JP3669186B2 - 電気光学装置、投射型表示装置及び電気光学装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学装置、投射型表示装置及び電気光学装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロジェクタなどの投射型表示装置には、所定の画像を形成するために光変調用の電気光学パネルとして液晶パネルが用いられる場合がある。この場合、光源から電気光学パネルに光を当てるための集光光学系と、電気光学パネルを透過した光をスクリーンなどの投射面に投射し、拡大画像を形成するための拡大投射光学系とが設けられ、集光光学系によって集光された光が電気光学パネルを透過して所定の画像が形成され、これが拡大投射光学系によってスクリーン等に投射される。
【0003】
投射型表示装置内においては、電気光学パネルが合成樹脂などにより形成されたケース体に収容された状態で固定される。ケース体は、装置内に設けられた設置部に対してネジ止めや接着などで固定されるようになっている。電気光学パネルには例えばフレキシブル配線基板などが導電接続され、装置内に設けられた制御系に接続される。
【0004】
また、投射型表示装置では電気光学装置に対して光源から集光光学系を通して強い光が照射されることから電気光学パネルの過熱を招きやすい。そのため、ケース体に収容された電気光学パネルなどを冷却するクーリングファンが設置され、冷却風がケース体に対して吹き付けられるように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記投射型表示装置においては、ケース体が合成樹脂により形成されることが多いことから、クーリングファンから吹き付けられる冷却風によってケース体に収容されている電気光学パネルを十分に冷却することが難しい。そのため、クーリングファンの容量を大きくする必要があり、消費電力や騒音が増大するという問題点がある。
【0006】
また、投射型表示装置に用いる電気光学パネルにおいては、フォーカス面に近いパネル基板の外面に傷や塵が付くことにより投射画像の表示品位が低下したり、電気光学パネルの過熱により表示品位が悪化する場合があるため、パネル基板の外面上に透明接着剤により別の透明基板を面接着し、基板表面を液晶層から離反させるとともに電気光学パネルの熱容量を増加させて画質の劣化を回避する方法がある。しかし、この場合、透明接着剤として硬化後も流動性を有する材質のものを用いるため、製造工程中に透明接着剤が流れ出てケース体の表面などに付着し、取り扱いが困難になるとともに電気光学パネルの光透過部分に透明接着剤が付着して製品不良が発生するなどという問題点もある。
【0007】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、電気光学パネル等の電気光学パネルをケース体に収容してなる電気光学装置において、電気光学パネルの冷却効率を高めることによって表示品位の低下を抑制することにある。また、パネル基板の外面に別の基板を面接着する場合には、接着剤の流出による取り扱い性の悪化を防止する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、第1基板と第2基板との間に電気光学物質が挟持されてなる電気光学パネルと、該電気光学パネルを収容するケース体とを備えた電気光学装置であって、前記ケース体は前記電気パネルの端面を覆う側面の少なくとも一辺に開口部を有することを特徴とする。
また、上記課題を解決するために本発明は、第1基板と第2基板との間に電気光学物質が挟持されてなる電気光学パネルと、該電気光学パネルを収容するケース体とを備えた電気光学装置であって、前記第1基板と前記第2基板のうちの少なくとも一方の基板の外面側には、第3基板が、前記外面側と前記第3基板の片面の双方に透明接着剤を塗布した後重ね合わせることにより面接着されてなり、前記ケース体の前記電気光学パネルの端面を覆う側面の少なくとも一辺であって、前記一方の基板と前記第3基板との間の接着層の端部に対向する位置に開口部を有することを特徴とする。
さらに、上記課題を解決するために本発明は、第1基板と第2基板との間に電気光学物質が挟持されてなる電気光学パネルと、該電気光学パネルを収容するケース体とを備えた電気光学装置であって、前記ケース体は前記電気パネルの端面を覆う側面のうち第1辺及び該第1辺に対向する第2辺に設けられた開口部と、前記側面の前記第1及び第2辺とは異なる第3辺において設けられた外部配線基板とを有し、前記外部配線基板の表面に対向する前記ケース体の外側支持面部に設けられた凹溝に接着剤を充填させて、前記外部配線基板を前記ケース体に接着させていることを特徴とする。
【0009】
