JP3673020B2 - ガスタービン発電プラントの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気圧縮機とガスタービンと発電機とを同一軸に結合して成るガスタービン発電プラントの制御装置に係り、特にガスタービン高温部品の熱応力を低減してガスタービンの長寿命化を図りつつ、好適なガスタービン起動を行なえるようにしたガスタービン発電プラントの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、発電プラントの一つとして、大気から吸入された空気を圧縮する空気圧縮機と、空気圧縮機からの圧縮空気と外部から供給される燃料とを混合させて燃焼して得られる高温高圧ガスにより回転するガスタービンと、ガスタービンの回転により駆動されて電力を発生する発電機とを、同一軸に結合して成るガスタービン発電プラントが採用されてきている。
【0003】
図23は、この種の従来のガスタービン発電プラントの制御装置の構成例を示すブロック図である。
【0004】
図23において、起動モータ1は、ガスタービン軸に起動トルクを供給するものであり、伝達トルクの変化が可能なトルクコンバータ2を介してガスタービン軸に結合されている。
【0005】
大気から吸入された空気は、流量の変化が可能な入口空気案内翼3を介して空気圧縮機4に流入し、圧縮された後に燃焼器5に供給される。
【0006】
また、燃焼器5には、外部から燃料制御弁6を介して燃料が供給されており、この燃料は圧縮空気と混合されて燃焼し、高温高圧のガスとなる。
【0007】
さらに、この高温高圧のガスは、ガスタービン7に供給されてガスタービン7で仕事をし、これによりガスタービン7が回転して、ガスタービン7軸に結合されている発電機8が駆動され、電力が発生する。
【0008】
また、ガスタービン7で仕事をした後の排気ガスは、図示しない廃熱回収ボイラ等に送られて廃熱利用される。
【0009】
一方、速度検出器9は、ガスタービン7軸の回転速度(以下、ガスタービン7の軸速度と称する)を検出するものであり、その軸速度信号Nは、起動制御回路10、速度制御回路11、加速制限回路12、入口空気案内翼制御回路13、およびトルク制御回路14にそれぞれ入力される。
【0010】
起動制御回路10は、ガスタービン7の軸速度信号Nに基づいて所定の起動シーケンスを制御するものであり、その制御結果として燃料量設定信号S1を得る。
【0011】
また、速度制御回路11は、ガスタービン7の定格速度設定と軸速度信号Nとの速度偏差を算出し、その速度偏差に対応した燃料量設定信号S2を形成するものである。
【0012】
さらに、加速制限回路12は、ガスタービン7の所定の加速率設定と、ガスタービン7の軸速度信号Nの微分信号である加速率との加速率偏差を算出し、その加速率偏差に基づく制御信号として、燃料量設定信号S3を与えるものである。
【0013】
そして、各燃料量設定信号S1,S2,およびS3のそれぞれは、低値選択器15に入力され、低値選択器15は、これら3信号のうちの最も低い値の信号を選択して得た燃料量設定信号S4を、燃料制御弁6に開度指令として与える。
【0014】
また、入口空気案内翼制御回路13は、タービン7の軸速度信号Nに対応して入口空気案内翼3の翼角度を制御する翼角度制御信号S5を形成するものであり、この翼角度制御信号S5を入口空気案内翼3に出力する。
【0015】
さらに、トルク制御回路14は、速度信号Nに基づくシーケンスに従って、トルクコンバータ2の伝達トルク特性を補正する指令S6を形成するものであり、その指令をトルクコンバータ2に与える。
【0016】
次に、以上のような構成で、ガスタービン7を起動する時には、まず、起動モータ1で、ガスタービン7軸を回転する。
【0017】
このガスタービン7の軸速度Nは、パージ速度の状態で所定時間だけ、ガスタービン7および下流排気ダクトの残留燃料をパージする。
【0018】
なお、ここで、パージ、およびパージ速度とは、次のように定義されるものである。
【0019】
すなわち、ガスタービン7の起動時には、まず、前回運転時の残留燃料を、下流排気ダクトから煙突出口へと排気する。これを、パージと称している。これは、今回起動時の着火の際、ガスタービン7および排気ダクト中に残留していた未燃燃料が、燃えて爆発することを防止するための操作である。この操作は、従来では、起動モータで軸を回転させて行なわれており、一般には、定格速度の30%くらいの速度である。そして、燃料を供給しないで、軸速度をこの所定速度に所定時間保持する。この間、空気圧縮機4の吐出空気は、燃焼器5、ガスタービン7、排気ダクト、煙突へと流れるので、この空気により残留燃料を煙突出口へ押し出す(パージ)訳である。この間の、上記所定速度(30%くらい)のことを、パージ速度と称している。
【0020】
一方、この時には、起動制御回路10では、燃料量設定信号S1として燃料制御弁6全閉開度設定を与えており、低値選択器15は燃料量設定信号S4として燃料量設定信号S1を選択し、燃料制御弁6は全閉させている。
【0021】
次に、パージが完了すると、トルク制御回路14は伝達トルク補正指令S6により、トルクコンバータ2に対して、伝達トルクをパージ設定から着火設定に切換える。
【0022】
これにより、ガスタービン7の軸速度Nは低下し、着火速度に達する。
【0023】
すると、トルク制御回路14は伝達トルク補正指令S6により、トルクコンバータ2に対して、伝達トルクを着火設定から高設定に切換える。
【0024】
これにより、ガスタービン7軸は加速する。
【0025】
一方、起動制御回路10では、ガスタービン7の軸速度Nが着火速度に達した時点で、燃料量設定信号S1として着火開度設定を与える。
【0026】
これにより、燃料制御弁6は、着火開度に調節されて、燃焼器5に着火に必要な燃料量が供給される。
【0027】
同時に、起動制御回路10は、燃焼器5の点火プラグ(図示せず)をスパークさせて、燃焼器5を着火させる。
【0028】
そして、火炎検出器(図示せず)により燃焼器5の着火が検出されると、起動制御回路10は、ガスタービン7の暖機に必要な燃料量に対応した燃料量設定信号S1を出力し、一定時間ガスタービン7を暖機運転する。
【0029】
このガスタービン7の暖機運転が完了すると、起動制御回路10は、燃料量を増加してゆく。
【0030】
ところで、従来のトルクコンバータ2は、流体継手方式でトルク伝達するため、低速域では大きなトルクを発生できるが、高速域では充分なトルクの発生が難しいという特徴がある。
【0031】
一方、ガスタービン7は、低速域では燃料を供給しても、充分なトルクを発生しないという特徴がある。
【0032】
そこで、ガスタービン7の自立速度まで、起動モータ1とトルクコンバータ2とにより、ガスタービン7軸加速のためのトルクを与えるようにしている。
【0033】
そして、燃料量を増加してゆき、ガスタービン7が自立できる速度に達すると、所定のガスタービン7軸速度(定格速度の約70%)にて起動モータ1が切り離される。
【0034】
空気圧縮機4では、入口空気案内翼制御回路13により、図24に示すような実線で示す特性に入口空気案内翼3が制御され、軸速度Nの増加と入口空気案内翼3角度の増加に応じて、空気圧縮機4の吐出空気流量が増加してゆく。
【0035】
すなわち、図24に示すように、高速域では入口空気案内翼3角度が増加し、定格速度では角度S7に制御されている。
【0036】
また、同図24中、実線の制御カーブに近接して点線L1で示したカーブは、空気圧縮機サージング保護カーブであり、点線L1より左の斜線域に運転点が入った時には、空気圧縮機4の保護のためにトリップさせている。
【0037】
さらに、同図24からもわかるように、一般には軸加速率を高くすることが、空気圧縮機4のサージングに対する余裕を大きくすることにつながるため、起動制御回路10による燃料量の増加は高めに行なわれる。
【0038】
その結果、中高速域では、加速制限回路12においてガスタービン加速率が所定の加速率設定を越え、燃料量設定信号S3が燃料量設定信号S1に代って低値となる。
【0039】
そして、この燃料量設定信号S3により、ガスタービン7の加速率が所定の加速率設定を越えないように燃料量が抑制される。
【0040】
ガスタービン7軸の速度Nが定格速度近くに達すると、速度制御回路11によりガスタービン7の軸速度Nが定格速度に制御される。
【0041】
このようにして、ガスタービン7の起動が行なわれている。
【0042】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のガスタービン発電プラントの制御装置では、ガスタービン7の中高速域での加速を、主に燃料に頼っていることから、高いガスタービン加速率で昇速させるのに必要な加速トルクに対応する燃料が、適正な燃空比以上に多めに燃焼器5に供給されている。
【0043】
