JP3697337B2 - ディジタル形保護継電器 - Google Patents
ディジタル形保護継電器 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3697337B2 JP3697337B2 JP17327097A JP17327097A JP3697337B2 JP 3697337 B2 JP3697337 B2 JP 3697337B2 JP 17327097 A JP17327097 A JP 17327097A JP 17327097 A JP17327097 A JP 17327097A JP 3697337 B2 JP3697337 B2 JP 3697337B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- current
- value
- output
- differential
- amplitude value
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Protection Of Transformers (AREA)
- Emergency Protection Circuit Devices (AREA)
- Measurement Of Current Or Voltage (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力系統の例えば変圧器保護に用いられるディジタル形保護継電器に係り、特に変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故に対しては確実に動作するようにしたディジタル形保護継電器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図30は、この種の変圧器保護用のディジタル形差動継電器(以下、差動リレーと称する)を電力用変圧器に適用した場合の構成例を示す回路図である。図30において、電力系統電源Gには、遮断器CBを介して、被保護対象である電力用変圧器(以下、単に変圧器と称する)Trが接続されている。
【0003】
また、変圧器Trを挟んで、各相毎の交流電流を抽出する主変流器CT1,CT2が設けられており、これら主変流器CT1,CT2により抽出された交流電流I1 ,I2 は差動リレー1に導入され、変圧器Trの内部事故時に動作して遮断器CBを遮断して変圧器Trが保護されるようになっている。
【0004】
図31は、従来の差動リレー1の内部構成例を示す機能ブロック図である。なお、ここでは、ディジタルリレーの中央演算処理部(CPU)において実行される演算処理を機能ブロック図として示している。図31において、差動リレー1は、入力変成器2と、アナログ/ディジタル変換器(以下、A/D変換器と称する)3と、中央演算処理部(以下、CPUと称する)4とからなっている。
【0005】
入力変成器2は、主変流器CT1,CT2により抽出された交流電流I1 ,I2 を、適当な大きさに変換するものである。また、A/D変換器3は、入力変成器2により変換された交流電流I1 ,I2 を一定時間間隔でサンプリング(一般に、定格周波数50kHzで4.8kHzの高速サンプリング)し、ディジタル量に変換するものである。
【0006】
さらに、CPU4は、A/D変換器3により変換されたディジタル量を用いてディジタル演算処理を行ない、変圧器Trの保護指令を遮断器CBに出力するものである。すなわち、CPU4では、ディジタル量に変換された電気量I1 ,I2 を用いて、以下のようなディジタル演算処理を行なう。
【0007】
5はCPU4でディジタル演算処理される差動保護要素(以下、単に差動要素と称する)、6はCPU4でディジタル演算処理される第2調波検出要素(以下、単に2f要素と称する)である。まず、差動要素5において、振幅値演算部11,12は、電気量I1 ,I2 の各々から基本波分1fを抽出して、振幅値|I1 |,|I2 |を求める。
【0008】
また、スカラー和(以下、抑制電流と称する)演算部13は、振幅値|I1 |,|I2 |のスカラー和(抑制電流=抑制量)Σ|I|を求める。一方、ベクトル和(以下、差動電流と称する)演算部14は、電気量I1 とI2 のベクトル和(差動電流=動作量)Idを求める。
【0009】
また、振幅値演算部15は、差動電流Idから基本波電流1fを抽出して、振幅値|Id1f|を求める。さらに、差動判定演算部16は、抑制電流Σ|I|と差動電流|Id1f|との関係が所定値以上になった時に、内部事故と判定して出力を生じる。
【0010】
一方、2f要素6において、振幅値演算部17は、差動電流Idから第2調波電流2fを抽出して、振幅値|Id2f|を求める。また、2f判定演算部18は、差動電流Idに含有される基本波電流1fと第2調波電流2fとの関係が所定値以上になった時に、励磁突入電流と判定して出力を生じる。
【0011】
一方、2f要素6の2f判定演算部18の出力をNOT演算回路19により反転させた出力と、差動要素5の差動判定演算部16の出力との論理積(AND)演算を論理積演算回路20で行ない、この論理積演算回路20の出力を差動リレー1の出力として送出する。
【0012】
かかる構成の差動リレー1において、交流電流I1 ,I2 は、入力変成器2を通して、A/D変換器3によりディジタル量に変換された後、差動要素5に導入される。差動要素5に導入された電気量I1 ,I2 は、振幅値演算部11,12を通して、抑制電流演算部13により抑制電流Σ|I|を導出すると共に、差動電流演算部14により差動電流Id=I1 +I2 を導出する。
【0013】
この差動電流Idは、1fが振幅値演算部15および2f要素6に各々導入される。この場合、負荷電流および外部事故時の通過電流による差動電流Idは零となり、電力用変圧器Trの内部事故時には事故電流に応じた差動電流Idが発生する。
【0014】
振幅値演算部15から出力された差動電流Idの1fの振幅値|Id1f|と、抑制電流Σ|I|は、各々差動判定演算部16に導入され、|Id1f|−AΣ|I|≧B(A、Bは定数)の関係となった時に、変圧器内部事故と判定して差動要素5が出力を生じる。一方、2f要素6に導入された差動電流Idは、振幅値演算部17に導入され、差動電流Idから第2調波電流2fを抽出して2f振幅値|Id2f|を出力し、2f判定演算部18に導入される。
【0015】
また、この2f判定演算部18には、差動要素5にて演算された1f振幅値|Id1f|も導入され、差動電流Idに含有される基本波電流1fに対する第2調波電流2fの度合(|Id2f|/|Id1f|)が所定値以上になった時に、励磁突入電流と判定して2f要素6が出力を生じる。
【0016】
そして、この2f要素6が動作すると、その出力はNOT演算回路19を通して差動要素5の出力を阻止(ロック)するため、差動リレー1としての動作を防止することができる。次に、変圧器励磁突入電流対策の必要性について簡単に説明する。
【0017】
いま、図30における遮断器CBを閉路することにより、変圧器Trに電圧が印加されて、変圧器鉄心の磁化特性に基づく励磁突入電流が流れる。この励磁突入電流は、見掛け上、変圧器Trの内部事故のように、電力系統電源G側より流入し、差動リレー1の動作量(差動電流Id)となるため、差動リレー1の誤動作(事故でないのに動作する)の原因となる。
【0018】
従って、励磁突入電流と実際の事故による電流とを区別する必要があり、その方法として、励磁突入電流に第2調波電流2fが多く含まれる特徴から、差動電流Idに含まれる基本波電流Ifに対する第2調波電流2fの割合が所定値(一般には15%程度が良く用いられる)以上の時には、励磁突入電流と判定して出力する2f要素6により、差動要素5の出力をロックして、差動リレー1の誤動作を防止するようにしている。
【0019】
前述したように、従来の変圧器保護においては、差動電流により変圧器の事故を検出する差動リレーが用いられており、変圧器励磁突入電流によって差動リレー1が誤動作しないように、励磁突入電流に含まれる第2調波電流を検出し、その含有率が所定値以上となった時に、リレー動作を阻止する2f要素6を備えたものが採用されている。
【0020】
しかしながら、近年では、1000kV送電や500kV長距離地中ケーブルの導入計画が進んでおり、このため、電力系統の静電容量が大きくなって共振周波数が低下し、事故電流に含まれる第2調波近傍の高調波電流が増加することが予想されている。
【0021】
その結果、従来の第2調波電流検出方式を採用した差動リレー1では、変圧器内部事故時においても、2f要素6が動作して、差動リレー1が誤不動作(過剰ロックにより事故があるのに動作できない)となる可能性がある。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の差動リレーにおいては、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対して、その内部事故時に確実に動作することができない可能性があるという問題があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故に対して確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を提供することを目的にしている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電流の瞬時値のディジタル量に変換し、前記変換されたディジタル量を用いて各相毎の差動電流を求め、ここで求められた差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたディジタル形保護継電器において、
【0024】
本発明の請求項1に係るディジタル保護継電器は、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3,…, im-(k-1))を導入し、下記振幅値演算式(イ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第2の判定手段、および前記第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第1の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにした。
【0025】
【数8】
【0026】
次に作用について説明する。励磁突入電流には、1サイクル中に変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と被保護対象である変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない区間(無電流期間)が必ず存在するのに対し、事故電流には、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳のため無電流期間が生じることはない。
【0027】
なお、励磁突入電流の1サイクル中に存在する無電流期間は本来電流零であるが、変流器による直流分喪失等により、必ずしも保護継電器の見る励磁突入電流(=差動電流)の無電流期間は単純に電流零の期間とはならず、前記の変流器の直流分喪失等の分だけ電流瞬時値を有するが電流瞬時値の変化は少ない平坦な電流期間であるといえる。
【0028】
このため、電流の1サイクル中の一定区間における電流瞬時値の変化が小さいことを、電流の1サイクル中の一定区間における基本波成分の振幅値が小さいことで検出し、これによる振幅値が所定値以下の時に電流瞬時値の変化が少ないすなわち励磁突入電流と判定して、励磁突入電流による保護継電器の誤動作を防止することができる。
【0029】
上記を実現するためには、交流器の直流分喪失等の影響を受けずに、かつ差動電流の一定区間における基本波成分の振幅値を算出することが可能である振幅値演算式が必要となるが、この振幅値演算式は、「K個の電流瞬時値(im, im-1,…, im-k-1)を、直流成分+基本波成分にカーブフィットさせた式に最小二乗法を適用して得られる解の内の基本波成分の振幅値の条件式」で得ることができる。かかる点について以下に詳しく説明する。
【0030】
まず、得られたK個の電流瞬時値(im ,im-1 ,…,im-K-1 )を、直流分+基本波カーブフィットさせる。
im-k =D+Isin(t+Φ−kT) …(0)
ただし、D:DC分の振幅値、 I:基本波成分の振幅値
T:サンプリング間隔(任意の電気角。例えば15°など)
K:サンプリング数 (自然数。例えば5など)
k=0〜K−1
Φ=(K−1)・T/2
【0031】
ここで、X=Isin(t)、Y=Icos(t)とすると、式(0)は式(0′)に置き換えられる。さらに、カーブフィット誤差の二乗和をfとおくと、fは式(1)で表される。
【0032】
【数9】
【0033】
ここで、最小二乗法を適用する。すなわち、式(1)のfが最小となる解(D,X,Y)を求める。fが最小となる解は、以下の式(2),(3),(4)を満たすので、これら3つの連立方程式の解を求めれば良い。
以下に、解の導出過程を示す。
【0034】
【数10】
【0035】
まず、式(1)をDで偏微分すると、(5)式が得られる。ここで(5)式のアンダーライン部は0となる。その根拠を以下に証明する。
【0036】
【数11】
【0037】
【数12】
【0038】
【数13】
【0039】
【数14】
【0040】
【数15】
よって、式(5)は以下のようになる。
【0041】
【数16】
【0042】
次に、式(1)をXで偏微分して、
【数17】
【0043】
また、式(1)をYで偏微分して、
【数18】
【0045】
ここでfが最小となる条件(式(4))より式(8)を得る。
【0046】
【数19】
【0047】
式(9)の左辺は、式(10)の左辺に等しいから、
【数20】
【0048】
Xについて解くと、式(11)となり、また式(8)をYについて解くと式(12)となる。
【数21】
【0049】
ここで、X=Isin(t)、Y=Icos(t)の関係より、基本波成分の振幅値Iを以下のように得る。すなわち、変流器の直流分喪失等の影響を受けずにかつ差動電流の一定区間における基本波成分の振幅値を算出することが可能である振幅値演算式は式(イ)で得ることができる。
【0050】
【数22】
【0051】
従って、まず、請求項1に対応する発明のディジタル形保護継電器においては、差動電流の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3, …,im-(k-1))を導入し、下記振幅値演算式(イ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、当該求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第2の判定手段、および当該第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することが可能となる。
【0052】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0053】
【数23】
【0054】
本発明の請求項2に係るディジタル形保護継電器は、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔の3個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2)を導入し、下記振幅値演算式(ロ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第3の判定手段、および前記第3の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第2の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するよう構成した。
【0055】
【数24】
【0056】
請求項2に対応する発明のディジタル形保護継電器においては、差動電流の内、電気角T度(例えば1200Hzサンプリングでは電気角15度)間隔の3個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2)を導入し、「3個の電流瞬時値(im, im-1, im-2)を、直流成分+基本波成分にカーブフィットさせた式に最小二乗法を適用して得られる解の内の基本波成分の振幅値の条件式」すなわち、式(イ)にK=3を代入して下記のように得られる振幅値演算式(ロ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第3の判定手段、および当該第3の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することが可能となる。
【0057】
次に振幅値演算式(ロ)の導出について説明する。式(イ)にK=3を代入して、
【数25】
【0058】
【数26】
【0059】
本発明の請求項3に係るディジタル保護継電器は、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔の4個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3)を導入し、下記振幅値演算式(ハ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第4の判定手段、および前記第4の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第3の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するように構成した。
【0060】
【数27】
【0061】
請求項3に対応する発明のディジタル形保護継電器においては、差動電流の内、電気角T度(例えば1200Hzサンプリングでは電気角15度)間隔の4個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3)を導入し、「4個の電流瞬時値(im, im-1, im-2, im-3)を、直流成分+基本波成分にカーブフィットさせた式に最小二乗法を適用して得られる解の内の基本波成分の振幅値の条件式」すなわち、式(ロ)にK=4を代入して下記のように得られる振幅値演算式(ハ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、当該求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第4の判定手段、および当該第4の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することが可能となる。
【0062】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0063】
次に振幅値演算式(ハ)の導出について説明する。式(イ)にK=4を代入して、
【数28】
【0064】
【数29】
【0065】
本発明の請求項4に係るディジタル保護継電器は、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔の5個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3, im-4)を導入し、下記振幅値演算式(ニ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第5の判定手段、および前記第5の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第4の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するように構成した。
【0066】
【数30】
【0067】
請求項4に対応する発明のディジタル形保護継電器においては、差動電流の内、電気角T度(例えば1200Hzサンプリングでは電気角15度)間隔の5個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3, im-4)を導入し、「5個の電流瞬時値(im, im-1, im-2, im-3, im-4)を、直流成分+基本波成分にカーブフィットさせた式に最小二乗法を適用して得られる解の内の基本波成分の振幅値の条件式」すなわち、式(イ)にK=5を代入して下記のように得られる振幅値演算式(ニ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、当該求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第5の判定手段、および当該第5の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することが可能となる。
【0068】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0069】
次に振幅値演算式(ニ)の導出について説明する。式(イ)にK=5を代入して、
【数31】
【0070】
【数32】
【0071】
