JP3669497B2 - 送信装置、及びその自動利得制御方法 - Google Patents

送信装置、及びその自動利得制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は送信装置、及びその自動利得制御方法に関し、特に制御信号の値に応じて利得が制御される増幅手段により送信すべき無線周波数信号を増幅するとともに、出力電力レベルが一定になるように出力電力レベルに応じて前記制御信号の値を調整する自動利得制御を行う送信機と、前記送信機の出力信号を電力増幅しアンテナへ供給する送信電力増幅器とを有する送信装置と、その自動利得制御方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話などの移動通信システムにおいて、基地局送信装置は、決まった周波数帯域のある周波数を出力する送信機と、決まった周波数帯域で一定の基準利得で送信信号を増幅する送信電力増幅器で構成される。
【0003】
図4は従来の基地局送信装置の一例を示すブロック図である。図4において、送信機5は、変調出力信号S53を出力する変調信号生成部51と、変調出力信号S53を入力として制御信号S52により減衰量の制御を行い送信機5の送信出力の制御を行う可変減衰器52と、可変減衰器52により電力制御された変調出力信号S53を入力として電力増幅を行う増幅部53と、増幅部53の出力を2分配し一方を送信出力S51として出力し、他方を検波部55に出力するカプラ54と、カプラ54の出力を検波し電圧情報である検波出力S55を出力する検波部55と、検波出力S55を量子化しデジタルの送信電力データS56を出力するA/D変換部56と、送信電力データS56を第1の入力とし、送信機5の送信出力としてあらかじめ設定された基準送信電力値S58を第2の入力とし、制御信号S52を生成し可変減衰部52の制御を行う比較・制御部57とから構成される。
【0004】
送信電力増幅器6は、増幅部64で構成され、入力された送信出力S51を電力増幅してアンテナ7に出力する。
【0005】
なお、送信機5の基準送信電力値S58は、図示していない送信電力制御手段によってあらかじめ指定された送信電力範囲内で任意の値が設定されている。検波部55で検出された検波出力S55は、A/D変換部56でデジタルの送信電力データS56に変換され、比較制御部57で送信電力データS56と基準送信電力値S58の差分の検出を行い、この差分が最小になるように可変減衰器S52の減衰量を制御する制御信号S52を出力する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の送信装置において、送信電力増幅器6の増幅部64の利得は、決まった周波数帯域において一定であるのが理想だが、実際は図5に示すような周波数に応じて利得が変化する周波数特性を示す。すなわち、送信機5の送信出力S51の電力レベルが一定のために、増幅部64の送信周波数において、基準周波数に対して利得差Δβがあることで、アンテナ7の送信出力で、Δβの誤差を生じる問題があった。
【0007】
また、送信電力増幅器6の修理などで交換時に、送信機5の送信出力を調整する必要があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る送信装置は、制御信号の値に応じて利得が制御される増幅手段により送信すべき無線周波数信号を増幅するとともに、出力電力レベルが一定になるように出力電力レベルに応じて前記制御信号の値を調整する自動利得制御を行う送信機と、前記送信機の出力信号を電力増幅しアンテナへ供給する送信電力増幅器とを備える送信装置において、前記送信電力増幅器が、前記送信機からの送信出力に対する電力増幅実行時の自送信電力増幅器の利得値を測定する手段と、前記測定により得られた利得値とあらかじめ設定された基準利得値との差分を算出し、利得補正値として出力する手段とを有し前記送信機が、前記送信電力増幅器からの前記利得補正値に対応して前記制御信号の値の補正を行う手段を有する
【0009】