そのため、適正なガスタービン7入口ガス温度以上の高温ガスでガスタービン7の起動が行なわれることになり、ガスタービン7高温部品の熱応力の増大を招いている。
【0044】
特に、最近では、ガスタービン7入口ガス温度が、摂氏1300度級のガスタービン7が商用機として運転に入っており、高効率化を目的とした入口ガス温度高温化の動向は継続している。
【0045】
このため、高温ガスタービン高温部品の長寿命化が、ますます重要な課題となってきている。
【0046】
以上のように、従来のガスタービン発電プラントの制御装置においては、ガスタービン高温部品の熱応力の増大により、ガスタービンの寿命が短かくなるという問題があった。
【0047】
本発明の目的は、ガスタービン発電プラントにおけるガスタービン高温部品の熱応力を低減してガスタービンの長寿命化を図りつつ、好適なガスタービン起動を行なうことが可能なガスタービン発電プラントの制御装置を提供することにある。
【0048】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、
まず、請求項1に対応する発明では、大気から吸入された空気を圧縮する空気圧縮機と、この空気圧縮機からの圧縮空気と外部から供給される燃料とを混合させて燃焼して得られる高温高圧のガスにより回転するガスタービンと、このガスタービンの回転により駆動されて電力を発生する発電機とを、同一軸に結合して成るガスタービン発電プラントの制御装置において、前記発電機の電流を調節することにより、前記ガスタービンの加速率を所定の第1の加速率設定値に制御する加速率制御信号を出力する第1の加速率制御手段と、前記第1の加速率制御手段による制御によって加速中の前記ガスタービンに供給する燃料量を前記ガスタービン発電プラントの所定のプロセス量に基づいて設定し、起動時燃料設定信号を出力する起動時燃料設定手段と、前記ガスタービンに供給する燃料量を調節することにより、前記ガスタービン軸の回転速度を所定の速度設定値に制御する速度制御信号を出力する速度制御手段と、前記ガスタービンに供給する燃料量を調節することにより、前記ガスタービンの加速率を所定の第2の加速率設定値に制御する加速率制御信号を出力する第2の加速率制御制御手段と、前記起動時燃料設定手段からの起動時燃料設定信号、前記速度制御手段からの速度制御信号、および前記第2の加速率制御手段からの加速率制御信号を入力し、そのうち最も低値の信号を前記燃料量調節の燃料量設定信号として選択し出力する低値選択手段とを備えて成る。
【0051】
なお、特に上記起動時燃料設定手段としては、例えば請求項7乃至請求項9に記載したように、加速中のガスタービンに供給する燃料量を、ガスタービン軸の回転速度、または空気圧縮機の吐出空気圧力、あるいは空気圧縮機の吸入空気流量に基づいて設定することが好ましい。
【0052】
従って、請求項7乃至請求項9に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置においては、ガスタービンの暖機完了後の軸加速は、発電機を電動機として使用し、加速率制御手段が発電機の電流を調節して、所定の軸加速率で加速することにより行なう。
【0053】
この時、加速に必要な加速トルクは発電機が出すため、燃料量は起動時燃料設定手段によって、燃焼器内の火炎が維持できる程度の適正な燃空比となるように、ガスタービン軸の回転速度、または空気圧縮機の吐出空気圧力、あるいは空気圧縮機の吸入空気流量に基づいて設定され、過剰燃料量の供給を抑制することができる。
【0054】
次に、ガスタービン軸の回転速度が定格速度近くに達すると、速度制御信号が低値となって選択されて燃料量を調節し、ガスタービン軸の回転速度は定格速度に制御される。そして、発電機の電流を、燃料量の調節による外乱を抑制するように単調に減少させて、発電機のトルクの発生を減らしてゆく。
【0055】
この時、ガスタービン軸の回転速度を定格速度に制御中であるため、発電機のトルクの減少に伴って、速度制御信号が急増することによる燃料供給量の急増を防止するために、起動時燃料設定信号を所定レートで上限値に向けて増加させることにより、低値選択手段にて燃料量設定信号の急増を抑止することができる。
【0056】
以上により、適切な燃空比で過剰な燃料量の供給を回避し、加速率制御は発電機の電流調節により行ない、ガスタービン入口ガス温度ピークおよびその変化を抑えることができるため、ガスタービン高温部品の熱応力を低減して長寿命化を図りつつ、好適なガスタービン起動を行なうことができる。
【0058】
また、請求項2に対応する発明では、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、ガスタービン軸の速度に基づいて加速率設定バイアス量を与える加速率バイアス設定手段と、第1の加速率制御手段または第2の加速率制御手段の加速率設定値に対して、互いにその大きさを異ならせるように加速率バイアス設定手段から与えられる加速率設定バイアス量を加減する加速率設定値可変手段とを付加し、ガスタービンの加速に伴ってガスタービン加速率の制御を第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段へ切換えるようにしている。
【0059】
さらに、請求項4に対応する発明では、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、ガスタービン軸の速度に基づいて発電機の電流の大きさを与える電流設定信号を出力する電流設定手段と、電流設定手段からの電流設定信号と第1の加速率制御手段からの加速率制御信号とを入力し、そのうちいずれか低値の方の信号を発電機電流調節の電流設定信号として選択し出力する第2の低値選択手段とを付加して成る。
【0060】
さらにまた、請求項5に対応する発明では、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、第2の加速率制御手段からの加速率制御信号より所定の燃料設定バイアス量だけ高い値を目標値として、燃料増方向変化率制限制御信号を所定レートで追従させる燃料増方向変化率制限制御手段を付加し、かつ当該燃料増方向変化率制限制御手段からの燃料増方向変化率制限制御信号を低値選択手段へ追加入力するようにしている。
【0061】
なお、特に上記起動時燃料設定手段としては、例えば請求項7乃至請求項9に記載したように、加速中のガスタービンに供給する燃料量を、ガスタービン軸の回転速度、または空気圧縮機の吐出空気圧力、あるいは空気圧縮機の吸入空気流量に基づいて設定することが好ましい。
【0062】
従って、請求項1、請求項2、請求項4、請求項5、および請求項7乃至請求項9に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置においては、ガスタービンの暖機完了後の軸加速は、発電機を電動機として使用し、第1の加速率制御手段が発電機の電流を調節して所定の軸加速率で加速することにより行なう。
【0063】
この時、加速に必要な加速トルクは発電機が出すため、燃料量は起動時燃料設定手段によって、燃焼器内の火炎が維持できる程度の適正な燃空比となるように、ガスタービン軸の回転速度、または空気圧縮機の吐出空気圧力、あるいは空気圧縮機の吸入空気流量に基づいて設定され、過剰燃料量の供給を抑制することができる。
【0064】
一方、第2の加速率制御手段は、第1の加速率制御手段による加速率制御が不調の場合に、あるいは起動時燃料設定信号が異常の場合に対しても機能するように、ガスタービンの加速率が所定の加速率設定値を越えると、燃料量を抑制するように動作する。
【0065】
また、ガスタービンは、速度上昇と共に効率が高くなるため、ガスタービンが発生するトルクの割合が高くなってゆく。ガスタービンの性能によっては、発電機が発生するトルクを減らしてゆきながら、加速率の制御を第2の加速率制御手段に移行する方が好適な起動を達成できる場合がある。
【0066】
この点、加速率設定バイアスは、ガスタービン軸の回転速度上昇に応じてバイアス量が変化するように設定されていて、加速率設定値にバイアス量を加減することにより、加速率制御を行なう主体を、第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段へ切り換わるように動作する。
【0067】
さらに、加速率制御を行なう主体が、第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段に切り換った後に、電流設定手段では、ガスタービン軸の回転速度が定格速度に達するまでの間に、ガスタービン軸の回転速度上昇に対応して発電機の電流を減少させる。このようにして、トルクの割合を発電機からガスタービンに移行することにより、好適なガスタービンの起動を達成することができる。
【0068】
