JP3673477B2 - マグネシウム合金の皮膜生成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金にマグネシウム化合物から成る絶縁皮膜を厚く生成する様にしたマグネシウム合金の皮膜生成方法に関し、特に、耐食性が高い皮膜を生成する技術及び皮膜の生成効率(生成速度)を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種構造材料の軽量化に対応するため、アルミニウムより軽いマグネシウムの利用が増加している。
マグネシウムは、比重1.7と実用金属中最も軽量であるばかりでなく、成形性、振動吸収性、耐くぼみ性等の点で非常に優れ、又再生に必要なエネルギーが少なく、リサイクルに適した材料であるため、近時特に注目されている。
しかしながら、メッキ処理には一般的に酸性浴を用い、マグネシウムは強アルカリ性に強い反面、中性、弱酸性に弱く、酸性浴中で容易に溶解してしまうため、このマグネシウムが主成分のマグネシウム合金上に十分な耐食性を備えたメッキを施す方法は実用化されていない。
又、マグネシウム合金は、塗料との密着性が悪く、マグネシウム合金上に直接塗装を施すことは困難である。
そこで、JIS H8651ー1995に種々規定されている様に、化学薬品により、マグネシウム合金の素地の表面を化成処理するか、或いは陽極酸化により、素地の表面にマグネシウム酸化物の皮膜を生成して、どちらか一方の方法で素地の表面と塗料との密着性を改善した後、塗装を施して防食処理を行っていた。
ところが、素地表面への直接塗装による防食処理方法は、素地の表面に施した塗膜が摩耗、剥離し易く、耐食性を維持出来なかった。
又、マグネシウム酸化物が電気絶縁性を有することに着目し、陽極酸化により、マグネシウム合金の素地の表面に厚くマグネシウム酸化物の絶縁皮膜を生成して、皮膜生成だけで防食処理を行う方法が試みられたが、JISの陽極酸化方法では、塗装の下地として必要な薄い皮膜を一応生成することが出来るとしても、均一全面的な皮膜生成は極めて困難であり、又皮膜生成処理の時間を長くしても、マグネシウム合金の素地をプラス極にすることから、皮膜の生成と共に、マグネシウム合金鋳造化学成分中のアルミニウム、亜鉛、銅等が溶解して、素地の表面が著しく粗らくなって皮膜が成長しないため、厚く皮膜生成出来なかった。
【0003】
そこで、上記課題を解決すべく、脱脂等の前処理を行ったマグネシウム合金に対し、強アルカリ性の電解液で、プラスとマイナスを周期的に反転出力するプラスマイナス極性反転電源によりアルカリ電解を行う様にしたマグネシウム合金の皮膜生成方法及びその電解液を開発した。
この方法及び電解液により、所期の目的を達成したが、生成した皮膜の耐食性、皮膜の生成効率の点で改良が望まれた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐食性が高い皮膜を生成したり、効率良く皮膜を生成する様にしたマグネシウム合金の皮膜生成方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題に鑑み、脱脂等の前処理を行ったマグネシウム合金に対して、水酸化ナトリウムとリン酸を添加したアルカリ性の電解液で、プラスとマイナスを周期的に反転出力するプラスマイナス極性反転電源によりアルカリ電解を行うことによって、アルカリ電解のプラス極時にリン酸の作用で酸化マグネシウムを電解生成すると共に、マイナス極時に電解研磨類似作用で処理面を平滑化し、プラス極とマイナス極の反転付加を繰り返して耐食性が高い酸化マグネシウムが主成分の皮膜を成長させる様にして、上記課題を解決する。
