JP3673944B2 - お茶の淹れ方 - Google Patents
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Description
本発明は嗜好飲料の淹れ方に係り、更に詳しくは紙コップや樹脂コップ等の容器に注入した温湯内に浸漬したバック内から滲出したお茶や紅茶等の嗜好料の要素を含む嗜好飲料の淹れ方に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近来、オフィス街や近郊都市部の駅周辺等のコーヒーショップでは、出社前の通勤者等にお茶やコーヒー等の嗜好飲料のテイクアウト(take-out)サービスが行われている。一般に、この種のお茶やコーヒー等のような嗜好品は栄養の摂取を目的にせずに、基本的には香り(香味)Xと嗜好度Yとの食感的な刺激を得るための飲食物と看なされている。従来から用いられていたテイクアウト用のティーの飲用容器(例えば、USP4,589,569)の蓋等には小さい飲み口は設けられているが、緑茶や紅茶等の香りXを嗅ぐための配慮がなく、蓋によって容器内部が密封状態に保持されていた。
【0003】
また、この種の緑茶や紅茶等の嗜好品の味や香りを充分に味わうためには、喫飲前に充分な準備時間を設けることが必要になる。しかしながら、前記のように出社前で時間に追われる通勤者等を対象とするテイクアウト・サービスの場合は時間に制約されるので、待ち時間が長くなると顧客に不評を買うという致命的な欠点がある。
【0004】
一方、煎茶の場合において、通常の審査に使用される中級煎茶の濃度を1として、苦味a,渋味b,甘味c,うま味dの各味要素を総合した嗜好度Yを計測した調査結果が知られている(朝倉書店刊…シリーズ食品の科学…「茶の科学」参照)。この調査結果の特性を示すグラフが、図3に示されている。図3の縦軸は各味要素毎の相対強度で、横軸は濃度である。上記の調査結果によれば、図3に示すように嗜好度Yとうま味dとの間に高い相関関係がみられ、嗜好度Yは濃度が2/3〜1の範囲内(ここでは、緑茶・紅茶・ウーロン茶等の嗜好品毎の上記のような濃度範囲内で、最適な濃度を基準濃度Dsと呼ぶ)で高い値を示すことが認められている。
【0005】
この場合、浸漬したお茶の濃度を左右する成分要素の滲出度(滲出速度)と香りXの放出度(放出速度)とは浸漬温度にも依存するが、滲出度については浸漬時間の経過で徐々に減少するが香りXは家庭用の芳香剤にみられるように滲出度に比較して少ない時間の経過で周囲に散逸して希薄化されるような傾向がある。ところが、従来のテイクアウトティの場合は多数の顧客に即応するために、注文と同時に容器に注入した温湯に普通のティーバックが浸漬される。そして、容器の開口部に蓋をして、そのまま顧客に手渡すようなことが行われていた。このような嗜好飲料の淹れ方は、主要駅構内の売店で駅弁と併せて販売されるときの“お茶”についてもほぼ共通している。テイクアウト容器を受けた顧客は近くの休憩場所や社内に持ち帰って、その後の各自の状況に応じた或る時間の範囲内に淹れられたお茶を喫飲するようにことが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のテイクアウト用のティーの飲用容器は上述のように、事実上容器内部が密封された状態に保持されていた。このため、喫飲者は蓋に設けられた飲み口によりお茶の味を味わうことができても、喫飲しながら各嗜好品毎の独特の芳しい香りXを充分に嗅ぐことができなかった。また、ティーバックの浸漬後の処理が事実上客任せで、その上茶葉の滲出度等に配慮がなされていないような状態であった。このため、ティーバックの引き上げが時間的に早過ぎるときは、エッセンス(要素)の滲出不足で嗜好度Yが低くなり茶葉も無駄になる。逆に、温湯に浸したティーバックの取り出しが遅くなると、香りXが失われて新鮮味がなくなるばかりか、苦味aと渋味bが濃厚になる。このように、従来はティーバックの利用が嗜好度Yに対応する濃度に無関係に行われて、結果的に折角の嗜好品の香りXと嗜好度Yの刺激効果が無に帰する等の問題点があった。