また、発電機が発生するトルクが急減するような場合には、第1の加速率制御手段からの加速率制御信号が急増する可能性があるため、燃料量が急増しないように、燃料増方向変化率制限制御信号が低値選択手段にて選択されて、燃料量設定信号の急増を抑止することができる。
【0069】
以上により、適切な燃空比で過剰な燃料量の供給を回避し、加速率制御は発電機の電流調節とガスタービン燃焼器の燃料調節とにより分担、併用し、ガスタービン入口ガス温度ピークおよびその変化を抑えることができる。
【0070】
また、加速率制御に対する燃料増方向変化率制限制御手段により、過渡的な燃料量の急増を効果的に抑止することができる。
【0071】
さらに、第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段に加速率制御を移行させることにより、より早い時点に制御を燃料側に移すことができる。よって、起動装置としての発電機(電動機)の役割を早く終えて、定格速度到達後の発電機の電力系統併入までの時間を短縮することができる。
【0072】
一方、請求項3に対応する発明では、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、第1の加速率制御手段におけるガスタービンの加速率と第1の加速率設定値との加速率制御偏差に基づいて加速率設定バイアス量を与える加速率バイアス設定手段と、第1の加速率制御手段または第2の加速率制御手段の加速率設定値に対して、互いにその大きさを異ならせるように加速率バイアス設定手段から与えられる加速率設定バイアス量を加減する加速率設定値可変手段とを付加し、ガスタービンの加速に伴ってガスタービン加速率の制御を第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段へ切換えるようにしている。
【0073】
従って、請求項3に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置においては、ガスタービンは、速度上昇と共に効率が高くなるため、ガスタービンが発生するトルクの割合が高くなり、発電機が発生するトルクの割合が低くなっていった場合に、第1の加速率制御手段による加速率制御が、充分な機能を発揮できないケースが起こり得る。
【0074】
そこで、このようなガスタービンにおいては、第1の加速率制御手段の加速率制御偏差が拡大した時に、その加速率制御偏差の大きさに応じたバイアス量を加速率設定値に加減して、加速率制御を行なう主体を第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段に切換えるようにして、所期の加速率制御の機能を達成することができる。
【0075】
以上により、発電機(電動機)の電流調節による加速率制御の効きが悪いケースにおいても、過剰な燃料量の供給を抑制することができるため、ガスタービン高温部品の熱応力の低減を図って長寿命化に寄与することができる。
【0076】
一方、請求項6に対応する発明では、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、第2の加速率制御手段の出力段と低値選択手段の入力段との間に燃料増方向変化率制限手段を付加し、発電機の電流の減少に伴う第2の加速率制御手段からの加速率制御信号の急増時に、燃料量設定信号の変化を所定レートに抑制するようにしている。
【0077】
従って、請求項6に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置においては、ガスタービン軸の加速率制御の主体が第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段に切り換った後に、発電機が発生するトルクが急減するような場合には、第2の加速率制御手段の加速率制御信号が急増する可能性があるため、燃料の供給量が急増しないように、燃料増方向変化率制限手段が燃料量設定信号の変化率を抑えるように動作する。
【0078】
以上により、加速率制御信号の出力段側に増方向変化率制限器を備えることにより、過渡的な燃料量の急増を効果的に抑制することができ、ガスタービン高温部品の熱応力の低減を図って長寿命化に寄与することができる。
【0079】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0080】
まず、図1は、本発明によるガスタービン発電プラントおよびその制御装置の全体構成例を示すブロック図であり、図23と同一部分、および相当する部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0081】
すなわち、図1では、図23における起動モータ1、およびトルクコンバータ2を省略し、空気圧縮機4の吐出空気流路に、空気圧縮機4の吐出空気圧力を検出する圧力検出器16を新たに設けている。
【0082】
また、図23における起動制御回路10、速度制御回路11、加速制限回路12、入口空気案内翼制御回路13、トルク制御回路14、および低値選択器15を省略し、これに代えて、ガスタービン制御装置55を新たに設けている。
【0083】
そして、ガスタービン制御装置55は、圧力検出器16からの空気圧縮機吐出空気圧力信号PCDを入力すると共に、前記速度検出器9からの軸速度信号Nを入力し、燃料量設定信号S4、および入口空気案内翼角度制御信号S5をそれぞれ出力するようにしている。
【0084】
図2は、上記ガスタービン制御装置55の一部である発電機電流制御回路の構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付して示している。
【0085】
発電機8は、電力系統に併入した後の発電を目的とするものであるが、本発明においては、軸起動時に発電機8を電動機として使用するものであり、図2はそれを説明するための発電機周辺のブロック図である。
【0086】
図2において、変圧器56は、発電所内の電源をサイリスタ変換器57に必要な電圧に変圧するためのもので、サイリスタ変換器57を介して発電機8に電機子電流を供給する。その電流の大きさは検出器58で検出し、その電流信号Igをガスタービン制御装置55に入力する。
【0087】
また、ガスタービン制御装置55において得られる電流設定信号S8と電流信号Igとの偏差を、減算器59により演算する。そして、これにより得られた偏差を制御器60に通して得られた電流制御信号S9を、サイリスタ変換器57に出力して、発電機8の電流を調節する。
【0088】
このようにして、発電機8の電流の調節を、電流設定信号S8により行なうようにしている。
【0089】
すなわち、発電機8が、ガスタービン軸に与えるトルクは、
T=P/ω
ω:角周波数、
p:発電機(電動機)8出力
なる式で表わすことができる。
【0090】
発電機8の端子電圧は、図示しない装置により、軸加速域では一定電圧に制御されているため、ガスタービン軸に与えるトルクの制御は、各速度での必要トルクを発生させるように電流を制御することによって行なうことができる。
【0091】
(第1の実施の形態)
図3は、本実施の形態によるガスタービン制御装置55の構成例を示すブロック図である。
【0092】
図3において、微分器17は、軸速度Nから加速率DNを得るものである。
【0093】
関数発生器18は、軸速度Nに基づいて所定の加速率設定値DNRを与えるもので、例えば図4に示すような特性を有している。
【0094】
比例積分制御器19は、関数発生器18からの加速率設定値DNRと、微分器17からの加速率DNとから、減算器20により得た加速率偏差DNEに基づいて電流設定信号S8Aを与えるものである。
【0095】
軸加速の初期は、スイッチ21は、図示のようにb接点側に接続されていて、電流設定信号S8は信号S8Bに等しい。この時、スイッチ22も閉じていて、積分器23は信号S8Bに追従している。すなわち、積分器23からの積分量(S8A)は、信号S8Bの大きさに等しい。
【0096】
信号発生器24は、負の設定器を与えるもので、スイッチ22が閉じている時は作用しないが、スイッチ22が開いた時に、積分器23の入力として作用し、積分器23からの出力信号S8Aを、信号発生器24と積分器23の積分時定数から決まるレートで、燃料量の制御による外乱を抑制するように零まで単調減少させる。
【0097】
以上により、加速率制御手段を構成している。
【0098】
一方、信号発生器25は、所定の速度設定値NRを与えるものである。
【0099】
信号発生器25からの速度設定値NRと軸速度Nとから、減算器26により速度偏差NEを得る。
【0100】
そして、この速度偏差NEに基づいて比例制御器27が出力する信号と、信号発生器28からの無負荷バイアス信号とを、加算器29により加算して速度制御信号NCを得る。
【0101】
以上により、速度制御手段を構成している。
【0102】
