JP3664878B2 - 自動車の乗員保持装置 - Google Patents

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  • Air Bags (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の乗員保持装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の走行時に、車体に対して大きな外力が加えられたとき、座席に着座した乗員を保持する目的でシールベルトやエアバッグシステムが従来より広く採用されている。
【0003】
図6は、車室内に配置されたシートクッション1Aとシートバック2Aを有する座席3Aに乗員Pが着座した状態で、図示していない車体に対し、その前部から大きな外力F1が加えられたときの様子を示している。かかる外力F1が車体に加えられることによって、乗員Pの上体と頭部は、車体ないしはこれに固定された座席3Aに対して前方に倒れるように移動し、乗員Pの背部及び頭部と、シートバック2A及びヘッドレスト4Aの間に大きな空間S1ができる。このとき、乗員Pの体にはシールベルト(図示せず)が装着され、また場合によっては乗員の前方にて膨張したエアバッグ(図示せず)が位置するので、乗員の体がこれらによって保持され、乗員の安全性が確保される。
【0004】
ところが、乗員Pの体が図6に示すように保持された後、その反動によって、乗員Pの上体と頭部は、座席3Aに対して、矢印Aで示すように後方へ移動する。このため、乗員Pの上体と頭部がシートバック2Aと、その上方に位置するヘッドレスト4Aに当り、乗員Pに不快感を与えるおそれがある。
【0005】
また、図7は、車体に対してその後方から大きな外力F2が加えられたときの様子を示している。この場合には、乗員Pの上体は座席3Aと共に前方に移動するのに対し、乗員Pの頭部は、首の部位を中心として矢印Bで示すように後方に倒れ込むように移動する。このとき、シートバック2Aの上方に配置されたヘッドレスト4Aによって乗員Pの頭部が保持され、安全性が確保される。
【0006】
ところが、通常の運転時には、乗員Pの頭部はヘッドレスト4Aからわずかに離れ、頭部とヘッドレスト4Aの間には空間S2があるため、上述のように外力F2が車体の後部に加えられ、乗員Pの頭部が矢印Bで示す後方に倒れたとき、頭部がヘッドレスト4Aに当り、これによっても乗員Pに不快感を与えるおそれがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、車体の前部に外力が加えられたとき、乗員の頭部と上体が前方に倒れ、次いでその反動で後方に移動することによって、頭部と背部がヘッドレストとシートバックに当ることを防止できると共に、車体の後部に外力が加えられたとき、乗員の頭部が座席に対して後方に移動してヘッドレストに当ることを防止できる自動車の乗員保持装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、車体の前部に所定値以上の外力が加えられたことを検知する前突検知手段と、通常は、乗員が着座した座席のシートバック内に収容され、前記前突検知手段の検知に基づいて内部に送り込まれたガスにより膨らみながらシートバックの出口からシートバック外に飛び出し、乗員の背部及び頭部とシートバック及びヘッドレストとの間の空間を埋めるように膨張する背部用エアバッグと、車体の後部に所定値以上の外力が加えられたことを検知する後突検知手段と、通常は、乗員が着座した座席のシートバック内に収容され、前記後突検知手段の検知に基づいて内部に送り込まれたガスにより膨らみながらシートバックの出口からシートバック外に飛び出し、乗員の頭部とヘッドレストとの間の空間を埋めるように膨張する頭部用エアバッグとを具備して成る自動車の乗員保持装置を提案する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1は、自動車の室内に配置された座席3に乗員Pが着座して自動車を運転しているときの様子を示す。座席3は、ここに着座した乗員、すなわち着座者の尻部を支えるシートクッション1と、この乗員Pの背部を支えるシートバック2と、そのシートバック2の上方に位置し、ステー5を介してシートバック2に支持されたヘッドレスト4とを有している。自動車の運転中に、乗員Pの頭部をヘッドレスト4に当てることもできるが、このようにすると運転しずらくなるため、通常、乗員Pは頭部をヘッドレスト4からわずかに離した状態で座席3に着座する。このため、乗員Pの頭部とヘッドレスト4の間には、空間S2(図7も参照)が存在する。
【0013】
図2は、シートバック2とヘッドレスト4の拡大斜視図であり、図3はシートバック2の断面図である。図3から判るように、シートバック2は、シートバックフレーム6と、パッド7と、そのまわりに設けられた表皮8とを有している。また、このシートバック2の内部に形成された収納空間S3には、後に詳しく説明する背部用エアバッグ9と頭部用エアバッグ10が折り畳まれた状態で収容され、さらにこれらのエアバッグ9,10用のインフレータ11,12が収納されている。
