JP3675035B2 - 内燃機関の燃料噴射量制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射量制御装置 Download PDF

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  • Control Of Throttle Valves Provided In The Intake System Or In The Exhaust System (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の燃料噴射量制御装置に係り、詳しくは、始動時において吸気通路の負圧に応じた燃料噴射量の算出を行うことができる燃料噴射量制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各気筒に連通される吸気通路のそれぞれに燃料噴射弁を装着して燃料を供給するいわゆる電子制御式燃料噴射装置が実現されている。
【0003】
上記電子制御式燃料噴射装置は、エンジン各部に設けられた各種センサにより検出されるエンジンの運転状態及び排気ガス成分に応じてフィードバック制御を実行し、燃料噴射弁の開弁時間、すなわち、燃料噴射量を決定して燃焼室に適量の燃料を供給する。上記燃料噴射装置は、燃焼室に近接した吸気通路内に燃料が供給されることから、噴射された燃料が速やかに燃焼室内に流入するため、走行時において、特に過渡時における応答性(燃料追従性)が優れ、エンジンの出カ性能及び排気ガス浄化性能の向上を図ることができる。
【0004】
しかし、一方、燃焼室近傍の吸気通路内に燃料噴射弁を装着したエンジンでは、始動時に燃料が十分に微粒化せず、始動性の悪化を招くことがある。このため、燃料噴射弁より噴射された燃料を吸気弁傘部等に衝突させて微粒化を図っているが、始動時における吸気通路内の吸気流速はそれほど大きくないため、燃料噴射弁から噴射された燃料が吸気流に乗り難く、又、吸気通路壁面に付着し易い。さらに始動時における吸気弁傘部表面の温度はそれほど高くないため、一般的に微粒化が悪い。
【0005】
そこで、この問題を解消するために、実開平1−119874号公報に記載の技術では吸気通路の燃料噴射弁の取付け位置より上流側に吸気通路を閉塞する制御弁を設けている。そして、エンジン始動から完爆に至るまでの期間、前記制御弁を閉塞することにより、燃焼室内に多量の空気が入ることを防止し、制御弁よりも下流側の吸気通路内の負圧を高めることにより、吸気通路内の付着燃料を低減し、燃料噴射弁から噴射された燃料の気化を促進するようにしている。この技術により、機関始動時の燃料噴射量を低減できるとともに、付着燃料が低減できるため、HC排出量を抑制することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、始動時の燃料噴射量は、一般には、例えば、特開昭63−235632号公報に記載されているように機関冷却水温や機関回転数に基づき求めている。しかし上記のように、吸気通路内の負圧を高めて燃料の噴射弁から噴射された燃料の気化を促進する技術は、機関始動時に吸気通路内の負圧が徐々に高まっていくため、上記の従来技術の始動時燃料噴射量の算出方法では、始動期間に亘って最適な始動時燃料噴射量を算出することができない。この結果、依然HC排出量が多いという問題があった。
【0007】
すなわち、燃焼室内に吸入される吸入空気量及び吸気通路内に付着する燃料量量は、吸気通路内の負圧に関係して変化するため、上述のように変化する吸気通路内の負圧に基づき始動時燃料噴射量を算出しないと、始動期間に亘り最適な始動時燃料噴射量を算出することができない。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、始動期間に亘って始動時燃料噴射量を吸気通路負圧に応じたものとすることができる内燃機関の燃料噴射量制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、機関始動時に吸気通路に設けられた制御閉塞に基づき吸気通路内の負圧を高めた状態で当該機関に噴射する燃料の噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射量制御装置において、機関回転数を検出する機関回転数検出手段と、クランキング開始からの経過時間を計時する計時手段と、前記制御弁の閉塞時における機関回転数及びクランキング開始からの経過時間に基づいて前記吸気通路内の負圧を推測し、該推測される吸気通路内の負圧に応じた機関始動時の燃料噴射量を算出する始動時燃料噴射量算出手段を備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置をその要旨としている。
