JP2004082930A - アジマス型推進器およびこれを備えた船舶 - Google Patents
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Abstract
【課題】アジマス型推進器のストラットに発生したキャビテーションによる気泡がつぶれるときに生じる騒音や衝撃圧を軽減あるいは緩衝して、騒音や船体振動を低減させることができるアジマス型推進器およびこれを備えた船舶を提供すること。
【解決手段】船体1に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラット4と、該ストラット4に設けられるとともに内部に駆動手段からの動力が伝達されるプロペラシャフト6を有するポッド2と、前記プロペラシャフト6に設けられたプロペラ5と、を具備するアジマス型推進器100において、前記ストラット4を流れに対して傾けたときに発生する気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧を緩和するためのキャビテーション緩衝手段110が設けられていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】船体1に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラット4と、該ストラット4に設けられるとともに内部に駆動手段からの動力が伝達されるプロペラシャフト6を有するポッド2と、前記プロペラシャフト6に設けられたプロペラ5と、を具備するアジマス型推進器100において、前記ストラット4を流れに対して傾けたときに発生する気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧を緩和するためのキャビテーション緩衝手段110が設けられていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アジマス(Azimuth)型推進器およびこれを備えた船舶に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な船舶においては、船尾に別体のプロペラと舵とを備えており、一方のプロペラによって推進力を発生し、他方の舵によって旋回等の操舵を行うように構成されている。
しかし、近年においては、上述した推進用のプロペラと操舵用の舵部とが一体化され、船体に対して全体が鉛直軸まわりに旋回可能に取り付けられたアジマス型推進器、または、アジマスプロペラ(Azimuth Propeller)と呼ばれる装置が開発されている。
【0003】
ここで、図8および図9に基づいて従来のアジマス型推進器の構成を簡単に説明する。なお、図8はアジマス型推進器の取付状況を示す船舶(船尾部分)の略図、図9(a)はアジマス型推進器の一部断面右側面図、図9(b)は図9(a)のA−A断面図であり、図中の符号1は船底後部(船体)、2はポッド、3は支柱、4はストラット、5はプロペラ、6はプロペラシャフト、7はステータ、8はロータ、9は電動機、10はアジマス型推進器である。
【0004】
アジマス型推進器10は、支柱3を介して、船底後部1に対し回動自在に取り付けられている。アジマス型推進器10は、推進力を発揮するプロペラ5を後方または前方に備え、内部に電動機9等のプロペラ駆動機構(駆動手段)を内蔵したポッド2と、このポッド2の上部に一体に固着され、断面を流線形(エアロフォイル型)としたストラット4とを具備して構成される。ストラット4の上部には鉛直方向の支柱3が取り付けられ、この支柱3の上端部側が船体側に設けられた旋回駆動機構(図示省略)に連結されて、支柱3、ストラット4、ポッド2、およびプロペラ5を一体的に回動させるようになっている。
このように構成されたアジマス型推進器10では、プロペラ5の回転によって推進力が発生して船舶を航走させ、船底後部1に対して推進器全体を回動させることによって操舵機能が得られ、船舶の針路方向を変換することができる。
【0005】
また、アジマス型推進器10には、図示のようにプロペラ5の駆動力を出力する電動機9がポッド2内に設置されたタイプと、船体側に設置された電動機等の駆動源(図示省略)から駆動力を受けるタイプとがある。図9に示したアジマス型推進器10は、中空としたポッド2の内壁に固定されているステータ7に対し、プロペラシャフト6と一体的にロータ8が回転するように構成されたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなアジマス型推進器10を旋回駆動機構により、たとえば図10に示すように回動させた場合(すなわち、針路を右に変えるために、たとえば舵輪(操舵装置)を右に切った場合)、ストラット4が水の流れに対して迎角を有することとなる。このとき、図10に示すように図の上側(水の流れに対して背面側)の蒸気圧が二点鎖線に示すように下がって(負圧となり)キャビテーション(空洞現象)による気泡bが生じることがある。
気泡bは下流側に流れて再び圧力の高い領域に入ると押しつぶされるように消滅(崩壊)する。この気泡bの消滅は極めて瞬間的であるため、大きな衝撃を伴い、騒音と船体振動の原因となる。
また、この状態が長時間に及ぶと、絶えず繰り返し応力を加えられている状態にあるストラット4は、しだいに疲労によってその表面をえぐられるように侵食(エロージョン)され、最悪の場合には破壊に至るおそれがある。
【0007】
一方、将来的にはアジマス型推進器10による速力の増加が望まれており、高速でアジマス型推進器10の舵角を取った場合には、キャビテーションの発生する可能性は高くなる。
また、高速航行中においては、針路保持(保針)のために取られる小さい舵角でも、風浪の影響によってキャビテーションが発生してしまうことが懸念されている。すなわち、高速で直進中の船舶が左舷側から風浪を受けた場合、舵を若干左に切って(小さい舵角を取って)保針させることがある。このとき、船体の左側から風浪を受けているため、左舷側から右舷側に向かって船体が力(風圧や水圧)を受けるようになる。これにより、舵の役目をするストラット4の右舷側表面の流線密度が密となって、キャビテーションを起こしてしまうおそれがある。言い換えれば、微小舵角でも高速航行中には風浪の影響によってストラット4の表面にキャビテーションが発生してしまうおそれがある。
【0008】
しかしながら、現在までのところアジマス型推進器10のストラット4に発生したキャビテーションによる気泡bがつぶれるときに生じた騒音や船体振動を軽減あるいは緩衝するための手段は、講じられていない。
これに近い技術としては、冒頭で述べた船尾に別体のプロペラと舵とを備えた一般的な船舶において、推進用プロペラと船底外板との間に空気の膜を形成させて、プロペラの回転により発生するキャビテーションによる騒音や船体振動を緩衝させるものがある(たとえば、特許文献1,2参照)。
【0009】
〔特許文献1〕
特開平10−71993号公報(図2および図3)
〔特許文献2〕
特開2000−255485号公報(図3)
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、アジマス型推進器10のストラット4に発生したキャビテーションによる気泡bがつぶれるときに生じる騒音や衝撃圧を軽減あるいは緩衝して、騒音や船体振動を低減させることができるアジマス型推進器およびこれを備えた船舶を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のアジマス型推進器およびこれを備えた船舶では、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載のアジマス型推進器によれば、船体に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラットと、該ストラットに設けられるとともに内部に駆動手段からの動力が伝達されるプロペラシャフトを有するポッドと、前記プロペラシャフトに設けられたプロペラと、を具備するアジマス型推進器において、前記ストラットを流れに対して傾けたときに発生する気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧を緩和するためのキャビテーション緩衝手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
このアジマス型推進器においては、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧が、キャビテーション緩衝手段により低減あるいは緩和されることとなる。
【0013】
請求項2に記載のアジマス型推進器によれば、前記キャビテーション緩衝手段は、前記気泡と前記ストラットの表面との間に流体の流れを生じさせるものであることを特徴とする。
【0014】
このアジマス型推進器においては、気泡とストラットの表面との間に流体の流れが形成されており、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧が流体により低減あるいは緩和されるようになっている。
すなわち、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧はまずはじめに流体の流れに加わることとなり、ストラットの表面には直接加わらないようになっている。
【0015】
請求項3に記載のアジマス型推進器によれば、前記キャビテーション緩衝手段は、前記ストラットの前縁部に設けられた複数個の流体吹出孔と、これら流体吹出孔に前記流体を供給する流体供給源と、前記複数個の流体吹出孔および前記流体供給源とを連通する連通管と、を具備するものであることを特徴とする。
【0016】
