JP3665402B2 - デジタル形保護継電器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力系統の例えば変圧器保護に用いられるデジタル形保護継電器に係り、特に変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故に対しては確実に動作するようにしたデジタル形保護継電器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図21は、この種の変圧器保護用のデジタル形差動継電器(以下、差動リレーと称する)を電力用変圧器に適用した場合の構成例を示す回路図である。
【0003】
図21において、電力系統電源Gには、遮断器CBを介して、被保護対象である電力用変圧器(以下、単に変圧器と称する)Trが接続されている。
【0004】
また、変圧器Trを挟んで、各相毎の交流電流を抽出する主変流器CT1,CT2が設けられている。
【0005】
さらに、主変流器CT1,CT2により抽出された交流電流I1 ,I2 を差動リレー1に導入し、変圧器Trの内部事故時に動作して遮断器CBを遮断することにより、変圧器Trが保護されるようになっている。
【0006】
図22は、従来の差動リレー1の内部構成例を示す機能ブロック図である。なお、ここでは、デジタルリレーの中央演算処理部(CPU)において実行される演算処理を機能ブロック図として示している。
【0007】
図22において、差動リレー1は、入力変成器2と、アナログ/デジタル変換器(以下、A/D変換器と称する)3と、中央演算処理部(以下、CPUと称する)4とからなっている。
【0008】
入力変成器2は、主変流器CT1,CT2により抽出された交流電流I1 ,I2 を、適当な大きさに変換するものである。
【0009】
また、A/D変換器3は、入力変成器2により変換された交流電流I1 ,I2 を一定時間間隔でサンプリング(一般には、定格周波数50kHzで4.8kHzの高速サンプリング)し、デジタル量に変換するものである。
【0010】
さらに、CPU4は、A/D変換器3により変換されたデジタル量を用いてデジタル演算処理を行ない、変圧器Trの保護指令を遮断器CBに出力するものである。
【0011】
すなわち、CPU4では、デジタル量に変換された電気量I1 ,I2 を用いて、以下のようなデジタル演算処理を行なう。
【0012】
5はCPU4でデジタル演算処理される差動保護要素(以下、単に差動要素と称する)、6はCPU4でデジタル演算処理される第2調波検出要素(以下、単に2f要素と称する)である。
【0013】
まず、差動要素5において、振幅値演算部11,12は、電気量I1 ,I2 各々から基本波分1fを抽出して、振幅値|I1 |,|I2 |を求める。
【0014】
また、スカラー和(以下、抑制電流と称する)演算部13は、振幅値|I1 |,|I2 |のスカラー和(抑制電流=抑制量)Σ|I|を求める。
【0015】
一方、ベクトル和(以下、差動電流と称する)演算部14は、電気量I1 とI2 のベクトル和(差動電流=動作量)Idを求める。
【0016】
また、振幅値演算部15は、差動電流Idから基本波電流1fを抽出して、振幅値|Id1f|を求める。
【0017】
さらに、差動判定演算部16は、抑制電流Σ|I|と差動電流|Id1f|との関係が所定値以上になった時に、内部事故と判定して出力を生じる。
【0018】
一方、2f要素6において、振幅値演算部17は、差動電流Idから第2調波電流2fを抽出して、振幅値|Id2f|を求める。
【0019】
また、2f判定演算部18は、差動電流Idに含有される基本波電流1fと第2調波電流2fとの関係が所定値以上になった時に、励磁突入電流と判定して出力を生じる。
【0020】
一方、2f要素6の2f判定演算部18の出力をNOT演算回路19により反転させた出力と、差動要素5の差動判定演算部16の出力との論理積(AND)演算を論理積演算回路20で行ない、この論理積演算回路20の出力を差動リレー1の出力として送出する。
【0021】
かかる構成の差動リレー1において、交流電流I1 ,I2 は、入力変成器2を通して、A/D変換器3によりデジタル量に変換された後、差動要素5に導入される。
【0022】
差動要素5に導入された電気量I1 ,I2 は、振幅値演算部11,12を通して、抑制電流演算部13により抑制電流Σ|I|を導出すると共に、差動電流演算部14により差動電流Id=I1 +I2 を導出する。
【0023】
この差動電流Idは、1fが振幅値演算部15および2f要素6に各々導入される。
【0024】
この場合、負荷電流および外部事故時の通過電流による差動電流Idは零となり、電力用変圧器Trの内部事故時には事故電流に応じた差動電流Idが発生する。
【0025】
振幅値演算部15から出力された差動電流Idの1fの振幅値|Id1f|と、抑制電流Σ|I|は、各々差動判定演算部16に導入され、|Id1f|−AΣ|I|≧B(A、Bは定数)の関係となった時に、変圧器内部事故と判定して差動要素5が出力を生じる。
【0026】
一方、2f要素6に導入された差動電流Idは、振幅値演算部17に導入され、差動電流Idから第2調波電流2fを抽出して2f振幅値|Id2f|を出力し、2f判定演算部18に導入される。また、この2f判定演算部18には、差動要素5にて演算された1f振幅値|Id1f|も導入され、差動電流Idに含有される基本波電流1fに対する第2調波電流2fの度合(|Id2f|/|Id1f|)が所定値以上になった時に、励磁突入電流と判定して2f要素6が出力を生じる。そして、この2f要素6が動作すると、その出力はNOT演算回路19を通して差動要素5の出力を阻止(ロック)するため、差動リレー1としての動作を防止することができる。
【0027】
次に、変圧器励磁突入電流対策の必要性について簡単に説明する。
【0028】
いま、図21における遮断器CBを閉路することにより、変圧器Trに電圧が印加されて、変圧器鉄心の磁化特性に基づく励磁突入電流が流れる。この励磁突入電流は、見掛け上、変圧器Trの内部事故のように、電力系統電源G側より流入し、差動リレー1の動作量(差動電流Id)となるため、差動リレー1の誤動作(事故でないのに動作する)の原因となる。
【0029】
従って、励磁突入電流と実際の事故による電流とを区別する必要があり、その方法として、励磁突入電流に第2調波電流2fが多く含まれる特徴から、差動電流Idに含まれる基本波電流1fに対する第2調波電流2fの割合が所定値(一般には15%程度が良く用いられる)以上の時には、励磁突入電流と判定して出力する2f要素6により、差動要素5の出力をロックして、差動リレー1の誤動作を防止するようにしている。
【0030】
前述したように、従来の変圧器保護においては、差動電流により変圧器の事故を検出する差動リレーが用いられており、変圧器励磁突入電流によって差動リレー1が誤動作しないように、励磁突入電流に含まれる第2調波電流を検出し、その含有率が所定値以上となった時に、リレー動作を阻止する2f要素6を備えたものが採用されている。
【0031】
しかしながら、近年では、1000kV送電や500kV長距離地中ケーブルの導入計画が進んでおり、このため、電力系統の静電容量が大きくなって共振周波数が低下し、事故電流に含まれる第2調波近傍の高調波電流が増加することが予想されている。
【0032】
その結果、従来の第2調波電流検出方式を採用した差動リレー1では、変圧器内部事故時においても、2f要素6が動作して、差動リレー1が誤不動作(過剰ロックにより事故があるのに動作できない)となる可能性がある。
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の差動リレーにおいては、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対して、その内部事故時に確実に動作することができない可能性があるという問題があった。
【0034】
本発明の目的は、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故に対しては確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を提供することにある。
【0035】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングしてデジタル量に変換し、当該変換されたデジタル量を用いて各相毎の差動電流を演算し、当該演算された差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたデジタル形保護継電器において、
まず、請求項1に対応する発明では、演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、かつ当該求められた偏差値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、励磁突入電流対策要素の出力により、差動保護要素の出力を阻止するようにしている。
【0036】
また、請求項2に対応する発明では、演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、かつ当該求められた偏差値と当該偏差値を求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大値偏差値Dmax との比(D/Dmax )が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、励磁突入電流対策要素の出力により、差動保護要素の出力を阻止するようにしている。
【0037】
さらに、請求項3に対応する発明では、演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、かつ当該求められた偏差値と演算された差動電流の大きさを示す量Iとの比(D/I)が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、励磁突入電流対策要素の出力により、差動保護要素の出力を阻止するようにしている。
【0038】
一方、請求項4に対応する発明では、演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、かつ当該求められた標準偏差σの値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間遅延する第1の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、励磁突入電流対策要素の出力により、差動保護要素の出力を阻止するようにしている。
【0039】
また、請求項5に対応する発明では、演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、かつ当該求められた標準偏差σと当該標準偏差σを求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大偏差値σmax との比(σ/σmax )が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、励磁突入電流対策要素の出力により、差動保護要素の出力を阻止するようにしている。
【0040】
さらに、請求項6に対応する発明では、演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、かつ当該求められた標準偏差σと演算された差動電流の大きさを示す量Iとの比(σ/I)が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、励磁突入電流対策要素の出力により、差動保護要素の出力を阻止するようにしている。
【0041】
一方、請求項7に対応する発明では、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、差動保護要素の出力の送出を条件に第2の判定手段の動作を起動し、また当該差動保護要素の出力の復帰を条件に第2の判定手段の動作を停止するように励磁突入電流対策要素を構成すると共に、差動保護要素の出力を所定時間動作遅延する動作遅延手段を付加し、励磁突入電流対策要素の出力により、動作遅延手段の出力を阻止するようにしている。
【0042】
また、請求項8に対応する発明では、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、差動保護要素の出力を所定時間動作遅延する動作遅延手段と、差動保護要素の出力と励磁突入電流対策要素の出力との論理積を演算する第1の論理積演算手段とを付加し、第1の論理積演算手段の出力により、動作遅延手段の出力を阻止するようにしている。
【0043】
一方、請求項9に対応する発明では、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、演算された差動電流の大きさが一定値以上変化した時に出力を生じる第3の判定手段、および当該第3の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第2の復帰遅延手段を有する電流変化幅検出要素を備え、電流変化幅検出要素の出力の送出を条件に励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を起動し、また当該電流変化幅検出要素の出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を停止するようにしている。
【0044】
また、請求項10に対応する発明では、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、デジタル量に変換された各端子の導入電気量のうちのいずれかの端子電流または全ての端子電流の大きさが一定値以上変化した時に出力を生じる第3の判定手段、および当該第3の判定手段の出力を各々所定時間遅延する第2の復帰遅延手段を有する複数の電流変化幅検出要素を備え、各々の電流変化幅検出要素のうちの少なくとも1つ以上の電流変化幅検出要素の出力の送出を条件に励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を起動し、また当該各々の電流変化幅検出要素の全ての出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を停止するようにしている。
【0045】
さらに、請求項11に対応する発明では、上記請求項9または請求項10に対応する発明のデジタル形保護継電器において、電流変化幅検出要素の出力と励磁突入電流対策要素の出力との論理積を演算する第2の論理積演算手段を付加し、第2の論理積演算手段の出力により、差動保護要素の出力を阻止するようにしている。
【0046】
一方、請求項12に対応する発明では、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、第2の判定手段の現時点の出力と当該第2の判定手段の1サイクルまたは複数サイクル前の出力との論理積を演算する第3の論理積演算手段を付加し、第3の論理積演算手段の出力を、復帰遅延手段の入力とするようにしている。
【0047】
また、請求項13に対応する発明では、複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングしてデジタル量に変換し、当該変換されたデジタル量を用いて各相毎の差動電流を演算し、当該演算された差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたデジタル形保護継電器において、励磁突入電流を判定するバラツキを表わす各々の電気量(平均偏差または平均偏差の比、もしくは標準偏差または標準偏差の比)の現時点の値と1サイクルまたは複数サイクル前の値とを比較していずれかの大きい方の値を求め、かつ当該大きい方の値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、励磁突入電流対策要素の出力により、差動保護要素の出力を阻止するようにしている。