本発明の請求項5に係るディジタル保護継電器は、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔の6個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3, im-4, im-5)を導入し、下記振幅値演算式(ホ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第6の判定手段、および前記第6の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第5の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するように構成した。
【0072】
【数33】
【0073】
請求項5に対応する発明のディジタル形保護継電器においては、差動電流の内、電気角T度(例えば1200Hzサンプリングでは電気角15度)間隔の6個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3, im-4, im-5)を導入し、「6個の電流瞬時値(im, im-1, im-2, im-3, im-4, im-5)を、直流成分+基本波成分にカーブフィットさせた式に最小二乗法を適用して得られる解の内の基本波成分の振幅値の条件式」すなわち、式(イ)にK=6を代入して下記のように得られる振幅値演算式(ホ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、当該求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第6の判定手段、および当該第6の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することにより、差動電流の平坦性を検出して、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することが可能となる。
【0074】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0075】
次に振幅値演算式(ホ)の導出について説明する。式(イ)にK=6を代入して、
【数34】
【0076】
【数35】
【0077】
本発明の請求項6に係るディジタル保継電器は、前記求められた差動電流の内、前記の電気角Tと同じまたは異なる電気角T′度間隔の、前記の個数Kと同じまたは異なるK′個の瞬時値のディジタル量(im ′,im-1 ′,im-2 ′,im-3 ′,…,im-(K ′ -1) ′)を導入し、下記振幅値演算式(ヘ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第7の判定手段と、前記第7の判定手段の出力と前記第2の判定手段乃至第6の判定手段の出力との論理和を演算する第1の論理和演算手段とを励磁突入電流対策要素に新たに付加した。
【0078】
【数36】
【0079】
通常、励磁突入電流は変圧器に電圧を印加したときに発生するが、保護範囲外部での事故が除去された時(=事故回復時)の電圧上昇によっても、励磁突入電流が発生することがある。この時は、通常の変圧器電圧印加時とは異なり、励磁突入電流に加えて変圧器を通過する電流も発生する。このような場合、保護継電器の見る励磁突入電流(=差動電流)の無電流期間は、変圧器のタップ位置の影響を受ける構成などにより、変圧器を通過する電流の影響を受けた電流期間となる。
【0080】
一般的に、事故回復時に発生する励磁突入電流の大きさは、通常の変圧器電圧印加時に発生する励磁突入電流よりも小さく、その無電流期間は、通常の変圧器電圧印加時に発生する励磁突入電流の無電流期間よりも長い。一方、請求項1乃至請求項5に記載の振幅値演算式には、その演算区間が広いほど高調波の影響を低減する特徴があり、演算区間が広い振幅値演算式を併用することで、変圧器を通過する電流の影響を小さくし、事故回復時の励磁突入電流の無電流期間をより一層確実に検出することが可能であり、励磁突入電流による保護継電器の誤動作を防止することができる。
【0081】
従って、まず、請求項6に対応する発明のディジタル形保護継電器においては、請求項1に記載のディジタル形保護継電器において、前記求められた差動電流の内、電気角T′度間隔のK′個の瞬時値のディジタル量(im ′,im-1 ′,im-2 ′,im-3 ′,…,im-(K ′ -1) ′)を導入し、振幅値演算式(ヘ)へ、
【0082】
【数37】
【0083】
にて、差動電流の一定区間における振幅値を、広い演算区間にて求め、当該求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第7の判定手段を付加し、第7の判定手段で事故回復時の励磁突入電流の平坦性をより確実に検出し、さらに当該第7の判定手段の出力と前記第2の判定手段の出力との論理和を演算する第1の論理和演算手段とを励磁突入電流対策要素に付加することで、励磁突入電流と事故電流をより確実に格別することが可能となる。
【0084】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0085】
本発明の請求項7に係るディジタル保継電器は、請求項1乃至請求項5記載のディジタル形保護継電器において、第2の判定手段乃至第6の判定手段の出力を所定時間動作遅延する第1の動作遅延手段を励磁突入電流対策要素に新たに付加し、前記第1の動作遅延手段の出力を前記第1の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の入力とするようにした。
【0086】
請求項7に対応する発明のディジタル形保継電器においては、請求項1乃至請求項5に記載のディジタル形保護継電器において、第2の判定手段乃至第6の判定手段の出力を所定時間動作遅延する第1の動作遅延手段を励磁突入電流対策要素に付加するようにして、偶発的に事故電流に短期間の平坦部分が生じても、励磁突入電流対策要素の不要出力がなく、保護継電器は正常動作することができ、励磁突入電流と事故電流をより確実に区別することが可能となる。
【0087】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0088】
本発明の請求項8に係るディジタル保継電器は、請求項1乃至請求項5記載のディジタル形保護継電器において、第2の判定手段乃至第6の判定手段の現時点の出力と第2の判定手段乃至第6の判定手段の1サイクルまたは複数サイクル前の出力との論理積を演算する第1の論理積演算手段を新たに付加し、前記第1の論理積演算手段の出力を前記第1の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の入力とするようにした。
【0089】
請求項8に対応する発明のディジタル形保継電器においては、請求項1乃至請求項5に記載のディジタル形保護継電器において、第2の判定手段乃至第6の判定手段の出力と第2の判定手段乃至第6の判定手段の1サイクルまたは複数サイクル前の出力との論理積を演算する第1の論理積演算手段を新たに付加し、前記論理積演算手段の出力を前記第1の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の入力とするようにして、過渡的に事故電流に短期間の平坦部分が生じても、励磁突入電流対策要素の不要出力がなく、保護継電器は正常動作することができ、励磁突入電流と事故電流をより確実に区別することが可能となる。
【0090】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0091】
本発明の請求項9に係るディジタル保継電器は、請求項1乃至請求項5記載のディジタル形保護継電器において、前記求められた振幅値の現時点の値と1サイクルまたは複数サイクル前の値または1サンプリング以前の値とを比較していずれか大きい方の値を求め、かつ当該大きい方の値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第8の判定手段を新たに付加し、前記第8の判定手段の出力を前記第1の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の入力とするようにした。
【0092】
請求項9に対応する発明のディジタル形保継電器においては、請求項1乃至請求項5に記載のディジタル形保護継電器において、前記求められた振幅値の現時点の値と1サイクルまたは複数サイクル前の値とを比較していずれかの大きい方の値を求め、かつ当該大きい方の値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第8の判定手段を新たに付加し、当該第8の判定手段の出力を前記第1の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の入力とするようにして、過渡的に事故電流に短期間の平坦部分が生じても、励磁突入電流対策要素の不要出力がなく、保護継電器は正常動作することができ、励磁突入電流と事故電流をより確実に区別することが可能となる。
【0093】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0094】
本発明の請求項10に係るディジタル保継電器は、請求項1乃至請求項9記載のディジタル形保護継電器において、複数の端子を有する被保護対象のいずれか1つの端子又は複数端子の各相毎の交流電圧を導入し、当該導入された交流電圧を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電圧の瞬時値のディジタル量に変換し、ここで変換されたディジタル量を用いて各相毎の電圧の振幅値を求め、当該求められた電圧の振幅値が所定の値以上である時に出力を生じる第9の判定手段と、前記第9の判定手段の出力と前記第2の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の出力との論理積を演算する第2の論理積演算手段とを励磁突入電流対策要素に新たに付加した。
【0095】
また、変圧器の端子電圧に着目した場合、励磁突入電流が発生するような電圧印加時の変圧器端子電圧は大きく、変圧器内部事故時の端子電圧は小さい、という違いがある。そこで、電圧の振幅値の大きさを判定する手段を併用することで、励磁突入電流と内部事故電流との識別をより一層確実に行うことが可能であり、励磁突入電流による保護継電器の誤動作を防止することができる。
【0096】
従って、まず、請求項10に対応する発明のディジタル形保護継電器においては、請求項1乃至請求項9に記載のディジタル形保護継電器において、複数の端子を有する被保護対象のいずれか1つの端子の各相毎の交流電圧を導入し、当該導入された交流電圧を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電圧の瞬時値のディジタル量に変換し、当該変換されたディジタル量を用いて各相毎の電圧の振幅値を求め、当該求められた電圧の振幅値が所定の値以上である時に出力を生じる第9の判定手段と、当該第9の判定手段の出力と前記第2の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の出力との論理積を演算する第2の論理積演算手段とを励磁突入電流対策要素に新たに付加するようにして、電圧の大きさを検出して、励磁突入電流と事故電流をより確実に区別することが可能となる。
【0097】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0098】
本発明の請求項11に係るディジタル保護継電器は、請求項1及至請求項9記載のディジタル形継電器において、複数の端子を有する被保護対象のいずれか1つの端子又は複数の端子の各相毎の交流電圧を導入し、当該導入された交流電圧を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電圧の瞬時値のディジタル量に変換し、前記求められた交流電圧の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(Vm, Vm-1, Vm-2, Vm-3, …,Vm-(k-1))を導入し、下記の振幅値演算式(ト)にて、交流電圧の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第10の判定手段と、および前記第10の判定手段の出力と前記第2の判定手段及至第8の判定手段の出力との論理積を演算する第3の論理積演算手段とを励磁突入電流対策要素に新たに付加した。
【0099】
【数38】
【0100】
さらに、短い期間の変圧器の端子電圧に着目した場合、励磁突入電流が発生するような電圧印加時の変圧器端子電圧は大きく、変圧器内部事故時の端子電圧は小さい、という違いに加えて、励磁突入電流の無電流期間においては、電流が流れないため、電圧降下が全く生じず、最も大きな電圧の振幅値が得られるので、さらに変圧器内部事故時の端子電圧との違いが顕著に現れるという特徴がある。
【0101】
そこで、電圧の振幅値の大きさを、差動電流の振幅値演算と同じ演算期間で求め、当該得られた振幅値が一定値以上であるか否かを判定する手段を併用することで、励磁突入電流と内部事故電流との識別をより一層確実に行うことが可能であり、励磁突入電流による保護継電器の誤動作を防止することができる。
【0102】
請求項11に対応する発明のディジタル形保護継電器においては、請求項1及至請求項9記載のディジタル形保護継電器において、複数の端子を有する被保護対象のいずれか1つの端子又は複数端子の各相毎の交流電圧を導入し、当該導入された交流電圧を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電圧の瞬時値のディジタル量に変換し、前記求められた交流電圧の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(Vm, Vm-1, Vm-2, Vm-3, …,Vm-(k-1))を導入し、下記の振幅値演算式(ト)、へ移る。
【0103】
【数39】
【0104】
にて、交流電圧の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以上か否かを判定して一定値以上の時に出力する第10の判定手段と、および前記第10の判定手段の出力と前記第2の判定手段乃至第8の判定手段の出力との論理積を演算する第3の論理積演算手段とを励磁突入電流対策要素に新たに付加するようにして、差動電流と同じの短い演算期間の電圧の振幅値を検出して、励磁突入電流と事故電流をより区別することが可能となる。
【0105】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0106】
さらに、変圧器の端子電圧の変化に着目した場合、励磁突入電流が発生するような電圧印加時の変圧器端子電圧は電圧印加以前に比べて大きく上昇し、変圧器内部事故時の端子電圧は低下もしくはほとんど上昇しない、という違いがある。
【0107】
そこで、電圧の振幅値の上昇幅を判定する手段を併用することで、励磁突入電流と内部事故電流との識別をより一層確実に行うことが可能であり、励磁突入電流による保護継電器の誤動作を防止することができる。
【0108】
本発明の請求項12に係るディジタル保護継電器は、請求項1及至請求項11記載のディジタル形継電器において、複数の端子を有する被保護対象のいずれか1つの端子又は複数端子の各相毎の交流電圧を導入し、当該導入された交流電圧を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電圧の瞬時値のディジタル量に変換し、当該変換されたディジタル量を用いて各相毎の電圧の振幅値を求め、当該求められた電圧の振幅値が所定の値以上増加した時に出力を生じる第11の判定手段と、前記第11の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第6の復帰遅延手段と、前記第6の復帰遅延手段の出力と前記励磁突入電流対策要素との論理積を演算する第4の論理積演算手段とを新たに付加し、前記第4の論理積演算手段の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにした。
【0109】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0110】
本発明の請求項13に係るディジタル保護継電器は、請求項1乃至請求項12記載のディジタル形保護継電器において、前記差動保護要素の出力を所定時間動作遅延する第2の動作遅延手段と、前記差動保護要素の出力と励磁突入電流対策要素の出力との論理積を演算する第5の論理積演算手段とを新たに付加し、前記第5の論理積演算手段の出力により、前記第2の動作遅延手段の出力を阻止するようにした。
【0111】
これにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することができる。
【0112】
図1は請求項1に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1において図31と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0113】
すなわち、本実施形態の差動リレー1は、図1に示すように、図31における励磁突入電流対策要素6を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素61を備えた構成としている。
【0114】
この励磁突入電流対策要素61は、振幅値演算部21と、平坦判定演算部22と、復帰遅延タイマー23とからなっている。ここで、振幅値演算部21は、前記差動要素5の差動電流演算部14により求められた差動電流Idの波形の一定区間における振幅値を求めるものである。
【0115】
すなわち、本例では、差動電流の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 ,…,im-(K-1) )を導入し、振幅値演算式(イ)にて差動電流の一定区間における振幅値を求めるものである。
【0116】
【数40】
【0117】
また、平坦判定演算部22は、振幅値演算部21により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル程度以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部22の出力を連続化するためのものである。これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしている。
【0118】
次に、以上のように構成した本実施の形態の差動リレー1の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、31の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。図1において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素61に導入され、振幅演算部21にて振幅値を検出するための演算を行って、振幅値Jが求められる。そして、ここで求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力を生じる。
【0119】
一方、復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0120】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。まず、変圧器内部事故による事故電流と、励磁突入電流の電流波形の特徴の違いを説明する。図2は、事故電流(a)と励磁突入電流(b)の電流波形の特徴の違いを示す波形図であり、励磁突入電流には、1サイクル中に変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない区間(無電流期間)が必ず存在するのに対し、事故電流には、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳のため無電流期間が生じることはない。
【0121】
なお、励磁突入電流の1サイクル中に存在する無電流期間は本来電流零であるが、変流器CTによる直流分喪失等により、必ずしも保護継電器の見る励磁突入電流(=差動電流Id)の無電流期間は単純に電流零ではなく、瞬時値の変化が少ない平坦な電流期間であると言える。
【0122】
このため、電流の1サイクル中の一定区間における振幅値が小さいこと、すなわち平坦性を見ることで、励磁突入電流と判定することができ、差動リレー1の誤動作を防止する。すなわち、励磁突入電流対策要素61の振幅値演算部21では、振幅値を求めるための以下のような演算が行われる。
【0123】
図3(a)は、励磁突入電流を、その瞬時値のディジタル量に変換したときの値を示すものである。図3(a)において、現時点の瞬時値をim 、1サンプリング(以下、spと表す)前の瞬時値をim-1 、2sp前の瞬時値をim-2 、3sp前の瞬時値をim-3 ,…,(K−1)sp前の瞬時値をim -(k-1)と置く。
