようになっている。
【0005】
このように構成された船体振動軽減装置101によれば、プロペラによる変動圧力はゴム膜105に直接作用し、直接船尾103の船底104には直接作用しなくなることと、当該ゴム膜105の内部の水の体積を水体積調整装置106により振動数に応じて調整できるようにしてプロペラによる変動圧力のピークを吸収したので、衝撃、振動及び騒音の発生が防止できることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の船体振動軽減装置によれば、ゴム膜を船尾プロペラの直上の船尾の船底に設ける必要があるほか、水体積調整装置を設ける必要があり、構成が複雑で、かつ、構成部品を多数必要とし、しかも、装置設置場所を必要とするという不都合がある。
また、上述した従来の船体振動軽減装置によれば、その振動吸収作用を十分にに引き出すためには、常に、当該装置のメンテナンスが必要となり、設置後も労力を必要とするという不都合がある。
【0007】
さらに、上記船体振動軽減装置によれば、各部品や装置のほかにゴム膜内に供給する流体を相当な量を必要とするほか、流体の補給などをしなければならないという不都合があった。
本発明は、上述した不都合を解消し、船尾プロペラの回転に伴う振動を軽減し、かつ、省エネルギー化を可能とした船体振動軽減装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明に係る船体振動軽減装置は、船尾プロペラの回転による船尾船底に激しく作用する圧力変動を軽減できる装置において、船尾プロペラと船尾船体との間で、前記船尾プロペラの上方に配置されており、かつ、フィンの船舶前方側の両端が支持部材によって船尾船体から所定の間隔で当該船尾船体に固定される弾性体で構成したフィンを設けたことを特徴とする。
これにより、上記フィンが直接船尾プロペラの圧力変動を受けて振動し、船尾に直接圧力の変動を伝達しないので、振動を軽減できる。また、単にフィンを配置しただけなので、構造が簡単であり、部品点数が少なく、かつ、設置面積や体積が少なくてすみ、しかも、メンテナンスを必要としない。さらに、前記フィンが振動することによりドルフィンキックのような作用となり、船舶に推進力を与えることにより、省エネルギーの効果を奏する。
請求項2に記載の発明では、請求項1記載の船体振動軽減装置において、前記フィンは、硬質ゴムにより断面が船舶前方側が厚く船舶後方側に向かって徐々に薄くなる流線形状に形成されたことを特徴とする。
請求項3に記載のはつめいでは、請求項1記載の船体振動軽減装置において、前記フィンは、船舶横方向の長さが船尾プロペラの回転直径の少なくとも0.5〜1.5で、かつ、船舶前後方向の長さが少なくとも船尾プロペラの厚み程度に形成されていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1ないし図4は本発明の実施の形態を説明するものである。ここで、図1は本発明の実施の形態に係る船体振動軽減装置及びその作用を説明する側面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は本発明の実施の形態に係る船体振動軽減装置の要部を示す断面図、図4は本発明の実施の形態に係る船体振動軽減装置の作用を説明するための特性図である。なお、以下に本実施の形態を構成する部材について方向を説明するときには、当該部材について、船首側を前方向、船尾側を後方向、前後方向の直角方向を横方向などというものとする。
【0010】
これらの図において、船体振動軽減装置1は、船尾プロペラ2の回転による船尾船底に激しく作用する圧力変動を軽減できる装置であって、船尾プロペラ2の直上において船尾プロペラ2と船尾3の船尾船体(船底)4との間に配置されたフィン5と、当該フィン5の前方両端部分5aを船底4に当該船底4から所定の距離Hだけ隔てて固定する支持体6,6とから構成されている。
【0011】
前記フィン5は、硬質ゴムや所定の弾性力のある薄い金属などの材料からなる薄い板体で所定の面積に構成されている。また、前記フィン5は、その縦断面が船舶前方側と船舶後方側とで非対称な形状に形成されている。さらに詳細に説明すれば、前記フィン5は、その縦断面が、図3に示すように、前方側が厚く、後方側に向かって徐々に薄くなる流線形状に形成されている。
さらに、前記フィン5は、船舶の進行方向に対して直角方向(横方向)の長さWが船尾プロペラ2の回転直径Dの少なくとも0.5〜1.5で、かつ、船舶前後方向の長さLが少なくとも船尾プロペラ2の厚みdの1〜3倍程度に形成されている。
また、前記支持体6,6は、図2ないし図3に示すように、それぞれ薄くかつ剛性のある金属製の板体から構成されており、前記フィン5の前方両端部分5aを船尾3の船底4から距離Hだけ離して固定する部材である。
【0012】
このように構成された船体振動軽減装置1の作用について図1ないし図4を参照して説明する。前記図4において、横軸には圧力変動の振動数(船尾プロペラ2の回転数(rpm)×翼数)が、縦軸にはフィン5の推進力が、それぞれとられたものである。