又、マグネシウムの含有率が92%以上のマグネシウム合金に対して、脱脂等の前処理を行い、次に水酸化ナトリウムとスルホン酸ナトリウムを添加したアルカリ性の水溶液で、プラスマイナス極性反転電源によりアルカリ電解を行うことによって、アルカリ電解のプラス極時に水酸化マグネシウムを電解生成して、従来の陽極酸化では生成不可能であった厚さの皮膜を短時間で生成する
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の耐食性が高い皮膜を生成する方法は、マグネシウム合金に対して、先ず浸漬脱脂、水洗の前処理を行い、次に水酸化ナトリウムとリン酸を添加したアルカリ性の電解液で、後述するプラスマイナス極性反転電源によりアルカリ電解を行い、即ちマグネシウム合金の素地がプラス極となる陽極電解(陽極酸化)、且つマイナス極となる陰極電解の状態でアルカリ電解を行って、マグネシウム化合物から成る皮膜を均一全面的に生成し、その後水洗、乾燥を行う。(この方法をマグマカラーSL法と称す。)
この皮膜生成方法は、マグネシウム合金の組成に何ら限定されず、様々な種類のマグネシウム合金、例えばAZ91D等のダイカスト材、AZ31、AZ61等の展伸材に適用可能であり、生成される皮膜の主成分は酸化マグネシウム(MgO)である。
酸化マグネシウムは、電気絶縁性を有すると共に、化学的に安定性が極めて高く、酸化作用を受けてもこれ以上酸化反応が進行しないため、酸化マグネシウムが主成分の皮膜は耐食性が頗る高い。
【0007】
上記の脱脂等の前処理、アルカリ電解処理の具体的工程及び処理液組成の一例、目的等を説明する。
図1に示す様に、1)浸漬脱脂、2)水洗、3)アルカリ電解、4)水洗、5)乾燥の各処理を順次行う。
【0008】
【0009】
2)水洗
(目的) 素地表面に付着している脱脂処理液を除去する。
【0010】
【0011】
4)水洗
(目的) 皮膜表面に付着している電解処理液を除去する。
【0012】
5)乾燥
(処理条件) 熱風乾燥
【0013】
上記のマグマカラーSL法におけるアルカリ電解の処理液(電解液)は、水酸化ナトリウムとリン酸を添加して成した水溶液である。
マグネシウム合金の主成分であるマグネシウムは、中性ないし酸性の水溶液中で容易に溶けてしまうため、上記電解液はアルカリ性でなければならず、更に皮膜生成効率の点からpH11以上の強アルカリ性に調整したものが好ましい。
つまり、水酸化ナトリウムは、電解液をアルカリ性にして、マグネシウムの溶解を抑止すると共に、皮膜の生成効率(生成速度)に影響し、添加量が50g/l未満の場合はマグネシウムの溶解を抑止するも、皮膜の生成効率が悪く、250g/l超過の場合は皮膜の生成効率が変化せず、使用後の処理液を排棄処分する際の中和処理等の点で非合理であるため、水酸化ナトリウムの添加量は50〜250g/lの範囲が好ましく、皮膜表面の平滑性の点で100〜150g/lの範囲が特に好ましい。
リン酸は、酸化力が強いため、アルカリ電解のプラス極時に、マグネシウムの酸化を促進して酸化マグネシウムを電解生成すると共に、皮膜の生成効率に影響し、添加量が30g/l未満の場合は酸化力不足で酸化マグネシウムが生成せず、175g/l超過の場合は電解液が中性ないし酸性になって素地のマグネシウムが溶解してしまうため、リン酸の添加量は30〜175g/lの範囲が好ましく、皮膜表面の平滑性の点で70〜105g/lの範囲が特に好ましい。
又、電解液の温度が50℃未満の場合は液抵抗(電解液の電気抵抗)が大きくなって、電解反応を阻害するため、皮膜の生成効率が悪く、80℃超過の場合は電解液が蒸発し易く組成が変動するため、電解処理時の電解液の温度は50〜80℃の範囲が好ましい。
【0014】
上記のアルカリ電解は高速電流反転電源又は交直切換電源の様なプラスとマイナスが周期的に反転出力される電源を使用して行う。
図2は高速電流反転電源について説明図するための図であり、(a) は直流法による電流波形、 (b) は反転電流法による電流波形の一例である。