【0124】
図3(a)の瞬時値にて振幅値演算を説明すると、1サイクル中の一定区間のK個の瞬時値(例えば区間aのim 〜im -(k-1))から、下記の(イ)式で求める。なお、一定区間とは最大励磁突入電流での無電流期間より小さい区間であればよく、特に限定した期間ではない。
【0125】
このJの値を振幅値と称し、差動電流の1サイクル中の一定区間における振幅値を表すものであり、差動電流の1サイクル中の前記一定区間の電流波形が平坦である場合のみ、振幅値Jは零となる。
【0126】
【数41】
【0127】
区間aの振幅値Jと同様に、sp毎に過去K個のsp数を用いて演算(図3(a)では区間b,c…)することにより、常に一定区間の振幅値を見ることができ、図3(b)の振幅値演算部21での演算結果に示すような個々の振幅値Ja,Jb,Jc…の値となる。
【0128】
図3(b)のような平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの振幅値Jの値は、演算区間がすべて差動電流Idの平坦部分に含まれた時(図3(a)の区間a)に、その値は最小となる。また、振幅値Jが一定値kよりも小さい値をとった時に、平坦判定演算部22は、図3(c)の平坦判定演算部22での演算結果のように出力を生じる。
【0129】
なお、上記一定値kは、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別を行うための値であり、変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差等による誤判定とならない値である。
【0130】
次に、事故電流と励磁突入電流との平坦性検出の一例について、図4を用いて説明する。まず、励磁突入電流(b)について述べる。前述したように、差動リレーの振幅値演算部21では、一定区間(ここではt1の演算区間を持つ)の振幅値Jをsp毎に常に演算しており、平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの振幅値Jの値は、演算区間(t1)がすべて平坦部分に含まれた時に最小となり、その値が一定値k以下の時に平坦判定演算部22は出力を生じる。
【0131】
図4のt1は、すべて平坦部分に含まれたときの演算区間を示すものであり、その後、電流の立ち上がりと共に演算区間での平坦性がなくなり、振幅値Jが一定値k以上となるまでの時間t2の間、平坦判定演算部22は出力を生じる。また、次のサイクルでも同様の検出を行うため、1サイクルに1回は必ず平坦判定演算部22が出力を生じる。
【0132】
このため、平坦判定演算部22の出力は、1サイクル毎の断続出力となるため、1サイクル程度以上の時間を持った復帰遅延タイマー23によって連続化を行い、この復帰遅延タイマーの出力を励磁突入電流対策要素61の出力とする。そして、この復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させて、差動要素5の出力との論理積演算を論理積演算回路20にて行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0133】
一方、事故電流(a)には、基本波電流の他に高調波電流も多く含まれる場合があり、特に従来の差動リレーが誤不動作となるような第2調波近傍の高調波に対しても、t1時間だけの平坦区間が生じないため、平坦判定演算部22の出力はなく、差動判定演算部16の出力は、論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行うことができる。
【0134】
なお、以上の説明では、平坦性を表す値として、振幅値Jを基に説明してきたが、下記の一般式((イ−1)式)で表される値としてもよい。すなわち、前記演算された差動電流の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(K-1) )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求める。
【0135】
つまり、(イ−1)式で表れる振幅値のN乗JN を振幅値演算として求める。そして、この求められた振幅値のN乗JN が一定値k以下の時に出力を生じる平坦判定演算部22を備えた励磁突入電流対策要素61を備えて、その出力によって前記差動要素5の出力を阻止することにより、前述した場合と同様の作用を奏することができる。
【0136】
【数42】
【0137】
一例を挙げると、N=2の時は(イ−1)式の代わりに(イ−2)式を用いてもよいことになる。
【数43】
【0138】
上述したように、本実施の形態においては、変圧器励磁突入電流と変圧器内部事故電流との波形の違い、すなわち励磁突入電流は1サイクル中に変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない一定の平坦部分が必ず存在するのに対し、事故電流は基本波電流もしくは不特定多数の高調波電流重畳のため一定区間の平坦部分が生じないことに着目したものである。
【0139】
そして差動電流Idの内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(K-1) )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求め、この振幅値のN乗が一定値以下であるときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素61を備えて差動電流Idの平坦性を検出し、この励磁突入電流対策要素61の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにした。
【0140】
したがって励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった。内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0141】
図5は請求項2に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。なお、差動要素5の構成については、図1と全く同じであるため、図5ではその構成の一部を割愛している。
【0142】
即ち、本実施の形態の差動リレー1は、図5に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素62を備えた構成としている。この励磁突入電流対策要素62は、振幅値演算部24と、平坦判定演算部22と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0143】
ここで、振幅値演算部24は、前記差動要素5の差動電流演算部14により求められた差動電流Idの波形の一定区間における振幅値を求めるものである。即ち、本例では、差動電流の内、電気角T度間隔の3個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 )を導入し、下記の振幅値演算式(ロ)にて差動電流の一定区間における振幅値を求める。
【0144】
【数44】
【0145】
また、平坦判定演算部22は、振幅値演算部24により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。即ち、本例では、振幅値演算部24により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じる。
【0146】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル程度以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部22の出力を連続化するためのものである。これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止できる。
【0147】
次に、本実施の形態の差動リレー1の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図5において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素62に導入され、振幅値演算部24にて平坦性を検出するための演算を行って振幅値Jが求められる。そして、ここで求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力を生じる。
【0148】
一方、復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0149】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。変圧器内部事故による事故電流と、励磁突入電流の電流波形の特徴の違いについては、前記第1の実施の形態の場合と全く同じであるため、その説明を割愛する。本実施の形態においても、前記第1の実施の形態の場合と同様に、電流の1サイクル中の一定区間における振幅値が小さいこと、即ち平坦性を見ることで、励磁突入電流と判定することができ、差動リレー1の誤動作を防止する。即ち、励磁突入電流対策要素62の振幅値演算部24では、振幅値を求めるための以下のような演算が行われる。
【0150】
図6(a)は、励磁突入電流を、その瞬時値のディジタル量に変換したときの値を示すものである。図6(a)において、現時点の瞬時値をim 、1サンプリング(以下、spと表す)前の瞬時値をim-1 、2sp前の瞬時値をim-2 と置く。
【0151】
図6(a)の瞬時値にて振幅値演算を説明すると、1サイクル中の一定区間の3個の瞬時値(例えば区間aのim 〜im-2 )から、下記の振幅値演算式(ロ)で求める。
【0152】
【数45】
【0153】
なお、一定区間とは最大励磁突入電流での無電流期間より小さい区間であればよく、特に限定した期間ではない。このJの値を振幅値と称し、差動電流の1サイクル中の一定区間における振幅値を表すものであり、差動電流の1サイクル中の前記一定区間の電流波形が平坦である場合のみ、振幅値Jは零となる。
【0154】
区間aの振幅値Jと同様に、sp毎に過去3個のsp数を用いて演算(図6(a)では区間b,c…)することにより、常に一定区間の振幅値を見ることができ、図6(b)の振幅値演算部24での演算結果に示すような個々の振幅値Ja,Jb,Jc…の値となる。
【0155】
図6(b)のような平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの振幅値Jの値は、演算区間がすべて差動電流Idの平坦部分に含まれた時(図6(a)の区間a)に、その値は最小となる。また、振幅値Jが一定値kよりも小さい値をとった時に、平坦判定演算部22は、図6(c)の平坦判定演算部22での演算結果のように出力を生じる。
【0156】
なお、上記一定値kは、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別を行うための値であり、変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差等による誤判定とならない値である。なお、以上の説明では、平坦性を表す値として、振幅値Jを基に説明したが、下記の一般式((ロ−1)式)で表される値としてもよい。
【0157】
すなわち、前記演算された差動電流の内、電気角T度間隔の3個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求める。つまり、(ロ−1)式で表される振幅値のN乗JN を振幅値演算として求める。
【0158】
【数46】
【0159】
一例を挙げると、N=2の時は(ロ−1)式の代わりに(ロ−2)式を用いてもよいことになる。
【数47】
【0160】
そして、この求められた振幅値のN乗JN が一定値k以下の時に出力を生じる平坦判定演算部22を備えた励磁突入電流対策要素62を備えて、その出力によって前記差動要素5の出力を阻止することにより、前述した場合と同様の作用を奏する。
【0161】
なお、本実施の形態においては、3個のsp数を用いて演算しているので、sp間隔がTの保護継電器の場合、その演算区間は3Tとなる。この場合、演算区間3Tがすべて差動電流Idの平坦部分に含まれる時に振幅値Jの値は最小となる。本実施の形態によれば、最大励磁突入電流の平坦部分が3T以上となるような変圧器に適用すると、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別が容易にできる。
【0162】
本実施形態においては、差動電流Idの内、電気角T度間隔の3個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 )を導入して一定区間での振幅値をN乗した値を求め、この振幅値のN乗が一定値以下であるときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素62を備えて差動電流Idの平坦性を検出し、この励磁突入電流対策要素62の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった。
【0163】
内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しも、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0164】
図7は請求項3に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。なお、差動要素5の構成については、図1と全く同じであるため、図7ではその構成の一部を割愛している。
【0165】
即ち、本実施の形態の差動リレー1は、図7に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素63を備えた構成としている。この励磁突入電流対策要素63は、振幅値演算部25と、平坦判定演算部22と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0166】
ここで、振幅値演算部25は、前記差動要素5の差動電流演算部14により求められた差動電流Idの波形の一定区間における振幅値を求めるものである。即ち、本例では、差動電流の内、電気角T度間隔の4個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 )を導入し、下記の振幅値演算式(ハ)にて差動電流の一定区間における振幅値を求める。
【0167】
【数48】
【0168】
また、平坦判定演算部22は、振幅値演算部25により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。即ち、本例では、振幅値演算部25により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0169】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル程度以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部22の出力を連続化するためのものである。これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止できる。
【0170】
次に、本実施の形態の差動リレー1の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図7において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素63に導入され、振幅値演算部25にて平坦性を検出するための演算を行って振幅値Jが求められる。そして、ここで求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力を生じる。
【0171】
一方、復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0172】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。変圧器内部事故による事故電流と、励磁突入電流の電流波形の特徴の違いについては、前記第1の実施の形態の場合と全く同じであるため、その説明を割愛する。本実施の形態においても、前記第1の実施の形態の場合と同様に、電流の1サイクル中の一定区間における振幅値が小さいこと、即ち平坦性を見ることで、励磁突入電流と判定することができ、差動リレー1の誤動作を防止する。すなわち、励磁突入電流対策要素63の振幅値演算部25では、振幅値を求めるための以下のような演算が行われる。
【0173】
図8(a)は、励磁突入電流を、その瞬時値のディジタル量に変換したときの値を示すものである。図8(a)において、現時点の瞬時値をim 、1サンプリング(以下、spと表す)前の瞬時値をim-1 、2sp前の瞬時値をim-2 、3sp前の瞬時値をim-3 と置く。
【0174】
図8(a)の瞬時値にて振幅値演算を説明すると、1サイクル中の一定区間の4個の瞬時値(例えば区間aのim 〜im-3 )から、下記の振幅値演算式(ハ)で求める。なお、一定区間とは最大励磁突入電流での無電流期間より小さい区間であればよく、特に限定した期間ではない。
【0175】
【数49】
【0176】
このJの値を振幅値と称し、差動電流の1サイクル中の一定区間における振幅値を表すものであり、差動電流の1サイクル中の前記一定区間の電流波形が平坦である場合のみ、振幅値Jは零となる。
【0177】
区間aの振幅値Jと同様に、sp毎に過去4個のsp数を用いて演算(図8(a)では区間b,c…)することにより、常に一定区間の振幅値を見ることができ、図8(b)の振幅値演算部25での演算結果に示すような個々の振幅値Ja,Jb,Jc…の値となる。
【0178】
図8(b)のような平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの振幅値Jの値は、演算区間がすべて差動電流Idの平坦部分に含まれた時(図8(a)の区間a)に、その値は最小となる。また、振幅値Jが一定値kよりも小さい値をとった時に、平坦判定演算部22は、図8(c)の平坦判定演算部22での演算結果のように出力を生じる。
【0179】
なお、上記一定値kは、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別を行うための値であり、変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差等による誤判定とならない値である。なお、以上の説明では、平坦性を表す値として、振幅値Jを基に説明したが、下記の一般式((ハ−1)式)で表される値としてもよい。
【0180】
すなわち、前記演算された差動電流の内、電気角T度間隔の4個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求める。つまり、(ハ−1)式で表される振幅値のN乗JN を振幅値演算として求める。
【0181】
【数50】
【0182】
一例を挙げると、N=2の時は(ハ−1)式の代わりに(ハ−2)式を用いてもよいことになる。
【数51】
【0183】
そして、この求められた振幅値のN乗JN が一定値k以下の時に出力を生じる平坦判定演算部22を備えた励磁突入電流対策要素63を備えて、その出力によって前記差動要素5の出力を阻止することにより、前述した場合と同様の作用を奏する。
【0184】
なお、本実施の形態においては、4個のsp数を用いて演算しているので、sp間隔がTの保護継電器の場合、その演算区間は4Tとなる。この場合、演算区間4Tがすべて差動電流1dの平坦部分に含まれた時に振幅値Jの値は最小となる。
【0185】
よって、本実施の形態は、最大励磁突入電流の平坦部分が4T以上となるような変圧器に適用すると、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別が容易に行うことができる。
【0186】
一方、sp間隔が同じTの保護継電器の場合、本実施の形態(演算区間4T)の方が、前述の第2の実施の形態(演算区間3T)に比べて、前述の平坦部分における変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差を受けにくい特徴がある。よって、最大励磁突入電流の平坦部分が4T以上となるような変圧器に本実施の形態(演算区間4T)を適用すると、前述の第2の実施の形態(演算区間3T)を適用する場合よりも、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別がさらに容易に行える。
【0187】