このアジマス型推進器においては、流体供給源から連通管を介してストラットの前縁部に設けられた流体吹出孔に流体が導かれ、ストラットの表面上に流体の膜(フィルム)が形成されることとなる。
すなわち、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて流体の膜で覆われることとなる。
【0017】
請求項4に記載のアジマス型推進器によれば、前記流体供給源から前記連通管に供給される流体の流量を制御する制御器が設けられていることを特徴とする。
【0018】
このアジマス型推進器においては、流体吹出孔から流出する流体の量が制御器により調整され得るようになっている。
すなわち、流体吹出孔から流出する流体の量が多くなると膜厚が厚くなり、反対に流体吹出孔から流出する流体の量が少なくなると膜厚が薄くなる。
【0019】
請求項5に記載のアジマス型推進器によれば、前記ストラットと前記ポッドとの接合部近傍および/または前記ストラットの後縁よりも船尾側に位置する船底部には、少なくとも1つの圧力センサおよび/または加速度センサが設けられているとともに、これら圧力センサおよび/または加速度センサで得られたデータは前記制御器に伝送されることを特徴とする。
【0020】
このアジマス型推進器においては、ストラットとポッドとの接合部近傍および/またはストラットの後縁よりも船尾側に位置する船底部に、圧力センサおよび/または加速度センサが設けられているとともに、これら圧力センサおよび/または加速度センサで得られたデータが制御器に伝送されるようになっている。
すなわち、ストラット表面における蒸気圧(あるいは圧力)、ストラットの後縁よりも船尾側に位置する船底部における圧力、船体および/またはストラットに生じる振動が、圧力センサおよび/または加速度センサで検知されるとともに、検知されたデータが制御器に送られるようになっている。
【0021】
請求項6に記載のアジマス型推進器によれば、前記ストラットの舵角を検出する舵角検出器が設けられているとともに、この舵角検出器で得られたデータは前記制御器に伝送されることを特徴とする。
【0022】
このアジマス型推進器においては、舵角検出器によりアジマス型推進器の取っている舵角がわかるようになっている。
すなわち、船首尾線とストラットの前縁および後縁を結ぶ線とのなす角度が検出され得るようになっている。
【0023】
請求項7に記載のアジマス型推進器によれば、前記キャビテーション緩衝手段は、前記ストラットの前縁部に設けられた複数個の流体吹出孔と、一端が水面よりも上方に位置して開口するとともに他端が前記複数個の流体吹出孔と連通する空気供給管と、を具備するものであることを特徴とする。
【0024】
このアジマス型推進器によれば、大気中から空気供給管を介してストラットの前縁部に設けられた流体吹出孔に空気が導かれ、ストラットの表面上に空気の膜(フィルム)が形成されることとなる。
すなわち、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて空気層が形成されることとなる。
【0025】
請求項8に記載のアジマス型推進器によれば、船体に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラットと、該ストラットに設けられるとともに内部に駆動手段からの動力が伝達されるプロペラシャフトを有するポッドと、前記プロペラシャフトに設けられたプロペラと、を具備するアジマス型推進器において、前記ストラットの前縁部に、流体が流出する複数個の流体吹出孔が設けられていることを特徴とする。
【0026】
このアジマス型推進器によれば、ストラットの前縁部に設けられた流体吹出孔から流体が流出し、ストラットの表面上に流体の膜(フィルム)が形成されることとなる。
すなわち、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて流体の膜で覆われることとなる。
【0027】
請求項9に記載のアジマス型推進器によれば、前記複数個の流体吹出孔は、前記ストラットと前記ポッドとの接合部の側の分布が密となるように設けられていることを特徴とする。
【0028】
このアジマス型推進器によれば、ストラットとポッドとの接合部に近い側に、流体吹出孔が数多く分布するように配置されている。
すなわち、複雑な形状を有しその周りの流れが複雑となる部分に流体が多く流されて、膜厚が厚くなるようになっている。
【0029】
請求項10に記載のアジマス型推進器を備えた船舶によれば、請求項1から8のいずれか一項に記載のアジマス型推進器と、針路を変更するための操舵装置と、前記プロペラの回転数を変更するための回転数変更手段と、を具備してなることを特徴とする。
【0030】
このアジマス型推進器を備えた船舶によれば、アジマス型推進器のストラットに発生したキャビテーションによる気泡がつぶれるときに生じる騒音や衝撃圧が、キャビテーション緩衝手段により軽減あるいは緩衝されることとなる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るアジマス型推進器の第1実施形態を図1および図2に基づいて説明する。なお、上述した従来技術と同一の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図1に示すように、本発明によるアジマス型推進器100は、たとえば船底後部(船体)1に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラット4と、このストラット4に設けられるとともに内部に駆動手段(図示せず)からの動力が伝達されるプロペラシャフト6を有するポッド2と、プロペラシャフト6に設けられたプロペラ5と、キャビテーション緩衝手段110とを主たる要素として構成されたものである。
【0032】
キャビテーション緩衝手段110は、ストラット4を流れに対して傾けたときに発生する気泡b(図10参照)が崩壊するときに生じる衝撃圧を軽減あるいは緩和するためのものであり、気泡bとストラット4の表面との間に流体を、たとえば膜状に生じさせるものである。イメージとしてはガスタービンなどのタービン翼に採用されるフィルム冷却(film cooling)のようなものである。
【0033】
図2に示すように、キャビテーション緩衝手段110は、ストラット4の前縁部(図1参照)に設けられた複数個、たとえば10個の流体吹出孔111と、これら流体吹出孔111に流体を供給する流体供給源112と、これら流体吹出孔111と流体供給源112とを連通する連通管113とを主たる要素として構成されたものである。
【0034】
流体吹出孔111はそれぞれ、たとえば直径5mmを有する平面視円形の孔であり、ストラット4の板厚方向に貫通されたものである。
また、これら流体吹出孔111は、前縁4aからたとえば5%(ストラット4の前縁4aと後縁4bとを結び、水面と平行となる直線の長さを1とした場合の前縁4aから5/100のところ)の位置に、たとえば15mm間隔で一直線上に配置されたものである。
なお、図1および図2にはストラット4の右舷側表面に設けられた流体吹出孔111のみを図示しているが、実際には左舷側表面にも同数の流体吹出孔111が設けられている。
【0035】
流体供給源112は、たとえば所定の圧力に高められた空気を溜めておく空気蓄圧器であり、別途用意された空気圧縮機により加圧された空気が供給されるようになっている。
【0036】
連通管113は、各流体吹出孔111に対応して設けられた枝管113aと、これら枝管113aの一端を結合するヘッダ113bと、流体供給源112とヘッダ113bとを結合する主管113cとを有するものである。
また、流体供給源112はたとえば船内機関室に配置され、ヘッダ113bおよび枝管113aはストラット4の内部に配置されている。主管113cは流体供給源112とヘッダ113bとを適宜連通するように、船内機関室およびストラット4内にまたがって(わたって)配置されている。
【0037】
このような構成により、流体供給源112内の流体(たとえば空気)は主管113c→ヘッダ113b→枝管113aを通って各流体吹出孔111から流出していくこととなる。
各流体吹出孔111から、流体が流れ出るようになると、ストラット4の両表面に沿って流体の膜(たとえば空気層)が形成されることとなる。
この流体の膜はストラット表面と、前述した気泡bとの間に形成されこととなり、この流体の膜によって気泡bが消滅する(つぶれる)ことにより生じる騒音や衝撃圧を吸収(緩衝)することができるので、キャビテーションによる騒音や船体振動を低減させることができる。
【0038】
図3を用いて本発明に係るアジマス型推進器の第2実施形態を説明する。
本実施形態のものは、流体吹出孔111がストラット4とポッド2との接合部24の側に多く配置されるように構成されている点で上述した第1実施形態のものと異なる。
すなわち流体吹出孔111は、ポッド2に近い側(図4において下側)に多く配置される。言い換えればポッド2に近い側(図4において下側)の分布が密となるように配置される。
【0039】
図3において流体吹出孔111は全部で12個配置されている。これら流体吹出孔111はそれぞれ、たとえば直径5mmを有する平面視円形の孔であり、ストラット4の板厚方向に貫通されたものである。
また、これら流体吹出孔111は、前縁4aからたとえば5%(ストラット4の前縁4aと後縁4bとを結び、水面と平行となる直線の長さを1とした場合の前縁4aから5/100のところ)の位置に一直線上に配置されたものである。図3において上方に位置する8個の流体吹出孔111は、たとえば10mm間隔で配置されており、上方に位置する5個の流体吹出孔111は、たとえば20mm間隔で配置されている。
なお、第1実施形態同様、実際には左舷側表面にも同数の流体吹出孔111が設けられている。
【0040】
