JP3669564B2 - クラッチドラムのスナップリング溝形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の自動変速装置において使用され、底壁部と周壁部とから成るクラッチドラムの周壁部に形成された内歯スプラインの歯山部に、該周壁部の円周方向に延びるスナップリング溝を形成する、クラッチドラムのスナップリング溝形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図11及び図12に示すように、自動車の自動変速装置において使用されるクラッチドラム50は、円形の底壁部51と、該底壁部51の外周縁に形成された円筒状の周壁部52とから成る。この周壁部52の内周面には半径方向内向きに突出し周壁部52の軸方向に延びる複数の内歯スプライン53が円周方向に隔設されている。この内歯スプライン53は、周壁部52に収納されるクラッチ板55がドラム50に対して相対回転するのを防止するために形成されるものである。内歯スプライン53に対応して、クラッチ板55の外周には内歯スプライン53の歯山部54が嵌入される複数の凹部(不図示)が形成されている。周壁部52の開口端部の内周面にはスナップリング溝56が円周方向に形成され、ここにスナップリング57が装着されている。スナップリング57は、周壁部52に収納されるクラッチ板55が軸方向に移動して周壁部52から脱落するのを防止するものである。
【0003】
上記歯山部54上のスナップリング溝56は、例えば、パンチ等のリング溝形成部材を歯山部54に押し込むことにより形成する。その際、スナップリング溝56の形成に特有の現象として、スナップリング溝56が形成される歯山部54の表面部分の周囲にばりが生ずる問題がある(通常のうち抜き加工では、ばりはパンチが侵入するのとは反対側即ちワークの裏面側に生ずる)。スナップリング溝の周囲にばりが発生すると、スナップリングのスナップリング溝への装着が困難又は不確実になったり、クラッチ板の円滑な移動が妨げられることがある。そのため、このばりの発生を抑制するために、従来からスナップリング溝加工装置が開発されている。例えば、特開平10−216891号公報及び特開平8−1432144号公報に示されたスナップリング溝形成装置が知られている。
【0004】
図13及び図14は、特開平10−216891号公報に開示されたスナップリング溝形成装置の要部を示す。このスナップリング溝加工装置は、クラッチドラムの周壁部に形成された内歯スプライン61にスナップリング溝を二段階に形成するものである。即ち、図13に示すように、初めに幅の狭い(W1)第1の下型(凸型)66と上型(凹型)67との間に内歯スプライン61の歯山部61をセットし、上型67を下降させる。これにより下型66により歯山部62の内周面に下型66の幅W1に対応するくぼみ63aが形成され、歯山部62の外周面のくぼみ63aに対応する部分には突部64が形成される。次に、一旦上型67を上昇させ、図14に示すように、上記第1の下型66をこれよりも幅の広い(W2)第2の下型68と交換し、再び上型67を下降させる。これによって歯山部62に所定幅W2のリング溝63bが形成される。
【0005】
図15及び図16は、特開平8−1432144号公報に開示されたスナップリング溝形成用パンチを示す。このパンチ70は、図15に示すように、その前端部に図15に示した内歯スプライン76の歯山部77に対応する凹状の切欠き71が形成され、切欠き71内に半円形板状の刃部73が配置され、刃部73の左右両側から一対の拘束部72が前方に突出している。
【0006】
上記パンチ70で歯山部77にスナップリング装着溝78を形成する場合、図16に示すように、歯山部77をくぼみ側からダイスなど(不図示)で支持するとともに、パンチ70を歯山部77の突出側から押し込む。すると、パンチ70の前進につれて、刃部73により歯山部77上にスナップリング溝78が形成されるとともに、歯山部77の両側面におけるダレの発生が拘束部72によって抑制される。
【0007】
【発明が解決すべき課題】
しかし、上記二つの従来例にはそれぞれ以下の課題がある。
【0008】
まづ、図13及び図14に示したスナップリング溝加工装置は、第1の下型66及び第2の下型68を準備して、しかもスナップリング溝加工の途中で第1の下型66と第2の下型68を交換することが必要である。これでは、スナップリング溝を形成するための作業が煩雑になり、溝形成に時間がかかる。