本実施の形態においては、差動電流Idの内、電気角T度間隔の4個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 )を導入して一定区間での振幅値をN乗した値を求め、この振幅値のN乗が一定値以下であるときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素63を備えて差動電流Idの平坦性を検出し、この励磁突入電流対策要素63の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった。内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しも、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0188】
図9は請求項4に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。なお、差動要素5の構成については、図1と全く同じであるため、図9ではその構成の一部を割愛している。
【0189】
すなわち、本実施の形態の差動リレー1は、図9に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素64を備えた構成としている。この励磁突入電流対策要素64は、振幅値演算部26と、平坦判定演算部22と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0190】
ここで、振幅値演算部26は、前記差動要素5の差動電流演算部14により求められた差動電流Idの波形の一定区間における振幅値を求めるものである。即ち、本例では、差動電流の内、電気角T度間隔の5個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 ,im-4 )を導入し、下記の振幅値演算式(ニ)にて差動電流の一定区間における振幅値を求める。
【0191】
【数52】
【0192】
また、平坦判定演算部22は、振幅値演算部26により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。即ち、本例では、振幅値演算部26により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0193】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル程度以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部22の出力を連続化するためのものである。これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止する。
【0194】
次に、本実施の形態の差動リレー1の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図9において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素64に導入され、振幅値演算部26にて平坦性を検出するための演算を行って、振幅値Jが求められる。そして、ここで求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力を生じる。
【0195】
一方、復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0196】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。変圧器内部事故による事故電流と、励磁突入電流の電流波形の特徴の違いについては、前記第1の実施形態の場合と全く同じであるため、その説明を割愛する。本実施の形態においても、前記第1の実施形態の場合と同様に、電流の1サイクル中の一定区間における振幅値が小さいこと、即ち平坦性を見ることで、励磁突入電流と判定することができ、差動リレー1の誤動作を防止する。
【0197】
即ち、励磁突入電流対策要素64の振幅値演算部26では、振幅値を求めるための以下のような演算が行われる。図10(a)は、励磁突入電流を、その瞬時値のディジタル量に変換したときの値を示すものである。図10(a)において、現時点の瞬時値をim 、1サンプリング(以下、spと表す)前の瞬時値をim-1 、2sp前の瞬時値をim-2 、3sp前の瞬時値をim-3 、4sp前の瞬時値をim-4 と置く。
【0198】
図10(a)の瞬時値にて振幅値演算を説明すると、1サイクル中の一定区間の5個の瞬時値(例えば区間aのim 〜im-4 )から、下記の(ニ)式で求める。なお、一定区間とは最大励磁突入電流での無電流期間より小さい区間であればよく、特に限定した期間ではない。
【0199】
【数53】
【0200】
このJの値を振幅値と称し、差動電流の1サイクル中の一定区間における振幅値を表すものであり、差動電流の1サイクル中の前記一定区間の電流波形が平坦である場合のみ、振幅値Jは零となる。
【0201】
区間aの振幅値Jと同様に、sp毎に過去5個のsp数を用いて演算(図10(a)では区間b、c…)することにより、常に一定区間の振幅値を見ることができ、図10(b)の振幅値演算部26での演算結果に示すような個々の振幅値Ja、Jb、Jc…の値となる。
【0202】
図10(b)のような平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの振幅値Jの値は、演算区間がすべて差動電流Idの平坦部分に含まれた時(図10(a)の区間a)に、その値は最小となる。また、振幅値Jが一定値kよりも小さい値をとった時に、平坦判定演算部22は、図10(c)の平坦判定演算部22での演算結果のように出力を生じる。
【0203】
なお、上記一定値kは、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別を行うための値であり、変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差等による誤判定とならない値である。なお、以上の説明では、平坦性を表す値として、振幅値Jを基に説明したが、下記の一般式((ニ−1)式)で表される値としてもよい。
【0204】
即ち、前記演算された差動電流の内、電気角T度間隔の5個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 ,im-4 )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求める。つまり、(ニ−1)式で表される振幅値のN乗JN を振幅値演算として求める。
【0205】
【数54】
【0206】
一例を挙げると、N=2の時は(ニ−1)式の代わりに(ニ−2)式を用いてもよいことになる。
【数55】
【0207】
そして、この求められた振幅値のN乗JN が一定値k以下の時に出力を生じる平坦判定演算部22を備えた励磁突入電流対策要素64を備えて、その出力によって前記差動要素5の出力を阻止することにより、前述した場合と同様の作用を奏する。
【0208】
なお、本実施の形態においては、5個のsp数を用いて演算しているので、sp間隔がTの保護継電器の場合、その演算区間は5Tとなる。この場合、演算区間5Tがすべて差動電流Idの平坦部分に含まれた時に振幅値Jの値は最小となる。よって、本実施の形態は、最大励磁突入電流の平坦部分が5T以上となるような変圧器に適用すると、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別が容易である。
【0209】
一方、sp間隔が同じTの保護継電器の場合、本実施の形態(演算区間5T)の方が、前述の第3の実施の形態(演算区間4T)に比べて、前述の平坦部分における変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差を受けにくい特徴がある。よって、最大励磁突入電流の平坦部分が5T以上となるような変圧器に本実施の形態(演算区間5T)を適用すると、前述の3の実施の形態(演算区間4T)を適用する場合よりも、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別がさらに容易となる。
【0210】
本実施の形態においては、差動電流Idの内、電気角T度間隔の5個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 ,im-4 )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求め、この振幅値のN乗が一定値以下であるときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素64を備えて差動電流Idの平坦性を検出するものである。
【0211】
そしてこの励磁突入電流対策要素64の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0212】
図11は請求項5に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。なお、差動要素5の構成については、図1と全く同じであるため、図11ではその構成の一部を割愛している。
【0213】
即ち、本実施の形態の差動リレー1は、図11に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素65を備えた構成としている。この励磁突入電流対策要素65は、振幅値演算部27と、平坦判定演算部22と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0214】
ここで、振幅値演算部27は、前記差動要素5の差動電流演算部14により求められた差動電流Idの波形の一定区間における振幅値を求めるものである。
即ち、本例では、差動電流の内、電気角T度間隔の6個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 ,im-4 ,im-5 )を導入し、下記の振幅値演算式(ホ)にて差動電流の一定区間における振幅値を求める。
【0215】
【数56】
【0216】
また、平坦判定演算部22は、振幅値演算部27により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。すなわち、本例では、振幅値演算部27により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じる。
【0217】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル程度以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部22の出力を連続化するためのものである。これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止する。
【0218】
次に、本実施の形態の差動リレー1の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0219】
図11において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素65に導入され、振幅値演算部27にて平坦性を検出するための演算を行って、振幅値Jが求められる。そして、ここで求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力を生じる。
【0220】
一方、復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止する。
【0221】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。変圧器内部事故による事故電流と、励磁突入電流の電流波形の特徴の違いについては、前記第1の実施の形態の場合と全く同じであるため、その説明を割愛する。
【0222】
本実施の形態においても、前記第1の実施の形態の場合と同様に、電流の1サイクル中の一定区間における振幅値が小さいこと、即ち平坦性を見ることで、励磁突入電流と判定することができ、差動リレー1の誤動作を防止する。即ち、励磁突入電流対策要素65の振幅値演算部27では、振幅値を求めるための以下のような演算が行われる。
【0223】
図12(a)は、励磁突入電流を、その瞬時値のディジタル量に変換したときの値を示すものである。図12(a)において、現時点の瞬時値をim 、1サンプリング(以下、spと表す)前の瞬時値をim-1 、2sp前の瞬時値をim-2 、3sp前の瞬時値をim-3 、4sp前の瞬時値をim-4 、5sp前の瞬時値をim-5 と置く。
【0224】
図12(a)の瞬時値にて振幅値演算を説明すると、1サイクル中の一定区間の6個の瞬時値(例えば区間aのim 〜im-5 )から、下記の振幅値演算式(ホ)で求める。なお、一定区間とは最大励磁突入電流での無電流期間より小さい区間であればよく、特に限定した期間ではない。
【0225】
【数57】
【0226】
このJの値を振幅値と称し、差動電流の1サイクル中の一定区間における振幅値を表すものであり、差動電流の1サイクル中の前記一定区間の電流波形が平坦である場合のみ、振幅値Jは零となる。区間aの振幅値Jと同様に、sp毎に過去6個のsp数を用いて演算(図12(a)では区間b、c…)することにより、常に一定区間の振幅値を見ることができ、図12(b)の振幅値演算部27での演算結果に示すような個々の振幅値Ja、Jb、Jc…の値となる。
【0227】
図12(b)のような平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの振幅値Jの値は、演算区間がすべて差動電流Idの平坦部分に含まれた時(図12(a)の区間a)に、その値は最小となる。また、振幅値Jが一定値kよりも小さい値をとった時に、平坦判定演算部22は、図12(c)の平坦判定演算部22での演算結果のように出力を生じる。
【0228】
なお、上記一定値kは、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別を行うための値であり、変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差等による誤判定とならない値である。 なお、以上の説明では、平坦性を表す値として、振幅値Jを基に説明したが、下記の一般式((ホ−1)式)で表される値としてもよい。
【0229】
即ち、前記演算された差動電流の内、電気角T度間隔の5個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 ,im-4 ,im-5 )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求める。つまり、(ホ−1)式で表される振幅値のN乗JN を振幅値演算として求める。
【0230】
【数58】
【0231】
一例を挙げると、N=2の時は(ホ−1)式の代わりに(ホ−2)式を用いてもよいことになる。
【数59】
【0232】
そして、この求められた振幅値のN乗JN が一定値k以下の時に出力を生じる平坦判定演算部22を備えた励磁突入電流対策要素65を備えて、その出力によって前記差動要素5の出力を阻止することにより、前述した場合と同様の作用を奏する。
【0233】
なお、本実施の形態においては、6個のsp数を用いて演算しているので、sp間隔がTの保護継電器の場合、その演算区間は6Tとなる。この場合、演算区間6Tがすべて差動電流Idの平坦部分に含まれた時に振幅値Jの値は最小となる。よって、本実施の形態は、最大励磁突入電流の平坦部分が6T以上となるような変圧器に適用すると、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別が容易にできる。
【0234】
一方、sp間隔が同じTの保護継電器の場合、本実施の形態(演算区間6T)の方が、前述の第4の実施の形態(演算区間5T)に比べて、前述の平坦部分における変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差を受けにくい特徴がある。よって、最大励磁突入電流の平坦部分が6T以上となるような変圧器に本実施の形態(演算区間6T)を適用すると、前述の4の実施の形態(演算区間5T)を適用する場合よりも、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別がさらに容易に行うことができる。
【0235】
本実施の形態においては、差動電流Idの内、電気角T度間隔の6個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 ,im-4 ,im-5 )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求め、この振幅値のN乗が一定値以下であるときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素65を備えて差動電流Idの平坦性を検出するものである。
【0236】
そしてこの励磁突入電流対策要素65の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0237】
図13は請求項6に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。なお、差動要素5の構成については、図1と全く同じであるため、図13ではその構成の一部を割愛している。
【0238】
即ち、本実施の形態の差動リレー1は、図13に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素66を備えた構成としている。この励磁突入電流対策要素66は、振幅値演算部21,28と、平坦判定演算部22,29と、論理和演算回路30と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0239】
ここで、振幅値演算部28は、前記差動要素5の差動電流演算部14により求められた差動電流Idの波形の一定区間における振幅値を求めるものである。
即ち、本例では、差動電流の内、電気角T′度間隔のK′個の瞬時値のディジタル量(im ′,im-1 ′,im-2 ′,im-3 ′,…,im-(k`-1)′)を導入し、下記の振幅値演算式(ヘ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求める。
【0240】
【数60】
【0241】
また、平坦判定演算部29は、振幅値演算部28により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。一方、振幅値演算部21と、平坦判定演算部22と、復帰遅延タイマー23の構成は図1と全く同じであるため、ここではその説明を割愛する。
【0242】
さらに、論理和演算回路30は、平坦判定演算部22の出力と平坦判定演算部29の出力との論理和を出力する。即ち、本例では、振幅値演算部21により求められた振幅値が一定値以下であるか否か、および振幅値演算部28により求められた振幅値が一定値以下であるか否か、を各々判定し、少なくともいずれかの一方が一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0243】
さらに、復帰遅延タイマー23は、1サイクル程度以上の遅延時間を持ち、論理和演算回路30の出力を連続化するためのものである。これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止するようにしている。
【0244】
次に、本実施の形態の差動リレー1の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0245】
図13において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素66に導入され、振幅値演算部21にて平坦性を検出するための演算を行い振幅値Jが求められ、同じく振幅値演算部28にて平坦性を検出するための演算を行い振幅値J′が、各々求められる。
【0246】
そして、前記振幅値演算部21にて求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力を生じ、同じく振幅値演算部28にて求められた振幅値J′が所定値k′以下の時に、平坦判定演算部29は出力を生じる。さらに、平坦判定演算部22の出力と、平坦判定演算部29の出力は、論理和演算回路30にて論理和される。
【0247】
一方、復帰遅延タイマー23の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止する。
【0248】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。変圧器内部事故による事故電流と、励磁突入電流の電流波形の特徴の違いについては、前記第1の実施の形態の場合と全く同じであるため、その説明を割愛する。本実施の形態においても、前記第1の実施の形態の場合と同様に、電流の1サイクル中の一定区間における振幅値が小さいこと、即ち平坦性を見ることで、励磁突入電流と判定することができ、差動リレー1の誤動作を防止する。
【0249】
