JP3670933B2 - ワイヤハーネス巻取装置の組立方法および組立治具 - Google Patents

ワイヤハーネス巻取装置の組立方法および組立治具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に自動車配線の電線・ケーブルなどハーネス類を繰り出しかつ巻き取るワイヤハーネス巻取装置の組立方法と組立治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、巻取ドラムからハーネス類を長く引き出し、巻き戻して収容できるようにした巻取装置として、たとえば特開平9−84244号公報に記載のケーブル巻き取り機構ほか、本願出願人によって特開平11−116145号公報に記載のフラットケーブル巻取装置を含む多くの提案がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記各公報に開示された技術やこれまで製品化されてきたその種の巻取装置にあっては、共通する次の問題点がある。
【0004】
上記各装置の構造は概ね、巻取ケース内に巻取ドラムが回転自在に軸支され、ばねの力で電線・ケーブルなどのハーネスを巻き取って収容した状態から、ばね力に抗してハーネスを必要な長さだけ引き出すように構成されている。その場合、巻取ケースが大型化や肥大化するのを抑えながら、ハーネスの引き出し長さは極力長くといった要望を実現するために、装置内の構成や部品に様々な工夫が凝らされている。そのため、ますます部品点数や組立工程が増加し、組立作業が複雑で熟練を要するものとなってきている。
【0005】
組立作業のなかでも、巻取ケースの組立作業に併せてハーネスを巻取ドラムに巻き取らせ、その状態で巻取ケースに組み込んでハーネス端部を引き出した形にするまでのハーネス組み込み作業は非常に手間を要し、作業工数を増加させるひとつのネックとなっている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、組立作業を軽減して生産性を高めるためのワイヤハーネス巻取装置の組立方法とその組立治具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明にかかる請求項1に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立方法は、複数本の電線からなるワイヤハーネス20を巻き取りかつ長く引き出し可能に収容する巻取ケース11がケース本体12およびケース蓋13を有し、またケース内部に巻取ドラム14および巻取ばね15が備わっており、構造本体に固定された巻取ケース11から引き出したワイヤハーネス20の一端側をその構造本体に電気的に接続し、また巻取ケース11から引き出したワイヤハーネス20の他端側を可動体に電気的に接続して、構造本体に対して可動体が開閉扉動作する場合に、開扉動作に追従してワイヤハーネス20の他端側が巻取ばね15に抗して長く引き出されるようになっており、この引き出される部分のワイヤハーネス20の他端側が保護チューブ22に挿通して保護されているワイヤハーネス巻取装置10を組み立てるにあたり、前記ワイヤハーネス20の他端側における各電線を電線通し治具30に保持させ、その電線保持状態の電線通し治具30を前記保護チューブ22に挿通させることにより、各電線を保護チューブ22に挿通させた状態にするとともに、その保護チューブ22の一端側を前記巻取ドラム14に結合させてつなぐハーネス・ドラム仮止め工程と、前記巻取ケース11を形成するケース本体12とケース蓋13を分解状態でケース仮組み治具40上の隣り合う位置に位置決めしてセットする一方で、前記ハーネス・ドラム仮止め工程でつながれた前記ワイヤハーネス20と前記巻取ドラム14を前記ケース本体12に組み込み、かつそのワイヤハーネス20を前記ケース蓋13まで引き回した後、ケース蓋13をケース本体12に結合して組立後の巻取ケース11からワイヤハーネス20の一端側と他端側を引き出した状態にハーネス・ケース組立工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
〔作用〕
