JP3613662B2 - 内燃機関の吸気制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の吸気制御装置に関し、特に、アクセルペダルの踏込量とは独立に開度が設定される電子制御スロットル弁を用いた内燃機関における機関始動時の吸気制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両に搭載された内燃機関の回転数の制御は、運転席の足元に設置されたアクセルペダルの踏込量によって行われていた。即ち、従来の内燃機関には、その吸気通路にこのアクセルペダルにワイヤで接続されたスロットル弁があり、アクセルペダルが踏み込まれると、ワイヤを介してこのスロットル弁の開度が大きくなって内燃機関への吸入空気量(以後吸気量と記す)が増し、これに伴って燃料量も増えるので機関回転数が増大するようになっている。
【0003】
一方、近年、コンピュータの発達に伴い、内燃機関の回転数を電子的に最適に制御しようとする電子制御式の内燃機関が実用化されている。このような内燃機関の電子制御化としては、例えば、燃料噴射量制御、点火時期制御、吸排気弁の開弁時期の制御等が先行しており、これらに続いてスロットル弁の電子制御も実用段階に入っている。スロットル弁の開度を電子制御する内燃機関では、アクセルペダルの踏込量に関係なくスロットル弁の開度を設定することができる。
【0004】
このため、電子制御スロットル弁を使用して機関の始動時に吸気通路を閉じることにより、始動時の吸気量を減少させると共に、吸気管負圧を高めて燃料の気化促進を図ることが提案されている。これは、電子制御式の内燃機関では各燃焼室近傍の吸気通路内に燃料噴射弁が装着されているために、始動時に燃料が十分に微粒化しないことがあり、このときに始動性が悪化するのを防止するためである。このように機関の始動時に吸気通路を閉じる提案としては、実開平1−119874号に開示のものがある。
【0005】
実開平1−119874号に開示の技術は、吸気通路の燃料噴射弁の取り付け位置より上流側に吸気通路を閉鎖する開閉制御弁を設け、機関の始動から完爆に至るまでの期間、この開閉制御弁を閉塞するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の公報に記載の技術では、スタータのオン指令と開閉弁の全閉指令とを同時に行ったとしても、開閉制御弁が吸気通路を全閉にするタイミングが、内燃機関のスタータのオンによるクランキングの開始に間に合わないことがあり、このような場合には吸気管負圧が十分に得られず、吸気管負圧が機関の始動毎にばらつき、機関の始動性が不安定になる恐れがあった。
【0007】
そこで、本発明は、始動時に吸気通路を閉鎖して吸気管負圧を高め、燃料の微粒化を図るようにした電子制御スロットル弁を備えた内燃機関において、スタータのオンによるクランキングの開始時には必ず吸気通路を全閉にすることができる吸気制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成する本発明の構成上の特徴は、モータによって開閉駆動され、開度センサによって開度が検出される電子制御開閉弁を吸気通路内に備え、この電子制御開閉弁の開度によって内燃機関の運転状態に応じた空気量が供給される内燃機関の吸気制御装置であって、電子制御開閉弁は内燃機関の停止時に全閉位置から所定開度開いた位置にある内燃機関の吸入空気量の制御装置において、内燃機関のイグニッションスイッチがオンされた時に、電子制御開閉弁を全閉位置に制御する開閉弁の全閉制御手段と、開閉弁が全閉位置になったか否かを検出するスロットル弁の全閉判定手段、及び、イグニッションスイッチによりスタータを回転させる操作がなされた時に、開閉弁が全閉位置になったことを全閉判定手段が判定した後に、内燃機関を始動させるスタータを回転させるスタータ駆動手段とを備えることにある。
【0009】
このとき、開閉弁は全閉位置において、吸気通路との間に僅かな隙間が開くように構成されていても良いものである。
本発明によれば、機関の始動時にイグニッションスイッチによりスタータを回転させる操作がなされた時でも、電子制御開閉弁が全閉位置になるまではスタータが回転しないので、内燃機関のクランキング時には吸気管負圧が十分に得られることになり、機関の始動性が安定する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を用いて本発明の実施形態を具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