【0010】
(作用)
本請求項に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、機関回転数検出手段は、機関始動時の機関回転数を検出する。又、計時手段は、クランキング開始からの経過時間を計時する。そして、始動時燃料噴射量算出手段は、制御弁の閉塞時における機関回転数及びクランキング開始からの経過時間に基づいて吸気通路内の負圧を推測し、該推測される吸気通路内の負圧に応じた機関始動時の燃料噴射量を算出する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置を具体化した発明の実施の形態について図1及び図2を参照して説明する。ここで、図1は本発明が適用されるガソリンエンジンシステムの概略構成図であり、図2は本発明の実施の形態に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置1の概略構成図である。
【0012】
内燃機関としてのエンジン10は、シリンダプロック11内に複数の気筒(本発明の実施の形態では4気筒)を有しており、シリンダプロック11の上部には、各気筒に対応する吸気ポード121、排気ポード122を有するシリンダヘッド12が接続されている。シリンダヘッド12の吸気ポード121、排気ポード122には、それぞれ吸気弁13、排気弁14が配設されている。また、シリンダプロック11には、エンジン10の冷却水の温度(冷却水温)THWを検出するための水温センサ30が設けられている。
【0013】
各気筒に対応する吸気ポート121(シリンダヘッド12)には、それぞれ吸気通路としてのインテークマニホルド15が連結されている。シリンダヘッド12と接続される各インテークマニホルド15の端部には、各吸気ポート121へ燃料を供給するための燃料噴射手段としての燃料噴射弁16が各気筒毎に配置されている。また、インテークマニホルド15の他端には、サージタンク17、スロットルボデイ18、エアクリーナ19が連結されている。サージタンク17は、吸入空気の吸気脈動を抑制する所定容積のタンクであり、サージタンク17には、吸入圧力(吸気圧)を検出するための吸気圧センサ31が設けられている。
【0014】
また、スロットルボデイ18には、制御弁としてのスロットル弁181が備えられており、このスロットル弁181の開度は、駆動手段としてのアクチュエータ21を開閉駆動制御することで、各気筒へ導入される吸入空気量が調節される。さらに、スロットルボデイ18には、スロットル弁181の開度、すなわちスロットル開度TAを検出するためのスロットルセンサ32が配置されている。この実施の形態では1弁の電子式制御スロットルとされ、前記アクチュエータ21はステップモータにより構成されている。又、スロットル弁181が全閉となったときに「オン」してアイドル状態を検知するアイドルスイッチ37が設けられている。
【0015】
エアクリーナ19の近傍には、吸入された空気の温度(吸気温度)を検出するための吸気温センサ33が設けられている。そして、エアクリーナ19に吸入された吸入空気は、スロットルボディ18、サージタンク17を介してインテークマニホルド15内を流動する。また、各気筒毎に設けられた燃料噴射手段としての燃料噴射弁16は、噴射信号に基づき開弁し、インテークマニホルド15内を流動する吸入空気に向けて燃料を噴射する。この結果、吸気ポート121近傍において混合気が形成され、形成された混合気は、吸気ポート121、吸気弁13を介して各気筒内に導入される。
【0016】
シリンダヘッド12の排気ポート122には、排気通路としてのエグゾーストマニホルド23が接続され、エグゾーストマニホルド23には、エグゾーストパイプ24が接続されている。
【0017】