▲1▼ 構造本体にワイヤハーネス巻取装置を固定し、その構造本体を開閉扉動作する可動体との間に配索する場合、その可動体の開閉扉動作にワイヤハーネス20を追従させて必要な長さだけ巻取ケース11から自在に引き出したり、巻き戻す必要がある。ワイヤハーネス20をそうした巻取ケース11からの引き出し動作や巻き戻し動作から保護するために、ワイヤハーネス20が巻取ケース11から出入りする部分の長さを保護チューブ22に通す。ワイヤハーネス20は複数本の電線の電線束21からなっており、その電線の一本ずつを保護チューブ22に挿通させるのでは非常な作業手間がかかる。それを能率良く行うため、電線通し治具30を用いて各電線を束ねた状態で保持させ、そうした電線保持状態の電線通し治具30を保護チューブ22に針通しのごとくに挿通させる。
【0009】
▲2▼ 巻取ケース11は、ケース本体12,ケース蓋13,巻取ドラム14、そして巻取ばね15などからなっているが、それら各部材を結合して組み立てる際、同時にワイヤハーネス20を各部材に絡ませながら収容する。従来、その種のワイヤハーネス組み込み作業は面倒で熟練を要するものであったが、巻取ケース11の主要部材であるケース本体12とケース蓋13を分解状態でケース仮組み治具40上の隣り合わせ位置に位置決めすることで、ワイヤハーネス20の引き回し収容にかかる作業が非常に円滑で効率的に行える。
【0010】
また、請求項2に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立方法は、前記ハーネス・ケース組立工程において、前記ケース仮組み治具40上に前記ケース本体12が位置決めセットされた状態で、そのケース本体12の中心部のドラム回転支軸12aの軸周りに前記巻取ばね15を仮組状態でセットすることを特徴とする。
【0011】
〔作用〕ハーネス・ケース組立工程において、ケース仮組み治具40上のケース本体12に巻取ばね15を仮組状態でセットしておく。それから上記ハーネス・ドラム仮止め工程においてワイヤハーネス20側の保護チューブ22がつながれた状態の巻取ドラム14をその巻取ばね15の一端部15aに連結する。したがって、ケース仮組み治具40上では、ケース本体12と巻取ドラム14の両部材に対して巻取ばね15の連結が手際良く行える。
【0012】
また、請求項3に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立方法は、前記ワイヤハーネス20の一端側を前記保護チューブ22を介して接続する前記構造本体が自動車のアッパーバックパネル50である場合に、前記ワイヤハーネス20の他端側を接続する前記可動体がラゲージドア51であることを特徴とする。
【0013】
〔作用〕構造本体および可動体のそれぞれの具体例として、自動車のアッパーバックパネル50とラゲージドア51に適用することができ、生産ライン上でそれらアッパーバックパネルおよびラゲージドア間にワイヤハーネス巻取装置10を後付けで能率的に配索することができる。
【0016】
一方、本発明にかかる請求項に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立治具は、複数本の電線からなるワイヤハーネス20を巻き取りかつ長く引き出し可能に収容する巻取ケース11がケース本体12およびケース蓋13を有し、またケース内部に巻取ドラム14および巻取ばね15が備わっており、構造本体に固定された巻取ケース11から引き出したワイヤハーネス20の一端側をその構造本体に電気的に接続し、また巻取ケース11から引き出したワイヤハーネス20の他端側を可動体に電気的に接続して、構造本体に対して可動体が開閉扉動作する場合に、開扉動作に追従してワイヤハーネス20の他端側が巻取ばね15に抗して長く引き出されるようになっており、この引き出される部分のワイヤハーネス20の他端側が保護チューブ22に挿通して保護されているワイヤハーネス巻取装置10において、ケース仮組み治具40が、前記ケース本体12を内側上側に向けてはめ込んで位置決めするための位置決め凹部42を有し、これに隣り合って前記ケース蓋13を内側上側に向けてはめ込んで位置決めするための位置決め凹部43を有し、前記位置決め凹部42の内部適所に前記巻取ばね15を仮決めするための適宜数の当てピン42a・・・を設けてなっていることを特徴とする。