【0014】
また、シートバック2の上部には、後述するようにエアバッグ9,10が飛び出す出口13が形成され、この出口13は例えば樹脂より成るリッド14によって閉鎖されている。このリッド14は、基部15と、可動部16より成り、その基部15はシートバック2の上部に固定され、可動部16が出口13を覆っている。可動部16と基部15は、肉厚の薄くなった薄肉ヒンジ17を介して一体に連結されている。
【0015】
一方、図1に示すように、車体18の前部に位置するフロントバンパ19と、後部に位置するリヤバンパ20には、フロントセンサ21とリヤセンサ22がそれぞれ設けられている。
【0016】
ここで、図1に符号F1で示すように車体18の前部に外力F1が加えられると、先にも説明したように、乗員Pの上体と頭部は、図4に示す如く座席3に対して前方に倒れるように移動する。このとき、図示してしないシートベルトや、ステアリングホイール23から飛び出て膨張した従来より周知なエアバッグ(図示せず)によって乗員Pの体が保持される。乗員Pの上体と頭部が前倒することにより、乗員Pの背部及び頭部とシートバック2及びヘッドレスト4との間に大きな空間S1(図6)ができる。
【0017】
一方、車体18の前部に外力F1が加えられ、その値が所定値以上であることがフロントセンサ21により判別されて検知されると、通常のエアバッグシステムにおけるのと全く同様に、図3に示したインフレータ11の点火装置における図示していないフィラメントが発熱し、そのまわりの点火剤が着火し、その熱によってインフレータ11,12のガス発生剤が燃焼し、背部用エアバッグ9の内部にガス、例えば窒素ガスが送り込まれる。これにより、背部用エアバッグ9が膨みながらシートバック2の上部に設けられたリッド14の可動部16を図3に鎖線で示すように押し開く。このようにして背部用エアバッグ9は、内部に送り込まれたガスによって膨みながらシートバックの上部の出口13からシートバック外に飛び出し、図4に示すように乗員Pの上体と頭部が最大に前方に移動した時点で、乗員Pの背部及び頭部と、シートバック2及びヘッドレスト4との間の空間S1(図6)を埋めるように膨張する。
【0018】
上述のように、フロントセンサ21、インフレータ11及び背部用エアバッグ9は、従来のエアバッグシステムと同様に作動し、膨張した背部用エアバッグ9が空間S1を埋めるので、シートベルトや、従来より用いられている図示していないエアバッグによって体を保持され、次いでその反動で後方に移動する乗員Pの上体と頭部は、膨張した背部用エアバッグ9によって保持され、シートバック2及びヘッドレストに直に当ることが回避される。このようにして、乗員に不快感を与える不具合を阻止できる。
【0019】
フロントセンサ21は、車体の前部に所定値以上の外力が加えられたことを検知する前突検知手段の一例を構成するものであり、かかるフロントセンサ21を用いた場合、乗員Pの上体と頭部が図4のように最大に前方に移動した時点で、背部用エアバッグ9が膨張を完了するように、車体18の前部に外力F1が加えられたことを検知してから、わずかな時間の経過後に、インフレータ11から背部用エアバッグ9にガスが送り込まれるように制御される。
【0020】
フロントセンサ21の代りに、或いはこのセンサと共に、例えばステアリングホイール23、インストルメントパネル24、シートクッション1などにセンサを設け、かかるセンサによって前突検知手段を構成することもできる。いずれの形式のセンサを用いた場合も、乗員Pの上体及び頭部と、シートバック2及びヘッドレスト4との間にできた空間を、膨張した背部用エアバッグ9が埋めるように、その背部用エアバッグ9の膨張完了タイミングが設定される。
【0021】
以上のように、本例の自動車の乗員保持装置は、車体18の前部に所定値以上の外力F1が加えられたことを検知する前突検知手段と、通常は、乗員Pが着座した座席3のシートバック2内に収容され、上記前突検知手段の検知に基づいて内部に送り込まれたガスにより膨らみながらシートバック2の出口13からシートバック2外に飛び出し、乗員Pの背部及び頭部とシートバック2及びヘッドレスト4との間の空間S1を埋めるように膨張する背部用エアバッグ9とを具備している。
【0022】
この構成を第1の構成と称することにすると、かかる第1の構成によって、車体18の前部に大きな外力F1が加えられ、乗員の上体と頭部が反動で後方に移動したとき、その上体と頭部を背部用エアバッグ9によって支えることができ、上体と頭部がシートバック2とヘッドレスト4に直に当ることを防止でき、乗員Pに対して不快感を与える不具合を阻止できる。
【0023】