このように複雑な形状を有する接合部24に近い側、すなわち流線がより密な状態となってキャビテーションの起こる可能性が高い部分に流体吹出孔111を多く設けることにより、気泡bが消滅する(つぶれる)ことによって生じる騒音や衝撃圧をより効果的に吸収(緩衝)することができるので、キャビテーションによる騒音や船体振動をより低減させることができる。
【0041】
図4を用いて本発明に係るアジマス型推進器の第3実施形態を説明する。
本実施形態のものは、ストラット4とポッド2との接合部24近傍でかつ流体吹出孔111の船尾側に位置するストラット4の表面、およびストラット4の後縁4bよりも船尾側(後方側)に位置する船底後部1に、それぞれ圧力センサ301,302が設けられているという点で図3に示す第2実施形態のものと異なる。なお、図4に示す圧力センサ301の反対側(左舷側)にも図示しない圧力センサが設けられている。
この圧力センサは数百Hz〜数KHzの振幅をひろうものであり、ストラット4の表面における、キャビテーションにより生じた気泡bが消滅する(つぶれる)とき生じる衝撃圧による圧力変動を検出することができるものである。
また、図5に示すように、流体供給源112から連通管113に供給される流体の流量を制御する制御器114が設けられており、流体供給源112は制御器114からの信号により作動するようになっている。
すなわち、流体供給源112から連通管113に供給される流体の量は、制御器114からの信号に基づいて調整されるようになっている。たとえば、流体供給源112が、上述したような空気蓄圧器であるような場合、この空気蓄圧器の出口側に設けられたバルブの開度を調整することにより流体の流量が調整されるようになっている。
【0042】
一方、これら圧力センサ301,302で得られたデータは、制御器114に伝送されるようになっている。したがって、圧力センサ301,302から制御器114に送られてきたデータが制御器114で処理された後、これらデータに応じて制御器114から流体供給源112に信号が送られて、その信号に基づいて流体供給源112から連通管113に流体が供給されるようになっている。
すなわち、キャビテーションの発生状況に合わせて、流体の供給量が調整されるようになっている。言い換えれば、圧力センサ301,302で得られた圧力変動が高く、キャビテーションが多く発生するような場合には流体が多く供給され、圧力センサ301,302で得られた圧力変動が低く、キャビテーションの発生が少ないような場合には流体の供給量が少なくされて、またキャビテーションが発生していないような場合には流体の供給が停止されるようになっている。
【0043】
このように、必要に応じて必要な量だけ流体を供給することができるので、流体を無駄なく有効に利用することができる。また、流体を流体供給源に溜めておくために費やされるエネルギーを低減させる(たとえば空気圧縮機の稼働時間を短縮させる)ことができる。
【0044】
また、これら圧力センサ301,302とともに、あるいはこれら圧力センサ301,302の代わりにアジマス型推進器300(図4参照)の舵角を検出する舵角検出器303を設けることもできる。
この舵角検出器303は、鉛直軸回りに旋回(あるいは回動)するアジマス型推進器300の旋回角度(あるいは回動角度)、すなわち船首尾線とストラット4の前縁4aおよび後縁4bを結ぶ線とのなす角度(舵角)を検出するものである。
前述した圧力センサ301,302と同様、舵角検出器303で得られたデータは、制御器114に伝送されるようになっている。
【0045】
すなわち舵角に応じて(キャビテーションの発生状況に合わせて)、流体の供給量が調整されるようになっている。言い換えれば、舵角が大きく取られてキャビテーションが多く発生するような場合には流体が多く供給され、舵角が小さくキャビテーションの発生が少ないような場合には流体の供給量が少なくされて、また舵角が0(ゼロ)でキャビテーションが発生していないような場合には流体の供給が停止されるようになっている。
【0046】
このように、必要に応じて必要な量だけ流体を供給することができるので、流体を無駄なく有効に利用することができる。また、流体を流体供給源に溜めておくために費やされるエネルギーを低減させる(たとえば空気圧縮機の稼働時間を短縮させる)ことができる。
【0047】
図6を用いて本発明に係るアジマス型推進器の第4実施形態を説明する。本実施形態において、キャビテーション緩衝手段410は、ストラット4の前縁部(図3,4参照)に設けられた複数個、たとえば12個の流体吹出孔111と、一端113dが水面よりも上方に位置して開口するとともに、他端がこれら流体吹出孔111と連通する空気供給管413とを主たる要素として構成されたものである。
【0048】
空気供給管413は、各流体吹出孔111に対応して設けられた枝管113aと、これら枝管113aの一端を結合するヘッダ113bと、その一端113dが水面よりも上方に位置して開口するとともにその他端がヘッダ113cに接続された空気主管113eとを有するものである。
また、空気主管113eの一端113dは、たとえば甲板上や船内機関室に配置され、ヘッダ113bおよび枝管113aはストラット4の内部に配置されている。空気主管113eは水面上とヘッダ113bとを適宜連通するように、甲板上や船内機関室およびストラット4内にまたがって(わたって)配置されている。
なお、図6に示すように、空気主管113eの一端113dは、上方からゴミや雨水等が進入しないように開口部が下方に向くように曲げられている。
【0049】
このような構成により、ストラット4の表面上に図10に示したような負圧が生じると、大気中の空気が空気主管113e→ヘッダ113b→枝管113aを通って、各流体吹出孔111から負圧の程度(大きさ)に応じて自然に流出することとなる。
各流体吹出孔111から空気が流れ出るようになると、ストラット4の負圧となる表面に沿って空気層が形成されることとなる。
この空気層はストラット表面と、前述した気泡bとの間に形成されこととなり、この空気層によって気泡bが消滅する(つぶれる)ことにより生じる騒音や衝撃圧を吸収(緩衝)することができるので、キャビテーションによる騒音や船体振動を低減させることができる。
【0050】
また、ストラット4上に生じた負圧の大きさに応じて大気中の空気が自然に空気主管113eの一端113dから吸い込まれて各流体吹出孔111に供給されるようになるので、図3および図5に示す流体供給源112、図5に示す制御器114、圧力センサ(あるいは加速度センサ)301,302、および舵角検出器303を省略することができ、構成を簡略化することができるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0051】
なお、図4を用いて説明した実施形態では、圧力センサ301,302が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば加速度センサとすることもできる。
この加速度センサは数百Hz〜数KHzの振幅をひろうものであり、ストラット4の表面における、キャビテーションにより生じた気泡bが消滅する(つぶれる)ときの振動を検出することができるものである。
したがって、このような加速度センサを用いてもストラット表面上に発生するキャビテーションを把握することができることとなる。
【0052】
また、図4を用いて説明した実施形態では、ストラット4とポッド2との接合部24近傍およびストラット4の後縁4bよりも船尾側(後方側)に位置する船底後部1に、それぞれ圧力センサ301,302を設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、いずれか一方のみに設けるようにすることもできる。
【0053】
さらに、上述してきたアジマス型推進器では、推進力を発揮するプロペラ5が後方(船尾側)に備えられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、推進力を発揮するプロペラ5が前方(船首側)に備えられているものにも当然適用可能である。
また、本発明はアジマス型推進器のみを具備する船舶だけに適用され得るものではなく、アジマス型推進器10の前方(上流側)に主機関により駆動・回転される主プロペラPを有するような船舶にも適用され得るものである。
上記のような船舶ではプロペラ5および/または主プロペラPがストラット4の上流側に位置しているため、これらプロペラ5および/または主プロペラPが回転することにより水流の速度が大きくなり、下流側に位置するアジマス型推進器のストラット4にキャビテーションが生じやすくなる。
したがって、このような船舶に本発明が適用されれば特に有利なものとなる。
【0054】
さらにまた、上述した第1実施形態ないし第3実施形態では、気泡bとストラット4の表面との間に流入させる流体を空気としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば窒素や二酸化炭素といった気体、あるいは周辺に豊富に存在する海水、または船内に搭載された造水器で作り出された雑用水などの液体などを利用することもできる。
【0055】
さらにまた、上述した実施形態ではキャビテーションが発生した場合にストラットの両側表面上に流体の膜が形成されることとなっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、キャビテーションが発生した、あるいは発生することが予想されるストラットの表面上にだけ流体の膜を形成させることももちろん可能である。
この場合、連通管113や空気供給管413にバルブを配置すればよいこととなる。具体的には、主管113cあるいは空気主管113eから、ストラット4内部の左舷側に配置されたヘッダ113bおよび右舷側に配置されたヘッダ113bに流入する管にバルブ(たとえば電磁弁など)をそれぞれ設け、前述した制御器114からの信号に基づいてこれらの弁を開閉させればよい。