【0017】
〔作用〕以上の構成により、ケース仮組み治具40上でケース本体12をセットする位置決め凹部42では、巻取ばね15を仮決めするための当てピン42a等を要所要所に点在して設けておくことで、それら当てピン42a等が貫通した状態のケース本体12の内側で巻取ばね15を能率良く仮決めできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるワイヤハーネス巻取装置の組立方法と組立治具の各実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1および図2は、本例のワイヤハーネス巻取装置10を示す組立斜視図と分解斜視図である。ワイヤハーネス20は、この場合たとえば複数本の電線を束ねたり撚ったりした電線束21からなっているもので、その電線束全長の一部を保護チューブ22に通した状態でワイヤハーネス巻取装置10の巻取ケース11に収容されている。保護チューブ22は、その全長方向の一端側と他端側の各端部にブラケット23,24が設けられている。
【0020】
装置本体となる巻取ケース11は、樹脂成形などされた円筒形状のケース本体12と、これに凹凸部同士による弾性嵌合で結合される同じく樹脂製のケース蓋13からなっている。ケース本体12は円筒形状の内部中心に設けたドラム回転支軸12aを有し、この支軸周りにはばねガイド板12cなどが設けられ、また円筒周壁の一部を開口する形で外側に突出した断面コ字形状のハーネス引き出し口部12bが設けられている。そうしたケース本体12を塞ぐケース蓋13は、外部表面のほぼ中心位置から突出したハーネス固定口部13aと、外周縁から外側に突出して断面コ字形状のハーネス引き出し口部13bが設けられている。このハーネス引き出し口部13bは上記ケース本体12に設けたハーネス引き出し口部12bと上下に合わさって結合される。さらに、ケース蓋13の中心から外部に突出して軸受部13cが設けられ、この軸受部13cでは後述の図8(b)に示すように、止ねじ16でケース本体12に固定するようになっている。
【0021】
また、巻取ケース11の内部にはワイヤハーネス20を必要長さだけ引き出し、また巻き戻すための巻取ドラム14が収容されている。この巻取ドラム14は、ドラム本体を形成する巻取胴14aの中心部に上記ケース本体12側のドラム回転支軸12aが挿通する筒状の軸受部14bを有し、上記ケース蓋13側の軸受部13cとを結ぶ図でいう上下方向の垂直線を回転中心にして回転自在に軸支されている。また、巻取胴14aの厚さ方向両側に円形鍔状のフランジ14c,14cを張り出して設けて断面凹形の周溝を形成しており、その凹周溝でワイヤハーネス20の巻き付けを案内する。そうしたフランジ14cの上側のものの周縁一部が切欠されて、そこは後述するハーネス保護用の保護チューブ22の一端側をつないで固定するための保護チューブ係止凹部14dとなっている。
【0022】
また、巻取ケース11の内部にはケース本体12と巻取ドラム14との間にコイルばねによる巻取ばね15が装着されている。すなわち、この巻取ばね15でもってワイヤハーネス20を巻取ケース11内部に巻き戻して収容する正回転方向へ復帰付勢している。したがって、ワイヤハーネス20はその巻取ばね15のばね力に抗してケース本体12から外部に繰り出されることになる。
【0023】
次に、上記図1および図2の各図を併用しつつ、図3以下の図面を用いて巻取ケース11の組立作業に併せてワイヤハーネス20を組み込むことにより、ワイヤハーネス巻取装置10として組立完了するまでの作業工程と作用について説明する。
【0024】
先述のように、ワイヤハーネス20は複数本の電線を束ねた電線束21からなっており、電線束21の各電線端部にはそれぞれコネクタや端子金具類の端子21aが結合され、電子・電気機器との結線によって回路を形成する。
【0025】
図3(a)に示すように、そうした電線束21を保護チューブ22に挿通させる作業工程を含んでいるが、その挿通作業を手際良く実行して作業効率を高めるために、本実施の形態として専用の電線通し治具30が準備されている。
【0026】