船尾プロペラ2が回転すると、船尾プロペラ2の翼が船底4に近づくと水圧(圧力)を受け、翼が船底4から離れるときには逆の圧力を受けることになって、船底4に圧力変動が加わることは、既に説明した。この圧力変動の振動数は、プロペラ軸が1回転したときにおける当該回転速度と船尾プロペラ2の翼数に比例することになる。
【0013】
このような船尾プロペラ2からの圧力は、船尾プロペラ2の直上に配置されているフィン5が直接受ける。このフィン5は、硬質ゴムなどの弾性体でできているので、図1に示すように、圧力に応じて上下に振動して圧力を吸収するように動作する。これにより、船尾プロペラ2からの圧力変動は、船尾3の船底4に直接伝達されないことになるので、船尾プロペラ2の回転による圧力変動が原因の振動を軽減することができる。
【0014】
また、フィン5は、図1の矢印に示すように、船尾プロペラ2の回転による圧力変動に応じて上下に振動し、ドルフィンキックのように作用し、船舶に推進力を与えることになる。このとき、フィン5が振動することにより発生する推進力は、図4からもわかるように、圧力変動(サーフェイスフォース)の振動数とフィン5の固有振動数fcとが合致したときに大きくなり、その周波数fcから離れるにしたがって急激に小さくなるという特定がある。
上述したように本実施の形態に係る船体振動軽減装置1によれば、船尾プロペラ2の直上であって当該船尾プロペラ2と船尾3との間にフィン5を配置しただけの構造なので、構造が著しく簡単であり、かつ部品点数も著しく少なく、設置費用も少なくて済む。
【0015】
また、上記船体振動軽減装置1は、フィン5と支持体6以外に部品がないため、設置面積や体積が少なくて済み、かつ、特段のメンテナンスを必要としない。
さらに、本来推進力を生み出さないサーフェイスフォースにより、前記フィン5を振動させてフィン5にドルフィンキックのような作用をさせることにより、船舶に推進力を与えることができ、省エネルギーとなる。
【0016】
【実施例】
ここに、具体的な実験結果を示す。
実船のサーフェイスフォースが例えば400[Kg/平方メートル]であり、かつ、圧力を受ける船尾プロペラ2のDp(直径)=6mのプロペラ相当の面積[平方メートル]とすれば、当該面積が受ける圧力は、
400×30=12000[Kg]=12[トン]
となる。当該面積が受ける圧力を弾性体で構成したフィン5がその圧力の一部を受けることにより、船底4に受ける圧力変動を軽減している。
また、船全体の推進力は約100[トン]であるとし、上記フィン5が振動することにより発生する推進力は船全体の0.5[パーセント]であるとすると、0.5[トン]となる。
したがって、サーフェイスフォースと推進力との比は24:1となる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明に係る船体振動軽減装置によれば、船尾プロペラと船尾船体との間に弾性体で構成したフィンを設けた構造なので、船尾プロペラの回転に伴う振動を軽減することができる。
また、上記船体振動軽減装置によれば、前記フィンが船尾プロペラの回転に伴う圧力変動により振動してドルフィンキックの作用をすることにより、推進力を発生し、省エネルギーができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る船体振動軽減装置及びその作用を説明する側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る船体振動軽減装置を示す側面図であって、図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る船体振動軽減装置の要部を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る船体振動軽減装置の推進力と圧力変動の周波数との関係を説明するための特性図である。
【図5】圧力変動を吸収軽減する従来装置の例を示す図である。
【符号の説明】
1 船体振動軽減装置
2 船尾プロペラ
3 船尾
4 船底
5 フィン
5a 前方両端部分
6 支持体
Claims (3)
- 船尾プロペラの回転による船尾船底に激しく作用する圧力変動を軽減できる装置において、
船尾プロペラと船尾船体との間で、前記船尾プロペラの上方に配置されており、かつ、フィンの船舶前方側の両端が支持部材によって船尾船体から所定の間隔で当該船尾船体に固定される弾性体で構成したフィンを設けたことを特徴とする船体振動軽減装置。 - 前記フィンは、硬質ゴムにより断面が船舶前方側が厚く船舶後方側に向かって徐々に薄くなる流線形状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の船体振動軽減装置。
- 前記フィンは、船舶横方向の長さが船尾プロペラの回転直径の少なくとも0.5〜1.5で、かつ、船舶前後方向の長さが少なくとも船尾プロペラの厚み程度に形成されていることを特徴とする請求項1記載の船体振動軽減装置。
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