一方、関数発生器30は、軸速度Nに基づいて起動時燃料設定信号NSBを与えるものである。
【0103】
軸加速度の初期は、スイッチ31は、図示のようにb接点側に閉じていて、起動時燃料設定信号NSは信号NSBに等しい。この時、スイッチ32も閉じていて、積分器33は信号NSBに追従している。すなわち、積分器33からの積分量(NSA)は、信号NSBの大きさに等しい。
【0104】
信号発生器34は、正の設定値を与えるもので、スイッチ32が閉じている時は作用しないが、スイッチ32が開いた時に、積分器33の入力として作用し、積分器33からの出力信号NSAを、信号発生器34と積分器33の積分時定数から決まるレートで、所定上限値まで増加させる。
【0105】
以上により、起動時燃料設定手段を構成している。
【0106】
一方、速度制御信号NCと起動時燃料設定信号NSを低値選択器35に入力し、低値選択器35では、そのうちいずれか低い方の信号を燃料量設定信号S4として選択し出力するものである。
【0107】
一方、比較器36は、速度制御信号NC(A)が、燃料量設定信号S4よりも小さいか等しい時に、出力C1をONさせるものである。
【0108】
また、比較器37は、起動時燃料設定信号NSが燃料量設定信号S4よりも小さいか等しい時に、出力C2をONさせるものである。
【0109】
そして、信号C3を、信号C1と、信号C2を否定要素NOTを通した信号との論理積要素ANDでの演算結果として得る。
【0110】
この信号C1がONし、信号C2がOFFすると、信号C3がOFFからONに切り換わる。
【0111】
この時、スイッチ21は、信号S8B側から信号S8A側に切換る。また、スイッチ22は、閉から開の状態に切り換わる。さらに、スイッチ31は、信号NSB側から信号NSA側に切り換わる。さらにまた、スイッチ32は、閉から開の状態に切り換わる。
【0112】
以上により、切換手段を構成している。
【0113】
次に、以上のように構成した本実施形態のガスタービン発電プラントの制御装置の動作について説明する。
【0114】
まず、通常時の動作を説明する。
【0115】
なお、着火からガスタービン7の暖機までの過程は、本発明には直接関係なく、他の制御回路で実施されるので、ここではその説明を省略する。
【0116】
ガスタービン7の暖機完了後、加速率制御手段では、加速率設定値DNRを目標値として、発電機(電動機)8の電流Igを調節しながら、加速率DNが制御される。
【0117】
一方、この時、燃料量設定信号S4は、軸速度Nに基づいて関数発生器30から決まる起動時燃料設定信号NSBが選択されている。この関数発生器30の特性を図5に示す。
【0118】
図5中、点P1から点P2の間は、図24の入口空気案内翼3角度の動きに対応している。図6は、この時の発電機電流Ig、軸速度N、および燃料流量(実線)の時間に対する変化の様子を示している。
【0119】
なお、従来技術による入口空気案内翼3角度の変化についても、一点鎖線で併記している。また、空気流量(実線)、および空気圧縮機吐出空気圧力PCDの様子についても示している。
【0120】
ここで、起動時燃料設定NSBを、軸速度Nに基づいて与えるようにしているのは、軸速度信号Nは通常、制御装置の最も重要な信号として信頼度の高い構成を採用していること、およびガスタービン7の軸速度Nが決まれば、その時のガスタービン7のプロセス諸量が決まるので指標として優れていることによる。
【0121】
また、より厳密に設定値を与えたい場合には、ガスタービン7の軸速度Nに基づきつつ、空気圧縮機4入口空気温度で空気流量の密度補正を行なうこともできる。
【0122】
すなわち、関数発生器30の目的は、燃空比を維持して燃焼器5内火炎を保持しつつも、極力少ない燃料設定を与えることにある。
【0123】
図6に示すように、電動機として使用する発電機8の電流Igが、加速トルクを与えて加速を支えている。
【0124】
発電機8を電動機として使用しない従来技術の場合には、点線で示した燃料流量が必要となる。そして、この点線と実線との燃料流量の差が、従来技術における軸加速を支えるガスタービン7の出力に相当するものであり、本実施の形態では、この差の大きさだけ燃料の供給量が少なくて済むことになる。
【0125】
図7は、ガスタービン7入口ガス温度の変化を同時間に対して示した図で、点線は従来技術による場合を、実線は本実施の形態による場合をそれぞれ示している。
【0126】
図7からわかるように、ガス温度のピーク、および温度変動について改善されている。
【0127】
ガスタービン7の軸速度Nの上昇と共に、図3の速度偏差NEが小さくなり、定格速度に近づいてくると、やがて速度制御信号NCが起動時燃料設定信号NSよりも小さくなり、燃料量設定信号S4が低値選択器35にて、信号NSから信号NCに切換り、信号C3がOFFからONに転じる。
【0128】
この信号C3がONすると、スイッチ21は信号S8A側に接続され、スイッチ22は開く。そして、積分器23からの出力信号S8A、すなわち電流設定信号S8は、その時点の電流設定(点P3)から所定レートで零まで減少していく。
【0129】
このようにすることにより、ガスタービン7軸の制御を、速度制御信号NCによる定格速度制御に委ねながら、極力電流変化による外乱を減らすことができる。
【0130】
また、信号発生器24の設定値を調整することにより、定格速度に到達するまでの間に、燃料量設定信号S4により供給される燃料流量変化の特性を調整することができる。
【0131】
信号C3がONした時には、同時にスイッチ31は信号NSA側に接続され、スイッチ32は開く。そして、信号NSは、その時点の信号NSから所定レートで上限まで増加する。
【0132】
これは、起動時燃料設定信号NSから速度制御信号NCへの切換りを確実に行なうためであると共に、定格速度制御中の電流設定信号S8の減少に伴って、軸速度Nが降下して速度制御信号NCが増加するようなことがあった場合の燃料過給を信号NSで抑制するためである。
【0133】
上述したように、本実施の形態によるガスタービン制御装置では、発電機8を電動機として使用し、発電機(電動機)8の電流を調節することにより、ガスタービン7軸の加速率制御を行なうようにすると共に、加速中のガスタービン7に供給する燃料量を、所定のプロセス量(ガスタービン7の軸速度N)に基づいて、適切な燃空比となるような燃料量設定を与えるようにしているので、過剰燃料量の供給を抑制することができる。
【0134】
また、加速中のガスタービン7に供給する燃料量を、ガスタービン7の軸速度Nに基づいて、適切な燃空比となるような燃料量設定を与えるようにしているので、制御の精度を高くすることができる。
【0135】
以上により、ガスタービン7入口ガス温度のピークおよびその変化を抑制することができるため、ガスタービン7高温部品の熱応力を低減してガスタービン7の長寿命化を図りつつ、好適なガスタービン7の起動を行なうことが可能となる。
【0136】
(第2の実施の形態)
図9は、本実施の形態によるガスタービン制御装置55の構成例を示すブロック図であり、図3と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0137】
すなわち、本実施の形態のガスタービン制御装置55は、図9に示すように、図3における関数発生器30を省略し、これに代えて、関数発生器38を新たに設けている。
【0138】
ここで、関数発生器38は、空気圧縮機吐出空気圧力PCDに基づいて起動時燃料設定信号NSBを与えるものである。
【0139】
すなわち、図3の実施の形態では、関数発生器30の特性として、図5に図示したものを選んだが、入口空気案内翼3角度の変化は空気圧縮機吐出空気圧力PCDに現われることから、図9の本実施の形態では、関数発生器38の特性として、図8に示すような特性を選ぶようにしている。
【0140】
次に、以上のように構成した本実施形態のガスタービン発電プラントの制御装置の動作について説明する。
【0141】
本実施形態のガスタービン制御装置の動作は、空気圧縮機吐出空気圧力PCDに基づいて、関数発生器38により図8に示すような特性にしたがって、起動時燃料設定信号NSBが得られる点以外については、前記第1の実施の形態のガスタービン制御装置の動作と同様であるので、ここではその説明については省略する。
【0142】
空気圧縮機吐出空気圧力PCDに基づいて、図12に示すような特性によっても、前記第1の実施の形態の場合と同様に、適切な燃空比を与える燃料設定とすることができる。
【0143】
上述したように、本実施の形態によるガスタービン制御装置では、発電機8を電動機として使用し、発電機(電動機)8の電流を調節することにより、ガスタービン7軸の加速率制御を行なうようにすると共に、加速中のガスタービン7に供給する燃料量を、所定のプロセス量(空気圧縮機吐出空気圧力PCD)に基づいて、適切な燃空比となるような燃料量設定を与えるようにしているので、過剰燃料量の供給を抑制することができる。
