JP3675089B2 - 画像表示装置の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示面が平面パネルと接着樹脂層と前面パネルとの多層構造で構成されている画像表示装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の画像表示装置として、陰極線管、液晶パネル、プラズマディスプレイ等がある。通常、陰極線管は画像表示面が湾曲しているが、特にコンピュータディスプレイ等、高解像度で、かつ画面全域で歪みの少ない画像表示を目的として画像表示面が平面であるものが開発されている。接着樹脂層を介して平面パネルに重ねられた前面パネルは、画像表示面の補強のためだけでなく、外部からの光の反射を防止する機能や帯電を防止する機能をも備えていることが多い。
【0003】
従来、画像表示面を構成する平面パネルと接着樹脂層と前面パネルとの多層構造は以下のような製造方法によって実現していた。即ち、平面パネルの周辺部にスペーサを配置して、その上から前面パネルを載置し、その状態で平面パネルと前面パネルとの外周部の隙間を樹脂テープおよび高粘度のシール用樹脂で塞ぎ、一部に設けた開口部から低粘度の接着樹脂を注入して画像表示面と前面パネルとの隙間空間を充填する。この後、接着樹脂を硬化させることにより、平面パネル、接着樹脂層、及び前面パネルからなる多層構造が形成される(例えば特開平6−20598号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の製造方法には以下のような問題があり、改善が要望されていた。まず、平面パネルと前面パネルとの周辺部の隙間を高粘度のシール用樹脂で塞ぐ(シールする)方法では、通常30分から90分間程度かかる紫外線や加熱による樹脂硬化工程が、シール用樹脂と接着樹脂とについて2回必要である。
【0005】
一方、平面パネルと前面パネルとの周辺部の隙間を樹脂テープによってシールする方法では、シールが不完全になり注入した接着樹脂が硬化前に隙間から漏れ出るおそれがある。
【0006】
さらに、共通の問題として、接着樹脂を平面パネルと前面パネルとの狭い隙間に注入するのに時間がかかること、接着樹脂層に気泡が発生しやすいこと、周辺部まで十分に樹脂が行き渡るように樹脂の粘度管理を厳密に行う必要があること等、生産効率面での問題が多くあった。
【0007】
本発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、画像表示装置の画像表示面の平面パネル、接着樹脂層、及び前面パネルからなる多層構造を効率的に形成することができ、しかも接着樹脂による剥離等の品質不良が発生しにくい画像表示装置の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による画像表示装置の製造方法は、画像表示面が平面パネルと接着樹脂層と前面パネルとの多層構造で構成されている画像表示装置の製造方法であって、前記平面パネルの表面に前記接着樹脂層を形成する工程と、前記前面パネルの一辺側を前記接着樹脂層に当接させるとともに前記前面パネルを前記平面パネルに対して傾斜させた後、前記前面パネルを前記平面パネルに重ねる工程と、前記接着樹脂層に前記前面パネルが重ねられた後、前記接着樹脂層を硬化させる工程とを備え、前記接着樹脂層を形成する工程は、前記平面パネルの表面に前記接着樹脂を塗布する手段と、前記平面パネルの表面に塗布された前記接着樹脂の層厚を前記前面パネルの一辺側よりそれとは反対側が薄くなるように前記平面パネルを傾斜させる傾斜手段とを有する。
【0009】
この画像表示装置の製造方法によれば、接着樹脂層に前面パネルを重ねる前に接着樹脂を注入されるので、厳密に接着樹脂の粘度管理を行うことなく平面パネル周辺部まで十分に接着樹脂が行き渡るとともに、接着樹脂の注入時間が短縮される。また、樹脂硬化行程が接着樹脂のみの1回に短縮され、さらに、接着樹脂を形成する工程において、前面パネルの一辺側を当接させる側の接着樹脂の層厚よりそれと反対側の接着樹脂の層厚が薄くなるので、パネル間に気泡が発生しにくい。
【0010】
