JP3582824B2 - 熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂並びに熱現像性感光材料 - Google Patents

熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂並びに熱現像性感光材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像性感光材料、特に有機銀塩及び現像の為の還元剤を同一組成中に含有する熱現像性感光材料に用いられる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂並びに熱現像性感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱現像性感光材料は、主に脂肪酸の銀塩、有機還元剤、場合により少量の感光性ハロゲン化銀を高分子バインダー中に分散して得られる組成物を支持体上に塗工してなるものである。
【0003】
従来から広範囲に用いられているハロゲン化銀感光材料は、その優れた写真特性により、より広範囲かつ高品質な素材として画像形成分野に利用されているが、現像及び定着が複雑でしかも処理工程が湿式であるため、処理が煩雑かつ多量の化学廃液を排出するという問題があった。その為、現在では現像工程を熱処理で行う熱現像性感光材料が開発され、実用化されている。
【0004】
例えば、特公昭43−4924号公報には、有機銀塩、還元剤及び有機銀イオンに対して触媒的に接触しているハロゲン化銀からなる熱現像性感光材料が開示されている。即ち、これら熱現像性感光材料は、紙、プラスチックフイルム、金属箔、ガラス板等の支持体上に、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、酢酸セルローズ、ポリ酢酸ビニル、酢酸プロピオン酸セルローズ、酢酸酪酸セルローズ等の造膜性結合材を用いて塗布して用いられることが記載されている。
【0005】
上記造膜性結合材として、具体的にはポリビニルブチラール樹脂が最適のものとして使用されている。しかしながら、一般のポリビニルブチラール樹脂には種々の組成のものがあり、しかも製法上、微量の不純物を含んでいるため、これら不純物の影響により、調製したバインダー溶液が感光性を生じて着色したり、塗工した後の画像特性に、かぶり、階調不良、感度不足、フイルムの生保存性不良等を生じる場合があった。
【0006】
上記問題点を解決するために、銀塩、還元性物質、添加剤等の改善が図られてきた。例えば、特開昭49−52626号公報に開示されているように、独立した安定化剤、安定化剤プレカーサ成分を含まず、チオン化合物の銀塩を用いることにより改善することが報告され、バインダーとしてポリビニルブチラール樹脂も用いられているが、用いられるバインダーの組成を特定することにより問題解決を図った技術は開示されていない。
【0007】
更に、熱現像性感光材料のうちの熱現像式銀塩フイルムは、従来のウエット式のゼラチンを使用したX線感光フイルムに比べて画像特性、特に画像濃度、画像/階調部の鮮明度がやや劣るためその向上が望まれているが、その為には、加熱時の銀塩の核成長を厳しくコントロールする必要があり、しかも、バインダー中に分散させる銀塩の分散性を向上させる必要があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するため、結合材として用いるポリビニルアセタール樹脂を特定の組成とすることで、塗工前溶液のポットライフ、生フイルムの保存性、かぶり等を向上させることができる、熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及びそれを用いた熱現像性感光材料を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、結合材として用いるポリビニルアセタール樹脂にアセトアセタール部分を導入するか、更には親水性基団からなる変性基を導入することで、銀塩の分散性を向上させ、熱溶融性、冷却硬化性等をシャープにし、銀塩の核成長を精度良く制御することが可能であり、結果として画像濃度、画像/階調部の鮮明度を向上させることができる熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂並びにそれを用いた熱現像性感光材料を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明では、ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応により合成されるポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が200〜3000の範囲にあり、残存アセチル基の割合が0〜25モル%、残存水酸基の割合が17〜35モル%の範囲にあり、酸化防止剤を含有せず、残存ハロゲン化物量が100ppm以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂が提供される。
【0011】
請求項2記載の発明では、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとのアセタール化反応により合成されるポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が200〜3000の範囲にあり、残存アセチル基の割合が0〜25モル%、残存水酸基の割合が17〜35モル%の範囲にあり、酸化防止剤を含有せず、残存ハロゲン化物量が100ppm以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂が提供される。