図1には本発明の一実施例の吸気制御装置を備えた電子制御燃料噴射式の多気筒内燃機関1が概略的に示されている。図1において、内燃機関1の吸気通路2には図示しないエアクリーナの下流側にスロットル弁3が設けられており、このスロットル弁3の軸の一端にはこのスロットル弁3を駆動するアクチュエータであるスロットルモータ4が設けられており、他端にはスロットル弁3の開度を検出するスロットル開度センサ5が設けられている。即ち、この実施例のスロットル弁3はスロットルモータ4によって開閉駆動される電子制御スロットル(以後、単に電子スロットルと記す)である。電子スロットルでは、スロットル弁3の開度指令値が入力された時に、スロットルモータ4がこの指令値に応答してスロットル弁3を指令開度に追従させる。
【0011】
吸気通路2のスロットル弁3の上流側には大気圧センサ18があり、下流側にはサージタンク6がある。このサージタンク6内には吸気の圧力を検出する圧力センサ7が設けられている。更に、サージタンク6の下流側には、各気筒毎に燃料供給系から加圧燃料を吸気ポートへ供給するための燃料噴射弁8が設けられている。スロットル開度センサ5の出力と圧力センサ7の出力は、マイクロコンピュータを内蔵したECU(エンジン・コントロール・ユニット)10に入力される。
【0012】
また、内燃機関1のシリンダブロックの冷却水通路9には、冷却水の温度を検出するための水温センサ11が設けられている。水温センサ11は冷却水の温度に応じたアナログ電圧の電気信号を発生する。排気通路12には、排気ガス中の3つの有害成分HC,CO,NOxを同時に浄化する三元触媒コンバータ(図示せず)が設けられており、この触媒コンバータの上流側の排気通路12には、空燃比センサの一種であるO2 センサ13が設けられている。O2 センサ13は排気ガス中の酸素成分濃度に応じて電気信号を発生する。これら水温センサ11及びO2 センサ13の出力はECU10に入力される。
【0013】
更に、このECU10には、アクセルペダル14に取り付けられてアクセル踏込量を検出するアクセル開度センサ15からのアクセルペダルの踏込量信号(アクセル開度信号)、バッテリ16に接続されたイグニッションスイッチ17からのキー位置信号(アクセサリ位置、オン位置、スタータ位置)、リングギヤ23の回転数を検出する回転数センサ21からの機関回転数Neや、油温センサ22からの潤滑油の温度が入力される。このリングギヤ23は機関1の始動時にスタータ19によって回転させられる。
【0014】
従来の内燃機関では、一般に直流直巻モータから構成されるスタータ19はイグニッションスイッチ17がスタータ位置にされた時にオンするスタータスイッチを介してバッテリ16に接続されている。従って、イグニッションスイッチ17がオンされ、その後にイグニッションスイッチ17がスタータ位置にされた時にスタータ19が起動されて機関1が起動する。そして、機関1が稼働を開始すると、ECU10が通電されてプログラムが起動し、各センサからの出力を取り込み、スロットル弁3を開閉するスロットルモータ4や燃料噴射弁8、或いはその他のアクチュエータを制御する。ECU10には、各種センサからのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器が含まれ、各種センサからの入力ディジタル信号や各アクチュエータを駆動する信号が出入りする入出力インタフェース101、演算処理を行うCPU102、ROM103やRAM104等のメモリや、クロック105等が設けられており、これらはバス106で相互に接続されている。ECU10の構成については公知であるので、これ以上の説明を省略する。
【0015】
一方、本発明では、スタータ19が直接バッテリ16に接続されておらず、スタータ駆動回路20を介してバッテリ16に接続されている。そして、このスタータ駆動回路20は、ECU10からのスタータ信号STが入力されないとスタータ19をバッテリ16に接続しないようになっている。
本発明では、機関1の始動時にスロットル弁3を一時的に閉弁して吸気通路2を閉塞し、スロットル弁3の下流側に負圧を発生させて機関の始動性を向上させている。一方、機関1が停止している時には、スロットル弁3は全閉位置にはなく、僅かに開いている。従って、機関1が停止している状態では、スロットル弁3の下流側の吸気通路2内は大気圧になっている。従って、機関1を始動させる時には、スロットルモータ4を駆動してスロットル弁3を全閉位置に制御する必要がある。本発明は、この機関1の始動時のスロットル弁3の全閉制御において、スロットル弁3が全閉になったことを確認してからスタータ19を回転させるものである。
【0016】
このため、ECU10には、前述のようにイグニッションスイッチ17からのキー位置信号とスロットル開度センサ5からのスロットル開度信号が入力されている。そして、本発明では、ECU10からのスタータ信号STがスタータ駆動回路20に入力されるのは、ECU10にイグニッションスイッチ17からのスタータ位置信号と、スロットル開度センサ5からのスロットル全閉信号が共に入力された時である。