また、本発明による画像表示装置の製造方法は、画像表示面が平面パネルと接着樹脂層と前面パネルとの多層構造で構成されている画像表示装置の製造方法であって、前記平面パネルの表面に前記接着樹脂層を形成する工程と、前記平面パネルの表面に形成された前記接着樹脂層に前記前面パネルを重ねる工程と、前記接着樹脂層に前記前面パネルが重ねられた後、前記接着樹脂層を硬化させる工程とを備え、前記前面パネルを重ねる工程が、前記前面パネルの一辺側を前記接着樹脂層に当接させるとともに前記前面パネルを前記平面パネルに対して傾斜させた状態で保持し、その後、前記前面パネルを前記前面パネルと前記接着樹脂層との当接部を支点に前記傾斜が小さくなる方向に回動し、前記前面パネルと前記接着樹脂層との接触距離が、前記接触距離方向の前面パネル幅の1/2〜3/4になるまで前記前面パネルを保持する。
【0011】
この画像表示装置の製造方法によれば、前記前面パネルと前記接着樹脂層との接触距離が、前記接触距離方向の前面パネル幅の1/2〜3/4になるまで前記前面パネルを保持するので、パネル間に気泡が発生しにくい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を陰極線管に適用した実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
まず、本実施形態の陰極線管の構造的特徴を説明する。図1に示すように、本実施形態の陰極線管は、画像表示面が平坦なガラス材よりなる平面パネル部を有するバルブ11と、このバルブ内で画像表示面の内面に対向するように設けられた平面状のシャドウマスク5と、平面パネル部3の外周に固定された補強バンド10とを備えている。
【0016】
バルブ11は、平面パネル部3の他に、電子銃を内蔵するネック部2と、ここから広がって平面パネル部3に接続されるガラス材よりなるファンネル部1とを備えている。平面パネル部3は単なる平板ではなく、平面パネル部3と一体に形成されたガラス材よりなるウォール部9を有している。このウォール部9は、平面パネル部3の周縁部からほぼ垂直に延び、ガラス接着剤4によりファンネル部1に接着されている。
【0017】
バルブ11の強度は、このウォール部9により向上している。つまり、ウォール部9が無くて、平面パネル部3の周縁部が直にファンネル部1と接着されている場合は、平面パネル部3に垂直に圧力が加わったとき接着部またはその近傍に強い応力が生じ、この部分からバルブ11が破壊しやすい。これに対して、図1の構造の場合は、ウォール部9がそのような応力を吸収するので破壊しにくい。外力に対する機械的強度はウォール部9の外周に固定された補強バンド10によってさらに強化されている。
【0018】
シャドウマスク5はフレーム6に引っ張り応力を与えられた状態で支持され、フレーム6は周囲4箇所に設けられたマスクスプリング12によってウォール部9の内面に着脱自在に装着されている。図2に、フレーム6とこれに張られたシャドウマスク5とを部分切欠き斜視図で示している。
【0019】
上記のように、シャドウマスク5に引っ張り応力を与えておく理由は、動作時にシャドウマスク5の温度が高くなって熱膨張が生じても、シャドウマスク5の平面度が維持されるようにするためである。通常、動作時のシャドウマスク5の温度は、電子銃からの電子ビームの衝突によって100℃程度まで上昇する。したがって、シャドウマスク5にあらかじめ与えておく引っ張り応力の大きさは、そのような温度においても平面度が崩れない程度に調整される。例えば、5〜50kg/mm2の引っ張り応力が与えられる。
【0020】
図1に示すように、平面パネル部3の内面には、カラー表示のための蛍光体スクリーン7が形成されている。平面状シャドウマスク5は、この蛍光体スクリーン7に対向し、両者はほぼ平行に配置されている。平面状シャドウマスク5と蛍光体スクリーン7との距離は、約2mm〜30mmの範囲内に調整される。シャドウマスク5を支持するフレーム6がマスクスプリング12を介してガラスウォール部9の内面に着脱自在に装着されることにより、蛍光体スクリーン7の形成を効率的に行うことができる。つまり、シャドウマスク5を通して蛍光体に光を当てた後の定着、洗浄等の作業を、シャドウマスク5を取り外した状態で行うことができる。