【0012】
請求項3記載の発明では、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとのアセタール化反応により合成されるポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が200〜3000の範囲にあり、残存アセチル基の割合が0〜25モル%、残存水酸基の割合が17〜35モル%、アセタール化された部分全体におけるアセトアルデヒドによりアセタール化された部分の割合が30〜100%の範囲にあり、酸化防止剤を含有せず、残存ハロゲン化物量が100ppm以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂が提供される。
【0013】
請求項4に記載の発明では、ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応により合成され、側鎖に下記の変性基を有する変性ポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が200〜3000の範囲にあり、残存アセチル基の割合が0〜25モル%、残存水酸基の割合が17〜35モル%の範囲にあり、変性基の割合が0.1〜5モル%の範囲にあり、酸化防止剤を含有せず、残存ハロゲン化物量が100ppm以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂が提供される。
【0014】
ここで、変性基は、−COOM、−CH COOM、−SO M、−OSO M、−PO(OM) 、−P(=O)(R)(OM)、第三級アミン及び第四級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基団からなる(但し、Mは、H、Li、Na又はKを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0015】
請求項5記載の発明では、ポリビニルアセタール樹脂中の残存アルカリ性物質量が、0.01重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂が提供される。
【0016】
請求項6記載の発明では、変性ポリビニルアセタール樹脂中の残存アルカリ性物質量が、0.01重量%以下であることを特徴とする請求項4に記載の熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂が提供される。
【0017】
請求項7記載の発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂又は熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂が用いられてなることを特徴とする熱現像性感光材料が提供される。
【0018】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂は、重合度200〜3000のものが使用され、熱現像性感光材料に用いられる銀塩の分散性、塗膜強度、塗工性等のバランスを取り易い重合度300〜1000のものが好適に用いられる。
【0019】
また、上記ポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂の残存アセチル基の量は、0〜25モル%のものが使用される。残存アセチル基の量が25モル%より多い場合は、得られる感光性フイルム同士のブロッキングが生じ、また画像が鮮明でなくなる。より好ましくは、0〜15モル%である。
【0020】
更に、上記ポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は、17〜35モル%とされ、好ましくは19〜30モル%である。残存水酸基量が35モル%より多い場合は、熱現像性感光材料に用いる銀塩の分散性が悪く、銀塩が凝集し、得られるフイルムの感度が低下したり、水分を吸着し易いため、塗工溶液のポットライフが低下する。残存水酸基量が17モル%より少ない場合にも、銀塩の分散性が低下し、感度の低下が生じる。
【0021】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールと各種アルデヒドとのアセタール化反応により合成されるが、ブチルアルデヒド及び/又はアセトアルデヒドでアセタール化されたものが好ましい。特に、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化された部分のうちアセトアルデヒドによりアセタール化された部分の割合が、全アセタール化部分に対して30〜100%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは50〜100%である。アセトアルデヒドによりアセタール化された部分が30%より少ない場合は、得られるポリビニルアセタール樹脂のガラス転移点が80℃以下となり、感光性銀塩の核成長が進み過ぎ、且つ、銀塩の分散性も従来のブチラールと何ら変わりなく、画像の解像度及び鮮明度が従来のポリビニルブチラール樹脂と同等のままであることがある。
【0022】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂は、一般に、水溶液中、アルコール溶液中、水/アルコール混合溶液中、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中等で、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールと各種アルデヒドとを酸触媒を用いて反応させることにより合成されるが、ポリ酢酸ビニル溶液又は変性ポリ酢酸ビニルのアルコール溶液に酸触媒とアルデヒドとを添加することによっても合成され得る。