【0048】
励磁突入電流は、1サイクル中に変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と被保護対象である変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない区間(無電流期間)が必ず存在するのに対し、事故電流は、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳のため無電流期間が生じることはない。なお、励磁突入電流の1サイクル中に存在する無電流期間は本来電流零であるが、変流器による直流分喪失等により、必ずしも保護継電器の見る励磁突入電流(=差動電流)の無電流期間は単純に電流零ではなく、瞬時値電流の変化が少ない平坦な電流期間であると言える。このため、1サイクル中の一定区間の瞬時値電流のバラツキが小さいこと、すなわち平坦性を見ることで、励磁突入電流と判定して、保護継電器の誤動作を防止することができる。
【0049】
従って、まず、請求項1に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、およびこの出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備えて、この励磁突入電流対策要素の出力で差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流を確実に区別することが可能となる。
【0050】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0051】
また、請求項2に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、かつこの偏差値と当該偏差値を求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大値偏差値Dmax との比(D/Dmax )が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、およびこの出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備えて、この励磁突入電流対策要素の出力で差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0052】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0053】
さらに、請求項3に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値と演算された差動電流の大きさを示す量Iとの比(D/I)が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、およびこの出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備えて、この励磁突入電流対策要素の出力で差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0054】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0055】
一方、請求項4に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、この標準偏差σの値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、およびこの出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備えて、この励磁突入電流対策要素の出力で差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0056】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0057】
また、請求項5に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、この標準偏差σと当該標準偏差σを求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大偏差値σmax との比(σ/σmax )が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、およびこの出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備えて、この励磁突入電流対策要素の出力で差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0058】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0059】
さらに、請求項6に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、この標準偏差σと演算された差動電流の大きさを示す量Iとの比(σ/I)が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、およびこの出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備えて、この励磁突入電流対策要素の出力で差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0060】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0061】
一方、請求項7に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、差動保護要素の出力の送出を条件に第2の判定手段の動作を起動し、差動保護要素の出力の復帰を条件に第2の判定手段の動作を停止するように励磁突入電流対策要素を構成すると共に、差動保護要素の出力を所定時間動作遅延する動作遅延手段を備え、この励磁突入電流対策要素の出力で動作遅延手段の出力を阻止することにより、励磁突入電流にて動作する差動保護要素の出力を阻止して、保護継電器の誤動作を防止することができ、また平坦区間を持たない事故電流では、差動保護要素の出力は動作遅延手段を通してそのまま保護継電器出力となり、正常動作を行なうことができ、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0062】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0063】
また、請求項8に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、差動保護要素の出力を所定時間動作遅延する動作遅延手段と、差動保護要素の出力と励磁突入電流対策要素の出力との論理積を演算する第1の論理積演算手段とを備えて、第1の論理積演算手段の出力で動作遅延手段の出力を阻止することにより、保護継電器としての誤動作を防止することができ、また平坦区間を持たない事故電流では、差動保護要素の出力は動作遅延手段を通してそのまま保護継電器出力となり、正常動作を行なうことができ、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0064】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0065】
一方、請求項9に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、差動電流の大きさが一定値以上変化した時に出力を生じる第3の判定手段、およびこの出力を所定時間復帰遅延する第2の復帰遅延手段を有する電流変化幅検出要素を備えて、この電流変化幅検出要素の出力の送出を条件に励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を起動し、電流変化幅検出要素の出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を停止することにより、励磁突入電流が流れた時に動作する電流変化幅検出要素により起動される励磁突入電流対策要素の動作出力で、差動保護要素の出力を阻止して、保護継電器としての誤動作を防止することができ、また平坦区間を持たない事故電流では、差動保護要素の出力はそのまま保護継電器出力となり、正常動作を行なうことができ、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0066】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0067】
また、請求項10に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、各端子の導入電気量のうちのいずれかの端子電流または全ての端子電流の大きさが一定値以上変化した時に出力を生じる第3の判定手段、およびこの出力を各々所定時間復帰遅延する第2の復帰遅延手段を有する複数の電流変化幅検出要素を備え、各々の電流変化幅検出要素の全ての出力の送出を条件に励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を起動し、各々の電流変化幅検出要素のうちの少なくとも1つ以上の電流変化幅検出要素の出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を停止することにより、励磁突入電流が流れた時に動作する各電流変化幅検出要素により起動される励磁突入電流対策要素の動作出力で、差動保護要素の出力を阻止して、保護継電器としての誤動作を防止することができ、また平坦区間を持たない事故電流では、差動保護要素の出力はそのまま保護継電器出力となり、正常動作を行なうことができ、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0068】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0069】
さらに、請求項11に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、上記請求項9または請求項10に対応する発明のデジタル形保護継電器において、電流変化幅検出要素の出力と励磁突入電流対策要素の出力との論理積を演算する第2の論理積演算手段を備えて、この第2の論理積演算手段の出力で差動保護要素の出力を阻止することにより、励磁突入電流が流れた時に動作する電流変化幅検出要素と励磁突入電流対策要素との論理積演算の出力で、差動保護要素の出力を阻止して、励磁突入電流による保護継電器の誤動作を防止することができ、また平坦区間を持たない事故電流では、差動保護要素の出力はそのまま保護継電器出力となり、正常動作を行なうことができ、差動電流の平坦性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0070】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0071】
一方、請求項12に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、上記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に対応する発明のデジタル形保護継電器において、第2の判定手段の現時点の出力と1サイクルまたは複数サイクル前の出力との論理積を演算する第3の論理積演算手段を備えて、この第3の論理積演算手段の出力を復帰遅延手段の入力とすることにより、励磁突入電流に対しては確実に励磁突入電流対策要素が動作して保護継電器の誤動作を防止することができ、過渡的な平坦部分が生じるような事故電流に対しても励磁突入電流対策要素の不要出力がなく保護継電器は正常動作することができ、差動電流の周期性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0072】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0073】
また、請求項13に対応する発明のデジタル形保護継電器においては、励磁突入電流を判定するバラツキを表わす各々の電気量(平均偏差または平均偏差の比、もしくは標準偏差または標準偏差の比)の現時点の値と1サイクルまたは複数サイクル前の値とを比較していずれかの大きい方の値を求め、この大きい方の値が一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、およびこの出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備えて、この励磁突入電流対策要素の出力で差動保護要素の出力を阻止することにより、平均偏差または平均偏差の比、もしくは標準偏差または標準偏差の比の現時点と1サイクルあるいは複数サイクル前との値の比較を行なって、差動電流の周期性を確認することができ、差動電流の周期性を検出して励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することが可能となる。
【0074】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0075】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0076】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態によるデジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図22と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0077】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図1に示すように、図22における励磁突入電流対策要素6を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素61を備えた構成としている。
【0078】
この励磁突入電流対策要素61は、平坦性演算部21と、平坦判定演算部22と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0079】
ここで、平坦性演算部21は、前記差動要素5の差動電流演算部14により算出された差動電流Idの波形の一定区間の平坦性を求めるものである。
【0080】
すなわち、本例では、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求めるものである。
【0081】
また、平坦判定演算部22は、平坦性演算部21により求められた平坦性が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0082】
すなわち、本例では、平坦性演算部21により求められた偏差値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0083】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部22の出力を連続化するためのものである。
【0084】
これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしている。
【0085】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0086】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0087】
