JP3669069B2 - 遷移金属錯体、オレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン重合用触媒成分として有用な遷移金属錯体、オレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法に関するものである。更に詳しくは、ヘテロ原子を置換基に持つ芳香環とシクロペンタジエニル環とをヘテロ原子で連結した配位子を持つ、オレフィン重合用触媒成分として有用な遷移金属錯体、オレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
既に、メタロセン錯体を用いるオレフィン重合体の製造法については多くの報告がなされている。例えば、特開昭58−19309号公報において、メタロセン錯体とアルミノキサンを用いたオレフィン重合体の製造方法に関して報告されている。このビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド及びメチルアルミノキサンを用いた系でオレフィン重合を行うと、得られるオレフィン重合体の分子量が低いという問題があった。
【0003】
この問題点は、WO87/02370号公報において、2個のフェノキシ基を硫黄原子で連結した配位子を有する遷移金属錯体により改善されることが報告されている。しかし、その報告にある2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)チタンジクロライド及びメチルアルミノキサンを用いた系においても、特開平5−230133号公報に記載の2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)チタンジクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウム及びトリフェニルメタンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素を用いた系においても、分子量は改良されるものの、その活性は工業的観点からは低いという問題点があった。
【0004】
また特開平3−163088号公報において、シクロペンタジエニル環とアミノ基をケイ素原子で連結した配位子を有する遷移金属錯体、(tert−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランジルコニウムジクロライドが報告されている。
しかし、シクロペンタジエニル環と酸素原子を置換基に持つ芳香環を硫黄原子やリン原子で連結したものは、未だに知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況に鑑み、工業プロセスにおいてオレフィン重合用触媒成分として有用な、ヘテロ原子を置換基に持つ芳香環とシクロペンタジエニル環をヘテロ原子で架橋した配位子を有する遷移金属錯体を提供し、高活性なオレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記一般式[I]で表される遷移金属錯体、該遷移金属錯体を含有するオレフィン重合用触媒、及び該触媒を用いるオレフィン重合体の製造方法に係るものである。
(式中、Mは元素の周期律表の第4族の遷移金属原子を、Cpはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を表す。A及びGは元素の周期律表の第15、16族の原子を含有する2価の残基を表し、それらは同一でも異なっても良い。X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の置換シリル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基あるいは炭素原子数2〜40の2置換アミノ基を表す。R1 、R2 、R3 、R4 は任意に結合し環を形成しても良い。Lはルイス塩基であり、wは0〜2の整数を表す。)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。
(1)遷移金属錯体
本発明において用いる、上記の一般式[I]で表される遷移金属錯体におけるMは、元素の周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版1989)の第4族の遷移金属原子であり、好ましくは、チタニウム原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子が挙げられる。
【0008】
上記の一般式[I]で表される遷移金属錯体におけるCpはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を表し、例えばシクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、インデニル、置換インデニル、フルオレニル、置換フルオレニルなどである。具体例としては、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−プロピルシクロペンタジエニル基、iso−プロピルシクロペンタジエニル基、n−ブチルシクロペンタジエニル基、sec−ブチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、フェニルシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、インデニル基、メチルインデニル基、ジメチルインデニル基、エチルインデニル基、n−プロピルインデニル基、iso−プロピルインデニル基、n−ブチルインデニル基、sec−ブチルインデニル基、tert−ブチルインデニル基、フェニルインデニル基、トリメチルシリルインデニル基、フルオレニル基、メチルフルオレニル基、ジメチルフルオレニル基、エチルフルオレニル基、ジエチルフルオレニル基、n−プロピルフルオレニル基、ジ−n−プロピルフルオレニル基、iso−プロピルフルオレニル基、ジ−iso−プロピルフルオレニル基、n−ブチルフルオレニル基、ジ−n−ブチルフルオレニル基、sec−ブチルフルオレニル基、ジ−sec−ブチルフルオレニル基、tert−ブチルフルオレニル基、ジ−tert−ブチルフルオレニル基、フェニルフルオレニル基、ジフェニルフルオレニル基、トリメチルシリルフルオレニル基、ジトリメチルシリルフルオレニル基等が挙げられ、好ましくは、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、インデニル基、メチルインデニル基、フルオレニル基である。
【0009】
上記の一般式[I]で表される遷移金属錯体におけるA及びGは、元素の周期律表の第15、16族の原子を含有する2価の残基を表す。かかる残基の例としては、下記構造式で表される2価の基や、さらにこれらと非水素原子数1〜20の2価の基が連結したもの等が挙げられる。
(式中、R5 はハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表し、X3 は水素原子またはハロゲン原子を表す。)
【0010】
Aは好ましくは酸素原子であり、Gは好ましくは下記構造式で表される2価の基である。
(式中、R5 はハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表し、X3 は水素原子またはハロゲン原子を表す。)
【0011】
さらに好ましくは、Gは硫黄原子または下記構造式で表される2価の基である。
(式中、R5 はハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基を表し、X3 は水素原子またはハロゲン原子を表す。)
【0012】
上記の一般式[I]で表される遷移金属錯体におけるX1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のシリル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基あるいは炭素原子数2〜40の2置換アミノ基を表す。R1 、R2 、R3 、R4 は任意に結合し環を形成しても良い。
【0013】
X1 、X2 、X3 、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 がハロゲン原子である場合の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0014】