【0023】
ここで、アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、プロピルアルデヒドなどアセタール化できるアルデヒドであればどのようなアルデヒドを用いてもよい。特に、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとをそれぞれ単独で用いるか、或いはブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとを併用するのが好ましい。
【0024】
上記酸触媒としては、特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。また、上記合成反応を停止するために、通常アルカリ中和を行うが、その際使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
【0025】
本発明のポリビニルアセタール樹脂中又は変性ポリビニルアセタール樹脂中に残存するハロゲン化物量は100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下である。残存ハロゲン化物量が100ppmを越える場合は、感光性ハロゲン化銀の生成物質となり、塗工溶液の保存性を低下させ、フイルムの生保存性低下、かぶり等の原因になることがある。残存ハロゲン化物量を100ppm以下とする方法としては、例えば、アセタール化に使用する触媒として非ハロゲン性のものを選択するか、ハロゲン性の触媒を使用した場合には、水、水/アルコールの混合溶液等による洗浄操作にて精製し、規定量以下まで除去する方法等が挙げられる。
【0026】
本発明において用いられるポリビニルアセタール樹脂中又は変性ポリビニルアセタール樹脂中に残存するアルカリ性物質量は、0.01重量%以下が好ましく、より好ましくは0.005重量%以下である。残存アルカリ性物質量が0.01重量%を越えると、塗工溶液のポットライフが低下することがある他、フイルムの生保存性の低下等を引き起こすことがある。残存アルカリ性物質量を0.01重量%以下とする方法としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂の合成の際の中和後の過剰アルカリ分を、水又は水/アルコールの混合溶液で洗浄する方法等が挙げられ、揮発性のアルカリを用いる場合には、乾燥により規定の量以下まで除去する方法等が挙げられる。
【0027】
ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応においては、通常、アルデヒドの酸化防止のため、或いは得られる樹脂の酸化防止及び耐熱性向上のために、反応系或いは樹脂系に酸化防止剤が添加されるが、本発明のポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂の合成においては、通常、酸化防止剤として用いられるヒンダードフェノール系、ビスフェノール系、リン酸系等の酸化防止剤を使用しない。このような酸化防止剤を使用すると、これがポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂中に残存し、塗工溶液のポットライフの低下、生フイルムの生保存性の低下等を引き起こし、かぶりや画像/階調部の鮮明性が損なわれることがある。
【0028】
ポリビニルアセタール樹脂の側鎖に変性基を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、変性基としては、−COOM、−CH COOM、−SO M、−OSO M、−PO(OM) 、−P(=O)(R)(OM)、第三級アミン及び第四級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基団が用いられる。但し、Mは、H、Li、Na又はKを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。カルボキシル基としては、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。第三級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。
【0029】
このような変成ポリビニルアセタール樹脂を得る方法としては、例えば、特開平2−220221号公報に開示されているように、予め親水性基団を有するユニットを主鎖の形成位置に共存させておく方法、及び主鎖の形成後にアルコール型ユニットの水酸基を利用して親水性基団を導入する方法等が採用される。
【0030】
変性ポリビニルアセタール樹脂中の変性基の割合は、0.1〜5モル%とされる。この変性基の割合が0.01モル%未満では、上記親水性基団を導入した効果、即ち、有機銀塩の分散性向上の効果が得られない。逆に、この変性基の割合が5モル%を超えると、有機銀塩の分散性向上の効果が飽和するだけでなく、アセタール化後の溶剤に対する溶解性が低下する。
【0031】
こうして、本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂が得られる。このようなポリビニルアセタール樹脂及び変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて熱現像性感光材料が製造される。熱現像性感光材料の配合は、上述のポリビニルアセタール樹脂及び変性ポリビニルアセタール樹脂を用いること以外は、従来の熱現像性感光材料の配合と変わらない。例えば、上述のポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂に、有機銀塩、還元剤、必要に応じて少量の感光性ハロゲン化銀或いはハロゲン化銀形成成分、その他の添加剤が配合される。上述のポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂は、有機銀塩に対して重量比で1:10〜10:1が好ましく、より好ましくは1:5〜5:1である。
