JP3663748B2 - 蓋が装着される開口部を持つ槽体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば浄化槽などのように、蓋が装着される開口部を持つ槽体に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート成形体や金属成形体は、重いことおよび切削加工が困難であることなどの欠点を有することから、近年では、従来金属またはコンクリートで成形していた成形体を合成樹脂で成形しようとする試みが盛んである。
【0003】
特にノルボルネン系モノマーの反応射出成形体(RIM)は、耐衝撃性に優れ、しかも大型成形体の成形が容易であることから、多方面の技術分野において用いられることが検討されている。
たとえばノルボルネン系モノマーの反応射出成形体で、槽または槽の構成部材を成形する場合には、槽内部の清掃や点検などのために、槽の上部に、開口部(マンホール)を設ける必要がある。
【0004】
図7,8に示すように、槽体2の開口部4には、リング状の装着溝12が形成された枠材6がボルト・ナット8などで取り付けられ、この装着溝12にマンホール蓋10の外縁が装着可能になっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来の槽体2では、マンホール蓋10が取り付けられる部分に、槽体2とは別個に形成された枠材6が装着されることから、枠材6と槽体2との間に隙間が生じ易く、槽体内部から臭気が漏れたり、雨水が侵入するなどの不都合があった。
【0006】
また、浄化槽などの槽体2には3〜4箇所に、マンホール蓋が取り付けられることから、蓋が取り付けられる部分には、その数に対応した枠材を取り付ける必要があり、その取付作業が煩雑であった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、槽体内部の臭気が外部に漏れず、しかも雨水などの侵入を防止することができる蓋が装着される開口部を持つ槽体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る蓋が装着される開口部を持つ槽体は、蓋が着脱自在に装着される開口部が形成された槽体の縁板部に、外側リング状突起と内側リング状突起とが一体に成形してあり、これら外側リング状突起と内側リング状突起との間に、蓋の外周に形成されたリング状凸部が挿入される装着溝が形成してあり、ノルボルネン系モノマーの反応射出成形体で構成してあることを特徴とする。
【0008】
槽体の厚さt1 は、好ましくは2mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上、特に好ましくは3mm以上である。薄すぎると、槽体として十分な強度が得られないおそれがあると共に、成形が困難である。また、槽体の厚さの上限は、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、特に好ましくは15mm以下である。厚すぎると、重量が大きくなり、槽体の容量/重量の比が小さく効率的でない。
【0009】
槽体の縁板部に形成される開口部の形状は、特に限定されないが、開口部に蓋をすることを考え、蓋が内部に落下し難くするためには、円形にすることが好ましい。
開口部の大きさ(円の場合は内径、その他の形状の場合には、最大寸法)は、特に限定されないが、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上、特に好ましくは400mm以上である。この開口部の大きさの上限は、好ましくは2m以下、より好ましくは1.5m以下である。
【0010】
本発明では、開口部が形成された槽体の縁板部に、外側リング状突起と内側リング状突起とが一体に成形してあり、外側リング状突起の突出高さが、内側リング状突起の突出高さよりも高いことが好ましい。
本発明に係る槽体では、開口部が形成された槽体の縁板部に、外側リング状突起と内側リング状突起とが一体に成形してあり、これらの間に装着溝が一体に成形してあることから、蓋を取り付けるための枠材を別途取り付ける必要がなくなる。このため、枠材を取り付けるための作業が不要になると共に、枠材と槽体との隙間がなくなり、そこから臭気が外部に漏れるおそれもなくなり、外部から雨水が入り込むこともなくなる。さらに、リング状突起が、開口部が形成された縁板部の補強となることも期待できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る蓋が装着される開口部を持つ槽体を、図面に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る開口部を持つ槽体の要部断面図、図2は浄化槽の正面図、図3(A)はマンホール蓋の平面図、同図(B)は同図(A)に示すB−B線に沿う断面図、図4は本発明の他の実施形態に係る開口部を持つ槽体の要部断面図、図5は図4に示すリブのピッチを示す説明図、図6は開口部とリブとの位置関係の例を示す平面図である。