本発明のかかる構成によれば、ケース体の側面の少なくとも一辺に開口部を設けることにより、特に電気光学パネルの電気光学物質層に近い部分がケース体の外部に開放されることになるから、電気光学パネルの放熱性が向上することになり、電気光学物質の過熱に起因する表示品位の低下を低減することができる。
【0010】
本発明は、前記開口部が、前記電気光学パネルの端面の長手方向に広く開口されていることが好ましい。開口部が電気光学パネルの平面方向に延長した形状を備えていることにより、ケース体内部の電気光学物質の広がりに応じた形状になるためにさらに放熱特性を高めることができる。
【0011】
本発明は、前記第1基板と前記第2基板のうちの少なくとも一方の基板の外面側には、接着剤により第3基板が面接着されてなり、前記開口部は、前記一方の基板と前記第3基板との間の接着層の端部に対向する位置に形成されている場合がある。この場合には、第1基板と第2基板の少なくとも一方と第3基板との接着を行う接着剤が接着面から溢れ出た場合、事前に開口部から余分の接着剤を吸引除去することが可能になる。
【0012】
本発明は、上述の電気光学装置を備えた投射型表示装置であって、設置された前記電気光学装置に向けて流体を流す冷却手段を有し、前記流体は、前記開口部を備えた前記側面に向けて若しくは前記側面に沿って流れるように構成されていることを特徴とする。この手段によれば、側面に開口部を備えたケース体に向けて冷却用の流体を流すことにより電気光学パネルの冷却を行うことができる。また、流体は開口部を備えた側面に向けて若しくは側面に沿って流れるように構成されているので、開口部を介して電気光学パネルを効率的に冷却することができる。この場合、流体としては、空気やその他の気体、水その他の液体が含まれるが、冷却手段としては空気流を送るクーリングファンなどがある。
【0013】
本発明は、第1基板及び第2基板の間に電気光学物質が挟持されてなる電気光学パネルと、該電気光学パネルを収容するケース体とを備えた電気光学装置であって、前記ケース体には、前記電気光学パネルの端面を覆う側面の外面側において段部若しくは傾斜面が形成されていることが好ましい。ケース体の側面の外面側に段部若しくは傾斜面が形成されていることにより、ケース体の側面の表面積を増大させることができ、電気光学パネルの冷却効率を高めることができる。また、流体とケース体で生じる抵抗を下げることができるため、スムーズに流体を流すことができる。ここで、傾斜面は、電気光学パネルの平面方向と垂直若しくは電気光学パネルの厚さ方向に平行な面に対して傾斜していることを意味する。
【0014】
本発明は、前記段差部若しくは傾斜面は、前記側面における前記電気光学パネルの厚さ方向に段差を有し若しくは傾斜していることが好ましい。段差部若しくは傾斜面が電気光学パネルの厚さ方向に段差を有し若しくは傾斜していることにより、流体を側面に当てても、いたずらに乱流などを発生させずにスムーズに流体を流すことができるので、流体に対する接触面積を増大させることができるとともに電気光学パネルの冷却効率を向上させることができる。
【0015】
本発明は、前記側面に向かって若しくは前記側面に沿って流れる流体の流れを円滑にするように前記傾斜面が形成されていることが好ましい。冷却風などの冷却用の流体を側面に当てる場合に、傾斜面によって流体の流れが円滑になることにより、流体に対する接触面積を増大させることができるとともに電気光学パネルの冷却効率を高めることができる。
【0016】
本発明は電気光学装置を備えた投射型表示装置であって、設置された前記電気光学パネルに向けて流体を流す冷却手段を有し、前記流体は、前記開口部を備えた前記側面に向けて若しくは前記側面に沿って流れるように構成されていることが好ましい。この場合、段差部若しくは傾斜面は流体との接触面積を増大させるので、電気光学パネルの冷却効率を高めることができる。
【0017】
本発明は前記開口部は前記側面のうち第1辺及び該第1辺に対向する第2辺に有し、前記側面の前記第1及び第2辺とは異なる第3辺において前記電気光学パネルと前記外部配線基板とが接続されていることを特徴とする。本発明のかかる構成によれば、側面のうち第1辺及び第1辺に対向する第2辺に開口部を有するため流体の流れを円滑にすることができる。
【0018】
本発明の電気光学装置の製造方法は、第1基板と第2基板との間に電気光学物質を挟持されてなる電気光学パネルと、該電気光学パネルを収容するケース体とを備え、前記ケース体には、前記電気光学パネルを収容した状態で前記電気光学パネルの端面を覆うように構成された側面の少なくとも一辺に開口部が設けられてなる電気光学装置の製造方法において、前記第1基板と前記第2基板の少なくとも一方の基板の外面に接着剤により第3基板を面接着する工程と、前記第3基板を面接着してなる前記電気光学パネルを前記ケース体に収容する工程と、前記一方の基板と前記第3基板との間の接着面外に流出される前記接着剤を前記開口部から吸引除去する工程を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の製造方法は、前記開口部は4辺を有する前記ケース体のうち第1辺及び該第1辺に対向する第2辺に有し、前記第1及び第2辺とは異なる第3辺側で前記外部配線基板に接続するために開口されてなり、前記吸引除去する工程において、前記第1及び第2辺の両方から前記接着剤を吸引することを特徴とする。かかる構成により、電気光学パネルから流出した接着剤を効率的に吸引することができる。即ち、仮にゲル状の接着剤が電気光学パネル全周に流出した場合、ケース体の一辺から接着剤を完全に吸引することはきわめて難しい。しかしながらケース体の側面の第一辺及び第一辺に対向する第2辺に開口部を設け、第1及び第2辺の両方からから吸引することにより、接着剤をスムーズに吸引することが可能である。
【0020】
本発明の製造方法において、前記開口部は前記電気光学パネルの端面の長手方向に沿って広く開口されていることが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法において、前記開口部は前記一方の基板と前記第3透明基板との間の接着面の端部にほぼ合致する位置に形成することが望ましい。かかる構成により、一方の基板と第3基板との間の接着剤が接着面から流出した場合、開口部が接着剤の端部に対向するように配置されているので、端部同士の段差により接着剤が溜まることなくスムーズに接着剤を吸引することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
[第1実施形態]
(電気光学パネルの内部構造)
まず、本実施形態における電気光学パネル10の内部構造について簡単に説明する。図1及び図2はそれぞれ電気光学パネルのより詳細な構造を示す平面図と断面図である。素子基板11の内面上には配線層、画素電極、TFTなどのアクティブ素子などがマトリクス状に形成されており、その上に配向膜(図示せず)が被着される。配向膜は所定方向にラビング処理が施されている。一方、対向基板12の内面には配向膜が形成され、同様にラビング処理が施される。このように形成された素子基板11と対向基板12はシール材14を介して貼り付けられる。。シール材14の外側の領域には、データ線駆動回路18及び実装端子19が素子基板11の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路17が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更に素子基板11の残る一辺には、走査線駆動回路17間をつなぐための複数の配線12が設けられている。シール材14としては例えば光硬化性樹脂などが用いられ、素子基板11と対向基板12との間隔を所定値(3〜10μm程度)に保持可能になる程度にアライメントをし、光照射によりシール材を硬化する。その後、例えば真空中にてシール材14の内側に開口部14aから液晶が注入される。液晶注入後、両基板の平行度が確保された状態で樹脂からなる封止材15によって開口部14aは封止され、電気光学パネルが完成する。素子基板11の一辺側端部に外部端子19を多数配列させた外部端子部11bには、フレキシブル配線基板16の接続部が異方性導電膜などを介して導電接続される。なお、遮光膜12aは対向基板12の内面上にCr等の金属により形成されたものである。また、素子基板11の内面上にも、シール材に重なる部分のすぐ内側に同様の遮光膜が形成されている。
【0024】
この電気光学パネル10において、素子基板11の外面上には透明基板31を透明接着剤30によって面接着し、対向基板12の外面上には透明基板32を透明接着剤30によって面接着されている。透明基板31は素子基板11とほぼ等しい光屈折率を備えたものであり、好ましくは素子基板11と同じ材質により形成される。透明基板32もまた対向基板12とほぼ等しい光屈折率を備えたものであり、好ましくは対向基板12と同じ材質により形成される。
【0025】
透明接着剤30は、上記素子基板11と透明基板31とを面接着する場合には素子基板11及び透明基板31とほぼ等しい光屈折率を備え、硬化後において透明な接着剤が用いられる。また、対向基板12と透明基板32とを面接着する場合にも同様に対向基板12及び透明基板32とほぼ等しい光屈折率を備え、硬化後において透明な接着剤が用いられる。
【0026】
上記透明基板31、32としては、素子基板11、対向基板12が石英基板(光屈折率=1.46)であれば同様の石英基板を用いることによって光屈折率を一致させることができる。また、透明接着剤30としては、上述のように石英基板を用いる場合には光屈折率が1.46となるように調製したシリコン系接着剤やアクリル系接着剤を用いることができる。
【0027】
もちろん、素子基板11、対向基板12がネオセラムなどの屈折率が1.54の高耐熱ガラス板であれば、透明基板31,32においても同じ材質の高耐熱ガラス板を用いればよい。また、透明接着剤30についても、上記シリコン系接着剤やアクリル系接着剤を屈折率が1.54になるように調製することができる。