X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 における炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、neo−ペンチル基、アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−エイコシル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、アミル基である。
【0015】
これらのアルキル基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換された炭素原子数1〜20のアルキル基としては、例えばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、ジヨードメチル基、トリヨードメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、クロロエチル基、ジクロロエチル基、トリクロロエチル基、テトラクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ブロモエチル基、ジブロモエチル基、トリブロモエチル基、テトラブロモエチル基、ペンタブロモエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロペンタデシル基、パーフルオロエイコシル基、パークロロプロピル基、パークロロブチル基、パークロロペンチル基、パークロロヘキシル基、パークロロクチル基、パークロロドデシル基、パークロロペンタデシル基、パークロロエイコシル基、パーブロモプロピル基、パーブロモブチル基、パーブロモペンチル基、パーブロモヘキシル基、パーブロモクチル基、パーブロモドデシル基、パーブロモペンタデシル基、パーブロモエイコシル基などが挙げられる。
【0016】
X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 における炭素原子数7〜20のアラルキル基としては、例えばベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(4,6−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(iso−プロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(neo−ペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−テトラデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基などが挙げら、好ましくはベンジル基である。これらのアラルキル基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0017】
X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 における炭素原子数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、iso−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、neo−ペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが挙げられ、好ましはフェニル基である。
これらのアリール基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0018】
X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 における置換シリル基とは炭化水素基で置換されたシリル基であって、ここで炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基などのアリール基などが挙げられる。かかる炭素原子数1〜20の置換シリル基としては、例えばメチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの炭素原子数1〜20の1置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの炭素原子数2〜20の2置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリ−iso−プロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−iso−ブチルシリル基、tert−ブチル−ジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの炭素原子数3〜20の3置換シリル基などが挙げられ、好ましくはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基である。
これらの置換シリル基はいずれもその炭化水素基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0019】
X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 における炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、neo−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、n−オクトキシ基、n−ドデソキシ基、n−ペンタデソキシ基、n−イコソキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基である。
これらのアルコキシ基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0020】
X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 における炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基としては、例えばベンジルオキシ基、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(iso−プロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、(n−テトラデシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基などが挙げられ、好ましくはベンジルオキシ基である。
これらのアラルキルオキシ基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0021】
X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 におけるアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、iso−プロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基などの炭素数6〜20のアリールオキシ基などが挙げられる。
これらのアリールオキシ基はいずれもフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0022】
X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 における炭素原子数2〜20の2置換アミノ基とは2つの炭化水素基で置換されたアミノ基であって、ここで炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数2〜20のアルキル基、フェニル基などのアリール基などが挙げられる。かかる炭素原子数1〜10の2置換アミノ基としては、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジ−iso−プロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジ−iso−ブチルアミノ基、tert−ブチル−iso−プロピルアミノ基、ジ−n−ヘキシルアミノ基、ジ−n−オクチルアミノ基、ジ−n−デシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビストリメチルシリルアミノ基、ビス−tert−ブチルジメチルシリルアミノ基などが挙げられ、好ましくはジメチルアミノ基、 ジエチルアミノ基である。