【0017】
ここで、このような本発明における機関1の始動時のスタータの駆動制御の手順について、その一実施例を図2のフローチャートを用いて説明する。図2に示すルーチンは所定時間毎、例えば、数ms毎に実行される。
まず、ステップ201ではイグニッションスイッチ17がオンされたか否か、即ち、ECU10にイグニッションスイッチ17からオン位置信号が入力されたか否かを判定する。イグニッションスイッチ17がオンになっていない時にはこのままこのルーチンを終了する。一方、ステップ201でイグニッションスイッチ17がオンされたと判定した時にはステップ202に進む。
【0018】
ステップ202では始動フラグが“1”か否かを判定する。始動フラグは機関1が停止された時に“1”にされるものであるので、機関1の始動時には“1”となっているものである。従って、機関1の始動時にはステップ202の判定がYESとなってステップ203に進む。ステップ203では電子スロットルのスロットル弁3の開度TAを所定開度TAiだけ減らす処理を行い、スロットル弁3を閉弁方向に制御する。
【0019】
続くステップ204ではイグニッションスイッチ17がスタータ位置にされたか否かを判定する。即ち、スタータ19を回転させる動作が車両の運転者によってなされたか否かを判定する。イグニッションスイッチ17がスタータ位置にされていない場合はこのルーチンを終了し、イグニッションスイッチ17がスタータ位置にされた場合はステップ205に進む。
【0020】
ステップ205ではスロットル開度センサ5の検出値からスロットル弁3の開度TAが0になったか否か、即ち、スロットル弁3が全閉状態になったか否かを判定する。そして、スロットル弁3の開度が全閉になっていない場合はステップ209に進み、スタータ駆動回路20へのスタータ信号STの出力を保留してこのルーチンを終了する。この結果、本発明では、機関1の始動時にスロットル弁3が全閉状態になっていない場合は、運転者がイグニッションスイッチ17をスタータ位置に回してもスタータ19が回転しない。
【0021】
一方、ステップ205でスロットル弁3の開度が全閉になっていると判定した場合はステップ206に進み、スタータ駆動回路20にスタータ信号STを出力する。この結果、本発明では、機関1の始動時にスロットル弁3が全閉状態になっている場合は、運転者がイグニッションスイッチ17をスタータ位置に回した状態で、スタータ19が回転する。
【0022】
そして、続くステップ207で機関1が稼働したか否かを判定する。スタータ19が回転しているにもかかわらず、まだ機関1がまだ稼働していない場合は、機関1の始動が完了していないと判定してこのルーチンを終了する。これに対して、ステップ207で機関が稼働したと判定した場合は、機関1の始動が完了したと判定してステップ208に進み、始動フラグを“0”にしてこのルーチンを終了する。このようにして、機関1が始動すると始動フラグが“0”にされるので、以後ステップ202に進んできた時には、ステップ203からステップ209の処理が省略されてこのルーチンが終了する。
【0023】
以上説明した実施例のような手順により、本発明では、機関1の始動時に運転者がイグニッションスイッチ17をオン位置からスタータ位置に回した場合、電子制御スロットルのスロットル弁3が全閉になっている場合にのみ、スタータ19が回転して機関1が始動される。逆にいえば、運転者がイグニッションスイッチ17をオン位置からスタータ位置に回しても、電子制御スロットルのスロットル弁3が全閉になっていない場合はスタータ19が回転せず、機関1が始動されない。この結果、機関1のクランキングが行われる時には、必ずスロットル弁3が完全に閉じられているので、大きな負圧を発生させることができると共に、負圧のばらつきを抑えることができる。
【0024】
ここで、図1のように構成された電子制御スロットル弁3を備えた内燃機関1において、イグニッションスイッチ17がオンされた時の、スタータ19への通電状態、スロットル弁3の開度の変化、機関1の回転数Ne、及び、吸気管負圧の推移を時間と共に図3に示す。
図3に示すように、時刻T0でイグニッションスイッチ17がオンされると、イグニッションスイッチ17からECU10に入力されるオン位置信号がハイレベルになる。そして、この時点からスロットルモータ4がスロットル弁3を閉弁方向に駆動するので、スロットル開度TAが除々に下がり始める。その後、時刻T1で運転者がイグニッションスイッチ17をスタータ位置にすると、ECU10にはハイレベルのスタータ位置信号が入力される。
【0025】
従来の技術では、イグニッションスイッチ17がスタータ位置にされた時点でスタータ19が駆動されてクランキングが行われていた。従って、従来の機関回転数NEは図3に破線PANで示すように推移しており、これに伴って従来の吸気管負圧PAも破線PAPで示すように推移していた。