【0028】
本実施形態では、素子基板11,対向基板12として、それぞれ1.2mm厚の石英基板、1.1mm厚の石英基板を用い、透明基板31,32としては、1.1mm厚の石英基板を用いている。また、透明接着剤30の厚さについては、5〜30μmの範囲とすることが好ましい。特に、接着剤の厚さを5μm以上とすることによって基板の傷や塵埃を接着剤により隠すことができる。また、10μm以下にして、接着強度を十分高いものとすることができる。
【0029】
上記電気光学パネルに透明基板31,32を面接着する工程においては、透明基板31,32の内面と、素子基板11、対向基板12の外面の双方に透明接着剤30を滴下、塗布した後、透明接着剤30同士を最初の接触点として2枚の基板を重ね合わせ、かつ、双方を押し付けることにより、基板間で透明接着剤30を押し広げ、しかる後に透明接着剤30を硬化させる。このようにすると、透明接着剤30の内部に気泡が残ることがないので、気泡に起因する表示品位の低下を避けることができる。なお、この接着工程は電気光学パネルの組み立て前後のいずれのタイミングで行ってもよい。
【0030】
ここで、上記透明接着剤は硬化後にも弾性を有していることが好ましい。なぜならば、透明接着剤の硬化後の針入度が90以上であれば硬化時に接着剤が基板上から流れてしまい、適量の接着剤を基板上に保持することができない。また、針入度が60未満であれば接着剤硬化時の応力を吸収することができず、基板間に歪みが発生してしまう。従って、透明接着剤は硬化後の針入度が60以上90未満であることが好ましい。
【0031】
(電気光学装置の構造)
図3は、図1及び図2に示すような内部構造を備えた本実施形態の電気光学装置の分解斜視図である。図3に示されるように、電気光学パネル10をパネル取付枠(ケース体)40の収容凹部41内に収容し、保持板60の嵌合片部62をパネル取付枠40の嵌合凹部43に嵌合させ、電気光学パネル10を保持させることによって電気光学装置が形成される。ここで、電気光学パネル10の素子基板11における対向基板12から外側に張り出した張出領域と、収容凹部41内の第1段差部42Aとの間にシリコンゴムなどを主成分とする接着剤を流し込み、接着剤を固化させることによって電気光学パネル10を確実にパネル取付枠40に固定することができる。このとき、電気光学パネル10の例えば透明基板32の外面が第2段差部42Bに当接して位置決めされる。
【0032】
上記接着剤は硬化後にも所定の弾性率を備えているものを選択することによって、耐衝撃性を向上させるために電気光学パネル10とパネル取付枠40との間の弾性変位を可能としつつ、充分な相互固定を行うことが可能である。この接着剤としては、ゴム系接着剤を用いることができ、例えばシリコンRTV(室温硬化型シリコンゴム)などがある。
【0033】
第1段差部42Aに形成された溜め溝42aは接着剤を第1段差部42Aと電気光学パネル10との間に充分に存在させ、接着強度を高めるとともに充分な弾性変形を許容する。
【0034】
逃げ凹部42bは、電気光学パネル10の図1に示す封止材15の盛り上がりを回避するためのものであり、パネル取付枠40への収容状態において電気光学パネル10の浮き上がりを防止する。また、内側支持面部47は外部端子部11b上に貼り付けられたフレキシブル配線基板16の導電接続部を軽く押さえるか若しくは僅かな間隔を以て導電接続部に対向し、導電接続部の剥離などを防止するためのものである。さらに、外側支持面部48はフレキシブル配線基板16を軽く抑えるか若しくは僅かな間隔を以てフレキシブル配線基板16の表面に対向し、フレキシブル配線基板16の不要な変形を抑制する。
【0035】
外側支持面部48に設けられた凹溝48aには接着剤を充填させてフレキシブル配線基板16をパネル取付枠40に接着させることも可能である。このようにすることによって、フレキシブル配線基板16とパネル取付枠40とが導電接続部よりも外側で固着されるので、導電接続部に応力が加わりにくくなり、電気光学パネルの外部端子部と導電接続部との接続部分の信頼性を向上させることができ、また、電気光学パネル10の画面ずれを低減することができる。
【0036】
電気光学パネル10の素子基板11と透明基板31及び対向基板12と透明基板32の接着に用いる透明接着剤30は、本実施形態ではシリコン系樹脂を主成分とするゲル状のものであり、流動性がきわめて高い。また、組み立て後に透明接着剤を熱硬化させるが、硬化後においても弾性を有している。従って、本実施形態では、上述のように透明接着剤が素子基板11又は対向基板12の端面と透明基板31,32の端面との間に、基板の大きさの相違に起因する段差が形成されていれば、透明接着剤はその段差部に保持され、パネル取付枠40や保持板60への流出が低減される。
【0037】