【0144】
また、加速中のガスタービン7に供給する燃料量を、空気圧縮機吐出空気圧力PCDに基づいて、適切な燃空比となるような燃料量設定を与えるようにしているので、その時その時に応じて、より適切な燃空比を精度よく与えることができる。
【0145】
以上により、ガスタービン7入口ガス温度のピークおよびその変化を抑制することができるため、ガスタービン7高温部品の熱応力を低減してガスタービン7の長寿命化を図りつつ、好適なガスタービン7の起動を行なうことが可能となる。
【0146】
(第3の実施の形態)
図10は、本実施の形態によるガスタービン制御装置55の構成例を示すブロック図であり、図9と同一部分、および相当する部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0147】
また、図10における一点鎖線39の枠内は、図2における起動時燃料設定手段と同一であるので、その詳細を省略して図示している。
【0148】
図10において、関数発生器40は、ガスタービン7の軸速度Nに基づいて加速率設定バイアスRB1を与えるもので、そのバイアス量を加算器41により、関数発生器18からの加算率設定値DNRに加算して、新たな加速率設定値DNR1を得る。
【0149】
また、関数発生器42は、ガスタービン7の軸速度Nに基づいて発電機8の電流の設定値を与えるもので、電流設定信号ISを出力する。
【0150】
さらに、加速率制御信号S8B、および電流設定信号ISを低値選択器43に入力し、低値選択器43は低い値の方の信号を電流設定信号S8として出力する。
【0151】
以上により、第1の加速率制御手段を構成している。
【0152】
一方、関数発生器44は、ガスタービン7の軸速度Nに基づいて加速率設定値DNSを与えるものである。
【0153】
また、関数発生器45は、ガスタービン7の軸速度Nに基づいて加速率設定バイアスRB2を与えるもので、そのバイアス量を減算器46により、関数発生器44からの加速率設定値DNSから減算して、新たな加速率設定値DNR2を得る。
【0154】
さらに、加速率設定値DNR2と加速率DNとから、減算器47により加速率偏差を得、比例積分制御器48は、その加速率偏差に基づいて加速率制御信号NAを出力する。
【0155】
以上により、第2の加速率制御手段を構成している。
【0156】
一方、信号発生器49は、燃料設定バイアス信号LBを与えるものである。
【0157】
また、加減算器51は、比例積分制御器48からの加速率制御信号NAと、信号発生器49からの燃料設定バイアスLBとの和から、積分器50の積分量NLを差引く演算を行なうもので、その演算結果LEを高制限器52に入力する。
【0158】
高制限器52は、所定制限値以下の入力信号はそのまま出力信号とし、所定制限値以上の信号に対しては、その制限値を出力信号とするもので、この高制限器52の出力信号を積分器50に入力する。
【0159】
以上により、燃料増方向変化率制限制御手段を構成している。
【0160】
さらに、速度制御信号NC、加速率制御信号NA、起動時燃料設定信号NS、および信号NLを低値選択器35に入力し、低値選択器35は、そのうち最も低い値の信号を燃料量設定信号S4として選択し出力する。
【0161】
次に、以上のように構成した本実施形態のガスタービン発電プラントの制御装置の動作について説明する。
【0162】
まず、通常時の動作を説明する。
【0163】
ガスタービン7の暖機完了後、第1の加速率制御手段では、加速率設定値DNR1を目標値として、発電機(電動機)8の電流Igを調節しながら、加速率DNを制御する。
【0164】
この時の加速率設定値DNRは、前記図4で示したものと同様であり、それを再度図11の実線にて示す。
【0165】
一方、第2の加速率制御手段の加速率設定値DNSは、同図11の一点鎖線にて示す。
【0166】
また、第1の加速率制御手段の加速率設定バイアスRB1を図13に示す。このバイアスRB1を加算後の加速率設定値DNR1は、図12の破線にて示すカーブとなる。
【0167】
さらに、第2の加速率制御手段の加速率設定バイアスRB2を図14に示す。このバイアスRB2を減算後の加速率設定値DNR2は、図12の点線にて示すカーブとなる。
【0168】
なお、図11、図13、図12、図14における点A,B,C、およびガスタービン7の軸速度N1はそれぞれ同一点を示す。各図の信号レンジは便宜上変更しているので、各図相互間では一致はしていない。
【0169】
さて、ガスタービン7の加速の初期は、低値選択器43では加速率制御信号S8Bが選択されている。そして、燃料量設定信号S4として、起動時燃料設定信号NSが選択されている。
【0170】
ガスタービン7軸は、図12に示す破線上で発電機(電動機)8の電流調節により加速率制御される。
【0171】
第2の加速率制御手段の加速率設定値DNR2は、図14に示す点線にて図示のように、所定量だけ破線より高くしてあるため、この時点では加速率制御信号NAは選択されない。
【0172】
次に、ガスタービン7軸がさらに昇速して、ガスタービン7の軸速度Nが速度N1に近づくと、図14で示したバイアス信号RB2が現われ始め、軸速度N1にて、図12のC点で示すように両加速率設定値DNR1,DNR2が一致し、またこの時点で加速率制御信号NAと起動時燃料設定信号NSとが一致する。
【0173】
そして、この軸速度N1を越えると、図13で示したバイアス信号RB1が現われ始め、図12で示したように、加速率設定値DNR2(点線)の方が、加速率設定値DNR1(破線)よりも低くなり、ガスタービン7軸の加速率制御が加速率制御信号NAにより行なわれるようになる。
【0174】
なお、起動時燃料設定信号NSは、非選択となった時点から上限に向けて増加するようにしておき、以降非選択となる。
【0175】
一方、第1の加速率制御手段では、図12で示したように、加速率設定値DNR1が、軸速度N1以上では破線上を移動するのに対し、実加速率は点線上を移動するため、加速率偏差DNEは正となる。そして、加速率制御信号S8Bが徐々に増加してゆく。この時、増加するレートは、バイアス信号RB1の大きさによって決まる。
【0176】
ここで、関数発生器42は、図15の一点鎖線で示すような特性にしてある。図示実線は、加速率制御信号S8Bの動きを示しており、点Cおよび速度N1は、図11、図13、図12、図14におけるものにそれぞれ対応している。
【0177】
前述のように、加速率制御信号S8Bは、点Cから徐々に増加し、点Dにて低値選択器43で低値選択される信号が、加速率制御信号S8Bから電流設定信号ISに切り換わる。なお、点Cから併記している点線は、電流設定信号S8を示している。
【0178】
このようにして、加速率制御の主体が、第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段に切り換わるに際して、切り換わり直後の燃料供給量の急増を回避するために、発電機(電動機)8の電流を残しておくようにしている。そして、定格速度に近づいた所で、徐々に電流を減少させて、燃料による加速率および速度の制御に大きな外乱を与えないようにしている。
【0179】
さらにまた、図10における信号NLは、加速率制御信号NAよりもバイアス量LBだけ高い値に追従している燃料増方向変化率制限制御信号で、減方向に対しては高速レートで追従し、増方向に対しては高制限器52の制限値から決まる低速レートを最大として追従するものである。その様子を図16に示している。
【0180】
図16において、実線が加速率制御信号NAを示し、一点鎖線が燃料増方向変化率制限制御信号NLを示す。なお、点Cは前述の点Cに対応する。
【0181】
点C以降、例えば発電機(電動機)8の電流が急減した等の何らかの理由で、加速率制御信号NAが図示実線のように変動した場合、低値選択器35では低い方が選択されるため、燃料量設定信号S4は点線で示したようになり、燃料供給量の急増を抑制することができる。この場合、特に、加速率制御は速度Nの微分信号に大きく応動するので、その効果は大きい。
【0182】
このようにして、ガスタービン7の軸速度が上昇し、定格速度近くで燃料量設定信号S4は速度制御信号NCに切り換わり、ガスタービン7の軸速度は定格速度に制御される。
【0183】
上述したように、本実施の形態によるガスタービン制御装置では、発電機8を電動機として使用し、発電機(電動機)8の電流とガスタービン燃焼器5の燃料調節をすることにより、ガスタービン7軸の加速率制御を分担、併用するようにしているので、ガスタービン7入口ガス温度のピークおよびその変化を抑制することができる。
【0184】
また、加速中のガスタービン7に供給する燃料量を、所定のプロセス量(空気圧縮機吐出空気圧力PCD)に基づいて、適切な燃空比となるような燃料量設定を与えるようにしているので、過剰燃料量の供給を抑制することができる。