すなわち、前述した圧力センサや加速度センサでキャビテーションが起こったことを検知あるいはキャビテーションが起こることが予想される場合、制御器114からこれらバルブに信号が送られてきて、それぞれのバルブが開閉されることとなる。たとえば、ストラット4の左舷側の表面上でキャビテーションが起こったあるいはキャビテーションが起こることが予想される場合、左舷側のバルブが開かれるとともに右舷側のバルブが閉じられることにより、ストラット4の左舷側表面にもに流体の膜が形成されることとなる。
これにより、必要な箇所にだけ流体の膜が形成されることとなって、流体を無駄なく有効に利用することができる。また、流体を流体供給源に溜めておくために費やされるエネルギーを最小限にとどめることができる。
【0056】
さらにまた、流体吹出孔111の配置・配列は図面に示すものに限定されるものでなく、必要に応じて適宜変更可能である。
たとえば、水深方向(図において上下方向)に一列に配置されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、たとえば二列以上に配置することもできる。また、二列以上とした場合には千鳥状に配置することももちろん可能である。
【0057】
さらにまた、プロペラ5が前方(船首側)に備えられているもの、すなわちプロペラ5がストラット4の上流側に位置しているものでは、ストラット4の片舷側にのみ流体吹出孔111を設けるようにすることもできる。たとえば、プロペラ5が船尾側から見て右回転(時計方向に回転)する場合、ストラット4の右舷側にだけ流体吹出孔111を設けるようにすることができる。
すなわち、プロペラ5が右回転することによりストラット4の左舷側にはプロペラ5による回転流が十分に当たった後、表面に沿って後方へと流れ去っていくため、キャビテーションの起こる可能性が低くなる。一方、ストラット4の右舷側にはプロペラ5による回転流が十分に当たらない(水の流れがストラット4の表面から離れる方向に向かう)ため、キャビテーションの起こる可能性が高くなる。
したがって、キャビテーションの起こる可能性が高いストラット4の右舷側にのみ流体吹出孔111を設けて、右舷側表面上にのみ流体の膜を形成させるようにすることもできる。
このように構成することにより、流体吹出孔111をストラット4上に製作するための作業工程および作業時間を短縮することができる。
また、枝管113aおよびヘッダ113bの数を半減させることができて、コストを大幅に削減することができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明のアジマス型推進器およびこれを備えた船舶によれば、以下の効果を奏する。
請求項1に記載のアジマス型推進器によれば、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧が、キャビテーション緩衝手段により低減あるいは緩和されることとなるので、騒音および船体振動を低減させることができる。
【0059】
請求項2に記載のアジマス型推進器によれば、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧はまずはじめに流体の流れに加わることとなり、ストラットの表面には直接加わらないようになっている、すなわち流体が緩衝材として使用されることとなる。
流体としては、たとえば空気や海水を使用することができるとともに、このような流体を緩衝材として使用することができて、ストラット表面に特別な装置を設ける必要が無いので、ランニングコストを抑制することができ、かつ設備費を低減させることができる。
【0060】
請求項3に記載のアジマス型推進器によれば、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて流体の膜で覆われることとなるので、キャビテーションがストラット上のどのような場所に発生しても、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧をキャビテーション緩衝手段により低減あるいは緩和することができて、騒音および船体振動を低減させることができる。
【0061】
請求項4に記載のアジマス型推進器によれば、流体吹出孔から流出する流体の量が制御器により調整され得るようになっているので、キャビテーションが多く出る場合には流体の量を多くし、キャビテーションが少ない場合には流体の量を減らすことができて、流体を無駄なく有効に利用することができる。
【0062】
請求項5に記載のアジマス型推進器によれば、ストラット表面における蒸気圧(あるいは圧力)、ストラットの後縁よりも船尾側に位置する船底部における圧力、船体および/またはストラットに生じる振動が、圧力センサおよび/または加速度センサで検知されるとともに、検知されたデータが制御器に送られるようになっているので、キャビテーションが起こったときあるいはキャビテーションが起こるおそれがあるときに流体を流体吹出孔から流出させることができるとともに、キャビテーションの発生状況(キャビテーションの多い少ない)に応じて流体を流体吹出孔から流出させることができて、装置全体の自動化を図ることができる。
【0063】
請求項6に記載のアジマス型推進器によれば、舵角検出器によりアジマス型推進器の取っている舵角がわかるようになっており、舵角の大小(キャビテーションの多い少ない)に応じて流体を流体吹出孔から流出させることができて、装置全体の自動化を図ることができる。
【0064】
請求項7に記載のアジマス型推進器によれば、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて空気層が形成され、この空気層によって気泡が消滅する(つぶれる)ことにより生じる騒音や衝撃圧を吸収(緩衝)することができるので、キャビテーションによる騒音や船体振動を低減させることができる。
【0065】
請求項8に記載のアジマス型推進器によれば、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて流体の膜で覆われることとなるので、キャビテーションがストラット上のどのような場所に発生しても、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧を流体の膜により低減させることができて、騒音および船体振動を低減させることができる。
【0066】
請求項9に記載のアジマス型推進器によれば、複雑な形状を有しその周りの流れが複雑となる部分、すなわちキャビテーションが発生しやすい部分に流体が多く流されて、その部分の膜厚が厚くなるようになっているので、騒音や衝撃圧をより効果的に吸収(緩衝)することができて、キャビテーションによる騒音や船体振動をより低減させることができる。
【0067】
請求項10に記載のアジマス型推進器を備えた船舶によれば、アジマス型推進器のストラットに発生したキャビテーションによる気泡がつぶれるときに生じる騒音や衝撃圧が、キャビテーション緩衝手段により軽減あるいは緩衝されることとなるので、騒音および船体振動を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるアジマス型推進器の第1実施形態を示す右側面図である。
【図2】図1に示すキャビテーション緩衝手段の概略構成図である。
【図3】本発明によるアジマス型推進器の第2実施形態を示す右側面図である。
【図4】本発明によるアジマス型推進器の第3実施形態を示す右側面図である。
【図5】図4に示すキャビテーション緩衝手段の概略構成図である。
【図6】本発明によるアジマス型推進器の第4実施形態を示す図であって、この実施形態におけるキャビテーション緩衝手段の概略構成図である。
【図7】本発明によるアジマス型推進器を、主プロペラを有する船舶に適用した例を説明するための図であって、船尾部分における右側面図である。
【図8】アジマス型推進器の取付状況を示す船舶(船尾部分)の右側面図である。
【図9】図8に示すアジマス型推進器の拡大図であって、(a)はアジマス型推進器の一部断面右側面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図10】図9(b)と同様の図であって、アジマス型推進器のストラットに発生するキャビテーションを説明するための図である。
【符号の説明】
1 船底後部(船体)
2 ポッド
4 ストラット
5 プロペラ
6 プロペラシャフト
10 アジマス型推進器
24 接合部
100 アジマス型推進器
110 キャビテーション緩衝手段
111 流体吹出孔
112 流体供給源
113 連通管
113d 一端
114 制御器
200 アジマス型推進器
210 キャビテーション緩衝手段
300 アジマス型推進器
301 圧力センサ/加速度センサ
302 圧力センサ/加速度センサ
303 舵角検出器
310 キャビテーション緩衝手段
410 キャビテーション緩衝手段
413 空気供給管
【発明の属する技術分野】
本発明は、アジマス(Azimuth)型推進器およびこれを備えた船舶に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な船舶においては、船尾に別体のプロペラと舵とを備えており、一方のプロペラによって推進力を発生し、他方の舵によって旋回等の操舵を行うように構成されている。
しかし、近年においては、上述した推進用のプロペラと操舵用の舵部とが一体化され、船体に対して全体が鉛直軸まわりに旋回可能に取り付けられたアジマス型推進器、または、アジマスプロペラ(Azimuth Propeller)と呼ばれる装置が開発されている。
