JP3663438B2 - 樹脂又はゴムと金属より成る複合部材の分離方法及びその装置 - Google Patents

樹脂又はゴムと金属より成る複合部材の分離方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材の分離方法及びその装置に関するものである。詳しくは、本発明は、廃棄機械部品等の樹脂又はゴムと金属が接合して成る廃棄複合部材を構成する成分の一部又は全部を、簡便な操作手段で、効率よく分離し、回収することを可能とする上記複合部材の分離方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、誘導加熱と剥離処理を組み合わせることによって、樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材の金属と樹脂又はゴムを分離し、更には、これらの成分を回収し、再利用することを可能とする廃棄複合部材の新しい処理方法、及びその装置に関するものである。本発明は、上記複合部材の新しいリサイクル、及びリユース技術を提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、機械部品の中には、例えば、耐食性、摩擦特性、柔軟性、機密性、電気絶縁性、制振性等の特性を向上させるために、種々の複合部材が使用されている。このような複合部材として、例えば、金属を樹脂やゴムで被覆した部材、金属板でゴムや樹脂を挟み込んだ部材、ゴムや樹脂板で金属板を挟み込んだ部材、樹脂やゴム中に金属を組み込んだ部材、及び金属中にゴムや樹脂を埋め込んだ部材等が例示される。この種の樹脂又はゴムと金属を複合化させた部材は、一般家庭用機器から産業機器に至るまで広い分野で用いられている。ここで、これらの部材の例を幾つか例示すると、例えば、自動車の窓用シール材・モール材・内装材、ベアリングシール材、電線、各種電気リレーやスィッチ類、金属に塩ビ皮膜を張り付けた雨樋、プリンターの紙送りロール、断熱配管材、及びゴム製ベルトコンベヤー等があげられ、その種類は枚挙にいとまがない。
【0003】
現在、これらの廃棄複合部材を処分する方法として、種々の方法が採用されている。それらの内、当該複合部材を焼却処分する方法では、ダイオキシン等の有害ガスが発生するために、現在、焼却による処分は困難な状況となっている。また、有害ガスを出さない高温焼却により処分する方法では、金属類が溶融し、焼却炉の寿命や運転の面からも問題がある。もちろん、高温、及び低温のいずれの焼却処分であっても、その焼却灰は有害となる金属類を含む場合があり、そのことが焼却灰の廃棄の段階で再び問題となる可能性がある。一方、ごく一部の複合部材では、当該複合部材をチップ状に切断し、強制撹拌して、金属表面の被覆層を剥がした上で、磁気による金属の分離が行われている。しかし、この方法では、その処理コストが高いという問題があり、また、上記複合体をチップ状に破砕するので、回収した金属は、リサイクルはできるものの、リユースは全く不可能になるという問題がある。
【0004】
このようなことから、これまでのところ、上記廃棄複合部材のほとんどは、そのまま埋め立てる方法で処分されているのが実情である。しかし、埋め立て地の制限や環境保護の立場から、埋め立て方式による上記複合部材の処分は、次第に制限されつつある。また、上記複合部材を生産している企業等の生産現場においては、廃棄物やゴミを排出しないいわゆるゼロエミッションが目標とされている。以上のことから、当該技術分野においては、上記廃棄複合部材を処分する方法として、それらをリユース、リサイクルすることを可能とする新しい技術を開発し、確立することが強く求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者は、上記従来技術に鑑みて、上記廃棄複合部材をリユース、リサイクルすることを可能とする上記複合部材の新しい処理技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた。その結果、本発明者は、上記複合部材を誘導加熱と機械的な剥離処理を組み合わせて処理することによって所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、廃棄機械部品等の樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材から、樹脂又はゴムと金属を、低廉・迅速に分離し、かつそれらをリユース、リサイクルすることを可能とする新しい上記複合部材の処理方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、誘導加熱手段と剥離処理手段を組み合わせて成る上記複合部材の処理装置を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、従来の方法にみられるような埋め立て処分や焼却処分の問題を確実に解消することを可能とする上記複合部材の新しい処理技術を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材から、当該複合部材を構成する成分の一部又は全部を分離する方法において、
(a)上記複合部材の金属部分を、誘導加熱によって加熱する、
(b)金属表面のガス化可能な樹脂又はゴムを部分的にガス化させる、
)金属表面から部分的にガス化させて剥離した樹脂又はゴムを分離する、
ことを含むことを特徴とする上記複合部材の分離方法。
樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材から、樹脂又はゴムを部分的にガス化させて剥離し、分離することで回収された上記複合部材を構成する成分の一部又は全部を用いて所定の製品を再生したことを特徴とするリサイクル製品。
樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材から、当該複合部材を構成する成分の一部又は全部を分離する上記複合部材の処理装置において、
(a)上記複合部材の金属部分を、誘導加熱によって加熱して金属表面のガス化可能な樹脂又はゴムを部分的にガス化させるための高周波加熱コイルを有する誘導加熱手段、
(b)金属表面から部分的にガス化させて剥離した樹脂又はゴムを分離する分離手段、
(c)処理条件調節機構、
(d)分別・回収装置、
を含むことを特徴とする上記複合部材の処理装置。
)上記分離手段が、1対の圧延ローラーを含むことを特徴とする前記()に記載の処理装置。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、上記廃棄機械部品等の複合部材において、樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材を対象とするものである。本発明において、「複合部材」とは、タイヤ系の部材を除くいわゆる非タイヤ系複合部材を意味するものとして定義される。したがって、本発明が対象とする複合部材には、タイヤ以外のあらゆる種類の複合部材が包含される。本発明では、樹脂又はゴムと金属より構成される上記複合部材を、誘導加熱によって加熱し、その複合部材の金属部分を加熱処理する。この加熱により、金属と接する樹脂又はゴムの性状を部分的に変化させ、それらを瞬時にして、ガ化させる。このような樹脂又はゴムの性状の部分的な変化は、それらの種類、処理条件等によりその態様に違いがあるが、本発明は、それにより、それらの金属に対する接合力をゼロ化あるいは弱化させることができる。
【0008】
ここで、このような樹脂又はゴムの性状の部分的な変化の態様とこれらの金属表面からの剥離性との関係について説明すると、上記樹脂又はゴムがガス化する場合は、そのまま放置しても再び金属と樹脂又はゴムが接合することがないので、両者を容易に剥離し、分離することができる
【0009】
本発明においては、まず、上記樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材の金属部分を、誘導加熱装置を利用して誘導加熱する。この場合、上記誘導加熱装置としては、例えば、周波数50kHz以上、好ましくは200〜400kHz、数10kWレベルの出力の高周波焼き入れ装置が例示される。しかし、これに制限されるものではなく、これと同効の誘導加熱性能を有する装置であれば同様に使用することができる。また、高周波加熱コイルの形状としては、例えば、ソレノイドタイプ、ヘアピンタイプ、パンケーキタイプ、分割型タイプ等が例示される。しかし、これらに制限されるものではなく、任意の形状の高周波加熱コイルを使用することができる。本発明では、上記加熱により、金属表面と接する樹脂又はゴムの性状を部分的に変化させ、これらを瞬時にして、ガ化させる。これにより、金属と樹脂又はゴムの接合部分の接着力はゼロ化あるいは弱化される。上記誘導加熱の後、上記複合部材から金属と樹脂又はゴムのいずれか1種以上を剥離処理して分離することで、上記複合部材を構成する成分の一部又は全部を分離し、回収することが可能となる。