【0185】
さらに、加速率制御に対する燃料増方向変化率制限制御手段を備えるようにしているので、過渡的な燃料量の急増を効果的に抑止することができる。
【0186】
また、第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段に加速率制御を移行させるようにしているので、より早い時点に制御を燃料側に移行することができる。よって、起動装置としての発電機(電動機)8の役割を早く終えて、定格速度到達後の発電機8の電力系統併入までの時間を短縮することが可能となる。
【0187】
以上により、ガスタービン7入口ガス温度のピークおよびその変化を抑制することができるため、ガスタービン7高温部品の熱応力を低減してガスタービン7の長寿命化を図りつつ、好適なガスタービン7の起動を行なうことが可能となる。
【0188】
(第4の実施の形態)
図17は、本実施の形態によるガスタービン制御装置55の構成例を示すブロック図であり、図10と同一部分、および相当する部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0189】
すなわち、本実施の形態のガスタービン制御装置55は、図17に示すように、図10における関数発生器40、および関数発生器45を省略し、これに代えて、関数発生器53、および関数発生器54を新たに設けている。
【0190】
ここで、関数発生器53は、第1の加速率制御手段の加速率制御偏差DNEに基づいて加速率設定バイアスRB1を与えるもので、その特性を図18に示す。
【0191】
また、関数発生器54は、第1の加速率制御手段の加速率制御偏差DNEに基づいて加速率設定バイアスRB2を与えるもので、その特性を図19に示す。
【0192】
次に、以上のように構成した本実施形態のガスタービン発電プラントの制御装置の動作について説明する。
【0193】
なお、ここでは、前記第3の実施の形態のガスタービン制御装置55と異なる部分の動作について説明する。
【0194】
本実施形態のガスタービン制御装置55は、ガスタービン7が高速域に達し、そのガスタービン7の性能によっては、発電機(電動機)8の電流調節による加速率制御の効きが悪く、加速率制御偏差DNEが広がってゆくという場合に対してのバックアップである。
【0195】
すなわち、第1の加速率制御手段の加速率制御偏差DNEが、マイナスCE1より偏差が大きくなった時点から加速率設定バイアスRB2を増加して、マイナスCE2に達した所で加速率設定値DNSに元々加算されていた量(つまり、図11における一点鎖線と実線との差)だけ減算し、本来の加速率制御設定値(=図11の実線に相当)に移行させる。その様子を、時間軸に対する加速率設定値DNR2の動きとして、図20の点線にて示す。なお、点Eは、加速率制御偏差DNEがマイナスCE2の時点を示す。
【0196】
一方、加速率設定バイアスRB2は、加速率制御偏差DNEがマイナスCE2よりも偏差が大きくなった時点から、加速率設定バイアスRB1を負の方向に大きくしてゆく。その様子を、図20の破線にて示す。
【0197】
このケースでは、第1の加速率制御手段の加速率制御偏差DNEが広がった場合には、まず燃料供給量を絞る必要があるという考え方により、E点以降は、第2の加速率制御手段により、図21の点線上で加速率制御することによって、燃料供給量を絞るようにする。そして、この動作を継続させるため、図19に示す特性の加速率設定バイアスRB2が残るように、図18に示す加速率設定バイアスRB1のバイアス量を選定している。
【0198】
また、このケースでは、E点以降に電流をさらに減少させることになるが、発電機8の電流調節による加速率制御が効かない以上は、燃料調節による加速率制御に任ねることを優先させる。
【0199】
上述したように、本実施の形態によるガスタービン制御装置では、第1の加速率制御手段の加速率制御偏差DNEが拡大した時に、その加速率制御偏差DNEの大きさに応じたバイアス量を加速率設定値DNR,DNSに加減して、加速率制御を行なう主体を第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段に切換えるようにしているので、所期の加速率制御の機能を達成することができる。
【0200】
すなわち、発電機(電動機)8の電流調節による加速率制御の効きが悪いケース(ガスタービン7は、速度上昇と共に効率が高くなるため、ガスタービン7が発生するトルクの割合が高くなり、発電機8が発生するトルクの割合が低くなっていった場合に、第1の加速率制御手段による加速率制御が、充分な機能を発揮できないケースが起こり得る)においても、過剰な燃料量の供給を抑制することができる。
【0201】
これにより、ガスタービン7高温部品の熱応力の低減を図って長寿命化に寄与しつつ、好適なガスタービン7の起動を行なうことが可能となる。
【0202】
(第5の実施の形態)
図21は、本実施の形態によるガスタービン制御装置55の構成例を示すブロック図であり、図10と同一部分、および相当する部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0203】
すなわち、本実施の形態のガスタービン制御装置55は、図21に示すように、図10における信号発生器49、積分器50、加減算器51、高制限器52を省略し、これに代えて、比例積分制御器48の出力側と低値選択器35の入力側との間に、増方向変化率制御器61を新たに設けている。
【0204】
ここで、増方向変化率制御器61は、出力減方向に対してはそのまま出力し、出力増方向に対しては所定レートを最大として出力変化率を制限するもので、第2の加速率制御手段の比例積分制御器48からの加速率制御信号NAを入力し、加速率制御信号NA1を出力するものである。
【0205】
次に、以上のように構成した本実施形態のガスタービン発電プラントの制御装置の動作について説明する。
【0206】
なお、ここでは、前記第3の実施の形態のガスタービン制御装置55と異なる部分の動作について説明する。
【0207】
図21において、第2の加速率制御手段の加速率制御信号NAは、増方向変化率制御器61に入力され、出力減方向に対してはそのまま出力し、出力増方向に対しては所定レートを最大として出力変化率を制限することにより、加速率制御信号NA1が出力される。そして、この加速率制御信号NA1は、低値選択器35に入力される。
【0208】
すなわち、前記図16に示した機能と同等の動作を奏するものであり、その様子を図22に示す。
【0209】
図22において、実線が加速率制御信号NAを示し、点線が加速率制御信号NA1を示す。
【0210】
このように、燃料供給量の急増を抑えることができる。特に、加速率制御は、ガスタービン7の軸速度Nの微分信号に大きく応動するため、その効果は極めて大きい。
【0211】
上述したように、本実施の形態によるガスタービン制御装置では、第1の加速率制御手段の比例積分制御器48の出力側と低値選択器35の入力側との間に、増方向変化率制御器61を設けるようにしているので、過渡的な燃料供給量の急増を効果的に抑制することができる。
【0212】
これにより、ガスタービン7高温部品の熱応力の低減を図って長寿命化に寄与しつつ、好適なガスタービン7の起動を行なうことが可能となる。
【0213】
(他の実施の形態)
(a)前記第3の実施の形態では、加速率設定値DNR1として、関数発生器18からの加算率設定値DNRと、関数発生器40からの加速率設定バイアスRB1との2つの要素を合成して得る場合について説明したが、これに限らず、前記図14における破線を一つの関数発生器で与えるようにしてもよい。
【0214】
また、加速率設定値DNR2についても同様に、前記図12における点線を一つの関数発生器で与えるようにしてもよい。
【0215】
この場合にも、前記第3の実施の形態の場合と同様の作用および効果を得ることが可能である。
【0216】
(b)前記第3の実施の形態において、関数発生器40および関数発生器45を削除するか、あるいは出力を零として、加速率設定値DNR1を前記図11における実線の特性で与え、加速率設定値DNR2を前記図11における一点鎖線の特性で与えるようにしてもよい。
【0217】
この場合には、常時の加速率制御は第1の加速率制御手段が行ない、第2の加速率制御手段はバックアップ用として機能する。
【0218】
すなわち、第1の加速率制御手段による制御が不調であった場合、あるいは起動時燃料設定手段による燃料設定が過多であった場合に、実加速率が加速率設定値DNR2を越えた時には、加速率制御信号NAを減少させることにより燃料供給量を絞る手段を与えるものである。
【0219】
(c)前記各々の実施の形態では、起動時燃料設定手段として、加速中のガスタービン7に供給する燃料量を、ガスタービン7の軸速度N、あるいは空気圧縮機4の吐出空気圧力PCDに基づいて設定する場合について説明したが、これに限らず、空気圧縮機4の吸入空気流量に基づいて設定するようにしてもよい。