【0003】
ここで、図8および図9に基づいて従来のアジマス型推進器の構成を簡単に説明する。なお、図8はアジマス型推進器の取付状況を示す船舶(船尾部分)の略図、図9(a)はアジマス型推進器の一部断面右側面図、図9(b)は図9(a)のA−A断面図であり、図中の符号1は船底後部(船体)、2はポッド、3は支柱、4はストラット、5はプロペラ、6はプロペラシャフト、7はステータ、8はロータ、9は電動機、10はアジマス型推進器である。
【0004】
アジマス型推進器10は、支柱3を介して、船底後部1に対し回動自在に取り付けられている。アジマス型推進器10は、推進力を発揮するプロペラ5を後方または前方に備え、内部に電動機9等のプロペラ駆動機構(駆動手段)を内蔵したポッド2と、このポッド2の上部に一体に固着され、断面を流線形(エアロフォイル型)としたストラット4とを具備して構成される。ストラット4の上部には鉛直方向の支柱3が取り付けられ、この支柱3の上端部側が船体側に設けられた旋回駆動機構(図示省略)に連結されて、支柱3、ストラット4、ポッド2、およびプロペラ5を一体的に回動させるようになっている。
このように構成されたアジマス型推進器10では、プロペラ5の回転によって推進力が発生して船舶を航走させ、船底後部1に対して推進器全体を回動させることによって操舵機能が得られ、船舶の針路方向を変換することができる。
【0005】
また、アジマス型推進器10には、図示のようにプロペラ5の駆動力を出力する電動機9がポッド2内に設置されたタイプと、船体側に設置された電動機等の駆動源(図示省略)から駆動力を受けるタイプとがある。図9に示したアジマス型推進器10は、中空としたポッド2の内壁に固定されているステータ7に対し、プロペラシャフト6と一体的にロータ8が回転するように構成されたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなアジマス型推進器10を旋回駆動機構により、たとえば図10に示すように回動させた場合(すなわち、針路を右に変えるために、たとえば舵輪(操舵装置)を右に切った場合)、ストラット4が水の流れに対して迎角を有することとなる。このとき、図10に示すように図の上側(水の流れに対して背面側)の蒸気圧が二点鎖線に示すように下がって(負圧となり)キャビテーション(空洞現象)による気泡bが生じることがある。
気泡bは下流側に流れて再び圧力の高い領域に入ると押しつぶされるように消滅(崩壊)する。この気泡bの消滅は極めて瞬間的であるため、大きな衝撃を伴い、騒音と船体振動の原因となる。
また、この状態が長時間に及ぶと、絶えず繰り返し応力を加えられている状態にあるストラット4は、しだいに疲労によってその表面をえぐられるように侵食(エロージョン)され、最悪の場合には破壊に至るおそれがある。
【0007】
一方、将来的にはアジマス型推進器10による速力の増加が望まれており、高速でアジマス型推進器10の舵角を取った場合には、キャビテーションの発生する可能性は高くなる。
また、高速航行中においては、針路保持(保針)のために取られる小さい舵角でも、風浪の影響によってキャビテーションが発生してしまうことが懸念されている。すなわち、高速で直進中の船舶が左舷側から風浪を受けた場合、舵を若干左に切って(小さい舵角を取って)保針させることがある。このとき、船体の左側から風浪を受けているため、左舷側から右舷側に向かって船体が力(風圧や水圧)を受けるようになる。これにより、舵の役目をするストラット4の右舷側表面の流線密度が密となって、キャビテーションを起こしてしまうおそれがある。言い換えれば、微小舵角でも高速航行中には風浪の影響によってストラット4の表面にキャビテーションが発生してしまうおそれがある。
【0008】
しかしながら、現在までのところアジマス型推進器10のストラット4に発生したキャビテーションによる気泡bがつぶれるときに生じた騒音や船体振動を軽減あるいは緩衝するための手段は、講じられていない。
これに近い技術としては、冒頭で述べた船尾に別体のプロペラと舵とを備えた一般的な船舶において、推進用プロペラと船底外板との間に空気の膜を形成させて、プロペラの回転により発生するキャビテーションによる騒音や船体振動を緩衝させるものがある(たとえば、特許文献1,2参照)。
【0009】
〔特許文献1〕
特開平10−71993号公報(図2および図3)
〔特許文献2〕
特開2000−255485号公報(図3)
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、アジマス型推進器10のストラット4に発生したキャビテーションによる気泡bがつぶれるときに生じる騒音や衝撃圧を軽減あるいは緩衝して、騒音や船体振動を低減させることができるアジマス型推進器およびこれを備えた船舶を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のアジマス型推進器およびこれを備えた船舶では、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載のアジマス型推進器によれば、船体に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラットと、該ストラットに設けられるとともに内部に駆動手段からの動力が伝達されるプロペラシャフトを有するポッドと、前記プロペラシャフトに設けられたプロペラと、を具備するアジマス型推進器において、前記ストラットを流れに対して傾けたときに発生する気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧を緩和するためのキャビテーション緩衝手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
このアジマス型推進器においては、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧が、キャビテーション緩衝手段により低減あるいは緩和されることとなる。
【0013】
請求項2に記載のアジマス型推進器によれば、前記キャビテーション緩衝手段は、前記気泡と前記ストラットの表面との間に流体の流れを生じさせるものであることを特徴とする。
【0014】
このアジマス型推進器においては、気泡とストラットの表面との間に流体の流れが形成されており、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧が流体により低減あるいは緩和されるようになっている。
すなわち、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧はまずはじめに流体の流れに加わることとなり、ストラットの表面には直接加わらないようになっている。
【0015】
請求項3に記載のアジマス型推進器によれば、前記キャビテーション緩衝手段は、前記ストラットの前縁部に設けられた複数個の流体吹出孔と、これら流体吹出孔に前記流体を供給する流体供給源と、前記複数個の流体吹出孔および前記流体供給源とを連通する連通管と、を具備するものであることを特徴とする。
【0016】
このアジマス型推進器においては、流体供給源から連通管を介してストラットの前縁部に設けられた流体吹出孔に流体が導かれ、ストラットの表面上に流体の膜(フィルム)が形成されることとなる。
すなわち、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて流体の膜で覆われることとなる。
【0017】
請求項4に記載のアジマス型推進器によれば、前記流体供給源から前記連通管に供給される流体の流量を制御する制御器が設けられていることを特徴とする。
【0018】
このアジマス型推進器においては、流体吹出孔から流出する流体の量が制御器により調整され得るようになっている。
すなわち、流体吹出孔から流出する流体の量が多くなると膜厚が厚くなり、反対に流体吹出孔から流出する流体の量が少なくなると膜厚が薄くなる。
【0019】
請求項5に記載のアジマス型推進器によれば、前記ストラットと前記ポッドとの接合部近傍および/または前記ストラットの後縁よりも船尾側に位置する船底部には、少なくとも1つの圧力センサおよび/または加速度センサが設けられているとともに、これら圧力センサおよび/または加速度センサで得られたデータは前記制御器に伝送されることを特徴とする。
【0020】
このアジマス型推進器においては、ストラットとポッドとの接合部近傍および/またはストラットの後縁よりも船尾側に位置する船底部に、圧力センサおよび/または加速度センサが設けられているとともに、これら圧力センサおよび/または加速度センサで得られたデータが制御器に伝送されるようになっている。
すなわち、ストラット表面における蒸気圧(あるいは圧力)、ストラットの後縁よりも船尾側に位置する船底部における圧力、船体および/またはストラットに生じる振動が、圧力センサおよび/または加速度センサで検知されるとともに、検知されたデータが制御器に送られるようになっている。
【0021】
請求項6に記載のアジマス型推進器によれば、前記ストラットの舵角を検出する舵角検出器が設けられているとともに、この舵角検出器で得られたデータは前記制御器に伝送されることを特徴とする。
【0022】
このアジマス型推進器においては、舵角検出器によりアジマス型推進器の取っている舵角がわかるようになっている。
すなわち、船首尾線とストラットの前縁および後縁を結ぶ線とのなす角度が検出され得るようになっている。
【0023】
請求項7に記載のアジマス型推進器によれば、前記キャビテーション緩衝手段は、前記ストラットの前縁部に設けられた複数個の流体吹出孔と、一端が水面よりも上方に位置して開口するとともに他端が前記複数個の流体吹出孔と連通する空気供給管と、を具備するものであることを特徴とする。