【0010】
本発明の方法では、上記誘導加熱の後に、上記複合部材を構成する成分の一部又は全部を剥離処理して分離する工程が採用される。この場合、更に必要により、複合部材の外層部を切り開き、上記成分を取り出すための切開加工の工程、更に、分離された成分を回収する工程等が採用される。ここで、上記剥離処理の方法及びその装置は、適宜の道具又は機械的装置を利用して手動又は自動操作で実施すればよく、その具体的な手段は特に制限されない。また、上記複合部材の外層部を切り開く方法及びその装置は、例えば、上記外層部を適宜の切断手段で切り開いてその複合部材を取り出すことができるものであればよく、その具体的な手段は特に制限されない。
【0011】
本発明では、上記方法を用いて上記複合部材より分離した、上記複合部材を構成する成分、特に、金属又はゴム成分の一部又は全部を回収して、これらをリユースする上記複合部材の再利用方法が提供される。この方法を用いることにより、廃棄機械部品等のリユースを実現化することが可能となる。また、本発明では、上記方法を用いて回収された上記複合部材を構成する成分の一部又は全部を用いて他の製品を再生し、これらを金属ないし他の資源としてリサイクルする上記複合部材の再資源化方法及びこの方法により再生された所定のリサイクル製品が提供される。この方法を用いることにより、廃棄機械部品等から派生する資源成分をリサイクルしてそれらを再資源化することが可能となる。
【0012】
したがって、本発明の方法を用いることにより、機械部品等の上記複合部材のリユース及びリサイクルを実現化することが可能となる。本発明は、近年の地球環境問題及び資源エネルギー問題からその解決が急務の課題とされている機械部品等の工業製品のリユース、及びリサイクル化を達成することを可能とし、いわゆるゼロエミッションを可能とする上記複合部材の新しい処理技術として有用である。尚、本発明において、上記回収、リユース及びリサイクルのプロセスについては、当該技術分野で使用されている通常の方法及び装置を適宜採用すればよく、それらの具体的な手段は、特に制限されるものではない。また、上記リサイクル製品は、その種類は特に制限されず、あらゆる種類のリサイクル製品を包含する。
【0013】
次に、本発明の処理装置について具体的に説明すると、本発明の処理装置は、誘導加熱手段と機械的な剥離・分離手段をその構成要素として含むことを特徴とするものである。本発明では、これらの装置に、必要に応じて、他の適宜の手段を付加することができる。上記誘導加熱手段としては、好適には、周波数50kHz以上の高周波コイルを有する誘導加熱装置が使用される。また、上記剥離・分離装置としては、例えば、1対の圧延ロールから成る圧延装置が例示される。しかし、これらに限らず、誘導加熱により金属と接する樹脂又はゴムをガ化させた後に、金属表面から樹脂又はゴムを剥離し、分離することができる機能を有するものであれば、適宜の剥離・分離装置を使用することができる。
【0014】
本発明の装置は、上記手段を構成要素として含むことを特徴としているが、必要に応じて、これらの手段に、他の手段を付加して複合化することができる。これらの手段として、例えば、被処理部材を装置に投入するための投入装置、同部材を移送するための移送手段、誘導加熱及び剥離・分離処理を自動的に実行するための自動制御装置、それらの処理条件を最適化するための処理条件調節機構、被処理部材を構成する成分の一部又は全部をその成分種に応じて分別、回収するための分別・回収装置、計量装置、検査装置などが例示される。これらの手段は、対象となる被処理部材の種類、形状、構造、材質等に応じてその最適条件を考慮してシステム設計すればよく、それらの具体的な構成は特に制限されるものではない。これにより、上記複合部材のトータル・リサイクル・システムが構築される。
【0015】
