JP3671640B2 - 異種金属複合製品の切削方法 - Google Patents
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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ベルト接触面に金属板を鋳ぐるんで製造したアルミニウム合金製のプーリーのように、切削して仕上げる金属製品の表面に、異なるヤング率ないし硬度を持つ金属が層状に形成されているものを正確に切削できる方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、エンジンのクランクプーリーは軽量化のためにアルミニウム合金等の軽金属を使用しているが、このプーリーのベルト溝部のようにベルトとの接触面がアルミニウムのままであると簡単に磨耗して滑り易くなり、駆動プーリーから従動プーリーに必要とする動力を正確に伝達できないと言う問題がある。
【0003】
そこでこのような軽量なプーリーのベルト溝部の磨耗の問題を解決するために鋼板をプレス加工によってベルト溝の形状に形成したインサート部材を鋳型の内部に配置した状態でアルミ合金の溶湯を注入して鋳ぐるんで構成した複合プーリーを製造する方法が提案実施されている。
また、トップリングに鋳鉄製のリングトレーを鋳込んだアルミ合金製ピストンや、バルブステムエンドとの接触部に鋳鉄や超硬合金を鋳込んだアルミ合金製ロッカーアーム等の複合鋳造品が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記クランクプーリーやピストンやロッカーアーム等は鋳造後に旋盤で表面を切削して仕上げる方法が行なわれているが、この切削工程においては同一の切削工具(バイト)がヤング率あるいは硬度の低いアルミ合金の部分と、ヤング率あるいは硬度の高い鋼板や鋳鉄、あるいは超硬合金の部分を通過することになる。
【0005】
これらの異種金属が積層されている部分はヤング率が段階的に異なっており、鋳造品であるワークの回転速度が一定の条件の場合には、切削工具がこのワークから受ける切削抵抗は、当然、ヤング率が高く、硬度の高い部分がヤング率が低く硬度の低い部分より大きな切削抵抗を受けることになる。従って、ヤング率あるいは硬度の高い金属部分に比較して低い金属部分は切り込み量を大きくすることができる。
【0006】
また、ヤング率の低い金属からなるワークは、ヤング率の高い金属からなるワークに比較して切り屑が飛散することがなく、切削工具の近辺に残り易く、その結果、切り屑が切削工具の周りにまとわりついて排出することができなくなるようなことが発生するので、ワークの回転速度を上げて切り屑が飛散し易いように操作している。
【0007】
このように、ワークのヤング率が異なれば切削条件が全く異なるために、ヤング率が異なる異種金属が積層されて部分、特に異種金属間の境界部分の切削条件の調節が非常に重要になる。
つまり、アルミ合金と鋼板からなる複合金属製のプーリーを切削加工する場合を例にとると、図3に示すアルミ合金からなる本体部分2に鋼板製の成形板3a,3bからなる溝部3を鋳ぐるんだ複合金属製のプーリー(例えばエンジンのクランクプーリー)を切削する場合、切削抵抗の少ないアルミ合金である本体部分2から鋼板である成形板3a,3b側へと切削すると、切削条件が同一であれば、切削抵抗が急激に増加する。このため、この抵抗力により成形板3a,3bの先端部分3tを切削工具が押圧してこの先端部分3tを本体部分2から剥離させて間隙gを形成しながらベルト溝部3側に変形させるという現象が発生する。
【0008】
そこでこのような複合金属製品の一般的な切削加工法の公知技術の例について述べると次の通りである。
A.特開平5−57501号公報により、チタンまたはその合金と鋼とを組み合わせた状態で切削加工する際の接合部分における段差の発生や形状の精度の低下を防ぐために、鋼の硬度をチタンまたはチタン合金の硬度の±20%以内におさめ、かつ鋼の切削において構成刃先が形成されない切削条件を選択して共削りする方法が提案されている。
【0009】
しかし、この発明の共削り加工法は、チタンまたはチタン合金と鋼との間の硬度の範囲を制限するものであるから、材料が限定されるという本質的な問題がある上に、この技術的思想をアルミ合金と鋼からなる複合金属鋳物製品のように、ヤング率あるいは硬度が全く異なる金属からなる複合金属製品には適用できないと言う問題がある。