図4は本実施形態のパネル取付体40の拡大斜視図である。図4に示されるように、パネル取付枠40の4つの側面40A,40B,40C,40Dのうち、側面40Bに4つの開口部であるスリット40a,40b,40c,40dが形成されている。これらのスリットは、電気光学パネル10の端部に臨む位置に形成されており、後述するように電気光学パネル10の放熱性を高めることができる。また、仮に上記接着部から漏れ出た透明接着剤30をこれらの開口部から吸い出すことも可能である。なお、上記のスリットは他の側面40A、40C、40Dに設けても良いし、2辺以上に設けてもよい。特に2辺にスリットを設ける場合、互いに対向する辺に設けると、流体の流れをスムーズにし、冷却効果を向上させることができる。ただし、側面40Dにスリットを設ける場合には後述するクーリングファンの冷却風がどどかない場合があり、放熱効果は得られにくい。従って、スリットは40A,40C,40Dのいずれか一つあるいは複数設けることが好ましい。
【0038】
本実施形態においては、電気光学パネル10をパネル取付枠40に収容したとき、上記透明接着剤30の一部は素子基板11及び対向基板12と透明基板31,32との間の接着面から外側へ流出する場合があり、このような透明接着剤30は、スリット40a,40b,40c,40dから図示しない吸引装置などによって吸引除去することができる。従って、パネル取付体40に溝を設けることに加えて、スリットから接着剤30を吸引することにより、接着剤がパネル取付枠40の外面に流れ出ることを回避することができる。
【0039】
また、仮に透明接着剤30が上記段差部から流れ出したとしても、電気光学パネル10からパネル取付枠側に流出される透明接着剤は上述のようにフレキシブル配線基板16の導電接続部と電気光学パネル10の外部端子部との接合部分の側に導かれるため、パネル取付枠40の外面部への透明接着剤の流出をなくし、電気光学パネル10を容易に取り扱うことも可能である。
【0040】
本実施形態において、スリット40a,40b,40c,40dは電気光学パネル10の平面に沿って延長する形状に形成されており、しかもスリット40a,40cは電気光学パネル10の透明基板31との接着面に対応した高さに形成され、スリット40b,40dは電気光学パネル10の透明基板32との接着面に対向する高さに形成されているため、透明接着剤30の吸引作業が容易になるとともに、不要な透明接着剤を十分に吸い出すことが可能になる。また、スリットが、電気光学パネル10の端面の長手方向に沿って広く開口されていることにより、後述する放熱効果を高めることに効果的である。
【0041】
(投射型表示装置の構造)
次に、上記の電気光学パネルを用いた投写型表示装置である液晶プロジェクタ120の構造について図12を参照して説明する。液晶プロジェクタ120のハウジング内には、図示断面で示す光学ユニットが内蔵されており、この光学ユニットには、光源を含む照明用光学系と、光源光を赤、緑、青の各光束R,G,Bに分離する色分離光学系と、上述の電気光学装置からなる液晶ライトバルブを透過させた後に各光束R,G,Bを再合成する色合成光学系と、色分離光学系から色合成光学系へと光束を導く導光系とを備えている。
【0042】
照明用光学系には、光源ランプ121と、微小レンズの集合体からなるインテグレータレンズ122,123と、偏光分離膜と1/4波長板との集合体からなる偏光変換素子124と、反射ミラー125とが設置されている。光源ランプとしてはハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどを用いることができる。偏光変換素子124は、光軸に対して傾斜した偏光分離膜を配列させた状態に内蔵する透光板が1/4波長板に接した構造を備えており、入射光のうちS偏光は偏光分離膜を透過し、偏光分離膜にて反射されたP偏光は隣接する別の偏光分離膜にて反射されてS偏光に変換されるので、入射光をS偏光に揃えることができる。
【0043】
色分離光学系には、赤緑反射ダイクロイックミラー126が設置されており、赤緑反射ダイクロイックミラー126において光束R及びGは反射され、光束Bは透過する。反射された光束R及びGのうち、光束Gは緑反射ダイクロッイックミラー128にて反射され、光束Rは緑反射ダイクロイックミラー128を透過する。
【0044】
導光系においては、光束Bは反射ミラー127にて反射され、集光レンズ135に入射する。光束Gは緑反射ダイクロイックミラー128から直接集光レンズ134に入射する。光束Rは入射側レンズ129、反射ミラー130、中間レンズ131及び反射ミラー132を経て集光レンズ133に入射する。
【0045】
