JP3670970B2 - 熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱現像性感光材料は、主に脂肪酸の銀塩、有機還元剤、場合によっては少量の感光性ハロゲン化銀を高分子バインダー中に分散して得られる組成物を支持体上に塗工してなるものである。
従来、汎用されているハロゲン化銀は、写真特性が優れていることから高品質の画像形成材料として利用されているが、現像及び定着工程における作業が複雑であり、しかも上記の工程がいずれも湿式処理であるため、煩瑣な処理作業に煩わされるだけでなく、多量の化学廃液を排出するという問題があった。
このような問題点を回避するために、現像工程を湿式方式から熱現像方式で行うべく熱現像性感光材料が開発され、一部実用に供されるに至っている。
【0003】
例えば、特公昭43−4924号公報には、一群になって会合している銀イオンを分子中に有する有機銀塩と上記銀イオンに対して触媒的に接触しているハロゲン化銀と緩還元剤とからなる熱現像性感光性シート材が開示されている。
これらの有機銀塩、ハロゲン化銀及び緩還元剤からなる感光材が、透明なそれ自体支持体となるフィルム中若しくは結合剤の殆どない繊維製品中に入れられて熱現像性感光性シート材が形成されるか、又は、例えば、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、酢酸セルローズ、ポリ酢酸ビニル、酢酸プロピオン酸セルローズ、酪酸セルローズの如き造膜性結合剤の塗布層中に入れられて、紙、プラスチックフィルム、金属箔、ガラス板のごとき耐熱性支持体上に塗工されて熱現像性感光性シート材が形成されることが上記の公報中に記載され、上記造膜性結合剤として、ポリビニルアセタール樹脂が最適のものとして使用されている。
【0004】
しかしながら、従来のポリビニルアセタール樹脂は、製法上、微量の不純物を含んでおり、これら不純物の影響により、造膜性結合剤自体が感光性を有し、調製された造膜性結合剤の塗布層を無用に着色させたり、塗工後の画像に、かぶり、階調不良、感度不足、画像形成前の感光性シート材の保存性不良等の欠点を生じるおそれのあるものであった。また、ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度によっては、熱現像時のフィルムが熱変形を起こしたり、塗工した後の画像に、かぶり、階調不良、感度不足、またフィルムの取り扱い時に割れ等が生じる場合があった。
【0005】
上記画像の特性を低下させる問題点を解決する手段として、例えば、特開昭49−52626号公報には、感光性ハロゲン化銀、還元剤及び銀塩酸化剤を含む感熱写真組成物において、銀塩酸化剤として一般式で表されるチオン化合物を用いることによって、独立した安定化剤又は安定化剤プレカーサを存在せしめないで安定な画像を形成しえることが記載されている。しかしながら、銀塩酸化剤として上記チオン化合物を用いることによって従来のポリビニルブチラールが有する上記の問題点を解決し得るものではない。
【0006】
また、画像特性を向上させるために、脂肪酸の銀塩、有機還元剤、感光性ハロゲン化銀等をより均一に分散させることが必要とされているが、分散性を重視するために重合度の低いポリビニルアセタール樹脂を使用すると、得られた塗膜の強度が弱くなり、かぶり等の問題が発生し、逆に塗膜強度を満足させるために重合度の高いポリビニルアセタール樹脂を使用すると脂肪酸の銀塩、有機還元剤、感光性ハロゲン化銀を均一に分散させることが難しくなる。
更に、熱現像性感光材料のうち熱現像性銀塩フィルムは、従来の湿式のゼラチンを使用したX線感光フィルムに比べて、画像特性、特に画像濃度、階調部の鮮明度が劣り、熱現像性銀塩フィルムのこれら画像特性の向上が強く求められており、そのためには、加熱時の銀の核成長を厳しくコントロールする必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、塗工溶液のポットライフ、熱現像性感光材料の着色や、かぶり、階調不良、感度不足、フィルムの生保存性不良等の発生のない優れた画像特性を有する熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応により合成されるポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が200〜3000であり、アセタール基をアセタール化された2つの水酸基として数えた場合、残存アセチル基の割合が0〜25モル%であり、残存水酸基の割合が17〜35モル%であり、水分量が2.5重量%以下であり、残存アルデヒド含有量が10ppm以下であり、酸化防止剤を含有しない熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、ポリビニルアセタール樹脂を用いる熱現像性感光材料の着色や、塗工後の画像に、かぶり、階調不良、感度不足等が発生する原因について鋭意研究し、ポリビニルアセタール樹脂の構造や製造時に夾雑する微量の不純物がその原因であること等を突き止め、本発明を完成するに至った。
第1の本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応により合成される。
【0010】
上記アセタール化反応としては特に限定されず、例えば、水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液等の溶液中で、酸触媒を用いて行われる。
上記ポリビニルアルコールには、ケン化前のポリ酢酸ビニルも含まれる。
【0011】
上記アルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。中でも、アセトアルデヒドやブチルアルデヒドが好適に用いられる。
【0012】