【0009】
一方、上記図15及び図16に示したスナップリング溝形成用パンチ70は、刃部73と拘束部72とが何れもパンチ70に形成されている。従って、このパンチ70によるスナップリング溝形成は、工法としては刃部73による溝形成時に生ずるバリを拘束部72で押し潰すものである。しかし、このパンチ70は、刃部73が歯山部77の頂部にある程度侵入しなければ拘束部72は歯山部77の側面に強く押圧されない。しかるに、ばりは刃部73が歯山部77に侵入した時点からスナップリング溝78の周囲に発生するので、このばりを拘束部72で完全に押しつぶすことは非常に難しい。また、拘束部72は歯山部77の両側面に生ずるバリはある程度抑制できるとしても、刃部73の上下両側には拘束部は存在しないので、歯山部77の頂部付近でスナップリング溝78の高さ方向両側に発生するばりは抑制できない。
【0010】
本発明は、上記従来のスナップリング溝形成装置における課題を解決して、内歯スプラインの歯山部上にスナップリング溝が簡単に形成でき、しかもスナップリング溝の形成時におけるばりの発生が十分に抑制できるスナップリング溝形成装置を提供することを目的としてなされたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、内歯スプラインの歯山部へのスナップリング溝の形成と、歯山部上のスナップリング溝の周囲におけるばりの発生との関係について鋭意研究した。そして、上記図15及び図16に示したリング溝形成パンチ70においてばりの発生が十分に抑制できないのは、パンチ70の拘束部72が広い面積で歯山部77の側面に押圧されるので、拘束部72と歯山部77の側面との間の面圧がばりの発生を抑制するには低すぎること、及び刃部73及び拘束部72をともにパンチ70に形成したので、刃部73が歯山部77内にある程度侵入しなければ拘束部72が歯山部77の側面を拘束しないこと、に原因があるとの知見を得て、本発明を完成したのである。
【0012】
即ち、上記目的を達成するために、本発明は、底壁部と内歯スプラインが形成された周壁部とから成るクラッチドラムの該周壁部の外周面側に配置されたダイスと、該内歯スプラインの歯山部にリング溝を形成するパンチと、該クラッチドラムの内周面側に配置され該ダイスと共同して該歯山部を挟持するとともに該パンチを案内するストリッパとから成る、該クラッチドラムの周壁部の円周方向に延びるスナップリング溝形成装置であって、前記ストリッパは、前記内歯スプラインの歯山部を押圧する凹状の拘束面を有し、該拘束面は前記パンチを案内し該拘束面に開口する案内孔と、該案内孔の開口端部を区画し周囲より突出したリング状又はリングの一部から成る突壁とを有し、該ストリッパの突壁を前記歯山部に強圧することにより該歯山部を該ストリッパと該ダイスとで挟持し、この状態で該パンチを該ストリッパの拘束面より押し出して該記歯山部に前記スナップリング溝を形成することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、ストリッパのリング状の突壁を歯山部に強圧して歯山部をストリッパとダイスとで挟持した状態で、パンチをストリッパの拘束面より押し出して記歯山部にスナップリング溝を形成する。従って、スナップリング溝の形成時には、歯山部上のスナップリング溝が形成される部分の周囲のリング状部分は他の部分よりも面圧が高くなっており、スナップリング溝の縁からばり盛り上がり難い。こうして、スナップリング溝の周囲におけるばりの発生が抑制される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、クラッチドラムの周壁部の外周面を押圧するダイスは、歯山部の背後のくぼみ内に嵌入する凸状の押圧部を有することができる。その場合、押圧部はパンチに対向する部分に、スナップリング溝の形成時に歯山部の裏面から突出する突部が逃げ込むための逃げ孔を有することが望ましい。ダイスは、油圧、空気圧等を利用した流体圧式の駆動装置や、機械式の駆動装置によって駆動することができる。
【0015】