エグゾーストパイプ24の途中には、三元触媒25が配置されており、この三元触媒25によって排気ガス中の3つの主な有害成分、すなわち、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)が同時に浄化される。また、エグゾーストパイプ24における三元触媒25の上流側には、排ガス中の酸素濃度を検出するための酸素センサ34が設けられている。
【0018】
シリンダヘッド12には、吸入された混合気に点火するための点火プラグ26が各気筒に対応して配設されており、各点火プラグ26は、プラグコード(図示しない)を介してシリンダプロック11の近傍に配設されているディストリビュータ27と接続されている。
【0019】
また、デイストリビュータ27には、ECU50からの点火信号に基づき高電圧を印加するイグナイタ28が接続されており、イグナイタ28から出力された高電圧は、ディストリビュータ27によって、クランク角度に同期して各点火プラグ26に分配される。
【0020】
さらに、ディストリビュータ27には、エンジン10の回転に連動して回転するロータ(図示しない)が内蔵されている。そして、このディストリビュータ27には、ロータの回転からエンジン10の回転速度(エンジン回転数NE)を検出する機関回転数検出手段としての回転数センサ35が設けられている。また、ディストリビュータ27には、ロータの回転に応じてエンジン10のクランク角の変化を所定の割合で検出することにより、いずれの気筒が圧縮上死点にあるかを判別する気筒判別センサ36が設けられている。後記するECU50は気筒判別センサ36から送出された気筒判別信号に基づき、現在どの気筒が吸気行程にあるかを検出し、その気筒を初期始動気筒として特定する。又、ECU50は、2つのセンサ(回転数センサ、気筒判別センサ)を備えるだけで、特定のシリンダにおけるクランク角を検出することが可能となり、点火すべきシリンダの特定、燃料噴射すべきシリンダの特定を行うことができる。
【0021】
各気筒内に導入された混合気は、圧縮、爆発・膨張、排気行程を経て、各排気ポート122、エグゾーストマニホルド23、エグゾーストパイブ24を介して大気中に排出される。
【0022】
さらに、エンジン10を始動させるためのスイッチであるイグニッションスイッチ29が図示しないステアリングコラム付近に配設されている。このイグニッションスイッチ29は、ON位置、OFF位置、スタント位置等のキー位置を有している。又、この実施の形態においてエンジン10にはその始動時にクランキングによって回転力を付与するための図示しないスタータが設けられている。又、このスタータには、そのオン・オフ動作を検知するスタータスイッチ22が設けられている。スタータはイグニッションスイッチ29の操作によりオン・オフ動作されるものであり、イグニッションスイッチ29が操作されている間はスタータがオン動作されて、スタータスイッチ22からスタータ信号STが出力されるようになっている。
【0023】
続いて、本発明の実施の形態に係る内燃機関の燃料量制御装置1の制御系について図2に示す制御プロック図を参照して説明する。
内燃機関の燃料量制御装置1の制御系は、電子制御ユニット50(以下「ECU」という。)を核として構成されている。そして、ECU50によって計時手段、始動時燃料噴射量算出手段が実現される。
【0024】
ECU50は、始動時スロットル弁制御プログラム、燃料噴射弁16から燃料を噴射させる燃料噴射処理プログラム等の各種制御プログラム及び前記各種制御プログラム実行時に参照されるマップを格納したROM51を有している。
【0025】
また、ECU50は、ROM51に格納された各種制御プログラムに基づいて演算処理を実行するCPU52、CPU52での演算結果、各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するRAM53、エンジン10の停止時に保存すべきデータを記憶するバックアップRAM54を有している。
【0026】
そして、CPU52、ROM51、RAM53、及びバックアップRAM54は、双方向バス55を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース56、及び出力インターフェース57と接続されている。
【0027】