【0220】
(d)前記各々の実施の形態では、起動時燃料設定手段として、加速中のガスタービン7に供給する燃料量を、ガスタービン7の軸速度N、あるいは空気圧縮機4の吐出空気圧力PCDに基づいて設定する場合について説明したが、これに限らず、燃焼用空気流量(空気圧縮機4吸入空気流量からガスタービン7高温部冷却用空気流量等を差し引いた燃焼用として使用される空気流量)に基づいて設定するようにしてもよい。
【0221】
この場合、空気圧縮機4吸入空気流量は、センサから計測された空気流量信号に、機械から決まる諸係数で補正を加えることにより得ることができる。そして、燃焼用空気流量は、上記空気流量からガスタービン7高温部冷却用空気流量等を差し引くことにより得られるが、冷却用空気流量は直接センサから計測することはできないため、機械設計値に基づいて求めることになる。
【0222】
しかし、燃空比=燃料量/燃焼用空気流量であるので、より一層精度のよい燃空比を得ることが可能となる。
【0223】
(e)前記各々の実施の形態では、起動時燃料設定手段として、加速中のガスタービン7に供給する燃料量を、ガスタービン7の軸速度N、あるいは空気圧縮機4の吐出空気圧力PCDに基づいて設定する場合について説明したが、これに限らず、ガスタービン7入口ガス圧力(空気圧縮機4吐出空気圧力から燃焼器5内圧力損失を差し引いた圧力)に基づいて設定するようにしてもよい。
【0224】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に対応する発明によれば、大気から吸入された空気を圧縮する空気圧縮機と、この空気圧縮機からの圧縮空気と外部から供給される燃料とを混合させて燃焼して得られる高温高圧のガスにより回転するガスタービンと、このガスタービンの回転により駆動されて電力を発生する発電機とを、同一軸に結合して成るガスタービン発電プラントの制御装置において、発電機の電流を調節することにより、ガスタービンの加速率を所定の第1の加速率設定値に制御する加速率制御信号を出力する第1の加速率制御手段と、第1の加速率制御手段による制御によって加速中のガスタービンに供給する燃速度、または空気圧縮機の吐出空気圧力、あるいは空気圧縮機の吸入空気流量)料量をガスタービン発電プラントの所定のプロセス量(ガスタービン軸の回転に基づいて設定し、起動時燃料設定信号を出力する起動時燃料設定手段と、ガスタービンに供給する燃料量を調節することにより、ガスタービン軸の回転速度を所定の速度設定値に制御する速度制御信号を出力する速度制御手段と、ガスタービンに供給する燃料量を調節することにより、ガスタービンの加速率を所定の第2の加速率設定値に制御する加速率制御信号を出力する第2の加速率制御制御手段と、起動時燃料設定手段からの起動時燃料設定信号、速度制御手段からの速度制御信号、および第2の加速率制御手段からの加速率制御信号を入力し、そのうち最も低値の信号を燃料量調節の燃料量設定信号として選択し出力する低値選択手段とを備えるようにしたので、発電機電流の調節による加速率制御が不調の場合、あるいは起動時燃料設定が異常の場合にも、過剰燃料量の供給を抑制しガスタービン発電プラントにおけるガスタービン高温部品の熱応力を低減してガスタービンの長寿命化を図りつつ、好適なガスタービン起動を行なうことが可能なガスタービン発電プラントの制御装置が提供できる。
【0228】
また、請求項2に対応する発明によれば、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、ガスタービン軸の速度に基づいて加速率設定バイアス量を与える加速率バイアス設定手段と、第1の加速率制御手段または第2の加速率制御手段の加速率設定値に対して、互いにその大きさを異ならせるように加速率バイアス設定手段から与えられる加速率設定バイアス量を加減する加速率設定値可変手段とを付加し、ガスタービンの加速に伴ってガスタービン加速率の制御を第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段へ切換えるようにしたので、燃料供給量の急変を防止することが可能なガスタービン発電プラントの制御装置が提供できる。
【0229】
さらに、請求項4に対応する発明によれば、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、ガスタービン軸の速度に基づいて発電機の電流の大きさを与える電流設定信号を出力する電流設定手段と、電流設定手段からの電流設定信号と第1の加速率制御手段からの加速率制御信号とを入力し、そのうちいずれか低値の方の信号を発電機電流調節の電流設定信号として選択し出力する第2の低値選択手段とを付加するようにしたので、多用的な制御を実現して燃料供給量の急変を防止することが可能なガスタービン発電プラントの制御装置が提供できる。
【0230】
さらにまた、請求項5に対応する発明によれば、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、第2の加速率制御手段からの加速率制御信号より所定の燃料設定バイアス量だけ高い値を目標値として、燃料増方向変化率制限制御信号を所定レートで追従させる燃料増方向変化率制限制御手段を付加し、かつ当該燃料増方向変化率制限制御手段からの燃料増方向変化率制限制御信号を低値選択手段へ追加入力するようにしたので、燃料供給量の急変を防止することが可能なガスタービン発電プラントの制御装置が提供できる。
【0231】
一方、請求項3に対応する発明によれば、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、第1の加速率制御手段におけるガスタービンの加速率と第1の加速率設定値との加速率制御偏差に基づいて加速率設定バイアス量を与える加速率バイアス設定手段と、第1の加速率制御手段または第2の加速率制御手段の加速率設定値に対して、互いにその大きさを異ならせるように加速率バイアス設定手段から与えられる加速率設定バイアス量を加減する加速率設定値可変手段とを付加し、ガスタービンの加速に伴ってガスタービン加速率の制御を第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段へ切換えるようにしたので、より一層制御精度を高めて燃料供給量の急変を防止することが可能なガスタービン発電プラントの制御装置が提供できる。
【0232】
また、請求項6に対応する発明によれば、上記請求項1に対応する発明のガスタービン発電プラントの制御装置において、第2の加速率制御手段の出力段と低値選択手段の入力段との間に燃料増方向変化率制限手段を付加し、発電機の電流の減少に伴う第2の加速率制御手段からの加速率制御信号の急増時に、燃料量設定信号の変化を所定レートに抑制するようにしたので、燃料供給量の急変を防止することが可能なガスタービン発電プラントの制御装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガスタービン発電プラントおよびガスタービン制御装置の全体構成例を示すブロック図。
【図2】本発明による各々の実施の形態における発電機電流制御手段の構成例を示すブロック図。
【図3】本発明によるガスタービン制御装置の第1の実施の形態を示すブロック図。
【図4】本発明による第1の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図5】本発明による各々の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図6】本発明による第1の実施の形態のガスタービン制御装置の動作を説明するための図。
【図7】本発明による各々の実施の形態のガスタービン制御装置におけるガスタービン入口温度の動きを説明するための図。
【図8】本発明による各々の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図9】本発明によるガスタービン制御装置の第2の実施の形態を示すブロック図。
【図10】本発明によるガスタービン制御装置の第3の実施の形態を示すブロック図。
【図11】本発明による第3、第4および第5の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図12】本発明による第3および第5の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図13】本発明による第3および第5の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図14】本発明による第3および第5の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図15】本発明による第3の実施の形態のガスタービン制御装置の動作を説明するための図。