ダイスと共同して歯山部を挟持するストリッパの凹状の拘束面の断面形状は、内歯スプラインの歯山部の断面形状に対応させる。ストリッパは凹状の拘束面に向かって延びる案内孔が形成され、この案内孔は拘束面に開口している。案内孔の断面形状(幅、高さ)はパンチの断面形状に応じて選定される。開口端部を区画し、拘束面の他の部分よりも突出したリング状又はリングの一部から成る突壁の高さ、突出量は、ストリッパがダイスと協力して歯山部を挟持したとき、突壁がストリッパの他の部分よりも先に歯山部に強圧されるように選定する。例えば、突壁の高さのパンチの厚さに対する比は、1/3から1が好ましい。これにより、ストリッパの突壁と歯山部との間の面圧が他の部分よりも高くなり、スナップリング溝形成時にその周囲のリング状部分にばりが形成されるのを抑制する。突壁の頂面と拘束面とは頂面と垂直な面、テーパ面又は円弧面等で連結することができる。 尚、ストリッパは単一の部材から製作することもできるし、複数の板状部材を重ねることによっても製作できる。ストリッパを単一の部材で製作すれば部品点数が少なくて済んで製造コストが低減され、複数の板状部材で製作すれば複雑な形状の突壁でも容易に形成できる。
【0016】
パンチは、歯山部にスナップリング溝を形成するのに適した材料から成り、ストリッパの案内孔内に収納され、そのリング溝形成部がストリッパの拘束面開口部から突出する。パンチは歯山部に対向する部分に、歯山部に向かって突出した切込み部を有することができ、これによって歯山部への切込みが容易になる。
【0017】
ストリッパの突壁とダイスとで歯山部を挟持した状態でパンチをストリッパの拘束面より押し出すためには、ダイスを上記駆動装置でストリッパに向かって前進させる。その際、パンチは固定して、上記ストリッパを付勢部材によってダイスに向かう方向に付勢することが望ましい。そのような付勢手段としては、圧縮ばねや油圧、空気圧などを利用した流体圧式の駆動装置、機械式の駆動装置、又はウレタンなどから成る弾性体を利用することができる。
【0018】
なお、クラッチドラムの周壁部の内歯スプラインの歯山部は、周壁部の軸方向において開口端から底壁部と周壁部との境界部近くまで形成され、その断面形状は等脚台形、三角形又は半円形等が選択できる。スナップリング溝は、歯山部上において周壁部の開口端寄りに一本形成される。スナップリング溝の幅及び深さは、装着するスナップリングの形状との関係で決まるが、例えば一定幅で、その深さは歯山部の全高さにわたっても、歯山部の頂部から途中まで延びても良い。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例によるスナップリング溝形成装置を添付図面に基づき説明する。
<実施例>
図1から図3に本実施例のスナップリング溝加工装置が示されている。図1は加工装置の平面図で、図2は図1における2−2断面図で、図3は図1の要部の拡大斜視図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、スナップリング溝加工装置は、床部10に固定された固定部材11と、床部10上に前後動可能に裁置されたストリッパ支持部材12及びその上に取り付けられたストリッパ16と、固定部材11とストリッパ支持部材12との間に介在された圧縮ばね24と、その後端部を固定部材11に固定され、前端部がストリッパ16及びストリッパ支持部材12を貫通して延びたパンチ26と、ストリッパ16に対向して床部10上に摺動可能に裁置されたダイス28と、に大別される。以下、個々の部材について説明する。
【0021】
ストリッパ支持部材12は、その幅方向中間部に凹部13aが形成された水平部13と、該水平部13の一端から垂直に立ち上がる垂直部14とから成り、水平部12の下面を床部10に案内されて摺動可能である。水平部13の上面と垂直部14の前面(左面)とで画成される空間にストリッパが16配置されている。ストリッパ16は図1、図2及び図3に示すように左右対称で、全体として矩形板形状を有し、その幅は水平部13よりも小さく、長さはほぼ水平部13と同じで、厚さは垂直部14よりも小さい。
【0022】
ストリッパ16の前面(図1で左面)には断面等脚台形状の凹部17が形成されている。凹部17は、そのストリッパ16の前方に進むにつれて中心線lからの距離が大きくなるように傾斜した左右一対の傾斜面17aと、両傾斜面17aの底壁部を連結する底面17bとから成る。一対の傾斜面17aと底面17bとで拘束面が構成される。
【0023】
