JP3741193B2 - ディジタル形変圧器保護リレー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変圧器のインラッシュ電流(励磁突入電流)と内部事故電流との判別を可能にしたディジタル形変圧器保護リレーに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、主要変圧器保護継電方式として、電流比率差動リレーを主体とした方式が多く採用されている。この方式は、周知のように保護対象としての変圧器の各端子電流をベクトル演算することによって事故点が変圧器の内部にあるか外部にあるかを高感度に判定できる利点を有しており、内部事故の場合に生じる差電流によってリレーの動作コイルに通電し、遮断器をトリップ動作させるものである。
しかしながら、変圧器の充電時や変圧器に連系している送電線の再閉路時には、インラッシュ電流により電流比率差動リレーが誤動作する可能性がある。このため最近では、上記誤動作を防止するために、インラッシュ電流には第2調波成分が比較的多く含まれることに着目し、この第2調波成分の基本波成分に対する含有率がある一定値以上になった場合をインラッシュ電流と判定し、第2調波成分を抑制力として電流比率差動リレーを短時間ロックする第2調波抑制方式が提案されている。
【0003】
一方、近年における送電設備の高電圧化、大容量化、長距離化、ケーブル系統の増加等に起因して対地静電容量が増加し、故障時における系統インダクタンス分との共振周波数が低下する傾向にあり、特に超高圧系統では変圧器内部事故の際の系統動揺に起因して第2調波近傍の低次高調波成分が多量に発生することが予想されるため、従来の第2調波抑制方式だけではインラッシュ電流と内部事故電流との正確な判別が困難になりつつある。
【0004】
このような点に鑑み、系統の基本波電流に同期した第2調波電流(以下、基準第2調波電流という)と、系統から抽出した第2調波電流(以下、抽出第2調波電流という)との位相を比較してインラッシュ電流と内部事故電流とを判別するようにしたディジタル形変圧器保護リレーが特公平5−46170号(特許第1833029号)として知られている。
このディジタル形変圧器保護リレーは、前記基準第2調波電流を作成する基本波抽出ディジタルフィルタと、前記抽出第2調波電流を得るための第2調波抽出ディジタルフィルタと、基準第2調波電流及び抽出第2調波電流の位相を3相各相につき比較して、2相以上につき抽出第2調波電流が基準第2調波電流に対しほぼ±120°(電気角)以上の位相差を持つ逆位相領域にあることを検出した場合にインラッシュ電流が発生したと判定し、3相すべての比率差動リレーのロック指令を一定時間出力する位相比較手段と、を備えたものであり、この従来技術によれば、系統からの電流入力要素のみによってインラッシュ電流と内部事故電流との判別を一応行うことが可能となった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特公平5−46170号のディジタル形変圧器保護リレーでは、系統の基本波電流を30°ごとにサンプリングして得た瞬時値をサンプリング間隔の2倍の60°ごとに間引いて基本波に同期した基準第2調波電流を作成しているため、例えばサンプリング間隔の30°ごとに位相比較演算を実施した場合にサンプリング誤差を生じることが懸念される(公報第4頁左欄第9行〜第13行)。
そこで本発明は、基準第2調波電流の作成方法を改良することにより、位相比較つまりインラッシュ電流と内部事故電流との判別を一層高精度に行えるようにしたディジタル形変圧器保護リレーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、第2調波抑制方式により変圧器のインラッシュ電流による比率差動リレーの誤動作を防止するようにしたディジタル形変圧器保護リレーであって、系統から抽出した基本波電流に基づいてその第2調波としての基準第2調波電流を作成する基本波抽出ディジタルフィルタと、系統から第2調波電流のみを抽出する第2調波抽出ディジタルフィルタと、前記基準第2調波電流と抽出第2調波電流との内積演算値を整定値と比較してインラッシュ電流と変圧器の内部事故電流とを判別する位相比較手段とを備えたディジタル形変圧器保護リレーにおいて、2つのサンプリング時点における基本波電流の瞬時値の2乗の差を演算して基本波電流に同