【0021】
平面状のシャドウマスク5は、曲面状シャドウマスクに比べて薄くすることができるので、シャドウマスク5に形成されるアパーチャのピッチを狭くすることができ、その結果、高解像度化が実現される。例えば、シャドウマスク5の厚さを0.02mmとし、アパーチャピッチを0.25mm、アパーチャ径を0.1mmとすることができた。
【0022】
平面パネル部3は、内面に蛍光体スクリーン7が形成されている部分においてほぼ均一な厚さを有している。これにより、画面の中央部と周辺部での平面パネル部3の光学特性の差が生じないようにしている。その厚さは、5mm〜20mmの範囲内に設定されることが好ましい。
【0023】
平面パネル部3の表面には、透明ガラス製又はアクリル樹脂などの透明樹脂製の前面パネル8が貼着されている。つまり、平面パネル部3の表面に比較的硬度の低い接着樹脂層(厚さ0.3mm程度)が形成され、この接着樹脂層に前面パネル8が重ねられている。外部から陰極線管の画面に加えられる衝撃は、まず前面パネル8が受け止め、さらに接着樹脂層が衝撃を吸収する。したがって、前面パネル8を貼着することにより、実質的にバルブ11の画像表示面が補強される。したがって、前面パネル8を貼着しない場合に比べて、平面パネル部3を薄くすることができる。
【0024】
なお、前面パネル8に特殊な処理をすることにより、種々の機能を持たせることができる。例えば、主として前面パネル8が透明樹脂板による場合は、表面処理によって表面硬度を高め、耐スクラッチ性または耐摩耗性を向上することにより、砂ぼこり等によるキズがつきにくくすることができる。あるいは、外部から入射する光線の反射を抑える反射防止膜を表面に形成したり、乱反射させる微小な凹凸を表面に形成することにより、表示画像の見やすさを向上させることができる。
【0025】
また、前面パネル8に適度の導電性を付与することにより、平面パネル部3の帯電を防止し、放電にともなう使用者の不快感を低減することができる。接着樹脂層に導電性を持たせてもよい。さらに、前面パネル8のガラス材料又は透明樹脂材料に添加物を加えて光透過率を適切な値に調整することにより、平面パネル部3自体の光透過率を調整するより容易に、画像表示面の光透過率、ひいてはコントラストを調整することができる。これは、バルブ11の製造歩留りの向上にも寄与する。
【0026】
以上のような種々の機能は基本的には独立の機能であるが、前面パネル8に多層膜を形成し、あるいは前面パネル8を多層構造にすることにより、一つの前面パネル8にこれらの機能を兼ね備えさせることができる。複数の機能を複合的に有する膜を前面パネル8に形成してもよい。
【0027】
図3の部分断面図は、多層構造を有する前面パネル8が、バルブの平面パネル部3に接着樹脂13の層を介して貼着されている状態を模式的に示している。前面パネル8はパネル本体8a、導電層8b、及び高硬度層8cからなる。接着樹脂13及び接着(貼着)方法については後述する。
【0028】
帯電防止機能を得るためにパネル本体8aの内面に形成された導電層8bは、導電材料である粉末状の酸化スズ(SnO2)と酸化シリコン(SiO2)からなる。十分な帯電防止機能を得るためには、導電層8bが少なくとも5×10-4S/cmの導電率を有することが望ましい。導電層8bは、導電性テープなどによって補強バンド10を介して接地されることが望ましい。
【0029】
表面硬度を高めるためにパネル本体8aの外面に形成された高硬度層8cは、シリコーンハードコート処理によって、ガラスの分子骨格と近似のシロキサン結合を有するポリマーの薄膜をパネル本体8aの表面に形成したものである。具体的には、アルコキシシラン系の組成物、例えばアルキルトリアルコキシシランを含む材料、または、シランカップリング剤をさらに含む材料をパネル本体8aの表面に塗装し、乾燥・加熱することによって、アルコキシシランが加水分解・重合して高硬度層8cが形成される。硬度や耐久性を一層高めるためには、高硬度層8cがアルキルトリアルコキシシランの加水分解物にコロイダルシリカを混合した材料で形成されていることが好ましい。
【0030】