集光レンズ133,134,135の先には、それぞれ液晶ライトバルブ136,137,138が取り付けられている。これらの液晶ライトバルブは、後述する電気光学パネルをパネル取付枠に収容し、フレキシブル配線基板などの配線部材を接続させた電気光学装置によって構成され、後述するパネル取付枠を光学ユニット内の支持固定部139に対して固定することによって設置される。これらのライトバルブは、図示しない制御駆動手段(上記配線部材に導電接続される。)によって所望の画像情報に応じてスイッチングが制御され、各光束R,G,Bに対する変調を行う。
【0046】
色合成光学系では、上記液晶ライトバルブ136,137,138によってそれぞれに変調されて所定の画像成分を構成するようにされた各光束R,G,Bを3つの面にて受けるキュービック状のプリズムユニット140が設置されている。プリズムユニット140は各光束R,G,Bを合成し、所望の画像情報を含むカラー画像を構成する。このカラー画像は、投写レンズユニット141により所合成された後、図示しないスクリーン上に拡大投影される。
【0047】
上記構造の液晶プロジェクタにおいては、図3に示す電気光学装置を図12の紙面の上方から光学ユニット内の支持固定部139に当接させ、ネジ止め或いは接着などにより固定する。このとき液晶プロジェクタにおいて上方に来るのは図4に示すパネル取付枠40の側面40Dである。また、このときの電気光学装置の固定基準面は図4に示す枠面部40Eであり、この枠面部40Eが支持固定部139の側面に当接した状態に固定されることにより電気光学装置が位置決めされる。このとき、側面40Bと40Cは直交する姿勢となり、側面40Aは支持固定部139の底面に対向した状態になる。このように配置された電気光学装置の下方位置から図示しないクーリングファンにより発生する冷却風CFが電気光学装置の側面40Aに向けて吹き付けられる。
【0048】
図5は本実施形態1のパネル取付枠40の側面40Aの部分拡大図である。図5に示されるように、パネル取付枠40を支持固定部139に取り付けるための丸孔40xを備えた突出枠部40A−1と、この突出枠部40A−1に隣接し、そこから内側に引き込まれて電気光学パネル10の平面と垂直に形成された中間面部40A−2と、中間面部40A−2に隣接し、電気光学パネル10の側へ斜めに傾斜するように形成された傾斜面部40A−3とが設けられている。このように側面40Aに段差部が形成されているとともに傾斜面部40A−3が形成されていることによって、図5の上方から吹き付けられるクーリングファンの冷却風CFに対する接触面積が増大するため、電気光学パネル10の冷却効率が向上する。また、傾斜面部40A−3の存在により冷却風CFがスムーズにパネル取付枠40の外面を図示下方へ向けて流れるため、冷却風の乱れが少なくなり、冷却効果がさらに向上している。
【0049】
なお、本実施形態では、段差部や傾斜面部40A−3を有する側面40Aを冷却風CFの向かう方向に対向する側面として構成しているが、冷却風CFの向かう方向に沿って形成された側面40B,40Cに段差部や傾斜面を設けても冷却風に当たる接触面積は増大するので、同様に冷却効率の向上効果は得られる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、図6を参照して本発明に係る電気光学装置の第2実施形態について説明する。図6は第2実施形態の拡大斜視図である。この実施形態では電気光学パネル及び保持板は上記第1実施形態と同じであるが、パネル取付枠50の構造が第1実施形態とは若干異なり、異なる点のみ詳述する。パネル取付枠50は第1実施形態のパネル取付枠40と同様の収容凹部51、外側支持面部58などを備えており、また、同様の側面50A,50C,50Dや枠面部50Eが形成されている。第1実施形態と異なる点は、開口部として、側面50Bにおいて内外を貫通する丸孔50a,50bと、角孔50c,50dを備えている点である。丸孔50a,50bは側面50Bを貫通して収容凹部51に向けて開口され、角孔50c,50dは保持板60に嵌合する嵌合凹部53の部分を貫通している。
【0051】
この実施形態では、第1実施形態と同様に、丸孔50a,50b及び角孔50c,50dから透明接着剤30を吸い出すことができるとともに、丸孔50a,50bによって電気光学パネルの放熱性を高めることができる。角孔50c,50dは保持板60の嵌合片部62によって覆われることとなるが、保持板60が熱伝導性の良い金属材料などにより形成されていれば、角孔50c,50dも放熱性の向上に寄与する。尚、第1実施形態と同様に他の側面50A、50C,50Dに丸孔、角孔を設けてもよいし、2辺以上に設けてもよい。特に2辺に丸孔、角孔を設ける場合、流体の流れをスムーズにし、冷却効果を向上させることができる。
【0052】
[第3実施形態]