入力インターフェース56には、及びスタータスイッチ22、水温センサ30、吸気圧センサ31、スロットルセンサ32、吸気温センサ33、酸素センサ34、回転数センサ35、気筒判別センサ36、アイドルスイッチ37等が接続されている。そして、各センサから出力された信号がアナログ信号である場合には、図示しないA/Dコンバータによってディジタル信号に変換された後、双方向バス55に出力される。また、出力インターフェース57には、燃料噴射弁16、吸気制御弁用アクチュエータ21、イグナイタ28等の外部回路が接続されており、これら外部回路は、CPU52において実行された制御プログラムの演算結果に基づいて作動制御される。
【0028】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態に係る内燃機関の燃料量制御装置1における各処理プログラムについて図8乃び図9を参照して説明する。ここで、図8は本実施の形態における始動時燃料噴射量制御プログラムの処理ルーチンを示すフローチャートであり、イグニッションスイッチ29がオン操作されたときに実行される。図9は始動時スロットル弁制御プログラムの処理ルーチンを示すフローチャートであり、所定のタイミングで割込処理される。
【0029】
まず、イグニッションスイッチ29がオン操作されて、図示しないスタータが起動され、クランキングを開始し、スタータ信号STがCPU52に入力されると、CPU52はアクチュエータ21を駆動して閉弁保持する。
【0030】
又、CPU52は図8に示すルーチンを実行する。まずステップ101でスタータ信号STが「オン」であるか否か、エンジン10の始動時であるか否かを判定する。ここでスタータ信号STが「オン」でない場合には、この処理ルーチンを抜け出る。又、スタータ信号STが「オン」である場合には、このステップ101の判定を「YES」としステップ102に移行する。ステップ102ではスロットル弁181が閉塞しているか、否かをアイドルスイッチ37からの信号が「オン」信号となっているか否かにより判定する。ステップ102において、アイドル信号が「オン」となっている場合は、スロットル弁181が閉塞しているとして、ステップ103に移行する。又、ステップ102において、アイドル信号が「オン」となっていない場合には、スロットル弁181が閉塞していないとして、ステップ109に移行する。
【0031】
前記ステップ103に移行すると、気筒判別完了後のクランキング開始後経過時間を読み込みする。このクランキング開始後経過時間とは、前記イグニッションスイッチ29がスタート位置へ操作されて、スタータによりエンジン10が回転し、エンジン回転数が所定回転数以上となった時からの経過時間である。すなわち、エンジン回転数が所定回転数に達した時からCPU52が備えている図示しない第1の力ウンタにてカウントを開始し、同ステップ103において、そのカウント値A(経過時間)を読み込む。前記第1のカウンタを含むCPU5が計時手段を構成している。次のステップ104においてはエンジン回転数NE(=B)を読み込む。続く、ステップ105においては、現在の吸気通路の負圧(吸気管負圧)C及び負圧変化量ΔCを演算する。前記吸気管負圧値Cは関数f(A,B)に基づいて算出する。なお、関数f(A,B)の代わりにクランキング開始後経過時間Aと、エンジン回転数B(=NE)とからなる二次元マップから求めてもよい。この場合、二次元マップは、予め実験によって求められ、ROM51に格納する。
【0032】
又、負圧変化量ΔCの演算は、図7に示すように今回の吸気管負圧Ciと前回の制御タイミングにおける吸気管負圧Ci-1との差を求めることにより行われる。続く、ステップ106においては、次に燃料噴射が行われる噴射気筒の吸気弁13が閉弁するまでの時間tをエンジン回転数NEに基づいて算出する。この吸気弁13の閉弁するまでの時間tとは、前記吸気管負圧Cが算出された時刻T1から、吸気弁13が閉弁する時刻T2までの時間である。
【0033】
続く、ステップ107においては、前記燃料噴射が行われる噴射気筒の吸気弁13が閉弁する時刻T2における吸気管負圧Dを推測する。この吸気管負圧は、D=g(C,ΔC,t)の関数を演算することにより、求められる。この関数gは吸気管負圧C、負圧変化量ΔC,吸気弁13tが閉弁するまでの時間tからなる関数であり、実験等によりその関数gが求められている。なお、関数の代わりに、吸気管負圧C、負圧変化量ΔC,吸気弁13が閉弁するまでの時間tをパラメータとした三次元マップを実験により構成し、同三次元マップをROM51に予め格納して、このステップ107において使用しても良い。
【0034】