上記のようにして形成された高硬度層8cは、前面パネル8の表面硬度を高めるだけでなく、無反射膜としても機能する。その結果、外部から入射する光線の反射によって画面に表示された画像が見にくくなる現象が防止又は緩和される。さらに、前面パネル8の光透過率を制御するために、パネル本体8aには添加物として黒色染料もしくは顔料が分散されている。この添加物の分散状態を調整することにより、好ましい範囲(例えば90%〜40%)の光透過率値を得ることができる。なお、一例として、パネル本体8aの厚さを2.4mmとすると、導電層8b及び高硬度層8cの厚さは約0.01mmである。また、導電層8bは、前面パネル本体8aの外面に形成してもよく、その場合は、導電層8bを前面パネル本体8aと高硬度層8cとの間に形成することが望ましい。導電層8bは屈折率が高く、表面に形成すると鏡面反射が強くなり表示画像が見づらくなるおそれがあるからである。
【0031】
次に、上記のような前面パネルをバルブの平面パネル部に接着剤層を介して重ねる(即ち、貼着する)方法をいくつかの実施例と図面に基づいて説明する。
【0032】
(実施例1)
図4〜図8は、本発明の第1実施例の画像表示装置の製造方法を示す。
【0033】
図4に示すように、バルブ11のウォール部9の周囲に焼きばめによって固定する補強バンド(以下、「シュリンクバンド」ともいう)10を、バルブ11の平面パネル表面22より約2.0mm突出するように取り付けた。なお、従来のシュリンクバンド10の取り付け位置は平面パネル表面22より5〜20mm後退した位置であった。このように、シュリンクバンド10を平面パネル表面22より突出させることにより、平面パネル表面22に前面パネル8を貼着する際に、平面パネル表面22に塗布した接着樹脂13がバルブ11の周囲(ウォール部9)へ流れ出るのを防止すると共に、前面パネル8の位置決めを容易にする。さらに、突出したシュリンクバンド10により、前面パネル8のエッジを外部の衝撃から守ることができる。
【0034】
次に平面パネル表面22を研磨剤(例えば「セロックス」(商品名))等で研磨した後、アルコール拭きおよび布空拭き等で汚れやごみを除去する面仕上げを行った。また前面パネル8の接着面8dも、上記面仕上げのみを行った。なお、前面パネル8の表面(接着面と反対側)には紫外線透過性の保護シート24(例えば日東電工社製の「SPV−224透明」(商品名))が予め貼られている。
【0035】
次に、約20mm幅の樹脂テープ、例えばポリエチレンテレフタレート製フィルムのテープ27(例えば、日東電工社製の「ポリエステルテープNo.31B」(商品名))を、シュリンクバンド10の前端面から7mm程度突出するようにシュリンクバンド10の周囲に貼った。これによって、接着樹脂13の漏れ防止用の壁が形成される。なお、テープ27の接着樹脂は、下記に説明するシュリンクバンド10の内壁に前面パネル8の一辺側を位置決めする工程で、前記位置決めをしやすくするために、シュリンクバンド10の前端面から突出した部には設けていない。
【0036】
次に、シュリンクバンド10のつなぎ合わせ部分25(図5の平面図参照)から接着樹脂が漏れるのを防止するために、粘度の高い紫外線硬化性樹脂(例えば三洋化成製「UVU−1002S」(商品名))をこの部分に塗布して目詰めを行った。なお、この目詰め工程と上記の壁形成工程との順序を入れ替えてよいが、目詰め工程を後にすることにより、壁を構成するマイラーテープ27とシュリンクバンド10との隙間についても、同時に目詰めすることができる。
【0037】
次に、図6(a)及び(b)に示すように、接着樹脂(例えば三洋化成製「UVU−1002」(商品名))13を平面パネル表面22の全面に広がるように塗布する。平面パネル表面22に接着樹脂13を塗布する手段は、例えば複数の供給用チューブ48aを有する直径16mmのパイプ48bおよび7mm間隔に直径2mmの複数(30〜50個)の出口管48cが接続されてなるノズル48を用い、このノズル48を平面パネル表面22の一方の短辺側から他方の短辺側へ一定速度で移動させることにより接着樹脂13を平面パネル表面22に塗布するものである。その際、図4に示すように、水平面50を有する治具本体51と、治具本体51の水平面50上に設けられた水平面50から支持面51aまでの高さの異なる支持台52a、52bとからなる傾斜手段55に、バルブ11を載置して平面パネル表面22を傾斜させている。