JP3667840B2 - 熱交換用パイプの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱交換用のパイプに関し、特にその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒートパイプや冷凍機の凝縮器あるいは蒸気タービンのコンデンサ等の各種熱交換用パイプでは、蒸気が保有する熱をその壁面で奪うことによって熱交換するので、壁面の状態が性能を決定する一要因とされる。
【0003】
その一例として、ほぼ垂直に立設されたヒートパイプを下端部側を加熱部として動作させた場合には、上方の凝縮部で液化した作動流体はコンテナの壁面を伝わって流下する。通常、このコンテナは作動流体との濡れ性の良い材料で形成されてはいるものの、作動流体は幾筋かの流れとなりやすくコンテナの壁面全体に膜状に広がることは殆んどない。そのために、蒸発部のうち作動流体が溜っている部分より上側の部分での作動流体が蒸発する面積が狭くなり、この点で熱輸送能力が制限を受けている。また、特にコンテナの周方向における均熱特性が損なわれる問題が生じる。
【0004】
そこで従来、上記の課題を解決するための手段が種々開発されており、その一例として、ヒートパイプのコンテナの内壁面に溶射皮膜を形成して粗面化することが知られている(特願平6−235909号)。コンテナの内面が粗面化された上記のヒートパイプによれば、コンテナの表面が粗面化されていない場合に比べて、液相の作動流体が2倍ないし3倍程度の薄い膜状に広げられつつ流下するので、コンテナ内面の広範囲に作動流体が供給される。そのため、局部的な放熱ムラが発生せず、しかもコンテナ壁面と作動流体との接触面積が大きいことから、作動流体の蒸発量が増大し、ひいてはヒートパイプとしての熱輸送量が増大する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のヒートパイプではその製造手順として、まず金属テープの一面に溶射を施して粗面化させた後に、その金属テープの両側縁部を中空状態に湾曲させつつ、その側縁部同士をシーム溶接等の手段により接合するから、粗面部の一部が帯状の溶接ビードによって覆われてしまう。そして、当然、この溶接ビードは粗面化されていないため、この部分では液相の作動流体は液膜状に広がらずに筋状に流下してしまう。その結果、上記のヒートパイプにおいても、放熱ムラの発生ならびに熱輸送能力の低下を完全には解消することができなかった。またこの傾向は、コンテナの全面積に対する溶接ビードの面積の割合が大きい小径のヒートパイプに顕著であった。
【0006】
このように、金属テープの側縁部同士を溶接する上記の製造方法では、管の内壁面を全域に亘っては粗面化し得ないことから、完成する各種熱交換用パイプには種々の不都合が生じていた。
【0007】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、熱交換用パイプの内面全域を粗面化することのできる製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は上記の目的を達成するために、金属テープを所定方向に送り出しつつその側縁部を次第に湾曲させて中空状態に形成するとともに、その突き合わせた両側縁部同士を溶接によって接合して管状体を形成し、ついで、その管状体の内面に溶射を施して粗面化させ、さらに、その管状体を所定長さに切断する熱交換用パイプの製造方法において、前記金属テープの送り方向での前記両側縁部の突き合わせ開始点より後方側の開口部から前記管状体の内部に溶射トーチを挿入・配置するとともに、前記両側縁部の溶接開始点よりも前記金属テープの送り方向での前方側で前記管状体の内面に溶射を実施することを特徴とするものである。
【0009】
またこの発明では、金属テープの両側縁部を湾曲させる以前に、その金属テープのうちの被溶射面にブラスト加工を施してもよい。
【0010】
上記の製造方法によれば、円筒状の金属テープの側縁部同士を溶接する工程の後に、その内面を粗面化させる溶射工程が実施されるから、管状体の内面のうちの素地面のみならず溶接部分についても粗面化でき、すなわち、管状体の内面全域を粗面化することが可能になる。
【0011】