図1において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素61に導入され、平坦性演算部21にて平坦性を検出するための演算を行ない、平均偏差Dが算出される。そして、この平均偏差Dが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22から出力が送出される。
【0088】
この平坦判定演算部22の出力は、1サイクルに1回の継続出力となるため、1サイクル以上の時間を持った復帰遅延タイマー23により連続化を行ない、この復帰遅延タイマー23の出力が、励磁突入電流対策要素61の出力として送出される。
【0089】
一方、復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行なうことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0090】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。
【0091】
まず、実際の内部事故による事故電流と励磁突入電流の電流波形の特徴の違いを述べる。
【0092】
図2は、事故電流(a)と励磁突入電流(b)の電流波形の特徴の違いを示す波形図であり、励磁突入電流は、1サイクル中に変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない区間(無電流期間)とが必ず存在するのに対し、事故電流は、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳のため無電流期間が生じることはない。なお、励磁突入電流の1サイクル中に存在する無電流期間は本来電流零であるが、変流器CTによる直流分喪失等により、必ずしも差動リレー1の見る励磁突入電流(=差動電流Id)の無電流期間は単純に電流零ではなく、瞬時値電流の変化が少ない平坦な電流期間であると言える。
【0093】
このため、1サイクル中の一定区間の瞬時値電流のバラツキが小さいこと(=平坦性)を見ることで、励磁突入電流と判定することができ、本実施形態では、この差動電流Idの平坦性を検出することで励磁突入電流と判定し、差動リレー1の誤動作を防止する。
【0094】
すなわち、励磁突入電流対策要素61の平坦性演算部21では、平坦性を検出するための以下のような演算が行なわれる。
【0095】
図3(a)は、励磁突入電流をディジタル量(=瞬時値)に変換した時の値を示すものである。図3(a)において、現時点の瞬時値をim 、1サンプリング(以下spと表す)前の瞬時値をim-1 、2sp前の瞬時値をim-2 、………以下同様に、(N−1)sp前の瞬時値をim-(N-1) 、(N)sp前の瞬時値をim-(N) 、(N+1)sp前の瞬時値をim-(N+1) ………以下同様に、(N+k)sp前の瞬時値をim-(N+k) と置く。
【0096】
図3(a)の瞬時値にて平坦性検出演算を説明すると、1サイクル中の一定区間の瞬時値(例えば、区間aのim 〜im-(N-1) )のspの総個数をN個とし、N個の瞬時値の総和を総個数Nで割り算した算術平均Imを、下記の(1)式で求める。
【0097】
なお、一定区間とは、最大励磁突入電流での無電流期間よりも小さい期間で有ればよく、特に限定した期間(時間)ではない。
【0098】
【数1】
【0099】
さらに、一定区間の各瞬時値と算術平均Imとの差の絶対値をとり、その差の総和を総個数Nで割り算した値Dを、下記の(2)式で求める。
【0100】
【数2】
【0101】
この結果、(2)式は下記の(3)式で表わすことができる。
【0102】
【数3】
【0103】
このDの値を平均偏差と称し、差動電流Idの一定区間の瞬時値のバラツキの程度(平坦性)を表わすものであり、電流の変化が零の場合のみD=0である。
【0104】
区間aの平均偏差Dと同様に、sp毎に過去N個のsp数を用いて演算(図3(a)では区間b,c…)することにより、常に一定区間の平坦性を見ることができ、図3(b)の平坦性演算部21での演算結果に示すような個々の平均偏差Da,Db,Dc…の値となる。
【0105】
図3(b)のような平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの平均偏差Dの値は、演算区間に平坦部分を多く含むにつてれ平均偏差Dの値は小さくなり、演算区間が全て平坦部分が含んだ時(図3(a)の区間a)に、その値は最小となる。
【0106】
また、平均偏差Dが一定値kよりも小さい値を採った時に、図3(c)の平坦判定演算部22での演算結果のように平坦判定演算部22は出力を生じる。
【0107】
なお、上記一定値kは、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別を行なうための値であり、変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差等による誤判定とならない値である。
【0108】
次に、事故電流と励磁突入電流との平坦性検出の一例について、図4を用いて述べる。
【0109】
まず、励磁突入電流(b)について述べる。
【0110】
前述したように、差動リレーの平坦性演算部21では、一定区間(ここではt1の演算区間を持つ)の平均偏差Dをsp毎に常に演算しており、平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの平均偏差Dの値は、演算区間(t1)に平坦部分を多く含むにつれて小さくなり、その値が一定値k以下の時に平坦判定演算部22は出力を生じる。
【0111】
図4のt1は、全て平坦部分を含んだ時の演算区間を示すものであり、その後電流の立ち上がりと共に演算区間での平坦性がなくなり、平均偏差Dが一定値k以上となるまでの時間t2の間、平坦判定演算部22は出力を生じる。また、次のサイクルでも同様の検出を行なうため、1サイクルに1回は必ず平坦判定演算部22が出力を生じる。
【0112】
このため、平坦判定演算部22の出力は、1サイクルに1回の断続出力となるため、1サイクル以上の時間を持った復帰遅延タイマー23によって連続化を行ない、この復帰遅延タイマー23の出力を励磁突入電流対策要素61の出力とする。
【0113】
そして、この復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させて、差動要素5の出力との論理積演算を論理積演算回路20にて行なうことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0114】
一方、事故電流(a)には、基本波電流の他に高調波電流も多く含まれる場合があり、特に従来の差動リレーが誤不動作となるような第2調波近傍の高調波に対しても、t1時間だけの平坦区間が生じないため、平坦判定演算部22の出力はなく、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0115】
なお、以上の説明では、平坦性を表わす値として、平均偏差Dを基に説明してきたが、この平坦性を表わす値としては、下記の一般式((0)式)で表わされる値としてもよい。
【0116】
すなわち、前記演算された差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN値の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキを表わす量(平坦性を示す)として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで割った偏差値を求める。つまり、(0)式で表わされる偏差値aを平坦性演算として求める。
【0117】
【数4】
【0118】
そして、この求められた偏差値aが一定値以下の時に出力を生じる平坦判定演算部22を備えた励磁突入電流対策要素61を備えて、その出力によって前記差動要素5の出力を阻止することにより、前述した場合と同様の作用を奏することができる。
【0119】
上述したように、本実施形態においては、変圧器励磁突入電流と変圧器内部事故電流との波形の違い、すなわち励磁突入電流は1サイクル中に変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない一定の平坦部分が必ず存在するのに対し、事故電流は基本波電流もしくは不特定多数の高調波電流重畳のため一定区間の平坦部分が生じないことに着目し、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値が一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素61を備えて差動電流Idの平坦性を検出し、この励磁突入電流対策要素61の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0120】
(第2の実施形態)
図5は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0121】
なお、差動要素5の構成については、図1と全く同一であるため、図5ではその構成の一部を割愛している。
【0122】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図5に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素62を備えた構成としている。
【0123】
この励磁突入電流対策要素62は、平坦性演算部21と、平坦判定演算部24と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0124】
ここで、平坦性演算部21は、前記差動要素5の差動電流演算部14により算出された差動電流Idの波形の一定区間の平坦性を求めるものである。
【0125】
すなわち、本例では、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求めるものである。
【0126】
また、平坦判定演算部24は、平坦性演算部21により求められた平坦性が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0127】
すなわち、本例では、平坦性演算部21により求められた偏差値と当該偏差値を求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大値偏差値Dmax との比(D/Dmax )が一定値以下か否かを判定し、一定値以下の時に出力を生じるものである。
【0128】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部24の出力を連続化するためのものである。
【0129】
これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしている。
【0130】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0131】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0132】
図5において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素62に導入され、平坦性演算部21にて前述した(3)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の平均偏差Dが算出される。
【0133】
また、平坦判定演算部24では、現時点の平均偏差D0 と、D0 を含む過去1サイクル間の各々の平均偏差D1 ,D2 ,…、D95の96個(但し、定格周波数50Hz、sp周波数4.8kHzの場合であり、1サイクル当たり96個のsp数を持つ)のうちの最大平均偏差Dmax を算出し、この最大平均偏差Dmax に対する現時点の平均偏差D0 の比(D0 /Dmax )を演算し、平均偏差の比(D0 /Dmax )が所定値k1以下となった時に、励磁突入電流と判定して出力を生じる。
【0134】
この関係は、下記の(4)式で表わすことができる。
【0135】
D0 /Dmax ≦k1 または D0 ≦Dmax ・k1 (4)式
すなわち、前述した図3を用いて説明すると、区間aにおける平均偏差Daは現時点の平均偏差D0 であり、DbはD1 を、DcはD2 を表わし、D95はDaから96個前の平均偏差である。そして、この96個の平均偏差のうちの最大値が、Dmax (図3ではDmax =Dy)として取り出される。
【0136】
この結果、図3における平均偏差の比(D0 /Dmax )は|Da/Dy|となり、この値が所定値k1以下であれば、平坦判定演算部24から出力が送出される。
【0137】
励磁突入電流による平坦判定演算部24の出力は、1サイクル毎に1回以上出力する断続出力のため、復帰遅延タイマー23により連続化出力に変換した後、NOT演算回路19を通して、差動要素5の出力が阻止される。
【0138】
前述したように、励磁突入電流の大きさは、電圧突入位相や変圧器鉄心の違い等により種々の値を取るが、変流器の直流分喪失等により励磁突入電流が大きいほど無電流期間の平坦性が悪くなり、平均偏差の誤差が増加する可能性が生じる。
【0139】
一方、過去1サイクル中の最大平均偏差Dmax も、励磁突入電流が大きいほど値が大きくなるため、最大平均偏差Dmax も、励磁突入電流が大きいほど値が大きくなるため、最大平均偏差Dmax と現時点の平均偏差D0 との比 (D0 /Dmax )を常に見ることにより、励磁突入電流の大きさに関係なく、より確実に励磁突入電流を判別することができる。
【0140】
また、事故電流には、基本波電流の他に高調波電流も多く含まれる場合があり、特に従来の差動リレーが誤不動作となるような第2調波近傍の高調波に対しても、平坦区間が生じないため、平坦判定演算部24の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0141】
なお、上記最大平均偏差Dmax は、過去1サイクル中の最大平均偏差だけでなく、過去1サイクル以内、例えば半サイクル中の最大平均偏差を使用してもよく、平坦部分と電流が流れている部分の平均偏差の値に明らかな差があれば、前述と同様の効果を得ることができる。
【0142】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値と当該偏差値を求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大値偏差値Dmax との比(D/Dmax )が一定値以下の時に出力を生じる励磁突入電流対策要素62を備えて差動電流Idの平坦性を検出し、この励磁突入電流対策要素62の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0143】
(第3の実施形態)
図6は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0144】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図6ではその構成の一部を割愛している。
【0145】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図6に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素63を備えた構成としている。
【0146】
この励磁突入電流対策要素63は、平坦性演算部21と、平坦判定演算部25と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0147】
ここで、平坦性演算部21は、前記差動要素5の差動電流演算部14により算出された差動電流Idの波形の一定区間の平坦性を求めるものである。
【0148】
すなわち、本例では、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求めるものである。
【0149】