【0007】
本発明は、上記のような従来の嗜好飲料用容器を用いた嗜好飲料の淹れ方の問題点を解消するためになされたもので、緑茶や紅茶等の嗜好品の滲出度と放出度との時間的特性に着目して、嗜好飲料の淹れ方を前段と後段の2段階の工程に分けて嗜好飲料を淹れるような淹れ方を採用した。そして、第1の工程で基準濃度に近い濃度に速やかに到達させると共に、第2の工程でバックにより喫飲時に徐々に基準濃度に達するような準備工程を済ませておいて即座に顧客に手渡すような淹れ方を採用した。この結果、顧客野町時間が少なくしかも喫飲時に香りXと嗜好度Yが高く、テイクアウトに好適な嗜好飲料の淹れ方を実現するようにしたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、3〜9gの茶葉をテイクアウト用飲用容器に入れ、ほぼ200CCの温湯に1〜2分浸漬した後、該容器から取り出す第1工程と、0.1〜1gの茶葉が封入されたティーバックを、前記第1工程によって淹れられたお茶の中に浸漬させる第2工程とを備えることを特徴とするお茶の淹れ方である。
また、3〜9gの茶葉を容器に入れ、ほぼ200CCの温湯に1〜2分浸漬した後、該容器に淹れられたお茶をテイクアウト用飲用容器に入れる第1工程と、
0.1〜1gの茶葉が封入されたティーバックを、前記第1工程で淹れられた前記テイクアウト用飲用容器中のお茶の中に浸漬させる第2工程と、を備えることを特徴とするお茶の淹れ方。
【0009】
前記第2工程で使用される茶葉は、前記第1工程で使用される茶葉に比較して、茶葉形状が大きくかつお茶の要素の滲出度が遅いものであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1
図1は本発明の実施の形態1の構成を示す斜視説明図である。本発明の実施の形態では、緑茶を淹れるテイクアウト用のティーサービスを例示して説明する。図1において、1は嗜好飲料用容器である。2は本体、3は本体2を覆う蓋で、蓋付きの嗜好飲料用容器1が構成される。嗜好飲料用容器1における本体2の素材には100%バージンパルプの原紙が用いられて、内側に水の浸透防止機能を付与するためのポリエチレンのラミネート加工が施されている。また、蓋3にはポリスチレンのような高分子材が用いられて、型を用いた加熱圧縮成型機により半透明の薄い板材を浅いキャップ状に成型して作られている。
【0011】
21は本体2の開口部、22は開口部21の端部周辺を小径円筒状に丸めたカール部、23はボトムである。カール部22により開口部21が補強されると共に、喫飲時にカップ縁に接する唇に柔軟的な感触を与える。31は蓋3の周辺の封鎖部、32は封鎖部31内で複数箇所に形成された凹凸部である。また、33は蓋3の外側部を連鎖的に取り巻く凹部で構成する括れ部、34は括れ部33の下端に形成されたスカート部である。封鎖部31は断面逆U字状に形成されて前記本体2のカール部22に対向する。そして、スカート部34を摘んで放射方向に加える力を断続すれば、括れ部33の弾性により蓋3の直径が伸縮して本体2の開口部21に弾性的に嵌合する。本体2と蓋3の嵌合により、カール部22と封鎖部31が密着して水漏れが防止される。35は蓋3の上面に偏心して貫設され、香りXの放出口との連続孔で構成した楕円形の飲み口である。
【0012】
4は例えば緑茶からなるティー、5はティーバック(4,5は総称)、6は保持片である。51は紙製の濾紙を用いたティーバック5の包袋、52は包袋51内に封入された茶葉である。図示されたティーバック5bは追って説明する2次バックで、予め第1の工程を経て淹れられたティー4aに浸漬されて、主として不足濃度を満たし香り付けをするためのものである。そして、このティーバック5bは本体2と同じような素材で作られた保持片6により本体2の内側面に吊り下げられて、第1の工程で既に淹れられたティー4aに緑茶の要素を徐々に滲出して前述の基準濃度Dsとほぼ等しい濃度にして新鮮な香りXを加えたティー4bが淹れられるようになっている。
【0013】
このような構成の実施の形態1の動作を、次に説明する。
第1の工程
先ず初めに、例えば5000CC程度のやや多量のお湯を沸かして、沸いた温湯には嗜好品に適するようにカルキ抜き等の精製処理が加えられる。この種の嗜好品の用水としては、自然水の利用が望ましい。精製処理された温湯は、沸騰温度よりやや低い一定な適温に保持される。その後、図1に示したような容器の本体2を厨房に設置されたテーブル上に並べて、各容器2の内周面に第1工程用の1次テーバック5aが吊り下げられて待機する。1次ティーバック5aに封入された茶葉としては、細かい茶葉で緑茶要素の滲出度の速い茶種や通常量を超えた茶葉が封入されている。
【0014】
ここで、顧客からの注文を受けると、上記した待機中の本体2内に上記の温湯が注入される。この場合、店先に一括注文があるときは、一括個数に応じた複数個の本体2に温湯が同時に注入されることもある。本体2内への温湯の注入で、1次ティーバック5aから緑茶の要素が温湯内に急速に滲出する。そして、茶葉の最適な滲出状況を見計らって、店内のエキスパートによりティーバック5aが取り出される。上記の特性を持つ1次ティーバック5aによって、第1の工程では原則として基準濃度Ds以下で1/2〜2/3付近の濃度の1次ティー4aが短時間で淹れられる。
【0015】
第2の工程
次いで、第2の工程に移行する。第2工程の2次ティーバック5bには茶葉の形状がやや大きめで滲出度が遅く、要すればうま味d等の各味要素が高く香りXの放出時間の長い茶葉が適する。このような選択的な特性を有する2次ティーバック5bが、第1の工程で淹れられた本体2内のティー4aに引き続いて浸漬される。そして、ティーバック5bを浸漬した本体2に蓋3が覆われて、そのまま顧客に手渡される。手渡された本体2内の2次バック5bの緑茶からは要素が徐々にティー4aに滲出して、第1の工程に消費した時間に比較してやや長い時間の経過を辿って基準濃度Dsに達することになる。
【0016】
したがって、手渡されたテイクアウトの本体2を断熱カバーで包囲して持ち帰った顧客は、上記の第2工程のやや長い消費時間内で基準濃度Dsに対応する高い嗜好度Yを備えた緑茶を満喫することができる。また、蓋3に設けられた大きな楕円形の飲み口35の残余の開口部を利用して、前述の2次ティーバック5bの長い放出度を持つ選択的な特性に基づいて入れ立ての緑茶からなるティー4bから立ち登って放散される新鮮な香りXを嗅ぐことも可能になる。
【0017】
実施の形態2
図2は実施の形態2の構成を示す説明図で、(a)は蓋の平面図、(b)は(a)のX−X断面図である。実施の形態2では、本体2を覆う蓋3に改良が加えられている。図2(a),(b)において、36は蓋3の上部周辺に形成された円環状の突出部、37は突出部36内に設けられたリップ状の凹欠部、38はその傾斜面、9は緑茶等の香りを放出する3個の放出口である。なお、31と35は実施の形態1と共通する封鎖部と飲み口である。実施の形態2では飲み口35と3個の放出口39は図示するように、十字状の切断線を重合させた菊花弁状に形成されている。飲み口35は突出部37の突出面に形成され、放出口39は凹欠部37の傾斜面38に設けられている。
【0018】
このような構成の蓋3を構成した実施の形態2においても、実施の形態1のときと同様の工程を経てティー4が淹れられてテイクアウトのティー4や紅茶等のサービスが行われる。この際、実施の形態2の蓋3の場合では飲み口35と放出口39が何れも菊花弁状に形成されているので、顧客との受渡時に本体2を多少傾けたり振動を加えても内部のティー4が零れ出す心配がない。また、飲み口35が周辺の突出部36に設けられているので、極めて飲み易い。しかも、鼻先の傾斜面38の3個の放出口39を利用して、淹れたてで放出される新鮮な香りXを嗅ぎながら飲むこともできる。また、好みにより菊花弁状の飲み口35に差し込んだストローで吸引して味わうこともできて極めて都合がよい。
【0019】
因みに、本発明の実施例を述べれば、次の通りである。
図1に示した本体2の内部に細かい茶葉で封入量が通常の1〜3倍(3g〜9g)の1次バック5aをほぼ200ccの温湯に浸漬し、1〜2分の経過後に1次バック5aを取り出した。そして、茶葉の封入量が通常の1/30〜1/3(0.1g〜1g)の2次バック5bをこの第1の工程で淹れた緑茶に浸漬して、数分後に蓋3に形成した2cm×4cmの楕円形の飲み口を利用して喫浸した。この実施結果では淹れられた緑茶の香りXが高く、まろやかなうま味dが味わえて嗜好度Yも充分であった。また、2次バックの浸漬時間が30分経過しても渋味が強くならないことも確認された。
【0020】
なお、上述の実施の形態では緑茶のテイクアウトのサービスの場合を例示して説明したが、紅茶やウーロン茶(中国茶)等についても本発明は適用できる。また、実施の形態では第1と第2の工程で異なる茶種を用いたが、同じ茶種を用いるようにしてもよい。また、2次バックを容器の本体と同じ紙製の保持片に保持した図面を示して説明したが、吊り糸等を利用してもよい。また、第1の工程でテイクアウト用の各容器に一次バックを浸漬した場合を挙げて説明したが、大形の容器を用いて第1の工程を纏めて処理し、この纏めて淹れた嗜好飲料を各容器に分けて注入してから第2の工程用の2次バックを浸漬して緑茶等を淹れるようにしてもよい。さらに、飲み口や放出口の形状や個数等についても実施の形態に示したものに限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で形状や個数等を適宜変更することができる。
【0021】
本発明は、3〜9gの茶葉をテイクアウト用飲用容器に入れ、ほぼ200CCの温湯に1〜2分浸漬した後、該容器から取り出す第1工程と、0.1〜1gの茶葉が封入されたティーバックを、前記第1工程によって淹れられたお茶の中に浸漬させる第2工程とを備えたお茶の淹れ方を採用した。
また、3〜9gの茶葉を容器に入れ、ほぼ200CCの温湯に1〜2分浸漬した後、該容器に淹れられたお茶をテイクアウト用飲用容器に入れる第1工程と、0.1〜1gの茶葉が封入されたティーバックを、前記第1工程で淹れられた前記テイクアウト用飲用容器中のお茶の中に浸漬させる第2工程とを備えたお茶の淹れ方を採用した。
【0022】
この結果、本発明によれば、僅かな待ち時間で注文に即応できてテイクアウト式サービスに好適で、しかもお茶やコーヒー等の嗜好品の味と香りを充分に味わいながら喫飲できる嗜好飲料の淹れ方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を示す説明図である。
【図2】実施の形態2の構成を示す説明図である。
【図3】煎茶の嗜好度と各味要素の濃度との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1 嗜好飲料用容器
2 本体
3 蓋
4 ティー
4a 1次ティー
4b 2次ティー
5 ティーバック
5a 1次ティーバック
5b 2次ティーバック
6 保持片
21 開口部
22 カール部
23 ボトム
31 封鎖部
32 凹凸部
33 括れ部
34 スカート部
35 飲み口
36 突出部
37 凹欠部
38 傾斜面
39 放出口
51 包袋
52 茶葉
X 香り
Y 嗜好度
Claims (3)
- 3〜9gの茶葉をテイクアウト用飲用容器に入れ、ほぼ200CCの温湯に1〜2分浸漬した後、該容器から取り出す第1工程と、
0.1〜1gの茶葉が封入されたティーバックを、前記第1工程によって淹れられたお茶の中に浸漬させる第2工程と、を備えることを特徴とするお茶の淹れ方。 - 3〜9gの茶葉を容器に入れ、ほぼ200CCの温湯に1〜2分浸漬した後、該容器に淹れられたお茶をテイクアウト用飲用容器に入れる第1工程と、
0.1〜1gの茶葉が封入されたティーバックを、前記第1工程で淹れられた前記テイクアウト用飲用容器中のお茶の中に浸漬させる第2工程と、を備えることを特徴とするお茶の淹れ方。 - 前記第2工程で使用される茶葉は、前記第1工程で使用される茶葉に比較して、茶葉形状が大きくかつお茶の要素の滲出度が遅いものである、ことを特徴とする請求項1または2記載のお茶の淹れ方。
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