上記酸触媒としては特に限定されず、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類;硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸類等が挙げられる。また、上記アセタール化反応の停止剤としては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ中和剤;エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0013】
第1の本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂の重合度は200〜3000である。200未満であると、得られる熱現像性感光材料の塗膜強度が充分でなく、塗膜を曲げた際にクラック等が入ることがあり、3000を超えると、熱現像性感光材料に添加される銀塩の分散性が低下し、これらの熱現像性感光材料成分を混合した熱現像性感光材料の塗工性が低下することがあるので、これら熱現像性感光材料の諸特性をバランスよく付与するために、上記範囲に限定される。
【0014】
第2の本発明は、低分子量のポリビニルアセタール樹脂と高分子量のポリビニルアセタール樹脂とが混合されている熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂であって、少なくとも、重合度が300以上異なる2種類のポリビニルアセタール樹脂を含有する熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂である。第2の本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも、重合度が300以上異なる2種類のポリビニルアセタール樹脂を含有していればよく、更に、他のポリビニルアセタール樹脂を含有していてもよい。
【0015】
第2の本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂は、重合度が300以上異なる2種類以上のポリビニルアセタール樹脂が混合されてなるものであってもよく、重合度が300以上異なる2種類以上のポリビニルアルコールが混合された混合ポリビニルアルコールがアセタール化されてなるものであってもよい。
混合される2種類以上のポリビニルアセタール樹脂又はポリビニルアルコールの重合度の差が300未満であると、熱現像性感光材料に添加される脂肪酸の銀塩や感光性ハロゲン化銀の分散性が悪くなったり、塗膜の強度が弱くなったりすることにより画像特性にカブリが発生したり、階調が悪くなることがある。
【0016】
本明細書において、第2の本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂の、重合度、残存アセチル基の割合、及び、残存水酸基の割合は、それぞれ見掛け上の値、即ち、単一の組成からなるものであると見なした場合の値を意味し、例えば、2種類のポリビニルアセタール樹脂A及びBからなる場合は、下記式で表されるものである。
(A1+B1)logX=A1・logA2+B1・logB2
X:ブレンドされたポリビニルアセタール樹脂の見掛け上の重合度(見掛け上の残存水酸基量、見掛け上の残存アセチル基量)
A1:ポリビニルアセタール樹脂Aの重量
A2:ポリビニルアセタール樹脂Aの重合度(残存水酸基量、残存アセチル基量)
B1:ポリビニルアセタール樹脂Bの重量
B2:ポリビニルアセタール樹脂Bの重合度(残存水酸基量、残存アセチル基量)
【0017】
第2の本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂の重合度は200〜1000である。200未満であると、得られる塗膜強度が低くなり、塗膜を曲げた際にクラック等が入ることがあり、1000を超えると、脂肪酸の銀塩、感光性ハロゲン化銀の分散性が悪くなることがあり、画像特性にカブリが発生したり、階調が悪くなることがある。混合されるポリビニルアセタール樹脂、又は、ポリビニルアルコールの重合度としては特に限定されないが、重合度が200〜3000のものが好ましい。
【0018】
第2の本発明において、アセタール化反応に用いられるアルデヒド、酸触媒や停止剤としては、第1の本発明で用いられるものと同様のものが挙げられる。
通常、アセタール化反応においては、反応系のアルデヒドの酸化防止のため、又は、生成されたポリビニルアセタール樹脂の酸化防止及び耐熱性の向上のために、例えば、ヒンダードフェノール系、ビスフェノール系、リン酸系等の酸化防止剤が反応系及び/又は生成系に添加されるが、本発明においては酸化防止剤は使用されず、本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂は酸化防止剤を含有しないものである。酸化防止剤は、却って熱現像性感光材料の塗工溶液のポットライフを低下させ、塗工後の画像にかぶりが生じたり、階調部の鮮明性を損うことがある。
【0019】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂は特定のアセタール化度を有するものである。本明細書において、アセタール化度は、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基は2つの水酸基がアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2つの水酸基として数える方法で計算される。
【0020】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂の残存アセチル基の割合は0〜25モル%である。25モル%を超えると、得られる熱現像性感光材料フィルム同士のブロッキングが起き易くなり、また、画像が鮮明でなくなるので上記範囲に限定される。好ましくは0〜15モル%である。