また、平坦判定演算部25は、平坦性演算部21により求められた平坦性が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0150】
すなわち、本例では、平坦性演算部21により求められた偏差値と演算された差動電流の大きさを示す量Iとの比(D/I)が一定値以下か否かを判定し、一定値以下の時に出力を生じるものである。
【0151】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部25の出力を連続化するためのものである。
【0152】
これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしている。
【0153】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0154】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0155】
図6において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素63に導入され、平坦性演算部21にて前述した(3)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の平均偏差Dが算出される。
【0156】
また、平坦判定演算部25では、現時点の平均偏差D0 と差動要素5の差動電流Idの振幅値演算15の出力|Id1f|との比((D0 /|Id1f|)を演算し、平均偏差の比(D0 /|Id1f|)が所定値k2以下となった時に、励磁突入電流と判定して出力を生じる。
【0157】
励磁突入電流による平坦判定演算部25の出力は、1サイクル毎に1回以上出力する断続出力のため、復帰遅延タイマー23により連続化出力に変換した後、NOT演算回路19を通して、差動要素5の出力が阻止される。
【0158】
前述したように、励磁突入電流の大きさは、電圧投入位相や変圧器鉄心の違い等により種々の値を取るため、変流器の直流分喪失等により励磁突入電流が大きいほど無電流期間の平坦性が悪くなり、平均偏差の誤差が増加する可能性が生じる。このため、励磁突入電流の大きさに比例した差動電流Idに含まれる基本波電流の振幅値|Id1f|と現時点の平均偏差D0 との比(D0 /|Id1f|)を常に見ることにより、励磁突入電流の大きさに関係なく、より一層確実に励磁突入電流を判別することができる。
【0159】
一方、事故電流には、基本波電流の他に高調波電流も多く含まれる場合があり、特に従来の差動リレーが誤不動作となるような第2調波近傍の高調波に対しても、平坦区間が生じないため、平坦判定演算部25の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0160】
なお、上記励磁突入電流の大きさを表わす量は、差動要素5の差動電流Idの1f振幅値|Id1f|に限らず、例えば現時点の平均偏差D0 を演算した区間を含む1サイクルの差動電流Idの瞬時値の最大値(波高値)等を使用してもよく、差動電流Idの大きさの指標を示す量であれば、前記と同様の効果を得ることができる。
【0161】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値と演算された差動電流の大きさを示す量Iとの比(D/I)が一定値以下の時に出力を生じる励磁突入電流対策要素63を備えて差動電流Idの平坦性を検出し、この励磁突入電流対策要素63の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0162】
(第4の実施形態)
図7は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0163】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図7ではその構成の一部を割愛している。
【0164】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図7に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素64を備えた構成としている。
【0165】
この励磁突入電流対策要素64は、平坦性演算部26と、平坦判定演算部27と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0166】
ここで、平坦性演算部26は、前記差動要素5の差動電流演算部14により算出された差動電流Idの波形の一定区間の平坦性を求めるものである。
【0167】
すなわち、本例では、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求めるものである。
【0168】
また、平坦判定演算部27は、平坦性演算部26により求められた平坦性が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0169】
すなわち、本例では、平坦性演算部26により求められた標準偏差σの値が一定値以下か否かを判定し、一定値以下の時に出力を生じるものである。
【0170】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部27の出力を連続化するためのものである。
【0171】
これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしている。
【0172】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0173】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0174】
図7において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素64に導入され、平坦性演算部26にて、平坦性を検出するための以下のような演算が行なわれる。
【0175】
図8(a)は、励磁突入電流をデジタル量(=瞬時値)に変換した時の値を示すものであり、この瞬時値にて平坦性検出演算について説明する。
【0176】
いま、現時点の瞬時値をim 、1spの前の瞬時値をim-1 、2sp前の瞬時値をim-2 、………以下同様に、(N−1)sp前の瞬時値をim-(N-1) 、(N)sp前の瞬時値をim-(N) 、(N+1)sp前の瞬時値をim-(N+1) ………以下同様に、(N+k)sp前の瞬時値をim-(N+k) と置く。
【0177】
図8(a)において、1サイクル中の一定区間の瞬時値(例えば区間aのim 〜im-(N-1) )のspの総個数をN個とし、N個の瞬時値の総和を総個数Nで割り算した算術平均Imを、前記第1の実施形態で説明した(1)式により求める。なお、一定区間とは最大励磁突入電流での無電流期間より小さい期間で有れば良く、特に限定した期間(時間)ではない。
【0178】
さらに、一定区間の各瞬時値と算術平均Imとの差の2乗をとり、その差の2乗の総和である残差平方和Sxを、下記の(5)式により求める。
【0179】
【数5】
【0180】
この(5)式は、下記のような(6)式に変換することができる。
【0181】
【数6】
【0182】
次に、この残差平方和Sxを瞬時値の総個数Nで割算し、その平方根を下記の(7)式により求める。
【0183】
【数7】
【0184】
このσの値を標準偏差と称し、差動電流Idの一定区間の瞬時値のバラツキの程度(平坦性)を表わすものであり、電流の変化が零の場合のみσ=0となる。
【0185】
また、区間aの標準偏差σと同様に、sp毎に過去N個のsp数を用いて演算(図8(a)では区間b,c…)することにより、常に一定区間の平坦性を見ることができ、図8(b)の平坦性演算部26の演算結果に示すような個々の標準偏差σa,σb,σc…の値となる。
【0186】
図8(a)のような平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの標準偏差σの値は、演算区間に平坦部分を多く含むにつれて標準偏差σの値は小さくなり、演算区間が全て平坦部分が含んだ時(図8(a)の区間a)に、その値は最小となる。
【0187】
また、標準偏差σが、一定値k3よりも小さい値を採った時に、図8(c)の平坦判定演算結果のように、平坦判定演算部27は出力を生じる。
【0188】
なお、一定値k3は、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別を行なうための値であり、変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差等による誤判定とならない値である。
【0189】
このように、差動リレー1の平坦性演算部26では、一定区間の標準偏差σをsp毎に常に演算しており、平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの標準偏差σの値は、演算区間に平坦部分を多く含むにつれて小さくなり、その値が一定値k3以下の時に平坦判定演算部27は出力を生じる。
【0190】
このため、励磁突入電流での平坦判定演算部27の出力は、1サイクルに1回の断続出力となるため、1サイクル以上の時間を持った復帰遅延タイマー23により連続化を行ない、この復帰遅延タイマー23の出力が励磁突入電流対策要素64の出力として送出される。
【0191】
そして、復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させ、差動要素5の出力との論理積演算を論理積演算回路20にて行なうことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0192】
一方、事故電流には、基本波電流の他に高調波電流も多く含まれる場合があり、特に従来の差動リレーが誤不動作となるような第2調波近傍の高調波に対しても、平坦区間が生じないため、平坦判定演算部27の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0193】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、この標準偏差σの値が一定値以下の時に出力を生じる励磁突入電流対策要素64を備えて差動電流Idの平坦性を検出し、この励磁突入電流対策要素64の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0194】
(第5の実施形態)
図9は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0195】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図9ではその構成の一部を割愛している。
【0196】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図9に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素65を備えた構成としている。
【0197】
この励磁突入電流対策要素65は、平坦性演算部26と、平坦判定演算部28と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0198】
ここで、平坦性演算部26は、前記差動要素5の差動電流演算部14により算出された差動電流Idの波形の一定区間の平坦性を求めるものである。
【0199】
すなわち、本例では、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求めるものである。
【0200】
また、平坦判定演算部28は、平坦性演算部26により求められた平坦性が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0201】
すなわち、本例では、平坦性演算部26により求められた標準偏差σと当該標準偏差σを求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大偏差値σmax との比(σ/σmax )が一定値以下か否かを判定し、一定値以下の時に出力を生じるものである。
【0202】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部28の出力を連続化するためのものである。
【0203】
これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしている。
【0204】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0205】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0206】
図9において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素65に導入され、平坦性演算部26にて、前記第4の実施形態で説明した(7)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の標準偏差σが算出される。
【0207】
すなわち、平坦判定演算部26では、現時点の標準偏差σ0 と、標準偏差σ0 を含む過去1サイクル間の各々の標準偏差σ1 ,σ2 ,…、σ95の96個(但し、定格周波数50Hz、sp周波数4.8kHzの場合であり、1サイクル当たり96個のsp数を持つ)のうちの最大標準偏差σmax を算出し、最大標準偏差σmax に対する現時点の標準偏差σ0 の比(σ0 /σmax )を演算し、この標準偏差の比(σ0 /σmax )が所定値k4以下となった時に、励磁突入電流と判定して出力を生じる。
【0208】
この関係は、下記の(8)式で表わすことができる。
【0209】
σ0 /σmax ≦k4 または σ0 ≦σmax ・k4 (8)式
すなわち、図8を用いて説明すると、区間aにおける標準偏差σaは現時点の標準偏差σ0 であり、σbはσ1 を、σcはσ2 をそれぞれ表わし、σ95はσaから96個前の標準偏差である。そして、この96個の標準偏差のうちの最大値を、σmax (図8ではσmax =σy)として取り出す。この結果、図8での平均偏差の比(σ0 /σmax )は|Da/Dy|となり、この値が所定値k4以下であれば、平坦判定演算部28は出力を生じる。
【0210】
励磁突入電流による平坦判定演算部28の出力は、1サイクル毎に1回以上出力する断続出力のため、復帰遅延タイマー23により連続化出力に変換した後、NOT演算回路19を通して、差動要素5の出力を阻止する。
【0211】
前述したように、励磁突入電流の大きさは、電圧突入位相や変圧器鉄心の違い等により種々の値を取るが、変流器の直流分喪失等により、励磁突入電流が大きいほど無電流期間の平坦性が悪くなり、標準偏差の誤差が増加する可能性が生じる。一方、過去1サイクル中の最大標準偏差σmax も、励磁突入電流が大きいほどその値が大きくなるため、最大標準偏差σmax と現時点の標準偏差σ0 との比(σ0 /σmax )を常に見ることにより、励磁突入電流の大きさに関係なく、より確実に励磁突入電流を判別することができる。
【0212】
一方、事故電流には、基本波電流の他に高調波電流も多く含まれる場合があり、特に従来の差動リレーが誤不動作となるような第2調波近傍の高調波に対しても、平坦区間が生じないため、平坦判定演算部28の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0213】