期した基準第2調波電流を求めるものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のディジタル形変圧器保護リレーにおいて、前記内積演算値と整定値との比較によるインラッシュ電流の判定が2相以上成立したときに3相すべての比率差動リレーのロック指令を出力するものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のディジタル形変圧器保護リレーにおいて、前記整定値が正の値であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、本発明の原理としては、特公平5−46170号と同様に、第2調波を含む系統電流の原波形(インラッシュ電流または第2調波含有事故電流)から基準第2調波電流I2fnと抽出第2調波電流I2fとを作成し、両者の位相比較によってインラッシュ電流と内部事故電流とを判別する。
ここで、基準第2調波電流I2fnとは、系統の基本波電流に同期した第2調波電流をいい、抽出第2調波電流I2fとは、系統から抽出した第2調波電流をいう。
【0010】
以下、基準第2調波電流I2fn及び抽出第2調波電流I2fの生成手順、並びに位相比較手順を図1に沿って説明する。
まず、直流分、基本波分、第2調波を始めとする高調波成分を含む系統電流の原波形(図1のS0)をバンドパスフィルタ等のアナログフィルタに通し、直流分や高調波成分(第2調波を除く)を除去する(同S1)。その後、以下の手順でアナログフィルタの出力から基本波電流I1fnを抽出する。
【0011】
原波形をcos(ωt+θ1)+kcos(2ωt+θ2)とすると、基本波電流I1fnは、In−In-1+In-2−In-4+In-5−In-6という原理式のディジタルフィルタからなる基本波抽出フィルタによって抽出される(同S21)。ここで、基本波電流の振幅を1とおくとともに、kは第2調波電流の振幅、θ1は基本波電流の初期位相、θ2は第2調波電流の初期位相、Inはある時点n(n番目)のサンプリングにおける電流瞬時値を示す。
すなわち、基本波電流I1fnは数式1によって表される。数式1におけるT1はサンプリングタイミングを示す。なお、サンプリング間隔は30°とする。
【0012】
【数1】
【0013】
次に、抽出された基本波電流I1fnから基準第2調波電流I2fnを作成する。まず、前処理として、数式2によって定義されるI’2fnを作る(同S22)。すなわち、ある時点nにおける基本波電流(瞬時値)I1fnの2乗から2サンプリング前の時点(n−2)における基本波電流(瞬時値)I1fn-2の2乗を減じてI’2fnを求める。
【0014】
【数2】
【0015】
次いで、上記I’2fnに基づいて基準第2調波電流I2fnを作成する(同S23)。
具体的には、直流成分、第2調波成分を含む原波形の第1波平均値を求めるとともに、その符号に応じてI’2fnの符号を変えて、基準第2調波電流I2fnとする。つまり、原波形の第1波平均値の符号がプラスの時には数式3により、原波形の第1波平均値の符号がマイナスの時には数式4により、基準第2調波電流I2fnを決める。
【0016】
【数3】
I2fn=I’2fn
【0017】
【数4】
I2fn=−I’2fn
【0018】
このように本発明では、あるサンプリングタイミングとそれより2サンプリング前における基本波電流I1fnの瞬時値の2乗をそれぞれ計算し、両者の差をとることでI’2fnを求め、このI’2fnに基づいて基本波電流I1fnに同期した基準第2調波電流I2fnを作成している。基本波電流の瞬時値を2乗した波形は第2調波成分と直流分とを含んだ波形となるが、2つの波形データの時間差分をとることで直流分を除去し、基準第2調波電流I2fnを正確に演算することができる。
【0019】
次に、抽出第2調波電流I2fの求め方につき説明する。
前述のように、原波形をcos(ωt+θ1)+kcos(2ωt+θ2)とすると、第2調波電流I2fは、In−In-2+In-6−In-8という原理式のディジタルフィルタからなる第2調波抽出フィルタによって抽出される(同S3)。つまり、抽出第2調波電流I2fは数式5によって表される。
【0020】
【数5】
【0021】
次いで、基準第2調波電流I2fnと抽出第2調波電流I2fとの位相比較(内積演算)により、インラッシュ電流と内部事故電流とを判別する(同S4)。