【0021】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基の割合は17〜35モル%である。35モル%を超えると、熱現像性感光材料に添加される銀塩の分散性が低下し、甚だしい場合は、上記銀塩が凝集し、得られる熱現像性感光材料の感度が低下し、また、得られる熱現像性感光材料が水分を吸着し易くなり、熱現像性感光材料(塗工溶液)のポットライフが低下する。一方、17モル%未満であると、上記銀塩の分散性が低下し、得られる熱現像性感光材料の感度が低下するので上記範囲に限定される。好ましくは19〜30モル%である。
【0022】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂の水分量は2.5重量%以下である。2.5重量%を超えると、熱現像性感光材料(塗工溶液)のポットライフが低下し、更には、得られる熱現像性感光材料塗膜を強化するために添加されるイソシアネート基を含有する化合物等の架橋剤と反応し、所望の架橋による塗膜の強化が不充分となったり、甚だしい場合には不能になったりし、また、残存水分を除去するために架橋剤の添加量を増やすと、かぶりの原因になる等、取扱性が極めて悪くなるので、上記範囲に限定される。好ましくは2.0重量%以下である。
残存する水分量を2.5重量%以下にする方法としては、水、水/アルコールの混合溶液等による洗浄操作の後、熱風等による乾燥により規定の量以下にまで水分を除去する方法等が挙げられる。
【0023】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂の残存アルデヒド含有量は10ppm以下である。10ppmを超えると、熱現像性感光材料(塗工溶液)のポットライフが低下し、塗工溶液中に含まれる還元剤によりアルデヒドが還元され、塗工溶液の保存性が低下し、更には、かぶりの発生により画像特性が低下するので、上記範囲に限定される。これらの現象は、熱現像性感光材料(塗工溶液)中に夾雑する残存アルデヒドが、還元剤で還元されることに起因するものと考えられる。残存アルデヒド含有量は、好ましくは5ppm以下である。
上記ポリビニルアセタール樹脂に夾雑する残存アルデヒドの除去手段としては特に限定されず、例えば、水、水/アルコール混合溶液等により洗浄する方法が挙げられる。
【0024】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度は、55〜110℃であることが好ましい。110℃を超えると、得られる塗膜が硬くなり過ぎて取り扱い時に折り目や割れが発生したり、熱現像性感光材料フィルムの画像にかぶり、階調不足、感度不足が生じたりすることがあり、55℃未満であると、塗膜が柔らかくなり熱現像時の熱により熱変形したり、取り扱い時に塗膜表面に傷が付いて、その傷が原因となってカブリ等が発生することがある。より好ましくは55〜100℃である。
【0025】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂を用いて熱現像性感光材料を製造することができる。上記熱現像性感光材料は、本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂と、有機銀塩、還元剤、必要に応じて少量の感光性ハロゲン化銀又はハロゲン化銀形成成分、架橋剤、その他の添加剤とを配合してなるものである。
上記熱現像性感光材料における本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂の配合量は、有機銀塩に対して重量比(ポリビニルアセタール樹脂:有機銀塩)で、好ましくは1:10〜10:1であり、より好ましくは1:5〜5:1である。
【0026】
上記有機銀塩は、光に比較的安定な無色又は白色の銀塩であり、感光したハロゲン化銀の存在下で80℃以上に加熱された時に、還元剤と反応して金属銀となるものである。上記有機銀塩としては、例えば、3−メルカプト−4−フェニル−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−5−アミノチアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトオキサジアゾール、メルカプトトリアジン等のメルカプタン類の銀塩;チオアミド、チオピリジン、S−2−アミノフェニルチオ硫酸等のチオン化合物の銀塩;脂肪族カルボン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、フロイン酸、リノール酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、こはく酸、酢酸、酪酸、樟脳酸、ジチオ酢酸等のジチオカルボン酸、チオグリコール酸、芳香族カルボン酸、チオンカルボン酸、チオエーテル基を有する脂肪族カルボン酸等の有機カルボン酸等の銀塩;2−メルカプトベンツイミダゾール等のイミダゾール類の銀塩;ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類の銀塩;テトラザインデンの銀塩;含銀金属アミノアルコール、有機酸銀キレート化合物等が挙げられる。これらの有機銀塩のうち、脂肪族カルボン酸類の銀塩が好ましく、ベヘン酸銀がより好適に用いられる。
上記有機銀塩の粒径は、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0027】
上記有機銀塩に対して、感光性ハロゲン化銀が触媒的に接触してもよい。上記感光性ハロゲン化銀を接触させる手段としては特に限定されず、例えば、予め調製された有機銀塩の溶液若しくは分散液、又は、有機銀塩を含むフィルムに、感光性ハロゲン化銀形成成分を作用させて有機銀塩の一部をハロゲン化銀にする方法等が挙げられる。