【0032】
有機銀塩は、光に比較的安定な無色又は白色の銀塩であり、感光したハロゲン化銀の存在下で80℃以上に加熱された時に、還元剤と反応して銀を生ずるものであれば特に限定されない。
【0033】
上記有機銀塩としては、例えば、メルカプト基、チオン基又はカルボキシル基を有する有機化合物の銀塩、ベンゾトリアゾール銀等が挙げられる。具体的には、メルカプト基又はチオン基を有する化合物の銀塩、3−メルカプト−4−フェニル1,2,4−トリアゾールの銀塩、2−メルカプト−ベンツイミダゾールの銀塩、2−メルカプト−5−アミノチアゾールの銀塩、1−フェニル−5−メルカプトテトラチアゾールの銀塩、2−メルカプトベンゾチアゾールの銀塩、チオグリコール酸の銀塩、ジチオ酢酸の銀塩のようなジチオカルボン酸の銀塩、チオアミド銀、チオピリジン銀塩ジチオヒドロキシベンゾールの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、メルカプトオキサジアゾールの銀塩、脂肪族カルボン酸の銀塩:カプリン酸銀、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロイン酸銀、リノール酸銀、オレイン酸銀、ヒドロキシステアリン酸銀、アジピン酸銀、セバシン酸銀、こはく酸銀、酢酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀等、芳香族カルボン酸銀、チオンカルボン酸銀、チオエーテル基を有する脂肪族カルボン酸銀、テトラザインデンの銀塩、S−2−アミノフェニルチオ硫酸銀、含金属アミノアルコール、有機酸金属キレートなどが挙げられる。
【0034】
上記有機酸銀塩のうち、好ましくは脂肪族カルボン酸の銀塩であり、より好ましくはベヘン酸銀である。上記有機酸銀塩の粒子サイズは、直径0.01〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0035】
上記有機酸銀塩に感光性ハロゲン化銀が触媒的に接触させられる場合がある。この場合は、例えば、予め調製された有機銀塩の溶液若しくは分散液、又は、有機銀塩を含むフイルム材料に、ハロゲン化銀形成成分を作用させて有機銀の一部をハロゲン化銀に形成する方法等が挙げられる。
【0036】
感光性ハロゲン化銀形成成分としては、有機銀塩に作用してハロゲン化銀を形成するものであれば特に限定されず、有機銀塩100重量部に対して感光性ハロゲン化銀0.0005〜0.2重量部用いられるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0037】
また、熱現像性感光材料には、上記有機銀塩とともに、還元剤が利用される。このような還元剤は、特に限定されず、併用される有機銀塩により適宜選択され、例えば、置換フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、ポリヒドロキシベンゼン類、ジ又はポリヒドロキシナフタレン類、ハイドロキノンモノエーテル類、アスコルビン酸又はその誘導体、還元性糖類、芳香族アミノ化合物、ヒドロキシアミン類、ヒドラジン類等が挙げられる。中でも、光分解性の還元剤が好ましく用いられるが、熱分解性の還元剤も使用される。更には、光分解を促進する化合物を併用することができるし、ハロゲン化銀と還元剤との反応を阻害するための被覆剤を併用することもできる。
【0038】
本発明のポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて熱現像性感光材料を調製する方法としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂、有機銀塩、還元剤及び溶剤をボールミルで分散させた後、必要に応じて、更にハロゲン化銀或いはハロゲン化銀形成成分、各種添加剤を加えボールミルで分散させて調製する方法等が挙げられる。
【0039】
上記溶剤としては、ポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂を溶解し、水分の含有量がほとんどないものが好適に用いられる。中でも、ケトン、エステル類が好ましく、より好ましくは、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等である。溶剤として、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等を用いる場合には、脱水したものを用いることが好ましい。上記得られた分散液を支持体上に有機銀塩が規定の量となるように塗布し、溶剤を蒸発させて、熱現像性感光材料を得る。なお、上記有機銀塩と還元剤とは、これ等を一括してポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂に配合し、これを支持体上に一層に形成してもよいが、上記有機銀塩と還元剤とを各別にポリビニルアセタール樹脂又は変性ポリビニルアセタール樹脂に配合し、これ等を支持体上に各別に二層に形成してもよい。
【0040】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリビニルアセタール、セルロースエステル、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフイルム、ガラス、紙、アルミニウム板等の金属板などが用いられる。