一方、図1に符号F2で示すように、車体18の後部に外力F2が加えられると、乗員Pの頭部が図7に矢印Bで示したように後方に倒れるように移動する。ところが、この場合も、車体18の後部に外力F2が加えられ、その値が所定値以上であることがリヤセンサ22により判別されて検知されると、通常のエアバッグシステムにおけると同様に、図3に示したインフレータ12の図示していないフィラメントの発熱により、そのまわりの点火剤が着火し、これによってインフレータ12内のガス発生剤が燃焼し、頭部用エアバッグ10の内部にガスが送り込まれる。これにより、その頭部用エアバッグ10が膨らみながらリッド14の可動部16を図3の鎖線のように開く。このようにして、頭部用エアバッグ10は、内部に送り込まれたガスによって膨らみながらシートバック2の出口13からシートバック外に飛び出し、図5に示すように乗員Pの頭部とヘッドレスト4の間の空間S2(図1及び図7)を埋めるように膨張する。
【0024】
上述のように、リヤセンサ22、インフレータ12及び頭部用エアバッグ10が、従来のエアバッグシステムと同様に作動して、膨張した頭部用エアバッグ10が空間S2を埋めるので、この頭部用エアバッグ10が乗員Pの頭部を支え、頭部が直にヘッドレスト4に当ることを防止し、乗員に不快感を与えることを阻止することができる。
【0025】
リヤセンサ22は、車体の頭部に所定値以上の外力が加えられたことを検知する後突検知手段の一例を構成するものであるが、かかるセンサ以外の適宜なセンサを用いることもできる。
【0026】
以上のように、本例の自動車の乗員保持装置は、前述の第1の構成に加え、車体18の後部に所定値以上の外力F2が加えられたことを検知する後突検知手段と、通常は、乗員Pが着座した座席3のシートバック2内に収容され、後突検知手段の検知に基づいて内部に送り込まれたガスにより膨らみながらシートバック2の出口13からシートバック2外に飛び出し、乗員の頭部とヘッドレスト4との間の空間S2を埋めるように膨張する頭部用エアバッグ10とを具備している。
【0027】
この構成を第2の構成と称することにすると、かかる第2の構成により、前述の第1の構成によって奏せられる作用効果のほかに、車体18の後部に大きな外力F2が加えられたとき、乗員の頭部を頭部用エアバッグ10によって支えることができるので、頭部が直にヘッドレスト4に当ることを防止でき、乗員に不快感を与えることを阻止できる。
【0028】
なお、図4乃至図7から判るように、空間S1は、空間S2よりも大きくなるので、膨張を完了した背部用エアバッグ9のサイズは、同じく膨張を完了した頭部用エアバッグ10のサイズよりも大きい。
【0029】
以上、エアバック9,10、インフレータ11,12及びセンサ21,22によって、電気式エアバッグシステムを構成したが、それ自体周知のように機械式エアバッグシステムを構成し、これによってエアバッグ9,10をそれぞれ膨張させるように構成することもできる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、車体の前部に大きな外力が加えられ、乗員の上体と頭部が反動で後方に移動したとき、その上体と頭部を背部用エアバッグによって支えることができ、上体と頭部がシートバックとヘッドレストに直に当ることを防止でき、乗員に対して不快感を与えることを阻止できる。しかも、車体の後部に大きな外力が加えられたとき、乗員の頭部を頭部用エアバッグによって支えることができるので、頭部が直にヘッドレストに当ることを防止でき、乗員に不快感を与えることを阻止できる効果を奏することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車の側面図である。
【図2】図1に示した自動車の車室内に配置されたシートバックとヘッドレストの斜視図である。
【図3】図2に示したシートバックの断面図である。
【図4】膨張した背部用エアバッグによって、乗員の上体と頭部を支えることを説明する図である。
【図5】膨張した頭部用エアバッグによって、乗員の頭部を支えることを説明する図である。
【図6】従来の欠点を説明する図である。
【図7】従来の他の欠点を説明する図である。
【符号の説明】
2 シートバック
3 座席
4 ヘッドレスト
9 背部用エアバッグ
10 頭部用エアバッグ
13 出口
18 車体
1 外力
2 外力
P 乗員
1 空間
2 空間

Claims (1)

  1. 車体の前部に所定値以上の外力が加えられたことを検知する前突検知手段と、通常は、乗員が着座した座席のシートバック内に収容され、前記前突検知手段の検知に基づいて内部に送り込まれたガスにより膨らみながらシートバックの出口からシートバック外に飛び出し、乗員の背部及び頭部とシートバック及びヘッドレストとの間の空間を埋めるように膨張する背部用エアバッグと、車体の後部に所定値以上の外力が加えられたことを検知する後突検知手段と、通常は、乗員が着座した座席のシートバック内に収容され、前記後突検知手段の検知に基づいて内部に送り込まれたガスにより膨らみながらシートバックの出口からシートバック外に飛び出し、乗員の頭部とヘッドレストとの間の空間を埋めるように膨張する頭部用エアバッグとを具備して成る自動車の乗員保持装置。
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