【0012】
第1実施形態
図2に示すように、本実施形態に係る浄化槽20は、上部槽体22と下部槽体24とを有し、これらがフランジ部で接続してある。
上部槽体22には、図1に示すように、マンホールとしての開口部28が形成してある。開口部28は、上部槽体22の長手方向(図2の紙面と垂直方向)に沿って、3〜4箇所形成してある。各開口部28は、図1に示すように、縁板部26に形成してある。縁板部26は、上部槽体22の筒状部30の先端部に一体に形成してある。
【0013】
槽体22の厚さt1 は、好ましくは2mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上、特に好ましくは3mm以上である。薄すぎると、槽体として十分な強度が得られないおそれがあると共に、成形が困難である。また槽体22の厚さt1 の上限は、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、特に好ましくは15mm以下である。厚すぎると、重量が大きくなり、槽20の容量/重量の比が小さく効率的でない。
【0014】
開口部28の形状は、本実施形態では、円形であり、その内径は、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上、特に好ましくは400mm以上である。この開口部28の大きさの上限は、好ましくは2m以下、より好ましくは1.5m以下である。開口部8が大きすぎる場合には、槽体22自体の強度が問題となる場合がある。
【0015】
本実施形態では、槽体22の縁板部26に、外側リング状突起32と内側リング状突起34とが一体に成形してあり、これら外側リング状突起32と内側リング状突起34との間に装着溝36が形成される。これら突起32,34の厚さt2 は、槽体22の厚さT1 と同程度である。また、外側リング状突起32の高さh3 は、5〜30mm程度が好ましく、内側リング状突起34の高さh4 は、3〜20mm程度が好ましい。
【0016】
装着溝36の幅b3 は、特に限定されないが、たとえば10〜30mmである。この装着溝36に、図3(A),(B)に示すマンホール蓋38の外周に形成されたリング状凸部40が挿入可能になっている。
本実施形態に係る槽体22では、槽体22の角部には適度な曲率半径を持たせることが好ましい。たとえば角部においては、好ましくは0.5mm以上の曲率半径、より好ましくは1mm以上の曲率半径、特に好ましくは2mm以上の曲率半径を有することが好ましい。すなわち、この槽体22を成形するための金型の内面は、半径が好ましくは0.5mm、より好ましくは1mm、特に好ましくは2mmの球を転がした場合に、この球と接触しない部分がないような形状であることが望ましい。なぜなら、このような球が接触しない部分がある場合には、成形材料の充填が困難であり、成形体としての槽体にボイドが発生するおそれがあるからである。
【0017】
本実施形態の槽体22は、反応射出成形法(RIM)によって得られるポリノルボルネン系樹脂で構成される。特に、エラストマーで改質されたノルボルネン系モノマーの開環重合体で構成されたものが好ましい。
エラストマーとしては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)などを挙げることができる。
【0018】
エラストマーの配合割合は、ノルボルネン系モノマー100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部である。エラストマーの配合割合が少ないと、可撓性が低下する。逆に、エラストマーの配合割合が多すぎると、ガラス転移温度が低下し、かつ、強度が低下するので好ましくない。
【0019】
ノルボルネン系モノマーは、ジシクロペンタジエンやジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン等のノルボルネン環を有するシクロオレフィンである。
メタセシス触媒は、六塩化タングステン、トリドデシルアンモニウムモリブデート、トリ(トリデシル)アンモニウムモリブデート等のモリブデン酸有機アンモニウム塩等のノルボルネン系モノマーの塊状重合用触媒として公知のメタセシス触媒であれば特に制限はないが、モリブデン酸有機アンモニウム塩が特に好ましい。