【0028】
上記感光性ハロゲン化銀形成成分としては、有機銀塩に作用してハロゲン化銀を形成するものであれば特に限定されるものではないが、ヨウ素イオンを含むことが好ましい。上記ハロゲン化銀としては、例えば、臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、塩臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ化銀等が挙げられる。
上記感光性ハロゲン化銀の添加量は、有機銀塩100重量部に対して、好ましくは0.0005〜0.2重量部であり、より好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0029】
上記還元剤としては特に限定されず、用いられる有機銀塩の種類等に応じて適宜選択されればよいが、例えば、置換フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、ポリヒドロキシベンゼン類、ジ又はポリヒドロキシナフトール類、ジ又はポリヒドロキシナフタレン類、ハイドロキノン類、ハイドロキノンモノエーテル類、アスコルビン酸又はその誘導体、還元性糖類、芳香族アミノ化合物、ヒドロキシアミン類、ヒドラジン類、フェニドン類、ヒンダードフェノール類等が挙げられる。中でも、光分解性の還元剤が好適に用いられるが、熱分解性の還元剤も同様に好ましい。より好ましくは、ヒンダードフェノール類である。
上記還元剤の添加量は、有機銀塩100重量部に対して、好ましくは0.0001〜3.0重量部、より好ましくは0.01〜1.0重量部である。
更には、光分解性の還元剤に光分解促進剤を併用したり、有機銀塩と還元剤との反応を阻害するための被覆が施されたもの等の使用によって、上記の各反応を制御することができる。
【0030】
本発明の熱現像性感光材料の製造方法としては特に限定されず、例えば、本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂、有機銀塩、還元剤及び溶剤をボールミルで混合・分散した後、ハロゲン化銀又はハロゲン化銀形成成分、その他必要に応じて添加剤を加え、更に分散し分散液を調製する方法等が挙げられる。
【0031】
上記溶剤としては、本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂を溶解することができ、更に、含有水分量が少ないものが好適に用いられる。これらの溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類等が挙げられる。
【0032】
次いで、得られた分散液を、有機銀塩が所定の量となるように支持体上に塗布し、溶剤を蒸発させることにより、熱現像性感光材料の塗膜が得られる。上記熱現像性感光材料の塗膜は、上述のように本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂、有機銀塩及び還元剤を一括して配合し、支持体上に一層の熱現像性感光材料の塗膜として形成されてもよいが、有機銀塩と還元剤とを別々に本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂に添加し、2層の塗膜を形成し、然る後両者を積層してもよい。また、支持体の片面のみに塗膜が形成されてもよく、支持体の両面に塗膜が形成されてもよい。
【0033】
上記支持体としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリビニルアセタール、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート等のセルロースエステル類;ニトロセルロース、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン等からなるプラスチックフィルム、ガラス、紙、アルミニウム等からなる金属板等が挙げられる。
【0034】
上記熱現像性感光材料の塗膜中の銀の分散量は、好ましくは0.1〜5.0g/m2である。0.1g/m2未満であると、画像濃度が低下し、一定量を超えて濃度を高めても画像濃度は飽和し、それ以上の向上は認められず、一方、5.0g/m2を超えて使用しても画像濃度の向上はみられない。より好ましくは0.3〜3.0g/m2である。
このような熱現像性感光材料もまた、本発明の1つである。
本発明の熱現像性感光材料を用いて、画像を形成する場合には、添加剤として、色調剤が添加される。黒色画像を形成させるためには、黒色色調剤が添加され、カラー画像を形成させるためには、カラーカプラー、ロイコ染料等が添加される。更に、必要に応じてこれらの熱現像性感光材料に光増感剤が添加されてもよい。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
<ポリビニルアセタール樹脂の調製>
重合度500、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加熱溶解した後、20℃に保ち、これに35重量%塩酸29gを添加し、更にブチルアルデヒド64gを加えた。アセタール化樹脂が析出し始めた後、30分間この状態に保持し、その後、上記塩酸108gを追加して添加し、30℃に昇温して10時間反応させた。反応終了後、固形分(樹脂)を蒸留水にて洗浄し、水洗後の樹脂を蒸留水に再分散させ、得られた分散液に水酸化ナトリウムを添加し、液のpHを7に調整した。この液を50℃に昇温し、10時間この状態に保持した後、常温まで冷却した。