なお、最大標準偏差σmax は、過去1サイクル中の最大標準偏差だけでなく、過去1サイクル以内、例えば半サイクル中の最大標準偏差を使用してもよく、平坦部分と電流が流れている部分の標準偏差の値に明らかな差があれば、前述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0214】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、このた標準偏差σと当該標準偏差σを求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大偏差値σmax との比(σ/σmax )が一定値以下か否かを判定し、一定値以下の時に出力を生じる励磁突入電流対策要素65を備えて差動電流Idの平坦性を検出し、この励磁突入電流対策要素65の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0215】
(第6の実施形態)
図10は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0216】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図10ではその構成の一部を割愛している。
【0217】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図10に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素66を備えた構成としている。
【0218】
この励磁突入電流対策要素66は、平坦性演算部26と、平坦判定演算部29と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0219】
ここで、平坦性演算部26は、前記差動要素5の差動電流演算部14により算出された差動電流Idの波形の一定区間の平坦性を求めるものである。
【0220】
すなわち、本例では、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求めるものである。
【0221】
また、平坦判定演算部29は、平坦性演算部26により求められた平坦性が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0222】
すなわち、本例では、平坦性演算部26により求められた標準偏差σと差動電流Idの大きさを示す量Iとの比(σ/I)が一定値以下か否かを判定し、一定値以下の時に出力を生じるものである。
【0223】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部28の出力を連続化するためのものである。
【0224】
これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしている。
【0225】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0226】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0227】
図10において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素66に導入され、平坦性演算部26にて、前記第4および第5の各実施形態で説明した(7)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の標準偏差σが算出される。
【0228】
また、平坦判定演算部29では、現時点の標準偏差σ0 と差動要素5の振幅値演算部15の出力|Id1f|との比(σ0 /|Id1f|)を演算し、標準偏差の比(σ0 /|Id1f|)が所定値k5以下となった時に、励磁突入電流と判定して出力を生じる。
【0229】
励磁突入電流による平坦判定演算部29の出力は、1サイクル毎に1回以上出力する断続出力のため、復帰遅延タイマー23により連続化出力に変換した後、NOT演算回路19を通して、差動要素5の出力を阻止する。
【0230】
前述したように、励磁突入電流の大きさは、電圧突入位相や変圧器鉄心の違い等により種々の値を取るため、変流器の直流分喪失等により励磁突入電流が大きいほど無電流期間の平坦性が悪くなり、標準偏差の誤差が増加する可能性が生じる。
【0231】
このため、励磁突入電流の大きさに比例した差動電流Idに含まれる基本波電流の振幅値|Id1f|と現時点の標準偏差σ0 との比(σ0 /|Id1f|)を常に見ることにより、励磁突入電流の大きさに関係なく、より確実に励磁突入電流を判別することができる。
【0232】
一方、事故電流には、基本波電流の他に高調波電流も多く含まれる場合があり、特に従来の差動リレーが誤不動作となるような第2調波近傍の高調波に対しても、平坦区間が生じないため、平坦判定演算部29の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0233】
なお、励磁突入電流の大きさを表わす量は、差動要素5の差動電流Idの1f振幅値|Id1f|に限らず、例えば現時点の標準偏差σ0 を演算した区間を含む1サイクルの差動電流Idの瞬時値の最大値(波高値)等を使用してもよく、差動電流Idの大きさの指標を示す量であれば、前記の場合と同様の効果を得ることができる。
【0234】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、この標準偏差σと差動電流Idの大きさを示す量Iとの比(σ/I)が一定値以下か否かを判定し、一定値以下の時に出力を生じる励磁突入電流対策要素66を備えて差動電流Idの平坦性を検出し、この励磁突入電流対策要素66の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0235】
(第7の実施形態)
図11は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0236】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図11ではその構成の一部を割愛している。
【0237】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図11に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素67を備え、また差動要素5と論理積演算回路20との間に、差動要素5の出力を1サイクル以上の時間遅延する動作遅延タイマー30を備えた構成としている。
【0238】
この励磁突入電流対策要素67は、平坦性演算部21と、平坦判定演算部31と、復帰遅延タイマー23とからなっており、差動要素5の差動判定演算部16の出力の送出を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を起動し、また差動要素5の差動判定演算部16の出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を停止するようにしている。
【0239】
ここで、平坦性演算部21は、前記第1の実施形態の場合と同様の機能を有するものである。
【0240】
また、平坦判定演算部31は、平坦性演算部21により求められた平坦性が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるもので、差動要素5の差動判定演算部16の出力の送出を条件にその判定動作を起動し、また差動要素5の差動判定演算部16の出力の復帰を条件にその判定動作を停止するものである。
【0241】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部31の出力を連続化するためのものである。
【0242】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0243】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0244】
図11において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素67に導入され、平坦性演算部21にて、前記第1の実施形態で説明した(3)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の平均偏差Dが算出される。
【0245】
一方、前記第1の実施形態の平坦判定演算部22では、一定区間の平均偏差Dをsp毎に常に判定演算しており、平均偏差Dは演算区間に平坦部分を多く含むにつれてその値は小さくなり、その値が一定値k以下の時に平坦判定演算部22は出力する。このため、励磁突入電流での平坦判定演算部22の出力は、1サイクルに1回の断続出力となり、1サイクル以上の時間を持った復帰遅延タイマー23により連続化を行ない、この復帰遅延タイマー23の出力を励磁突入電流対策要素の出力としている。
【0246】
しかしながら、常時判定することは、負荷電流が流れている状態や外部事故で通過電流が流れている状態では差動電流Idが零であるため、平坦判定演算部22は常に動作出力状態にあり、差動要素5の出力を常時阻止していることになる。そして、この時に内部事故が発生した場合には、差動要素5は動作し、平坦判定演算部22の出力は復帰するが、差動リレー1としての動作時間は、励磁突入電流要素の復帰遅延タイマー23の出力復帰に要する時間分の遅れを生じることになる。
【0247】
この点、本実施形態では、励磁突入電流要素67の平坦判定演算部31を、差動要素5の差動判定演算部16の動作出力によって起動し、差動判定演算部16の出力の復帰と共に停止させることにより、差動電流Idがない定常状態においての励磁突入電流対策要素67による不要な出力阻止を行なうことはなく、この状態から内部事故が発生した場合でも、差動リレー1の動作時間遅れを小さくすることができる。
【0248】
なお、差動判定演算部16の出力を遅延する動作遅延タイマー30は、差動判定演算部16の出力によって起動される励磁突入電流対策要素67との時間協調を取るものであり、励磁突入電流時に、差動判定演算部16の出力が励磁突入電流対策要素67の出力よりも先に送出されるのを遅らせるものである。
【0249】
これにより、平坦判定演算部31の出力を遅延する復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させ、差動要素5の出力を遅延する動作遅延タイマー30との論理積演算を論理積演算回路20で行なうことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止して、差動リレー1の誤動作を防止することができる。
【0250】
また、平坦区間を持たない事故電流では、平坦判定演算部31の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、動作遅延タイマー30および論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0251】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値が一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素67を備えて差動電流Idの平坦性を検出すると共に、差動要素5と論理積演算回路20との間に、差動要素5の出力を1サイクル以上の時間遅延する動作遅延タイマー30を備え、さらに差動要素5の差動判定演算部16の出力の送出を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を起動し、また差動要素5の差動判定演算部16の出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を停止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には動作遅れなく確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0252】
(第8の実施形態)
図12は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0253】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図12ではその構成の一部を割愛している。
【0254】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図12に示すように、図1における差動要素5と論理積演算回路20との間に、差動要素5の出力を1サイクル以上の時間遅延する動作遅延タイマー30を新たに備えると共に、差動要素5の差動判定演算部16の出力と励磁突入電流対策要素61の復帰遅延タイマー23の出力との論理積を演算する論理積演算回路32を備え、この論理積演算回路32の出力により、動作遅延タイマー30の出力を阻止する構成としている。
【0255】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0256】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0257】
図12において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素61に導入され、平坦性演算部21にて、前記第1の実施形態で説明した(3)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の平均偏差Dが算出される。
【0258】
また、平坦判定演算部22では、一定区間の平均偏差Dがsp毎に常に判定演算されている。
【0259】
しかしながら、常時判定することは、負荷電流が流れている状態や外部事故で通過電流が流れている状態では差動電流Idが零であるため、平坦判定演算部22は常に動作出力状態にあり、差動要素5の出力を常時阻止していることになる。そして、この時に内部事故が発生した場合には、平坦判定演算部22の出力は復帰するが、差動リレー1としての動作時間は、励磁突入電流要素61の復帰遅延タイマー23の出力復帰に要する時間分の遅れを生じることになる。
【0260】
この点、本実施形態では、差動判定演算部16の出力と励磁突入電流対策要素61との論理積演算を論理積演算回路32で行ない、差動要素5が動作しない場合には励磁突入電流対策要素61の出力を阻止し、差動要素5が動作した場合には励磁突入電流対策要素61の出力を許容することにより、差動電流Idがない定常状態においての励磁突入電流対策要素61による不要な出力阻止を行なうことはなく、この状態から内部事故が発生した場合でも、差動リレー1の動作時間遅れを小さくすることができる。
【0261】
なお、差動判定演算部16の出力を遅延する動作遅延タイマー30は、差動判定演算部16の出力によって起動される励磁突入電流対策要素61との時間協調を取るものであり、励磁突入電流時に、差動判定演算部16の出力が励磁突入電流対策要素61の出力よりも先に送出されるのを遅らせるものである。
【0262】
これにより、差動要素5の出力と励磁突入電流対策要素61の出力との論理積演算の動作出力によって、差動要素5の出力を遅延する動作遅延タイマー30の出力を阻止することにより、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0263】
また、平坦区間を持たない事故電流では、平坦判定演算部22の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、動作遅延タイマー30および論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0264】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値が一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素61を備えて差動電流Idの平坦性を検出すると共に、差動要素5と論理積演算回路20との間に、差動要素5の出力を1サイクル以上の時間遅延する動作遅延タイマー30を備え、さらに差動要素5の差動判定演算部16の出力と励磁突入電流対策要素61の復帰遅延タイマー23の出力との論理積を演算する論理積演算回路32を備え、この論理積演算回路32の出力により、動作遅延タイマー30の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には動作遅れなく確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0265】