高速電流反転電源による図2(b) に示した反転電流波形の場合は、プラス極20に対してマイナス極1の反転比率(Duty比)であり、Duty=T1/(T1+T2)×100=20/(20+1)×100≒95(%)となる。
尚、この反転比率は種々に変更可能であり、一例として反転比率20:1の場合を詳細に説明する。
例えば60Hz地区では、理論計算式T=1/F=1000/(60Hz×6)≒3msec、1山約3msecで、反転比率20:1の場合の1サイクルは図3に示す通りであるから、周波数は計算式にて13.3Hzになる。
従って、図2(b) に示す参考波形の反転比率(Duty比)20:1とは、1サイクルにおいて上記時間のプラスとマイナスが1秒間に13.3回繰り返し出力される特殊波形である。
そして、この高速電流反転電源による電流密度は皮膜の生成効率に影響し、1A/dm2 未満の場合は、皮膜生成速度が著しく低く生産性が悪いため、実用的でなく、15A/dm2 超過の場合は、高電流密度に対応した素地吊り下げ用の治具を作成する上で支障があるため、電流密度は1〜15A/dm2 の範囲が好ましく、同じ理由から2〜6A/dm2 の範囲が特に好ましい。
又、1サイクル中のマイナス極時間が長くなると素地表面からの水素の発生量が増加するため、反転比率が60%未満の場合は、発生した水素によって皮膜の生成、皮膜表面の平滑性が阻害され、99%超過の場合は、皮膜生成の活性点の移動が遅くなって均一に皮膜生成せず、又素地の部分溶解が生じるため、反転比率は60〜99%の範囲が好ましく、同じ理由から86〜96%の範囲が特に好ましい。
尚、一般的に電解処理による皮膜生成は、被処理物(素地)の全面に同時に皮膜生成が開始するのではなく、表面活性の高い部分(不純物が少なく電流が流れ易い部分)から皮膜が生成し始め、その後表面活性の低い部分にも皮膜が生成されて、次第に皮膜生成面積が広がっていく。
この現象が上記の活性点の移動である。
【0015】
次に交直切換電源においては、図4(a) 、(b) に示す様な直流と交流を切換える交直切換電源、或いは図4(c) に示す様な直流に交流を併用する交直併用又は交流併用電源を使用し、これらを交直切換電源と称し、又アルカリ電解には上述の高速反転電源又は交直切換電源以外の電源、例えば単相不完全整流波電源等の使用も可能であり、又交流は単相でなく三相のものでも良い。
【0016】
次に実施例を示し、耐食性が高い皮膜の生成方法について更に説明する。
電解液に添加したリン酸が皮膜生成に及ぼす影響に関し、下記の方法で試験した。
水酸化ナトリウムの添加量を100g/lとすると共に、リン酸の添加量を夫々30g/l未満、60g/l、80g/l、110g/lとした4種類の電解液を用い、上記条件で前処理を行ったマグネシウム合金AZ91Dに対し、温度65℃、電流密度3A/dm2 、反転比率95%で約20分間アルカリ電解して皮膜生成した。
その結果、図5に示す様に、リン酸添加量30g/l未満の場合の電解電圧は、処理時間が経過しても初期値の5Vから変化せず、60g/l、80g/l、110g/lの場合の電解電圧は、夫々12分後、6分後、4分後から処理時間の経過と共に徐々に上昇し、20分後の電解電圧はリン酸の添加量が多い程高い値を示した。
夫々の電解液で生成した皮膜表面の成分を、X線回折装置及びEPMAを用いて分析した結果、リン酸添加量30g/l未満の場合の皮膜表面の主成分は水酸化マグネシウムで、リン酸添加量60g/l、80g/l、110g/lの場合の皮膜表面の主成分は酸化マグネシウムであった。
又、電流値は電源装置の設定により一定のため、電解電圧値の上昇は、電極(マグネシウム合金素地)の電気抵抗値の上昇を示し、これは電気絶縁性が高い酸化マグネシウムの生成、並びに酸化マグネシウムが主成分の皮膜の成長(皮膜厚さの増加)を示している。
以上の結果から、電解液にリン酸を添加することによって、酸化マグネシウムの皮膜が生成し、皮膜の生成効率はリン酸の添加量に比例することが確認された。