再加温洗浄された樹脂を、固形分に対し100倍量の蒸留水で水洗した。更に、水洗された樹脂を蒸留水に再分散させ、50℃で5時間保持した後、更に100倍量の蒸留水で水洗し、脱水した後、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を作製した。なお、得られたポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度は60℃であった。
【0037】
得られたポリビニルアセタール樹脂の残存アセチル基量、残存水酸基量、残存アルデヒド量及び水分含有量、並びに、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性及び加熱安定性を、以下に示す方法で測定した。測定結果は表1に示した。
1.残存アセチル基量:
残存アセチル基量は、13C−NMRを用いて測定した。
2.残存水酸基量:
残存水酸基量は、13C−NMRを用いて測定した。
3.残存アルデヒド量:
ポリビニルアセタール樹脂を加熱炉で熱抽出し、得られた抽出物についてガスクロマトグラフィーを用いてアルデヒド量を測定した。
4.水分含有量:
カールフィッシャー水分計を用いて測定した。
【0038】
<熱現像性感光材料フィルム用塗工溶液の調製>
上記ポリビニルブチラール樹脂5.0g、ベヘン酸銀5.0g及びメチルエチルケトン40gをボールミルで24時間混合し、更に、N−ラウリル−1−ヒドロキシ−2−ナフトアミド0.2gを加え、再びボールミルで粉砕混合して塗工溶液を調製した。
【0039】
<熱現像性感光材料フィルム用塗工溶液の保存性>
得られた塗工溶液を、常温で3日間、室内の蛍光灯下に置き、塗工溶液の着色の有無を観察した。蛍光灯暴露の前後における塗工溶液の白色度に変化は認められなかった。塗工溶液の保存性は、溶液の色の変化を目視観察し、溶液の色が変化しなかったものを○、僅かに着色したものを△、大きく着色したものを×と評価した。
【0040】
<熱現像性感光材料フィルムの作製>
上記塗工溶液を、ポリエステルフィルムからなる支持体上に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布し、乾燥した。塗工面上に、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン・硫酸鉛0.5g、ポリビニルピロリドン2g及びメタノール30mlからなる溶液を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布し、乾燥した。このようにして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
【0041】
<熱現像性感光材料フィルムの熱現像性>
得られた熱現像性感光材料フィルムの熱現像性を評価するため、階調パターンフィルムを通して250ワットの高圧水銀灯を20cmの距離から、0.3mm秒間あてて露光した後、120℃の熱板を用いて5秒間加熱して現像し、シアン色の良好なパターン画像を得た。この際、かぶりがなく鮮明度が良好なものを○、ややかぶりが発生し鮮明度が劣るものを△、かぶりが多数発生し鮮明度が悪いものを×と評価した。
【0042】
<現像画像の保存性>
次いで、現像画像の保存性を確認するため、白色光に24時間曝した。画像パターンコントラストの乱れが認められなかったものを○、僅かに画像パターンコントラストが乱れたものを△、画像パターンコントラストが大きく乱れたものを×と評価した。
【0043】
<加熱安定性>
高さ1mm、幅1mm間隔で凹凸を形成した100℃のステンレス板上に上記の如くして得られた熱現像性感光材料フィルムをその塗膜がステンレス板側となるようにして載置した後、上記熱現像性感光材料フィルムを上記ステンレス板側に向かって100g/cm2の圧力で5秒間押し付けた。続いて、熱現像性感光材料フィルムを常温で冷却し、該熱現像性感光材料フィルムの塗膜面を目視観察し、割れや変形がないものを○とし、割れ又は変形があったものを×と評価した。
【0044】
(実施例2)
重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコールを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリビニルブチラール樹脂を調製し、これを用いて熱現像性感光材料フィルムを作製した。なお、上記ポリビニルブチラール樹脂のガラス転移温度は56℃であった。調製されたポリビニルブチラール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性及び加熱安定性は共に良好であった。試験結果等については表1に示した。
【0045】
(実施例3)
重合度240、残存アセチル基量1.5モル%、残存水酸基量27モル%、残存アルデヒド量3ppm、含有水分量1.5重量%のポリビニルブチラール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。なお、上記ポリビニルブチラール樹脂のガラス転移温度は62℃であった。調製されたポリビニルブチラール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性及び加熱安定性は共に良好であった。試験結果等については表1に示した。
【0046】
(実施例4)
重合度300、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール132gを1600gの蒸留水に加熱溶解した後、20℃に保ち、これに35重量%塩酸110gを添加し、更にアセトアルデヒド30gを加え、12℃まで冷却し、次に、ブチルアルデヒド40gを加えた。アセタール化樹脂が析出し始めた後、30分間この状態に保持し、その後、60℃に昇温して4時間反応させた。反応終了後、固形分(樹脂)を蒸留水にて洗浄し、水洗後の樹脂を蒸留水に再分散させ、得られた分散液に炭酸水素ナトリウムを添加し、液のpHを8に調整した。この液を60℃に昇温し、5時間この状態に保持した後、常温まで冷却した。