本治具30は、細長い先端部に筒形状で上記複数本の電線21のすべてを差し込めるだけの内径を有した集束キャップ部31を有し、この集束キャップ部31の最先端部は円錐形の先細形状に閉じたチューブ通し部32となっている。また、本治具30の細長い後端部にはそうした集束キャップ部31から尾長のごとき延びる案内へら部33を有して構成されている。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、複数本からなる電線束21の各電線を本治具30の集束キャップ部31に案内へら部33でガイドして滑らせるようにして差し入れ、電線束21の各電線をそのようにして保持した本治具30を、その集束キャップ部31の先端先細のチューブ通し部32から保護チューブ22にこの場合一端側のブラケット23側から挿入させる。
【0028】
すなわち、保護チューブ22の長さ寸法はかなり長尺であるため、これに複数本からなる電線束21の各電線を一本ずつ挿通させるのでは非常に手間がかかる。それを解消するべく、電線束21を本治具30に簡易に保持させた状態であたかも「糸通し」のようにして保護チューブ22に挿通させ、それにより挿通作業が非常に簡便かつ短縮して効率アップを図っている。
【0029】
図3(c)は、複数本からなる電線束21をかかる電線通し治具30を介して保護チューブ22に挿通し終えた状態を示し、この状態で電線通し治具30はそれまで保持した複数本からなる電線束21から取り外されて用を足し終える。この場合、保護チューブ22の他端側のブラケット24から抜けた電線束21は、図3(d)に示すように、配索の都合上、そのブラケット24から出た部分を折り曲げ、ブラケット24の端部24aに結束テープ25でもって緊縛される。
【0030】
また、図3(e)に示すように、上記結束テープ23で緊縛された電線束21はそこからさらに長く延びる部分を別の結束テープ26でもって螺旋巻きなどして、たとえば340mm程度の長さ部分まで荒巻きされる。さらに、図3(f)に示すように、そうした荒巻きした先部の電線束21にクリップ27をその台座27aで結束テープ28によって緊縛して固定する。図3(g)は、以上図3(a)〜(f)までの手順によって複数本からなる電線束21を保護チューブ22に挿通させて組み電線とした状態のワイヤハーネス20を示している。
【0031】
次に、そのようにして下準備されたワイヤハーネス20が巻取ケース11の内部に、この場合本実施の形態として準備されたケース仮組み治具40を用いて以下図4〜図7に示す工程手順で組み込まれる。
【0032】
まず初めに、図4(a)に示すように、巻取ケース11がそのケース本体12とケース蓋13を分解した状態でケース仮組み治具40上に位置決めしてセットされる。このケース仮組み治具40は、平板ブロック形状の本体41の上面にケース本体12の形状に倣って凹状に形成された位置決め凹部42と、ケース蓋13の形状に倣って凹状に形成された位置決め凹部43が隣り合わせに設けられている。したがって、位置決め凹部42にはケース本体12が上向きに嵌合してセットされ、位置決め凹部43にはケース蓋13が内面を上向きにして嵌合してセットされる。
【0033】
次に、図4(b)に示すように、上記位置決め凹部42にセットされたケース本体12に対して、そのドラム回転支軸12aの軸周りに巻取ばね15が装着される。この場合、位置決め凹部42においては、その巻取ばね15を所定位置にセットするための位置決め治具である当てピン42a,42b,42cなどが垂直に立ち上げて設けてある。たとえば、巻取ばね15の一側の係止端フック15aを当てピン42aに当接させて固定し、他側の係止端フック15bは当てピン42bに当接させて固定する。また、巻取ばね15の本体部に内側から当てピン42cを当接させることにより、巻取ばね15のばらけを防ぎ、ばね姿勢が正常になるようにしている。それにより、ケース本体12の支軸周りで巻取ばね15がその両端を仮決めした状態で次回の巻取ドラム1との連結に備える。たとえば、この巻取ドラム1に巻取ばね15の一側係止端フック15aを係止して連結し、他側係止端フック15bをケース本体12側に係止して連結するように備える具体的に、係止端フック15a、15bは、図に示される如くフック状であることから、当てピン42a、42bが引き抜かれた時に、係止端フック15aが巻取ドラム14の下側のフランジ14c側に引っ掛かり、また、係止端フック15bがケース本体12の内側に引っ掛かるように備える。そうした巻取ばね15によって、巻取ドラム1をハーネス巻取方向の正回転方向へ付勢し、その付勢力に抗してワイヤハーネス20を巻取ケース11から外部に引き出すことができる。
【0034】
次に、図5(a),(b)に示すように、上記図3(g)に示す形状で準備されたワイヤハーネス20を巻取ドラム14に仮決め後、先述の図4(b)で示したケース仮組み治具40上のケース本体12への組み込みに備える。
【0035】
まず、ワイヤハーネス20側の保護チューブ22を巻取ドラム14の上側フランジ14cに設けた保護チューブ係止凹部14dに横方向から差し入れるようにして通す。通した後、保護チューブ22の一端側のブラケット24をその保護チューブ係止凹部14dに上方から下方へワンタッチで落とし込んで嵌合させる。図5(b)は、ブラケット24をこの裏面側のクリップ部24bで保護チューブ係止凹部14dに弾性嵌合によって係止させた状態を示す側面図である。
【0036】
次に、図6(a),(b)に示すように、上記図5(a),(b)で保護チューブ22を介してワイヤハーネス20が仮組状態でつながれた形の巻取ドラム14をそのまま、ケース仮組み治具40上の位置決め凹部42で位置決めされているケース本体12の軸周りに落とし込んで組み込む。
【0037】
すなわち、図6(a)のように、巻取ドラム14の筒形状の軸受部14bをケース本体12のドラム回転支軸12aに上方から落とし込んで嵌合させる。その際、保護チューブ22の他端側のブラケット23は、ケース本体14側のハーネス引き出し口部12bから外部に出るようにして組み込まれる。
【0038】
また、それに併せて図6(b)に示すように、保護チューブ22の一端側のブラケット24から延び出る集束状態の電線束21の先端部をケース仮組み治具40の位置決め凹部43で位置決め中のケース蓋13まで引き回す。ケース蓋13ではその引き回した電線束21を上向き姿勢のハーネス固定口部13aに沿わせ、ケース蓋13の外部に引き出しておくようにする。
【0039】
その際、ケース蓋13においては、引き回されてきた電線束21に固定している上記クリップ27〔図3(g)参照〕をケース蓋13側の係止孔にクリック嵌合でもってワンタッチで係合させ、電線束21の位置ずれを防ぐ。このように、クリップ27を介して電線束21をケース蓋13側のハーネス固定口部13a近傍に確実に固定しておくことで、装置使用中においてハーネス繰り出しと巻き戻しの作動を支障なく円滑とすることができる。
【0040】
図7は、そうしたケース仮組み治具40上において、隣り合って位置決め状態にあるうケース本体12からケース蓋13へと電線束21を引き回した仮決め状態を示す平面図である。すなわち、ワイヤハーネス20は、電線束21が保護チューブ22に挿通した状態でケース本体12にハーネス引き出し口部12bから引き入れられ、巻取ドラム14に仮組状態で保持されてケース蓋13に引き回され、そのハーネス固定口部13aから引き出された状態のごときにセットされる。ケース仮組み治具40上では、そうした引き回し状態の電線束21の中途をワイヤハーネス引き回し用のガイドピン44に当接させて仮決め状態にする。
【0041】
次に、図8(a),(b)に示すように、上記図7において引き回し電線束21を介して繋がったケース本体12とケース蓋13をケース仮組み治具40上の各位置決め凹部42,43から取り外し、互いに凹凸嵌合させて結合する。
【0042】
すなわち、図8(a)のように、ケース仮組み治具40から取り外したケース本体12に対してケース蓋13を被せるようにして結合させる。その際、引き回された電線束21を巻取ドラム14のドラム本体に一巻きする程度に巻き付かせる。図8(b)は、ケース蓋13でケース本体12を閉塞した状態を示し、ケース蓋13の中心部の軸受部13cにおいて止ねじ16をねじ込むことで、ケース蓋13をケース本体12に固定する。ケース本体12側のハーネス引き出し口部12bとケース蓋13側のハーネス引き出し口部13bは上下で互いに接合し、そこからワイヤハーネス20の一端側の電線束21が保護チューブ22を介して引き出され、かつワイヤハーネス20の他端側からは電線束21がケース蓋13側のハーネス固定口部13aから引き出された形となる。この状態で図1に示すワイヤハーネス巻取装置10の組立が終了する。
【0043】
以上から理解されるように、ワイヤハーネス巻取装置10の組立を終了するまでの作業は、さほどの熟練度を必要とせず、非常に効率的に行うことができる。作業工程を概ね分類すると以下の通りである。
【0044】
▲1▼ 複数本の電線からなる電線束21を電線通し治具30を用いて保護チューブ22に手際よく挿通させ、かつ全線にわたる大部分を結束テープで集束する。そうして下準備されたワイヤハーネス20を巻取ドラム14に対して、保護チューブ22の一端側を結合してつないだ状態で次のハーネス・ケース組立工程に備えるハーネス・ドラム仮止め工程。
【0045】
▲2▼ ケース仮組み治具40上にセットされているケース本体12とケース蓋13に対して、上記ハーネス・ドラム仮止め工程において保護チューブ22を介して巻取ドラム14につながれた状態のワイヤハーネス20を引き回して組み込むハーネス・ケース組立工程。
【0046】
このように本実施の形態においては、従来この種のワイヤハーネス巻取装置の組み立てと比較して非常に作業工程を削減でき、しかも各工程ではさほどの熟練度を必要とせず簡易な作業が可能となって、生産効率を大幅に高めることができる。
【0047】
一方、本実施の形態のワイヤハーネス巻取装置10は、取付例として自動車のボディ・パネルであるアッパーバックパネルと、トランクルームのラゲージドアとの間に装着することで、そのドア周辺にワイヤハーネス20を簡便に配索をすることができる。
【0048】
図9および図10は、そのアッパーバックパネル50に対してラゲージドア51を開閉扉動作させる際のドア閉扉時とドア開扉時を示すそれぞれの要部断面図である。
【0049】
この場合、ワイヤハーネス巻取装置10はその巻取ケース11を車体ボディ・パネルの上記アッパーバックパネル50に固定される。その際、ケース蓋13のハーネス固定口部13aから引き出されたワイヤハーネス20の一端側電線束21の各電線はコネクタや端子を介してアッパーバックパネル50側の電気回路に接続される。
【0050】
また、巻取ケース11側のハーネス引き出し口部12b,13bから引き出されたワイヤハーネス20の他端側電線束21の各電線は、上記ラゲージドア51に固定された保護チューブ22の一端側ブラケット23から出て、ラゲージドア51側の電気回路に接続される。
【0051】
したがって、実機装着後の使用時にあっては、図9のように、ラゲージドア51が閉じられている状態では、ワイヤハーネス20の長さの大部分は巻取ケース11内で巻取ドラム14に巻き取られて収容されている。
【0052】
かかるドア閉扉状態から、図10のように、ラゲージドア51が開けられると、そのドア開き動作に追従してワイヤハーネス20が保護チューブ22共々、巻取ケース11内部の巻取ばね15に抗して必要な長さだけ引き出される。
【0053】
なお、図9および図10で示されたように、本発明でいう構造本体として自動車のアッパーバックパネルに例をとり、可動体としてラゲージドアに例をとって本実施の形態にかかるワイヤハーネス巻取装置の取付例を示したが、構造本体や可動体はその例に限らず、一般産業機器や装置への適用ももちろん可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかる請求項1に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立方法は、構造本体にワイヤハーネス巻取装置を固定し、その構造本体を開閉扉動作する可動体との間に配索する場合、その可動体の開閉扉動作にワイヤハーネスを追従させて必要な長さだけ巻取ケースから自在に引き出したり、巻き戻す必要がある。ワイヤハーネスをそうした巻取ケースからの引き出し動作や巻き戻し動作から保護するために、ワイヤハーネスが巻取ケースから出入りする部分の長さを保護チューブに通す。ワイヤハーネスは複数本の電線の電線束からなっており、その電線の一本ずつを保護チューブに挿通させるのでは非常な作業手間がかかる。それを能率良く行うため、電線通し治具を用いて各電線を束ねた状態で保持させ、そうした電線保持状態の電線通し治具を保護チューブに針通しのごとくに挿通させる。