【図16】本発明による第3の実施の形態のガスタービン制御装置の動作を説明するための図。
【図17】本発明によるガスタービン制御装置の第4の実施の形態を示すブロック図。
【図18】本発明による第4の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図19】本発明による第4の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図20】本発明による第4の実施の形態のガスタービン制御装置における関数発生器の一例を示す特性図。
【図21】本発明によるガスタービン制御装置の第5の実施の形態を示すブロック図。
【図22】本発明による第5の実施の形態のガスタービン制御装置の動作を説明するための図。
【図23】従来のガスタービン発電プラントおよびガスタービン制御装置の全体構成例を示すブロック図。
【図24】従来のガスタービン制御装置における空気圧縮機入口空気案内翼角度の動きを説明するための図。
【符号の説明】
1…起動モータ、
2…トルクコンバータ、
3…入口空気案内翼、
4…空気圧縮機、
5…燃焼器、
6…燃料制御弁、
7…ガスタービン、
8…発電機、
9…速度検出器、
10…起動制御回路、
11…速度制御回路、
12…加速制限回路、
13…入口空気案内翼制御回路、
14…トルク制御回路、
15…低値選択器、
16…圧力検出器、
17…微分器、
18…関数発生器、
19…比例積分制御器、
20…減算器、
21…スイッチ、
22…スイッチ、
23…積分器、
24…信号発生器、
25…信号発生器、
26…減算器、
27…比例制御器、
28…信号発生器、
29…加算器、
31…スイッチ、
32…スイッチ、
33…積分器、
34…信号発生器、
35…低値選択器、
36…比較器、
37…比較器、
38…関数発生器、
40…関数発生器、
41…加算器、
42…関数発生器、
43…低値選択器、
44…関数発生器、
45…関数発生器、
46…減算器、
47…減算器、
48…比例積分制御器、
49…信号発生器、
50…積分器、
51…加減算器、
52…高制限器、
53…関数発生器、
54…関数発生器、
55…ガスタービン制御装置、
56…変圧器、
57…サイリスタ変換器、
58…電流検出器、
59…減算器、
60…制御器、
N…軸速度信号、
S1…燃料量設定信号、
S2…燃料量設定信号、
S3…燃料量設定信号、
S4…燃料量設定信号、
S5…翼角度制御信号、
S6…伝達トルク補正指令、
S8…電流設定信号、
S8A…電流設定信号、
S8B…加速率制御信号、
S9…電流制御信号、
PCD…空気圧縮機吐出空気圧力信号、
Ig…電流信号、
DN…加速率、
DNR…加速率設定値、
DNE…加速率偏差、
NR…速度設定値、
NE…速度偏差、
NC…速度制御信号、
NSB…起動時燃料設定信号、
NS…起動時燃料設定信号、
RB1…加速率設定バイアス、
DNR1…加速率設定値、
IS…電流設定信号、
DNS…加速率設定値、
RB2…加速率設定バイアス、
DNR2…加速率設定、
NA…加速率制御信号、
LB…燃料設定バイアス信号、
NL…積分量、
DNE…加速率制御偏差、
NA1…加速率制御信号。
Claims (9)
- 大気から吸入された空気を圧縮する空気圧縮機と、この空気圧縮機からの圧縮空気と外部から供給される燃料とを混合させて燃焼して得られる高温高圧のガスにより回転するガスタービンと、このガスタービンの回転により駆動されて電力を発生する発電機とを、同一軸に結合して成るガスタービン発電プラントの制御装置において、
前記発電機の電流を調節することにより、前記ガスタービンの加速率を所定の第1の加速率設定値に制御する加速率制御信号を出力する第1の加速率制御手段と、
前記第1の加速率制御手段による制御によって加速中の前記ガスタービンに供給する燃料量を前記ガスタービン発電プラントの所定のプロセス量に基づいて設定し、起動時燃料設定信号を出力する起動時燃料設定手段と、
前記ガスタービンに供給する燃料量を調節することにより、前記ガスタービン軸の回転速度を所定の速度設定値に制御する速度制御信号を出力する速度制御手段と、
前記ガスタービンに供給する燃料量を調節することにより、前記ガスタービンの加速率を所定の第2の加速率設定値に制御する加速率制御信号を出力する第2の加速率制御制御手段と、
前記起動時燃料設定手段からの起動時燃料設定信号、前記速度制御手段からの速度制御信号、および前記第2の加速率制御手段からの加速率制御信号を入力し、そのうち最も低値の信号を前記燃料量調節の燃料量設定信号として選択し出力する低値選択手段と、
を備えて成ることを特徴とするガスタービン発電プラントの制御装置。 - 前記請求項1に記載のガスタービン発電プラントの制御装置において、
前記ガスタービン軸の速度に基づいて加速率設定バイアス量を与える加速率バイアス設定手段と、
前記第1の加速率制御手段または第2の加速率制御手段の加速率設定値に対して、互いにその大きさを異ならせるように前記加速率バイアス設定手段から与えられる加速率設定バイアス量を加減する加速率設定値可変手段とを付加し、
前記ガスタービンの加速に伴ってガスタービン加速率の制御を第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段へ切換えるようにしたことを特徴とするガスタービン発電プラントの制御装置。 - 前記請求項1に記載のガスタービン発電プラントの制御装置において、
前記第1の加速率制御手段における前記ガスタービンの加速率と第1の加速率設定値との加速率制御偏差に基づいて加速率設定バイアス量を与える加速率バイアス設定手段と、
前記第1の加速率制御手段または第2の加速率制御手段の加速率設定値に対して、互いにその大きさを異ならせるように前記加速率バイアス設定手段から与えられる加速率設定バイアス量を加減する加速率設定値可変手段とを付加し、
前記ガスタービンの加速に伴ってガスタービン加速率の制御を第1の加速率制御手段から第2の加速率制御手段へ切換えるようにしたことを特徴とするガスタービン発電プラントの制御装置。 - 前記請求項1に記載のガスタービン発電プラントの制御装置において、
前記ガスタービン軸の速度に基づいて発電機の電流の大きさを与える電流設定信号を出力する電流設定手段と、
前記電流設定手段からの電流設定信号と前記第1の加速率制御手段からの加速率制御信号とを入力し、そのうちいずれか低値の方の信号を前記発電機電流調節の電流設定信号として選択し出力する第2の低値選択手段と、
を付加して成ることを特徴とするガスタービン発電プラントの制御装置。 - 前記請求項1に記載のガスタービン発電プラントの制御装置において、
前記第2の加速率制御手段からの加速率制御信号より所定の燃料設定バイアス量だけ高 い値を目標値として、燃料増方向変化率制限制御信号を所定レートで追従させる燃料増方向変化率制限制御手段を付加し、
かつ前記燃料増方向変化率制限制御手段からの燃料増方向変化率制限制御信号を前記低値選択手段へ追加入力するようにしたことを特徴とするガスタービン発電プラントの制御装置。 - 前記請求項1に記載のガスタービン発電プラントの制御装置において、
前記第2の加速率制御手段の出力段と前記低値選択手段の入力段との間に燃料増方向変化率制限手段を付加し、
前記発電機の電流の減少に伴う前記第2の加速率制御手段からの加速率制御信号の急増時に、前記燃料量設定信号の変化を所定レートに抑制するようにしたことを特徴とするガスタービン発電プラントの制御装置。 - 前記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のガスタービン発電プラントの制御装置において、
前記起動時燃料設定手段としては、加速中のガスタービンに供給する燃料量を、前記ガスタービン軸の回転速度に基づいて設定するようにしたことを特徴とするガスタービン発電プラントの制御装置。 - 前記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のガスタービン発電プラントの制御装置において、
前記起動時燃料設定手段としては、加速中のガスタービンに供給する燃料量を、前記空気圧縮機の吐出空気圧力に基づいて設定するようにしたことを特徴とするガスタービン発電プラントの制御装置。 - 前記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のガスタービン発電プラントの制御装置において、
前記起動時燃料設定手段としては、加速中のガスタービンに供給する燃料量を、前記空気圧縮機の吸入空気流量に基づいて設定するようにしたことを特徴とするガスタービン発電プラントの制御装置。
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