【0023】
R1 、R2 、R3 、R4 は任意に結合して環を形成していてもよい。
【0024】
X1 、X2 として好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子である。
R2 、R3 、R4 として好ましくは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の置換シリル基である。
R1 として好ましくはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の置換シリル基である。
【0025】
上記の一般式[I]で表される遷移金属錯体におけるLはルイス塩基であり、具体例としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン等が挙げられる。wは0〜2の整数である。
【0026】
このような、一般式[I]で表される化合物の具体例としては、チオ(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(ジメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(トリメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(エチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(n−プロピルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(iso−プロピルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(sec−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(iso−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(フェニルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(メチルインデニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、
【0027】
チオ(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(ジメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(トリメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(エチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(n−プロピルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(iso−プロピルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(sec−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(iso−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(フェニルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(インデニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(メチルインデニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(フルオレニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、
【0028】
チオ(シクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(メチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(ジメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(トリメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(エチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(n−プロピルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(iso−プロピルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(n−ブチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(sec−ブチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(iso−ブチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(フェニルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(インデニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(メチルインデニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、チオ(フルオレニル)(2−フェノキシ)チタニウムジクロライド等が挙げられる。
【0029】
また、上記の具体例におけるチタニウムをジルコニウムあるいはハフニウムに変更した化合物、及びそれらを含めチオをオキソ、ジチオ、N−フェニルイミド、フェニルホスフィド、フェニルホスフィンオキサイド、またはフェニルホスフィンチオオキサイドに変更した化合物についても同様に例示できる。更に、ジクロライドをジブロマイド、ジメチル、ジエチル、ジベンジルに変更した化合物についても、同様に例示することができる。上記一般式[I]におけるLとして、テトラヒドロフランがこれらの化合物に配位結合した化合物についてもまた同様に例示できる。
【0030】
かかる一般式[I]で表される遷移金属錯体は例えば下記に示す方法で得ることができる。
即ち、フェノール性水酸基を適当な官能基(例えばアルコキシメチル基やアラルキル基等)で保護したハロゲン化フェノール化合物にMgを作用させてグリニャール試薬を得る。そしてそれとジハロゲン化リン化合物(例えば二塩化フェニルホスホン酸や二塩化フェニルホスフィン等)、次いでシクロペンタジエン骨格を有する化合物のアルカリ金属塩(例えばシクロペンタジエニルリチウムやフルオレニルリチウム等)を反応させることにより、シクロペンタジエン骨格を有する化合物と水酸基が保護されたフェノールがリン原子により架橋された種々の化合物が得られる。更に、かかる化合物のリン原子が配位不飽和の場合、種々の試剤(例えば硫黄等)を反応させることにより、リン原子が配位飽和な化合物(例えばホスフィンスルフィド基を有する化合物等)にすることもできる。そしてかかるシクロペンタジエン骨格を有する化合物と水酸基が保護されたフェノールがリン原子により架橋された種々の化合物から適当な処方で保護基を取り去り(例えば保護基がアルコキシメチル基の場合は硫酸酸性水溶液で処理する方法等)、得られたCp−リン原子−フェノール化合物に2当量のアルキルリチウム(例えばn−ブチルリチウム等)を作用させ、次いでこれと遷移金属のハロゲン化物(例えば四塩化チタン等)とを反応させることにより、遷移金属錯体が得られる。
【0031】