【0024】
このアジマス型推進器によれば、大気中から空気供給管を介してストラットの前縁部に設けられた流体吹出孔に空気が導かれ、ストラットの表面上に空気の膜(フィルム)が形成されることとなる。
すなわち、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて空気層が形成されることとなる。
【0025】
請求項8に記載のアジマス型推進器によれば、船体に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラットと、該ストラットに設けられるとともに内部に駆動手段からの動力が伝達されるプロペラシャフトを有するポッドと、前記プロペラシャフトに設けられたプロペラと、を具備するアジマス型推進器において、前記ストラットの前縁部に、流体が流出する複数個の流体吹出孔が設けられていることを特徴とする。
【0026】
このアジマス型推進器によれば、ストラットの前縁部に設けられた流体吹出孔から流体が流出し、ストラットの表面上に流体の膜(フィルム)が形成されることとなる。
すなわち、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて流体の膜で覆われることとなる。
【0027】
請求項9に記載のアジマス型推進器によれば、前記複数個の流体吹出孔は、前記ストラットと前記ポッドとの接合部の側の分布が密となるように設けられていることを特徴とする。
【0028】
このアジマス型推進器によれば、ストラットとポッドとの接合部に近い側に、流体吹出孔が数多く分布するように配置されている。
すなわち、複雑な形状を有しその周りの流れが複雑となる部分に流体が多く流されて、膜厚が厚くなるようになっている。
【0029】
請求項10に記載のアジマス型推進器を備えた船舶によれば、請求項1から8のいずれか一項に記載のアジマス型推進器と、針路を変更するための操舵装置と、前記プロペラの回転数を変更するための回転数変更手段と、を具備してなることを特徴とする。
【0030】
このアジマス型推進器を備えた船舶によれば、アジマス型推進器のストラットに発生したキャビテーションによる気泡がつぶれるときに生じる騒音や衝撃圧が、キャビテーション緩衝手段により軽減あるいは緩衝されることとなる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るアジマス型推進器の第1実施形態を図1および図2に基づいて説明する。なお、上述した従来技術と同一の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図1に示すように、本発明によるアジマス型推進器100は、たとえば船底後部(船体)1に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラット4と、このストラット4に設けられるとともに内部に駆動手段(図示せず)からの動力が伝達されるプロペラシャフト6を有するポッド2と、プロペラシャフト6に設けられたプロペラ5と、キャビテーション緩衝手段110とを主たる要素として構成されたものである。
【0032】
キャビテーション緩衝手段110は、ストラット4を流れに対して傾けたときに発生する気泡b(図10参照)が崩壊するときに生じる衝撃圧を軽減あるいは緩和するためのものであり、気泡bとストラット4の表面との間に流体を、たとえば膜状に生じさせるものである。イメージとしてはガスタービンなどのタービン翼に採用されるフィルム冷却(film cooling)のようなものである。
【0033】
図2に示すように、キャビテーション緩衝手段110は、ストラット4の前縁部(図1参照)に設けられた複数個、たとえば10個の流体吹出孔111と、これら流体吹出孔111に流体を供給する流体供給源112と、これら流体吹出孔111と流体供給源112とを連通する連通管113とを主たる要素として構成されたものである。
【0034】
流体吹出孔111はそれぞれ、たとえば直径5mmを有する平面視円形の孔であり、ストラット4の板厚方向に貫通されたものである。
また、これら流体吹出孔111は、前縁4aからたとえば5%(ストラット4の前縁4aと後縁4bとを結び、水面と平行となる直線の長さを1とした場合の前縁4aから5/100のところ)の位置に、たとえば15mm間隔で一直線上に配置されたものである。
なお、図1および図2にはストラット4の右舷側表面に設けられた流体吹出孔111のみを図示しているが、実際には左舷側表面にも同数の流体吹出孔111が設けられている。
【0035】
流体供給源112は、たとえば所定の圧力に高められた空気を溜めておく空気蓄圧器であり、別途用意された空気圧縮機により加圧された空気が供給されるようになっている。
【0036】
連通管113は、各流体吹出孔111に対応して設けられた枝管113aと、これら枝管113aの一端を結合するヘッダ113bと、流体供給源112とヘッダ113bとを結合する主管113cとを有するものである。
また、流体供給源112はたとえば船内機関室に配置され、ヘッダ113bおよび枝管113aはストラット4の内部に配置されている。主管113cは流体供給源112とヘッダ113bとを適宜連通するように、船内機関室およびストラット4内にまたがって(わたって)配置されている。
【0037】
このような構成により、流体供給源112内の流体(たとえば空気)は主管113c→ヘッダ113b→枝管113aを通って各流体吹出孔111から流出していくこととなる。
各流体吹出孔111から、流体が流れ出るようになると、ストラット4の両表面に沿って流体の膜(たとえば空気層)が形成されることとなる。
この流体の膜はストラット表面と、前述した気泡bとの間に形成されこととなり、この流体の膜によって気泡bが消滅する(つぶれる)ことにより生じる騒音や衝撃圧を吸収(緩衝)することができるので、キャビテーションによる騒音や船体振動を低減させることができる。
【0038】
図3を用いて本発明に係るアジマス型推進器の第2実施形態を説明する。
本実施形態のものは、流体吹出孔111がストラット4とポッド2との接合部24の側に多く配置されるように構成されている点で上述した第1実施形態のものと異なる。
すなわち流体吹出孔111は、ポッド2に近い側(図4において下側)に多く配置される。言い換えればポッド2に近い側(図4において下側)の分布が密となるように配置される。
【0039】
図3において流体吹出孔111は全部で12個配置されている。これら流体吹出孔111はそれぞれ、たとえば直径5mmを有する平面視円形の孔であり、ストラット4の板厚方向に貫通されたものである。
また、これら流体吹出孔111は、前縁4aからたとえば5%(ストラット4の前縁4aと後縁4bとを結び、水面と平行となる直線の長さを1とした場合の前縁4aから5/100のところ)の位置に一直線上に配置されたものである。図3において上方に位置する8個の流体吹出孔111は、たとえば10mm間隔で配置されており、上方に位置する5個の流体吹出孔111は、たとえば20mm間隔で配置されている。
なお、第1実施形態同様、実際には左舷側表面にも同数の流体吹出孔111が設けられている。
【0040】
このように複雑な形状を有する接合部24に近い側、すなわち流線がより密な状態となってキャビテーションの起こる可能性が高い部分に流体吹出孔111を多く設けることにより、気泡bが消滅する(つぶれる)ことによって生じる騒音や衝撃圧をより効果的に吸収(緩衝)することができるので、キャビテーションによる騒音や船体振動をより低減させることができる。
【0041】
図4を用いて本発明に係るアジマス型推進器の第3実施形態を説明する。
本実施形態のものは、ストラット4とポッド2との接合部24近傍でかつ流体吹出孔111の船尾側に位置するストラット4の表面、およびストラット4の後縁4bよりも船尾側(後方側)に位置する船底後部1に、それぞれ圧力センサ301,302が設けられているという点で図3に示す第2実施形態のものと異なる。なお、図4に示す圧力センサ301の反対側(左舷側)にも図示しない圧力センサが設けられている。
この圧力センサは数百Hz〜数KHzの振幅をひろうものであり、ストラット4の表面における、キャビテーションにより生じた気泡bが消滅する(つぶれる)とき生じる衝撃圧による圧力変動を検出することができるものである。
また、図5に示すように、流体供給源112から連通管113に供給される流体の流量を制御する制御器114が設けられており、流体供給源112は制御器114からの信号により作動するようになっている。
すなわち、流体供給源112から連通管113に供給される流体の量は、制御器114からの信号に基づいて調整されるようになっている。たとえば、流体供給源112が、上述したような空気蓄圧器であるような場合、この空気蓄圧器の出口側に設けられたバルブの開度を調整することにより流体の流量が調整されるようになっている。
【0042】
一方、これら圧力センサ301,302で得られたデータは、制御器114に伝送されるようになっている。したがって、圧力センサ301,302から制御器114に送られてきたデータが制御器114で処理された後、これらデータに応じて制御器114から流体供給源112に信号が送られて、その信号に基づいて流体供給源112から連通管113に流体が供給されるようになっている。
すなわち、キャビテーションの発生状況に合わせて、流体の供給量が調整されるようになっている。言い換えれば、圧力センサ301,302で得られた圧力変動が高く、キャビテーションが多く発生するような場合には流体が多く供給され、圧力センサ301,302で得られた圧力変動が低く、キャビテーションの発生が少ないような場合には流体の供給量が少なくされて、またキャビテーションが発生していないような場合には流体の供給が停止されるようになっている。