【0041】
上記支持体上に塗布される銀は、支持体1m あたり0.1〜5gとなるように用いられることが好ましく、より好ましくは0.3〜3gである。0.1gより少ないと画像濃度が低くくなることがあり、5g以上使用しても画像濃度の向上はみられない。
【0042】
本発明において、銀により黒色画像を形成させる場合には、添加剤として、色調剤が添加されてもよい。また、カラー画像を形成させる場合には、カラーカプラー、ロイコ染料等が添加されてもよい。更に、場合により増感剤等が添加されてもよい。
【0043】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂並びに熱現像性感光材料は、上述の構成とされることにより、ハロゲン化物の発生による感光性の増加、銀塩の異常成長反応が抑えられ、不純物による塗工液のポットライフ低下、シートの生保存性の低下等が抑えられる。
【0044】
また、アセトアセタール部分を導入したポリビニルアセタール樹脂を用いる場合は、銀塩の分散性が向上し、熱溶融性、冷却硬化性等がシャープとなり、銀塩の核成長を精度よく制御することが可能であり、結果として画像及び階調部の鮮明度が向上する。更には、変性ポリビニルアセタール樹脂を用いる場合は、親水性基団からなる変性基の作用により銀塩の分散性がさらに向上して、画像及び階調部の鮮明度が向する。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
重合度500、ケン化度98%のポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸29gを加え、更にブチルアルデヒド14gを添加した。次に、12℃まで冷却し、ブチルアルデヒド64gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、塩酸108gを加え30℃に昇温して10時間保った。反応終了後、蒸留水にて洗浄し、水洗後のポリビニルブチラール樹脂分散溶液に水酸化ナトリウムを添加し溶液のPHを7に調整した。溶液を50℃で10時間保持した後冷却した。このとき溶液のPHは6.7であった。
【0046】
次に、固形分に対し100倍量の蒸留水により溶液を水洗した後、更に、溶液を50℃で5時間保持した後10倍量の蒸留水で水洗し、脱水した後に乾燥した。このようにして得られたポリビニルブチラール樹脂の残存水酸基量は21モル%、残存アセチル基量は1.7モル%であった。また、残存塩素化物量は50ppm、残存アルカリ性物質量は0.002重量%であった。
【0047】
上記塩素イオンの残存量の測定は、下記の方法により行った。前処理(パイロハイドロリシス法):ポリビニルブチラール樹脂試料約0.3gを磁性ボートに秤り取り、1250℃に加熱した管状電気炉内の石英管に徐々に挿入し、水蒸気を通過した酸素ガス(0.5L/分)を挿入して加熱した。発生したガスを吸収液(2.25mM Na CO −2.8mM NaHCO )に吸収させる(約30分)。吸収液を100mlの定溶とし、イオンクロマトグラフ(DONEX社製DX−500)で測定した。空試験は、磁性ボートのみを用いて同様に操作した。
【0048】
上記残存アルカリ性物質量の測定は、中和滴定法により行った。試料として、ポリビニルブチラール樹脂1gを、共通すり合わせ三角フラスコに1mgの桁まで正確に秤り取り、エタノール30mlを加えて溶解した。溶解後の溶液にフェノールフタレイン溶液3滴を加え、溶液に0.02モル/Lの塩酸溶液で微紅色が消失するまで滴定した。試料に加えた塩酸の量と等量となる水酸化カリウムの量を樹脂重量に対して算出し、残存アルカリ性物質量とした。
【0049】
ベヘン酸銀5g、ポリビニルブチラール5g、ジエチルケトン40gを24時間ボールミルで混合し、更に、N−ラウリル−1−ヒドロキシ−2−ナフトアミド0.2gを加え、再びボールミルで粉砕して塗工溶液を得た。得られた塗工溶液を、常温で3日間室内の蛍光灯下に置き溶液の着色を観察したところ、白色のままで変化は無かった。
【0050】
上記塗工溶液を、ポリエステル基材上に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布して乾燥した。この塗工面上に、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン・硫酸塩0.5g、ポリビニルピロリドン2g、メタノール30mlからなる溶液を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布して乾燥した。
【0051】
このようにして得られた感光性フイルムを階調パターンフイルムを通して250ワットの高圧水銀等で20cmの距離で0.3秒間露光後、120℃の熱板を用いて5秒間加熱してシアン色の良好なパターン画像を得た。得られた画像は、白色光に曝しても、パターンのコントラストの変化は殆どなかった。
【0052】
(実施例2)
残存ハロゲン化物量90ppmのポリビニルブチラール樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後のフイルムの画像変化等は殆ど起こらなかった。
【0053】
(実施例3)
残存アルカリ性物質量0.009%のポリビニルブチラール樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後のフイルムの画像変化等は殆ど起こらなかった。
【0054】
(実施例4)
ブチラール化度69モル%のポリビニルブチラール樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後の画像変化等は殆ど起こらなかった。