続く、ステップ108においては、前記ステップ107で推測した噴射気筒の吸気弁13の閉弁時における吸気管負圧D、冷却水温THWに基づき、いわゆる始動時基本噴射量(基本噴射時間)TAUaを算出する。ここで、始動時基本噴射量TAUaは、吸気管負圧D及び冷却水温THWに基づき、予め定められた図示しないマップを参照して算出されるものである。さらに、該ステップにおいては、スロットル弁181の閉弁時における最終燃料噴射量TAUが次の式で算出される。
【0035】
TAU=TAUa × Kthw × Ktha
Kthwは冷却水温補正係数、Kthaは吸気温補正係数である。これらの補正係数
は、図5乃至図6に示すマップで求められる。なお、これらのマップは、ROM51に予め格納されており、このステップ108の処理時に読み出され、使用される。
【0036】
上記の最終燃料噴射量TAUを乗算すると、この処理ルーチンを抜け出し、その後の処理を一旦終了する。
前記ステップ105は、現在の吸気管負圧を演算する第1の吸気管負圧演算手段を構成する。ステップ106は噴射気筒における吸気弁の閉弁時間を演算する吸気弁の第1の閉弁時間演算手段を構成する。又、ステップ107は噴射気筒の吸気弁の閉弁時の吸気管負圧を推定する第1の吸気管負圧推測手段を構成する。ステップ108は第1の燃料噴射量算出手段を構成している。
【0037】
そして、ステップ103乃至ステップ108の全体では始動時燃料噴射量算出手段を構成している。
又、前記ステップ102からステップ109に移行した場合には、同ステップ109において、始動が完了しているか否かを、始動完了フラグに基づいて判定する。始動完了フラグは図示しない別の処理ルーチンにおいて、エンジンの回転数がアイドル時の回転数よりも低い所定回転数に達した場合に「1」にセットされ、そうでない場合には、「0」にリセットされる。従って、ステップ109では始動完了フラグが「1」にセットされていれば始動完了であり、ステップ116に移行して始動後の燃料噴射へ移行し、この処理ルーチンを抜け出る。又、ステップ109において、始動完了フラグが「0」にリセットされていれば、始動が完了していないとしてステップ110に移行する。
【0038】
ステップ102、109、110を経る場合には、スロットル弁181が閉塞状態でないにもかかわらず、エンジン10の始動が未だ完了していない状態である。
【0039】
前記ステップ110に移行すると、気筒判別完了後のクランキング開始後経過時間を読み込みする。このクランキング開始後経過時間とは、前記ステップ103と同じ意味である。すなわち、エンジン回転数が所定回転数に達した時からCPU52が備えている図示しないカウンタにてカウントを開始し、同ステップ110において、そのカウント値A1(経過時間)を読み込む。次のステップ111においてはエンジン回転数NE(=B1)を読み込む。続く、ステップ112においては、現在の吸気管負圧C1及び負圧変化量ΔC1を演算する。前記吸気管負圧値C1は関数f1(A1,B1)に基づいて算出する。なお、関数f1(A1,B1)の代わりにクランキング開始後経過時間A1と、エンジン回転数B1(=NE)とからなる二次元マップから求めてもよい。この場合、二次元マップは、予め実験によって求められ、ROM51に格納する。
【0040】
又、負圧変化量ΔC1の演算は、今回の吸気管負圧C11と前回の制御タイミングにおける吸気管負圧C1i-1との差を求めることにより行われる。続く、ステップ113においては、次に燃料噴射が行われる噴射気筒の吸気弁13が閉弁するまでの時間tをエンジン回転数NEに基づいて算出する。この吸気弁13の閉弁するまでの時間tとは、前記ステップ106と同様に前記吸気管負圧C1が算出された時刻T1から、吸気弁13が閉弁する時刻T2までの時間である。
【0041】
続く、ステップ114においては、前記燃料噴射が行われる噴射気筒の吸気弁13が閉弁する時刻T2における吸気管負圧D1を推測する。この吸気管負圧は、D1=g1(C1,ΔC1,t)の関数を演算することにより、求められる。この関数g1は吸気管負圧C1、負圧変化量ΔC1,吸気充13が閉弁するまでの時間tからなる関数であり、実験等によりその関数g1が求められている。なお、関数の代わりに、吸気管負圧C1、負圧変化量ΔC1,吸気弁13が開弁するまでの時間tをパラメータとした三次元マップを実験により構成し、同三次元マップをROM51に予め格納して、このステップ114において使用しても良い。