【0055】
また、この場合、巻取ケースはケース本体,ケース蓋,巻取ドラム、そして巻取ばねなどからなっているが、それら各部材を結合して組み立てる際、同時にワイヤハーネスを各部材に絡ませながら収容する。従来、その種のワイヤハーネス組み込み作業は面倒で熟練を要するものであったが、巻取ケースの主要部材であるケース本体とケース蓋を分解状態でケース仮組み治具上の隣り合わせ位置に位置決めすることで、ワイヤハーネスの引き回し収容にかかる作業が非常に円滑で効率的に行える。
【0056】
また、請求項2に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立方法は、ハーネス・ケース組立工程において、ケース仮組み治具上のケース本体に巻取ばねを仮組状態でセットしておく。それから上記ハーネス・ドラム仮止め工程においてワイヤハーネス側の保護チューブがつながれた状態の巻取ドラムをその巻取ばねの一端部に連結する。したがって、ケース仮組み治具上では、ケース本体と巻取ドラムの両部材に対して巻取ばねの連結が手際良く行える。
【0057】
また、請求項3に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立方法は、構造本体および可動体のそれぞれ具体例として、自動車のアッパーバックパネルとラゲージドアに適用することができ、生産ライン上でそれらアッパーバックパネルおよびラゲージドア間にワイヤハーネス巻取装置を後付けで能率的に配索することができる。
【0059】
一方、本発明にかかる請求項に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立治具は、ケース仮組み治具上でケース本体をセットする位置決め凹部では、巻取ばねを仮決めするための当てピンを要所要所に点在して設けておくことで、それら当てピンが貫通した状態のケース本体の内側に巻取ばねを能率良く仮決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の組立方法で組み立てられたワイヤハーネス巻取装置を示す組立斜視図である。
【図2】そのワイヤハーネス巻取装置の分解斜視図である。
【図3】同図(a)〜(g)は、本実施の形態にかかるハーネス・ドラム仮止め工程において、電線通し治具でワイヤハーネスを保護チューブに通し、そのワイヤハーネスを結束テープで緊縛して形成する組立順序を示すいずれも斜視図である。
【図4】同図(a),(b)は、本実施の形態にかかるハーネス・ケース組立工程において、ケース仮組み治具上にケース本体とケース蓋を位置決めして巻取ばねを仮組みした状態を示す斜視図と平面図である。
【図5】同図(a),(b)は、下準備として巻取ドラムにワイヤハーネスを保護チューブを介して仮組みして次工程のハーネス・ケース組立工程に備えるまでの組立順序を示す斜視図と側面図である。
【図6】同図(a),(b)は、下準備として巻取ドラムにワイヤハーネスを保護チューブを介して仮組みしたものを次工程のハーネス・ケース組立工程においてケース仮組み治具上のケース本体とケース蓋に組み込む態様を示すそれぞれ平面図である。
【図7】ハーネス・ケース組立工程におけるケース仮組み治具上のケース本体からケース蓋へワイヤハーネスを引き回して組み込む態様を示す全体の平面図である。
【図8】同図(a),(b)は、ハーネス・ケース組立工程においてケース本体に対してケース蓋を凹凸嵌合などで弾性結合させて組み立てる態様を示す結合前の分解斜視図と組立斜視図である。
【図9】本実施の形態のワイヤハーネス巻取装置を自動車のアッパーバックパネルとラゲージドアとの間に装着した適用例を示すドア閉扉時の断面図である。
【図10】ドア開扉時を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ワイヤハーネス巻取装置
11 巻取ケース
12 ケース本体
12a ドラム回転支軸
12b ハーネス引き出し口部