次に、本発明の方法及び装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1に、上記複合部材の誘導加熱装置と、誘導加熱後に、直ちに樹脂又はゴムと金属を分離する装置の一例の模式図を示す。すなわち、図中、1は、自動車外装用モールなどの、長尺の廃棄物である。この複合部材は、図中の左側の断面図で示されるように、金属2のコアーの外側が、樹脂3で覆われ、樹脂と金属が接合して成る。この複合部材を高周波誘導コイル4によりその金属部分を誘導加熱すると、直ちに、金属と接合した部分で樹脂の軟化が起こり、それらの接合力の弱化が起こる。このまま放置すると、再び樹脂が硬化し、金属に接合するので、更に、誘導加熱により樹脂を部分的にガス化させ、次いで、図1中に示すように、上記複合部材を高周波誘導コイル4に隣接して位置する1対の圧延ロール5に導き、圧延処理を行う。これにより、金属7と樹脂6に容易に分離することが可能となる。
【0016】
更に、上記圧延ロールの代わりに、回転するブラシ等の適宜の手段によって、樹脂を掻き取る方法によってもこれらを分離することは可能である。本発明では、上記誘導加熱手段、及び剥離手段の他に、被処理対象物等を移送する移送ベルト等の移送手段を組み合わせることも適宜可能である。例えば、上記複合部材が長尺物でない場合には、移送ベルト等の移送手段を用いて、連続的に加熱・圧延を行うことによって、上記複合部材を高効率で分離し、回収することが可能となる。
【0017】
本発明で用いる誘導加熱は、好適には、周波数50kHz以上の高周波であるので、金属表面の温度上昇部は数百ミクロンほどの厚さである。ゴムの場合は、特別の耐熱性ゴムを除いて、200〜300℃程度の金属表面の加熱で充分ガス化するので、上記温度の加熱条件でゴムを容易に分離することができる。また、一般的に、ゴムも樹脂も熱伝導率が小さく、温度上昇部は金属との接合部の近傍に限られる。従って、ゴムの場合、その品質を低下させることなく分離し、リサイクルすることが可能となる。
【0018】
本発明が適用される複合部材としては、機械部品等の複合部材、例えば、自動車の窓用シール材・モール材・内装材、ベアリングシール材、電線、各種電気リレーやスイッチ類、プリンターの紙送りロール、断熱配管材、ゴム製ベルトコンベアー、金属にプラスチックを張り付けた部材などが代表的なものとして例示される。しかしながら、本発明は、あらゆる種類の樹脂又はゴムと金属より成る複合部材に適用可能であり、上記のものに制限されるものではない。
【0019】
【作用】
本発明は、樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材の金属部分を、誘導加熱によって加熱した後、上記複合部材の金属表面から樹脂又はゴムを剥離し、分離することを特徴とするものである。上記複合部材の金属部分を誘導加熱することにより金属と接する樹脂又はゴムの性状を部分的に変化させ、これらを瞬時にして、ガ化させて、それらの接着力をゼロ化あるいは弱化させる。次いで、剥離工程において、被処理部材に機械的な剥離・分離処理を施すことにより、上記複合部材の金属表面から樹脂又はゴムを容易に剥離し、分離することができる。この場合、上記複合部材を構成する成分の種類等に応じて剥離・分離処理する処理条件、温度条件及び処理のタイミング等が相違する。接合部が軟化又は液状化する場合には、温度が下がると、両者は再び接合し、分離が困難になる可能性がある。
【0020】
また、金属と樹脂又はゴムとの接合部がガス化する場合には、金属と樹脂又はゴムが再接合することはないので、適宜の温度条件及びタイミングで剥離・分離処理を施し、両者を分離することができる。本発明の装置では、上記複合部材は、まず、誘導加熱装置に投入され、当該誘導加熱装置により誘導加熱された後、剥離・分離装置に移送され、この剥離・分離装置により上記複合部材の金属表面から樹脂又はゴムが剥離され、分離、回収される。
【0021】
本発明の方法は、低温焼却のように有害ガスを排出することがなく、また、高温焼却のように複合部材中の金属を溶融することなく、更に、埋め立てによる環境破壊の問題も回避することが可能である。本発明の方法により、複合部材から回収される金属やゴム又は樹脂は、リユース、リサイクルが可能である。また、本発明における加熱手段は、高周波誘導加熱であるので、加熱は金属部分の表面付近に限定される。これにより、金属や樹脂又はゴムの性状変化は最小限に留まり、加熱に要する消費エネルギーは極めて小さく、省エネルギーでの処理が可能である。従来、機械部品等の複合部材の樹脂又はゴムを誘導加熱により部分的にガス化させ誘導加熱と機械的な剥離加工を組み合わせて処理することにより、上記複合部材を構成する成分の一部又は全部を高効率で分離し、回収する方法について研究された例は全く存在しない。本発明の方法は、本発明者が、種々実験を重ねた結果、はじめてその有効性と格別の作用効果が実証されたものである。これらの機械部品等の複合部材における金属と樹脂又はゴムとの剥離技術は、後記する実施例に示されるように、具体的な実験とその結果があってはじめて確立されたものである。