本発明の請求項2に係る送信装置は、請求項1に係る送信装置において、前記送信機が、送信すべき情報に対応した無線周波数の変調出力信号を出力する変調信号生成手段と、前記変調出力信号を入力として制御信号の値により減衰量の制御を行い自送信機の送信出力電力レベルの制御を行うための可変減衰手段と、前記可変減手段により電力制御された変調出力信号を入力として電力増幅を行う増幅手段と、前記増幅手段の出力を2分配し一方を送信出力として出力する分配手段と、前記分配手段の他方の出力を検波し前記送信出力の電力レベルを示すデジタルの送信電力データとして出力する送信電力測定手段と、前記送信電力データとあらかじめ設定された基準送信電力値との差分より送信電力補正値を算出し、この送信電力補正値を前記送信電力増幅器からの利得補正値で補正して前記制御信号の値を決定し前記可変減衰手段へ出力する比較・制御手段とを有する。
【0010】
本発明の請求項3に係る送信装置は、請求項2に係る送信装置において、前記比較・制御手段が、前記送信電力測定手段からの送信電力データを順次、任意の一定時間に亘って蓄積し平均化した平均送信電力データを出力する平均処理部と、平均送信電力データとあらかじめ指定された基準送信電力値との比較を行いこれらの差分値を送信電力補正値として出力する比較器と、前記送信電力補正値と前記送信電力増幅器からの利得補正値との加算を行う加算器とを有し、前記加算器の出力値が最小になるように前記制御信号の値を制御する。
【0011】
本発明の請求項4に係る送信装置は、請求項1に係る送信装置において、前記送信電力増幅器が、前記送信機からの送信出力を2分配する入力側の分配手段と、前記入力側の分配手段の一方の出力を電力増幅する増幅手段と、前記増幅手段の出力を2分配し一方をアンテナに出力する出力側の分配手段と、前記入力側の分配手段の他方の出力を検波し送信出力の入力側電力レベルを示すデジタルの送信電力データとして出力する入力側の送信電力測定手段と、前記出力側の分配手段の他方の出力を検波し送信出力の出力側電力レベルを示すデジタルの送信電力データとして出力する出力側の送信電力測定手段と、前記入力側の送信電力データと前記出力側の送信電力データの差分から自送信電力増幅器の利得を算出し、この算出した利得とあらかじめ設定された基準利得値との差分より前記利得補正値を算出し前記送信機へ出力する比較手段とを有する。
【0012】
本発明の請求項5に係る送信装置は、請求項4に係る送信装置において、前記比較手段が、前記入力側の送信電力データを順次、一時蓄積し前記増幅手段における遅延時間分に相当する遅延時間を与えるバッファと、前記バッファを通した入力側の送信電力データを順次、任意の一定時間に亘って蓄積し平均化した入力側の平均送信電力データを出力する入力側の平均処理部と、前記出力側の送信電力データを順次、任意の一定時間に亘って蓄積し平均化した出力側の平均送信電力データを出力する出力側の平均処理部と、前記バッファによりタイミング同期確立された前記入力側の平均送信電力データと前記出力側の平均送信電力データとの比較を行い自送信電力増幅器の利得値を算出する比較器と、前記比較器からの利得値とあらかじめ指定された基準利得値との差分を算出し前記利得補正値として出力する減算器とを有する。
【0013】
本発明の請求項6に係る自動利得制御方法は、制御信号の値に応じて利得が制御される増幅手段により送信すべき無線周波数信号を増幅するとともに、出力電力レベルが一定になるように出力電力レベルに応じて前記制御信号の値を調整する送信機と、前記送信機の出力信号を電力増幅しアンテナへ供給する送信電力増幅器とを有する送信装置における自動利得制御方法において、前記送信電力増幅器で、前記送信機からの送信出力に対する電力増幅実行時の自送信電力増幅器の利得値を測定し、前記測定により得られた利得値とあらかじめ設定された基準利得値との差分を算出し、利得補正値とし、前記送信機で、前記送信電力増幅器からの前記利得補正値に対応して前記制御信号の値の補正を行う工程を有する。
【0014】