ストリッパ16は、その高さ方向の中間部に、パンチ案内孔18が前後方向(図1において左右方向)に貫通して形成されている。このパンチ案内孔18の高さは全長に亘って一定でストリッパ16の高さの1/3程度であり、幅は全長に亘って一定で凹部17の両側の一対の側部19間の距離に対応している(ストリッパ16の幅よりもわずかに小さい)。尚、上記ストリッパ支持部材12の垂直部14は、ストリッパ16のパンチ案内孔18に連続する位置に貫通孔23が形成されている。
【0024】
ストリッパ16の凹部17の傾斜面17a及び底面17b並びに凹部17の両側の側部19の前面にはリング状の突壁21がパンチ案内孔18の開口部18aの周囲から凹部17内に向かって突出して形成されている。突壁21の断面形状は、図3に示すように頂面21aと、該頂面21aと拘束面17a、17bとを連結する垂直面と21bで画成される。開口部18aの上下両側の各突壁21の高さは、パンチの厚さの1/3程度である。ストリッパ支持部材12及びストリッパ16は、これらと固定部材11との間に介装された圧縮ばね24の付勢力により常時ダイス28に向かう方向(図1で左方)に付勢され、その前進位置は床部に固定されストリッパ支持部材12の前面に当接するストッパ(不図示)により規制される。
【0025】
パンチ26は前後方向に長い矩形状の薄板から成り、この後端部26aを固定部材11に固定され、前端部26bが上記ストリッパ支持部材12の貫通孔23及びストリッパ16のパンチ案内孔18を貫通して前方に延びている。前端部26bはストリッパ16の拘束面17a、17bの開口部18aから突出可能となって、スナップリング溝形成部を構成しており、歯山部44に対向して、その幅方向中間部に小さな突起27が突設されている。
【0026】
ダイス28はその下面を床部10に案内されて前後動可能であり、油圧式の駆動装置32よって駆動される。ダイス28はストリッパ支持部材12の垂直部14と同程度の高さを有し、ストリッパ16に対向する前面(図1において右面)に、ストリッパ16の凹部17に対応する等脚台形状の凸部29が全高さに亘って形成されている。凸部29の高さ方向中間部には前記パンチ26に対向して逃げ部30が形成されている。この逃げ部30の深さは、凸部29の頂面から途中まで延び、高さはパンチ26の厚さよりも若干大きい。
【0027】
次に、本実施例のスナップリング溝形成装置内によるクラッチドラム40の歯山部44へのスナップリング溝46の形成について図1から図5を基に説明する。図4はスナップリング溝加工状態を示す平面図であり、図5は図4における5−5断面図である。
【0028】
このスナップリング加工装置により加工されるクラッチドラムを図7に示す。図7から明らかなように、クラッチラムは40は、円形の底壁部41と、その外周からほぼ垂直に立ち上がる周壁部42とから成り、周壁部42の内周面に複数の内歯スプライン43が軸方向に形成されている。内歯スプラインは交互に位置する歯山部44と歯谷部とから成る。
【0029】
クラッチドラム40のセット時には、図1及び図2に示すように、ストリッパ16はストリッパ支持部材12が圧縮ばね24により付勢されストッパ(不図示)に当接するまで前進した位置にある。このとき、パンチ26の突起27がストリッパ16の凹部17の開口部18aの付近に位置している。この状態で、駆動装置29によりダイス28を後退させ、ダイス28とストリッパ16との間にクラッチドラム40をセットする。
【0030】
次いで、駆動装置29によりダイス26を図1及び図2において右方向に前進させて、クラッチドラム40をパンチ26に向かって押圧する。それに伴い、圧縮ばね24が少し圧縮され、クラッチドラム40はダイス26とストリッパ16とによって表裏両側から挟持される。その結果、図6に示すクラッチドラム40の歯山部44の頂面44a及び一対の側面面44bのうち、スナップリング溝46が形成される部分の周囲のリング状部分47a、47bにストリッパ16の拘束面17a、17bに形成された突壁21が強く当接し、その部分の面圧が他の部分よりも高くなる。
【0031】
この状態で、ダイス28及びストリッパ16により挟持されたクラッチドラム40右方に移動すると、図3及び図4に示すように、後端部26aが固定部材11に固定されたパンチ26の先端の突起27を含む溝形成部26bがストリッパ16の拘束面17a、17bの開口部18aから突出して、クラッチドラム40の歯山部44を横切る状態で歯山部44内に侵入し、半抜き加工により歯山部44上に一本の直線溝46a(図6参照)を形成する。