あるいは、先ずフェノール化合物に例えば二塩化二硫黄等の硫黄化試薬を作用させてジチオ基で架橋された二量化物を得る。フェノール性水酸基を適当な官能基(例えばトリメチルシリル基等)で保護した後、臭素等を作用させてジチオ基の硫黄−硫黄結合を切断するとともに、シクロペンタジエン骨格を有する化合物のアルカリ金属塩等と反応させ、シクロペンタジエン骨格を有する化合物と水酸基が保護されたフェノール化合物が硫黄で架橋された種々の化合物を得る。適宜保護基を取り去り、2当量のアルキルリチウムを作用させ、遷移金属のハロゲン化物と反応させることにより、遷移金属錯体が得られる。または、シクロペンタジエン骨格を有する化合物と水酸基が保護されたフェノール化合物が硫黄で架橋された化合物と、シクロペンタジエン骨格の一つの水素原子と反応をおこすことができる遷移金属化合物(例えばテトラキス(ジメチルアミド)チタニウム等)との反応により、Cp−M結合を形成させ、種々のハロゲン化剤(例えばジメチルアンモニウムクロライドや塩化水素等)で条件を変えて数回処理することにより、保護基を取り去り、Cp−M−フェノキシを含む環状構造を有する遷移金属錯体が得られる。
【0032】
(2)有機アルミニウム化合物(A)
本発明において用いる化合物(A)としては、公知の有機アルミニウム化合物が使用できる。好ましくは、(A1)一般式 E1 a AlZ3-a で示される有機アルミニウム化合物、(A2)一般式 {−Al(E2 )−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン、及び(A3)一般式 E3 {−Al(E3 )−O−}c AlE3 2 で示される構造を有する線状のアルミノキサン(但し、E1 、E2 、E3 は、炭素数1〜8の炭化水素基であり、全てのE1 、全てのE2 及び全てのE3 は同じであっても異なっていても良い。Zは水素原子またはハロゲン原子を表し、全てのZは同じであっても異なっていても良い。aは0〜3の数で、bは2以上の整数を表し、cは1以上の整数を表す。)のうちのいずれか、あるいはそれらの2〜3種の混合物を例示することができる。
【0033】
一般式 E1 a AlZ3-a で示される有機アルミニウム化合物(A1)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジ−iso−ブチルアルミニウムクロライド、ジヘキシルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムクロライド;メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、iso−ブチルアルミニウムジクロライド、ヘキシルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムジクロライド;ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−iso−ブチルアルミニウムハイドライド、ジヘキシルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド等を例示することができる。
好ましくは、トリアルキルアルミニウムであり、より好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムである。
【0034】
一般式 {−Al(E2 )−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン(A2)、一般式 E3 {−Al(E3 )−O−}c AlE3 2 で示される構造を有する線状のアルミノキサン(A3)における、E2 、E3 の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、neo−ペンチル基等のアルキル基を例示することができる。bは2以上の整数を表し、cは1以上の整数である。好ましくは、E2 及びE3 はメチル基、iso−ブチル基であり、bは2〜40、cは1〜40である。
【0035】
上記のアルミノキサンは各種の方法で作られる。その方法については特に制限はなく、公知の方法に準じて作ればよい。例えば、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウムなど)を適当な有機溶剤(ベンゼン、脂肪族炭化水素など)に溶かした溶液を水と接触させて作る。また、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリメチルアルミニウムなど)を結晶水を含んでいる金属塩(例えば、硫酸銅水和物など)に接触させて作る方法が例示できる。
【0036】
(3)化合物(B)
本発明において、化合物(B)としては、(B1)一般式 BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物、(B2)一般式 J+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )- で表されるホウ素化合物、(B3)一般式 (L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )- で表されるホウ素化合物のいずれかを用いる。
【0037】
一般式 BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物(B1)において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q3 はハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素基、1〜20個の炭素原子を含むハロゲン化炭化水素基、1〜20個の炭素原子を含む置換シリル基、1〜20個の炭素原子を含むアルコキシ基または2〜20個の炭素原子を含む2置換アミノ基であり、それらは同じであっても異なっていても良い。好ましいQ1 〜Q3 はハロゲン原子、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素基、1〜20個の炭素原子を含むハロゲン化炭化水素基である。
【0038】
一般式 BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物(B1)の具体例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等が挙げられるが、最も好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0039】
一般式 J+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )- で表されるホウ素化合物(B2)において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q4 は上記の(B1)におけるQ1 〜Q3 と同様である。また、J+ は無機または有機のカチオンである。
【0040】
一般式 J+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )- で表されるホウ素化合物(B2)の具体例としては、無機のカチオンであるJ+ には、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀陽イオンなどが、有機のカチオンであるJ+ には、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。(BQ1 Q2 Q3 Q4 )- には、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0041】
これらの具体的な組み合わせとしては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどを挙げることができるが、最も好ましくは、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0042】
一般式 (L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )- で表されるホウ素化合物(B3)において、Bは3価の原子価状態のホウ素であり、Q1 〜Q4 は上記のルイス酸(B1)におけるQ1 〜Q3 と同様である。また、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+ はブレンステッド酸である。
【0043】