次に、変圧器電圧印加時の励磁突入電流の電流波形と、外部事故回復時の励磁突入電流の電流波形との特徴の違いを説明する。図14は、変圧器電圧印加時の励磁突入電流(a)と外部事故回復時の励磁突入電流(b)の電流波形の特徴の違いを示す波形図である。
【0250】
通常、励磁突入電流には、1サイクル中に変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない区間(無電流期間)が存在するが、外部事故回復時に保護継電器の見る励磁突入電流(b)の無電流期間は、変圧器のタップ位置の影響を受ける保護継電器の構成としている場合、変圧器を通過する電流の影響を受けた無電流に近い期間となる。
【0251】
よって、外部事故回復時に高調波が通過した場合、保護継電器の見る励磁突入電流の本来無電流であるべき部分がこの通過高調波の影響を受け、その結果、振幅値演算値も零とはならず、ある程度の値をとる。図15は、振幅値演算の周波数対利得特性を表したものであり、本方式の振幅値演算は演算区間が広いほど、高調波の影響を受けにくいことを示している。
【0252】
図14の波形の特徴として、変圧器電圧印加時の励磁突入電流(a)の場合は、無電流期間が短く、この無電流期間を検出するためには、演算区間の広い振幅値演算ではなく、演算区間の短い振幅値演算を用いる必要がある。一方、外部事故回復時の励磁突入電流(b)は、変圧器電圧印加時の励磁突入電流(a)の場合よりも無電流期間が広いという特徴があり、この波形に通過高調波の影響を受ける場合は、演算区間の短い振幅値演算ではなく、演算区間がより広い(高調波の影響を受けにくい)振幅値演算を用いることができる。
【0253】
故に、演算区間の短い振幅値演算と、演算区間の長い振幅値演算の両方を併用することで、変圧器電圧印加時の励磁突入電流(a)の場合、および外部事故回復時の励磁突入電流(b)で、かつ通過高調波の影響を受ける場合、の両方とも考慮する必要がある場合においても、より確実に、全ての励磁突入電流を検出することが可能となる。
【0254】
このため、電流の1サイクル中の広い一定区間における振幅値が小さいこと、即ち平坦性を見ることを併用して、事故回復時のような変圧器を通過する電流の影響を受ける場合においても励磁突入電流と判定することができ、差動リレー1の誤動作を防止する。即ち、励磁突入電流対策要素66の振幅値演算部28では、振幅値を求めるための以下のような演算が行われる。
【0255】
図16(a)は、励磁突入電流を、その瞬時値のディジタル量に変換したときの値を示すものである。図16(a)において、現時点の瞬時値をim ′、1サンプリング(以下、spと表す)前の瞬時値をim-1 ′、2sp前の瞬時値をim-2 ′、3sp前の瞬時値をim-3 ′…、(K′−1)sp前の瞬時値をim-(K-1) ′と置く。図16(a)の瞬時値にて振幅値演算を説明すると、1サイクル中の一定区間のK′個の瞬時値(例えば区間aのim ′〜im-(K-1) ′)から、下記の(ヘ)式で振幅値を求める。
【0256】
【数61】
【0257】
なお、一定区間とは事故回復時の最大励磁突入電流での無電流期間より小さく、かつ通過高調波の影響を十分低減できる区間であればよく、特に限定した期間ではない。このJ′の値を振幅値と称し、差動電流の1サイクル中の一定区間における振幅値を表すものであり、差動電流の1サイクル中の前記一定区間の電流波形が平坦に近いほど、振幅値Jは小さくなる。
【0258】
区間aの振幅値J′と同様に、sp毎に過去K個のsp数を用いて演算(図16(a)では区間b、c…)することにより、常に一定区間の振幅値を見ることができ、図16(b)の振幅値演算部28での演算結果に示すような個々の振幅値Ja′、Jb′、Jc′…の値となる。
【0259】
図16(b)のような平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idでの振幅値J′の値は、演算区間がすべて差動電流Idの無電流に近い期間に含まれた時(図16(a)の区間a)に、その値は最小となる。また、振幅値J′が一定値k′よりも小さい値をとった時に、平坦判定演算部29は、図16(c)の平坦判定演算部29での演算結果のように出力を生じる。
【0260】
なお、上記一定値kは、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別を行うための値であり、変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差や変圧器を通過する高調波の影響等による誤判定とならない値である。なお、以上の説明では、平坦性を表す値として、振幅値J′を基に説明してきたが、下記の一般式((ヘ−1)式)で表される値としてもよい。
【0261】
即ち、前記演算された差動電流の内、電気角T′度間隔のK′個の瞬時値のディジタル量(im ′,im-1 ′,im-2 ′,…,im-(K-1) ′)を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求める。つまり、下記の(ヘ−1)式で表される振幅値のN乗J′N を振幅値演算として求める。
【0262】
【数62】
【0263】
【数63】
一例を挙げると、N=2の時は(ヘ−1)式の代わりに(ヘ−2)式を用いてもよいことになる。
【0264】
そして、この求められた振幅値のN乗J′N が一定値k′以下の時に出力を生じる平坦判定演算部29を備えた励磁突入電流対策要素66を備えて、その出力によって前記差動要素5の出力を阻止することにより、前述した場合と同様の作用を奏する。
【0265】
そして本例では電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量の振幅値処理内容に対して、電気角T′度間隔のK′個の瞬時値のディジタル量の振幅値処理内容を付加するだけであるため、前記請求項1〜請求項5のすべてに適用可能である。
【0266】
本実施の形態においては、差動電流Idの内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(k-1) )と電気角T′度間隔のK′個の瞬時値のディジタル量(im ′,im-1 ′,im-2 ′,…,im-(k-1) ′)を導入し、一定区間の振幅値をN乗した値JおよびJ′をそれぞれ求め、この2つの振幅値JおよびJ′の少なくとも片方のN乗が一定値以下であるときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素66を備えて差動電流Idの平坦性を検出するものである。
【0267】
そしてこの励磁突入電流対策要素66の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0268】
図17は請求項7に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。なお、差動要素5の構成については、図1と全く同じであるため、図17ではその構成の一部を割愛している。
【0269】
即ち、本実施の形態の差動リレー1は、図17に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素67を備えた構成としている。この励磁突入電流対策要素67は、振幅値演算部21と、平坦判定演算部22と、動作遅延タイマー31と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0270】
ここで、振幅値演算部21は、前記差動要素5の差動電流演算部14により求められた差動電流Idの波形の一定区間における振幅値を求めるものである。即ち、本例では、差動電流の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,im-3 ,…,im-(k-1) )を導入し、振幅値演算式(イ)にて差動電流の一区間における振幅値を求める。
【0271】
【数64】
【0272】
また、平坦判定演算部22は、振幅値演算部21により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。即ち、本例では、振幅値演算部21により求められた振幅値が一定値以下であるか否かを判定し、一定値以下の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。
【0273】
さらに、動作遅延タイマー31は、1sp以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部22の単発的な出力(例えば1sp出力)を消すためのものである。一方、復帰遅延タイマー23は、1サイクル程度以上の遅延時間を持ち、動作遅延タイマー31の出力を連続化するためのものである。これにより、復帰遅延タイマー23の出力によって、差動要素5の出力を阻止する。
【0274】
次に、本実施の形態の差動リレー1の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図17において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素67に導入され、振幅値演算部21にて平坦性を検出するための演算を行って振幅値Jが求められる。そして、ここで求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力を生じる。
【0275】
一方、平坦判定演算部22の出力は、動作遅延タイマー31と、復帰遅延タイマー23とを通じた後に、NOT演算回路19にて反転させられ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止する。
【0276】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。変圧器内部事故による事故電流と、励磁突入電流の電流波形の特徴の違いについては、前記第1の実施の形態の場合と全く同じであるため、その説明を割愛する。本実施の形態においても、前記第1の実施の形態の場合と同様に、電流の1サイクル中の一定区間における振幅値が小さいこと、即ち平坦性を見ることで、励磁突入電流と判定することができ、差動リレー1の誤動作を防止する。
【0277】
即ち、励磁突入電流対策要素67の振幅値演算部21では、振幅値を求めるための以下のような演算が行われる。図18(a)は、変圧器内部事故電流を、その瞬時値のディジタル量に変換したときの値を示すものである。図18(a)において、現時点の瞬時値をim 、1サンプリング(以下、spと表す)前の瞬時値をim-1 、2sp前の瞬時値をim-2 、3sp前の瞬時値をim-3 、…、(K−1)sp前の瞬時値をim-(K-1) と置く。
【0278】
図18(a)の瞬時値にて振幅値演算を説明すると、1サイクル中の一定区間のK個の瞬時値(例えば区間aのim 〜im-(K-1) )から、下記の(イ)式で求める。なお、一定区間とは最大励磁突入電流での無電流期間より小さい区間であればよく、特に限定した期間ではない。
【0279】
【数65】
【0280】
このJの値を振幅値と称し、差動電流の1サイクル中の一定区間における振幅値を表すものであり、差動電流の1サイクル中の前記一定区間の電流波形が平坦である場合のみ、振幅値Jは零となる。
【0281】
区間aの振幅値Jと同様に、sp毎に過去K個のsp数を用いて演算(図18(a)では区間b、c…)することにより、常に一定区間の振幅値を見ることができ、図18(b)の振幅値演算部21での演算結果に示すような個々の振幅値Ja、Jb、Jc…の値となる。
【0282】
図18(b)のような変圧器内部事故電流による差動電流Idでは、演算区間がすべて平坦部分となることはなく、振幅値Jの値は、常に大きい。また、振幅値Jが一定値kよりも小さい値をとった時に、平坦判定演算部22は、図18(c)の平坦判定演算部22での演算結果のように出力を生じる。
【0283】
なお、上記一定値kは、事故電流と励磁突入電流の平坦部分との区別を行うための値であり、変流器CTによる直流分喪失やリレーの演算誤差等による誤判定とならない値である。ほとんどの事故電流では、前述のように振幅値Jの値は、常に大きく、振幅値Jが一定値kよりも小さい値をとることもなく、平坦判定演算部22が出力を生じることはない。
【0284】
しかし、事故時の高調波とspタイミングの関係で、演算区間の瞬時値がほぼ等しくなり、振幅値演算部21の演算結果がJaのように、事故電流にもかかわらず偶発的に小さくなり、平坦判定演算部22が瞬時的に出力を生じることも考えられる。しかし、平坦判定演算部22の演算結果は単発的なものであり、継続することがないため、このような瞬時的な出力を生じた場合でも、この出力は動作遅延タイマー31に入力され、所定時間だけ動作遅延されるので、動作遅延タイマー31は出力を生じない。
【0285】
よってこのような場合でも、動作遅延タイマー31は出力を生じず、この復帰遅延タイマー31の出力をNOT演算回路19にて反転させて常にNOT演算回路19は出力を生じ、差動要素5の出力との論理積演算を論理積演算回路20にて行うことにより、事故電流にて動作する差動要素5の出力を阻止することはなく、差動リレー1としての正動作することができる。なお、動作遅延タイマー31の時間は1spに限定するものではなく、励磁突入電流の平坦検出に支障のない時間であれば1sp以上でも良い。
【0286】
本実施の形態においては、差動電流Idの内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(k-1) )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求め、この振幅値のN乗が所定時間以上、一定値以下であるときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素67を備えて差動電流Idの平坦性を検出するものである。
【0287】
そしてこの励磁突入電流対策要素67の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0288】
図19は請求項8に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。なお、差動要素5の構成については、図1と全く同じであるため、図19ではその構成の一部を割愛している。
【0289】
即ち、本実施の形態の差動リレー1は、図19に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素68を備えた構成としている。この励磁突入電流対策要素68は、振幅値演算部21と、平坦判定演算部22と、シフト演算部32と、論理積演算回路33と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0290】
ここで、振幅値演算部21、および平坦判定演算部22は、前述した第1の実施の形態の場合と同様の機能をそれぞれ有する。また、シフト演算部32は、平坦判定演算部22の出力を1サイクル遅らせるものである。
【0291】
さらに、論理積演算回路33は、平坦判定演算部22の出力(現時点の出力)と、シフト演算部32の出力(1サイクル前の出力)との論理積演算を行うものであり、復帰遅延タイマー23は、1サイクル程度以上の遅延時間を持ち、論理積演算回路33の出力を連続化するためのものである。
【0292】
次に、本実施の形態の差動リレー1の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図19において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素68に導入され、振幅値演算部21にて前記した(イ)式に基づく演算を行い、差動電流Idの各spにおける一定区間の振幅値Jが算出される。また、平坦判定演算部22では、振幅値Jが所定値k以下となった時に、励磁突入電流と判定して出力が送出される。
【0293】
励磁突入電流は、変圧器鉄心飽和の関係により、電流が流れる期間と流れない期間との周期性が1サイクル毎に生じる。このため、励磁突入電流による平坦判定演算部22の出力は、1サイクル毎に一回は必ず送出され、その出力は1サイクル毎の周期性を持つ断続出力である。
【0294】
一方、事故電流は、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳したものであり、無電流期間を生じることはないが、希に、高調波の重畳の関係で過渡的な平坦部分を持つことが考えられる。図20は、事故電流で過渡的な平坦部分を持つ場合の一例を示す図であり、差動電流IdのA部で振幅値Jは所定値k以下となり、平坦判定演算部22は単発的な出力を送出するが、この時の平坦判定演算部22の出力は周期性を生じない。
【0295】
そして、これらの平坦判定演算部22の出力をシフト演算部32により1サイクル遅らせ、現時点の判定結果である平坦判定演算部22出力と1サイクル前の判定結果であるシフト演算部32の出力との論理積演算を論理積演算回路33で行うことにより、差動電流Idにおける平坦部分の周期性を見ることができる。
【0296】
図21は、励磁突入電流と事故電流における周期性の検出の一例を示す図であり、励磁突入電流(a)では、平坦判定演算部22の周期的な出力のために論理積演算回路33の出力が生じるが、事故電流(b)では、平坦判定演算部22の単発的な出力のために論理積演算回路33の出力は生じない。
【0297】
なお、励磁突入電流による論理積演算回路33での論理積演算結果は断続出力であるため、復帰遅延タイマー23により連続化して励磁突入電流対策要素68の出力としている。
【0298】
これにより、励磁突入電流に対しては、確実に励磁突入電流対策要素68が動作して差動リレー1の誤動作を防止し、また過渡的な平坦部分が生じるような事故電流に対しても、励磁突入電流対策要素68の不要出力が生じず、差動リレー1は正常動作を行うことができる。
【0299】
なお、シフト演算部32にて遅らせる時間は1サイクルに限定するものではなく、1サイクル以上で、励磁突入電流の特徴である連続性を判別できる正数倍サイクルでも良い。そして、本実施の形態では、事故電流で単発的な平坦判定演算部出力が生ずる場合と、励磁突入電流での平坦判定演算部出力が生ずる場合との弁別に際して、その周期性を検出する手段としてシフト演算部32を設け、現時点の判定結果である平坦判定部22の出力と、1サイクル前の判定結果であるシフト演算部32の出力との論理演算で行なうものである。したがって、この種の判定手法は前記請求項1〜請求項5のすべてに適用可能である。
【0300】
本実施の形態においては、差動電流Idの内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(K-1) )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求め、この振幅値のN乗が一定値以下であるときに生じる出力と、1サイクル前の平坦判定演算22出力とを比較して、両者の論理積条件の成立により、励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素68を備えて差動電流Idの平坦性を検出するようにしている。
【0301】
そして、この励磁突入電流対策要素68の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0302】
図22は請求項9に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。なお、差動要素5の構成については、図1と全く同じであるため、図22ではその構成の一部を割愛している。
【0303】
即ち、本実施の形態の差動リレー1は、図22に示すように、図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素69を備えた構成としている。この励磁突入電流対策要素69は、振幅値演算部21と、シフト演算部34と、最大値検出演算部35と、平坦判定演算部36と、復帰遅延タイマー23とからなっている。
【0304】
ここで、振幅値演算部21は、既に説明した第1の実施の形態の場合と同様の機能を有する。また、シフト演算部34は、振幅値演算部21の出力である振幅値Jの値を1サイクル遅らせるためのものである。一方、最大値検出演算部35は、振幅値演算部21の出力である振幅値Jと、シフト演算部34の出力である振幅値Jとの比較を行い、いずれか大きい方の振幅値JMAX を出力するものである。
【0305】
また、平坦判定演算部36は、最大値検出演算部35の出力である振幅値JMAX が所定値kよりも小さいか否かを判定し、所定値kよりも小さいときに出力を生じる。さらにまた、復帰遅延タイマー23は、1サイクル程度以上の遅延時間を持ち、平坦判定演算部36の出力を連続化するためのものである。
【0306】
次に、本実施の形態の差動リレー1の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図22において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素69に導入され、振幅値演算部21にて前述した(イ)式に基づく演算を行い、差動電流Idの各spにおける一定区間の振幅値Jが算出される。
【0307】