【0055】
(実施例5)
残存アセチル基量11モル%、残存水酸基量21モル%のポリビニルブチラール樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後の画像変化等は殆ど起こらなかった。
【0056】
(実施例7)
重合度500、ケン化度98%のポリビニルアルコール132gを1600gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸110gを加え、更にアセトアルデヒド30gを添加した。次に、12℃まで冷却し、ブチルアルデヒド40gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後60℃に昇温して4時間保った。反応終了後、蒸留水にて洗浄し、水洗後のビニルアセタール樹脂分散液に炭酸水素ナトリウムを添加して溶液のPHを8に調整した。溶液を70℃で5時間保持した後冷却した。このときの溶液のPHは8であった。
【0057】
溶液を固形分に対し100倍量の蒸留水により再び水洗した後、溶液を50℃にて5時間保持した後10倍量の蒸留水で水洗し、脱水した後に乾燥した。このようにして得られたポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は24モル%、残存アセチル基量は1.5モル%、アセトアセタール化度は39モル%(全アセタール化部分における割合は52.3%)、ブチラール化度は35.5モル%であった。また、残存塩素化物量は20ppm、残存アルカリ性物質量は0.002重量%であった。なお、得られた塗工溶液は白色のままであり、得られた感光性フイルムにおける画像は、白色光に曝してもパターンのコントラストの変化が殆どなく、得られた階調パターンは、パターン原板と比べて、最薄色階調部で4%程度濃度が濃くなっているのみであった。
【0058】
(実施例8)
残存ハロゲン化物量80ppmのポリビニルアセタール樹脂を使用した以外は実施例7と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後のフイルムの画像変化は殆ど起こらなかった。また、得られた階調パターンは、最薄色階調部で5%程度濃度が濃くなっているのみであった。
【0059】
(実施例9)
残存アルカリ性物質量0.009重量%のポリビニルアセタール樹脂を使用した以外は実施例7と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後の画像変化は殆ど起こらなかった。また、得られた階調パターンも最薄色階調部で5%程度濃度が濃くなっているのみであった。
【0060】
(実施例10)
アセトアセタール化度74モル%(全アセタール化部分に対するアセトアセタール化部分の割合は100%)のポリビニルアセタール樹脂を使用した以外は実施例7と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後の画像変化は殆ど起こらなかった。また、得られた階調パターンは、鮮明度が実施例7と同等以上であり、最薄色階調部の濃度はパターン原板とほぼ同一であった。
【0061】
(実施例11)
残存アセチル基量11モル%、残存水酸基量24モル%、アセトアセタール化度65モル%(全アセタール化部分に対するアセトアセタール化部分の割合は100%)のポリビニルアセタール樹脂を使用した以外は実施例7と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後の画像変化は殆ど起こらなかった。また、得られた階調パターンは、鮮明度が実施例7と同等以上であり、最薄色階調部の濃度がパターン原板とほぼ同等であった。
【0062】
(実施例12)
重合度500、残存水酸基量22モル%、残存アセチル基量1.5モル%、全アセタール化度76.5モル%、アセトアセタール化度20モル%(全アセタール化部分に対するアセトアセタール化部分の割合は26%)、ブチラール化度56.5モル%、残存ハロゲン化物量20ppmのポリビニルブチラール樹脂を使用した以外は実施例7と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後の画像変化は殆ど起こらなかった。また、得られた階調パターンは、実施例7に比べて階調部の鮮明度がやや劣っており、最薄色階調部の濃度がパターン原板より10%程度濃くなっており、階調のパターン変化がやや大きくなっていた。
【0063】
(実施例13)
重合度500、ケン化度97%のイタコン酸変性ポリビニルアルコール132gを1600gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸110gを加え、次に、12℃まで冷却し、ブチルアルデヒド80gを添加した。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、30℃に昇温して7時間保った。反応終了後、蒸留水にて洗浄し、水洗後の変性ポリビニルブチラール樹脂分散溶液に水酸化ナトリウムを添加し溶液のPHを8に調整した。溶液を60℃で5時間保持した後冷却した。このとき溶液のPHは8であった。
【0064】
次に、固形分に対し100倍量の蒸留水により溶液を水洗した後、更に、溶液を50℃で5時間保持した後10倍量の蒸留水で水洗し、脱水した後に乾燥した。このようにして得られたイタコン酸変性ポリビニルブチラール樹脂の残存水酸基量は21モル%、残存アセチル基量は1.5モル%、ブチラール化度は25.5モル%であった。また、残存塩素化物量は20ppm、残存アルカリ性物質量は0.002重量%であった。
【0065】
ベヘン酸銀5g、イタコン酸変性ポリビニルブチラール5g、ジエチルケトン40gを24時間ボールミルで混合し、更に、N−ラウリル−1−ヒドロキシ−2−ナフトアミド0.2gを加え、再びボールミルで粉砕して塗工溶液を得た。得られた塗工溶液を、常温で3日間室内の蛍光灯下に置き溶液の着色を観察したところ、白色のままで変化は無かった。
【0066】
上記塗工溶液を、ポリエステル基材上に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布して乾燥した。この塗工面上に、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン・硫酸塩0.5g、ポリビニルピロリドン2g、メタノール30mlからなる溶液を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布して乾燥した。
【0067】
このようにして得られた感光性フイルムを階調パターンフイルムを通して250ワットの高圧水銀灯で20cmの距離で0.3秒間露光後、130℃の熱板を用いて5秒間加熱してシアン色の良好なパターン画像を得た。得られた画像は、白色光に曝しても、パターンのコントラストの変化は殆どなかった。また、最白色階調部の濃度は原板より2%濃くなっているのみであった。また、階調部の境界ははっきりしていた。
【0068】
(実施例14)
残存ハロゲン化物量が80ppmであること以外は実施例13と同様のイタコン酸変性ポリビニルブチラール樹脂を使用した。それ以外は、実施例13と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後のフイルムの画像変化等は殆ど起こらなかった。また、得られた階調パターンも最薄色階調部でパターン原板と比べて3%程度濃度が濃くなっていた。
【0069】
(実施例15)
残存アルカリ性物質量が0.009%であること以外は実施例13と同様のイタコン酸変性ポリビニルブチラール樹脂を使用した。それ以外は、実施例13と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後のフイルムの画像変化等は殆ど起こらなかった。また、階調パターンは実施例14と同等であった。
【0070】
(実施例16)
アセトアセタール化度が74モル%(全アセタール化度に対するアセトアセタール化部分の割合が100%)であること以外は実施例13と同様のイタコン酸変性ポリビニルブチラール樹脂を使用した。それ以外は、実施例13と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後の画像変化等は殆ど起こらなかった。また、階調部の鮮明度は実施例13と同等以上で、階調パターンの最薄色階調部の濃度はパターン原板とほぼ同じであった。
【0071】
(実施例17)
残存アセチル基が11モル%、残存水酸基が24モル%、アセトアセタール化度65モル%(全アセタール化度に対するアセトアセタール化部分の割合が100%)であること以外は実施例13と同様のイタコン酸変性ポリビニルブチラール樹脂を使用した。それ以外は、実施例13と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液の着色、及び、感光性フイルムの感光後の画像変化等は殆ど起こらなかった。また、階調パターンの画像も実施例16と同じであった。
【0072】
(比較例1)
残存ハロゲン化物量150ppmのポリビニルブチラール樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液は僅かに着色しており、得られた感光性フイルムも感光後にはかぶりがやや発生した。
【0073】
(比較例2)
酸化防止剤として2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)を、ポリビニルブチラール樹脂中で500ppmとなるように添加した以外は比較例1と同様の方法で塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液は大きく着色しており、得られた感光性フイルムも感光後にはかぶりが多く発生した。
【0074】
(比較例3)
残存水酸基量37モル%、残存アセチル基量1.5モル%のポリビニルブチラール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液はやや着色しており、得られた感光性フイルムも感光後にはかぶりがやや発生した。
【0075】
(比較例4)
残存水酸基量10モル%、残存アセチル基量30モル%のポリビニルブチラール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液に着色はなかったが、得られた感光性フイルムを重ねて保管しておいたところ、35℃でブロッキングを起こし、得られた感光後の画像も境界面で鮮明さがなくなった。
【0076】
(比較例5)
酸化防止剤として2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)を、ポリビニルアセタール樹脂中に500ppm添加した以外は実施例7と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液は大きく着色しており、感光性フイルムは感光後かぶりが多く発生した。
【0077】
(比較例6)
酸化防止剤として2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)を、ポリビニルブチラール樹脂中で500ppmとなるように添加した。それ以外は実施例13と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液は大きく着色しており、得られた感光性フイルムも感光後にはかぶりが多く発生した。