【0047】
再加温洗浄された樹脂を、固形分に対し100倍量の蒸留水で水洗した。更に、水洗された樹脂を蒸留水に再分散させ、50℃で5時間保持した後、更に100倍量の蒸留水で水洗し、脱水した後、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を調製した。なお、上記ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度は80℃であった。
調製されたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様に熱現像性感光材料フィルムが作製された。得られたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性及び加熱安定性は共に良好であった。試験結果等については表1に示した。
【0048】
(実施例5)
重合度240、残存アセチル基量11モル%、残存水酸基量21モル%、アセトアセタール化度35モル%、ブチラール化度33モル%、残存アルデヒド量3ppm、含有水分量1.5重量%、ガラス転移温度70℃のポリビニルアセタール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性及び加熱安定性は共に良好であった。試験結果等については表1に示した。
【0049】
(実施例6)
重合度240、残存アセチル基量1モル%、残存水酸基量32モル%、アセトアセタール化度35モル%、ブチラール化度32モル%、残存アルデヒド量3ppm、含有水分量1.5重量%、ガラス転移温度76℃のポリビニルアセタール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性及び加熱安定性は共に良好であった。試験結果等については表1に示した。
【0050】
(実施例7)
重合度240、残存アセチル基量1モル%、残存水酸基量25モル%、アセトアセタール化度73モル%、ブチラール化度1モル%、残存アルデヒド量3ppm、含有水分量1.5重量%、ガラス転移温度103℃のポリビニルアセタール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性は共に良好であった。試験結果等については表1に示した。
【0051】
(実施例8)
重合度240、残存アセチル基量12モル%、残存水酸基量22モル%、アセトアセタール化度63モル%、ブチラール化度1モル%、残存アルデヒド量3ppm、含有水分量1.5重量%、ガラス転移温度93℃のポリビニルアセタール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性及び加熱安定性は共に良好であった。試験結果等については表1に示した。
【0052】
(実施例9)
重合度240、残存アセチル基量1モル%、残存水酸基量24モル%、アセトアセタール化度75モル%、残存アルデヒド量3ppm、含有水分量1.5重量%、ガラス転移温度109℃のポリビニルアセタール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。その結果、実施例1と同様、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性及び加熱安定性は共に良好であった。試験結果等については表1に示した。
【0053】
(比較例1)
含有水分量が5重量%であること以外は、実施例1と同じポリビニルアセタール樹脂を使用し、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液は有機銀塩の分散性が悪く、熱現像性感光材料フィルムの感光後の画像は、パターン境界面が不鮮明であった。試験結果等については表2に示した。
【0054】
(比較例2)
実施例1と同じポリビニルアセタール樹脂に酸化防止剤として、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)を500ppm添加したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液の着色が著しく、熱現像性感光材料フィルムは感光後のかぶりが多く発生した。試験結果等については表2に示した。
【0055】
(比較例3)
重合度500、残存アセチル基量1.5モル%、残存水酸基量38モル%、アセトアセタール化度75モル%、残存アルデヒド量3ppm、含有水分量1.5重量%、ガラス転移温度60℃のポリビニルアセタール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液の着色は認められなかったが、熱現像性感光材料フィルムを重ねて保管したとき、35℃でブロッキングを起こし、熱現像性感光材料フィルムの感光後の画像は、パターン境界面が不鮮明であった。試験結果等については表2に示した。
【0056】
(比較例4)
含有水分量が5重量%であること以外は、実施例4と同じポリビニルアセタール樹脂を使用し、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液は有機銀塩の分散性が悪く、熱現像性感光材料フィルムの感光後の画像は、パターン境界面が不鮮明であった。試験結果等については表2に示した。
【0057】
(比較例5)
実施例4と同じポリビニルアセタール樹脂に酸化防止剤として、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)を500ppm添加したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液の着色が著しく、熱現像性感光材料フィルムは感光後のかぶりが多く発生した。試験結果等については表2に示した。