そして、この振幅値演算部21の出力である現時点の振幅値をJ(現在)とし、この振幅値J(現在)をシフト演算部34によって1サイクル遅らせ、この遅らせた振幅値をJ(1サイクル前)とする。一方、最大値検出演算部35では、これらの振幅値J(現在)と振幅値J(1サイクル前)とを比較し、いずれか大きい方の振幅値がJMAX として出力される。また、平坦判定演算部36では、最大値検出部35の出力である振幅値JMAX が所定値k以下となったときに、励磁突入電流と判定して出力が送出される。
【0308】
励磁突入電流は、変圧器鉄心飽和の関係により、電流が流れる期間と流れない期間の周期性が1サイクル毎に生じる。このため、振幅値演算部21で演算される振幅値Jも、1サイクル毎に極小になる周期性を持った出力となり、現時点の振幅値J(現在)と1サイクル前の振幅値J(1サイクル前)とは、等しい値となる。
【0309】
この結果、最大値検出演算部35では、そのまま振幅値J(現在)(=J(1サイクル前))を出力するため、平坦判定演算部36の出力は、1サイクル毎に出力する周期性を持つ断続出力である。そして、平坦判定演算部36の出力は、復帰遅延タイマー23により連続化して励磁突入電流対策要素69の出力としているため、差動リレー1の誤動作を防止することができる。
【0310】
一方、事故電流は、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳したものであり、無電流期間を生じることはないが、希に、高調波の重畳の関係で、過渡的な平坦部分を持つことが考えられる。図23は、事故電流で過渡的な平坦部分を持つ場合の一例を示す図であり、振幅値演算部21の出力である振幅値Jの変化を表したものである。
【0311】
図23(a)は、振幅値演算部21の出力と前記した第1の実施の形態における平坦判定演算部22の出力であり、振幅値がBの時点で所定値k以下となり、図23(b)に示すように、平坦判定演算部22が過渡的に単発出力している。これに対し、図23(c)は、図23(a)の振幅値演算部21の出力の振幅値J(現在)と、その出力をシフト演算部34を通して得られた振幅値J(1サイクル前)とを比較した最大値検出演算部35の出力(振幅値JMAX )である。
【0312】
例えば、図23(a)の現時点での振幅値Bの値と、その1サイクル前の振幅値Cの値との比較を行い、いずれかの大きい方(ここではC)を、図23(c)の最大値検出演算部35の振幅値JMAX の値として出力するため、平坦判定演算部36は動作せず、励磁突入電流対策要素69が出力を生じることはなく、差動リレー1は正常動作を行うことができる。
【0313】
なお、シフト演算部34にて遅らせる時間は1サイクルに限定するものではなく、励磁突入電流の平坦部の周期性に合わせた正数倍サイクルでも良い。又、周期性だけでなく平坦検出に支障のない時間であれば1sp以前との比較を行ない、大きい方の振幅値を使用する構成としても良い。本実施の形態では、前記請求項8の場合と同様に事故電流時と励磁突入電流時との弁別に際し、現在時点の振幅値と1サイクル遅らせた振幅値とを比較してその内の最大値を出力し、当該最大値が所定値k以下であるとき単発出力であるとするものである。したがってこの種の判定手法は請求項1〜請求項5のすべてに適用可能である。
【0314】
本実施の形態においては、差動電流Idの内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(K-1) )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求め、この振幅値のN乗と1サイクル前の振幅値のN乗とを比較して、いずれか大きい方の振幅値が所定値k以下となった時に、励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素69を備えて差動電流Idの平坦性を検出するようにしている。
【0315】
そして、この励磁突入電流対策要素69の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0316】
図25は請求項10に係るディジタル形保護継電器を電力用変圧器に適用した場合の構成例を示す回路図である。図25において、電力系統電源Gには、遮断器CBを介して、被保護対象である変圧器Trが接続されている。また、変圧器Trを挟んで、各相毎の交流電流を抽出する主変流器CT1,CT2が設けられている。
【0317】
一方、変圧器Trのいずれか1つの端子に各相毎の交流電圧を抽出する計器用変成器PTが設けられている。さらに、主変流器CT1,CT2と、計器用変成器PTとにより抽出された交流電流I1,I2と、交流電圧V1を差動リレー80に導入し、変圧器Trの内部事故時に動作して、遮断器CBを遮断することにより変圧器Trが保護されるようになっている。
【0318】
図24は、本実施の形態によるディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。即ち、本実施の形態の差動リレー80は、図24に示すように、図1の差動リレー1に対し、入力変成器37と、A/D変換器3とを追加し、さらに図1における励磁突入電流対策要素61を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素70を備えた構成としている。
【0319】
入力変成器37は、計器用変成器PTにより抽出された交流電圧V1を適当な大きさに変換するものである。また、A/D変換器3は入力変成器2により抽出された交流電流I1,I2,および入力変成器37にて抽出された交流電圧V1を、一定時間間隔でサンプリングし、ディジタル量に変換するものである。
【0320】
さらに、励磁突入電流対策要素70は、振幅値演算部21と、平坦判定演算部22と、電圧値演算部38と、電圧値判定演算部39と、論理積演算回路40と、復帰遅延タイマー23とからなっている。ここで、振幅値演算部21、平坦判定演算部22、および復帰遅延タイマー23は、前記した第1の実施の形態の場合と同様の機能を有するものである。
【0321】
一方、電圧値演算部38は、電気量v1から基本波成分1fを抽出して、振幅値|V|を算出する。また、電圧値判定演算部39は、電圧値演算部38の出力である振幅値|V|が所定値kvよりも大きいか否かを判定し、所定値kvよりも大きいときに出力を生じるものである。さらに、復帰遅延タイマー23の出力と、電圧値判定演算部39の出力は、論理積演算回路40にて論理積される。
【0322】
一方、論理積演算回路40の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー80としての誤動作を防止する。
【0323】
次に、本実施の形態の差動リレー80の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図24において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素70に導入され、振幅値演算部21にて平坦性を検出するための演算を行い、振幅値Jが求められる。
【0324】
そして、当該求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力を生じ、当該平坦判定演算部22の出力は、復帰遅延タイマー23にて連続化される。
【0325】
一方、図25に示すように、変圧器のいずれか1つの端子の電圧V1は、計器用変成器PTを介して、適当な大きさに変換される。また、図24に示すように、計器用変成器PTにより抽出された交流電圧V1は、入力変成器37により、さらに適当な大きさに変換された後、A/D変換器3に導入される。
【0326】
さらにまた、A/D変換器3では、交流電圧V1を一定時間間隔でサンプリングし、ディジタル量v1に変換する。当該ディジタル量に変換されたv1は電圧振幅値演算部38に導入され、その基本波成分1fの振幅値|V|を算出した後、電圧値判定演算部39にて当該振幅値|V|が所定値kvよりも大きいか否かを判定し、所定値kvよりも大きいときに、電圧値判定演算部39は出力を生じる。
【0327】
また、電圧値判定演算部39の出力は、論理積演算回路40にて復帰遅延タイマー23の出力と論理積された後、NOT演算回路19にて反転させられ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0328】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。励磁突入電流は、変圧器鉄心飽和の関係により、電流が流れる期間と流れない期間との周期性が1サイクル毎に生じる。このため、励磁突入電流による平坦判定演算部22の出力は、1サイクル毎に一回は必ず送出され、その出力は1サイクル毎の周期性を持つ断続出力である。
【0329】
したがって1サイクル程度以上の遅延時間を有する復帰遅延タイマー23の出力は、必ず常に送出され続ける。また、励磁突入電流が発生するような、変圧器電圧印加時には、その電圧の振幅値は十分大きいため、電圧振幅値演算38の出力である電圧振幅値|V|は常に所定値kvより大きな値をとり、その結果、電圧値判定演算39では常に|V|≧kvが成立して電圧値判定演算39の出力も常に送出され続ける。
【0330】
電圧振幅値は既知の振幅値演算アルゴリズムであればどのようなものでもよく、例えば、現時点の瞬時値をvm 、1サンプリング(以下、spと表す)前の瞬時値をvm-1 、2sp前の瞬時値をvm-2 、…、5sp前の瞬時値をvm-5 と置いたときの、下記の(チ)式などで求める。
【0331】
【数66】
【0332】
そして、前記復帰遅延タイマー23の出力と前記電圧値判定演算39の出力は、論理積演算回路40にて論理積されるので、励磁突入電流対策要素70は常に出力を生じる。当該励磁突入電流対策要素70の出力は、NOT演算回路19にて反転させられるので、NOT演算回路19は常に出力を生じず、論理積演算回路20の出力を常に阻止することができ、このため、励磁突入電流に対する差動リレー80の誤動作を防止できる。
【0333】
一方、内部事故の場合は、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳したものであり、特に事故電流に高調波が多く含まれるような事故の場合は、必ず、その変圧器の端子電圧は大きく低下するため、電圧振幅値演算部の出力である振幅値|V|は所定値kvよりも小さくなり、その結果電圧値判定演算39は常に出力を生じない。
【0334】
よって、前記復帰遅延タイマー23の出力と前記電圧値判定演算39の出力は、論理積演算回路40にて論理積され、励磁突入電流対策要素70は常に出力を生じない。当該励磁突入電流対策要素70の出力は、NOT演算回路19にて反転させられるので、NOT演算回路19は常に出力を生じ、論理積演算回路20の出力を阻止することなく、差動リレー80は正常動作を行うことができる。本実施の形態では、内部事故時と励磁突入電流時との弁別手段として、内部事故時は変圧器の端子電圧が大きく低下するのに対して、励磁突入電流時は電圧の振幅値は所定値以上であることを利用したものである。したがって、この種の判定手法は請求項1〜請求項9のすべてに適用可能である。
【0335】
上述したように、本実施の形態においては、変圧器励磁突入電流と変圧器内部事故電流との波形の違い、すなわち励磁突入電流は1サイクル中に変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない一定の平坦部分が必ず存在するのに対し、事故電流は基本波電流もしくは不特定多数の高調波電流重畳のため一定区間の平坦部分が生じないこと、および変圧器励磁突入電流発生時と変圧器内部事故電流発生時との電圧の違い、すなわち励磁突入電流発生時には電圧振幅値が大きいのに対し、事故電流発生時には電圧振幅値が小さいことの両方に着目したものである。
【0336】
そこで差動電流Idの内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(k-1) )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求め、この振幅値が所定値k以下となること、および電圧振幅値が所定値kv以上であることの2つの条件を満たしたときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素70を備え、この励磁突入電流対策要素70の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたものである。
【0337】
したがって励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0338】
図26は請求項11に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図24と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。即ち、本実施の形態の差動リレー80は、図26に示すように、図24の差動リレー80における励磁突入電流対策要素70を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素71を備えた構成としている。
【0339】
さらに、励磁突入電流対策要素70は、振幅値演算部21,41と、平坦判定演算部22と、電圧値判定演算部42と、復帰遅延タイマー23と、論理積演算回路43とからなっている。ここで、振幅値演算部21、平坦判定演算部22、および復帰遅延タイマー23は、前記した図24の実施の形態の場合と同様の機能を有するものである。
【0340】
ここで、振幅値演算部41は、交流電圧v1の波形の一定区間における振幅値を求めるものである。本例では、交流電圧の内、振幅値演算部21のTと同じ電気角T度間隔の、振幅値演算部21のKと同じK個の瞬時値のディジタル量(vm ,vm-1 ,vm-2 ,vm-3 ,…,vm-(k-1) )を導入し、振幅値演算式(ト)にて交流電圧の一定区間における振幅値を求める。
【0341】
【数67】
【0342】
また、電圧値判定演算部42は、振幅値演算部41により求められた振幅値が一定値以上であるか否かを判定し、一定値以上の時に励磁突入電流と判定して出力を生じるものである。さらに、復帰遅延タイマー23の出力と、電圧値判定演算部42の出力は、論理積演算回路43にて論理積される。
【0343】
一方、論理積演算回路43の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー80としての誤動作を防止することができる。
【0344】
次に、本実施の形態の差動リレー80の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図26において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素71に導入され、振幅値演算部21にて平坦性を検出するための演算を行って、振幅値Jが求められる。そして、当該求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力される。
【0345】
一方、図24の実施の形態の場合と同様に、変圧器のいずれか1つの端子の電圧V1は、計器用変成器PTを介して適当な大きさに変換され、計器用変成器PTにより抽出された交流電圧V1は、入力変成器37により、さらに適当な大きさに変換された後、A/D変換器3に導入され、また、A/D変換器3では、交流電圧V1を一定時間間隔でサンプリングし、ディジタル量v1に変換する。
【0346】
当該ディジタル量に変換されたv1は、電圧振幅値演算部41に導入され、振幅値演算部21と同じ演算区間にて振幅値を求めるための演算を行い、振幅値Jvが求められる。そして、ここで求められた振幅値Jvが所定値kv以上の時に、電圧値判定演算部42は出力を生じる。
【0347】
また、電圧値判定演算部42の出力は、論理積演算回路43にて復帰遅延タイマー23の出力と論理積された後、NOT演算回路19にて反転させられ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止する。
【0348】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。まず、励磁突入電流発生時の電圧波形の特徴を述べる。図27は、励磁突入電流発生時の励磁突入電流(a)と電圧波形(b)の電流波形の特徴を示す波形図である。
【0349】
図27において、励磁突入電流(a)が流れている区間における電圧波形(b)は、励磁突入電流と変圧器のリアクタンス等の関係により電圧降下を起こし、やや小さな振幅となるが、励磁突入電流(a)には、1サイクル中に変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない区間(無電流期間)が必ず存在し、この時の電圧波形(b)は励磁突入電流が流れないため、電圧降下の影響がなく、大きな振幅となる。
【0350】
このため、振幅値演算部21と同じ一定区間(演算区間)にて、電圧の1サイクル中の一定区間における振幅値を算出することで、無電流期間での大きな電圧を用いて、励磁突入電流発生時の電圧が十分大きいことを、さらに確実に検出して、励磁突入電流と判定することができ、差動リレー80の誤動作を防止する。
【0351】
即ち、励磁突入電流対策要素71の振幅値演算部41では、振幅値を求めるための以下のような演算が行われる。図27(b)は、励磁突入電流発生時の交流電圧を、その瞬時値のディジタル量に変換したときの値を示すものである。
【0352】
図27(b)において、現時点の瞬時値をvm 、1サンプリング(以下、spと表す)前の瞬時値をvm-1 、2sp前の瞬時値をvm-2 、3sp前の瞬時値をvm-3 、…、(K−1)sp前の瞬時値をvm-(K-1) と置く。
【0353】
図27(a)の瞬時値にて振幅値演算を説明すると、1サイクル中の一定区間のK個の瞬時値(例えば区間aのvm 〜vm-(K-1) )から、下記の(ト)式で求める。なお、一定区間とは振幅値演算部21と同じ一定区間であればよく、特に限定した期間ではない。
【0354】
【数68】
【0355】
このJvの値を振幅値と称し、交流電圧の1サイクル中の一定区間における振幅値を表すものであり、差動電流の1サイクル中の前記一定区間の電流波形が平坦である場合に、振幅値Jvは最も大きな値となる。
【0356】
区間aの振幅値Jと同様に、sp毎に過去k個のsp数を用いて演算(図27(b)では区間b、c…)することにより、常に一定区間の振幅値を見ることができ、図27(c)の振幅値演算部21での演算結果に示すような個々の振幅値Jva、Jvb、Jvc…の値となる。
【0357】
図27(a)のような平坦区間を持った励磁突入電流による差動電流Idが発生した場合での、交流電圧の振幅値Jvの値は、演算区間がすべて差動電流Idの平坦部分に含まれた時(図27(b)の区間a)に、その値は最大となる。また、振幅値Jvが一定値kvよりも大きい値をとった時に、電圧値判定演算部42は、図27(d)の平坦判定演算部42での演算結果のように出力を生じる。
【0358】
なお、上記一定値kvは、事故電流発生時の電圧値と励磁突入電流発生時の電圧値との区別を行うための値であればよく、特に限定した値ではない。この結果、電圧値判定演算42は、平坦判定演算22の出力と同じタイミングで出力を生じるので、論理積演算回路43も同じタイミングで出力を生じる。そして、論理積演算回路43の出力は、1cy程度以上遅延時間を有する復帰遅延タイマー23により連続化され、励磁突入電流発生時には励磁突入電流対策要素71の出力が常に送出され続ける。
【0359】
当該励磁突入電流対策要素71の出力は、NOT演算回路19にて反転させられるので、NOT演算回路19は常に出力を生じず、論理積演算回路20の出力を常に阻止することができ、このため、励磁突入電流に対する差動リレー80の誤動作を防止できる。
【0360】
一方、事故電流に過渡的な平坦部分を生じさせるような高調波が発生する内部事故の場合には、必ず、その変圧器の端子電圧は大きく低下するため、電圧振幅値演算部41の出力である振幅値Jvは所定値kvよりも小さくなり、その結果電圧値判定演算42は常に出力を生じない。よって、前記平坦判定演算部22の出力と前記電圧値判定演算42の出力は、論理積演算回路43にて論理積され、励磁突入電流対策要素71は常に出力を生じない。
【0361】
当該励磁突入電流対策要素71の出力は、NOT演算回路19にて反転させられるので、NOT演算回路19は常に出力を生じ、論理積演算回路20の出力を阻止することなく、差動リレー80は正常動作を行うことができる。
【0362】
なお、以上の説明では、平坦性を表す値として、振幅値Jvを基に説明してきたが、下記の一般式((ト−1)式)で表される値としてもよい。即ち、前記演算された差動電流の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(vm ,vm-1 ,vm-2 ,…,vm-(K-1) )を導入し、一定区間での振幅値をN乗した値を求める。つまり、(ト−1)式で表される振幅値のN乗JvN を振幅値演算として求める。
【0363】
【数69】
【0364】
一例を挙げると、N=2の時は(ト−1)式の代わりに(ト−2)式を用いてもよいことになる。