【0032】
この直線溝46aは、図6に示すように、歯山部44の高さ方向において上寄り(周壁部42の開口側)に位置し、一定幅で周壁部42の円周方向に延びている。こうして一つの歯山部44に直線溝46aが形成されたならば、ダイス28を後退させてクラッチドラム40を一定角度回転し、となりの歯山部44に同様にして直線溝46aを形成する。この工程を繰り返して、全ての歯山部44に上に直線溝46aを形成することにより、クラッチドラム40の周壁部41に環状のスナップリング溝46が形成される。
【0033】
上記パンチ26による各歯山部44へのリング溝46の形成時に、歯山部44の直線溝46aの周囲のリング状部分47a、47b(図6参照))にばりが形成されることは殆んどない。その理由は、歯山部44を突出側から押圧するストリッパ16と歯山部44にリング溝46を形成するパンチ26とを別部材で構成し、その上でストリッパ16の拘束面17a、17b上の開口部18aの周りに高さの小さいリング状の突壁21を形成したからである。これにより、パンチ26のリング溝形成部分26bが歯山部44の頂部に侵入するよりも先に、ストリッパ16の拘束面17a、17b上の突壁21が歯山部44の打抜き予定部分の周囲のリング状部分47a、47bに狭い面積で強く当接して、リング状部分47a、47bの面圧が他の部分よりも高くなる。従って、歯山部44のスナップリング溝46の縁部にはばりが盛り上がろうとしても盛り難くなる。
【0034】
この実施例によれば、更に以下の効果が得られる。まづ、拘束面17a、17bに突壁21を有するストリッパ16は単一の部材から成るので、部品点数が少なくてすむ。また、パンチ26は、歯山部44の一部を打ち抜くのみでクラッチドラム40を保持しないので、打抜きに適した材料を選択でき、形状的にも平板の先端に突起27を形成したに過ぎない簡素な構成であり、製造コストを低減できる。更に、パンチ26はストリッパ16の扁平なパンチ案内孔18の壁面で上下両側から保持、案内されているので、歯山部44の半抜き時にその長手方向に圧縮力が加わっても、厚さ方向に撓むことが防止される。
<変形例>
上記実施例におけるスナップリング溝形成装置の構成要素は変形、改良が可能である。
1)ストリッパ16の変形例
拘束面にリング状の突壁を有し、ダイスと共同してクラッチドラムを挟持するストリッパは、複数の板部材から構成することもできる。即ち、図8及び図9に示すように、ストリッパ33は板厚方向に重ねた上中下三枚の板部材34、35及び36から成り、中板35の平面形状は上記ストリッパ26の平面形状よりも少し長く、上記突壁21の全高さに相当する厚さを有し、前端の凹部35aにリング状の突壁35bが形成されるとともに、厚さ方向中間部にパンチ案内孔35cが形成されている。上板34の平面形状は上記ストリッパ26の平面形状と同じとされ、凹部17と同じ等脚台形状の凹部34aが形成されている。上板34の厚さは上記ストリッパ26の全体の厚さからリング状の突壁間21の全高さを引いた値を二分したものである。下板36は上板34と全く同じ形状、大きさである。
【0035】
更に、ストリッパの拘束面から突出し、頂面と連結面とで画成される突壁21の断面形状は、図10(a)に示すように、頂面21aと拘束面17a、17bとをテーパ面38で連結することもできるし、図10(b)に示すように、頂面21aと拘束面17a、17bとを円弧面39で連結することもできる。
2)ダイス28の駆動装置の変形例
ダイス28を駆動する駆動装置は、上記実施例における油圧シリンダの代わりに、エアーシリンダを使用することもできる。また、このような流体式の駆動装置でなく、機械式駆動装置を使用することもできる。
3)圧縮ばね24の変形例
ダイス28及びストリッパ16がパンチ26に対して移動するのを許容する手段は、上記圧縮ばね24の代わりに、油圧シリンダやエアーシリンダのような流体式の駆動装置を使用したり、伸縮性料であるウレタンから成る円筒部材を使用することもできる。