【0078】
(比較例7)
残存水酸基量が37モル%、残存アセチル基量が1.5モル%であること以外は実施例13と同様のイタコン酸変性ポリビニルブチラール樹脂を使用した。それ以外は、実施例13と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液はやや着色しており、得られた感光性フイルムも感光後にはかぶりがやや発生した。
【0079】
(比較例8)
残存水酸基量が20モル%、残存アセチル基量が28モル%であること以外は実施例13と同様のイタコン酸変性ポリビニルブチラール樹脂を使用した。それ以外は、実施例13と同様にして塗工溶液を調製し、感光性フイルムを作製した。得られた塗工溶液は溶解性が不良であった。得られた感光性フイルムも感光後の画像も境界面で鮮明さがなくなっていた。
【0080】
【発明の効果】
本発明の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂及び熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂並びに熱現像性感光材料は、上述の構成とされることにより、塗工溶液の保存性に優れ、また生フイルムの保存性にも優れ、しかも得られる感光性フイルムの感光後の保存性が良好で、優れた画像特性を示す。
【0081】
また、銀塩の分散性が向上し、熱溶融性、冷却硬化性等がシャープとなり、銀塩の核成長を精度よく制御することが可能であり、結果として画像及び階調部の鮮明度が向上する。

Claims (7)

  1. ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応により合成されるポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が200〜3000の範囲にあり、アセタール基をアセタール化された2つの水酸基として数えた場合、残存アセチル基の割合が0〜25モル%、残存水酸基の割合が17〜35モル%の範囲にあり、酸化防止剤を含有せず、残存ハロゲン化物量が100ppm以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
  2. ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとのアセタール化反応により合成されるポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が200〜3000の範囲にあり、アセタール基をアセタール化された2つの水酸基として数えた場合、残存アセチル基の割合が0〜25モル%、残存水酸基の割合が17〜35モル%の範囲にあり、酸化防止剤を含有せず、残存ハロゲン化物量が100ppm以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
  3. ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとのアセタール化反応により合成されるポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が200〜3000の範囲にあり、アセタール基をアセタール化された2つの水酸基として数えた場合、残存アセチル基の割合が0〜25モル%、残存水酸基の割合が17〜35モル%、アセタール化された部分全体におけるアセトアルデヒドによりアセタール化された部分の割合が30〜100%の範囲にあり、酸化防止剤を含有せず、残存ハロゲン化物量が100ppm以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
  4. ポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化反応により合成され、側鎖に下記の変性基を有する変性ポリビニルアセタール樹脂であって、重合度が200〜3000の範囲にあり、残存アセチル基の割合が0〜25モル%、残存水酸基の割合が17〜35モル%の範囲にあり、変性基の割合が0.1〜5モル%の範囲にあり、アセタール基をアセタール化された2つの水酸基として数えた場合、酸化防止剤を含有せず、残存ハロゲン化物量が100ppm以下であることを特徴とする熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂。ここで、変性基は、−COOM、−CH COOM、−SO M、−OSO M、−PO(OM) 、−P(=O)(R)(OM)、第三級アミン及び第四級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基団からなる(但し、Mは、H、Li、Na又はKを表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
  5. ポリビニルアセタール樹脂中の残存アルカリ性物質量が、0.01重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂。
  6. 変性ポリビニルアセタール樹脂中の残存アルカリ性物質量が、0.01重量%以下であることを特徴とする請求項4に記載の熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱現像性感光材料用ポリビニルアセタール樹脂又は熱現像性感光材料用変性ポリビニルアセタール樹脂が用いられてなることを特徴とする熱現像性感光材料。
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