【数70】
【0365】
そして、この求められた振幅値のN乗JvN が一定値kv以上の時に出力を生じる電圧値判定演算部42を備えた励磁突入電流対策要素71を備えて、その出力によって前記差動要素5の出力を阻止することにより、前述した場合と同様の作用を奏することができる。本実施の形態では、前記した請求項10の場合と同様に内部事故時と励磁突入電流時との弁別に電圧要素を用いたものである。したがって、本判別手法は請求項1〜請求項9のすべてに適用可能である。
【0366】
上述したように、本実施の形態においては、変圧器励磁突入電流と変圧器内部事故電流との波形の違い、すなわち励磁突入電流は1サイクル中に変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない一定の平坦部分が必ず存在するのに対し、事故電流は基本波電流もしくは不特定多数の高調波電流重畳のため一定区間の平坦部分が生じないこと、および変圧器励磁突入電流発生時と変圧器内部事故電流発生時との電圧の違い、すなわち励磁突入電流発生時の特に励磁突入電流の流れない区間では電圧振幅値が大きいのに対し、事故電流発生時には電圧振幅値が小さいことの両方に着目したものである。
【0367】
そして差動電流Idの内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(k-1) ,およびvm ,vm-1 ,vm-2 ,…,vm-(k-1) )を導入し、一定区間での電流および電圧の振幅値をN乗した値を求め、この電流振幅値が所定値k以下となること、および電圧振幅値が所定値kv以上であることの2つの条件を満たしたときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素71を備えて差動電流Idの平坦性、および電圧値の大きさを検出する。
【0368】
そして、この励磁突入電流対策要素71の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにしたので、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0369】
図28は請求項12に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図24と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。即ち、本実施の形態の差動リレー80は、図28に示すように、図24の差動リレー80における励磁突入電流対策要素70を省略し、これに代えて、新たな励磁突入電流対策要素72を備えた構成としている。
【0370】
さらに、励磁突入電流対策要素72は、振幅値演算部21と、平坦判定演算部22と、復帰遅延タイマー23と、電圧上昇判定演算部44と、復帰遅延タイマー45と、論理積演算回路46とからなっている。ここで、振幅値演算部21、平坦判定演算部22、および復帰遅延タイマー23は、前記した図26の実施の形態の場合と同様の機能を有するものである。
【0371】
ここで、電圧上昇判定演算部44は、交流電圧v1の大きさが、一定値以上上昇したかを検出し、一定値以上上昇した場合に出力を生じるものである。また、復帰遅延タイマー45は、励磁突入電流が差動要素の動作レベル以下に十分減衰するのに必要な時間以上の遅延時間を有する復帰遅延タイマーである。さらに、復帰遅延タイマー23の出力と、復帰遅延タイマー45の出力は、論理積演算回路46にて論理積される。
【0372】
一方、論理積演算回路46の出力をNOT演算回路19にて反転させ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー80としての誤動作を防止する。
【0373】
次に、本実施の形態の差動リレー80の作用について説明する。なお、差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図28において、差動要素5の差動電流演算部14で導出された差動電流Idは、励磁突入電流対策要素72に導入され、振幅値演算部21にて平坦性を検出するための演算を行って、振幅値Jが求められる。
【0374】
そして、ここで求められた振幅値Jが所定値k以下の時に、平坦判定演算部22は出力を生じ、当該平坦判定演算部22の出力は、復帰遅延タイマー23にて連続化される。
【0375】
一方、図26の実施の形態の場合と同様に、変圧器のいずれか1つの端子の電圧V1は、計器用変成器PTを介して適当な大きさに変換され、計器用変成器PTにより抽出された交流電圧V1は、入力変成器37により、さらに適当な大きさに変換された後、A/D変換器3に導入される。また、A/D変換器3では、交流電圧V1を一定時間間隔でサンプリングし、ディジタル量v1に変換する。
【0376】
当該ディジタル量に変換されたv1は、電圧上昇判定演算部44に導入される。電圧上昇判定演算部には、既知の演算アルゴリズムを用いればよい。例えば、現時点の瞬時値v(現在)と、1サイクル前の瞬時値v(1サイクル前)、との差分値ΔV(ΔV=v(現在)−v(1サイクル前))を取り、この差分値ΔVが一定値kv′以上の時に電圧上昇判定演算部44は出力を生じる。
【0377】
また、電圧上昇判定演算部44の出力は、復帰遅延タイマー45に導入されて復帰遅延され、復帰遅延タイマー45は励磁突入電流が減衰して差動要素が復帰する時間以上継続して出力を生じるものであれば良い。
【0378】
また、復帰遅延タイマー45は、励磁突入電流が差動要素の動作レベル以下に十分減衰するのに必要な時間以上の遅延時間を有する復帰遅延タイマーである。さらに、復帰遅延タイマー23の出力と、復帰遅延タイマー45の出力は、論理積演算回路46にて論理積される。
【0379】
また、電圧上昇判定演算部44の出力は、論理積演算回路46にて復帰遅延タイマー23の出力と論理積された後、NOT演算回路19にて反転させられ、さらに論理積演算回路20で差動要素5の出力との論理積演算を行うことにより、励磁突入電流にて動作する差動要素5の出力を阻止し、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0380】
以下に、かかる点についてより具体的に説明する。励磁突入電流は、変圧器鉄心飽和の関係により、電流が流れる期間と流れない期間との周期性が1サイクル毎に生じる。このため、励磁突入電流による平坦判定演算部22の出力は、1サイクル毎に一回は必ず送出され、その出力は1サイクル毎の周期性を持つ断続出力であり、1サイクル程度以上の遅延時間を有する復帰遅延タイマー23の出力は、必ず送出され続ける。
【0381】
また、励磁突入電流が発生するような、変圧器電圧印加時には、変圧器電圧印加以前に比べて、電圧が大きく増加するため、電圧上昇判定演算部44は出力を生じる。また、電圧上昇判定演算部44の出力は、復帰遅延タイマー45に導入されて復帰遅延され、復帰遅延タイマー45は励磁突入電流が減衰して差動要素が復帰する時間以上継続して出力を生じる。
【0382】
そして、前記復帰遅延タイマー23の出力と前記復帰遅延タイマー45の出力は、論理積演算回路46にて論理積されるので、励磁突入電流対策要素72は、変圧器電圧印加の時点から差動要素が復帰するまでの間は、少なくとも出力を生じる。
【0383】
当該励磁突入電流対策要素72の出力は、NOT演算回路19にて反転させられるので、NOT演算回路19は常に出力を生じず、論理積演算回路20の出力を常に阻止することができ、このため、励磁突入電流に対する差動リレー80の誤動作を防止できる。
【0384】
一方、内部事故の場合には、必ず、その変圧器の端子電圧は大きく低下するため、電圧上昇判定演算部44は(ΔV≧kv′の条件を満たさないので)常に出力を生じず、さらに、復帰遅延タイマー45も出力を生じない。よって、前記復帰遅延タイマー23の出力と前記復帰遅延タイマー45の出力は、論理積演算回路46にて論理積され、励磁突入電流対策要素72は常に出力を生じない。
【0385】
当該励磁突入電流対策要素72の出力は、NOT演算回路19にて反転させられるので、NOT演算回路19は常に出力を生じ、論理積演算回路20の出力を阻止することなく、差動リレー80は正常動作を行うことができる。
【0386】
本実施の形態では、内部事故時と励磁突入電流時とを弁別するために電圧上昇程度を用いたものである。つまり変圧器電圧印加時にはそれ以前に比して電圧が大きく上昇し、これとは反対に内部事故時は低下するからである。したがって、この判定手法は請求項1〜請求項11の全てに適用される。
【0387】
上述したように、本実施の形態においては、変圧器励磁突入電流と変圧器内部事故電流との波形の違い、すなわち励磁突入電流は1サイクル中に変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない一定の平坦部分が必ず存在するのに対し、事故電流は基本波電流もしくは不特定多数の高調波電流重畳のため一定区間の平坦部分が生じないこと、および変圧器励磁突入電流発生時と変圧器内部事故電流発生時との電圧の違い、すなわち励磁突入電流発生時には電圧が大きく上昇し、事故電流発生時には電圧が低下することの両方に着目したものである。
【0388】
そして差動電流Idの内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(k-1) )を導入し、一定区間での電流および電圧の振幅値をN乗した値を求め、この電流振幅値が所定値k以下となること、および電圧が所定値kv′以上上昇することの2つの条件を満たしたときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素72を備えて差動電流Idの平坦性、および電圧値の大きさを検出し、この励磁突入電流対策要素72の出力によって前記差動要素5の出力を阻止するようにした。
【0389】
その結果、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0390】
図29は請求項13に係るディジタル形保護継電器である変圧器保護用の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。なお、差動要素5の構成については、図1と全く同じであるため、図29ではその構成の一部を割愛している。
【0391】
即ち、本実施の形態の差動リレー1は、図29に示すように、図1における差動要素5と論理積演算回路20との間に、差動要素5の出力を1サイクル程度以上の時間遅延する動作遅延タイマー47を新たに備えると共に、差動要素5の差動判定演算部16の出力と励磁突入電流対策要素61の復帰遅延タイマー23の論理積を演算する論理積演算回路48を備え、この論理積演算回路48の出力により、動作遅延タイマー47の出力を阻止する構成としている。
【0392】
差動要素5の作用については、前記図31の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。図29においては、励磁突入電流対策要素61に導入され、振幅値演算部21にて前記第1の実施の形態で説明した(イ)式に基づく演算を行い、差動電流Idの各sp毎における一定区間の振幅値Jが算出される。また、平坦判定演算部22では、一定区間の振幅値Jがsp毎に常に判定演算されている。
【0393】
しかしながら、常時判定することは、負荷電流が流れている状態や外部事故で通過電流が流れている状態では通常、差動電流Idが零であるため、平坦判定演算部22は常に動作状態にあり、差動要素5の出力を常時阻止していることになる。
【0394】
そして、この時に内部事故が発生した場合には、平坦判定演算部22の出力は復帰するが、差動リレー1としての動作時間は、励磁突入電流対策要素61の復帰遅延タイマー23の出力復帰に要する時間分の遅れを生じることになる。
【0395】
この点、本実施の形態では、差動判定演算部16の出力と励磁突入電流対策要素61との論理積演算を論理積演算回路48で行い、差動要素5が動作しない場合には励磁突入電流対策要素61の出力を阻止し、差動要素5が動作した場合には励磁突入電流対策要素61の出力を許容するようにしている。
【0396】
その結果、差動電流Idがない定常状態においての励磁突入電流対策要素61による不要な出力阻止を行うことはなく、この状態から内部事故が発生した場合でも、差動リレー1の動作時間遅れを小さくすることができる。
【0397】
なお、差動判定演算部16の出力を遅延する動作遅延タイマー47は、差動判定演算部16の出力によって起動される励磁突入電流対策要素61との時間協調をとるものであり、励磁突入電流発生時に、差動判定演算部16の出力が励磁突入電流対策要素61の出力よりも先に送出されるのを遅らせるためのものである。
【0398】
これにより、差動要素5の出力と励磁突入電流対策要素61の出力との論理積演算回路48の動作出力によって、差動要素5の出力を遅延する動作遅延タイマー47出力を阻止することにより、差動リレー1としての誤動作を防止することができる。
【0399】
また、平坦区間を持たない事故電流では、平坦判定演算部22の出力は生じず、差動判定演算部16の出力は、動作遅延タイマー47および論理積演算回路20を通してそのまま差動リレー1の出力となり、正常動作を行うことができる。以上の説明から明らかなように、本実施の形態による判別手法は請求項1〜請求項12のすべてに適用可能である。
【0400】
上述したように、本実施の形態においては、変圧器励磁突入電流と変圧器内部事故電流との波形の違い、すなわち励磁突入電流は1サイクル中に変圧器鉄心の磁束飽和によって電流が流れる区間と変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない一定の平坦部分が必ず存在するのに対し、事故電流は基本波電流もしくは不特定多数の高調波電流重畳のため一定区間の平坦部分が生じないことに着目したものである。
【0401】
そして差動電流Idの内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im ,im-1 ,im-2 ,…,im-(k-1) )を導入し、一定区間での電流および電圧の振幅値をN乗した値を求め、この電流振幅値が所定値k以下となるときに励磁突入電流と判定して出力を生じる励磁突入電流対策要素72を備えて差動電流Idの平坦性を検出すると共に、差動要素5と論理積演算回路20との間に、差動要素5の出力を1サイクル程度以上の時間遅延する動作遅延タイマー47を備え、さらに差動要素5の差動判定演算部16の出力と励磁突入電流対策要素61の復帰遅延タイマー23の出力との論理積を演算する論理積演算回路48を備え、この論理積演算回路48の出力により、動作遅延タイマー47の出力を阻止するようにした。
【0402】
したがって、励磁突入電流の大きさに関係なく、励磁突入電流と事故電流を確実に区別することができ、前述した従来では適用が困難であった、内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器Trに対しても、変圧器励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器を得ることができる。
【0403】
なお、本発明は前述の各実施の形態に限定されるものではなく、以下に列挙する(a)〜(e)のようにしても同様に実施することができる。
(a)前記した各実施形態では、変圧器Trが2巻線変圧器である場合を例として説明したが、これに限らず、3巻線以上の複数端子を有する変圧器保護用の差動リレーについても本発明を同様に適用することが可能である。
(b)前記した第10の実施形態乃至第12の実施形態において、使用する交流電圧は、変圧器のいずれの端子の交流電圧でもよく、特に限定されたものではない。例えば、3巻線変圧器においては、1次側端子電圧、2次側端子電圧、3次側端子電圧のいずれを使用しても良い。
(c)前記した第10の実施形態乃至第12の実施形態において、端子電圧はいずれか1つの端子電圧を用いる例を記載したが、複数箇所の電圧に着目するとしても同様である。特に図示しないが、複数の端子電圧に着目する場合は、例えば図24のような電圧値判定演算部の出力をANDで使用する。このような拡張は周知の技術であり、当然、本発明の範囲であることはもちろんである。
(d)A/D変換のサンプリング周波数は、差動電流の瞬時値の振幅値を見ることで、事故電流と励磁突入電流とを区別できる値であれば、特に前述した値に限定されるものではない。
(e)前記した各実施形態における(イ)式、(ロ)式、(ハ)式、(ニ)式、(ホ)式は振幅値を算出するため、インラッシュ電流だけではなく、通常の電流、電圧などの振幅値演算としても適用できる。又、第11の実施形態の(ト)式は、(イ)式を電圧の振幅値演算として適用している一例である。
【0404】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば変圧器励磁突入電流と変圧器内部事故電流との波形の違い、すなわち励磁突入電流には、1サイクル中に変圧器鉄心の飽和が解けて電流が流れない区間(無電流期間)が必ず存在するのに対し、事故電流には、基本波電流もしくは不特定高調波電流の重畳のため無電流期間が生じないことに着目し、差動電流の平坦性を、振幅値を演算してその値が所定の値以下であるときに励磁突入電流と判定する励磁突入電流対策要素を備えて、励磁突入電流と事故電流とを確実に区別することにより、従来では適用が困難であった内部事故電流に第2調波近傍の高調波電流を含むような電力系統の変圧器に対しても、励磁突入電流では確実に不動作となり、変圧器内部事故時には確実に動作することが可能なディジタル形保護継電器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第1の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図2】事故電流波形と励磁突入電流波形の特徴を示す波形図。
【図3】同第1の実施の形態における作用を説明するための図。
【図4】同第1の実施の形態における作用を説明するための図。
【図5】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第2の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図6】同第2の実施の形態における作用を説明するための図。
【図7】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第3の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図8】同第3の実施の形態における作用を説明するための図。
【図9】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第4の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図10】同第4の実施の形態における作用を説明するための図。
【図11】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第5の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図12】同第5の実施の形態における作用を説明するための図。
【図13】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第6の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図14】ディジタル形保護継電器(差動リレー)の見る、変圧器電圧印加時の励磁突入電流波形と、外部事故回復時の励磁突入電流波形の特徴を示す波形図。
【図15】同第6の実施の形態における作用を説明するための図。
【図16】同第6の実施の形態における作用を説明するための図。
【図17】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第7の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図18】同第7の実施の形態における作用を説明するための図。
【図19】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第8の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図20】同第8の実施の形態における作用を説明するための図。
【図21】同第8の実施の形態における作用を説明するための図。
【図22】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第9の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図23】同第9の実施の形態における作用を説明するための図。
【図24】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第10の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図25】変圧器に差動リレーを適用した場合の一例を示す回路図。