また特に、ブラスト加工を金属テープに施せば、溶射皮膜と金属テープとの密着性がよくなり、耐久性が向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図1ないし図3に示す具体例に基づいて説明する。図1はヒートパイプ用の管材を製造するパイプ製造ラインの全体を示す概略図であり、図2は溶射工程を詳細に示す概略図である。また、図3は熱交換用パイプの一例としてのヒートパイプの完成体を示す図である。図1においてパイプ製造ライン1には、管材の材料となる長尺の金属テープ2を巻き取ったテープ送出し機3とブラスト装置4と、プラズマ溶射装置20とシーム溶接機5とが備えられている。
【0013】
前記プラズマ溶射装置20の溶射トーチ21は、段階的に湾曲加工される途中の金属テープ2の開口部50、すなわち図1でのシーム溶接機5よりも左側から筒状の金属テープ2および管状体11の内部に中心軸線に沿って、これらに接触しないように挿入・配置されている。また特に、その溶射トーチ21のうちの噴射口22を備えた先端部は、図1でのシーム溶接機5よりも右側に位置している。そして、本具体例のプラズマ溶射装置20では、溶射トーチ21がその中心軸線に沿って回転しながら溶射粉末を噴射するように構成されている。
【0014】
ここで、前記テープ送出し機3を駆動させれば、金属テープ2が所定速度で図1での右方向に繰り出される。なお、金属テープ2の素材としては、銅やステンレス鋼等のヒートパイプのコンテナ材料として一般的な金属が採用されている。この金属テープ2の上面には、ブラスト装置4を利用したサンドブラスト加工が施される。この工程は、後述の溶射工程に対するいわゆる前処理であって、金属テープ2と溶射皮膜との密着性を向上させるために行われる。
【0015】
より具体的には、粒径20〜500μm程度のケイ砂を金属テープ2にほぼ垂直に衝突させて、金属テープ2の表面に微細な凹凸を多数形成し、いわゆるマット状に粗面化させる。なお、ブラスト加工としては、前述のサンドブラスト法に限定されず、ケイ砂の代わりにスティールグリッドを被加工物に衝突させるグリッドブラスト法なども採用することができる。
【0016】
ブラスト加工が施された金属テープ2は、洗浄工程8に送られ、表面に付着した粉体や残留ケイ砂等の異物が除去される。その金属テープ2は、更にロール成形工程9に送られる。その工程において金属テープ2は、上面すなわち被ブラスト加工面が管の内側となるように徐々に湾曲するように加工しつつ送り出されることによって、その両側縁部10同士が突き合わされ、あるいは所定の幅で重なりながら、ついには完全な円筒状に形成される。その円筒形の金属テープ2は更に送り出され、両側縁部10同士の接合部が溶接ポイントPにおいてシーム溶接機5によって順次溶接される。その結果、管状体11が形成される。なお、管状体11の内面には、側縁部10同士の接合部に沿った溶接ビード(図示せず)が形成される。
【0017】
その管状体11は、更に送り出されるとともに、プラズマ溶射装置4によって内面に溶射が施される。この場合、溶射トーチ21が管状体11の内周面に向けて回転しつつ溶射粉末を噴射しており、また管状体11は一定方向に継続して送り出されている。さらに、管状体11に対して溶射トーチ21が溶射粉末を噴射する位置が前記溶接ポイントPに対して管状体11(金属テープ2)の送り出し方向での前方側に位置しているから、管状体1の内面は、被ブラスト加工面はもちろん溶接ビードの上面を含んだほぼ全域が溶射皮膜7によって覆われる。
【0018】
これらの溶射皮膜7の表面は、微細な凹凸が多数形成されており、金属テープ2のうち素地面はもちろん被ブラスト面と比較しても粗くなっている。なお、金属テープ2が予めブラスト処理されているから、溶射皮膜7を良好に形成することができる。また、ここで使用される溶射材料としては、セラミックスや金属あるいはそれらを混合したサーメット等のいずれでも良いが、それ自体が熱伝導性および耐熱性に優れ、かつ金属テープ2への付着性が良く、しかも長期に亘って作動流体と接触させても溶解しないものが好ましい。さらに、溶射方法としては、前述のプラズマ溶射法に限定されず、ガス溶射法やアーク溶射法なども採用することができる。
【0019】
溶射皮膜7が形成された金属テープ2は、冷却・洗浄工程10に送られ、所定の温度まで冷却されるとともに、表面に付着した残留溶射粉末等の異物が除去される。つぎにその管状体11は、適当な長さで切断されるとともに、図示しないヒートパイプ化工程に送られて、両端部を端板などで密閉されるとともに、内部に真空脱気した状態でアルコールや水等の凝縮性流体が作動流体(図示せず)として封入されヒートパイプ化される。このヒートパイプ化のための方法・工程は、従来知られている方法・工程を採用することができる。なお、コルゲート型のヒートパイプとする場合には、ヒートパイプ化工程に送られる以前の管状体11の時点で、コルゲート加工をすればよい。