一般式 (L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )- で表されるホウ素化合物(B3)の具体例としては、ブレンステッド酸である(L−H)+ には、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどが挙げられ、(BQ1 Q2 Q3 Q4 )- には、前述と同様のものが挙げられる。
【0044】
これらの具体的な組み合わせとしては、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジ−iso−プロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができるが、最も好ましくは、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、もしくは、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0045】
本発明においては、一般式[I]で表される遷移金属錯体及び化合物(A)、あるいはさらに化合物(B)を、重合時に任意の順序で投入し使用することができるが、又それらの任意の化合物の組合せを予め接触させて得られた反応物を用いても良い。
【0046】
各触媒成分の使用量は、化合物(A)/遷移金属錯体のモル比が0.1〜10000で、好ましくは5〜2000、化合物(B)/遷移金属錯体のモル比が0.01〜100で、好ましくは0.5〜10の範囲にあるように、各成分を用いることが望ましい。各触媒成分を溶液状態で使う場合の濃度については、一般式[I]で表される遷移金属錯体が、0.0001〜5ミリモル/リットルで、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットル、化合物(A)が、Al原子換算で、0.01〜500ミリモル/リットルで、好ましくは、0.1〜100ミリモル/リットル、化合物(B)は、0.0001〜5ミリモル/リットルで、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットルの範囲にあるように、各成分を用いることが望ましい。
【0047】
本発明において、重合に使用するモノマーは、炭素数2〜20個からなるオレフィン、ジオレフィン等のいずれをも用いることができ、同時に2種類以上のモノマーを用いることもできる。これらの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、5−メチル−2−ペンテン−1、ビニルシクロヘキセン等が例示されるが、本発明は上記化合物に限定されるべきものではない。共重合体を構成するモノマーの具体例としては、エチレンとプロピレン、エチレンとブテン−1、エチレンとヘキセン−1、プロピレンとブテン−1等が例示されるが、本発明は、上記化合物に限定されるべきものではない。
【0048】
重合方法も、特に限定されるべきものではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、またはメチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素を溶媒として用いる溶媒重合、またはスラリー重合、ガス状のモノマー中での気相重合、高温高圧下に超臨界流体状態にある高圧法等が可能であり、また、連続重合、回分式重合のどちらでも可能である。
【0049】
重合温度は、−50℃〜300℃の範囲を取り得るが、特に、−20℃〜250℃の範囲が好ましく、重合圧力は、常圧〜2000kg/cm2 Gの範囲を取り得るが、特に、常圧〜1000kg/cm2 Gが好ましい。重合時間は、一般的に、目的とするポリマーの種類、反応装置により適宜決定されるが、1分間〜20時間の範囲を取ることができる。また、本発明は共重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することもできる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例における重合体の性質は、下記の方法によって測定した。
【0051】
(1)極限粘度[η]:ウベローデ型粘度計を用い、130℃でテトラリン溶液中で測定した。
【0052】
(2)α−オレフィン含有量:赤外分光光度計(日本分光工業社製 IR−810)を用いて、エチレンとα−オレフィンの特性吸収より求め、1000炭素当たりの短鎖分岐数(SCB)として表した。
【0053】
(3)共重合体の融点:セイコーSSC−5200を用いて、以下の条件により測定した。
昇温:40℃から150℃(10℃/分)、5分間保持
冷却:150℃から10℃(5℃/分)、10分間保持
測定:10℃から160℃(5℃/分)
【0054】
実施例1
(1) 遷移金属錯体の合成
(1−1) 2−ブロモ−4−メチル−6−tert−ブチルフェノールの合成窒素雰囲気下、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール(20.53g,125mmol)のジメチルホルムアミド100ml溶液に、撹拌下N−ブロモスクシンイミド(22.25g,125mmol)のジメチルホルムアミド100ml溶液を0℃で滴下し、室温に昇温させ5時間撹拌を続けた。
減圧下で溶媒を除去し残さに水200mlを加え酢酸エチルで抽出した(200mlの酢酸エチルで2回抽出した。)一つにまとめた有機溶液層を飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を除去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し油状生成物を得た。以下に、その1 H−NMRスペクトルのデータを示す。NMRデータは、日本電子社製 EX−270を用いて測定した。
1H−NMR(CDCl3 ,270MHz)δ 1.39(s,9H)、2.25(s,3H)、5.62(s,1H)、7.00(s,1H)、7.15(s,1H)
【0055】
(1−2) 1−ブロモ−2−メトキシメチルオキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンゼンの合成
窒素雰囲気下、水素化ナトリウム(60%,5.20g,130mmol)の100mlTHF懸濁液に、撹拌下0℃で2−ブロモ−4−メチル−6−tert−ブチル−フェノール(23.41g,100mmol)のTHF50ml溶液を滴下した。2時間後、メトキシメチルクロリド(95%,12.71g,150mmol)のTHF20ml溶液を滴下した。室温に昇温後10時間撹拌を続けた。反応液を0℃に冷却し水100mlを加え、水層をトルエンで抽出した。(200mlのトルエンで2回抽出した。)一つにまとめた有機溶液層を飽和食塩水100mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を除去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し無色のオイルを得た。以下に、その 1H−NMRスペクトルのデータを示す。NMRデータは、日本電子社製EX−270を用いて測定した。
1H−NMR(CDCl3 ,270MHz)δ 1.41(s,9H)、2.27(s,3H)、3.68(s,3H)、5.20(s,2H)、7.08(d,1H,J=2Hz)、7.24(d,1H,J=2Hz)
【0056】
(1−3) 3−tert−ブチル−2−メトキシメチルオキシ−5−メチルフェニルマグネシウムブロマイドの合成
窒素雰囲気下、1−ブロモ−2−メトキシメチルオキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンゼン(4.31g,15mmol)のTHF30ml溶液をマグネシウム0.37g(15mmol)と0.001mgのヨウ素のテトラヒドロフラン50mlスラリー溶液に室温で滴下し、滴下終了後1時間還流させることにより、50mlTHF溶液の3−tert−ブチル−2−メトキシメチルオキシ−5−メチルフェニルマグネシウムブロマイド(15mmol)を得た。
【0057】
(1−4) (3−tert−ブチル−2−メトキシメチルオキシ−5−メチルフェニル)(フルオレン−9−イル)フェニルホスフィンオキサイドの合成