その結果、平面パネル表面22に塗布された接着樹脂13の層厚は、前面パネル8の一辺側8eに比べそれと反対側が薄くなる。この時の構成の条件は、例えば41cm管CRTの場合、平面パネル表面22の傾斜角度θが約1度、接着樹脂13の樹脂量が平均0.1ml/cm2程度、接着樹脂13の粘度が約130cpsに設定している。この条件では、接着樹脂13の層厚が前面パネル8の一辺側8eで1.2mm、それと反対側で0.5mmの関係となり、前面パネル8を平面パネル表面22に貼着する際の気泡の発生を防止することができる。
【0038】
なお、接着樹脂13の層厚については、前面パネル8の一辺側8eの最も厚い側と、それと反対側の薄い側との層厚の比が7:3程度が好ましい。この比を大きくし過ぎると、前面パネル8を平面パネル表面22に対して傾斜している状態から平行になるまで倒していく作業に時間がかかり、作業効率が低下する。また、パイプ48bに接続する出口管48cのピッチを小さくし過ぎると、隣同士の出口管48cから出た樹脂が平面パネル上に滴下される前にくっつき合ってしまい、正常に塗布できなくなる。一方、出口管48cのピッチを大きくし過ぎると、そのピッチ間の平面パネル表面22に接着樹脂13が行き渡らない領域が生じ、平面パネル表面22と前面パネル8との間に気泡が発生しやすくなる。また、接着樹脂13の塗布方法は、上記実施例のような複数の出口管48cが接続されたノズル48を用いる方法に限らず、出口が1つのノズルを用いて平面パネル表面22の中央部に一定量供給する方法や、ノズルを中央から周辺にかけて円を描くように動かす方法等がある。但し、平面パネル表面22の中央部に一定量供給する方法では、接着樹脂が周辺にまで行き渡るように、接着樹脂の粘度を十分低く維持する必要がある。
【0039】
その後、平面パネル表面22の全面に接着樹脂13の未塗布部分が無いように広げるために、上記塗布された接着樹脂13を有する平面パネル表面22を傾斜した状態で約30秒間放置する。
【0040】
次に、図4に示すように、平面パネル表面22に対する前面パネル8の接着面8dの傾斜角度αが10〜20°に傾斜させた状態で、前面パネル8の一辺側8eを接着樹脂13の層に当接させた。この際、前面パネル8の一辺側8eの端面を平面パネル表面22より突出したシュリンクバンド10の内壁に当て、一辺側8eの両側の端面をシュリンクバンド10の内壁に沿わせることによって、平面パネル表面22に対する前面パネル8の位置決めを行うことができる。なお、シュリンクバンド10の内壁に当てる側の前面パネル8の一辺側8eは、平面パネル表面22の短辺ではなく長辺にした方が気泡が発生しにくくなる。また、傾斜角度αが10゜より小さくなると気泡が発生し易くなり、好ましい傾斜角度αは10〜20゜程度である。
【0041】
そして、前面パネル8が平面パネル表面22と平行になるまで徐々に倒した。このとき、最初に接着樹脂13の層に当接させた前面パネル8の一辺側8eから他方の側へ徐々に前面パネル8を押圧することにより、接着樹脂13の層の気泡が逃げやすくなる。例えば、図7に示す真空吸着機構53を用いて、真空吸着機構53の吸着部53aに吸着された前面パネル8を平面パネル表面22上の所定位置に載置するが、この真空吸着機構53は、真空を開放して吸着部53aから前面パネル8を外す必要があり、真空を開放する一瞬、前面パネル8が吸着部53aに吸着したまま少し持ち上がり、空気を巻き込み、図8の(a)に示すような接着樹脂13の層の端部に櫛状部13aが形成され、平面パネル表面22と前面パネル8との間に気泡が発生しやすくなる。そこで、図7に示すように、前面パネル8への押圧については、前面パネル8と接着樹脂13との接触距離L1が、前面パネル8の幅L2の約2/3になったところで前面パネル8への真空を開放し、その後、前面パネル8の自重で、平面パネル表面22と前面パネル8とがほぼ平行になるまで(約3秒)放置している。その結果、図8の(b)に示すように櫛状部13aのない接着樹脂13の層にでき、前記空気の巻き込みがなくなり、前記パネル間の気泡発生を低減することができる。なお、この前面パネル8への押圧方法は、平面パネル表面22に塗布された接着樹脂13の層厚が異なるものについて説明したが、前記接着樹脂13の層厚が均一なものについても適用できる。