【0042】
続く、ステップ115においては、前記ステップ114で推測した噴射気筒の吸気弁13の閉弁時における吸気管負圧D1、冷却水温THWに基づき、いわゆる始動時基本噴射量(基本噴射時間)TAUbを算出する。ここで、始動時基本噴射量TAUbは、吸気管負圧D1及び冷却水温THWに基づき、予め定められた図示しないマップを参照して算出されるものである。さらに、該ステップにおいては、スロットル弁181の開弁時における最終燃料噴射量TAUが次の式で算出される。
【0043】
TAU=TAUb × Kthw × Ktha
上記の最終燃料噴射量TAUを乗算すると、この処理ルーチンを抜け出し、その後の処理を一旦終了する。
【0044】
このステップ110乃至ステップ115では、後記する始動時スロットル弁制御ルーチンにおいて、スロットル弁181が所定開度θ2に開弁される。このことは、ステップ103乃至ステップ108の場合と比較して吸入空気量が増加することになるため、この増加した吸入空気量に見合う分だけ燃料を増量するのである。
【0045】
前記ステップ110乃至ステップ115は燃料噴射量増量手段を構成している。
前記ステップ112は、現在の吸気管負圧を演算する第2の吸気管負圧演算手段を構成する。ステップ113は噴射気筒における吸気弁の閉弁時間を演算する吸気弁の第2の閉弁時間演算手段を構成する。又、ステップ114は噴射気筒の吸気弁の閉弁時の吸気管負圧を推定する第2の吸気管負圧推測手段を構成する。ステップ115は第2の燃料噴射量算出手段を構成している
従って、所定タイミングで割込処理される燃料噴射弁制御ルーチンにおいて、前記算出された始動時燃料噴射量に基づいて、ECU50は燃料噴射弁16を駆動制御する。すなわち、ECU50は推測した負圧状況に応じて燃料噴射を各気筒に対して実行する。
【0046】
次に、図9に示す始動時スロットル弁制御ルーチンを説明する。
このルーチンに入ると、ステップ201においては、エンジン10の始動が完了したか否かを、スタータ信号STが「オフ」となったか否かで、判定する。ステップ201において、前記ステップ109と同様に始動完了フラグに基づいて判定する。ステップ201において、始動完了フラグが「1」となっている場合には、エンジン始動が完了しているものとして、このステップ201の判定を「YES」としてステップ20に移行する。ステップ20においては、スロットル弁181を始動後開度θ1、すなわち、アイドル制御ができる開度まで開弁し、この処理ルーチンを抜け出る。このアイドル制御ができる開度とは、エンジン10の運転状態等により決定されるエンジン回転数NEを保持可能な吸入空気量を確保できる開度である。
【0047】
又、ステップ201において、始動完了フラグが「0」である場合には、エンジン始動が完了していないものとして、ステップ202に移行し、スタータがオンしているか否かを判定する。スタータが作動していない場合には、このステップを「NO」と判定し、この処理ルーチンを抜け出る。又、スタータが作動している場合には、このステップを「YES」と判定してステップ203に移行し、噴射気筒が膨張行程に未到達か否かを判定する。
【0048】
噴射気筒が膨張行程に未到達か否かは、回転数センサ35及び気筒判別センサ36から入力した信号に基づいて判断され、この判定処理は、1つの噴射気筒のみの判定ではなく、この制御ルーチンを実行処理する場合に、まず、最初の噴射気筒(第1番目の噴射気筒)が膨張行程に到達した場合であっても、「YES」と判定され、第2番目、第3番目の噴射気筒が膨張行程に到達した場合にも「YES」と判定される。そして、第4番目の噴射気筒が膨張行程に到達した場合に、初めて「NO」と判定する。
【0049】
前記ステップ203において、「YES」と判定された場合には、ステップ204に移行する。ステップ204では、スロットル弁181の閉塞を保持制御し、この処理ルーチンを抜け出る。また、前記ステップ203において第4番目の噴射気筒が到達した場合には、このステップ203の判定を「NO」としてステップ205に移行する。すなわち、燃料噴射が開始されてから所定期間経過しても依然始動完了がなされないため、「NO」と判定するのである。
【0050】
なお、前記ステップ203は判定手段を構成している。