【0043】
このように、必要に応じて必要な量だけ流体を供給することができるので、流体を無駄なく有効に利用することができる。また、流体を流体供給源に溜めておくために費やされるエネルギーを低減させる(たとえば空気圧縮機の稼働時間を短縮させる)ことができる。
【0044】
また、これら圧力センサ301,302とともに、あるいはこれら圧力センサ301,302の代わりにアジマス型推進器300(図4参照)の舵角を検出する舵角検出器303を設けることもできる。
この舵角検出器303は、鉛直軸回りに旋回(あるいは回動)するアジマス型推進器300の旋回角度(あるいは回動角度)、すなわち船首尾線とストラット4の前縁4aおよび後縁4bを結ぶ線とのなす角度(舵角)を検出するものである。
前述した圧力センサ301,302と同様、舵角検出器303で得られたデータは、制御器114に伝送されるようになっている。
【0045】
すなわち舵角に応じて(キャビテーションの発生状況に合わせて)、流体の供給量が調整されるようになっている。言い換えれば、舵角が大きく取られてキャビテーションが多く発生するような場合には流体が多く供給され、舵角が小さくキャビテーションの発生が少ないような場合には流体の供給量が少なくされて、また舵角が0(ゼロ)でキャビテーションが発生していないような場合には流体の供給が停止されるようになっている。
【0046】
このように、必要に応じて必要な量だけ流体を供給することができるので、流体を無駄なく有効に利用することができる。また、流体を流体供給源に溜めておくために費やされるエネルギーを低減させる(たとえば空気圧縮機の稼働時間を短縮させる)ことができる。
【0047】
図6を用いて本発明に係るアジマス型推進器の第4実施形態を説明する。本実施形態において、キャビテーション緩衝手段410は、ストラット4の前縁部(図3,4参照)に設けられた複数個、たとえば12個の流体吹出孔111と、一端113dが水面よりも上方に位置して開口するとともに、他端がこれら流体吹出孔111と連通する空気供給管413とを主たる要素として構成されたものである。
【0048】
空気供給管413は、各流体吹出孔111に対応して設けられた枝管113aと、これら枝管113aの一端を結合するヘッダ113bと、その一端113dが水面よりも上方に位置して開口するとともにその他端がヘッダ113cに接続された空気主管113eとを有するものである。
また、空気主管113eの一端113dは、たとえば甲板上や船内機関室に配置され、ヘッダ113bおよび枝管113aはストラット4の内部に配置されている。空気主管113eは水面上とヘッダ113bとを適宜連通するように、甲板上や船内機関室およびストラット4内にまたがって(わたって)配置されている。
なお、図6に示すように、空気主管113eの一端113dは、上方からゴミや雨水等が進入しないように開口部が下方に向くように曲げられている。
【0049】
このような構成により、ストラット4の表面上に図10に示したような負圧が生じると、大気中の空気が空気主管113e→ヘッダ113b→枝管113aを通って、各流体吹出孔111から負圧の程度(大きさ)に応じて自然に流出することとなる。
各流体吹出孔111から空気が流れ出るようになると、ストラット4の負圧となる表面に沿って空気層が形成されることとなる。
この空気層はストラット表面と、前述した気泡bとの間に形成されこととなり、この空気層によって気泡bが消滅する(つぶれる)ことにより生じる騒音や衝撃圧を吸収(緩衝)することができるので、キャビテーションによる騒音や船体振動を低減させることができる。
【0050】
また、ストラット4上に生じた負圧の大きさに応じて大気中の空気が自然に空気主管113eの一端113dから吸い込まれて各流体吹出孔111に供給されるようになるので、図3および図5に示す流体供給源112、図5に示す制御器114、圧力センサ(あるいは加速度センサ)301,302、および舵角検出器303を省略することができ、構成を簡略化することができるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0051】
なお、図4を用いて説明した実施形態では、圧力センサ301,302が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば加速度センサとすることもできる。
この加速度センサは数百Hz〜数KHzの振幅をひろうものであり、ストラット4の表面における、キャビテーションにより生じた気泡bが消滅する(つぶれる)ときの振動を検出することができるものである。
したがって、このような加速度センサを用いてもストラット表面上に発生するキャビテーションを把握することができることとなる。
【0052】
また、図4を用いて説明した実施形態では、ストラット4とポッド2との接合部24近傍およびストラット4の後縁4bよりも船尾側(後方側)に位置する船底後部1に、それぞれ圧力センサ301,302を設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、いずれか一方のみに設けるようにすることもできる。
【0053】
さらに、上述してきたアジマス型推進器では、推進力を発揮するプロペラ5が後方(船尾側)に備えられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、推進力を発揮するプロペラ5が前方(船首側)に備えられているものにも当然適用可能である。
また、本発明はアジマス型推進器のみを具備する船舶だけに適用され得るものではなく、アジマス型推進器10の前方(上流側)に主機関により駆動・回転される主プロペラPを有するような船舶にも適用され得るものである。
上記のような船舶ではプロペラ5および/または主プロペラPがストラット4の上流側に位置しているため、これらプロペラ5および/または主プロペラPが回転することにより水流の速度が大きくなり、下流側に位置するアジマス型推進器のストラット4にキャビテーションが生じやすくなる。
したがって、このような船舶に本発明が適用されれば特に有利なものとなる。
【0054】
さらにまた、上述した第1実施形態ないし第3実施形態では、気泡bとストラット4の表面との間に流入させる流体を空気としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば窒素や二酸化炭素といった気体、あるいは周辺に豊富に存在する海水、または船内に搭載された造水器で作り出された雑用水などの液体などを利用することもできる。
【0055】
さらにまた、上述した実施形態ではキャビテーションが発生した場合にストラットの両側表面上に流体の膜が形成されることとなっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、キャビテーションが発生した、あるいは発生することが予想されるストラットの表面上にだけ流体の膜を形成させることももちろん可能である。
この場合、連通管113や空気供給管413にバルブを配置すればよいこととなる。具体的には、主管113cあるいは空気主管113eから、ストラット4内部の左舷側に配置されたヘッダ113bおよび右舷側に配置されたヘッダ113bに流入する管にバルブ(たとえば電磁弁など)をそれぞれ設け、前述した制御器114からの信号に基づいてこれらの弁を開閉させればよい。
すなわち、前述した圧力センサや加速度センサでキャビテーションが起こったことを検知あるいはキャビテーションが起こることが予想される場合、制御器114からこれらバルブに信号が送られてきて、それぞれのバルブが開閉されることとなる。たとえば、ストラット4の左舷側の表面上でキャビテーションが起こったあるいはキャビテーションが起こることが予想される場合、左舷側のバルブが開かれるとともに右舷側のバルブが閉じられることにより、ストラット4の左舷側表面にもに流体の膜が形成されることとなる。
これにより、必要な箇所にだけ流体の膜が形成されることとなって、流体を無駄なく有効に利用することができる。また、流体を流体供給源に溜めておくために費やされるエネルギーを最小限にとどめることができる。
【0056】
さらにまた、流体吹出孔111の配置・配列は図面に示すものに限定されるものでなく、必要に応じて適宜変更可能である。
たとえば、水深方向(図において上下方向)に一列に配置されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、たとえば二列以上に配置することもできる。また、二列以上とした場合には千鳥状に配置することももちろん可能である。
【0057】
さらにまた、プロペラ5が前方(船首側)に備えられているもの、すなわちプロペラ5がストラット4の上流側に位置しているものでは、ストラット4の片舷側にのみ流体吹出孔111を設けるようにすることもできる。たとえば、プロペラ5が船尾側から見て右回転(時計方向に回転)する場合、ストラット4の右舷側にだけ流体吹出孔111を設けるようにすることができる。
すなわち、プロペラ5が右回転することによりストラット4の左舷側にはプロペラ5による回転流が十分に当たった後、表面に沿って後方へと流れ去っていくため、キャビテーションの起こる可能性が低くなる。一方、ストラット4の右舷側にはプロペラ5による回転流が十分に当たらない(水の流れがストラット4の表面から離れる方向に向かう)ため、キャビテーションの起こる可能性が高くなる。
したがって、キャビテーションの起こる可能性が高いストラット4の右舷側にのみ流体吹出孔111を設けて、右舷側表面上にのみ流体の膜を形成させるようにすることもできる。
このように構成することにより、流体吹出孔111をストラット4上に製作するための作業工程および作業時間を短縮することができる。