窒素雰囲気下、−78℃で二塩化フェニルホスホン酸(2.92g、15mmol)のTHF50ml溶液に、撹拌下50mlTHF溶液の3−tert−ブチル−2−メトキシメチルオキシ−5−メチルフェニルマグネシウムブロマイド(15mmol)を滴下し、室温に昇温させ2時間撹拌を続けた。生成溶液を−78℃に冷却し、50mlTHF溶液の9−フルオレニルリチウム(15mmol)を滴下し、室温に昇温後12時間撹拌を続けた。飽和塩化アンモニウム水溶液50mlを加え反応を停止させ、有機層を分離し、水槽をトルエンで抽出した(トルエン50mlで2回抽出した)。有機層を一つにし飽和食塩水50mlで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を除去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し黄白色結晶0.55gを得た。
1H一NMR(CDC13 、270MHz)δ1.58(s,9H)、2.19(s,3H)、3.75(s,3H)、5.22(d,1H,J=4Hz)、5.76(d,1H,J=27Hz)、6.24(d.1H.J=4Hz)、6.72(d,2H,J=8Hz)、6.76(dd,2H,J=12,1Hz)、6.92(dt,2H,J=8.3Hz)、7.05(dd,1H,J=8,7Hz)、7.2−7.4(m,4H)、7.45(dd,2H,J=12,2Hz)、7.57(d,1H,J=8Hz)、8.11(dd,1H,J=7,2Hz)
融点234〜236℃
このデータから、得られた黄白色結晶を下記構造式の(3−tert−ブチル−2−メトキシメチルオキシ−5−メチルフェニル)(フルオレン−9 −イル)フェニルホスフィンオキサイドと同定した。
【0058】
(1−5) (3−tert−プチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(フルオレン−9−イル)フェニルホスフィンオキシドの合成
(3−tert−プチル−2−メトキシメチルオキシ−5−メチルフェニル)(フルオレン−9−イル)フェニルホスフィンオキシド1 .7gをクロロホルム100mlに溶解し、メタノール(10ml)、水(10ml)および硫酸(1ml)の混合溶液を加えて、室温で8時間撹絆した。
その後、10%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、次いで減庄留去して、得られた残掩査に水150m1を加え、クロロホルム10m1を用いる抽出処理を2回行い、得られた有機層を合わせて、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフ処理して、下記構造式の(3−tert−プチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(フルオレン−9−イル)フェニルホスフィンオキシド1.31gを得た。
1H一NMR(CDC13 、270MHz)δ1.25(s,9H)、1.92(s,3H)、5.11(d,1H,J=20Hz)、5.89(dd,1H,J=13,2Hz)、6.78(dd,1H,J=8,1Hz)、7.02(d,1H,J=2Hz)、7.07(ddd,1H,J=8,8,1Hz)、7.21(ddd,1H,J=8,8,1Hz)、7.33(ddd,2H,J=7,7,7Hz)、7.5−7.6(m,3H)、7.66(ddd,3H,J=7,7,7Hz)、7.82(dd,1H,J=11,2)、7.85(dddd,1H,J=11,1,1,1Hz)、11.14(s,1H)
融点237〜240℃
【0059】
(1−6) フェニルホスフィンオキサイド(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)(テトラヒドロフラン)チタニウムジクロライドの合成
窒素雰囲気下、0℃で(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)(フルオレン−9−イル)フェニルホスフィンオキサイド(0.226g,0.5mmol)のジエチルエーテル20ml溶液に、撹拌下1.72mol/lヘキサン溶液のn−ブチルリチウム(0.6ml,1mmol)を滴下し、徐々に室温に昇温し12時間撹拌を続けた。生成する白色沈殿を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し白色粉末を得た。これにTHF10mlを加えフェニルホスフィンオキサイド(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジリチウムのTHF溶液とした。
別の反応容器中、四塩化チタンの1mol/lトルエン溶液(0.5ml,0.5mmol)を10mlの凍結(−196℃)THFに加えた。混合物を−78℃に昇温し黄色溶液を得た。この溶液に前述のフェニルホスフィンオキサイド(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)(フルオレニル)ジリチウムのTHF溶液を滴下し、12時間撹拌を行いつつ溶液を室温に昇温させた。
生成する濃赤色溶液から溶媒を除去し、残さをトルエンで抽出した。母液を濃縮しn−ヘキサン10mlを加え、沈殿物を濾別しn−ヘキサンで洗浄を行いオレンジ色粉末0.10gを取得した。その 1H−NMRスペクトルデータを以下に示す。NMRデータは日本電子社製 EX−270を用いて測定した。
1H−NMR(C6 D6 ,270MHz)δ 1.42(m,4H)、1.80(s,9H)、2.02(m,3H)、4.10(m,4H)、5.75(d,1H,J=26Hz)、6.31(dd,1H,J=12,1Hz)、6.70−7.16(m,4H)、7.69(dd,1H,J=7,1Hz)
これらの 1H−NMRデータから、得られたオレンジ色粉末を下記構造式のフェニルホスフィンオキサイド(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)(テトラヒドロフラン)チタニウムジクロライドと同定した。収率は32%であった。
【0060】
(2) 重合
内容積0.4リットルの撹拌機付きオートクレーブを真空乾燥してアルゴンで置換後溶媒としてトルエン170ml、α−オレフィンとしてヘキセン−1を30ml仕込み、反応器を80℃まで昇温した。昇温後、エチレン圧を12kg/cm2 に調節しながらフィードし、系内が安定した後、トリ−iso−ブチルアルミニウム1.0mmolを投入し、続いて上記の(1)で合成したフェニルホスフィンオキサイド(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)(テトラヒドロフラン)チタニウムジクロライド5.0μmolを投入し、続いてトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート15.0μmolを投入した。80℃に温度を調節しながら、30分間重合を行った。 重合の結果、SCB=14.3、[η]=6.69、融点が117.1℃であるエチレン−ヘキセン−1共重合体を、チタニウム1molあたり、1時間当たり、5.72×105 g製造した。
【0061】
比較例1
(1) 重合
内容積400mlの撹拌機付きオートクレーブを真空乾燥してアルゴンで置換後溶媒としてトルエン170ml、α−オレフィンとして、ヘキセン−1を30ml仕込み、反応器を80℃まで昇温した。昇温後、エチレン圧を6kg/cm2 に調節しながらフィードし、系内が安定した後、トリエチルアルミニウム0.25mmolを投入し、続いてWO87/02370号公報及び特開平5−230133号公報に記載の方法により合成した2,2’−チオビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)チタニウムジクロライド5.0μmolを投入し、続いてトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート15.0μmolを投入した。80℃に温度を調節しながら60分間重合を行った。
重合の結果、SCB=26.1、[η]=3.78、融点が116.8℃であるエチレン−ヘキセン−1共重合体を、チタニウム1molあたり、2.9×104 g製造した。
【0062】
実施例2
(1−1) ビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノール)−1−ジスルフィドの合成