【0036】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明のスナップリング溝形成装置は、クラッチドラムの歯山部を押圧するストリッパの凹状の拘束面が、パンチを案内し該拘束面に開口する案内孔と、該案内孔の開口端部を区画し周囲より突出したリング状の突壁とを有し、該突壁を歯山部に強圧することにより歯山部をストリッパとダイスとで挟持する。そして、この挟持状態でパンチをストリッパの拘束面より押し出すことにより歯山部にスナップリング溝を形成する。従って、本発明によれば、スナップリング溝形成時には、歯山部上のスナップリング溝が形成される部分の周囲のリング状部分は他の部分よりも面圧が高くなっており、スナップリング溝の縁部におけるばりの発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例(リング溝形成装置)を示す平面図である。
【図2】図1における2−2断面図である。
【図3】上記実施例におけるストリッパの斜視図である。
【図4】上記実施例におけるリング溝形成工程を示す、図1に対応する説明図である。
【図5】上記実施例におけるリング溝形成工程を示す、図2に対応する説明図である
【図6】上記実施例のリング形成装置により形成されたスナップリング溝の斜視図である。
【図7】上記第1実施例によりスナップリング溝が形成されるクラッチドラムの断面図である。
【図8】ストリッパの変形例を示す平面図図である。
【図9】図8の9−9断面図である。
【図10】(a)はストリッパの突壁の第1の変形例を示す要部断面図であり、(b)はストリッパの突壁の第2の変形例を示す要部断面図である。
【図11】クラッチドラムを示す断面図である。
【図12】クラッチドラムの周壁部の内歯スプラインを示す斜視図である
【図13】第1の従来例のスナップリング溝形成工程を示す説明図である。
【図14】上記第1の従来例のスナップリング溝形成工程を示す説明図である。
【図15】第2の従来例のスナップリング溝形成部材を示す説明図である。
【図16】上記第2の従来例のスナップリング溝形成工程を示す説明図である。
【符号の説明】
12:ワーク保持部材 13:ワーク保持部材の水平部
14:ワーク保持部材の垂直部 16:ストリッパ
17:ストリッパの凹部 17a、17b::ストリッパの拘束面
18:パンチ案内孔 18a:パンチ案内孔の開口部
21:リング状の突壁 24:圧縮ばね
26:パンチ 26b:パンチのスナップリング溝形成部
28:ダイス 30:ダイスの逃げ部
40:クラッチドラム 41:底壁部
42:周壁部 43:内歯スプライン
44:歯山部 46:スナップリング溝

Claims (5)

  1. 底壁部と内歯スプラインが形成された周壁部とから成るクラッチドラムの該周壁部の外周面側に配置されたダイスと、該内歯スプラインの歯山部にスナップリング溝を形成するパンチと、該クラッチドラムの内周面側に配置され該ダイスと共同して該歯山部を挟持するとともに該パンチを案内するストリッパとから成る、該クラッチドラムの周壁部の円周方向に延びるスナップリング溝形成装置であって、
    前記ストリッパは、前記内歯スプラインの歯山部を押圧する凹状の拘束面を有し、該拘束面は前記パンチを案内し該拘束面に開口する案内孔と、該案内孔の開口端部を区画し周囲より突出したリング状又はリングの一部から成る突壁とを有し、
    該ストリッパの突壁を前記歯山部に強圧することにより該歯山部を該ストリッパと該ダイスとで挟持し、この状態で該パンチを該ストリッパの拘束面より押し出して該歯山部に前記スナップリング溝を形成することを特徴とするクラッチドラムのスナップリング溝形成装置。
  2. 前記ストリッパは単一の部材から成る請求項1に記載のクラッチドラムのスナップリング溝形成装置。
  3. 前記ストリッパの突壁の高さの前記パンチの厚さに対する比は1/3から1である請求項2に記載のクラッチドラムのスナップリング溝形成装置。
  4. 前記ダイスは、前記内歯スプラインの歯山部の背後のくぼみを押圧する凸状の押圧部を有し、該押圧部には前記パンチに対向する部分に逃げ孔が形成されている請求項1に記載のクラッチドラムのスナップリング溝形成装置。
  5. 前記パンチは、その幅方向中間部に、該歯山部に向かって突出する切込み部を有する請求項1に記載のクラッチドラムのスナップリング溝形成装置。
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