また、枝管113aおよびヘッダ113bの数を半減させることができて、コストを大幅に削減することができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明のアジマス型推進器およびこれを備えた船舶によれば、以下の効果を奏する。
請求項1に記載のアジマス型推進器によれば、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧が、キャビテーション緩衝手段により低減あるいは緩和されることとなるので、騒音および船体振動を低減させることができる。
【0059】
請求項2に記載のアジマス型推進器によれば、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧はまずはじめに流体の流れに加わることとなり、ストラットの表面には直接加わらないようになっている、すなわち流体が緩衝材として使用されることとなる。
流体としては、たとえば空気や海水を使用することができるとともに、このような流体を緩衝材として使用することができて、ストラット表面に特別な装置を設ける必要が無いので、ランニングコストを抑制することができ、かつ設備費を低減させることができる。
【0060】
請求項3に記載のアジマス型推進器によれば、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて流体の膜で覆われることとなるので、キャビテーションがストラット上のどのような場所に発生しても、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧をキャビテーション緩衝手段により低減あるいは緩和することができて、騒音および船体振動を低減させることができる。
【0061】
請求項4に記載のアジマス型推進器によれば、流体吹出孔から流出する流体の量が制御器により調整され得るようになっているので、キャビテーションが多く出る場合には流体の量を多くし、キャビテーションが少ない場合には流体の量を減らすことができて、流体を無駄なく有効に利用することができる。
【0062】
請求項5に記載のアジマス型推進器によれば、ストラット表面における蒸気圧(あるいは圧力)、ストラットの後縁よりも船尾側に位置する船底部における圧力、船体および/またはストラットに生じる振動が、圧力センサおよび/または加速度センサで検知されるとともに、検知されたデータが制御器に送られるようになっているので、キャビテーションが起こったときあるいはキャビテーションが起こるおそれがあるときに流体を流体吹出孔から流出させることができるとともに、キャビテーションの発生状況(キャビテーションの多い少ない)に応じて流体を流体吹出孔から流出させることができて、装置全体の自動化を図ることができる。
【0063】
請求項6に記載のアジマス型推進器によれば、舵角検出器によりアジマス型推進器の取っている舵角がわかるようになっており、舵角の大小(キャビテーションの多い少ない)に応じて流体を流体吹出孔から流出させることができて、装置全体の自動化を図ることができる。
【0064】
請求項7に記載のアジマス型推進器によれば、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて空気層が形成され、この空気層によって気泡が消滅する(つぶれる)ことにより生じる騒音や衝撃圧を吸収(緩衝)することができるので、キャビテーションによる騒音や船体振動を低減させることができる。
【0065】
請求項8に記載のアジマス型推進器によれば、ストラットの表面が前縁部から後縁にかけて流体の膜で覆われることとなるので、キャビテーションがストラット上のどのような場所に発生しても、気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧を流体の膜により低減させることができて、騒音および船体振動を低減させることができる。
【0066】
請求項9に記載のアジマス型推進器によれば、複雑な形状を有しその周りの流れが複雑となる部分、すなわちキャビテーションが発生しやすい部分に流体が多く流されて、その部分の膜厚が厚くなるようになっているので、騒音や衝撃圧をより効果的に吸収(緩衝)することができて、キャビテーションによる騒音や船体振動をより低減させることができる。
【0067】
請求項10に記載のアジマス型推進器を備えた船舶によれば、アジマス型推進器のストラットに発生したキャビテーションによる気泡がつぶれるときに生じる騒音や衝撃圧が、キャビテーション緩衝手段により軽減あるいは緩衝されることとなるので、騒音および船体振動を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるアジマス型推進器の第1実施形態を示す右側面図である。
【図2】図1に示すキャビテーション緩衝手段の概略構成図である。
【図3】本発明によるアジマス型推進器の第2実施形態を示す右側面図である。
【図4】本発明によるアジマス型推進器の第3実施形態を示す右側面図である。
【図5】図4に示すキャビテーション緩衝手段の概略構成図である。
【図6】本発明によるアジマス型推進器の第4実施形態を示す図であって、この実施形態におけるキャビテーション緩衝手段の概略構成図である。
【図7】本発明によるアジマス型推進器を、主プロペラを有する船舶に適用した例を説明するための図であって、船尾部分における右側面図である。
【図8】アジマス型推進器の取付状況を示す船舶(船尾部分)の右側面図である。
【図9】図8に示すアジマス型推進器の拡大図であって、(a)はアジマス型推進器の一部断面右側面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図10】図9(b)と同様の図であって、アジマス型推進器のストラットに発生するキャビテーションを説明するための図である。
【符号の説明】
1 船底後部(船体)
2 ポッド
4 ストラット
5 プロペラ
6 プロペラシャフト
10 アジマス型推進器
24 接合部
100 アジマス型推進器
110 キャビテーション緩衝手段
111 流体吹出孔
112 流体供給源
113 連通管
113d 一端
114 制御器
200 アジマス型推進器
210 キャビテーション緩衝手段
300 アジマス型推進器
301 圧力センサ/加速度センサ
302 圧力センサ/加速度センサ
303 舵角検出器
310 キャビテーション緩衝手段
410 キャビテーション緩衝手段
413 空気供給管
Claims (10)
- 船体に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラットと、該ストラットに設けられるとともに内部に駆動手段からの動力が伝達されるプロペラシャフトを有するポッドと、前記プロペラシャフトに設けられたプロペラと、を具備するアジマス型推進器において、
前記ストラットを流れに対して傾けたときに発生する気泡が崩壊するときに生じる衝撃圧を緩和するためのキャビテーション緩衝手段が設けられていることを特徴とするアジマス型推進器。 - 前記キャビテーション緩衝手段は、前記気泡と前記ストラットの表面との間に流体の流れを生じさせるものであることを特徴とする請求項1に記載のアジマス型推進器。
- 前記キャビテーション緩衝手段は、前記ストラットの前縁部に設けられた複数個の流体吹出孔と、これら流体吹出孔に前記流体を供給する流体供給源と、前記複数個の流体吹出孔および前記流体供給源とを連通する連通管と、を具備するものであることを特徴とする請求項2に記載のアジマス型推進器。
- 前記流体供給源から前記連通管に供給される流体の流量を制御する制御器が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のアジマス型推進器。
- 前記ストラットと前記ポッドとの接合部近傍および/または前記ストラットの後縁よりも船尾側に位置する船底部には、少なくとも1つの圧力センサおよび/または加速度センサが設けられているとともに、これら圧力センサおよび/または加速度センサで得られたデータは前記制御器に伝送されることを特徴とする請求項4に記載のアジマス型推進器。
- 前記ストラットの舵角を検出する舵角検出器が設けられているとともに、この舵角検出器で得られたデータは前記制御器に伝送されることを特徴とする請求項4に記載のアジマス型推進器。
- 前記キャビテーション緩衝手段は、前記ストラットの前縁部に設けられた複数個の流体吹出孔と、一端が水面よりも上方に位置して開口するとともに他端が前記複数個の流体吹出孔と連通する空気供給管と、を具備するものであることを特徴とする請求項2に記載のアジマス型推進器。
- 船体に鉛直軸まわりに旋回可能に設けられるストラットと、該ストラットに設けられるとともに内部に駆動手段からの動力が伝達されるプロペラシャフトを有するポッドと、前記プロペラシャフトに設けられたプロペラと、を具備するアジマス型推進器において、
前記ストラットの前縁部に、流体が流出する複数個の流体吹出孔が設けられていることを特徴とするアジマス型推進器。 - 前記複数個の流体吹出孔は、前記ストラットと前記ポッドとの接合部の側の分布が密となるように設けられていることを特徴とする請求項3から8のいずれか一項に記載のアジマス型推進器。
- 請求項1から9のいずれか一項に記載のアジマス型推進器と、針路を変更するための操舵装置と、前記プロペラの回転数を変更するための回転数変更手段と、を具備してなることを特徴とする船舶。
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2002
- 2002-08-28 JP JP2002248959A patent/JP2004082930A/ja not_active Withdrawn
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