【0042】
次に、前記真空吸着機構53とは異なる押圧機構(図示せず)により、例えば、接着樹脂13の層厚ばらつきを小さくするために円形または楕円形のアルミニウム、テフロン樹脂等からなる圧着板を介して、前面パネル8に20kg(19g/cm2)〜60kg(47g/cm2)の等分布圧力を、平面パネル表面22に対して垂直方向にかけ10秒間保持することで、余分な接着樹脂13と共に発生した気泡を放し、所定の接着樹脂13の厚みを得ることができる。その結果、鮮明な画像を表示することができ、また従来のようなスペーサーを用いないので、前面パネル8に圧力を均等にかけることができ、平面パネル表面22と前面パネル8との隙間がほぼ均一にできる。なお、この押圧機構による前面パネル8への押圧方法は、平面パネル表面22に塗布された接着樹脂13の層厚が異なるものについて説明したが、前記接着樹脂13の層厚が均一なものについても適用できる。ちなみに、接着樹脂13の層をほぼ均一な層厚で塗布した場合は、完成品に気泡が閉じ込められる割合が30〜50%あったが、平面パネル表面22に塗布された接着樹脂13の層厚が異なる本実施例の方法によればほとんどゼロになった。
【0043】
その後、500〜1800mJ/cm2の照射エネルギーの紫外線を照射する ことによって接着樹脂13を硬化した。なお、この実施例では接着樹脂13として紫外線硬化性の樹脂を用いたが、これに代えて熱硬化性の樹脂(例えば主剤:ファインポリマーズ(株)製エピファイン9235、硬化剤:ファインポリマーズ(株)製エピファインH−196)を用いても良い。
【0044】
最後に、仕上げとして、シュリンクバンド10の周囲に貼り付けた壁用の樹脂テープ27を取り除いた。このとき、前面パネル8の表面よりも上方にはみ出した接着樹脂13がある場合は、樹脂テープ27と共にカッター等で切り取ると効果的に不要の接着樹脂13を除去することができる。さらに、前面パネル8上にあふれ出た接着樹脂13を表面保護シート24と共に取り除いて、前面パネル8の貼着工程を終了した。なお、前面パネル8が導電層を有する場合は、この貼着工程の後に導電性テープ等で前面パネル8とシュリンクバンド10との導通をとる。
【0045】
(実施例2)
図9は本発明の第2実施例の画像表示装置の製造方法を示し、この実施例は、上記第1実施例とは、平面パネル表面22に接着樹脂13の層を形成する工程と、平面パネル表面22に形成された接着樹脂13の層に前面パネル8を重ねる工程とを同時に行って、製造時間を短縮し、かつ異物等の混入のない点が相違する。
【0046】
すなわち、図4に示す傾斜手段55に載置されたバルブ11のシュリンクバンド10の内壁に、前面パネル8の一辺側8eの端面を当て、平面パネル表面22に対して、前面パネル8の接着面8dの傾斜角度αを10〜20°に傾斜させた状態にする。次に、平面パネル表面22と前面パネル8との空隙部54に、接着樹脂13の注入用の注入口が幅2mmおよび長さが300mmからなるノズル49を挿入し、接着樹脂13を注入しながら、ノズル49を、シュリンクバンド10の内壁に当接された前面パネル8の一辺側8eの端面側からそれと反対側の端面方向Xに移動させる。一方、前面パネル8は、ノズル49の移動と連動し、シュリンクバンド10の内壁に当接された一辺側8eの端面を支点に、前記設定された傾斜角度αからこの傾斜角度αが小さくなる方向Zに回動する。この際、ノズル49より注入される接着樹脂13の量は、前面パネル8がシュリンクバンド10の内壁に当接している側が多く、移動するにしたがって減らしていく。なお、製造時間を短縮し、かつ異物等の混入のないこの方法は、平面パネル表面22に塗布された接着樹脂13の層厚が異なるものについて説明したが、接着樹脂13の層厚が均一なものについても適用できる。ちなみに、前記傾斜手段等を用いてバルブ11を傾斜させて接着樹脂13の層を注入する方法は、バルブ11を傾斜させないで接着樹脂13の層を注入する方法に比べ、気泡の発生が少なくなる。
【0047】
その後、図7に示す真空吸着機構53を用いて、真空吸着機構53の吸着部53aから前面パネル8を外すが、この工程以降からは、上記第1実施例で説明した通りである。