【0058】
(比較例6)
残存水酸基量が38モル%であり、アセトアセタール化度が31モル%であり、ブチラール化度が29.5モル%であること以外は、実施例4と同じポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液の着色は認められなかったが、熱現像性感光材料フィルムを重ねて保管したとき、35℃でブロッキングを起こし、熱現像性感光材料フィルムの感光後の画像は、パターン境界面が不鮮明であった。試験結果等については表2に示した。
【0059】
(比較例7)
重合度500、残存アセチル基量1.0モル%、残存水酸基量37モル%、ホルマール化度62モル%、残存アルデヒド量3ppm、含有水分量1.5重量%、ガラス転移温度130℃のポリビニルアセタール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液は僅かに着色しており、得られた現像性感光材料フィルムも感光後にはかぶりがやや発生した。また、加熱安定性については塗膜表面に微細な割れが発生した。
【0060】
(比較例8)
重合度500、残存アセチル基量1.0モル%、残存水酸基量37モル%、ヘキシルアセタール化度62モル%、残存アルデヒド量3ppm、含有水分量1.5重量%、ガラス転移温度50℃のポリビニルアセタール樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルヘキシルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液は僅かに着色しており、得られた現像性感光材料フィルムも感光後にはかぶりがやや発生した。また、加熱安定性についてはその加熱により変形が生じていた。
【0061】
(比較例9)
残存アルデヒド量が200ppmであること以外は、実施例1と同じポリビニルアセタール樹脂を使用し、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液は稍着色しており、熱現像性感光材料フィルムは、感光後にかぶりの発生が認められた。試験結果等については表2に示した。
【0062】
(比較例10)
残存アルデヒド量が200ppmであること以外は、実施例4と同じポリビニルアセタール樹脂を使用し、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製した。
用いたポリビニルアセタール樹脂及び得られた熱現像性感光材料フィルムについて実施例1と同様に試験した。塗工溶液は稍着色しており、熱現像性感光材料フィルムは、感光後にかぶりの発生が認められた。試験結果等については表2に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
(実施例10)
<ポリビニルアセタール樹脂の調整>
重合度300、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35重量%塩酸29gを加え、更にブチルアルデヒド64gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、上記塩酸108gを加え30℃に昇温して10時間保った。反応終了後、蒸留水にて洗浄し、水洗後のポリビニルブチラール樹脂分散液に水酸化ナトリウムを添加し溶液のpHを7に調整した。溶液を50℃で10時間保持した後冷却した。次に、固形分に対し100倍量の蒸留水により溶液を水洗した後、更に、溶液を50℃で5時間保持した後100倍量の蒸留水で水洗し、脱水した後に乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。
次いで、重合度650、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、上記と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0066】
<熱現像性感光材料フィルム用塗工溶液の調製>
ベヘン酸銀5.0g、ポリビニルアセタール樹脂5.0g、メチルエチルケトン40gをボールミルで24時間混合し、更に、N−ラウリル−1−ヒドロキシ−2−ナフトアミド0.2gを加え、再びボールミルで粉砕して塗工溶液を得た。
ここで用いたポリビニルアセタール樹脂は、重合度300と650のポリビニルアセタール樹脂を重量比1:1でブレンドし見掛け上の重合度440、見掛け上の水酸基量21モル%、見掛け上のアセチル基量1.7モル%としたものを用いた。
【0067】
(実施例11〜16、比較例11〜14)
ポリビニルアセタール樹脂の重合度、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度、水酸基量、ブレンド比を表3に示す通りに変更した以外は、実施例10と同様の方法により熱現像性感光材料フィルム用塗工溶液を調製した。
【0068】
(実施例17)
重合度300、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール50gと重合度650、ケン化度98モル%のポリビニルアルコール50gを700gの蒸留水に加温溶解した後、実施例10と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
次いで、得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例10と同様に行って熱現像性感光材料フィルム用塗工溶液を調製した。
【0069】
(実施例18〜23、比較例15〜16)
ポリビニルアルコール樹脂の重合度、ケン化度、アルデヒドの種類、アセタール化度、水酸基量、ブレンド比を表4に示す通りに変更した以外は実施例17と同様の方法により、熱現像性感光材料フィルム用塗工溶液を調製した。