【0010】
B.特開平7−328801号公報により、丸棒を切削する際に切削工具のワークへの切り込み量を変化させて、第一段階でそのワークの表面を波形に切削し、次の段階で最小径の部分に合わせて切削工具を突出させた状態で直線的に切削することによって、切削屑を切断しながら効率的に切削する方法に関する発明が提案されている。しかし、この発明の切削方法は長い丸棒の肉を大量に切削する場合以外には適用することができないものである。
【0011】
C.特開平6−63846号公報により、ワークの端面を外径部から中心に切削する際に、切削工具の送り速度を次第に減速させるようにした旋盤の工具送り速度制御装置に関する発明が提案されている。しかし、この発明もヤング率の異なる材料を積層した外形部分を切削する方法を提案するものではない。
本発明は、表面にヤング率あるいは硬度の異なる金属材料の層が積層状態で形成されているワークの表面を切削する際に、前記のように切削抵抗が急激に変化する現象から発生する問題点を解決するために検討した結果得られたものであって、金属の境界部分における剥離等の欠点がなく、切削加工面を美麗にする切削方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明における異種金属複合製品の切削方法は、切削面にヤング率の異なる金属が積層されているワークを、積層方向を軸として回転させながら切削工具で該ワークの表面を切削加工するに際して、切削工具をヤング率の高い金属材料側から低い金属材料側に移動させながら切削することを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、端面にヤング率が高い金属層が形成されているワークを切削する際に好適な方法である。更に、前記ワークがプーリーであって、ヤング率の低い部分がアルミ合金からなる本体で、ヤング率の高い部分が鋼板を成形したベルト溝部で構成されているものを切削するのが適している。
前記のようにヤング率が高く、切削抵抗が大きい金属材料が端部に露出している複合金属製品を切削する場合、端面に位置しているヤング率の高い金属材料側からヤング率の低い金属材料側へと切削を行えば、境界部分で切削抵抗の急激な変化を受けることはなく、ヤング率の高い金属材料の層をヤング率の低い金属層側から剥離させることなく、効率的に切削して製品を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は鋳造したクランクプーリー1の一部を切開して示す断面図であって、本体部分2はアルミ合金で、この本体部分2の所定の位置に露出状態のベルト溝部3は鋼板で構成されている。
【0015】
そしてこのベルト溝部3は、2枚の皿状の成形板3aと3bの内径側の延長部3cを部分的に溶接して一体化した状態で鋳型内に配置し、次いでアミル合金の溶湯を注湯して鋳ぐるんで形成したものであり、外形部分1aを切削して必要とする寸法を出す必要がある。
この切削工程には図2に示すように外形部分1aを切削する必要があるが、本発明においては切削工具5(バイト)を矢印のように鋼板からなる成形板3aあるいは3b側からアルミ合金からなる本体部分2の方に送り込んでいくことを特徴としている。
【0016】
なお、ベルト溝部3を構成する一対の成形板3aと3bは、予めアルミ合金の溶湯の中に浸漬してその表面に薄いアルミ被膜を形成するアルミナイズド処理を行なって本体部分2のアルミ合金と化学的結合層を形成して接合するように常法にしたがって前処理されている。
この実施例におけるアルミ合金(AC4C)のヤング率は68×103 (MPa)、硬度は約60HBであるのに対して鋼板(SPCC)のヤング率は220×103 (MPa)、硬度は約105HBであって、特にヤング率は約3倍の差を持っている。
【0017】
当然のことながら、このヤング率の差は、同一の切削工具(バイト)で連続的に切削する場合の切削性の差になって現れるもので、前記のように高いヤング率の鋼板からなる成形板3a,3b側は切込み量を少なくし、また、低いヤング率のアルミ合金からなる本体部分2側は多くの切込み量となるように操作する必要がある。
【0018】
この成形板3a,3bを切削するときのワークの回転速度は、アルミ合金の本体部分2を切削する場合の回転速度に比較して小さいものであるが、図3に矢印で示したように本体部分2の外形部分1aを切削した後にベルト溝部3の成形板3a,3b側の外径部分を切削しようとすると、先に述べたように急激な切削抵抗の変化により、その先端部分3tに切削工具5の押圧力を作用させることになり、この先端部分3tを本体部分2より剥離させて間隙gを形成することになる。この間隙gは成形板3a,3bの板厚にもよるが、目に見えないようなものであっても、接合面は剥離していることが多い。
【0019】
そこで本発明においては、この図3に示す欠点を発生しないようにするために、図2に矢印でそれぞれ示すように成形板3a,3b側から本体部分2側に切削工具(バイト)5を移動させながら切削加工を進めるのである。このように成形板3a,3b側から本体部分2側に切削加工を進めると、成形板3a,3bに対して本体部分2の方がヤング率が低いため、切削工具がワークから受ける切削抵抗は減少して図3に示すように成形板3a,3bを本体部分2から剥離させる力を発生しないのである。
【0020】
前記のように、高ヤング率の材料側から切削を開始して低ヤング率の材料側へと切削を進めていくことによって、高ヤング率の材料の表面に曲げ応力を発生させることがないために、この高ヤング率の材料が薄い金属板であっても、これと接合している低ヤング率の材料より剥離することがない。
なお、前記切削工程における切削工具5の移動方向や切込み量は手作業でも可能であるが、実際の切削工程においてはワークの寸法や形状が決まっているものを所定の寸法に仕上げる場合が多いものであるから、ワークの寸法や製品の寸法、そして切削方向の指示に関するデータとをコンピューターに入力しておいて切削することが好ましい。
【0021】
【発明の効果】
本発明に係る異種金属複合製品の切削方法は、切削面にヤング率の異なる金属が積層されているワークを、積層方向を軸として回転させながら切削工具で該ワークの表面を切削加工するに際して、切削工具をヤング率の高い金属材料側から低い金属材料側に移動させながら切削することを特徴としている。
【0022】
従って、端面にヤング率が高い金属材料と、ヤング率が低い金属材料とを積層した異種金属複合製品の積層面を切削加工しても、ヤング率が高い金属材料が隣接する材料面から剥離するようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】クランクプーリーの一部を切断して示す正面図である。
【図2】本発明に係る切削方法の説明用断面図である。
【図3】従来の切削方法の欠点の説明用断面図である。
【符号の説明】
1 クランクプーリー 1a 外形部分 2 本体部分
3 ベルト溝部 3a,3b 成形板 3c 延長部 3t 先端部
5 切削工具(バイト)
【産業上の利用分野】
本発明は、ベルト接触面に金属板を鋳ぐるんで製造したアルミニウム合金製のプーリーのように、切削して仕上げる金属製品の表面に、異なるヤング率ないし硬度を持つ金属が層状に形成されているものを正確に切削できる方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、エンジンのクランクプーリーは軽量化のためにアルミニウム合金等の軽金属を使用しているが、このプーリーのベルト溝部のようにベルトとの接触面がアルミニウムのままであると簡単に磨耗して滑り易くなり、駆動プーリーから従動プーリーに必要とする動力を正確に伝達できないと言う問題がある。
【0003】
そこでこのような軽量なプーリーのベルト溝部の磨耗の問題を解決するために鋼板をプレス加工によってベルト溝の形状に形成したインサート部材を鋳型の内部に配置した状態でアルミ合金の溶湯を注入して鋳ぐるんで構成した複合プーリーを製造する方法が提案実施されている。
また、トップリングに鋳鉄製のリングトレーを鋳込んだアルミ合金製ピストンや、バルブステムエンドとの接触部に鋳鉄や超硬合金を鋳込んだアルミ合金製ロッカーアーム等の複合鋳造品が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記クランクプーリーやピストンやロッカーアーム等は鋳造後に旋盤で表面を切削して仕上げる方法が行なわれているが、この切削工程においては同一の切削工具(バイト)がヤング率あるいは硬度の低いアルミ合金の部分と、ヤング率あるいは硬度の高い鋼板や鋳鉄、あるいは超硬合金の部分を通過することになる。
【0005】
これらの異種金属が積層されている部分はヤング率が段階的に異なっており、鋳造品であるワークの回転速度が一定の条件の場合には、切削工具がこのワークから受ける切削抵抗は、当然、ヤング率が高く、硬度の高い部分がヤング率が低く硬度の低い部分より大きな切削抵抗を受けることになる。従って、ヤング率あるいは硬度の高い金属部分に比較して低い金属部分は切り込み量を大きくすることができる。
【0006】
また、ヤング率の低い金属からなるワークは、ヤング率の高い金属からなるワークに比較して切り屑が飛散することがなく、切削工具の近辺に残り易く、その結果、切り屑が切削工具の周りにまとわりついて排出することができなくなるようなことが発生するので、ワークの回転速度を上げて切り屑が飛散し易いように操作している。
【0007】
このように、ワークのヤング率が異なれば切削条件が全く異なるために、ヤング率が異なる異種金属が積層されて部分、特に異種金属間の境界部分の切削条件の調節が非常に重要になる。
つまり、アルミ合金と鋼板からなる複合金属製のプーリーを切削加工する場合を例にとると、図3に示すアルミ合金からなる本体部分2に鋼板製の成形板3a,3bからなる溝部3を鋳ぐるんだ複合金属製のプーリー(例えばエンジンのクランクプーリー)を切削する場合、切削抵抗の少ないアルミ合金である本体部分2から鋼板である成形板3a,3b側へと切削すると、切削条件が同一であれば、切削抵抗が急激に増加する。このため、この抵抗力により成形板3a,3bの先端部分3tを切削工具が押圧してこの先端部分3tを本体部分2から剥離させて間隙gを形成しながらベルト溝部3側に変形させるという現象が発生する。
【0008】
そこでこのような複合金属製品の一般的な切削加工法の公知技術の例について述べると次の通りである。
A.特開平5−57501号公報により、チタンまたはその合金と鋼とを組み合わせた状態で切削加工する際の接合部分における段差の発生や形状の精度の低下を防ぐために、鋼の硬度をチタンまたはチタン合金の硬度の±20%以内におさめ、かつ鋼の切削において構成刃先が形成されない切削条件を選択して共削りする方法が提案されている。
【0009】
しかし、この発明の共削り加工法は、チタンまたはチタン合金と鋼との間の硬度の範囲を制限するものであるから、材料が限定されるという本質的な問題がある上に、この技術的思想をアルミ合金と鋼からなる複合金属鋳物製品のように、ヤング率あるいは硬度が全く異なる金属からなる複合金属製品には適用できないと言う問題がある。
【0010】
B.特開平7−328801号公報により、丸棒を切削する際に切削工具のワークへの切り込み量を変化させて、第一段階でそのワークの表面を波形に切削し、次の段階で最小径の部分に合わせて切削工具を突出させた状態で直線的に切削することによって、切削屑を切断しながら効率的に切削する方法に関する発明が提案されている。しかし、この発明の切削方法は長い丸棒の肉を大量に切削する場合以外には適用することができないものである。
【0011】
C.特開平6−63846号公報により、ワークの端面を外径部から中心に切削する際に、切削工具の送り速度を次第に減速させるようにした旋盤の工具送り速度制御装置に関する発明が提案されている。しかし、この発明もヤング率の異なる材料を積層した外形部分を切削する方法を提案するものではない。
本発明は、表面にヤング率あるいは硬度の異なる金属材料の層が積層状態で形成されているワークの表面を切削する際に、前記のように切削抵抗が急激に変化する現象から発生する問題点を解決するために検討した結果得られたものであって、金属の境界部分における剥離等の欠点がなく、切削加工面を美麗にする切削方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明における異種金属複合製品の切削方法は、切削面にヤング率の異なる金属が積層されているワークを、積層方向を軸として回転させながら切削工具で該ワークの表面を切削加工するに際して、切削工具をヤング率の高い金属材料側から低い金属材料側に移動させながら切削することを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、端面にヤング率が高い金属層が形成されているワークを切削する際に好適な方法である。更に、前記ワークがプーリーであって、ヤング率の低い部分がアルミ合金からなる本体で、ヤング率の高い部分が鋼板を成形したベルト溝部で構成されているものを切削するのが適している。
前記のようにヤング率が高く、切削抵抗が大きい金属材料が端部に露出している複合金属製品を切削する場合、端面に位置しているヤング率の高い金属材料側からヤング率の低い金属材料側へと切削を行えば、境界部分で切削抵抗の急激な変化を受けることはなく、ヤング率の高い金属材料の層をヤング率の低い金属層側から剥離させることなく、効率的に切削して製品を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は鋳造したクランクプーリー1の一部を切開して示す断面図であって、本体部分2はアルミ合金で、この本体部分2の所定の位置に露出状態のベルト溝部3は鋼板で構成されている。
【0015】
そしてこのベルト溝部3は、2枚の皿状の成形板3aと3bの内径側の延長部3cを部分的に溶接して一体化した状態で鋳型内に配置し、次いでアミル合金の溶湯を注湯して鋳ぐるんで形成したものであり、外形部分1aを切削して必要とする寸法を出す必要がある。
この切削工程には図2に示すように外形部分1aを切削する必要があるが、本発明においては切削工具5(バイト)を矢印のように鋼板からなる成形板3aあるいは3b側からアルミ合金からなる本体部分2の方に送り込んでいくことを特徴としている。
【0016】
なお、ベルト溝部3を構成する一対の成形板3aと3bは、予めアルミ合金の溶湯の中に浸漬してその表面に薄いアルミ被膜を形成するアルミナイズド処理を行なって本体部分2のアルミ合金と化学的結合層を形成して接合するように常法にしたがって前処理されている。
この実施例におけるアルミ合金(AC4C)のヤング率は68×103 (MPa)、硬度は約60HBであるのに対して鋼板(SPCC)のヤング率は220×103 (MPa)、硬度は約105HBであって、特にヤング率は約3倍の差を持っている。
【0017】
当然のことながら、このヤング率の差は、同一の切削工具(バイト)で連続的に切削する場合の切削性の差になって現れるもので、前記のように高いヤング率の鋼板からなる成形板3a,3b側は切込み量を少なくし、また、低いヤング率のアルミ合金からなる本体部分2側は多くの切込み量となるように操作する必要がある。
【0018】
この成形板3a,3bを切削するときのワークの回転速度は、アルミ合金の本体部分2を切削する場合の回転速度に比較して小さいものであるが、図3に矢印で示したように本体部分2の外形部分1aを切削した後にベルト溝部3の成形板3a,3b側の外径部分を切削しようとすると、先に述べたように急激な切削抵抗の変化により、その先端部分3tに切削工具5の押圧力を作用させることになり、この先端部分3tを本体部分2より剥離させて間隙gを形成することになる。この間隙gは成形板3a,3bの板厚にもよるが、目に見えないようなものであっても、接合面は剥離していることが多い。
【0019】
そこで本発明においては、この図3に示す欠点を発生しないようにするために、図2に矢印でそれぞれ示すように成形板3a,3b側から本体部分2側に切削工具(バイト)5を移動させながら切削加工を進めるのである。このように成形板3a,3b側から本体部分2側に切削加工を進めると、成形板3a,3bに対して本体部分2の方がヤング率が低いため、切削工具がワークから受ける切削抵抗は減少して図3に示すように成形板3a,3bを本体部分2から剥離させる力を発生しないのである。
【0020】
前記のように、高ヤング率の材料側から切削を開始して低ヤング率の材料側へと切削を進めていくことによって、高ヤング率の材料の表面に曲げ応力を発生させることがないために、この高ヤング率の材料が薄い金属板であっても、これと接合している低ヤング率の材料より剥離することがない。
なお、前記切削工程における切削工具5の移動方向や切込み量は手作業でも可能であるが、実際の切削工程においてはワークの寸法や形状が決まっているものを所定の寸法に仕上げる場合が多いものであるから、ワークの寸法や製品の寸法、そして切削方向の指示に関するデータとをコンピューターに入力しておいて切削することが好ましい。
【0021】
【発明の効果】
本発明に係る異種金属複合製品の切削方法は、切削面にヤング率の異なる金属が積層されているワークを、積層方向を軸として回転させながら切削工具で該ワークの表面を切削加工するに際して、切削工具をヤング率の高い金属材料側から低い金属材料側に移動させながら切削することを特徴としている。
【0022】
従って、端面にヤング率が高い金属材料と、ヤング率が低い金属材料とを積層した異種金属複合製品の積層面を切削加工しても、ヤング率が高い金属材料が隣接する材料面から剥離するようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】クランクプーリーの一部を切断して示す正面図である。
【図2】本発明に係る切削方法の説明用断面図である。
【図3】従来の切削方法の欠点の説明用断面図である。
【符号の説明】
1 クランクプーリー 1a 外形部分 2 本体部分
3 ベルト溝部 3a,3b 成形板 3c 延長部 3t 先端部
5 切削工具(バイト)
Claims (3)
- 切削面にヤング率の異なる金属が積層されているワークを、積層方向を軸として回転させながら切削工具で該ワークの表面を切削加工するに際して、切削工具をヤング率の高い金属材料側から低い金属材料側に移動させながら切削することを特徴とする異種金属複合製品の切削方法。
- 端面にヤング率が高い金属層が形成されているワークを切削する請求項1記載の異種金属複合製品の切削方法。
- 前記ワークがプーリーであって、ヤング率の低い部分がアルミ合金からなる本体で、ヤング率の高い部分が鋼板を成形したベルト溝部で構成されている請求項1記載の異種金属複合製品の切削方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35475297A JP3671640B2 (ja) | 1997-12-24 | 1997-12-24 | 異種金属複合製品の切削方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35475297A JP3671640B2 (ja) | 1997-12-24 | 1997-12-24 | 異種金属複合製品の切削方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11188502A JPH11188502A (ja) | 1999-07-13 |
JP3671640B2 true JP3671640B2 (ja) | 2005-07-13 |
Family
ID=18439675
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP35475297A Expired - Fee Related JP3671640B2 (ja) | 1997-12-24 | 1997-12-24 | 異種金属複合製品の切削方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3671640B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4587172B2 (ja) * | 2005-04-01 | 2010-11-24 | キヤノン株式会社 | 回折光学素子、回折光学素子の製造方法、及び回折光学素子成形用金型の製造方法 |
CN112077338B (zh) * | 2020-09-18 | 2022-02-11 | 中国航发沈阳黎明航空发动机有限责任公司 | 一种用于回转机匣的消除涂层与基体尺寸差异的加工方法 |
-
1997
- 1997-12-24 JP JP35475297A patent/JP3671640B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH11188502A (ja) | 1999-07-13 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20040322 |
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A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20040324 |
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TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
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