本発明の請求項7に係る自動利得制御方法は、請求項6に係る自動利得制御方法において、前記送信電力増幅器に入力される無線周波数信号の一部を分配し入力側の送信電力値を算出し、前記送信電力増幅器から出力される増幅後の無線周波数信号の一部を分配し出力側の送信電力値を算出し、前記入力側の送信電力値に無線周波数信号の増幅にかかる時間分の遅延時間を与えて出力側の送信電力値と比較し、その差分を前記送信電力増幅器の利得値とする工程を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の概要を説明する。本発明は、自動利得制御回路を組み込み、無線周波数に変調された変調出力信号を増幅し一定電力レベルの出力信号として出力する送信機と、この送信機の出力を電力増幅しアンテナへ供給する送信電力増幅器とを有し、主として移動通信システムの基地局に使用される送信装置において、送信電力増幅器の利得を検出して、基準利得値に対して差がある場合、利得補正値を送信機の自動利得制御回路に出力し、送信機出力を変化させ利得補正値分の補正を行うことで、送信電力増幅器からの送信出力レベルを一定にすることを特徴としている。
【0016】
より具体的に説明すると、送信機は、生成された変調出力信号を制御信号の値(アナログ利得制御信号の電圧値)により減衰量が制御される可変減衰器を通して増幅し送信電力増幅器へ出力するとともに、出力信号をカプラで分配し、検波部及びA/D変換部でデジタルの送信電力データに変換し比較・制御部に入力する。比較・制御部は、送信電力データと基準送信電力値との差分値に応じて制御信号の値を調整して可変減衰器に出力し、送信電力増幅器への出力電力レベルが基準送信電力値と等しくなるよう自動利得制御を行う。
【0017】
一方、送信機から送信電力増幅器への入力信号は入力側のカプラで分配され、入力側の検波部及びA/D変換部でデジタルの入力側の送信電力データに変換され比較部に入力される。入力信号を増幅した送信電力増幅器からの出力信号は出力側のカプラで分配され、出力側の検波部及びA/D変換部でデジタルの出力側の送信電力データに変換され比較部に入力される。比較部は、入力側及び出力側の各送信電力データの差分から算出した送信電力増幅器の利得と基準利得値とを比較して、差分の利得補正値を送信機の自動利得制御を行う比較・制御部に出力する。利得補正値を入力された比較・制御部は、制御信号の値を補正し可変減衰器に出力する。
【0018】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施の形態を示すブロック構成図であり、移動通信システムの基地局送信装置のうち、本発明に関わる部分のみを示している。図1において、本例の送信装置は、送信すべき信号を変調した無線周波数(Radio Frequency:以降RF)信号を送信出力S11として出力する送信機1と、送信出力S11を電力増幅しアンテナ3から電波として移動局に対し送信する送信電力増幅器2とから構成される。
【0020】
送信機1は、送信すべき情報に対応した無線周波数の変調出力信号S13を出力する変調信号生成部11と、入力された変調出力信号S13に制御信号S12の値(アナログ電圧値)に対応した減衰量を与えることにより送信機1の送信出力S11に対する出力電力レベル制御を行う可変減衰器12と、可変減衰器12により電力制御された変調出力信号S13を入力として電力増幅を行う増幅部13と、増幅部13の出力を2分配し一方を送信出力S11として出力し、他方を検波部15に出力するカプラ14と、カプラ14の出力を検波し電圧情報である検波出力S15を出力する検波部15と、検波出力S15を所定のクロックタイミングで量子化しデジタルの送信電力データS16を出力するA/D変換部16と、送信電力データS16を第1の入力とし、送信機1の送信出力(電力レベル)としてあらかじめ設定された基準送信電力値S18を第2の入力とし、送信電力増幅器2から出力される利得補正値Δχを第3の入力として、制御信号S12(アナログ電圧信号)を生成し可変減衰器12の制御を行う比較・制御部17とから構成される。
【0021】