前記ステップ203からステップ205に移行した場合は、ステップ205においては、スロットル弁181を所定開度θ2、すなわち、負圧を改善(軽減)する程度の開度まで開弁し、この処理ルーチンを抜け出る。すなわち、ステップ203において、「NO」と判定された場合には、これ以上スロットル弁181を閉塞していても、気筒の燃焼室内に吸入される吸入空気量が少なくなり、その後も失火し易いため、スロットル181を所定開度θ2まで開弁するのである。なお、この開度θ2は負圧を改善する程度であればよい。前記ステップ205は開弁制御手段を構成している。
【0051】
(a) さて、イグニッションスイッチ29がスタート位置に操作され、図9の始動時スロットル弁制御プログラムの処理ルーチンが実行されると、スロットル弁181は閉塞され、エンジン始動は完了していないとともに、スタータは作動状態となる。従って、ステップ201では「NO」と判定され、ステップ202では「YES」と判定される。ステップ203では燃料噴射が実行された気筒について膨張行程に達しておらず、「YES」と判定し、ステップ204において、スロットル弁108を閉塞保持する。
【0052】
その後、再度、或いは、再々度この始動時制御プログラムの実行処理に入っても、エンジン始動が完了せず、スタータがオン作動している場合には、ステップ201、202を経てステップ203において、「NO」と判定され、これ以上スロットル弁181を閉塞していても、気筒の燃焼室内に吸入される吸入空気量が少なくなり、その後も失火し易いため、ステップ205においてスロットル弁181を所定開度θ2まで開弁するようにした。
【0053】
この結果、本実施の形態では、エンジン10への燃料噴射開始後、所定期間経過した後は、従来と異なり、スロットル弁181を閉塞状態から所定開度θ2に開弁し、さらに、燃料の増量を行うため、始動を確実に行うことができる。
【0054】
(b)本実施の形態では、始動時燃料噴射量制御プログラムの処理ルーチンにおいて、ステップ103で、クランキング開始後経過時間Aを読み込み、ステップ104でエンジン回転数Bを読み込み、ステップ105において、現在の吸気管負圧C、及び負圧変化量ΔCを演算した。さらに、ステップ106において、噴射気筒の吸気弁13の閉弁時間tを算出し、ステップ107において、その閉弁時間t後の吸気管負圧Dを推測した。そして、ステップ108において、この吸気管負圧Dに基づき始動時の燃料噴射量を算出した。この結果、始動時燃料噴射量は、吸気行程過程の噴射気筒における吸気弁13の閉弁時における吸気管負圧に基づいて算出される。従って、この算出された始動時燃料噴射量は、吸気通路負圧に応じたものとなる。
【0055】
(c)本実施の形態では、始動時燃料噴射量制御プログラムの処理ルーチンにおいて、スロットル弁181が所定開度θ2開弁されて、負圧が軽減された状態においても、その負圧に応じた始動時燃料噴射量を算出するようにした。すなわち、ステップ110で、クランキング開始後経過時間A1を読み込み、ステップ111でエンジン回転数B1を読み込み、ステップ112において、現在の吸気管負圧C1、及び負圧変化量ΔC1を演算した。さらに、ステップ113において、噴射気筒の吸気弁13の閉弁時間tを算出し、ステップ114において、その閉弁時間t後の吸気管負圧D1を推測した。そして、ステップ115において、この吸気管負圧D1に基づき始動時の燃料噴射量を算出した。この結果、始動時燃料噴射量は、吸気行程過程の噴射気筒における吸気弁13の閉弁時における吸気管負圧に基づいて算出される。従って、この算出された始動時燃料噴射量は、吸気通路負圧に応じたものとなる。
【0056】
(d) 図3(a)、(b)、(c)、(d)は、クランキング開始から始動完了後までの、エンジン回転数、スロットル弁開度、吸気管負圧、及び各気筒の4サイクル(吸気、圧縮、膨張、排気行程)のタイムチャートをそれぞれ示している。
【0057】
図3(a)においては、気筒#4に初爆があった場合(図3(d)参照)、エンジン回転数が上昇し始め、その時点で始動完了が完了している。図3(b)はスロットル弁181は、始動完了後は開度θ1に保持されている。
【0058】
又、図3(c)の実線は、クランキング開始と同時にスロットル弁181を閉塞したままの状態で始動が完了した場合の吸気管負圧を示している。点線は、クランキング開始時に所定開度θ2を開弁した状態で始動が完了した場合を示している。この図に示すようにスロットル弁181の開度が所定開度θ2を開弁した場合には、吸気管負圧がそれほど大きならず、吸入空気量が増すことになる。