一方、本発明では、イグニッションスイッチ17がスタータ位置にされた時点では、まだスロットル開度TAが0(全閉)になっていないので、スタータ19は駆動されない。この後の時刻T2でスロットル開度TAが0になったことが検出されて初めてスタータ信号STが出力され、この時点からスタータ19が駆動されてクランキングが行われる。従って、本発明の機関回転数NEは図3に太線PINで示すように推移し、これに伴って本発明の吸気管負圧PAは太線PIPで示すように推移する。
【0026】
ここで、クランキング中の従来の技術における吸気管負圧PAPと本発明の吸気管負圧PIPとを対比してみると、本発明の吸気管負圧PIPの方が従来の技術における吸気管負圧PAPにくらべて斜線で示す部分DPにおいて吸気管負圧PAが低いことが分かる。よって、本発明ではクランキング中に十分な吸気管負圧PAを得ることができ、燃料の気化促進を図ることができる。また、従来の技術では、イグニッションスイッチ17が時刻T0でオン位置にされた後に、これがスタータ位置にされる時刻T1が運転者の操作の仕方によってばらつき、クランキング開始時のスロットル開度TAの値がばらついて安定した吸気管負圧が得られないのにに対して、本発明では、クランキングが開始される時には常にスロットル開度TAは0であるので、安定した吸気管負圧が得られて機関の始動性が安定する。
【0027】
なお、以上の実施例では、機関始動時にイグニッションスイッチ17がオン位置になった状態でスロットルモータ4にスロットル弁3の閉弁駆動を行わせるようにした制御を説明したが、機関始動時にイグニッションスイッチ17がアクセサリ位置になった状態でスロットルモータ4にスロットル弁3の閉弁駆動を行わせるようにしても良い。
【0028】
また、以上説明した実施例では、内燃機関の吸気通路の閉鎖を電子制御スロットル弁3により行うものについて説明を行ったが、電子制御スロットル弁3の代わりに、電子制御される吸気制御弁が吸気通路に別に設けられているものについても本発明を有効に適用することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の内燃機関の吸気制御装置によれば、機関の始動時にイグニッションスイッチによりスタータを回転させる操作がなされても、電子制御スロットル弁が全閉位置になるまではスタータが回転しないので、スタータの回転による内燃機関のクランキング時には必ず吸気通路は全閉状態であり、吸気管負圧が十分に得られて機関の始動性が安定するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の吸気制御装置が搭載された電子制御式多気筒内燃機関の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の始動時の電子制御スロットル弁の制御の手順を示すフローチャートである。
【図3】図2の制御手順におけるイグニッションスイッチのオン位置信号とスタータ位置信号、スタータへのスタータ信号、スロットル開度、機関回転数、及び吸気管負圧の推移を、従来技術と比較しながら時間と共に示したタイムチャートである。
【符号の説明】
2…吸気通路
3…スロットル弁
4…スロットルモータ
5…スロットル開度センサ
10…ECU
14…アクセルペダル
17…イグニッションスイッチ
19…スタータ
20…スタータ駆動回路
21…回転数センサ
23…リングギヤ
Claims (2)
- モータによって開閉駆動され、開度センサによって開度が検出される電子制御開閉弁を吸気通路内に備え、この電子制御開閉弁の開度によって内燃機関の運転状態に応じた空気量が供給される内燃機関の吸気制御装置であって、前記電子制御開閉弁は前記内燃機関の停止時に全閉位置から所定開度開いた位置にある内燃機関の吸入空気量の制御装置において、
内燃機関のイグニッションスイッチがオンされた時に、前記電子制御開閉弁を全閉位置に制御するスロットル弁の全閉制御手段と、
前記開閉弁が全閉位置になったか否かを検出する開閉弁の全閉判定手段、及び、
前記イグニッションスイッチによりスタータを回転させる操作がなされた時に、前記開閉弁が全閉位置になったことを前記全閉判定手段が判定した後に、前記内燃機関を始動させるスタータを回転させるスタータ駆動手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の吸入空気量の制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置において、前記開閉弁は前記全閉位置において、前記吸気通路との間に僅かな隙間が開くように構成されていることを特徴とする内燃機関の吸入空気量の制御装置。
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