(第9の実施形態)
図13は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0266】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図13ではその構成の一部を割愛している。
【0267】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図13に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素67を備えると共に、電流変化幅検出(以下、ΔIと称する)要素33を備えた構成としている。
【0268】
この励磁突入電流対策要素67は、平坦性演算部21と、平坦判定演算部31と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0269】
ここで、平坦性演算部21は、前記第1の実施形態の場合と同様の機能を有するものである。
【0270】
また、平坦判定演算部31は、平坦性演算部21により求められた平坦性が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるもので、後述するΔI要素33の復帰遅延タイマー35の出力の送出を条件にその判定動作を起動し、またΔI要素33の復帰遅延タイマー35の出力の復帰を条件にその判定動作を停止するものである。
【0271】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部31の出力を連続化するためのものである。
【0272】
一方、ΔI要素33は、ΔI判定演算部34と、復帰遅延タイマー35とからなっており、ΔI要素33の復帰遅延タイマー35の出力を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を起動し、またΔI要素33の復帰遅延タイマー35の出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を停止するようにしている。
【0273】
ここで、ΔI判定演算部34は、差動要素5の差動電流演算部14により演算された差動電流Idの大きさが一定値以上変化したか否かを判定し、一定値以上変化した時に出力を生じるものである。
【0274】
また、復帰遅延タイマー35は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、ΔI判定演算部34の出力を連続化するためのものである。
【0275】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0276】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0277】
図13において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素67に導入され、平坦性演算部21にて、前記第1の実施形態で説明した(3)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の平均偏差Dが算出される。
【0278】
一方、前記第1の実施形態の平坦判定演算部22では、一定区間の平均偏差Dをsp毎に常に判定演算している。
【0279】
しかしながら、常時判定することは、負荷電流が流れている状態や外部事故で通過電流が流れている状態では差動電流Idが零であるため、平坦判定演算部22は常に動作出力状態にあり、差動要素5の出力を常時阻止していることになる。そして、この時に内部事故が発生した場合には、差動要素5は動作し、平坦判定演算部22の出力は復帰するが、差動リレー1としての動作時間は、励磁突入電流要素の復帰遅延タイマー23の出力復帰に要する時間分の遅れを生じることになる。
【0280】
この点、本実施形態では、内部事故時あるいは励磁突入電流発生時に零から急に変化する差動電流Idの変化分を検出して動作するΔI要素33を備え、励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を、ΔI要素33の出力の送出によって起動し、ΔI要素33の出力の復帰と共に停止させることにより、差動電流Idがない定常状態においての励磁突入電流対策要素67による不要な出力阻止を行なうことはなく、この状態から内部事故が発生した場合でも、差動リレー1の動作時間遅れをなくすことができる。
【0281】
なお、ΔI要素33のΔI判定演算部34には、既知の演算アルゴリズムを用いればよい。例えば、現時点の瞬時値im と1サイクル前の瞬時値im-96との差(Δi=im −im-96)を取り、さらに振幅値演算の結果であるΔImを求め、このΔImが所定値k6以上の時に出力を生じる。また、ΔI判定演算部34は、電流の変化が生じた場合にのみ出力を生じるため、電流変化後の一定時間(励磁突入電流が減衰するまでの時間)は、その出力を継続する必要がある。そして、復帰遅延タイマー35は、この動作継続時間を確保するためのものである。
【0282】
これにより、励磁突入電流が流れた時に動作するΔI要素33により起動される励磁突入電流対策要素67の出力によって、差動要素5の出力を阻止することにより、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0283】
また、平坦区間を持たない事故電流では、平坦判定演算部31の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0284】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値が一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素67を備えて差動電流Idの平坦性を検出すると共に、差動電流Idの大きさが一定値以上変化した時に出力を生じるΔI要素33を備え、さらにΔI要素33の復帰遅延タイマー35の出力を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を起動し、またΔI要素33の復帰遅延タイマー35の出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を停止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には動作遅れなく確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0285】
(第10の実施形態)
図14は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図13と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0286】
なお、差動要素5の構成については、図13と同一であるため、図14ではその構成の一部を割愛している。
【0287】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図14に示すように、図13におけるΔI要素33を省略し、これに代えて、新たな複数(本例では2つ)のΔI要素33を備えると共に、論理和(OR)演算回路36を備えた構成としている。
【0288】
ここで、各々のΔI要素33は、デジタル量に変換された各々の端子電流I1 ,I2 の大きさが一定値以上変化したか否かを判定し、一定値以上変化した時にそれぞれ出力を生じるものである。
【0289】
また、論理和演算回路36は、各々のΔI要素33の出力の論理和演算を行なうもので、その出力の送出を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を起動し、またその出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を停止するものである。
【0290】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0291】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0292】
図14において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素67に導入され、平坦性演算部21にて、前記第1の実施形態で説明した(3)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の平均偏差Dが算出される。
【0293】
一方、前記第1の実施形態の平坦判定演算部22では、一定区間の平均偏差Dをsp毎に常に判定演算している。
【0294】
しかしながら、常時判定することは、負荷電流が流れている状態や外部事故で通過電流が流れている状態では差動電流Idが零であるため、平坦判定演算部22は常に動作出力状態にあり、差動要素5の出力を常時阻止していることになる。そして、この時に内部事故が発生した場合には、差動要素5は動作し、平坦判定演算部22の出力は復帰するが、差動リレー1としての動作時間は、励磁突入電流要素の復帰遅延タイマー23の出力復帰に要する時間分の遅れを生じることになる。
【0295】
この点、本実施形態では、内部事故時あるいは励磁突入電流発生時に入力電流(端子電流)が急に変化する時の変化分を検出して動作するΔI要素33を各々の端子の入力電流(端子電流)I1 ,I2 に対して備え、いずれかのΔI要素33のΔI判定演算部34の出力が送出された時に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を起動し、全てのΔI要素33のΔI判定演算部34の復帰遅延タイマー35の出力が復帰した時に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を停止させることにより、差動電流Idがない定常状態においての励磁突入電流対策要素67による不要な出力阻止を行なうことはなく、この状態から内部事故が発生した場合でも、差動リレー1の動作時間遅れをなくすことができる。
【0296】
これにより、励磁突入電流が流れた時に動作する各々の端子の入力電流I1 ,I2 に対して備えられたΔI要素33の出力により起動される励磁突入電流対策要素67の出力によって、差動要素5の出力を阻止することにより、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0297】
また、平坦区間を持たない事故電流では、平坦判定演算部31の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0298】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値が一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素67を備えて差動電流Idの平坦性を検出すると共に、入力電流の大きさが一定値以上変化した時に出力を生じるΔI要素33を各々の端子の入力電流I1 ,I2 に対して備え、さらに各々のΔI要素33の復帰遅延タイマー35の少なくとも一つの出力を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を起動し、また全てのΔI要素33の復帰遅延タイマー35の出力の復帰を条件に励磁突入電流対策要素67の平坦判定演算部31の判定動作を停止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には動作遅れなく確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0299】
(第11の実施形態)
図15は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0300】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図15ではその構成の一部を割愛している。
【0301】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図15に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61の復帰遅延タイマー23の出力のNOT演算回路19への入力を省略し、これに代えて、新たにΔI要素33、および論理積演算回路37を備えた構成としている。
【0302】
ここで、ΔI要素33は、前述した第9の実施形態のΔI要素33の場合と同様の機能を有するものである。
【0303】
また、論理積演算回路37は、励磁突入電流対策要素61の復帰遅延タイマー23の出力とΔI要素33の復帰遅延タイマー35の出力との論理積の演算を行ない、その出力をNOT演算回路19への入力として与えるものである。
【0304】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0305】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0306】
図15において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素61に導入され、平坦性演算部21にて、前記第1の実施形態で説明した(3)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の平均偏差Dが算出される。
【0307】
一方、平坦判定演算部22では、一定区間の平均偏差Dをsp毎に常に判定演算している。
【0308】
しかしながら、常時判定することは、負荷電流が流れている状態や外部事故で通過電流が流れている状態では差動電流Idが零であるため、平坦判定演算部22は常に動作出力状態にあり、差動要素5の出力を常時阻止していることになる。そして、この時に内部事故が発生した場合には、差動要素5は動作し、平坦判定演算部22の出力は復帰するが、差動リレー1としての動作時間は、励磁突入電流要素の復帰遅延タイマー23の出力復帰に要する時間分の遅れを生じることになる。
【0309】
この点、本実施形態では、内部事故時あるいは励磁突入電流発生時に零から急に変化する差動電流Idの変化分を検出して動作するΔI要素33の出力と、励磁突入電流対策要素61の出力との論理積演算を行なう論理積演算回路37の出力により、差動要素5の出力を阻止することにより、差動電流Idがない定常状態においての励磁突入電流対策要素61による不要な出力阻止を行なうことはなく、この状態から内部事故が発生した場合でも、差動リレー1の動作時間遅れをなくすことができる。
【0310】
これにより、励磁突入電流が流れた時に動作するΔI要素33の出力と励磁突入電流対策要素61の出力との論理積演算を行なう論理積演算回路37の出力によって、差動要素5の出力を阻止することにより、励磁突入電流による差動リレー1の誤動作を防止することができる。
【0311】
また、平坦区間を持たない事故電流では、平坦判定演算部22の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行なうことができる。
【0312】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値が一定値以下である時に励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素61を備えて差動電流Idの平坦性を検出すると共に、差動電流Idの大きさが一定値以上変化した時に出力を生じるΔI要素33を備え、さらに励磁突入電流対策要素61の出力とΔI要素33の出力との論理積演算の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には動作遅れなく確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0313】
(第12の実施形態)
図16は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0314】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図16ではその構成の一部を割愛している。
【0315】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図16に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素68を備えた構成としている。
【0316】
この励磁突入電流対策要素68は、平坦性演算部21と、平坦判定演算部22と、シフト演算部38と、論理積演算回路39と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0317】
ここで、平坦性演算部21、および平坦判定演算部22は、前述した第1の実施形態の平坦性演算部21、および平坦判定演算部22の場合と同様の機能をそれぞれ有するものである。
【0318】
また、シフト演算部38は、平坦判定演算部22の出力を1サイクル遅らせるためのものである。
【0319】
さらに、論理積演算回路39は、平坦判定演算部22の出力(現時点の出力)とシフト演算部38の出力(1サイクル前の出力)との論理積演算を行なうものである。
【0320】
さらにまた、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、論理積演算回路39の出力を連続化するためのものである。
【0321】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0322】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0323】
図16において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素68に導入され、平坦性演算部21にて前述した(3)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の平均偏差Dが算出される。
【0324】
また、平坦判定演算部22では、平均偏差Dが所定値k以下となった時に、励磁突入電流と判定して出力が送出される。
【0325】
励磁突入電流は、変圧器鉄心飽和の関係により、電流が流れる期間と流れない期間の周期性が1サイクル毎に生じる。このため、励磁突入電流による平坦判定演算部22の出力は、1サイクル毎に1回は必ず送出され、その出力は1サイクル毎の周期性を持つ断続出力である。
【0326】
一方、事故電流は、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳したものであり、無電流期間を生じることはないが、希に、高調波の重畳の関係で過渡的な平坦部分を持つことが考えられる。
【0327】
図17は、事故電流で過渡的な平坦部分を持つ場合の一例を示す図であり、差動電流IdのA部で平均偏差Dは所定値k以下となり、平坦判定演算部22は単発的な出力を送出するが、この時の平坦判定演算部22の出力は周期性を生じない。
【0328】
そして、これらの平坦判定演算部22の出力をシフト演算部38により1サイクル遅らせ、現時点の判定結果である平坦判定演算部22出力と1サイクル前の判定結果であるシフト演算部38の出力との論理積演算を論理積演算回路39で行なうことにより、差動電流Idにおける平坦部分の周期性を見ることができる。
【0329】
図18は、励磁突入電流と事故電流における周期性の検出の一例を示す図であり、励磁突入電流(a)は、平坦判定演算部22の周期的な出力のために論理積演算回路39の出力が生じるが、事故電流(b)は、平坦判定演算部22の単発的な出力のために論理積演算回路39の出力は生じない。
【0330】
なお、励磁突入電流による論理積演算回路39での論理積演算結果は断続出力であるため、復帰遅延タイマー23により連続化して励磁突入電流対策要素68の出力としている。
【0331】
これにより、励磁突入電流に対しては、確実に励磁突入電流対策要素68が動作して差動リレー1の誤動作を防止し、また過渡的な平坦部分が生じるような事故電流に対しても、励磁突入電流対策要素68の不要出力が生じず、差動リレー1は正常動作を行なうことができる。
【0332】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、この偏差値が一定値以下である時に生じる出力と1サイクル前の平坦判定演算22出力とを比較して、両者の論理積条件の成立により出力を生じる励磁突入電流対策要素68を備えて差動電流Idの周期性を検出するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0333】
(第13の実施形態)
図19は、本実施形態による変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0334】
なお、差動要素5の構成については、図1と同一であるため、図19ではその構成の一部を割愛している。
【0335】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図19に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素69を備えた構成としている。
【0336】
この励磁突入電流対策要素69は、平坦性演算部21と、シフト演算部40と、最大値検出演算部41と、平坦判定演算部42と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0337】
ここで、平坦性演算部21、前述した第1の実施形態の平坦性演算部21の場合と同様の機能を有するものである。
【0338】
また、シフト演算部40は、平坦性演算部21の出力である平均偏差Dの値を1サイクル遅らせるためのものである。
【0339】
一方、最大値検出演算部41は、平坦性演算部21の出力である平均偏差Dと、シフト演算部40の出力である平均偏差Dとの比較を行ない、いずれか大きい方の平均偏差DMAX を出力するものである。
【0340】
また、平坦判定演算部42は、最大値検出演算部41の出力である平均偏差DMAX が所定値kよりも小さいか否かを判定し、所定値kよりも小さい時に出力を生じるものである。
【0341】
さらにまた、復帰遅延タイマー23は、1サイクル以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部42の出力を連続化するためのものである。
【0342】
次に、以上のように構成した本実施形態の差動リレー1の作用について説明する。
【0343】
なお、差動要素5の作用については、前記図22の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0344】
図19において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素69に導入され、平坦性演算部21にて前述した(3)式に基づく演算を行ない、差動電流Idの各sp毎における一定区間の平均偏差Dが算出される。
【0345】
そして、この平坦性演算部21の出力である現時点の平均偏差をDm とし、この平均偏差Dm をシフト演算部40によって1サイクル遅らせ、この遅らせた平均偏差をDm-96とする。
【0346】
一方、最大値検出部41では、これらの平均偏差Dm と平均偏差Dm-96とを比較し、いずれか大きい方の標準偏差がDMAX として出力される。
【0347】
また、平坦判定演算部42では、最大値検出部41の出力である平均偏差DMAX が所定値k以下となった時に、励磁突入電流と判定して出力が送出される。
【0348】
励磁突入電流は、変圧器鉄心飽和の関係により、電流が流れる期間と流れない期間の周期性が1サイクル毎に生じる。このため、平坦性演算部21で演算される平均偏差Dも、1サイクル毎に極小になる周期性を持った出力となり、現時点の平均偏差Dm と1サイクル前の平均偏差Dm-96とは等しい値となる。
【0349】
この結果、最大値検出演算部41では、そのまま平均偏差Dm (=Dm-96)を出力するため、平坦判定演算部42の出力は、1サイクル毎に出力する周期性を持つ断続出力である。
【0350】
そして、平坦判定演算部42の断続出力は、復帰遅延タイマー23により連続化して励磁突入電流対策要素69の出力としているため、差動リレー1の誤動作は生じない。
【0351】
一方、事故電流は、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳したものであり、無電流期間を生じることはないが、希に、高調波の重畳の関係で、過渡的な平坦部分を持つことが考えられる。
【0352】
図20は、事故電流で過渡的な平坦部分を持つ場合の一例を示す図であり、平坦性演算部21の出力である平均偏差Dの変化を表わしたものである。
【0353】
図20(a)は、平坦性演算部21の出力と前述した第1の実施形態における平坦判定演算部22の出力であり、平均偏差がBの時点で所定値k以下となり、図20(b)に示すように、平坦判定演算部22が過渡的に単発出力している。
【0354】
これに対し、図20(c)は、図20(a)の平坦性演算部21の出力の平均偏差Dm と、その出力をシフト演算部40を通して得られた平均偏差Dm-96とを比較した最大値検出演算部41の出力(平均偏差DMAX )であり、例えば、図20(a)の現時点での平均偏差Bの値と、その1サイクル前の平均偏差Cの値との比較を行ない、いずれかの大きい方(ここではC)を、図20(c)の最大値検出演算部41の平均偏差Dの値として出力するため、平均判定演算部42は動作せず、励磁突入電流対策要素69が出力を生じることはなく、差動リレー1は正常動作を行なうことができる。
【0355】
上述したように、本実施形態においては、差動電流Idの1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、現時点の偏差値と1サイクル前の偏差値とを比較して、いずれか大きい方の偏差値が所定値k以下となった時に出力を生じる励磁突入電流対策要素69を備えて差動電流Idの周期性を検出するようにしたので、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流をより一層確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器を得ることができる。
【0356】
尚、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、次のようにしても同様に実施することができるものである。
【0357】
(a)前述の各実施形態では、変圧器Trが2巻線変圧器である場合を例として説明したが、これに限らず、3巻線以上の複数端子を有する変圧器保護用の差動リレーについても、本発明を同様に適用することが可能である。
【0358】
(b)A/D変換のサンプリング周波数は、瞬時値のバラツキを見ることで、事故電流と励磁突入電流とを区別できる値であれば、特に前記した4.8kHzに限定されるものではない。
【0359】
(c)上記第7の実施形態では、差動判定演算部16の出力による起動条件を平坦判定演算部31に対して与える場合について説明したが、これに限らず、差動判定演算部16の出力による起動条件を、平坦性演算部21の起動条件としてよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0360】
(d)上記第7の実施形態では、第1の実施形態における平坦判定演算部22に適用した場合について説明したが、これに限らず、上記第2乃至第6の実施形態における各平坦判定演算部24,25,27,28,29に対して、差動判定演算部16の出力による起動条件を与えるようにしてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0361】
(e)上記第8の実施形態では、第1の実施形態における差動要素5の出力と励磁突入電流対策要素61の出力との論理器演算の動作出力により、差動要素5の出力を遅延する動作遅延タイマー30の出力を阻止する場合について説明したが、これに限らず、上記第2乃至第6の実施形態における差動要素5の出力と各々の励磁突入電流対策要素62,63,64,65,66の出力との論理器演算の動作出力により、差動要素5の出力を遅延する動作遅延タイマー30の出力を阻止するようにしてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0362】
(f)上記第9の実施形態では、ΔI要素33の出力による起動条件を平坦判定演算部31に対して与える場合について説明したが、これに限らず、ΔI要素33の出力による起動条件を、平坦性演算部21の起動条件としてよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0363】
(g)上記第9の実施形態では、第1の実施形態における平坦判定演算部22(31)に適用した場合について説明したが、これに限らず、上記第2乃至第6の実施形態における各平坦判定演算部24,25,27,28,29に対して、ΔI要素33の出力による起動条件を与えるようにしてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0364】
(h)上記第10の実施形態では、論理和演算回路36の出力による起動条件を平坦判定演算部31に対して与える場合について説明したが、これに限らず、論理和演算回路36の出力による起動条件を、平坦性演算部21の起動条件としてよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0365】
(i)上記第10の実施形態では、第1の実施形態における平坦判定演算部22(31)に適用した場合について説明したが、これに限らず、上記第2乃至第6の実施形態における各平坦判定演算部24,25,27,28,29に対して、ΔI要素33の出力による起動条件を与えるようにしてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0366】
(j)上記第11の実施形態では、差動電流IdによるΔI要素を適用した場合について説明したが、これに限らず、各々の入力電流によるΔI要素としてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0367】
(k)上記第11の実施形態では、第1の実施形態における平坦判定演算部22の出力とΔI要素33の出力との論理積演算の出力によって、差動要素5の出力を阻止する場合について説明したが、これに限らず、上記第2乃至第6の実施形態における各平坦判定演算部24,25,27,28,29の出力と、ΔI要素33の出力との論理積演算の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0368】
(l)上記第12の実施形態では、現時点と1サイクル前の平坦判定演算部22の各出力を比較する場合について説明したが、これに限らず、現時点と複数サイクル前の平坦判定演算部22の各出力を比較するようにしてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0369】
(m)上記第12の実施形態では、第1の実施形態における平坦判定演算部22の現時点の出力と1サイクルあるいは複数サイクル前の出力との比較を行なう場合について説明したが、これに限らず、上記第2乃至第6の実施形態における各平坦判定演算部24,25,27,28,29の現時点の出力と1サイクルあるいは複数サイクル前の出力との比較を行なうようにしてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0370】
(n)上記第13の実施形態では、現時点と1サイクル前の各平均偏差の値を比較する場合について説明したが、これに限らず、現時点と複数サイクル前の各平均偏差の値を比較するようにしてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0371】
(o)上記第13の実施形態では、第1の実施形態における平均偏差Dの現時点の値と1サイクルあるいは複数サイクル前の値との比較を行なう場合について説明したが、これに限らず、上記第2および第3の実施形態における平均偏差の比(D0 /Dmax )、(D0 /|Id1f|)、あるいは上記第4乃至第6の実施形態における標準偏差σ、標準偏差の比(σ0 /σmax )、(σ0 /|Id1f|)の現時点の値と1サイクルあるいは複数サイクル前の値との比較を行なうようにしてもよく、前述の場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0372】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、変圧器励磁突入電流と変圧器内部事故電流との波形の違い、すなわち励磁突入電流は、1サイクル中に被保護対象である変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と、変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない一定区間の平坦部分(無電流期間)とが必ず存在するのに対し、事故電流は、基本波電流もしくは不特定多数の高調波電流の重畳のため、一定区間の平坦部分が生じないことに着目し、差動電流の平坦性を、平均偏差、標準偏差、あるいはこれらに基づく値を演算して、その値が所定の値以下である時に励磁突入電流と判定する励磁突入電流対策要素を備えて、励磁突入電流と事故電流とを確実に区別することにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なデジタル形保護継電器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第1の実施形態を示す機能ブロック図。
【図2】事故電流波形と励磁突入電流波形の特徴を示す波形図。
【図3】同第1の実施形態のデジタル形保護継電器における作用を説明するための図。
【図4】同第1の実施形態のデジタル形保護継電器における作用を説明するための図。
【図5】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第2の実施形態を示す機能ブロック図。
【図6】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第3の実施形態を示す機能ブロック図。
【図7】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第4の実施形態を示す機能ブロック図。
【図8】同第4の実施形態のデジタル形保護継電器における作用を説明するための図。
【図9】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第5の実施形態を示す機能ブロック図。
【図10】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第6の実施形態を示す機能ブロック図。
【図11】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第7の実施形態を示す機能ブロック図。
【図12】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第8の実施形態を示す機能ブロック図。
【図13】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第9の実施形態を示す機能ブロック図。
【図14】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第10の実施形態を示す機能ブロック図。
【図15】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第11の実施形態を示す機能ブロック図。
【図16】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第12の実施形態を示す機能ブロック図。
【図17】同第12の実施形態のデジタル形保護継電器における作用を説明するための図。
【図18】同第12の実施形態のデジタル形保護継電器における作用を説明するための図。
【図19】本発明によるデジタル形保護継電器(差動リレー)の第13の実施形態を示す機能ブロック図。
【図20】同第13の実施形態のデジタル形保護継電器における作用を説明するための図。
【図21】変圧器に差動リレーを適用した場合の一例を示す回路図。
【図22】従来の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図。
【符号の説明】
G…電力系統電源、
CB…遮断器、
CT1,CT2…変流器(CT)、
Tr…変圧器、
1…差動リレー、
2…変成器(CT)、
3…A/D変換器、
4…CPU、
5…差動要素、
6…励磁突入電流対策要素(2f要素)、
11,12…振幅値演算部、
13…抑制電流(スカラー和)演算部、
14…差動電流(ベクトル和)演算部、
15…振幅値演算部、
16…差動判定演算部、
17…振幅値演算部、
18…2f判定演算部、
19…NOT(反転)演算回路、
20,32,37,39…論理積(AND)演算回路、
21,26…平坦性演算部、
22,24,25,27,28,29,31,42…平坦判定演算部、
23,35…復帰遅延タイマー、
30…動作遅延タイマー、
33…電流変化幅(ΔI)検出要素、
34…ΔI判定演算部、
36…論理和(OR)演算回路、
38,40…シフト演算部、
41…最大値検出演算部、
61,62,63,64,65,66,67,68,69…励磁突入電流対策要素。
Claims (13)
- 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングしてデジタル量に変換し、当該変換されたデジタル量を用いて各相毎の差動電流を演算し、当該演算された差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたデジタル形保護継電器において、
前記演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、かつ当該求められた偏差値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、
前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングしてデジタル量に変換し、当該変換されたデジタル量を用いて各相毎の差動電流を演算し、当該演算された差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたデジタル形保護継電器において、
前記演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、かつ当該求められた偏差値と当該偏差値を求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大値偏差値Dmax との比(D/Dmax )が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、
前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングしてデジタル量に変換し、当該変換されたデジタル量を用いて各相毎の差動電流を演算し、当該演算された差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたデジタル形保護継電器において、
前記演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量として、各瞬時値と瞬時値のN個の平均値との差をx乗(x=1,2,…,x)した値の総和をNで除した偏差値を求め、かつ当該求められた偏差値と前記演算された差動電流の大きさを示す量Iとの比(D/I)が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、
前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングしてデジタル量に変換し、当該変換されたデジタル量を用いて各相毎の差動電流を演算し、当該演算された差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたデジタル形保護継電器において、
前記演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、かつ当該求められた標準偏差σの値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、
前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングしてデジタル量に変換し、当該変換されたデジタル量を用いて各相毎の差動電流を演算し、当該演算された差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたデジタル形保護継電器において、
前記演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、かつ当該求められた標準偏差σと当該標準偏差σを求めた区間を含む過去1サイクルまたは1サイクル以内の他の一定区間での最大偏差値σmax との比(σ/σmax )が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、
前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングしてデジタル量に変換し、当該変換されたデジタル量を用いて各相毎の差動電流を演算し、当該演算された差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたデジタル形保護継電器において、
前記演算された差動電流の1サイクル中の一定区間のN個の瞬時値im 〜im-(N-1) のバラツキ(平坦性)を表わす量としての標準偏差σを求め、かつ当該求められた標準偏差σと前記演算された差動電流の大きさを示す量Iとの比(σ/I)が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、
前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 前記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のデジタル形保護継電器において、
前記差動保護要素の出力の送出を条件に前記第2の判定手段の動作を起動し、また当該差動保護要素の出力の復帰を条件に前記第2の判定手段の動作を停止するように前記励磁突入電流対策要素を構成すると共に、
前記差動保護要素の出力を所定時間動作遅延する動作遅延手段を付加し、
前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記動作遅延手段の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 前記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のデジタル形保護継電器において、
前記差動保護要素の出力を所定時間動作遅延する動作遅延手段と、
前記差動保護要素の出力と励磁突入電流対策要素の出力との論理積を演算する第1の論理積演算手段とを付加し、
前記第1の論理積演算手段の出力により、前記動作遅延手段の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 前記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のデジタル形保護継電器において、
前記演算された差動電流の大きさが一定値以上変化した時に出力を生じる第3の判定手段、および当該第3の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第2の復帰遅延手段を有する電流変化幅検出要素を備え、
前記電流変化幅検出要素の出力の送出を条件に前記励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を起動し、また当該電流変化幅検出要素の出力の復帰を条件に前記励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を停止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 前記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のデジタル形保護継電器において、
前記デジタル量に変換された各端子の導入電気量のうちのいずれかの端子電流または全ての端子電流の大きさが一定値以上変化した時に出力を生じる第3の判定手段、および当該第3の判定手段の出力を各々所定時間遅延する第2の復帰遅延手段を有する複数の電流変化幅検出要素を備え、
前記各々の電流変化幅検出要素のうちの少なくとも1つ以上の電流変化幅検出要素の出力の送出を条件に前記励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を起動し、また当該各々の電流変化幅検出要素の全ての出力の復帰を条件に前記励磁突入電流対策要素の第2の判定手段の動作を停止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 前記請求項9または請求項10に記載のデジタル形保護継電器において、
前記電流変化幅検出要素の出力と励磁突入電流対策要素の出力との論理積を演算する第2の論理積演算手段を付加し、
前記第2の論理積演算手段の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 前記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のデジタル形保護継電器において、
前記第2の判定手段の現時点の出力と当該第2の判定手段の1サイクルまたは複数サイクル前の出力との論理積を演算する第3の論理積演算手段を付加し、
前記第3の論理積演算手段の出力を、前記復帰遅延手段の入力とするようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。 - 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングしてデジタル量に変換し、当該変換されたデジタル量を用いて各相毎の差動電流を演算し、当該演算された差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたデジタル形保護継電器において、
励磁突入電流を判定するバラツキを表わす各々の電気量(平均偏差または平均偏差の比、もしくは標準偏差または標準偏差の比)の現時点の値と1サイクルまたは複数サイクル前の値とを比較していずれかの大きい方の値を求め、かつ当該大きい方の値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、
前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにしたことを特徴とするデジタル形保護継電器。
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