窒素雰囲気下、撹拌機を備えたシュレンク管中で、二塩化二硫黄8.49g(26.3mmol)をヘキサン40mlに溶かし、そこへ2−tert−ブチル−p−クレゾール18.49g(51.8mmol)のヘキサン溶液20mlを、氷冷下に30分かけて加えた。そして室温にて6時間撹拌を続けた。その後、溶媒を減圧留去し、黄色の固体10.62gを得た。この黄色固体をヘキサン20mlに溶かし冷却すると薄黄色の析出固体と黄色の溶液に分かれたので、この黄色溶液を分別し、溶媒を減圧留去し、黄色固体8.4gを得た。これをシリカゲルカラム(Merck社 シリカゲル60)にヘキサン−ベンゼン混合溶液(ヘキサン:ベンゼン=5:1)で展開し、留分の溶媒を除去することによって精製した。黄色の固体3.47gを得た。その 1H−NMR(CDCl3 溶媒)のデータを以下に示す。NMRデータは、Bruker社製 AC−200(200MHz)を用いて測定した。
δ 1.37(s,9H)、2.19(s,3H)、6.53(s,1H)、6.99(d,1H)、7.11(d,1H)
さらに、13C−NMR(CDCl3 溶媒)のデータを以下に示す。
δ 20.51、29.38、35.03、120.63、129.07、131.39、133.92、136.31、153.20
これらの 1H−、13C−NMRデータから、得られた黄色固体を下記構造式のビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノール)−1−ジスルフィドと同定した。収率は34.4%であった。
【0063】
(1−2) ビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノール−トリメチルシリルエーテル)−1−ジスルフィドの合成
窒素雰囲気下、撹拌機を備えたシュレンク管中で、ビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノール)−1−ジスルフィド3.33g(8.45mmol)をTHF30mlに溶かし、そこへクロロトリメチルシラン2.20ml(17.4mmol)を加え氷冷した。さらにトリエチルアミン2.4ml(17.2mmol)を加え、ゆっくりと室温に戻し、室温で2時間撹拌した。薄黄色の懸濁溶液になった後、溶媒を減圧留去し、薄黄色固体を得た。この薄黄色固体をエーテル50mlに溶かし、その溶液を蒸留水20mlで2回、飽和食塩水20mlで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで2時間乾燥し、濾過した。濾液の溶媒を減圧留去し、黄色固体4.31gを得た。その 1H−NMR(CDCl3 溶媒)のデータを以下に示す。NMRデータは、Bruker社製 AC−200(200MHz)を用いて測定した。
δ 0.37(s,9H)、1.36(s,9H)、2.19(s,3H)、7.04(d,1H)、7.10(d,1H)
この 1H−NMRデータから、得られた黄色固体を下記構造式のビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノール−トリメチルシリルエーテル)−1−ジスルフィドと同定した。収率は、94.5%であった。
【0064】
(1−3) 3−tert−ブチル−5−メチル−チオシクロペンタジエニル−2−フェノールトリメチルシリルエーテルの合成
窒素雰囲気下、撹拌機を備えたシュレンク管中で、ビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノール−トリメチルシリルエーテル)−1−ジスルフィド388.9g(0.728mmol)を塩化メチレン1.0mlに溶かし、臭素123.3mg(0.772mmol)を加えた。3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノール−トリメチルシリルエーテル−1−スルフェニルブロマイドが生成する。この溶液をシクロペンタジエニルナトリウム塩194.4mg(2.21mmol)のTHF溶液2mlに、−50℃で少しづつ加えた。ゆっくり室温に戻し、室温で5時間撹拌した。溶媒を減圧留去し茶褐色固体620.7mgを得た。これを塩化メチレン30mlに溶かして濾過し、濾液の溶媒を減圧留去し、茶褐色固体518.2mgを得た。これをシリカゲルカラム(Merck社 シリカゲル60)を通し、ヘキサン−ベンゼン混合溶媒(ヘキサン:ベンゼン=5:1)で展開し、留分の溶媒を減圧除去することによって精製した。赤色固体26.5mgを得た。その 1H−NMR(CDCl3 溶媒)のデータを以下に示す。
NMRデータは、Bruker社製 AC−200(200MHz)を用いて測定した。
δ 0.365(s,9H)、1.38(s,9H)、2.23(s,3H)、2.93(m,1H)、3.06(m,1H)、5.99−6.19(m,1H)、6.29(m,1H)、6.43(m,1H)、7.07(br,2H)
この 1H−NMRデータから、得られた赤色固体を下記構造式の3−tert−ブチル−5−メチル−チオシクロペンタジエニル−2−フェノールトリメチルシリルエーテルと同定した。収率は7.0%であった。
【0065】
(1−4) (6−tert−ブチル−4−メチル−2−トリメチルシロキシ−フェニルチオ)(シクロペンタジエニル)(トリスジメチルアミド)チタニウムの合成
撹拌機を備えたシュレンク管中に、トルエン8mlに、テトラキス(ジメチルアミド)チタニウム50mg(0.223mmol)と、3−tert−ブチル−5−メチル−チオシクロペンタジエニル−2−フェノールトリメチルシリルエーテル54.5mg(0.164mmol)を加え、そこへトルエン8mlを真空下で移動させた。この溶液を50℃で2時間、室温で4時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、褐色タールが95mg得られた。そのタールの、 1H−NMR(C6 D6 溶媒)を、Bruker社製 AC−200(200MHz)を用いて測定した。そのデータを以下に示す。
δ 0.575(s,9H)、1.46(s,9H)、2.05(s,3H)、3.14(s,18H)5.94(t,2H)、6.14(t,2H)、6.86(d,1H)、6.99(d、1H)
この 1H−NMRデータから、得られたタールを下記構造式の(6−tert−ブチル−4−メチル−2−トリメチルシロキシ−フェニルチオ)(シクロペンタジエニル)(トリスジメチルアミド)チタニウムと同定した。収率は100%であった。
【0066】
(1−5) (6−tert−ブチル−4−メチル−2−トリメチルシロキシ−フェニルチオ)(シクロペンタジエニル)(ジメチルアミド)チタニウムジクロライドの合成
撹拌機を備えたシュレンク管中に、(6−tert−ブチル−4−メチル−2−トリメチルシロキシ−フェニルチオ)(シクロペンタジエニル)(トリスジメチルアミド)チタニウム270mg(0.505mmol)とジメチルアンモニウムクロライド123mg(1.51mmol)を加え、そこへジクロロメタン8mlを真空下で移動させた。この溶液を−20℃で4時間、室温で2時間撹袢した。その後、溶媒を減圧留去し、褐色タールが303mg得られた。そのタールの、 1H−NMR(CDCl3 溶媒)を、Bruker社製 AC−200(200MHz)を用いて測定した。そのデータを以下に示す。
δ 0.324(s,9H),1.37(s,9H),2.24(s,3H),6.17,(t,2H)6.51(t,2H),7.17(d,1H),7.28(d,1H)
この 1H−NMRデータから、得られたタールを下記構造式の(6−tert−ブチル−4−メチル−2−トリメチルシロキシ−フェニルチオ)(シクロペンタジエニル)(ジメチルアミド)チタニウムジクロライドと同定した。収率は100%であった。
【0067】
(1−6) (6−tert−ブチル−4−メチル−2−トリメチルシロキシ−フェニルチオ)(シクロペンタジエニル)チタニウムトリクロライドの合成
撹拌機を備えたシュレンク管中の、乾燥された塩化水素を含むクロロホルム15mlに、(6−tert−ブチル−4−メチル−2−トリメチルシロキシ−フェニルチオ)(シクロペンタジエニル)(ジメチルアミド)チタニウムジクロライド270mg(0.505mmol)を0℃で加えた。この溶液を0℃で30分、室温で2時間撹拌した。この懸濁液をセライトを用いて濾過した。その後、溶媒を減圧留去し、褐色タールが303mg得られた。そのタールの、 1H−NMR(CDCl3 溶媒)を、Bruker社製 AC−200(200MHz)を用いて測定した。そのデータを以下に示す。