送信電力増幅器2は、送信機1の送信出力S11を2分配し一方を増幅部24に出力し、他方を検波部22に出力するカプラ21と、カプラ21の出力を検波し電圧情報である検波出力S22を出力する検波部22と、検波出力S22を所定のクロックタイミングで量子化しデジタルの送信電力データS23を出力するA/D変換部23と、カプラ21の出力を電力増幅する増幅部24と、増幅部24の出力を2分配し一方をアンテナ3に出力し、他方を検波部26に出力するカプラ25と、カプラ25の出力を検波し電圧情報である検波出力S26を出力する検波部26と、検波出力S26を所定のクロックタイミングで量子化しデジタルの送信電力データS27を出力するA/D変換部27と、送信電力データS23を第1の入力とし、送信電力データS27を第2の入力とし、送信電力増幅器2であらかじめ設定された基準利得値S29を第3の入力として、利得補正値Δχを生成し送信機1の比較・制御部17に出力する比較部28とから構成される。
【0022】
図2は、送信電力増幅器2の比較部28の一構成例を示すブロック図である。入力される送信電力データS23を順次、一時蓄積し増幅部24における信号増幅の遅延時間分に相当する遅延時間を与えるバッファ281と、バッファ281からの送信電力データS23を順次、任意の一定時間に亘って蓄積し平均化した平均送信電力データS24を出力する平均処理部282と、入力される送信電力データS27を順次、任意の一定時間に亘って蓄積し平均化した平均送信電力データS28を出力する平均処理部283と、送信電力バッファ281で蓄積することで増幅部24の入出力間でタイミング同期確立された入力側の平均送信電力データS24及び出力側の平均送信電力データS28間の比較を行い送信電力増幅器2(増幅部24)の利得値S25を算出する比較器284と、比較器284からの利得値S25及びあらかじめ指定された基準利得値S29を入力し、両者の差分である利得補正値Δχを算出し出力する演算器(減算器)285とから構成される。なお、送信電力増幅器2の基準利得値S29は、図示していない記憶手段によってあらかじめ指定された値が設定されている。
【0023】
図3は、比較・制御部17の一構成例を示すブロック図である。入力される送信電力データS16を順次、任意の一定時間に亘って蓄積し平均化した平均送信電力データS17を出力する平均処理部171と、平均送信電力データS17とあらかじめ指定された基準送信電力値S18との比較を行い送信電力補正値Δφを出力する比較器173と、送信電力補正値Δφと利得補正値Δχとの演算(加算)を行う演算器(加算器)174と、データを記憶するバッファ、及びバッファに記憶されたデータに対し入力データとの加算演算(入力データが「正」なら増加、「0」ならそのまま、「負」なら減少)を行い累積記憶させる演算器を有し、一定時間ごとの演算器174の出力を順次累積記憶し累積結果をデジタル−アナログ変換しアナログ電圧信号である制御信号S12として出力する累積機能付きD/A変換部175とから構成される。なお、送信機1の基準送信電力値S18は、図示していない送信電力制御手段によってあらかじめ指定された送信電力範囲内で任意の値が設定されている。
【0024】
次に、図1〜図3を参照して、本例の送信装置の動作について詳細に説明する。
【0025】
送信機1では、変調信号生成部11からの変調出力信号S13は、制御信号S12により減衰量が変化する可変減衰器12に入力され、電力制御を受けた後、増幅部13に入力される。増幅部13は、電力制御された変調出力信号S13を送信出力S11として、送信電力増幅器2へ出力するための電力増幅を行う。増幅部13にて電力増幅された変調出力信号S13は、カプラ14にて送信機出力S11と検波部15への出力の2つに分配される。
【0026】
検波部15は入力された信号を、包絡線検波等の手段により検波を行い、検波出力S15を出力する。検波出力S15はA/D変換部16に入力されてアナログーデジタル変換されて送信電力データS16として出力される。送信電力データS16は、比較・制御部17に入力され基準送信電力値S18と比較され、送信電力補正値Δφ(基準送信電力値S18−送信電力データS16)が算出される。送信電力補正値Δφは、増幅器13の温度による特性の変動や経年変化による出力レベルの差分である。比較・制御部17は、送信電力増幅器2からの利得補正値Δχがまだ入力されていない時点では(Δχの値が「0」のとき)、補正値Δφが最小になるように可変減衰器12の減衰量を制御する制御信号S12を出力する。利得補正値Δχが入力されたときの動作は後に説明する。
【0027】
送信電力増幅器2では、送信機出力S11は、カプラ21にて増幅部24への出力と検波部22への出力の2つに分配される。増幅部24の出力は、カプラ25にてアンテナ3への出力と検波部26への出力の2つに分配される。検波部22及び検波部26は、カプラ21及びカプラ25の出力を包絡線検波等の手段により検波を行い、検波出力S22及び検波出力S26を出力する。検波出力S22及び検波出力S26はA/D変換部23及びA/D変換部27に入力されてアナログ−デジタル変換されて送信電力データS23及び送信電力データS27として出力され、比較部28に入力される。
【0028】
比較部28に入力された送信電力データS23は、バッファ281で蓄積され、平均処理部282から平均送信電力データS24として出力される。同様に、入力された送信電力データS27は平均処理部283から平均送信電力データS28として出力される。平均送信電力データS24及び平均送信電力データS28は、比較器284に入力される。
【0029】
平均送信電力データS24は、バッファ281により増幅部24の遅延量が補正されており、平均送信電力データS28の入力とタイミング同期確立がされている。平均送信電力データS24及び平均送信電力データS28は、「平均送信電力データ対送信電力レベル」の変換テーブルに基づいてそれぞれ送信電力レベルに換算され、両送信電力レベルの差分から利得値S25が算出される。「平均電力データ対送信電力レベル」の変換テーブルは、検波部22及び検波部26で個別に持ち、検波部の検波能力による誤差を最小限にしている。
【0030】
演算器285では、利得値S25と基準利得値S29とが比較され、差分が利得補正値Δχ(基準利得値S29−利得値S25)として出力される。利得補正値Δχは、送信機1の比較・制御部17に入力される。
【0031】
比較・制御部17に入力された送信電力データS16は、平均処理部171から平均送信電力データS17として出力される。平均送信電力データS17は、送信機1であらかじめ指定された基準送信電力値S18と比較器173で比較され、差分が送信電力補正値Δφとして出力される。
【0032】
演算器174は、送信電力補正値Δφと利得補正値Δχとが入力され、送信電力補正値Δφと利得補正値Δχを加算した総合の補正値(Δφ+Δχ)のデジタルデータを出力する。出力されたデジタルデータは累積機能付きD/A変換部175で順次、加算蓄積されデジタル−アナログ変換され、制御信号S12とされる。可変減衰器12は、この制御信号S12の電圧値に応じて減衰量を制御することにより、送信機1の温度による特性の変動や経年変化による出力レベルの変動を補正し、さらに送信電力増幅器2の利得変動も補正する。
【0033】
これらの補正の状況を、表1を参照して、具体的な数値を用いて説明する。
【0034】
【表1】
Figure 0003669497
【0035】
表1の「理想」欄に示すように、基準利得値S29を40dB、基準送信電力値S18を0dBm、アンテナ3出力を+40dBmとする。また、この理想のときの送信機1の可変減衰器12(可変減衰器利得:0dB)に入力されている制御信号S12の電圧値は1V、であるとし、この状態から可変減衰器12の減衰量を1dB分減らす(可変減衰器利得:−1dB)ときの制御信号S12の電圧値は0.5Vであるとする。
【0036】
ここで仮に表1の「補正前」欄に示すように、送信機1による送信出力S11の変動がなく(実際の送信出力S11の電力レベル(送信電力値)が基準送信電力値と同じ0dBm)、送信電力増幅器2の実際の利得が39dBである場合を考える。送信電力増幅器2の利得補正値Δχは1dB(基準利得値−実際の利得=40−39)、送信機1の送信電力補正値Δφは0dB(基準送信電力値−実際の送信電力値=0−0)であり、比較・制御部17の総合の補正値(Δφ+Δχ)は、1dB(=0+1)となる。
【0037】
比較・制御部17の累積機能付きD/A変換部175は、前回までのデータ値に総合の補正値を加算し、あらかじめ設定されたデジタル−アナログの変換規則に基づいて、出力電圧(制御信号S12)が1Vから0.5Vに変化するようにする。これにより、可変減衰器12の減衰量が1dB分減らされる。
【0038】
アンテナ3出力が一時的に+39dBmになったとしても、比較・制御部17から出力される総合の補正値(Δφ+Δχ)に対応した制御信号S12により可変減衰器12の減衰量が1dB減らされ、表1の「補正後」欄に示すように、送信出力S11が+1dBmになり、アンテナ3出力は+40dBm(=1+39)が保たれる。なお、このときの送信機1の送信電力補正値Δφは−1dB(=0−1)となるが、送信電力増幅器2の利得補正値Δχは1dBのままのため、総合の補正値Δφ+Δχは0dBとなる。
【0039】
累積機能付きD/A変換部175は、前回までのデータ値に総合の補正値を加算するが、このときの総合の補正値が「0」のため、データ値は変化しない。すなわち、出力電圧(制御信号S12)は0.5Vを維持する。この状態は、総合の補正値に変化があるまで持続する。
【0040】
ところで、送信電力補正値Δφの符号が「−」であることは、送信機1の実際の送信電力値が基準送信電力値を上回っていることを示し、利得補正値Δχが入力されない状態では、可変減衰器12の減衰量を増やさなければならない。一方、利得補正値Δχの符号が「+」であることは、送信電力増幅器2の実際の利得値が基準利得値を下回っていることを示し、可変減衰器12の減衰量を減らさなければならない。そこで本発明においては上述したように、利得補正値Δχの増/減分を送信電力補正値Δφの減/増分でキャンセルするように、すなわち、送信電力補正値Δφと利得補正値Δχとを加算して得られた総合の補正値が最小(0dB)になるように可変減衰器12の減衰量を制御する自動利得制御が行われる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、送信装置の使用可能な周波数帯域において、周波数特性による利得誤差や温度による利得変動を含む送信電力増幅器の利得を検出して、基準利得値に対して差がある場合に、利得補正値を送信機に出力し、送信機出力で利得補正値の補正を行うことで、送信装置の送信出力を一定にすることができる。また、送信電力増幅器から利得補正値を出力させることにより、送信電力増幅器を含んだ送信出力の調整をすることなく、送信電力増幅器の交換が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示すブロック構成図である。
【図2】図1に示す比較部の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に示す比較・制御部の構成例を示すブロック図である。
【図4】従来の送信装置の一例を示すブロック図である。
【図5】従来の送信電力増幅器の送信出力対周波数特性を示す図である。
【符号の説明】
1 送信機
2 送信電力増幅器
12 可変減衰器
13,24 増幅部
15,22,26 検波部
16,23,27 A/D変換部
17 比較・制御部
28 比較部
171,282,283 平均処理部
173,284 比較器
174,285 演算器
175 累積機能付きD/A変換部
281 バッファ

Claims (7)

  1. 制御信号の値に応じて利得が制御される増幅手段により送信すべき無線周波数信号を増幅するとともに、出力電力レベルが一定になるように出力電力レベルに応じて前記制御信号の値を調整する自動利得制御を行う送信機と、前記送信機の出力信号を電力増幅しアンテナへ供給する送信電力増幅器とを備える送信装置において、
    前記送信電力増幅器が、前記送信機からの送信出力に対する電力増幅実行時の自送信電力増幅器の利得値を測定する手段と、前記測定により得られた利得値とあらかじめ設定された基準利得値との差分を算出し、利得補正値として出力する手段とを有し
    前記送信機が、前記送信電力増幅器からの前記利得補正値に対応して前記制御信号の値の補正を行う手段を有することを特徴とする送信装置。
  2. 前記送信機が、
    送信すべき情報に対応した無線周波数の変調出力信号を出力する変調信号生成手段と、
    前記変調出力信号を入力として制御信号の値により減衰量の制御を行い自送信機の送信出力電力レベルの制御を行うための可変減衰手段と、
    前記可変減手段により電力制御された変調出力信号を入力として電力増幅を行う増幅手段と、
    前記増幅手段の出力を2分配し一方を送信出力として出力する分配手段と、
    前記分配手段の他方の出力を検波し前記送信出力の電力レベルを示すデジタルの送信電力データとして出力する送信電力測定手段と、
    前記送信電力データとあらかじめ設定された基準送信電力値との差分より送信電力補正値を算出し、この送信電力補正値を前記送信電力増幅器からの利得補正値で補正して前記制御信号の値を決定し前記可変減衰手段へ出力する比較・制御手段とを有することを特徴とする請求項1記載の送信装置。
  3. 前記比較・制御手段が、
    前記送信電力測定手段からの送信電力データを順次、任意の一定時間に亘って蓄積し平均化した平均送信電力データを出力する平均処理部と、
    平均送信電力データとあらかじめ指定された基準送信電力値との比較を行いこれらの差分値を送信電力補正値として出力する比較器と、
    前記送信電力補正値と前記送信電力増幅器からの利得補正値との加算を行う加算器とを有し、
    前記加算器の出力値が最小になるように前記制御信号の値を制御することを特徴とする請求項2記載の送信装置。
  4. 前記送信電力増幅器が、
    前記送信機からの送信出力を2分配する入力側の分配手段と、
    前記入力側の分配手段の一方の出力を電力増幅する増幅手段と、
    前記増幅手段の出力を2分配し一方をアンテナに出力する出力側の分配手段と、
    前記入力側の分配手段の他方の出力を検波し送信出力の入力側電力レベルを示すデジタルの送信電力データとして出力する入力側の送信電力測定手段と、
    前記出力側の分配手段の他方の出力を検波し送信出力の出力側電力レベルを示すデジタルの送信電力データとして出力する出力側の送信電力測定手段と、
    前記入力側の送信電力データと前記出力側の送信電力データの差分から自送信電力増幅器の利得を算出し、この算出した利得とあらかじめ設定された基準利得値との差分より前記利得補正値を算出し前記送信機へ出力する比較手段とを有することを特徴とする請求項1記載の送信装置。
  5. 前記比較手段が、
    前記入力側の送信電力データを順次、一時蓄積し前記増幅手段における遅延時間分に相当する遅延時間を与えるバッファと、
    前記バッファを通した入力側の送信電力データを順次、任意の一定時間に亘って蓄積し平均化した入力側の平均送信電力データを出力する入力側の平均処理部と、
    前記出力側の送信電力データを順次、任意の一定時間に亘って蓄積し平均化した出力側の平均送信電力データを出力する出力側の平均処理部と、
    前記バッファによりタイミング同期確立された前記入力側の平均送信電力データと前記出力側の平均送信電力データとの比較を行い自送信電力増幅器の利得値を算出する比較器と、
    前記比較器からの利得値とあらかじめ指定された基準利得値との差分を算出し前記利得補正値として出力する減算器とを有することを特徴とする請求項4記載の送信装置。
  6. 制御信号の値に応じて利得が制御される増幅手段により送信すべき無線周波数信号を増幅するとともに、出力電力レベルが一定になるように出力電力レベルに応じて前記制御信号の値を調整する送信機と、前記送信機の出力信号を電力増幅しアンテナへ供給する送信電力増幅器とを備える送信装置における自動利得制御方法において、
    前記送信電力増幅器で、前記送信機からの送信出力に対する電力増幅実行時の自送信電力増幅器の利得値を測定し、前記測定により得られた利得値とあらかじめ設定された基準利得値との差分を算出し、利得補正値とし、
    前記送信機で、前記送信電力増幅器からの前記利得補正値に対応して前記制御信号の値の補正を行うことを特徴とする自動利得制御方法。
  7. 前記送信電力増幅器に入力される無線周波数信号の一部を分配し入力側の送信電力値を算出し、
    前記送信電力増幅器から出力される増幅後の無線周波数信号の一部を分配し出力側の送信電力値を算出し、
    前記入力側の送信電力値に無線周波数信号の増幅にかかる時間分の遅延時間を与えて出力側の送信電力値と比較し、その差分を前記送信電力増幅器の利得値とすることを特徴とする請求項6記載の自動利得制御方法。
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