まず、原波形の第1波平均値の符号がプラスの時は、前記数式3による基準第2調波電流I2fnと数式5による抽出第2調波電流I2fとの位相比較を行う。両電流の内積をとると、係数を無視すれば数式6となり、この数式6による内積演算値≧整定値のときにインラッシュ電流と判定し、内積演算値<整定値の時に内部事故電流と判定する。
ここで、整定値としては、0または後述のごとく正の小さい値であるKが選択される。
【0022】
【数6】
【0023】
同様にして、原波形の第1波平均値の符号がマイナスの時は、前記数式4による基準第2調波電流I2fnと数式5による抽出第2調波電流I2fとの内積をとると数式7となり、この数式7による内積演算値≧整定値のときにインラッシュ電流と判定し、内積演算値<整定値の時に内部事故電流と判定する。
【0024】
【数7】
【0025】
すなわち、内積演算値は、基本波電流の初期位相θ1と第2調波電流の初期位相θ2とにより(2θ1−θ2)の関数として表されることになり、この関数が整定値以上である場合にインラッシュ電流と判定する。
なお、後述するように、基本波初期位相θ1が±90°近辺では、内部演算値は負であるが0に極めて近く、明確に判別できないおそれがあるため、整定値を正の小さな値Kとすることが望ましい。
【0026】
図2は、本実施形態の構成を示す機能ブロック図であり、図1のステップS1を実行するアナログフィルタ11、同S21〜S23を実行する基本波抽出フィルタ12、同S3を実行する第2調波抽出フィルタ13、同S4を実行する位相比較手段14からなっている。そして、この位相比較手段14によりインラッシュ電流と判定された場合に、電流比率差動リレーに対するロック指令が出力される。
【0027】
基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相比較は系統の各線間電圧(RS相、ST相、TR相)について行うものとし、図3に示すように、各相におけるインラッシュ判定出力をAND回路15〜17及びOR回路18を介することにより、少なくとも2相以上のリレーロック指令により最終的に3相すべてのメインリレーをロックする構成とする。
【0028】
図4は、ある相のインラッシュ判別演算の位相特性を概念的に示している。前述した内積演算値≧0(または≧K)の状態は、図4に示すごとく、基準第2調波電流(ベクトル)I2fnに対して抽出第2調波電流(ベクトル)I2fが所定の角度以内にある場合に相当し、この状態がインラッシュ電流(インラッシュロック領域)として判定される。
【0029】
図5、図6は、本発明の実施形態によるインラッシュ電流のシミュレーション結果を示す図である。このケースは、残留磁束がR相70%、S相35%、T相35%、遮断器投入位相0°(R相電圧)の条件でインラッシュ電流を発生させた場合の波形である。
図5(a)は各相電流Ir,Is,Itを、図5(b)は各相間のΔ電流Irs,Ist,Itrを、図5(c)はRS相の抽出基本波電流と抽出第2調波電流の波形を、図5(d)はRS相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流の波形を、図6(a)はRS相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図6(b)はST相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図6(c)はTR相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図6(d)はRS相、ST相、TR相のリレーロック指令(図3におけるインラッシュ判定出力に相当)と3相全体でのインラッシュロック指令(同じくOR回路18の出力に相当)を示している。
【0030】
インラッシュ電流の判別アルゴリズムには電流比率差動リレー演算と同様にΔ電流を使用するので、インラッシュ電流をΔ電流で表わすと、RS相はプラスのインラッシュ、TR相はマイナスのインラッシュ、一方、ST相はプラス・マイナスのインラッシュとなる。ここで前述の数式6または数式7を適用することで、インラッシュに独特の偏寄波形であるRS相、TR相については、図6(a),(c)のように内積値が正の値となって正しくインラッシュ電流を判別できるが、プラス・マイナスのインラッシュであるST相については、図6(b)のように正負に振れるため、判定が不確実になることが予想される。
種々の条件でインラッシュ電流をシミュレーション評価した結果、インラッシュ電流は必ず2相以上で正波側あるいは負波側の偏寄波形となり、正負に振れるインラッシュ電流は1相以下となった。従って、図3に示したごとく、内積演算値≧整定値によるインラッシュ判定出力が2相以上存在するときにインラッシュ電流と判別するようにすれば、内部事故電流との判別を一層高精度に行うことができる。
【0031】
次に、内部事故電流に対する本実施形態の判定動作を事故の種別ごとに説明する。図7(a)は、内部事故電流を判定するためのモデル系統を示す回路構成図、図7(b)はその等価回路図である。
図7(a)において、21は系統の電源、22はケーブル系統、23は架空送電線、24はシャントリアクトル、25は保護するべき変圧器、Ryは変圧器保護用の電流比率差動リレーである。変圧器25の内部事故時にはリレーRyが動作して遮断器(図示せず)をトリップすることにより変圧器25を保護し、また、インラッシュ電流の検出時にはリレーロックの対象となる。
なお、図7(b)において、L0(X0)は後方インピーダンス、Lf(Xf)は送電線及び変圧器インピーダンス、Ls(Xs)はシャントリアクトル24のインピーダンス、L,Cはケーブル系統22のインピーダンスである。
【0032】
(1)3線短絡(3LS)事故時の検討
まず、図7において3LS事故が発生した場合、事故電流Ifは数式8によって表される。
この数式8において、ωnにおけるnは内部事故時の含有高調波次数であり、ここではn=2(すなわちωn=2ω:第2調波)とする。なお、ωn,ωpは後述する数式11、数式12によって定義される。また、θ−180°は基本波電流の初期位相、θn−90°は含有高調波(第2調波)電流の初期位相である。
【0033】
【数8】
【0034】
数式8から、含有第2調波電流の絶対値η(θ)及び位相θnは、それぞれ数式9、数式10によって表される。ただし、数式9におけるωp 2,ωn 2は数式11、数式12によって定義される。なお、数式11、数式12におけるL,Cは前述した図7(b)のケーブル系統22のインピーダンスである。
【0035】
【数9】
【0036】
【数10】
θn=tan-1{(−ω/ωn)(cosθ/sinθ)}
【0037】
【数11】
ωp 2=(1/C)・(1/Ls+1/L0)
【0038】
【数12】
ωn 2=(1/L)・(1/Lf+1/Ls+1/L0)
【0039】
インラッシュ電流の判別アルゴリズムでは前述した数式6または数式7を使用するから、例えば数式6と数式8とを比較することにより、数式6における基本波電流初期位相の2倍と第2調波電流の初期位相との差である(2θ1−θ2)は、数式13によって表される。
【0040】
【数13】
【0041】
数式13を利用して、
90°≦基本波初期位相(=θ−180°)≦270°の時(基本波初期位相が第2、第3象限時)には、数式6により、
cos(2θ1−θ2)つまりcos(2θ−θn+90°)≧0ならばインラッシュ電流、cos(2θ−θn+90°)<0ならば内部事故電流と判定する。
また、−90°≦基本波初期位相(=θ−180°)≦90°の時(基本波初期位相が第1、第4象限時)には、数式7により、
cos(2θ1−θ2)つまりcos(2θ−θn+90°)≦0ならばインラッシュ電流、cos(2θ−θn+90°)>0ならば内部事故電流と判定する。
【0042】
上記位相関係は数式10を用いて計算され、ある相についての計算結果をグラフ表示したものが図8である。この図8によれば、基本波電流のほとんどの初期位相範囲において内積演算値が負側になっていることから、第2調波電流を含む系統電流を正しく内部事故電流と判別していることがわかる。ただし、基本波電流の初期位相(θ−180°)が−90°,90°近辺の時には内積値が零近辺となるので、内部事故電流とインラッシュ電流との判別が微妙になっている。
【0043】
ここで、3LS事故に対する実際のシミュレーション結果と上述の定性的説明とを比較してみる。
図9は事故発生位相0°(R相電圧)の変圧器端子における3LS事故時のシミュレーション結果である。図9(a)は各相電流Ir,Is,Itを、図9(b)は各相間のΔ電流Irs,Ist,Itrを、図9(c)はRS相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図9(d)はST相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図9(e)はTR相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図9(f)はRS相、ST相、TR相のリレーロック指令と3相全体でのインラッシュロック指令を示している。
【0044】
事故時の故障電流基本波初期位相から、本実施形態のインラッシュ電流判別アルゴリズムによる内積演算値は、RS相Δ電流が−0.98、ST相Δ電流が0、TR相Δ電流が−0.98(原波形の第1波平均値の符号がマイナスのため、−符号を付けて)となる。この結果と図9のシミュレーション結果とを比較すると、両者は良く一致していることが分る。
図9はST相の基本波初期位相が90°となる場合であり、内積値は零近辺となってST相についてのインラッシュ電流と内部事故電流との判別は容易ではないが、他の2相については確実に内部事故電流と判定している。一般に3LS事故の場合、1相の基本波初期位相が±90°近辺にあって事故判定が困難となっても、他の2相については確実に事故判定が可能である。
【0045】
(2)2線地絡(2LG)事故時の検討
2LG事故時のシミュレーション結果を、図10に示す。図10(a)は各相電流Ir,Is,Itを、図10(b)は各相間のΔ電流Irs,Ist,Itrを、図10(c)はRS相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図10(d)はST相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図10(e)はTR相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図10(f)はRS相、ST相、TR相のリレーロック指令と3相全体でのインラッシュロック指令を示している。
なお、事故相をR相、S相とする。
【0046】
ここでは、事故相(R,S相)に第2調波が含有されるように系統条件を設定しており、T相は変圧器等の他のインピーダンスを経由するため高調波次数は第2調波からずれたものとなる。これをΔ電流としてみれば、RS相は第2調波のみを含有し、他相のΔ電流は第2調波と他調波とを同時に含有すると考えられる。
従って、RS相のΔ電流Irsについては、基本波初期位相が±90°近辺でなければインラッシュ電流と内部事故電流とを正確に判別することが可能である。他相のΔ電流Ist,Itrについては、第2調波以外の含有高調波の影響を受けて判定結果はプラスとマイナスとの間を振動することになり(図10(d),(e))、3相のうち2相において内積演算値がマイナスとなる時点でトリップ出力が発せられることになる(図10(f))。
【0047】
(3)1線地絡(1LG)事故時の検討
1LG事故時のシミュレーション結果を、図11に示す。前記同様に図11(a)は各相電流Ir,Is,Itを、図11(b)は各相間のΔ電流Irs,Ist,Itrを、図11(c)はRS相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図11(d)はST相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図11(e)はTR相の基準第2調波電流と抽出第2調波電流との位相差(内積値)の波形を、図11(f)はRS相、ST相、TR相のリレーロック指令と3相全体でのインラッシュロック指令を示している。
なお、事故相をR相とする。
【0048】
この例でも、事故相(R相)に第2調波が含有されるように系統条件を設定してあり、他の健全相(S,T相)にはΔ巻線を経由した、ほとんど同一で絶対値的には事故相(R相)に比してかなり小さな電流が流れる。またS,T相電流に含まれる高調波は変圧器等の他のインピーダンスを経由するため、高調波次数は第2調波からずれたものとなる。Δ電流としてみれば、RS,TR相Δ電流Irs,Itrは、ほとんどR相電流で決定されるものとなり、ST相Δ電流Istはほとんど零である(図11(b))。
従って、RS,TR相Δ電流Irs,Itrは本発明の判別アルゴリズムにより正しく内部事故電流と判別され、定常時における3相全体のインラッシュロック指令は発生していない(図11(f))。ただし、ST相Δ電流Istは零に近いから、判別アルゴリズムの結果はあまり信用できない。
【0049】
なお、3LS事故時の検討結果から、RS相あるいはTR相のΔ電流の基本波電流初期位相が±90°近辺では、内積値が負の値になるが零に近いため、本発明の判別アルゴリズムでは明確に事故電流と判定できないおそれがある。従って、前述したように、位相比較に用いる整定値を零とせずに正の小さな値Kとすることが望ましい。
すなわち、
(基準第2調波電流・抽出第2調波電流)≧Kの時、インラッシュ電流、
(基準第2調波電流・抽出第2調波電流)<Kの時、内部事故電流、
という判別アルゴリズムを用いると良い。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、基本波電流の瞬時値の2乗を計算してその時間差分をとることにより基本波電流に同期した基準第2調波電流を作成し、この基準第2調波電流を抽出第2調波電流との位相比較(内積演算)に用いているため、特公平5−46170に記載されたディジタル形変圧器保護リレーに比べ、基準第2調波電流の作成手順において原理的に誤差を生じるおそれがなく、仮に系統電流の30°ごとに位相比較を行ったとしても基準第2調波電流のサンプリング誤差に基づく誤差を生じることがない。すなわち、従来よりも一層正確にインラッシュ電流と変圧器の内部事故電流とを判別できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態における各相のインラッシュ電流判別シーケンスを示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるインラッシュ電流の判別演算の位相特性を示す図である。
【図5】本発明の実施形態におけるインラッシュ電流のシミュレーション結果を示す図である。
【図6】本発明の実施形態におけるインラッシュ電流のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】本発明の実施形態において内部事故電流を判別するためのモデル系統を示す回路構成図(図7(a))及び等価回路図(図7(b))である。
【図8】本発明の実施形態の判別アルゴリズムによる、内部事故発生時の基本波電流初期位相と内積演算値との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態における3線短絡時のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】本発明の実施形態における2線地絡時のシミュレーション結果を示す図である。
【図11】本発明の実施形態における1線地絡時のシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
11 アナログフィルタ
12 基本波抽出フィルタ
13 第2調波抽出フィルタ
14 位相比較手段
15〜17 AND回路
18 OR回路
21 電源
22 ケーブル系統
23 架空送電線
24 シャントリアクトル
25 変圧器
Ry 電流比率差動リレー
Claims (3)
- 第2調波抑制方式により変圧器のインラッシュ電流による比率差動リレーの誤動作を防止するようにしたディジタル形変圧器保護リレーであって、系統から抽出した基本波電流に基づいてその第2調波としての基準第2調波電流を作成する基本波抽出ディジタルフィルタと、系統から第2調波電流のみを抽出する第2調波抽出ディジタルフィルタと、前記基準第2調波電流と抽出第2調波電流との内積演算値を整定値と比較してインラッシュ電流と変圧器の内部事故電流とを判別する位相比較手段とを備えたディジタル形変圧器保護リレーにおいて、
2つのサンプリング時点における基本波電流の瞬時値の2乗の差を演算して基本波電流に同期した基準第2調波電流を求めることを特徴とするディジタル形変圧器保護リレー。 - 請求項1記載のディジタル形変圧器保護リレーにおいて、
前記内積演算値と整定値との比較によるインラッシュ電流の判定が2相以上成立したときに3相すべての比率差動リレーのロック指令を出力することを特徴とするディジタル形変圧器保護リレー。 - 請求項1または2記載のディジタル形変圧器保護リレーにおいて、
前記整定値が正の値であることを特徴とするディジタル形変圧器保護リレー。
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