【0070】
実施例10〜23及び比較例11〜16で得られたポリビニルアセタール樹脂の残存アセチル基量、残存水酸基量、残存アルデヒド量及び水分含有量を実施例1と同様にして測定及び評価し、その結果を実施例10〜16及び比較例11〜14については表3に、実施例17〜23及び比較例15、16については表4に示した。
【0071】
なお、ポ7リビニルアセタール樹脂の見掛け上の重合度、見掛け上の水酸基量、見掛け上のアセチル基量は以下の式で求めた。
(A1+B1)logX=A1・logA2+B1・logB2
X:ブレンドされたポリビニルアセタール樹脂の見掛け上の重合度(見掛け上の水酸基量、見掛け上のアセチル基量)
A1:ポリビニルアセタール樹脂Aの重量
A2:ポリビニルアセタール樹脂Aの重合度(水酸基量、アセチル基量)
B1:ポリビニルアセタール樹脂Bの重量
B2:ポリビニルアセタール樹脂Bの重合度(水酸基量、アセチル基量)
【0072】
また、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルム用塗工溶液の保存性を評価した。更に、実施例1と同様にして熱現像性感光材料フィルムを作製し、以下の評価を行い、その結果を実施例10〜16及び比較例11〜14については表3に、実施例17〜23及び比較例15、16については表4に示した。
【0073】
<熱現像性感光材料フィルムの熱現像性>
得られた熱現像性感光材料フィルムの熱現像性を評価するため、階調パターンフィルムを通して250ワットの高圧水銀灯を20cmの距離から、0.3秒間あてて露光した後、110℃の熱板を用いて3秒間加熱して現像し、シアン色の良好なパターン画像を得た。この際、かぶりがなく鮮明度が良好なものを○、ややかぶりが発生し鮮明度が劣るものを△、かぶりが多数発生し鮮明度が悪いものを×と評価した。
【0074】
<現像画像の保存性>
次いで、現像画像の保存性を確認するため、白色光に24時間曝した。画像パターンコントラストの乱れが認められなかったものを○、僅かに画像パターンコントラストが乱れたものを△、画像パターンコントラストが大きく乱れたものを×と評価した。
【0075】
<加熱安定性>
高さ1mm、幅1mm間隔で凹凸を形成した100℃のステンレス板上に上記の如くして得られた熱現像性感光材料フィルムをその塗膜がステンレス板側となるようにして載置した後、上記熱現像性感光材料フィルムを上記ステンレス板側に向かって150g/cm2の圧力で5秒間押し付けた。続いて、熱現像性感光材料フィルムを常温で冷却し、該熱現像性感光材料フィルムの塗膜面を目視観察し、割れや変形がないものを○とし、割れ又は変形があったものを×と評価した。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
比較例11のものは、ポリビニルアセタール樹脂中の含有水分量が多いために塗工溶液の有機銀塩の分散性が悪く、結果として熱現像性、画像の保存性が悪かった。比較例12のものは、ポリビニルアセタール樹脂中に酸化防止剤が配合されていたために塗工溶液の保存性が悪く、熱現像性も悪かった。比較例13のものは残存水酸基量が多いために分散性が悪く、また吸湿等により画像の保存性も悪かった。比較例14〜16のものは、塗工溶液の保存性は良好なものの熱現像性、加熱安定性が悪かった。
一方、実施例10〜23のものは、本発明の範囲で制御しているため、塗工溶液の保存性、熱現像性、現像画像の保存性、加熱安定性のいずれにも優れた熱現像性感光材料フィルムを得ることができた。
【0079】
【発明の効果】
本発明は、上述の構成よりなるので、優れた保存性を有し、且つ、画像特性にも極めて優れており、更に、取り扱い時に塗膜に折り目や割れが発生したりせず、熱現像時に熱変形したすることがない熱現像性感光材料を提供することができる。
Claims (3)
- ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応により合成される熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂、有機銀塩及び還元剤を含有する熱現像性感光材料であって、
前記熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂は、重合度が200〜3000であり、アセタール基をアセタール化された2つの水酸基として数えた場合、残存アセチル基の割合が0〜25モル%であり、残存水酸基の割合が17〜35モル%であり、水分量が2.5重量%以下であり、残存アルデヒド含有量が10ppm以下であり、酸化防止剤を含有しないものである
ことを特徴とする熱現像性感光材料。 - 熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂、有機銀塩及び還元剤を含有する熱現像性感光材料であって、
前記熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも、重合度が300以上異なる2種類のポリビニルアセタール樹脂を含有し、見掛け上の重合度が200〜1000であり、アセタール基をアセタール化された2つの水酸基として数えた場合、見掛け上の残存アセチル基の割合が0〜25モル%であり、見掛け上の残存水酸基の割合が17〜35モル%であり、水分量が2.5重量%以下であり、残存アルデヒド含有量が10ppm以下であり、酸化防止剤を含有しないものである
ことを特徴とする熱現像性感光材料。 - ポリビニルアセタール樹脂は、ガラス転移温度が55〜110℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱現像性感光材料。
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