【0020】
活性剤(共触媒)としては、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライド、これらのアルコキシアルキルアルミニウムハライド、有機スズ化合物等が挙げられる。
反応射出成形の前準備として、ノルボルネン系モノマー、メタセシス触媒および活性剤を主材とする反応射出成形用材料をノルボルネン系モノマーとメタセシス触媒とよりなる液と、前記のノルボルネン系モノマーと活性剤とよりなる液との安定な2液に分けて別の容器に入れておく。反応射出成形に際しては、この2液を混合し、次いで、この混合液を、金型のキャビティ内に注入し、キャビティ内で塊状重合して、上部槽体22を得る。図2に示す下部槽体24も同様にして製造することができる。
【0021】
反応射出成形に用いる金型は、必ずしも剛性の高い高価な金型である必要はなく、金属製金型に限らず、樹脂製金型、または単なる型枠を用いることができる。ノルボルネン系樹脂の反応射出成形は、低粘度の反応液を用い、比較的低温低圧で成形できるためである。金型内は不活性ガスでシールし、重合反応に用いる成分類は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で貯蔵し、かつ操作することが好ましい。
【0022】
金型温度は、好ましくは、10〜150℃、より好ましくは、30〜120℃、さらに好ましくは、50〜100℃である。金型圧力は通常0.1〜100Kg/cm2 の範囲である。重合時間は、適宜選択すればよいが、通常、反応液の注入終了後、30秒〜20分である。
【0023】
本実施形態に係る槽体22は、反応射出成形法により得られるポリノルボルネン系樹脂で構成してあるので、開口部28が形成された縁板部26、筒状部30および突起32,34を一体成形し易く、しかも比較的大型の槽体22を容易に成形することができる。また、ポリノルボルネン系樹脂は、比剛性は低いが比強度は高いという材料的特徴を利用して、浄化槽20として必要とされる十分な耐圧を有することができる。
【0024】
しかも、本実施形態に係る槽体22では、開口部28が形成された槽体22の縁板部26に、外側リング状突起32と内側リング状突起34とが一体に成形してあり、これらの間に装着溝36が一体に成形してあることから、マンホール蓋38を取り付けるための枠材を別途取り付ける必要がなくなる。このため、枠材を取り付けるための作業が不要になると共に、枠材と槽体との隙間がなくなり、そこから臭気が外部に漏れるおそれもなくなり、外部から雨水が入り込むこともなくなる。さらに、リング状突起32,34が、開口部28が形成された縁板部26の補強となることも期待できる。
【0025】
第2実施形態
図4に示すように、本実施形態では、縁板部26および筒状部30の内側に、補強用リブ50を一体に成形してある以外は、前記実施形態と同様に、縁板部26の上に、外側リング状突起32および内側リング状突起34が一体に成形してある。以下、前記実施形態と相違する部分についてのみ説明し、共通する部材には共通する符号を付し、その説明は一部省略する。
【0026】
本実施形態では、縁板部26の幅(筒状部30の外周から開口部28の縁までの距離)b1 は、好ましくは5.0mm以上、より好ましくは10mm以上、特に好ましくは15mm以上である。また、この幅b1 の上限は、好ましくは200mm以下、より好ましくは100mm以下、特に好ましくは50mm以下である。この幅b1 が小さすぎると、補強しなくても十分な強度を有するからであり、大きすぎると、本実施形態のリブ50のみでは強度不足になるおそれがあるからである。
【0027】
筒状部30の高さ(槽体本体22aの外表面から縁板部26の外表面までの高さ)h1 は、好ましくは20mm以上、より好ましくは50mm以上、特に好ましくは100mm以上である。この高さh1 の上限は、好ましくは300mm以下、より好ましくは250mm以下、特に好ましくは200mm以下である。この高さh1 が小さすぎると、リブ50で補強しなくても、通常は十分な強度を有するからであり、大きすぎると、本実施形態のリブ50のみでは強度不足となるおそれがあるからである。
【0028】
本実施形態では、縁板部26および筒状部30の内側に、逆三角板形状のリブ50が一体に成形してある。図5に示すように、リブ50の配置ピッチPは、筒状部30の周方向に沿って10〜500mm程度が好ましい。開口部28に対するリブ50の位置関係は、たとえば図6に示すように、開口部8の周囲に等間隔で4つ以上が好ましいが、必ずしも等間隔でなくとも良い。また、リブ50は、図6に示すように、必ずしも開口部28の中心に対して点対称位置に設けることなく、リブ50aのように、開口部28の中心からずれて偏心させて設けても良い。リブ50aのように開口部の中心からずれた位置に設けた場合でも、上述した寸法関係(b1 ,b2 ,h1 ,h2 )が成り立つことが好ましい。