【図26】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第11の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図27】同第11の実施の形態における作用を説明するための図。
【図28】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第12の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図29】本発明によるディジタル形保護継電器(差動リレー)の第13の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図30】変圧器に差動リレーを適用した場合の一例を示す回路図。
【図31】従来の差動リレーの構成例を示す機能ブロック図。
【符号の説明】
G 電力系統電源
CB 遮断器
CT1,CT2 変流器(CT)
Tr 変圧器
PT 計器用変成器PT
1,80 差動リレー
2 変成器(CT)
3 A/D変換器
4 CPU
5 差動要素
6 励磁突入電流対策要素(2f検出)
11,12 振幅値演算部
13 抑制電流(スカラー和)演算部
14 差動電流(ベクトル和)演算部
15 振幅値演算部(1f)
16 差動判定演算部
17 振幅値演算部(2f)
18 2f判定演算部
19 NOT(反転)演算回路
20,33,40,43,46,48 論理積(AND)演算回路
21,24,25,26,27,28,41 振幅値演算部
22,29,36 平坦判定演算部
23,45 復帰遅延タイマー
30 論理和(OR)演算回路
31,47 動作遅延タイマー
32,34 シフト演算部
35 最大値検出演算部
37 変成器(PT)
38 電圧振幅値演算部
39,42 電圧値判定演算部
44 電圧上昇判定演算部
61〜72 励磁突入電流対策要素
【数71】
Claims (13)
- 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電流の瞬時値のディジタル量に変換し、前記変換されたディジタル量を用いて各相毎の差動電流を求め、ここで求められた差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたディジタル形保護継電器において、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3,…,im-(k-1))を導入し、下記振幅値演算式(イ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第2の判定手段、および前記第2の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第1の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電流の瞬時値のディジタル量に変換し、前記変換されたディジタル量を用いて各相毎の差動電流を求め、ここで求められた差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたディジタル形保護継電器において、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔の3個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2)を導入し、下記振幅値演算式(ロ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第3の判定手段、および前記第3の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第2の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前期励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電流の瞬時値のディジタル量に変換し、当該変換されたディジタル量を用いて各相毎の差動電流を求め、当該求められた差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたディジタル形保護継電器において、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔の4個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3)を導入し、下記振幅値演算式(ハ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第4の判定手段、および前記第4の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第3の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電流の瞬時値のディジタル量に変換し、当該変換されたディジタル量を用いて各相毎の差動電流を求め、当該求められた差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたディジタル形保護継電器において、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔の5個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3, im-4)を導入し、下記振幅値演算式(ニ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第5の判定手段、および前記第5の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第4の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 複数の端子を有する被保護対象を挟んで各相毎の交流電流を導入し、当該導入された交流電流を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電流の瞬時値のディジタル量に変換し、当該変換されたディジタル量を用いて各相毎の差動電流を求め、当該求められた差動電流に基づく電気量が所定の値以上である時に内部事故と判定して出力を生じる第1の判定手段を有する差動保護要素を備えたディジタル形保護継電器において、前記求められた差動電流の内、電気角T度間隔の6個の瞬時値のディジタル量(im, im-1, im-2, im-3,im-4, im-5)を導入し、下記振幅値演算式(ホ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第6の判定手段、および前記第6の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第5の復帰遅延手段を有する励磁突入電流対策要素を備え、前記励磁突入電流対策要素の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止することを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 請求項1乃至請求項5記載のディジタル形保護継電器において、前記求められた差動電流の内、前記の電気角Tと同じまたは異なる電気角T′度間隔の、前記の個数Kと同じまたは異なるK’個の瞬時値のディジタル量(im ′,im-1 ′,im-2 ′,im-3 ′,…,im-(K ′ -1) ′)を導入し、下記振幅値演算式(ヘ)にて、差動電流の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力する第7の判定手段と、前記第7の判定手段の出力と前記第2の判定手段乃至第6の判定手段の出力との論理和を演算する第1の論理和演算手段とを励磁突入電流対策要素に新たに付加したことを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 請求項1乃至請求項5記載のディジタル形保護継電器において、第2の判定手段乃至第6の判定手段の出力を所定時間動作遅延する第1の動作遅延手段を励磁突入電流対策要素に新たに付加し、前記第1の動作遅延手段の出力を前記第1の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の入力とするようにしたことを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 請求項1乃至請求項5記載のディジタル形保護継電器において、第2の判定手段乃至第6の判定手段の現時点の出力と第2の判定手段乃至第6の判定手段の1サイクルまたは複数サイクル前の出力との論理積を演算する第1の論理積演算手段を新たに付加し、前記第1の論理積演算手段の出力を前記第1の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の入力とするようにしたことを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 請求項1乃至請求項5記載のディジタル形保護継電器において、前記求められた振幅値の現時点の値と1サイクルまたは複数サイクル前の値または1サンプリング以前の値とを比較していずれか大きい方の値を求め、かつ当該大きい方の値が一定値以下か否かを判定して一定値以下の時に出力を生じる第8の判定手段を新たに付加し、前記第8の判定手段の出力を前記第1の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の入力とするようにしたことを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 請求項1乃至請求項9記載のディジタル形保護継電器において、複数の端子を有する被保護対象のいずれか1つの端子又は複数端子の各相毎の交流電圧を導入し、当該導入された交流電圧を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電圧の瞬時値のディジタル量に変換し、ここで変換されたディジタル量を用いて各相毎の電圧の振幅値を求め、当該求められた電圧の振幅値が所定の値以上である時に出力を生じる第9の判定手段と、前記第9の判定手段の出力と前記第2の復帰遅延手段乃至第5の復帰遅延手段の出力との論理積を演算する第2の論理積演算手段とを励磁突入電流対策要素に新たに付加したことを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 請求項1及至請求項9記載のディジタル形保護継電器において、複数の端子を有する被保護対象のいずれか1つの端子又は複数端子の各相毎の交流電圧を導入し、当該導入された交流電圧を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電圧の瞬時値のディジタル量に変換し、前記求められた交流電圧の内、電気角T度間隔のK個の瞬時値のディジタル量(Vm, Vm-1, Vm-2, Vm-3,…, Vm-(k-1))を導入し、下記の振幅値演算式(ト)にて、交流電圧の一定区間における振幅値を求め、ここで求められた振幅値が一定値以上か否かを判定して一定値以上の時に出力する第10の判定手段と、および前記第10の判定手段の出力と前記第2の判定手段及至第8の判定手段の出力との論理積を演算する第3の論理積演算手段とを励磁突入電流対策要素に新たに付加したことを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 請求項1及至請求項11記載のディジタル形保護継電器において、複数の端子を有する被保護対象のいずれか1つの端子又は複数端子の各相毎の交流電圧を導入し、当該導入された交流電圧を各々一定時間間隔でサンプリングして交流電圧の瞬時値のディジタル量に変換し、当該変換されたディジタル量を用いて各相毎の電圧の振幅値を求め、当該求められた電圧の振幅値が所定の値以上増加した時に出力を生じる第11の判定手段と、前記第11の判定手段の出力を所定時間復帰遅延する第6の復帰遅延手段と、前記第6の復帰遅延手段の出力と前記励磁突入電流対策要素との論理積を演算する第4の論理積演算手段とを新たに付加し、前記第4の論理積演算手段の出力により、前記差動保護要素の出力を阻止するようにしたことを特徴とするディジタル形保護継電器。
- 請求項1乃至請求項12記載のディジタル形保護継電器において、前記差動保護要素の出力を所定時間動作遅延する第2の動作遅延手段と、前記差動保護要素の出力と励磁突入電流対策要素の出力との論理積を演算する第5の論理積演算手段とを新たに付加し、前記第5の論理積演算手段の出力により、前記第2の動作遅延手段の出力を阻止するようにしたことを特徴とするディジタル形保護継電器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17327097A JP3697337B2 (ja) | 1997-06-12 | 1997-06-12 | ディジタル形保護継電器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17327097A JP3697337B2 (ja) | 1997-06-12 | 1997-06-12 | ディジタル形保護継電器 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH114533A JPH114533A (ja) | 1999-01-06 |
JP3697337B2 true JP3697337B2 (ja) | 2005-09-21 |
Family
ID=15957345
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17327097A Expired - Fee Related JP3697337B2 (ja) | 1997-06-12 | 1997-06-12 | ディジタル形保護継電器 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3697337B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5468477B2 (ja) * | 2010-06-30 | 2014-04-09 | 株式会社東芝 | 電流差動継電装置 |
CN103812085B (zh) * | 2014-02-28 | 2016-06-29 | 国家电网公司 | 有源式电流压板有流防误闭锁装置 |
CN104993456B (zh) * | 2015-07-20 | 2017-12-19 | 贵州电网有限责任公司电力调度控制中心 | 防止直流偏磁引起电流互感器饱和造成变压器差动保护误动的方法 |
-
1997
- 1997-06-12 JP JP17327097A patent/JP3697337B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH114533A (ja) | 1999-01-06 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6356421B1 (en) | System for power transformer differential protection | |
Alencar et al. | A method to identify inrush currents in power transformers protection based on the differential current gradient | |
MS et al. | Detection of three‐phase fault during power swing using zero frequency filtering | |
Venkatanagaraju et al. | Third zone protection to discriminate symmetrical fault and stressed system conditions | |
CN112054482A (zh) | 基于dtw算法的换流变压器零序差动保护防误动方法 | |
Venkatanagaraju et al. | Adaptive third-zone distance protection scheme for power system critical conditions | |
JP3697337B2 (ja) | ディジタル形保護継電器 | |
JP3741193B2 (ja) | ディジタル形変圧器保護リレー | |
JPH04229015A (ja) | 変圧器差動継電器 | |
Krstivojevic et al. | A new algorithm for avoiding maloperation of transformer restricted earth fault protection caused by the transformer magnetizing inrush current and current transformer saturation | |
JP3665402B2 (ja) | デジタル形保護継電器 | |
CN111276938B (zh) | 基于波形相关性分析的换流变压器零序差动保护新判据 | |
JP3362462B2 (ja) | 保護継電装置 | |
Aibangbee et al. | Power Transformer Inrush Current Detection & Harmonic Sharing In Differential Relay Protection | |
JPH1141793A (ja) | 励磁突入電流判別装置 | |
Xu et al. | A new method for busbar protection stability improvement | |
JP7250230B1 (ja) | 変圧器保護リレーおよび変圧器保護方法 | |
Wang | Power Quality Disturbances and Protective Relays: Component Switching and Frequency Deviation | |
Muthukrishnan et al. | Fast and secure breaker failure detection algorithms | |
JPH07193987A (ja) | 変圧器保護リレー装置 | |
Bejmert et al. | A new multi-criteria fuzzy logic transformer inrush restraint algorithm | |
Etumi et al. | New algorithm based on auto-correlation and cross-correlation scheme to detect the internal fault in single phase transformer | |
Simon et al. | Performance analysis of empirical Fourier transform based power transformer differential protection | |
Makwana et al. | Enhanced transformer differential protection–design, test and field experience | |
Proctor | Not all differentials are the same: How different percent differential relay algorithm methods can impact relay settings and performance |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050201 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050329 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050623 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050704 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090708 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090708 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100708 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110708 Year of fee payment: 6 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |