JP3669945B2 - スターリング冷凍機 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温の発生に用いられるスターリング冷凍機に関し、特に、ピストンの位置を正確に保持できるフリーピストン型のスターリング冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷熱の発生を目的としたフリーピストン型のスターリング冷凍機は、熱サイクル的には逆スターリングサイクルエンジンとも呼ばれている。図7は、このような従来のスターリング冷凍機の一構成例を示す断面図である。
【0003】
ピストン1とディスプレーサ2とが、シリンダ3の内に往復摺動可能に配されている。このシリンダ3は、密閉された圧力容器4内に固定されている。ピストン1及びディスプレーサ2は同軸上に構成されており、ディスプレーサ2に形成されたロッド2aはピストン1の径方向中心部に設けられた摺動孔1aを貫通し、ピストン1とディスプレーサ2とはシリンダ3の内周壁面3aに沿って滑らかに摺動可能である。また、ピストン1はピストン支持バネ5、ディスプレーサ2はディスプレーサ支持バネ6によって、夫々、圧力容器4に対して弾性支持されている。
【0004】
圧力容器4とシリンダ3とにより形成される空間は、ピストン1によって2つの空間に分割されている。一つはピストン1のディスプレーサ2側にある作動空間7であり、もう一つはピストン1のディスプレーサ2側と反対側にある背面空間8である。背面空間8は、シリンダ3のピストン1が挿入された側を取り囲むように形成されている。これらの作動空間7及び背面空間8には、高圧のヘリウムガス等の作動媒体が充填されている。ピストン1は、背面空間8に形成されたリニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)により所定周期で往復動される。この往復動によって、作動媒体は作動空間7内で圧縮,膨張される。ディスプレーサ2は、作動空間7内で圧縮,膨張される作動媒体の圧力変化により直線的に往復動される。このとき、ピストン1とディスプレーサ2とは、一般的に約90度の位相差をもって同一周期にて往復動するように設計されている。
【0005】
また、作動空間7はディスプレーサ2にて更に2つの空間に分割されている。一つはピストン1とディスプレーサ2とに挟まれた圧縮空間7aであり、もう一つはシリンダ3の先端部の膨張空間7bである。これらの圧縮空間7a及び膨張空間7bは、一般にメッシュ形状の銅材などにより構成された再生器9を介して連結されている。膨張空間7bで作動媒体を膨張させることにより、シリンダ3の先端のコールドヘッド10に冷熱を発生させるが、このような構成の冷凍機を用いた逆スターリング熱サイクルに関しては、一般に良く知られているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0006】
シリンダ3の内周壁面3aに沿ってピストン1が滑らかに往復動するためには、その内周壁面3aとピストン1の摺動面1bとの間に微小隙間が必要である。この冷凍機駆動時にはピストン1の往復動により、圧縮空間7a及び背面空間8には何れも作動媒体の圧力変動が生じる。その結果、圧縮空間7a及び背面空間8の圧力差により、作動媒体は前記微小隙間を通過する。従って、圧縮空間7aの圧力が背面空間8の圧力より高い場合には、圧縮空間7aから背面空間8に向かって作動媒体が漏れることになる。また逆に、背面空間8の圧力が圧縮空間7aの圧力より高い場合には、背面空間8から圧縮空間7aに向かって作動媒体が流れる。
【0007】
ところで、シリンダ3の内周壁面3aとピストン1の摺動面1bとの間の微小隙間は、常に一定の隙間量ではなく、ピストン1の運動状態、摺動面1bの表面状態及び摩擦状態等により変化する。また、圧縮空間7aと背面空間8との圧力変動の大きさも同一でないため、圧縮空間7aからみた背面空間8への作動媒体の流出量及び流入量が全く同量であることはない。このため、冷凍機を連続運転し、仮に圧縮空間7aから背面空間8に向かって少しずつ作動媒体が漏れていった場合、ピストン1の往復動の振幅中心位置は、圧力が低下した圧縮空間7a側へ徐々に移動する。その結果、作動空間7内の作動媒体の圧力低下に伴う冷却特性の低下が生じたり、ピストン1の振幅中心位置が初期設定位置からずれることによりピストン1とディスプレーサ2とが衝突を起こしたりするなどの問題が発生する。
【0008】
そこで、作動空間7と背面空間8とにおける作動媒体の圧力平衡を保ち、ピストン1の振幅中心位置の変動を抑えるようにしたスターリング冷凍機が、米国特許USP4,583,364号に開示されている。
【0009】
図8は、米国特許USP4,583,364号に記載のスターリング冷凍機の構成を示す断面図である。図8において、図7と同一部分には同一番号を付している。このスターリング冷凍機では、シリンダ3に固定されたセンターポスト14内部に圧縮空間7aに連通された作動媒体流路14aが設けられ、センターポスト14に沿って往復動するピストン1内部に背面空間8と連通された作動媒体流路21が設けられており、ピストン1が設定された振幅中心位置にある場合に、それらの2つの作動媒体流路14a,21が結合し、圧縮空間7aと背面空間8とはそれらを介して結ばれるように構成されている。そして、ピストン1がこの振幅中心位置を通過するごとに、圧縮空間7aと背面空間8との間で、作動媒体の圧力が高い方から低い方へ作動媒体が流れる。これにより、圧縮空間7a及び背面空間8の圧力差が是正され、ピストン1の振幅中心位置が一定に保持される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ピストン1の最初に設定した振幅中心位置を一定に維持するためには、上述した図8に示すスターリング冷凍機のように、圧縮空間7aと背面空間8とを結ぶような微小な作動媒体流路14a,21を設けることが有効である。
【0011】
ところで、フリーピストン型のスターリング冷凍機を運転する場合、コールドヘッド10で発生する冷熱の必要量によって、その運転状態は変化する。フリーピストン型のスターリング冷凍機は、一般的に定周波数にて駆動するため、大きな冷凍能力を必要とする場合には、ピストン1及びディスプレーサ2が大振幅で往復動する。一方、小さな冷凍能力しか必要としない場合には、ピストン1及びディスプレーサ2が小振幅で往復動する。従って、図8に示すようにある一定形状の作動媒体流路14a,21を単に設けただけでは、スターリング冷凍機の運転状態によって、それらの2つの作動媒体流路14a,21が結合する時間は異なることになる。ピストン1及びディスプレーサ2が大振幅で往復動する場合に、この結合時間が短くなって、必要な作動媒体流量を得られないことがある。逆に、ピストン1及びディスプレーサ2が小振幅で往復動する場合に、その結合時間は長くなり、その結果、作動媒体の圧縮,膨張が妨げられて冷凍効率が低下することがあるといった問題がある。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、運転状態が変化してもピストンの振幅中心位置が変動しにくく信頼性が高いスターリング冷凍機を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るスターリング冷凍機は、作動媒体が充填された圧力容器と、該圧力容器内に設けられたシリンダと、該シリンダ内を往復動するピストンと、該ピストンの往復動によって作動空間内で圧縮,膨張を繰り返す前記作動媒体の働きにより駆動されるディスプレーサとを備えており、前記作動空間は、前記ピストンと前記ディスプレーサとの間に設けられた第1の作動空間と、前記ディスプレーサの前記ピストンに対向する側の反対側に設けられた第2の作動空間とを有しており、前記ピストンの前記ディスプレーサに対向する側の反対側には背面空間が設けられているスターリング冷凍機において、前記ピストンに設けられて前記第1の作動空間と連通する第1の流路と、前記シリンダの側壁を貫通して前記背面空間と連通する第2の流路とが、前記ピストンがその往復動の中心部に存する場合に結合されて前記第1の作動空間及び前記背面空間が連通するように形成されており、前記第2の流路に前記作動媒体の流量を可変とする流量制御弁を具備し、前記ピストンの往復動の振幅に応じて前記流量制御弁の開閉度を制御することを特徴とする。
【0014】
本発明のスターリング冷凍機にあっては、ピストンに設けられて第1の作動空間に連通する第1の流路と、シリンダの側壁を貫通して背面空間に連通する第2の流路とが形成されており、ピストンがその往復動の中心部にある場合に第1の流路及び第2の流路が結合されて第1の作動空間と背面空間とが連通される。そして、これらの2つの流路が結合された場合にその結合部分に流れる作動媒体の流量を、第2の流路に設けた流量制御弁の開閉度により、スターリング冷凍機の運転状態(ピストンの往復動の振幅変化)に応じて変化させる。よって、運転状態が変化してその2つの流路の結合時間が変化しても、その変化量に応じて結合部分での作動媒体の流量を変化させるため、ピストンの振幅中心位置のずれを抑えることができる。ピストンの往復動の振幅の大きさに応じて結合部分での作動媒体の流量を変化させるため、流量制御を精度良く行える。
【0015】
本発明に係るスターリング冷凍機は、前記ピストンの振幅が大きい場合に前記流量制御弁の開度を大きく、前記ピストンの振幅が小さい場合に前記流量制御弁の開度を小さく制御することを特徴とする。
【0016】
本発明のスターリング冷凍機にあっては、ピストンの振幅が大きい場合には、流量制御弁の開度を大きくして第1,第2の流路の結合部を流れる作動流体の流量を大きくし、ピストンの振幅が小さい場合には、流量制御弁の開度を小さくして第1,第2の流路の結合部を流れる作動流体の流量を小さくする。よって、流量制御を精度良く行える。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
(第1実施の形態)
図1は、本発明によるスターリング冷凍機の一構成例を示す断面図である。ピストン1とディスプレーサ2とが、密閉された圧力容器4内に固定されているシリンダ3内に往復摺動可能に配されている。ピストン1及びディスプレーサ2は同軸上に構成されており、ディスプレーサ2に形成されたロッド2aは、ピストン1の径方向中心部に設けられた摺動孔1aを貫通しており、ピストン1及びディスプレーサ2は、シリンダ3の内周壁面3aに沿って滑らかに摺動可能である。また、ピストン1はピストン支持バネ5、ディスプレーサ2はディスプレーサ支持バネ6によって、夫々、圧力容器4に対して弾性支持されており、ピストン支持バネ5が変形していない中立状態において、ピストン1は設定された振幅中心位置に位置決めされる。
【0029】
圧力容器4とシリンダ3とにより形成される空間は、ピストン1によって2つの空間に分割されている。一つはピストン1のディスプレーサ2側にある作動空間7であり、もう一つはピストン1のディスプレーサ2側と反対側にある背面空間8である。背面空間8は、シリンダ3のピストン1が挿入された側を取り囲むように形成されている。これらの作動空間7及び背面空間8には、高圧のヘリウムガス等の作動媒体が充填されている。
【0030】
ピストン1は、背面空間8に形成されたリニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)により所定周期で往復動される。この往復動によって、作動媒体は作動空間7内で圧縮,膨張される。ディスプレーサ2は、作動空間7内で圧縮,膨張される作動媒体の圧力変化により直線的に往復動される。このとき、ピストン1とディスプレーサ2とは、一般的に約90度の位相差をもって同一周期にて往復動するように設計されている。
【0031】
また、作動空間7はディスプレーサ2にて更に2つの空間に分割されている。一つはピストン1とディスプレーサ2とに挟まれた圧縮空間7aであり、もう一つはシリンダ3の先端部の膨張空間7bである。これらの圧縮空間7a及び膨張空間7bは、例えばメッシュ形状の銅材により構成された再生器9を介して連結されている。
【0032】
図1は、ピストン1が、予め設定された振幅中心位置にある状態を表している。ピストン1内には、その作動空間7側の底面1cとその摺動面1bとを結ぶ微小な第1の流路11が形成されている。また、シリンダ3の側面壁には、そこを貫通して背面空間8と連通する微小な第2の流路12が形成されている。ピストン1に形成された第1の流路11の摺動面1b(シリンダ3)側の開口部11aと、シリンダ3に形成された第2の流路12の内周壁面3a(ピストン1)側の開口部12aとは、ピストン1が所定の振幅中心位置にある場合に互いに対向する位置になるように配されており、その場合に圧縮空間7aと背面空間8とが第1の流路11及び第2の流路12を介して結合して両空間7a,8間での作動媒体のスムーズな流れを可能としている。
【0033】
シリンダ3に形成された第2の流路12に、第2の流路12に流れる作動媒体の流量を可変とする流量制御弁13が設けられている。流量制御弁13によって、第2の流路12に流れる作動媒体の流量を調整する。
【0034】
次に、動作について説明する。ピストン1は定周波数によって往復駆動されるため、ピストン1が所定の振幅中心位置にあって作動媒体が微小な第1,第2の流路11,12を流れることが可能な時間は非常に短時間である。更に、本構成のスターリング冷凍機を運転する場合、コールドヘッド10で発生する冷熱の必要量によってその運転状態は変化する。大きな冷凍能力を必要とする場合には、ピストン1及びディスプレーサ2は大振幅で往復動する。一方、小さな冷凍能力しか必要としない場合には、ピストン1及びディスプレーサ2は小振幅で往復動する。従って、ある一定形状の微小な流路を単に形成したのみでは、冷凍機の運転状態に応じて、第1の流路11及び第2の流路12が結合する時間(Δt)は異なることになる。
【0035】
ここで、ピストン1が中振幅で往復動するときに、そのときの結合時間(Δt1)内でピストン1が予め設定された所定の振幅中心位置を保持するために必要な作動媒体流量(ΔQ1)が得られるべく、第1,第2の流路11,12の形状が設定されていると仮定する。ピストンが大振幅で往復動する場合には、その結合時間(Δt2)が短くなる(Δt2<Δt1)ので、ピストン1がその所定の振幅中心位置を保持するためには、中振幅時の作動媒体流量(ΔQ1)と略同量の作動媒体の流出入を、この短い結合時間(Δt2)内で行う必要があり、そのためには、単位時間当たりの作動媒体流量を大きくする必要がある。一方、ピストンが小振幅で往復動する場合には、その結合時間(Δt3)が長くなる(Δt3>Δt1)ので、ピストン1がその所定の振幅中心位置を保持するためには、中振幅時の作動媒体流量(ΔQ1)と略同量の作動媒体の流出入で十分であり、そのためには、単位時間当たりの作動媒体流量を制限する必要がある。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、第2の流路12に設けた流量制御弁13により、冷凍機の運転状態に応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる。流量制御弁13は、例えば、ある単位時間当たりの作動媒体流量(ΔQd)を予め設定しておき、スターリング冷凍機の運転状態に応じて、その単位時間当たりの作動媒体流量(ΔQd)を変化させるように作用する。
【0037】
以上のようにして、流量制御弁13によって第2の流路12に流れる作動媒体の流量を調整制御することにより、スターリング冷凍機の運転状態の如何にかかわらず、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0038】
(第2実施の形態)
図2は、流量制御弁13を用い、シリンダ3内を往復動するピストン1の振幅の大きさに応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第2実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0039】
上述したように、コールドヘッド10で発生する冷熱の必要量によって、スターリング冷凍機の運転状態が変化してピストン1及びディスプレーサ2の振幅は大きく変化する。ピストン1,シリンダ3に形成した微小な流路による作動媒体の流出入にも関わらず、ピストン1の振幅中心位置が変化する大きな原因の一つは、スターリング冷凍機の運転状態の違いによるピストン1の振幅の大きさの違いである。第2実施の形態では、ピストン1の振幅の大きさと、その振幅の大きさに適した作動媒体流量との相関を設定データとして流量制御弁13の制御装置に組み込んでおき、往復動するピストン1の振幅の大きさを検出し、その振幅の大きさに応じて作動媒体流量を流量制御弁13の制御によって変化させる。
【0040】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S1)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S2)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S3)。一方、ピストン1の振幅の大きさがモニタされる(S4)。ピストン1自体に変位センサを設ける方法、ピストン1を弾性支持するピストン支持バネ5に変位センサを設ける方法、コールドヘッド10の温度等で与えられる温度負荷条件下でのピストン駆動電流の大きさとピストン振幅の大きさとの関係を事前に明確にしておいた情報を利用する方法などにより、ピストン1の振幅の大きさはモニタ可能である。
【0041】
そして、モニタされたピストン振幅の大きさに応じて第2の流路12に設けられた流量制御弁13での最適作動媒体流量を算出し(S5)、その算出結果に基づいて流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体の流量を制御する(S6)。ピストン1の振幅が大きい場合には、流量制御弁13の開度を大きくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を大きくし、ピストン1の振幅が小さい場合には、流量制御弁13の開度を小さくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を小さくする。
【0042】
このようにピストン1の振幅の大きさに応じて、流量制御弁13により作動媒体流量を制御するようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0043】
(第3実施の形態)
図3は、流量制御弁13を用い、シリンダ3内を往復動するピストン1の振幅中心位置のずれ量に応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第3実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0044】
第3実施の形態では、往復動するピストン1の振幅中心位置を直接測定し、その振幅中心位置のずれ量に応じて、流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体流量を変化させる。ピストン1の振幅中心位置を測定する方法としては、例えば、ピストン1と一体的にマグネットを固定し、固定部であるシリンダ3側にホール素子を用いた検出部を構成する方法がある。また、ピストン1の一端が固定されたピストン支持バネ5を平らな板バネにて構成し、その板バネに貼り付けた歪ゲージの出力によりピストン1の位置を検出する方法がある。また、ピストン1に遮光板を固定し、シリンダ3側に固定されたフォトインタラプタを用いてピストン1の位置を検出する方法がある。
【0045】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S11)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S12)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S13)。一方、ピストン1の振幅中心位置(Yp )はモニタされ(S14)、予め設定されたピストン1の振幅中心基準位置(Kp )からのずれ量(ΔYp =Yp −Kp )を検出する(S15)。
【0046】
そして、検出された振幅中心位置のずれ量(ΔYp )の大きさに応じて、第2の流路12に設けられた流量制御弁13での最適作動媒体流量を算出し(S16)、その算出結果に基づいて流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体の流量を制御する(S17)。ピストン1の振幅中心位置のずれ量(ΔYp )が大きい場合には、流量制御弁13の開度を大きくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を大きくし、そのずれ量(ΔYp )が小さい場合には、流量制御弁13の開度を小さくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を小さくする。
【0047】
このようにピストン1の振幅中心位置のずれ量の大きさに応じて、流量制御弁13により作動媒体流量を制御するようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0048】
(第4実施の形態)
図4は、流量制御弁13を用い、ピストン1が所定の基準位置にある場合の圧縮空間7a内の作動媒体の圧力(圧縮空間7aの内圧)の大きさに応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第4実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0049】
往復動するピストン1に対し、ある基準位置(Lp )を設定する。また、圧縮空間7aの内圧を圧力センサ等でモニタする。ピストン1がこの基準位置(Lp)を通過した場合の圧縮空間7aの内圧(PLP)を測定する。ピストン1の振幅中心位置が徐々にディスプレーサ2側に移動する場合、この圧縮空間7aの内圧(PLP)の大きさは徐々に減少していることになる。第4実施の形態では、圧縮空間7aの内圧を測定し、その測定値と内圧基準値との差に応じて、流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体流量を変化させる。
【0050】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S21)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S22)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S23)。一方、ピストン1が所定の基準位置(Lp )にある場合の圧縮空間7aの内圧(PLP)はモニタされ(S24)、内圧基準値である運転初期時の圧縮空間7aの内圧(PLP1 )との圧力差(ΔPLP=PLP−PLP1 )を検出する(S25)。
【0051】
そして、検出された圧力差(ΔPLP)の大きさに応じて、第2の流路12に設けられた流量制御弁13での最適作動媒体流量を算出し(S26)、その算出結果に基づいて流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体の流量を制御する(S27)。圧縮空間7a内の圧力差(ΔPLP)が大きい場合には、流量制御弁13の開度を大きくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を大きくし、その圧力差(ΔPLP)が小さい場合には、流量制御弁13の開度を小さくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を小さくする。
【0052】
このように、ピストン1が所定の基準位置にある場合の圧縮空間7a内の作動媒体の圧力の大きさに応じて、流量制御弁13により作動媒体流量を制御するようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0053】
なお、上述した例では、内圧基準値となる圧縮空間7aの内圧(PLP1 )を運転初期時の内圧としたが、環境温度または冷凍機に封入された作動媒体の圧力の大きさなどを想定して事前に設定された最適な内圧基準値を用いることも可能である。
【0054】
(第5実施の形態)
図5は、ピストン1,シリンダ3に夫々複数個の第1の流路11,第2の流路12を形成し、流量制御弁13を用い、圧縮空間7aと背面空間8との連通可能な流路の数に応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第5実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0055】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S31)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S32)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S33)。一方、ピストン1の振幅中心位置(Yp )はモニタされ(S34)、予め設定されたピストン1の振幅中心基準位置(Kp )からのずれ量(ΔYp =Yp −Kp )を検出する(S35)。
【0056】
そして、検出された振幅中心位置のずれ量(ΔYp )の大きさに応じて第2の流路12を通過する最適作動媒体流量を算出し(S36)、その算出結果に基づき、流量制御弁13によって複数の第2の流路12夫々を個別に開閉し、開放する第2の流路12の数を変えることにより、圧縮空間7aと背面空間8との間を流れる作動媒体流量を制御して変化させる(S37)。ピストン1の振幅中心位置のずれ量(ΔYp )が大きい場合には、開放する第2の流路12の数を多くして作動媒体流量を大きくし、そのずれ量(ΔYp )が小さい場合には、開放する第2の流路12の数を少なくして作動媒体流量を小さくする。
【0057】
このように、ピストン1,シリンダ3に複数個の第1の流路11,第2の流路12を形成し、ピストン1の振幅中心位置のずれ量の大きさに応じて、圧縮空間7aと背面空間8とを結合する流路の数を変化させることにより、微小な第1,第2の流路11,12を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0058】
(第6実施の形態)
図6は、シリンダ3に設けられた第2の流路12の断面積を変化させることにより、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第6実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0059】
第6実施の形態では、往復動するピストン1の振幅中心位置を直接測定し、その振幅中心位置のずれ量に応じて第2の流路12の断面積を変化させることにより、作動媒体流量を制御して変化させる。
【0060】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S41)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S42)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S43)。一方、ピストン1の振幅中心位置(Yp )はモニタされ(S44)、予め設定されたピストン1の振幅中心基準位置(Kp )からのずれ量(ΔYp =Yp −Kp )を検出する(S45)。
【0061】
そして、検出された振幅中心位置のずれ量(ΔYp )の大きさに応じて第2の流路12を通過する最適作動媒体流量を算出する(S46)。その算出結果に基づいて、その断面積を変化させることができるようにシリンダ3に構成された第2の流路12の断面積の大きさを流量制御弁13によって変化させ、圧縮空間7aと背面空間8との間を流れる作動媒体流量を制御して変化させる(S47)。ピストン1の振幅中心位置のずれ量(ΔYp )が大きい場合には、第2の流路12の断面積を大きくすることで作動媒体流量を大きくする。また、そのずれ量(ΔYp )が小さい場合には、第2の流路12の断面積を小さくすることで作動媒体流量を小さくする。
【0062】
このように、ピストン1に第1の流路11、シリンダ3に第2の流路12を設け、その第2の流路12の断面積を可変制御可能とするようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれ量の大きさに応じて、圧縮空間7aと背面空間8とを結合する微小な第1,第2の流路11,12を流れる作動媒体流量を最適に制御できる。その結果、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、信頼性が高いスターリング冷凍機が得られる。
【0063】
なお、上述した第2,第4実施の形態では、流量制御弁13の開度を調整して作動媒体流量を変化させる場合について説明したが、上述した第5実施の形態または第6実施の形態のような手法によって作動媒体流量を変化させるようにしても良いことは言うまでもない。
【0064】
また、上述した各実施の形態では、シリンダ3側に設けた第2の流路12を通過する作動媒体の流量を流量制御弁13により制御する構成を示したが、ピストン1側に設けた第1の流路11を通過する作動媒体の流量を制御する構成にすることも可能であることは勿論である。また、両方の流路における流量制御を同時に行うようにしても良いことは言うまでもない。
【0065】
【発明の効果】
以上のように本発明では、ピストン,シリンダ壁面に第1の流路,第2の流路を夫々設け、ピストンが予め設定された振幅中心部に位置した場合に、第1の流路と第2の流路とが結合して第1の作動空間(圧縮空間)と背面空間とを連通する微小流路を構成するようにしており、第2の流路に作動媒体の流量を変化できる流量制御弁を備えるようにしたので、第1,第2の流路が結合された微小流路を流れる作動媒体の流量を制御することが可能となり、運転状態が変化しても、ピストンの振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0066】
また、本発明では、ピストンの往復動の振幅の大きさに応じて、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、高精度の流量制御を行うことができる。
【0067】
また、本発明では、ピストンの往復動の中心位置の基準位置からのずれ量に応じて、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、高精度の流量制御を行うことができる。
【0068】
また、本発明では、ピストンが所定位置にある場合の第1の作動空間(圧縮空間)内の作動媒体の圧力に応じて、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、高精度の流量制御を行うことができる。
【0069】
また、本発明では、弁の開閉度を変化させることにより、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、流量制御を容易に行うことができる。
【0070】
また、本発明では、第1の作動空間(圧縮空間)と背面空間との結合可能な微小流路の数を変化させることにより、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、流量制御を容易に行うことができる。
【0071】
更に、本発明では、第1の流路及び/または第2の流路の断面積を変化させることにより、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、流量制御を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスターリング冷凍機の一構成例を示す断面図である。
【図2】第2実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図3】第3実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図4】第4実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図5】第5実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図6】第6実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図7】従来のスターリング冷凍機の一構成例を示す断面図である。
【図8】従来のスターリング冷凍機の他の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ピストン
2 ディスプレーサ
3 シリンダ
4 圧力容器
7 作動空間
7a 圧縮空間(第1の作動空間)
7b 膨張空間(第2の作動空間)
8 背面空間
11 第1の流路
12 第2の流路
13 流量制御弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温の発生に用いられるスターリング冷凍機に関し、特に、ピストンの位置を正確に保持できるフリーピストン型のスターリング冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷熱の発生を目的としたフリーピストン型のスターリング冷凍機は、熱サイクル的には逆スターリングサイクルエンジンとも呼ばれている。図7は、このような従来のスターリング冷凍機の一構成例を示す断面図である。
【0003】
ピストン1とディスプレーサ2とが、シリンダ3の内に往復摺動可能に配されている。このシリンダ3は、密閉された圧力容器4内に固定されている。ピストン1及びディスプレーサ2は同軸上に構成されており、ディスプレーサ2に形成されたロッド2aはピストン1の径方向中心部に設けられた摺動孔1aを貫通し、ピストン1とディスプレーサ2とはシリンダ3の内周壁面3aに沿って滑らかに摺動可能である。また、ピストン1はピストン支持バネ5、ディスプレーサ2はディスプレーサ支持バネ6によって、夫々、圧力容器4に対して弾性支持されている。
【0004】
圧力容器4とシリンダ3とにより形成される空間は、ピストン1によって2つの空間に分割されている。一つはピストン1のディスプレーサ2側にある作動空間7であり、もう一つはピストン1のディスプレーサ2側と反対側にある背面空間8である。背面空間8は、シリンダ3のピストン1が挿入された側を取り囲むように形成されている。これらの作動空間7及び背面空間8には、高圧のヘリウムガス等の作動媒体が充填されている。ピストン1は、背面空間8に形成されたリニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)により所定周期で往復動される。この往復動によって、作動媒体は作動空間7内で圧縮,膨張される。ディスプレーサ2は、作動空間7内で圧縮,膨張される作動媒体の圧力変化により直線的に往復動される。このとき、ピストン1とディスプレーサ2とは、一般的に約90度の位相差をもって同一周期にて往復動するように設計されている。
【0005】
また、作動空間7はディスプレーサ2にて更に2つの空間に分割されている。一つはピストン1とディスプレーサ2とに挟まれた圧縮空間7aであり、もう一つはシリンダ3の先端部の膨張空間7bである。これらの圧縮空間7a及び膨張空間7bは、一般にメッシュ形状の銅材などにより構成された再生器9を介して連結されている。膨張空間7bで作動媒体を膨張させることにより、シリンダ3の先端のコールドヘッド10に冷熱を発生させるが、このような構成の冷凍機を用いた逆スターリング熱サイクルに関しては、一般に良く知られているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0006】
シリンダ3の内周壁面3aに沿ってピストン1が滑らかに往復動するためには、その内周壁面3aとピストン1の摺動面1bとの間に微小隙間が必要である。この冷凍機駆動時にはピストン1の往復動により、圧縮空間7a及び背面空間8には何れも作動媒体の圧力変動が生じる。その結果、圧縮空間7a及び背面空間8の圧力差により、作動媒体は前記微小隙間を通過する。従って、圧縮空間7aの圧力が背面空間8の圧力より高い場合には、圧縮空間7aから背面空間8に向かって作動媒体が漏れることになる。また逆に、背面空間8の圧力が圧縮空間7aの圧力より高い場合には、背面空間8から圧縮空間7aに向かって作動媒体が流れる。
【0007】
ところで、シリンダ3の内周壁面3aとピストン1の摺動面1bとの間の微小隙間は、常に一定の隙間量ではなく、ピストン1の運動状態、摺動面1bの表面状態及び摩擦状態等により変化する。また、圧縮空間7aと背面空間8との圧力変動の大きさも同一でないため、圧縮空間7aからみた背面空間8への作動媒体の流出量及び流入量が全く同量であることはない。このため、冷凍機を連続運転し、仮に圧縮空間7aから背面空間8に向かって少しずつ作動媒体が漏れていった場合、ピストン1の往復動の振幅中心位置は、圧力が低下した圧縮空間7a側へ徐々に移動する。その結果、作動空間7内の作動媒体の圧力低下に伴う冷却特性の低下が生じたり、ピストン1の振幅中心位置が初期設定位置からずれることによりピストン1とディスプレーサ2とが衝突を起こしたりするなどの問題が発生する。
【0008】
そこで、作動空間7と背面空間8とにおける作動媒体の圧力平衡を保ち、ピストン1の振幅中心位置の変動を抑えるようにしたスターリング冷凍機が、米国特許USP4,583,364号に開示されている。
【0009】
図8は、米国特許USP4,583,364号に記載のスターリング冷凍機の構成を示す断面図である。図8において、図7と同一部分には同一番号を付している。このスターリング冷凍機では、シリンダ3に固定されたセンターポスト14内部に圧縮空間7aに連通された作動媒体流路14aが設けられ、センターポスト14に沿って往復動するピストン1内部に背面空間8と連通された作動媒体流路21が設けられており、ピストン1が設定された振幅中心位置にある場合に、それらの2つの作動媒体流路14a,21が結合し、圧縮空間7aと背面空間8とはそれらを介して結ばれるように構成されている。そして、ピストン1がこの振幅中心位置を通過するごとに、圧縮空間7aと背面空間8との間で、作動媒体の圧力が高い方から低い方へ作動媒体が流れる。これにより、圧縮空間7a及び背面空間8の圧力差が是正され、ピストン1の振幅中心位置が一定に保持される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ピストン1の最初に設定した振幅中心位置を一定に維持するためには、上述した図8に示すスターリング冷凍機のように、圧縮空間7aと背面空間8とを結ぶような微小な作動媒体流路14a,21を設けることが有効である。
【0011】
ところで、フリーピストン型のスターリング冷凍機を運転する場合、コールドヘッド10で発生する冷熱の必要量によって、その運転状態は変化する。フリーピストン型のスターリング冷凍機は、一般的に定周波数にて駆動するため、大きな冷凍能力を必要とする場合には、ピストン1及びディスプレーサ2が大振幅で往復動する。一方、小さな冷凍能力しか必要としない場合には、ピストン1及びディスプレーサ2が小振幅で往復動する。従って、図8に示すようにある一定形状の作動媒体流路14a,21を単に設けただけでは、スターリング冷凍機の運転状態によって、それらの2つの作動媒体流路14a,21が結合する時間は異なることになる。ピストン1及びディスプレーサ2が大振幅で往復動する場合に、この結合時間が短くなって、必要な作動媒体流量を得られないことがある。逆に、ピストン1及びディスプレーサ2が小振幅で往復動する場合に、その結合時間は長くなり、その結果、作動媒体の圧縮,膨張が妨げられて冷凍効率が低下することがあるといった問題がある。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、運転状態が変化してもピストンの振幅中心位置が変動しにくく信頼性が高いスターリング冷凍機を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るスターリング冷凍機は、作動媒体が充填された圧力容器と、該圧力容器内に設けられたシリンダと、該シリンダ内を往復動するピストンと、該ピストンの往復動によって作動空間内で圧縮,膨張を繰り返す前記作動媒体の働きにより駆動されるディスプレーサとを備えており、前記作動空間は、前記ピストンと前記ディスプレーサとの間に設けられた第1の作動空間と、前記ディスプレーサの前記ピストンに対向する側の反対側に設けられた第2の作動空間とを有しており、前記ピストンの前記ディスプレーサに対向する側の反対側には背面空間が設けられているスターリング冷凍機において、前記ピストンに設けられて前記第1の作動空間と連通する第1の流路と、前記シリンダの側壁を貫通して前記背面空間と連通する第2の流路とが、前記ピストンがその往復動の中心部に存する場合に結合されて前記第1の作動空間及び前記背面空間が連通するように形成されており、前記第2の流路に前記作動媒体の流量を可変とする流量制御弁を具備し、前記ピストンの往復動の振幅に応じて前記流量制御弁の開閉度を制御することを特徴とする。
【0014】
本発明のスターリング冷凍機にあっては、ピストンに設けられて第1の作動空間に連通する第1の流路と、シリンダの側壁を貫通して背面空間に連通する第2の流路とが形成されており、ピストンがその往復動の中心部にある場合に第1の流路及び第2の流路が結合されて第1の作動空間と背面空間とが連通される。そして、これらの2つの流路が結合された場合にその結合部分に流れる作動媒体の流量を、第2の流路に設けた流量制御弁の開閉度により、スターリング冷凍機の運転状態(ピストンの往復動の振幅変化)に応じて変化させる。よって、運転状態が変化してその2つの流路の結合時間が変化しても、その変化量に応じて結合部分での作動媒体の流量を変化させるため、ピストンの振幅中心位置のずれを抑えることができる。ピストンの往復動の振幅の大きさに応じて結合部分での作動媒体の流量を変化させるため、流量制御を精度良く行える。
【0015】
本発明に係るスターリング冷凍機は、前記ピストンの振幅が大きい場合に前記流量制御弁の開度を大きく、前記ピストンの振幅が小さい場合に前記流量制御弁の開度を小さく制御することを特徴とする。
【0016】
本発明のスターリング冷凍機にあっては、ピストンの振幅が大きい場合には、流量制御弁の開度を大きくして第1,第2の流路の結合部を流れる作動流体の流量を大きくし、ピストンの振幅が小さい場合には、流量制御弁の開度を小さくして第1,第2の流路の結合部を流れる作動流体の流量を小さくする。よって、流量制御を精度良く行える。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
(第1実施の形態)
図1は、本発明によるスターリング冷凍機の一構成例を示す断面図である。ピストン1とディスプレーサ2とが、密閉された圧力容器4内に固定されているシリンダ3内に往復摺動可能に配されている。ピストン1及びディスプレーサ2は同軸上に構成されており、ディスプレーサ2に形成されたロッド2aは、ピストン1の径方向中心部に設けられた摺動孔1aを貫通しており、ピストン1及びディスプレーサ2は、シリンダ3の内周壁面3aに沿って滑らかに摺動可能である。また、ピストン1はピストン支持バネ5、ディスプレーサ2はディスプレーサ支持バネ6によって、夫々、圧力容器4に対して弾性支持されており、ピストン支持バネ5が変形していない中立状態において、ピストン1は設定された振幅中心位置に位置決めされる。
【0029】
圧力容器4とシリンダ3とにより形成される空間は、ピストン1によって2つの空間に分割されている。一つはピストン1のディスプレーサ2側にある作動空間7であり、もう一つはピストン1のディスプレーサ2側と反対側にある背面空間8である。背面空間8は、シリンダ3のピストン1が挿入された側を取り囲むように形成されている。これらの作動空間7及び背面空間8には、高圧のヘリウムガス等の作動媒体が充填されている。
【0030】
ピストン1は、背面空間8に形成されたリニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)により所定周期で往復動される。この往復動によって、作動媒体は作動空間7内で圧縮,膨張される。ディスプレーサ2は、作動空間7内で圧縮,膨張される作動媒体の圧力変化により直線的に往復動される。このとき、ピストン1とディスプレーサ2とは、一般的に約90度の位相差をもって同一周期にて往復動するように設計されている。
【0031】
また、作動空間7はディスプレーサ2にて更に2つの空間に分割されている。一つはピストン1とディスプレーサ2とに挟まれた圧縮空間7aであり、もう一つはシリンダ3の先端部の膨張空間7bである。これらの圧縮空間7a及び膨張空間7bは、例えばメッシュ形状の銅材により構成された再生器9を介して連結されている。
【0032】
図1は、ピストン1が、予め設定された振幅中心位置にある状態を表している。ピストン1内には、その作動空間7側の底面1cとその摺動面1bとを結ぶ微小な第1の流路11が形成されている。また、シリンダ3の側面壁には、そこを貫通して背面空間8と連通する微小な第2の流路12が形成されている。ピストン1に形成された第1の流路11の摺動面1b(シリンダ3)側の開口部11aと、シリンダ3に形成された第2の流路12の内周壁面3a(ピストン1)側の開口部12aとは、ピストン1が所定の振幅中心位置にある場合に互いに対向する位置になるように配されており、その場合に圧縮空間7aと背面空間8とが第1の流路11及び第2の流路12を介して結合して両空間7a,8間での作動媒体のスムーズな流れを可能としている。
【0033】
シリンダ3に形成された第2の流路12に、第2の流路12に流れる作動媒体の流量を可変とする流量制御弁13が設けられている。流量制御弁13によって、第2の流路12に流れる作動媒体の流量を調整する。
【0034】
次に、動作について説明する。ピストン1は定周波数によって往復駆動されるため、ピストン1が所定の振幅中心位置にあって作動媒体が微小な第1,第2の流路11,12を流れることが可能な時間は非常に短時間である。更に、本構成のスターリング冷凍機を運転する場合、コールドヘッド10で発生する冷熱の必要量によってその運転状態は変化する。大きな冷凍能力を必要とする場合には、ピストン1及びディスプレーサ2は大振幅で往復動する。一方、小さな冷凍能力しか必要としない場合には、ピストン1及びディスプレーサ2は小振幅で往復動する。従って、ある一定形状の微小な流路を単に形成したのみでは、冷凍機の運転状態に応じて、第1の流路11及び第2の流路12が結合する時間(Δt)は異なることになる。
【0035】
ここで、ピストン1が中振幅で往復動するときに、そのときの結合時間(Δt1)内でピストン1が予め設定された所定の振幅中心位置を保持するために必要な作動媒体流量(ΔQ1)が得られるべく、第1,第2の流路11,12の形状が設定されていると仮定する。ピストンが大振幅で往復動する場合には、その結合時間(Δt2)が短くなる(Δt2<Δt1)ので、ピストン1がその所定の振幅中心位置を保持するためには、中振幅時の作動媒体流量(ΔQ1)と略同量の作動媒体の流出入を、この短い結合時間(Δt2)内で行う必要があり、そのためには、単位時間当たりの作動媒体流量を大きくする必要がある。一方、ピストンが小振幅で往復動する場合には、その結合時間(Δt3)が長くなる(Δt3>Δt1)ので、ピストン1がその所定の振幅中心位置を保持するためには、中振幅時の作動媒体流量(ΔQ1)と略同量の作動媒体の流出入で十分であり、そのためには、単位時間当たりの作動媒体流量を制限する必要がある。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、第2の流路12に設けた流量制御弁13により、冷凍機の運転状態に応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる。流量制御弁13は、例えば、ある単位時間当たりの作動媒体流量(ΔQd)を予め設定しておき、スターリング冷凍機の運転状態に応じて、その単位時間当たりの作動媒体流量(ΔQd)を変化させるように作用する。
【0037】
以上のようにして、流量制御弁13によって第2の流路12に流れる作動媒体の流量を調整制御することにより、スターリング冷凍機の運転状態の如何にかかわらず、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0038】
(第2実施の形態)
図2は、流量制御弁13を用い、シリンダ3内を往復動するピストン1の振幅の大きさに応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第2実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0039】
上述したように、コールドヘッド10で発生する冷熱の必要量によって、スターリング冷凍機の運転状態が変化してピストン1及びディスプレーサ2の振幅は大きく変化する。ピストン1,シリンダ3に形成した微小な流路による作動媒体の流出入にも関わらず、ピストン1の振幅中心位置が変化する大きな原因の一つは、スターリング冷凍機の運転状態の違いによるピストン1の振幅の大きさの違いである。第2実施の形態では、ピストン1の振幅の大きさと、その振幅の大きさに適した作動媒体流量との相関を設定データとして流量制御弁13の制御装置に組み込んでおき、往復動するピストン1の振幅の大きさを検出し、その振幅の大きさに応じて作動媒体流量を流量制御弁13の制御によって変化させる。
【0040】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S1)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S2)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S3)。一方、ピストン1の振幅の大きさがモニタされる(S4)。ピストン1自体に変位センサを設ける方法、ピストン1を弾性支持するピストン支持バネ5に変位センサを設ける方法、コールドヘッド10の温度等で与えられる温度負荷条件下でのピストン駆動電流の大きさとピストン振幅の大きさとの関係を事前に明確にしておいた情報を利用する方法などにより、ピストン1の振幅の大きさはモニタ可能である。
【0041】
そして、モニタされたピストン振幅の大きさに応じて第2の流路12に設けられた流量制御弁13での最適作動媒体流量を算出し(S5)、その算出結果に基づいて流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体の流量を制御する(S6)。ピストン1の振幅が大きい場合には、流量制御弁13の開度を大きくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を大きくし、ピストン1の振幅が小さい場合には、流量制御弁13の開度を小さくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を小さくする。
【0042】
このようにピストン1の振幅の大きさに応じて、流量制御弁13により作動媒体流量を制御するようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0043】
(第3実施の形態)
図3は、流量制御弁13を用い、シリンダ3内を往復動するピストン1の振幅中心位置のずれ量に応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第3実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0044】
第3実施の形態では、往復動するピストン1の振幅中心位置を直接測定し、その振幅中心位置のずれ量に応じて、流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体流量を変化させる。ピストン1の振幅中心位置を測定する方法としては、例えば、ピストン1と一体的にマグネットを固定し、固定部であるシリンダ3側にホール素子を用いた検出部を構成する方法がある。また、ピストン1の一端が固定されたピストン支持バネ5を平らな板バネにて構成し、その板バネに貼り付けた歪ゲージの出力によりピストン1の位置を検出する方法がある。また、ピストン1に遮光板を固定し、シリンダ3側に固定されたフォトインタラプタを用いてピストン1の位置を検出する方法がある。
【0045】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S11)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S12)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S13)。一方、ピストン1の振幅中心位置(Yp )はモニタされ(S14)、予め設定されたピストン1の振幅中心基準位置(Kp )からのずれ量(ΔYp =Yp −Kp )を検出する(S15)。
【0046】
そして、検出された振幅中心位置のずれ量(ΔYp )の大きさに応じて、第2の流路12に設けられた流量制御弁13での最適作動媒体流量を算出し(S16)、その算出結果に基づいて流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体の流量を制御する(S17)。ピストン1の振幅中心位置のずれ量(ΔYp )が大きい場合には、流量制御弁13の開度を大きくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を大きくし、そのずれ量(ΔYp )が小さい場合には、流量制御弁13の開度を小さくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を小さくする。
【0047】
このようにピストン1の振幅中心位置のずれ量の大きさに応じて、流量制御弁13により作動媒体流量を制御するようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0048】
(第4実施の形態)
図4は、流量制御弁13を用い、ピストン1が所定の基準位置にある場合の圧縮空間7a内の作動媒体の圧力(圧縮空間7aの内圧)の大きさに応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第4実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0049】
往復動するピストン1に対し、ある基準位置(Lp )を設定する。また、圧縮空間7aの内圧を圧力センサ等でモニタする。ピストン1がこの基準位置(Lp)を通過した場合の圧縮空間7aの内圧(PLP)を測定する。ピストン1の振幅中心位置が徐々にディスプレーサ2側に移動する場合、この圧縮空間7aの内圧(PLP)の大きさは徐々に減少していることになる。第4実施の形態では、圧縮空間7aの内圧を測定し、その測定値と内圧基準値との差に応じて、流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体流量を変化させる。
【0050】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S21)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S22)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S23)。一方、ピストン1が所定の基準位置(Lp )にある場合の圧縮空間7aの内圧(PLP)はモニタされ(S24)、内圧基準値である運転初期時の圧縮空間7aの内圧(PLP1 )との圧力差(ΔPLP=PLP−PLP1 )を検出する(S25)。
【0051】
そして、検出された圧力差(ΔPLP)の大きさに応じて、第2の流路12に設けられた流量制御弁13での最適作動媒体流量を算出し(S26)、その算出結果に基づいて流量制御弁13の開閉度を調整して作動媒体の流量を制御する(S27)。圧縮空間7a内の圧力差(ΔPLP)が大きい場合には、流量制御弁13の開度を大きくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を大きくし、その圧力差(ΔPLP)が小さい場合には、流量制御弁13の開度を小さくして第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を小さくする。
【0052】
このように、ピストン1が所定の基準位置にある場合の圧縮空間7a内の作動媒体の圧力の大きさに応じて、流量制御弁13により作動媒体流量を制御するようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0053】
なお、上述した例では、内圧基準値となる圧縮空間7aの内圧(PLP1 )を運転初期時の内圧としたが、環境温度または冷凍機に封入された作動媒体の圧力の大きさなどを想定して事前に設定された最適な内圧基準値を用いることも可能である。
【0054】
(第5実施の形態)
図5は、ピストン1,シリンダ3に夫々複数個の第1の流路11,第2の流路12を形成し、流量制御弁13を用い、圧縮空間7aと背面空間8との連通可能な流路の数に応じて、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第5実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0055】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S31)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S32)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S33)。一方、ピストン1の振幅中心位置(Yp )はモニタされ(S34)、予め設定されたピストン1の振幅中心基準位置(Kp )からのずれ量(ΔYp =Yp −Kp )を検出する(S35)。
【0056】
そして、検出された振幅中心位置のずれ量(ΔYp )の大きさに応じて第2の流路12を通過する最適作動媒体流量を算出し(S36)、その算出結果に基づき、流量制御弁13によって複数の第2の流路12夫々を個別に開閉し、開放する第2の流路12の数を変えることにより、圧縮空間7aと背面空間8との間を流れる作動媒体流量を制御して変化させる(S37)。ピストン1の振幅中心位置のずれ量(ΔYp )が大きい場合には、開放する第2の流路12の数を多くして作動媒体流量を大きくし、そのずれ量(ΔYp )が小さい場合には、開放する第2の流路12の数を少なくして作動媒体流量を小さくする。
【0057】
このように、ピストン1,シリンダ3に複数個の第1の流路11,第2の流路12を形成し、ピストン1の振幅中心位置のずれ量の大きさに応じて、圧縮空間7aと背面空間8とを結合する流路の数を変化させることにより、微小な第1,第2の流路11,12を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、その結果、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0058】
(第6実施の形態)
図6は、シリンダ3に設けられた第2の流路12の断面積を変化させることにより、第1,第2の流路11,12の結合部を流れる作動媒体の流量を変化させる第6実施の形態における動作を示すフローチャートである。
【0059】
第6実施の形態では、往復動するピストン1の振幅中心位置を直接測定し、その振幅中心位置のずれ量に応じて第2の流路12の断面積を変化させることにより、作動媒体流量を制御して変化させる。
【0060】
駆動波形発生器から発せられた信号に従って(S41)、駆動電流発生器から出力された駆動電流がコイルに流され(S42)、リニアモータ等のピストン駆動体(図示せず)にピストン駆動力が発生し、発生した駆動力によりピストン1が駆動される(S43)。一方、ピストン1の振幅中心位置(Yp )はモニタされ(S44)、予め設定されたピストン1の振幅中心基準位置(Kp )からのずれ量(ΔYp =Yp −Kp )を検出する(S45)。
【0061】
そして、検出された振幅中心位置のずれ量(ΔYp )の大きさに応じて第2の流路12を通過する最適作動媒体流量を算出する(S46)。その算出結果に基づいて、その断面積を変化させることができるようにシリンダ3に構成された第2の流路12の断面積の大きさを流量制御弁13によって変化させ、圧縮空間7aと背面空間8との間を流れる作動媒体流量を制御して変化させる(S47)。ピストン1の振幅中心位置のずれ量(ΔYp )が大きい場合には、第2の流路12の断面積を大きくすることで作動媒体流量を大きくする。また、そのずれ量(ΔYp )が小さい場合には、第2の流路12の断面積を小さくすることで作動媒体流量を小さくする。
【0062】
このように、ピストン1に第1の流路11、シリンダ3に第2の流路12を設け、その第2の流路12の断面積を可変制御可能とするようにしたので、ピストン1の振幅中心位置のずれ量の大きさに応じて、圧縮空間7aと背面空間8とを結合する微小な第1,第2の流路11,12を流れる作動媒体流量を最適に制御できる。その結果、ピストン1の振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、信頼性が高いスターリング冷凍機が得られる。
【0063】
なお、上述した第2,第4実施の形態では、流量制御弁13の開度を調整して作動媒体流量を変化させる場合について説明したが、上述した第5実施の形態または第6実施の形態のような手法によって作動媒体流量を変化させるようにしても良いことは言うまでもない。
【0064】
また、上述した各実施の形態では、シリンダ3側に設けた第2の流路12を通過する作動媒体の流量を流量制御弁13により制御する構成を示したが、ピストン1側に設けた第1の流路11を通過する作動媒体の流量を制御する構成にすることも可能であることは勿論である。また、両方の流路における流量制御を同時に行うようにしても良いことは言うまでもない。
【0065】
【発明の効果】
以上のように本発明では、ピストン,シリンダ壁面に第1の流路,第2の流路を夫々設け、ピストンが予め設定された振幅中心部に位置した場合に、第1の流路と第2の流路とが結合して第1の作動空間(圧縮空間)と背面空間とを連通する微小流路を構成するようにしており、第2の流路に作動媒体の流量を変化できる流量制御弁を備えるようにしたので、第1,第2の流路が結合された微小流路を流れる作動媒体の流量を制御することが可能となり、運転状態が変化しても、ピストンの振幅中心位置のずれを小さく抑えることができ、信頼性が高いスターリング冷凍機を得ることができる。
【0066】
また、本発明では、ピストンの往復動の振幅の大きさに応じて、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、高精度の流量制御を行うことができる。
【0067】
また、本発明では、ピストンの往復動の中心位置の基準位置からのずれ量に応じて、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、高精度の流量制御を行うことができる。
【0068】
また、本発明では、ピストンが所定位置にある場合の第1の作動空間(圧縮空間)内の作動媒体の圧力に応じて、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、高精度の流量制御を行うことができる。
【0069】
また、本発明では、弁の開閉度を変化させることにより、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、流量制御を容易に行うことができる。
【0070】
また、本発明では、第1の作動空間(圧縮空間)と背面空間との結合可能な微小流路の数を変化させることにより、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、流量制御を容易に行うことができる。
【0071】
更に、本発明では、第1の流路及び/または第2の流路の断面積を変化させることにより、微小流路を流れる作動媒体の流量を制御するようにしたので、流量制御を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスターリング冷凍機の一構成例を示す断面図である。
【図2】第2実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図3】第3実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図4】第4実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図5】第5実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図6】第6実施の形態における作動媒体の流量制御の動作を示すフローチャートである。
【図7】従来のスターリング冷凍機の一構成例を示す断面図である。
【図8】従来のスターリング冷凍機の他の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ピストン
2 ディスプレーサ
3 シリンダ
4 圧力容器
7 作動空間
7a 圧縮空間(第1の作動空間)
7b 膨張空間(第2の作動空間)
8 背面空間
11 第1の流路
12 第2の流路
13 流量制御弁
Claims (2)
- 作動媒体が充填された圧力容器と、該圧力容器内に設けられたシリンダと、該シリンダ内を往復動するピストンと、該ピストンの往復動によって作動空間内で圧縮,膨張を繰り返す前記作動媒体の働きにより駆動されるディスプレーサとを備えており、前記作動空間は、前記ピストンと前記ディスプレーサとの間に設けられた第1の作動空間と、前記ディスプレーサの前記ピストンに対向する側の反対側に設けられた第2の作動空間とを有しており、前記ピストンの前記ディスプレーサに対向する側の反対側には背面空間が設けられているスターリング冷凍機において、
前記ピストンに設けられて前記第1の作動空間と連通する第1の流路と、前記シリンダの側壁を貫通して前記背面空間と連通する第2の流路とが、前記ピストンがその往復動の中心部に存する場合に結合されて前記第1の作動空間及び前記背面空間が連通するように形成されており、前記第2の流路に前記作動媒体の流量を可変とする流量制御弁を具備し、前記ピストンの往復動の振幅に応じて前記流量制御弁の開閉度を制御することを特徴とするスターリング冷凍機。 - 前記ピストンの振幅が大きい場合に前記流量制御弁の開度を大きく、前記ピストンの振幅が小さい場合に前記流量制御弁の開度を小さく制御することを特徴とする請求項1記載のスターリング冷凍機。
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