【0048】
次に、第1実施例および第2の実施例の方法を基礎として、前面パネル8と平面パネル表面22との間の接着樹脂13の層厚が均一になる改善、及び、接着樹脂13の層の剥離が発生しにくくなる改善を施した他実施例について説明する。
【0049】
次に、接着樹脂13の層の剥離が発生しにくくなる改善について説明する。上述のような理由で、接着樹脂13の層は薄い(1.00mm以下)ほうが好ましいが、接着樹脂13の層が薄くなると接着樹脂13の層の剥離が生じやすくなる。特に、製品(画像表示装置またはこれを搭載したコンピュータ等)を輸送したりコンテナ内に保管する際に、周囲温度が70℃程度まで上昇することがあり、このときに接着樹脂13の層の剥離が発生しやすい。
【0050】
上記のような接着樹脂13の層の剥離を発生しにくくするために、本実施例では、接着樹脂13を平面パネル表面22に塗布する工程を、室温より高い温度条件下で行う。すなわち、実験の結果、接着樹脂13を塗布する際の平面パネル表面22の温度が5〜20℃のときは接着樹脂13の層の剥離が70〜100℃で発生したのに対し、平面パネル表面22の温度を40〜50℃に維持した状態で接着樹脂13を塗布した場合は、剥離発生温度が110℃以上になることが分かった。
【0051】
製品の輸送・保管時の上限温度を75℃とすれば、平面パネル表面22の温度を30℃に維持した状態で接着樹脂13を塗布すると実際上、接着樹脂13の層剥離が発生しないことも分かった。従って、接着樹脂13の塗布工程を室温より高い温度(30〜50℃)で行う方法に限らず、平面パネル表面22を加熱した後に接着樹脂13を塗布してもよい。少なくとも平面パネル表面22の温度を30〜50℃に維持した状態で接着樹脂13を塗布すれば上記の効果が得られる。なお、上記第1実施例で述べた目詰め工程において、樹脂漏れ防止用の目詰め樹脂として熱硬化性樹脂を用いれば、平面パネル表面22を加熱する際に同時に目詰め樹脂を硬化させることも可能である。
【0052】
以上、本発明を陰極線管に適用した実施形態について実施例を用いて説明したが、本発明は陰極線管に限らず、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶パネル(LCD)、EL、真空表示ディスプレイ(VFD)、マイクロカソードディスプレイ等、表示面が平板からなる画像表示装置に広く適用することができる。これらの画像表示装置の場合、陰極線管のシュリンクバンドに代えて、樹脂製の枠部材等を用いて接着樹脂の漏れ防止用壁を形成してもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、画像表示装置の平面パネル表面に補強、反射防止等の機能を有する前面パネルを効率的に貼着することができるので、画像表示装置の製造効率の向上、ひいてはコスト低減に寄与することができる。また、平面パネル表面と前面パネルとの間の接着樹脂層の厚さを従来より薄くしながら、樹脂層の剥離の発生を抑えることができるので、品質、信頼性の面でも有利な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る画像表示装置を構成する陰極線管の側面からみた断面図
【図2】図1の陰極線管に内装された平面状シャドウマスク及びそのフレームを示す一部切欠き斜視図
【図3】図1の陰極線管の導電膜及び反射防止膜を含む前面パネル、接着樹脂層、及び平面パネルからなる多層構造を示す部分断面図
【図4】前面パネルをバルブの平面パネル部に貼着する本発明による方法の第1実施例を示す陰極線管の側面図
【図5】図4の陰極線管の画像表示面からみた平面図
【図6】図4の陰極線管において、平面パネルの表面に接着樹脂を塗布する工程を示す平面図及び側面図
【図7】図4の陰極線管において、前面パネルをバルブの平面パネル部に貼着する工程を示す側面図
【図8】図7の方法において、平面パネル部上の接着樹脂層を示す平面図
【図9】前面パネルをバルブの平面パネル部に貼着する本発明による方法の第2実施例を示す陰極線管の側面図
【符号の説明】
3 平面パネル部
8 前面パネル
8e 前面パネルの一辺側