【0029】
図4,5に示すリブ50の幅(縁板部26の内面に接する幅)b3 と縁板部26の幅b1 との比b2 /b1 は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上である。この比b2 /b1 の上限は、1を越えることはあり得ない。この比が小さすぎると、リブ50としての補強効果が小さい。
【0030】
図4に示すリブ50の高さ(筒状部30の内面に接する高さ)h2 と筒状部30の高さh1 との比h2 /h1 は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上である。この比h2 /h1 の上限は、本実施形態では、1を越えないように設定される。この比が小さすぎると、リブ12としての補強効果が小さい。
【0031】
図5に示すリブ50の厚さt3 は、槽体22の厚みt1 と同程度以下であることが好ましい。この厚みt3 が薄すぎると、強度不足となると共に、成形も困難になる。この厚みt3 が厚すぎると、槽体22の重量が大きくなり、材料の無駄になる。
【0032】
本実施形態に係る槽体22は、前記第2実施形態に係る槽体と同様な作用を有する上に、開口部28での強度がさらに向上するという作用も有する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0033】
たとえば、槽体22の開口部28の形状は、円形に限らず、楕円形、矩形、その他の形状であってもよい。その場合には、リング状突起32,34および装着溝36の形状も、それに合わせて、楕円形、矩形、その他の形状となる。
また、本発明に係る開口部を持つノルボルネン系モノマーの槽体は、浄化槽の槽体として用いられるのみでなく、水槽の槽体、あるいはその他の用途に用いることができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明に係る槽体によれば、開口部が形成された槽体の縁板部に、外側リング状突起と内側リング状突起とが一体に成形してあり、これらの間に装着溝が一体に成形してあることから、蓋を取り付けるための枠材を別途取り付ける必要がなくなる。このため、枠材を取り付けるための作業が不要になると共に、枠材と槽体との隙間がなくなり、そこから臭気が外部に漏れるおそれもなくなり、外部から雨水が入り込むこともなくなる。さらに、リング状突起が、開口部が形成された縁板部の補強となることも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る開口部を持つ槽体の要部断面図である。
【図2】図2は浄化槽の正面図である。
【図3】図3(A)はマンホール蓋の平面図、同図(B)は同図(A)に示すB−B線に沿う断面図である。
【図4】図4は本発明の他の実施形態に係る開口部を持つ槽体の要部断面図である。
【図5】図5は図4に示すリブのピッチを示す説明図である。
【図6】図6は開口部とリブとの位置関係の例を示す平面図である。
【図7】図7は従来例に係る開口部を持つ槽体の要部断面図である。
【図8】図8は図7の要部断面図である。
【符号の説明】
20… 浄化槽
22… 上部槽体
24… 下部槽体
26… 縁板部
28… 開口部
30… 筒状部
32… 外側リング状突起
34… 内側リング状突起
36… 装着溝
38… マンホール蓋
40… リング状凸部
Claims (1)
- 蓋が着脱自在に装着される開口部が、槽体の筒状部の先端部に一体に形成してある縁板部に形成してあり、
前記縁板部に、外側リング状突起と内側リング状突起とが一体に成形してあり、
これら外側リング状突起と内側リング状突起との間に、蓋の外周に形成されたリング状凸部が挿入される装着溝が形成してあり、
前記縁板部および筒状部の内側に補強用リブが一体に成形してあり、
ノルボルネン系モノマーの反応射出成形体で構成された開口部を持つ浄化槽の槽体。
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JP15781796A JP3663748B2 (ja) | 1996-06-19 | 1996-06-19 | 蓋が装着される開口部を持つ槽体 |
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1996
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