【0059】
なお、この発明は下記のように具体化してもよい。
(1)上記実施の形態においては、電子制御されるスロットル弁181を制御弁としたが、2弁式のエンジンシステムに具体化してもよい。すなわち、図10に示すようにインテークマニホールド15に制御弁としての電子式の吸気制御弁20を設け、吸気制御弁20はアクチュエータ21により開閉駆動される。又、この実施の形態ではスロットル弁181は、図示しないアクセルぺダルに対してリンクにて駆動連結されたものとされている。そして、この実施の形態では、この吸気制御弁20は、ECU50により、上記実施の形態と同様の図9の制御プログラムに従って制御されるようにしている。従って、この実施の形態においても、吸気制御弁20により上記実施の形態と同様に駆動制御できるため、同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
(2) なお、前記実施の形態では、ステップ106において、閉弁時間tを算出したが、閉弁時刻を算出してもよい。この場合、ステップ106は閉弁時刻算出手段を構成する。
【0061】
なお、以上の発明の実施の形態から、特許請求の範囲に記載された請求項以外に把握できる技術的思想について、以下に効果とともに記載する。
(1) 請求項1において、前記内燃機関は、機関始動時に燃料噴射開始後所定時間経過後は、始動完了前に開閉弁を所定開度開弁する内燃機関であって、機関始動時の上記開閉弁が所定開度開弁されている際の始動時燃料噴射量を機関回転数及びクランキング開始からの経過時間に基づいて算出する燃料噴射量増量手段を備えたものである。始動時に開閉弁が閉塞状態から所定開度開弁した場合、閉塞状態のときよりも吸入空気量が増加する。この増加した吸入空気量に見合う分だけ燃料を増量すると、始動時の初爆を確実に行うことができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、始動期間に亘って始動時燃料噴射量を吸気通路負圧に応じたものとすることができ、この結果、HC排出量を少なくすることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る内燃機関の燃料量制御装置が適用されるガソリンエンジンシステムを示す概略構成図。
【図2】 本発明の実施の形態における制御プロック図。
【図3】 (a)は始動時のエンジン回転数のタイムチャート、(b)は始動時のスロットル弁のタイムチャート、(c)は始動時の吸気管負圧のタイムチャート、(d)は各気筒の吸気、圧縮、膨張、排気行程等のタイムチャート。
【図4】 始動時基本噴射量の説明図。
【図5】 冷却水温補正係数のマップ図。
【図6】 吸気温補正係数のマップ図。
【図7】 図3の(c)及び(d)の拡大説明図。
【図8】 始動時燃料噴射量制御プログラムを示すフローチャート。
【図9】 始動時スロットル弁制御プログラムを示すフローチャート。
【図10】他の実施の形態の内燃機関の燃料量制御装置が適用されるガソリンエンジンシステムを示す概略構成図。
【符号の説明】
1…内燃機関の燃料量制御装置、10…エンジン、13…吸気弁、15…インテークマニホルド、16…燃料噴射弁、17…サージタンク、18…スロットルボディ、181…開閉弁としてのスロットル弁、20…制御弁としての吸気制御弁、21…吸気制御弁用アクチュエータ、26…点火プラグ、35…機関回転数検出手段としての回転数センサ、36…気筒判別センサ、50…計時手段、始動時燃料噴射量算出手段としてのECU、51…ROM、52…CPU、53…RAM。

Claims (1)

  1. 機関始動時に吸気通路に設けられた制御閉塞に基づき吸気通路内の負圧を高めた状態で当該機関に噴射する燃料の噴射量を制御する内燃機関の燃料噴射量制御装置において、
    機関回転数を検出する機関回転数検出手段と、
    クランキング開始からの経過時間を計時する計時手段と、
    前記制御弁の閉塞時における機関回転数及びクランキング開始からの経過時間に基づいて前記吸気通路内の負圧を推測し、該推測される吸気通路内の負圧に応じた機関始動時の燃料噴射量を算出する始動時燃料噴射量算出手段を備えた内燃機関の燃料噴射量制御装置。
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