又、図6はリン酸の添加量を110g/lとした場合の処理時間と皮膜厚さの関係を示した図であり、図に示す様に、20分間で厚さ約10μmの皮膜が得られた。
この皮膜はJIS Z2371準拠の塩水噴霧試験に1000時間以上耐え、DC500Vメガーテストで電気絶縁抵抗50MΩ以上の結果を得た。
塩水噴霧試験1000時間以上の耐食性、抵抗50MΩ以上の絶縁性は実用上十分な値である。
尚、絶縁測定は、株式会社三和計器製作所製の絶縁抵抗計PDMー506を用いて行った。
【0017】
次に皮膜生成方法の他例について説明する。
短時間で皮膜を生成する方法は、マグネシウムの含有量が92%以上のマグネシウム合金に対して、先ず浸漬脱脂、水洗の前処理を行い、次に水酸化ナトリウムとスルホン酸ナトリウムを添加したアルカリ性の電解液で、プラスマイナス極性反転電源によりアルカリ電解を行って、マグネシウム化合物から成る皮膜を均一全面的に生成し、その後水洗、乾燥を行う。(この方法をマグマカラーSH法と称す。)
この皮膜生成方法は、マグネシウムの含有量が92%以上のマグネシウム合金、例えばAZ31、AZ61等の展伸材に適用可能である。
生成される皮膜の主成分は水酸化マグネシウム(Mg(OH)2 )であり、水酸化マグネシウムは、電気絶縁性を有する。
この方法は、図7に示す様に、1)浸漬脱脂、2)水洗、3)エッチング、4)水洗、5)表面調整、6)水洗、7)アルカリ電解、8)水洗、9)乾燥の各処理を順次行うが、1)〜2)はマグマカラーSL法と同処理のため、3)以降についてのみ具体的工程及び処理液組成の一例、目的等を説明する。
【0018】
【0019】
8)水洗
(目的) 皮膜表面に付着している電解処理液を除去する。
【0020】
9)乾燥
(処理条件) 熱風乾燥
【0021】
上記のマグマカラーSH法におけるアルカリ電解の処理液(電解液)は、水酸化ナトリウムとスルホン酸ナトリウムを添加して成した水溶液である。
この電解液は、マグマカラーSL法の電解液と同様に、アルカリ性でなければならず、pH11以上の強アルカリ性に調整したものが好ましい。
水酸化ナトリウムの添加量についても、同様に50〜250g/lの範囲が好ましく、特に好ましくは100〜150g/lの範囲である。
スルホン酸ナトリウムは、電解液の電流分布を均一にして均一電解を行い、添加量が1g/l未満の場合は電解液の電流分布の均一化効果が無く、40g/l超過の場合は水酸化ナトリウム水溶液に溶解せず、過飽和になるため、スルホン酸ナトリウムの添加量は1〜40g/lの範囲が好ましい。
アルカリ電解に使用するブラスマイナス極性反転電源、並びに高速電流反転電源の電流密度及び反転比率の最適条件についても、上記のマグマカラーSL法と同一である。
【0022】
次に実施例を示し、短時間で皮膜生成する方法について更に説明する。
電解処理時間と生成された皮膜の厚さに関し、下記の方法で試験した。
アルミニウム約3%、亜鉛約1%、マグネシウム約96%の組成から成るマグネシウム合金AZ31に対し、適宜方法で前処理を行い、次いで水酸化ナトリウム100g/lと、スルホン酸ナトリウム5g/lを添加したアルカリ性の電解液を用い、温度65℃、電流密度3A/dm2 、反転比率95%で約10分間アルカリ電解して皮膜生成した。
その結果、図8、9に示す様に、電解電圧は処理時間が経過しても初期値の4Vから変化せず、10分後に厚さ約10μmの皮膜が得られた。
この皮膜表面の成分を、X線回折装置及びEPMAを用いて分析した結果、水酸化マグネシウムであった。
又、この皮膜はJIS Z2371準拠の塩水噴霧試験に約100時間耐え、DC500Vメガーテストで電気絶縁抵抗5MΩ以上の結果を得た。
尚、絶縁測定は、上記と同一のものを用いて行った。