【0020】
上述の手順によって製造されたヒートパイプ14(図3参照)を、例えば垂直に立設させ、かつその下端部分を蒸発部として動作させた場合には、蒸発部における入熱により作動流体が蒸発し、その蒸気は圧力の低い凝縮部に流動し、そこで熱を奪われて凝縮する。一方、凝縮した作動流体は、コンテナ15の内壁面である溶射皮膜上を伝わって重力により蒸発部側に流下する。前述のように溶射皮膜7の表面は、金属テープ2の素地面に比べて粗面化されており、またその溶射皮膜7が被溶接部6を含んだコンテナ15の全域に施されているから、作動流体は素地面の表面を濡らしている場合に比べて約2倍ないし3倍程度に表面積が拡大される。すなわち、作動流体が溶射皮膜7の表面に薄く膜状に広げられ、コンテナ15の周方向にほぼ均等に作動流体が分散される。したがって、特にコンテナ15の周方向における放熱ムラが発生しない。
【0021】
以上のようにして蒸発部の全体に分散させられた作動流体は、それぞれの箇所で再度加熱されて蒸発し、熱輸送を行う。したがって作動流体の蒸発が生じる面積、すなわち実効蒸発部面積が広くなるので、作動流体の蒸発量が多くなって熱輸送量に優れたものとなる。
【0022】
上記のように、この発明の製造方法は、溶接ポイントPよりも金属テープ2の送り方向での前方側で溶射を実施するから、溶接ビードの上面に対しても溶射皮膜7を形成することができ、換言すれば、コンテナ15の内面のほぼ全域に亘って粗面化し得るから、均熱特性と熱輸送力との両方に優れるヒートパイプ14を効率よく製造することができる。
【0023】
なお、上記の実施例では、管状体11の内面の全域に均一に溶射皮膜6を形成したが、この発明は上記の実施例に限定されるものではなく、管状体11の送り速度を速めるとともに、トーチ21の回転速度を遅くすることによって、溶射皮膜7を螺旋状に形成してもよい。その場合には、金属テープ2の素地面が溝として作用してコンテナ15の周方向に作動流体が分散される。また、上記具体例ではヒートパイプ14を例示したが、蒸気タービンのコンデンサや冷凍機の凝縮器等の他の熱交換用パイプにも適用することができる。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、金属テープの送り方向での両側縁部の突き合わせ開始点より後方側の開口部から管状体の内部に溶射トーチを挿入・配置するとともに、両側縁部の溶接開始点よりも金属テープの送り方向での前方側で管状体の内面に溶射を実施するから、内面のうち両側縁部同士の接合部分についても粗面化された熱交換用パイプを得ることができる。
【0025】
また、金属テープの両側縁部を湾曲させる以前に、その金属テープのうちの被溶射面にブラスト加工を施せば、溶射皮膜と金属テープとの密着性がよくなるから、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パイプ製造ラインを示す概略図である。
【図2】管状体に溶射が施される状態を一部切り欠いて示す概略図である。
【図3】この発明に係るヒートパイプを一部切り欠いて示す図である。
【符号の説明】
2…金属テープ、 7…溶射皮膜、 10…側縁部、 11…管状体、 14…ヒートパイプ、 21…溶射トーチ、 50…開口部。

Claims (2)

  1. 金属テープを所定方向に送り出しつつその側縁部を次第に湾曲させて中空状態に形成するとともに、その突き合わせた両側縁部同士を溶接によって接合して管状体を形成し、ついで、その管状体の内面に溶射を施して粗面化させ、さらに、その管状体を所定長さに切断する熱交換用パイプの製造方法において、
    前記金属テープの送り方向での前記両側縁部の突き合わせ開始点より後方側の開口部から前記管状体の内部に溶射トーチを挿入・配置するとともに、前記両側縁部の溶接開始点よりも前記金属テープの送り方向での前方側で前記管状体の内面に溶射を実施することを特徴とする熱交換用パイプの製造方法。
  2. 前記金属テープの前記両側縁部を湾曲させる以前に、該金属テープのうちの被溶射面にブラスト加工を施すことを特徴とする請求項1に記載の熱交換用パイプの製造方法。
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