δ 1.40(s,9H),2.31(s,3H),3.88(s,3H),6.67(t,2H),6.78(t,2H),7.26(d,1H),7.31(d,1H)
この 1H−NMRデータから、得られたタールを下記構造式の((6−tert−ブチル−4−メチル−2−トリメチルシロキシ−フェニルチオ)(シクロペンタジエニル)チタニウムトリクロライドと同定した。収率は100%であった。
【0068】
(1−7) チオ(シクロペンタジエニル)(6−tert−ブチル−4−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドの合成
撹拌機を備えたシュレンク管中の、乾燥された塩化水素を含むジエチルエーテル15mlに、(6−tert−ブチル−4−メチル−2−トリメチルシロキシ−フェニルチオ)(シクロペンタジエニル)チタニウムトリクロライド88.4mg(0.182mmol)を0℃で加えた。この溶液を0℃で1分、室温で16時間撹拌した。この懸濁液をセライトを用いて濾過した。その後、溶媒を減圧留去し、褐色タールが46.0mg得られた。そのタールの、 1H−NMR(CDCl3 溶媒)を、Bruker社製 AC−200(200MHz)を用いて測定した。そのデータを以下に示す。
δ 1.45(s,9H),2.25(s,3H),6.17(t,2H),6.92(t、2H),7.21(d,1H),7.26(d,1H)
この 1H−NMRデータから、得られたタールを下記構造式の(チオ(シクロペンタジエニル)(6−tert−ブチル−4−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドと同定した。収率は67.0%であった。
【0069】
(2) 重合
実施例1(2)と同様にエチレンとヘキセン−1を重合することにより、エチレン−ヘキセン−1共重合体を得ることができる。
【0070】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、第15、16族ヘテロ原子を置換基に持つ芳香環とシクロペンタジエニル環を第15、16族の原子を含む2価の残基で連結した配位子を持つ、工業プロセスにおいてオレフィン重合用触媒成分として有用な遷移金属錯体が得られる。また該錯体を含有する触媒を用いて、高分子量で、組成分布の狭いオレフィン重合体、特に線状低密度ポリエチレンを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の理解を助けるためのフローチャート図である。本フローチャート図は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明は、何らこれに限定されるものではない。
Claims (13)
- 下記一般式[I]で表されることを特徴とする遷移金属錯体。
(式中、Mは元素の周期律表の第4族の遷移金属原子を、Cpはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を表す。A及びGは元素の周期律表の第15、16族の原子を含有する2価の残基を表し、それらは同一でも異なっても良い。X1 、X2 、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の置換シリル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基あるいは炭素原子数2〜40の2置換アミノ基を表す。R1 、R2 、R3 、R4 は任意に結合し環を形成しても良い。Lはルイス塩基であり、wは0〜2の整数を表す。) - 一般式[I]で表される遷移金属錯体において、Mがチタニウム原子、ジルコニウム原子あるいはハフニウム原子であることを特徴とする請求項1記載の遷移金属錯体。
- 一般式[I]で表される遷移金属錯体において、Aが酸素原子であることを特徴とする請求項1記載の遷移金属錯体。
- 一般式[I]で表される遷移金属錯体において、Gが硫黄原子であることを特徴とする請求項1記載の遷移金属錯体。
- 一般式[I]で表される遷移金属錯体において、R1 がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアラルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の置換シリル基であることを特徴とする請求項1記載の遷移金属錯体。
- 一般式[I]で表される遷移金属錯体において、X1 及びX2 がハロゲン原子であることを特徴とする請求項1記載の遷移金属錯体。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の遷移金属錯体、及び下記化合物(A)よりなることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
(A)下記化合物(A1)〜(A3)のいずれか、あるいはそれらの2〜3種の混合物
(A1)一般式 E1 a AlZ3-a で示される有機アルミニウム化合物
(A2)一般式{−Al(E2)−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン
(A3)一般式 E3 {−Al(E3)−O−}c AlE3 2で示される構造を有する線状のアルミノキサン
(式中、E1 〜E3 は炭素数1〜8の炭化水素基であり、全てのE1 、全てのE2 及び全てのE3 は同じであっても異なっていても良い。Zは水素原子またはハロゲン原子を表し、全てのZは同じであっても異なっていても良い。aは0〜3の数で、bは2以上の整数を表し、cは1以上の整数を表す。) - 請求項1〜8のいずれかに記載の遷移金属錯体、下記化合物(A)及び(B)よりなることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
(A)下記化合物(A1)〜(A3)のいずれか、あるいはそれらの2〜3種の混合物
(A1)一般式 E1 a AlZ3-a で示される有機アルミニウム化合物
(A2)一般式{−Al(E2)−O−}b で示される構造を有する環状のアルミノキサン
(A3)一般式 E3 {−Al(E3)−O−}c AlE3 2で示される構造を有する線状のアルミノキサン
(式中、E1 〜E3 は炭素数1〜8の炭化水素基であり、全てのE1 、全てのE2 及び全てのE3 は同じであっても異なっていても良い。Zは水素原子またはハロゲン原子を表し、全てのZは同じであっても異なっていても良い。aは0〜3の数で、bは2以上の整数を表し、cは1以上の整数を表す。)
(B)下記化合物(B1)〜(B3)のいずれか
(B1)一般式 BQ1 Q2 Q3 で表されるホウ素化合物
(B2)一般式 J+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )- で表されるホウ素化合物
(B3)一般式 (L−H)+ (BQ1 Q2 Q3 Q4 )- で表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q1 〜Q4 はハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素原子数1〜20の置換シリル基、炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基または炭素原子数1〜20の2置換アミノ基であり、それらは同じであっても異なっていてもよい。J+ は無機または有機のカチオンである。Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+ はブレンステッド酸である。) - 化合物(A)がトリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムまたはメチルアルミノキサンであることを特徴とする請求項9あるいは10記載のオレフィン重合用触媒。
- 請求項9〜11のいずれかに記載のオレフィン重合触媒を用いることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
- オレフィン重合体がエチレン−α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項12記載のオレフィン重合体の製造方法。
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