以上の結果から、マグネシウムの含有率が高いマグネシウム合金に対し、アルカリ性の電解液を用いてアルカリ電解することによって、従来の陽極酸化では生成不可能であった約10μmの厚さの皮膜が短時間で生成されることが確認された。
又、この水酸化マグネシウムが主成分の皮膜は、耐食性の点で酸化マグネシウムが主成分の皮膜よりやや劣るも、実用上十分な電気絶縁性を有することが判明した。
【0023】
次に皮膜生成した素地の装飾方法について説明する。
皮膜生成した素地を装飾する際は、皮膜自体に着色すれば良い。
皮膜の着色方法は、例えば、皮膜生成した素地を水洗した後に、黒色染料10g/lを溶かした、50〜65℃の染色処理液に1〜15分間浸漬けて染色し、その後水洗して余剰の染料を除去し、最後に熱風で乾燥する。
又、皮膜染色、乾燥後に、更にその上からクリアー塗装を施したり、或いは皮膜生成、乾燥後、染色せずに皮膜の上にカラー塗装や、真空メッキ等の化粧皮膜を施しても良い。
尚、本願の方法(マグマカラーSL法及びマグマカラーSH法)によって生成した皮膜は、共に耐食性に優れており、この皮膜だけでマグネシウム合金を十分に保護するため、塗装や真空メッキで施した皮膜は主に化粧を目的としたものであり、防食を主目的としたものではない。
【0024】
次に本発明に係るマグネシウム合金の皮膜生成方法の作用について説明する。本願における皮膜生成方法では、アルカリ性の電解液と高速電流反転電源等を使用してアルカリ電解を行っているが、かかる電源では高速周期的にプラス極とマイナス極が反転、繰り返したり、特定時間帯のプラス極時間を挟んで同様に繰り返している。
そして、素地(マグネシウム合金)がプラス極の時に、素地表面のマグネシウムが、電解反応によって酸化マグネシウム、或いは水酸化マグネシウムに変化して皮膜を生成すると共に、マグネシウム合金鋳造化学成分中のアルミニウム、亜鉛、銅等が溶解して、素地表面に微小凹部が多数発生し、かかる微小凹部により凹凸状態に粗面化した素地表面上に、更に皮膜が生成されて処理面は粗面化される。
他方、マイナス極の時に、粗面化された処理面の微小凸部の皮膜は電解還元の作用により還元され、還元された微小凸部は、処理面より遊離し、電解研磨と類似の作用で処理面は平滑化される。
上記プラス極とマイナス極の反転による皮膜の生成、平滑化作用において、プラス極とマイナス極の反転が繰り返されることにより平滑な皮膜が生成されると共に成長して厚くなる。
【0025】
【発明の効果】
要するに本発明は、マグネシウム合金にマグネシウム化合物の皮膜をプラスマイナス極性反転電源で電解生成するために用いる電解液を、水酸化ナトリウムとリン酸を添加したアルカリ性の水溶液と成したので、水酸化ナトリウムの作用により、電解液をアルカリにしてマグネシウムの溶解現象を抑止できると共に、リン酸の作用により、アルカリ電解時のプラス極時にマグネシウムの酸化を促進して、酸化マグネシウムを電解生成することが出来る。
【0026】
そして、脱脂等の前処理を行ったマグネシウム合金に対して、上記の電解液で、プラスとマイナスを周期的に反転出力するプラスマイナス極性反転電源によりアルカリ電解を行う様にしたので、アルカリ電解のプラス極時に酸化マグネシウムを電解生成し、マイナス極時に電解研磨と類似の作用で処理面を平滑化して、プラス極とマイナス極を繰り返すことにより、酸化マグネシウムが主成分の皮膜を成長させて、耐食性が頗る高い皮膜を生成できるため、マグネシウム合金の耐久性を飛躍的に向上させて、マグネシウム合金の用途を拡張することが出来る。又、酸化マグネシウムの皮膜だけで防食処理、絶縁処理できるため、表面処理としての塗装を施す必要が無く、塗膜剥離等の問題を解消できる。
又、塗装や、真空メッキ等の化粧皮膜の下地に用いれば、防食用の下地として絶大なる効果を奏することから、過酷な条件下で使用される製品にもマグネシウム合金を適用できるため、例えば自動車の内外装部品にマグネシウム合金を利用することによって、自動車を軽量化して、省エネルギー、環境保全、地球温暖化防止に貢献することが出来る。