12c ばねガイド板
13 ケース蓋
13a ハーネス固定口部
13b ハーネス引き出し口部
14 巻取ドラム
14a 巻取胴
14b 軸受部
14d 保護チューブ係止凹部
20 ワイヤハーネス
21 電線束
22 保護チューブ
23,24 ブラケット
24b クリップ部
25,26 結束テープ
30 電線通し治具
31 集束キャップ部
33 案内へら部
40 ケース仮組み治具
42 ケース本体の位置決め凹部
42a〜 巻取ばね仮決め用の当てピン
43 ケース蓋の位置決め凹部
44 ワイヤハーネス引き回し用のガイドピン
50 アッパーバックパネル(構造本体)
51 ラゲージドア(可動体)

Claims (4)

  1. 複数本の電線からなるワイヤハーネスを巻き取りかつ長く引き出し可能に収容する巻取ケースがケース本体およびケース蓋からなって、その内部に巻取ドラムおよび巻取ばねが備わり、構造本体に固定された巻取ケースから引き出したワイヤハーネスの一端側をその構造本体に電気的に接続し、また巻取ケースから引き出したワイヤハーネスの他端側を可動体に電気的に接続して、構造本体に対して可動体が開閉扉動作する場合に、開扉動作に追従してワイヤハーネスの他端側が巻取ばねに抗して長く引き出されるようになっており、この引き出される部分のワイヤハーネスの他端側が保護チューブに挿通して保護されているワイヤハーネス巻取装置の組立方法であって、
    前記ワイヤハーネスの他端側における各電線を電線通し治具に保持させ、その電線保持状態の電線通し治具を前記保護チューブに挿通させることにより、各電線を保護チューブに挿通させた状態にするとともに、その保護チューブの一端側を前記巻取ドラムに結合させてつなぐハーネス・ドラム仮止め工程と、
    前記巻取ケースを形成するケース本体とケース蓋を分解状態でケース仮組み治具上の隣り合う位置に位置決めしてセットし、その一方で前記ハーネス・ドラム仮止め工程で形成された前記ワイヤハーネスおよび前記巻取ドラムをそれぞれ前記ケース本体に組み込み、かつそのワイヤハーネスを前記ケース蓋まで引き回した後、ケース蓋をケース本体に結合して組立後の巻取ケースからワイヤハーネスの一端側と他端側を引き出した状態にするハーネス・ケース組立工程と、
    を含むことを特徴とするワイヤハーネス巻取装置の組立方法。
  2. 前記ハーネス・ケース組立工程において前記ケース仮組み治具上に前記ケース本体が位置決めセットされた状態で、そのケース本体の中心部のドラム回転支軸の軸周りに前記巻取ばねを仮組状態でセットすることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立方法。
  3. 前記ワイヤハーネスの一端側を前記保護チューブを介して接続する前記構造本体が自動車のアッパーバックパネルである場合に、前記ワイヤハーネスの他端側を接続する前記可動体がラゲージドアであることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤハーネス巻取装置の組立方法。
  4. 複数本の電線からなるワイヤハーネスを巻き取りかつ長く引き出し可能に収容する巻取ケースがケース本体およびケース蓋からなって、その内部に巻取ドラムおよび巻取ばねが備わり、構造本体に固定された巻取ケースから引き出したワイヤハーネスの一端側をその構造本体に電気的に接続し、また巻取ケースから引き出したワイヤハーネスの他端側を可動体に電気的に接続して、構造本体に対して可動体が開閉扉動作する場合に、開扉動作に追従してワイヤハーネスの他端側が巻取ばねに抗して長く引き出されるようになっており、この引き出される部分のワイヤハーネスの他端側が保護チューブに挿通して保護されているワイヤハーネス巻取装置において、
    前記ケース本体を上側に向けてはめ込んで位置決めするための位置決め凹部を有し、これに隣り合って前記ケース蓋を上側に向けてはめ込んで位置決めするための位置決め凹部を有し、前記位置決め凹部の内部適所に前記巻取ばねを仮決めするための適宜数の当てピンを設けてなっていることを特徴とする組立治具。
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