10 補強バンド(シュリンクバンド)
13 接着樹脂
22 平面パネル表面
24 表面保護シート
27 樹脂テープ
48、49 ノズル(接着樹脂13を塗布する手段)
55 傾斜手段

Claims (8)

  1. 画像表示面が平面パネルと接着樹脂層と前面パネルとの多層構造で構成されている画像表示装置の製造方法であって、前記平面パネルの表面に前記接着樹脂層を形成する工程と、前記前面パネルの一辺側を前記接着樹脂層に当接させるとともに前記前面パネルを前記平面パネルに対して傾斜させた後、前記前面パネルを前記平面パネルに重ねる工程と、前記接着樹脂層に前記前面パネルが重ねられた後、前記接着樹脂層を硬化させる工程とを備え、前記接着樹脂層を形成する工程は、前記平面パネルの表面に前記接着樹脂を塗布する手段と、前記平面パネルの表面に塗布された前記接着樹脂の層厚を前記前面パネルの一辺側よりそれとは反対側が薄くなるように前記平面パネルを傾斜させる傾斜手段とを有することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
  2. 前記前面パネルを前記平面パネルに重ねる工程は、前記前面パネルの一辺側を前記接着樹脂層に当接させるとともに前記前面パネルを前記平面パネルに対して傾斜させた状態で保持し、その後、前記前面パネルを前記前面パネルと前記接着樹脂層との当接部を支点に前記傾斜が小さくなる方向に回動し、前記前面パネルと前記接着樹脂層との接触距離が、前記接触距離方向の前面パネル幅の1/2〜3/4になるまで前記前面パネルを保持することを特徴とする請求項1記載の画像表示装置の製造方法。
  3. 前記接着樹脂層を形成する工程を室温より高い温度条件下で行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像表示装置の製造方法。
  4. 前記接着樹脂層を前記平面パネルの表面に形成する際に、少なくとも前記平面パネル表面の温度を30〜50℃に維持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の画像表示装置の製造方法。
  5. 前記接着樹脂層を硬化させる工程の前に、前記前面パネルを前記平面パネルの表面に向かって押圧し、前記前面パネルの押圧を、円形又は楕円形の圧着板を介して行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の画像表示装置の製造方法。
  6. 前記接着樹脂層を形成する工程の前に、前記平面パネル周囲に、前記平面パネルの表面より突出するように補強バンドを取り付け、前記平面パネルの表面を研磨し、前面パネルの接着面の面仕上げを行い、さらに、前記補強バンドの周囲に、前記補強バンドの前端面より突出するように前記接着樹脂の漏れ防止用の壁を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の画像表示装置の製造方法。
  7. 前記前面パネルが表面保護シートを有し、前記接着樹脂を硬化させる工程の後、前記表面保護シートを除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の画像表示装置の製造方法。
  8. 画像表示面が平面パネルと接着樹脂層と前面パネルとの多層構造で構成されている画像表示装置の製造方法であって、前記平面パネルの表面に前記接着樹脂層を形成する工程と、前記平面パネルの表面に形成された前記接着樹脂層に前記前面パネルを重ねる工程と、前記接着樹脂層に前記前面パネルが重ねられた後、前記接着樹脂層を硬化させる工程とを備え、前記前面パネルを重ねる工程が、前記前面パネルの一辺側を前記接着樹脂層に当接させるとともに前記前面パネルを前記平面パネルに対して傾斜させた状態で保持し、その後、前記前面パネルを前記前面パネルと前記接着樹脂層との当接部を支点に前記傾斜が小さくなる方向に回動し、前記前面パネルと前記接着樹脂層との接触距離が、前記接触距離方向の前面パネル幅の1/2〜3/4になるまで前記前面パネルを保持することを特徴とする画像表示装置の製造方法。
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