【0027】
皮膜生成に用いる電解液を、水酸化ナトリウムとスルホン酸ナトリウムを添加したアルカリ性の水溶液と成したので、スルホン酸ナトリウムの作用により、電解液の電流分布を均一にして均一電解を行うことが出来ると共に、水酸化ナトリウムの作用により、アルカリ電解時のプラス極時に、マグネシウムの含有率が92%以上のマグネシウム合金に、水酸化マグネシウムを電解生成することが出来る。
【0028】
そして、マグネシウムの含有率が92%以上のマグネシウム合金に対して、脱脂等の前処理を行い、次に上記の電解液で、プラスとマイナスを周期的に反転出力するプラスマイナス極性反転電源によりアルカリ電解を行う様にしたので、水酸化マグネシウムが主成分の皮膜を短時間で効率良く生成することが出来、よってマグネシウム合金の防食・絶縁処理に要する時間を短縮して、製造効率の向上、製造コストの削減を図ることが出来る。
従って、軽量であると共に、耐食性及び電気絶縁性が必要な電子機器用部材、例えば液晶テレビの外枠の形成用部材として、防食・絶縁処理したマグネシウム合金を安価に提供して、産業の発達に貢献することが出来る。
【0029】
直流と交流を併用するか、直流と交流を切換えて出力する電源によりアルカリ電解を行う様にしたので、既存の設備を利用して、上記と同様の処理を行うことが出来る。
【0030】
マグネシウム化合物の皮膜は元来、染色性が良く、又本願の方法により生成した皮膜の表面は平滑性が良いから、アルカリ電解した後、水洗し、染料で染色する様にすれば、塗装やメッキ等による化粧皮膜を施さなくても、外部露出して、人目に触れる個所に使用でき、マグネシウム合金の用途を更に拡張することが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐食性が高い皮膜を生成する方法の工程図である。
【図2】直流法と反転法の電流波形図である。
【図3】図2に示す参考波形の説明図である。
【図4】交直切換電流の波形図である。
【図5】電解処理時間と電解電圧値の関係を示す図である。
【図6】電解処理時間と皮膜厚さの関係を示す図である。
【図7】短時間で皮膜生成する方法の工程図である。
【図8】電解処理時間と電解電圧値の関係を示す図である。
【図9】電解処理時間と皮膜厚さの関係を示す図である。
Claims (4)
- 脱脂等の前処理を行ったマグネシウム合金に対して、電解液中で電解処理して皮膜生成する様にした方法であって、
前記電解液は水酸化ナトリウムとリン酸を添加したアルカリ性の水溶液と成したものとし、前記電解処理の電源はプラスとマイナスを周期的に反転出力するプラスマイナス極性反転電源とした方法において、
直流と交流を併用するか、直流と交流を切換えて出力する電源により電解処理を行う様にしたことを特徴とするマグネシウム合金の皮膜生成方法。 - マグネシウムの含有率が92%以上のマグネシウム合金に対して、脱脂等の前処理を行い、次に電解液中で電解処理して皮膜生成する様にした方法において、 前記電解液は水酸化ナトリウムとスルホン酸ナトリウムを添加したアルカリ性の水溶液と成し、前記電解処理の電源はプラスとマイナスを周期的に反転出力するプラスマイナス極性反転電源としたことを特徴とするマグネシウム合金の皮膜生成方法。
- 直流と交流を併用するか、直流と交流を切換えて出力する電源により電解処理を行う様にしたことを特徴とする請求項2記載のマグネシウム合金の皮膜生成方法。
- 電解処理した後、水洗し、染料で染色する様にしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載のマグネシウム合金の皮膜生成方法。
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