次に、図7を参照して本発明に係る電気光学装置の第3実施形態について説明する。図7は第3実施形態におけるパネル取付枠の側面部分の拡大部分斜視図である。この実施形態では、パネル取付枠冷却風CFが向かう側面70Aにおいて、丸孔70xが設けられた両端部を除く中央部に、パネル厚さよりも薄い端面70A−2と端面70A−2からパネルの平面方向に向かって傾斜された傾斜面部70A−1と70A−3とが形成されている。また、端面70A−2は収容される電気光学パネルの平面方向に対して略垂直に形成されている。なお、本実施形態において電気光学パネルや保持板は第1実施形態と同様であるので説明は省略する。また、図中の枠面部70Eはパネル取付枠70を支持固定部139に当接して固定する際の基準面となるものである。
【0053】
この実施形態では、冷却風CFが図示上方から吹き付けられると、冷却風CFは2つの背反した傾斜面部70A−1,70A−3に沿って流れ、冷却風CFに対する接触面積が大きくなり、また冷却風CFがスムーズに流れることとによって冷却効率が向上する。
【0054】
[第4実施形態]
次に、図8及び図9を参照して本発明に係る電気光学装置の第4実施形態について説明する。この実施形態では、電気光学パネルや保持板は上記第1実施形態と同じである。本実施形態の第1実施形態と異なる点は、パネル取付枠80の形状であり、その点について詳述する。本実施形態のパネル取付枠80の一つの側面80Aは、収容される電気光学パネルの平面に対してほぼ垂直に形成された垂直面部80A−1と、垂直面部80A−1に隣接し、内側に向けて斜めに傾斜した一対の傾斜面部80A−2とを備えている。側面80Aの両端部にはパネル取付枠80を固定するための丸孔80xが設けられ、側面80Aの延長方向の中央部には同様にパネル取付枠80を固定するための丸孔80yを備えた厚肉の中央部が形成され、一対の傾斜面部80A−2は、上記両端部と中央部との間にそれぞれ形成されている。なお、図中の枠面部80Eは支持固定部139に当接してパネル取付枠80を位置決めする基準面である。
【0055】
この実施形態においても、傾斜面部80A−2によって冷却風CFの接触面積が増大し、しかも冷却風CFの流れがスムーズになるため、冷却効率を高めることができる。また、側面80Aには、両端部と傾斜面部80A−2との間及び傾斜面部80A−2と中央部との間にそれぞれ、その延長方向に向いた段差及び冷却風CFの流れ方向に向いた段差が形成されているため、これらの段差によっても冷却風CFの接触面積が増大し、効率的に冷却される。
【0056】
[第5実施形態]
最後に、図10及び図11を参照して本発明に係る電気光学装置の製造方法の実施形態について説明する。図10は第5実施形態のパネル取付体40の側面部分の拡大部分斜視図である。本実施形態も第1実施形態と同様な構成を有し、異なる点のみ詳述する。この実施形態では、まず、図10に示すように、上記第1実施形態又は第2実施形態に示すものと同様に側面に開口部90aを備えたパネル取付枠90に上記の透明基板31,32を面接着した電気光学パネル10を収容し、次にパネル取付枠90の開口部90aに合致したノズルを備えた吸引機91をパネル取付枠90に接続して、電気光学パネル10の端部から流出される透明接着剤を開口部90aを通して吸い出し、透明接着剤が後の工程においてパネル取付枠90の外面上などに広がらない程度にパネル取付枠90内の透明接着剤の量を低減させる。その後は、上記と同様の図示しない保持板を装着して、図12に示す液晶プロジェクタの支持固定部139に取り付ける。
【0057】
また、図11(a)に示す方法は、予め、パネル取付枠90を装着した状態でその開口部90aが吸引口92aに接続されるように構成された吸引治具92を用意しておき、吸引治具92に連結されたチューブ93を図示しない吸引機に接続しておく。そして、図9と同様に電気光学パネル10をパネル取付枠90内に収容した後、吸引治具92にパネル取付枠90を装着し、透明接着剤をパネル取付枠90内から吸い出すようにするものである。
【0058】
尚、開口部90aがパネル取付枠90の側面の一辺に設けられているが、これに限らず、図11(b)に示されるように、さらにパネル取付枠90の他の辺にも開口部90a’を設けてもよい。その場合、吸引治具92にはチューブ93に加えて開口部90a’に対向してチューブ93a'を設けて図示しない吸引機に接続されるようにする。そして、図10と同様に電気光学パネル10をパネル取付枠90に収容した後、吸引治具92にパネル取付枠90を装着し、流れ出す透明接着剤をパネル取付枠90内の開口部93a及び93a'から吸い出すものである。このようにパネル枠体90の2つの対向する側面に設けた開口部93a及び93a’から接着剤を吸い出すことにより効率よく接着剤を吸引することができる。また、パネル取付枠90の側面のうちに電気光学パネル10と配線基板16とが接続される第3辺は電気光学パネルの端面を覆うように形成されていないため、第3辺からも接着剤を吸引することが可能である。
【0059】
これらの方法を採らない場合には、電気光学パネルから流出する透明接着剤が多いと電気光学パネル単体の状態において透明接着剤を吸引機などで除去し、しかる後にケース体に収容しなければならない。
本実施形態では、ケース体に電気光学パネルを収容した状態で透明接着剤の量を確認しながら透明接着剤を除去できるので、ケース体の外部に透明接着剤が漏れ出すことを確実に防止することができ、安全かつ確実に次の工程に進むことができる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ケース体の側面に開口部を設けることにより、特に電気光学パネルの電気光学物質に近い部分がケース体の外部に開放されることになるから、電気光学パネルの放熱性が向上するので、液晶の過熱に起因する表示品位の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施形態の電気光学パネルの構造を示す平面図である。
【図2】各実施形態の電気パネルの構造を示す模式的な概略断面図である。
【図3】第1実施形態の電気光学装置の構造を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る電気光学装置の第1実施形態におけるパネル取付枠の形状を示す拡大斜視図である。
【図5】第1実施形態におけるパネル取付枠の側面部分を示す拡大部分側面図である。
【図6】本発明に係る電気光学装置の第2実施形態におけるパネル取付枠の形状を示す拡大斜視図である。
【図7】本発明に係る電気光学装置の第3実施形態におけるパネル取付枠の側面部分を示す拡大部分斜視図である。
【図8】本発明に係る電気光学装置の第4実施形態におけるパネル取付枠の側面部分を示す拡大部分側面図である。
【図9】第4実施形態におけるパネル取付枠の側面部分を示す拡大部分斜視図である。
【図10】本発明に係る電気光学装置の製造方法の第5実施形態を示す工程説明図である。
【図11】(a)、(b)ともに第5実施形態の変形例を示す工程説明図である。
【図12】各実施形態を用いる投射型表示装置の内部構造を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10 電気光学パネル
11 素子基板
12 対向基板
31,32 透明基板
40,50,70,80 パネル取付枠
40A,40B,40C,40D,50A,70A,80A 側面
40A−1 突出枠部
40a−3,50a−1,50a−3,70a−2 傾斜面部
40a,40b,40c,40d スリット
Claims (6)
- 第1基板と第2基板との間に電気光学物質が挟持されてなる電気光学パネルと、該電気光学パネルを収容するケース体とを備えた電気光学装置であって、
前記ケース体は前記電気パネルの端面を覆う側面のうち第1辺及び該第1辺に対向する第2辺に設けられた開口部と、
前記側面の前記第1及び第2辺とは異なる第3辺において設けられた外部配線基板とを有し、
前記外部配線基板の表面に対向する前記ケース体の外側支持面部に設けられた凹溝に接着剤を充填させて、前記外部配線基板を前記ケース体に接着させていることを特徴とする電気光学装置。 - 第1基板と第2基板との間に電気光学物質を挟持されてなる電気光学パネルと、該電気光学パネルを収容するケース体とを備え、前記ケース体には、前記電気光学パネルを収容した状態で前記電気光学パネルの端面を覆うように構成された側面の少なくとも一辺に開口部が設けられてなる電気光学装置の製造方法において、
前記第1基板と前記第2基板のいずれか少なくとも一方の基板の外面側に接着剤により第3基板を面接着する工程と、
前記第3基板を面接着してなる前記電気光学パネルを前記ケース体に収容する工程と、
前記一方の基板と前記第3基板との間の接着面外に流出される前記接着剤を前記開口部から吸引除去する工程とを有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。 - 請求項2において、前記開口部は前記側面のうち第1辺及び該第1辺に対向する第2辺に有し、前記側面の前記第1及び第2辺とは異なる第3辺において前記電気光学パネルと前記外部配線基板とが接続されてなり、前記吸引除去する工程において、前記第1及び第2辺の開口部又は第3辺から前記接着剤を吸引することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
- 請求項2又は3において、前記開口部は前記電気光学パネルの端面に沿って長手方向に広く形成されていることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
- 請求項2から請求項4のいずれか一項において、前記開口部は前記一方の基板と前記第3基板との間の接着面の端部に対向する位置に形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
- 請求項1の電気光学装置を備えたことを特徴とする投射型表示装置。
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