【0022】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
この実施例では、溝を持つ円盤状鋼板の上にゴムを埋め込んだベアリングシール用複合部材の分離方法の例を示す。誘導加熱装置としては、400kHz、最高出力30kWの高周波誘導加熱装置を用いた。図2の右側に、処理前のベアリングシール部材(外径50mmφ)を示す。この複合部材を、高周波コイル中に投入し、0.3kWの出力で加熱を行ったところ、ほぼ瞬時に、図2の中央に示されるように、円盤状鋼板とゴムが分離し、口を開いた。この状態でほぼ分離しているので、格別の力を加えなくても、左図のように、鋼板とゴムを容易に分離することができた。
【0023】
次に、ベアリングシール複合部材に装着されているゴムの、誘導加熱による重量変化を測定した。その結果を図3に示す。図中、縦軸は百分比で重量変化を示す。280℃付近からゴムの分解が進み、ガス化して重量が減少する。すなわち、鋼板の表面は、誘導加熱によって280℃以上に加熱され、鋼板とゴムの接合部のゴムがガス化して鋼板とゴムが容易に分離される。この場合、加熱は鋼板の表面付近に限られるため、鋼板の変形や酸化は起こらない。したがって、鋼板表面を磨くことにより、そのままリユースが可能であった。また、ゴム自身も表面は手で触れるほど低温であるため、変質部分は極めて少なかった。
【0024】
実施例2
この実施例では、自動車窓枠に用いられるシール複合部材の分離方法の例を示す。誘導加熱装置としては、400kHz、最高出力30kWの高周波誘導加熱装置を用いた。図4の上部が分離前の複合部材の状態を示すものであり、左上はその断面図である。この断面図で示されるように、上記複合部材の中心部に厚さ約0.7mmのコの字型アルミニウム板が埋め込まれている。まず、上記シール複合部材の樹脂について、熱重量分析を行った。その結果を図5に示す。図5に示されるように、200℃付近から樹脂の分解及びガス化に伴う重量の減少が起こっている。このようなシール複合部材について、約0.3kWの出力で、2〜3秒の誘導加熱を行い、次いで、刃物により加熱部分を切り裂いた状態を、図4の下部に示す。アルミニウム板と樹脂はほぼ完全に分離している。分離されたアルミニウム板は、百足状に切り込みを持った複雑な形をしており、その間に樹脂が充填されているにもかかわらず、数秒の誘導加熱で、両者が容易に分離できることがわかった。また、加熱直後でも、素手で切り裂きが行えるほど、複合部材の全体の温度は上がっておらず、加熱が局部的であったことが伺える。
以上のように、本発明の方法により、金属−樹脂から成る複雑形状の金属が埋め込まれた場合でも、低エネルギーで、かつ迅速に複合部材が分離できることが確認された。
【0025】
実施例3
この実施例では、自動車外装用モール材の分離方法の例を示す。図6の上部に、その断面写真を示す。この複合部材は、U字型をした厚さ0.4mmのステンレス板が、平均で0.5mmの樹脂によって覆われている。この複合部材は、樹脂の部分が前記実施例2に比べてかなり薄い。この複合部材を400kHz、最高出力30kWの高周波誘導加熱装置によって誘導加熱し、樹脂と金属の分離を行った。加熱のための出力は、約0.3kWとした。加熱開始から2〜3秒の後、樹脂の表面をワイヤブラシで掻き取った。その結果、図6の下部に示されるように、簡単に樹脂の被覆が剥離し、金属光沢をしたステンレス部分が露出した。このような薄い樹脂の被覆では、誘導加熱により、金属との接合部の樹脂の分解及びガス化が生じて、その接着力が消失すると同時に、被覆部分の全体が加熱されて、軟化する。そのため、ワイヤブラシ等で引っ掻けば容易に、金属より樹脂を剥がすことができることが確認された。
【0026】
この種の複合部材では、被覆層が薄いために、従来、破片に切断して、クラッシャーで撹拌する以外に、被覆層を常温で引き剥がすことは不可能であった。また、複合部材の全体を加熱すると、まず、樹脂の軟化が起こり、それをワイヤブラシ等で引っ掻いても、更に、金属上で軟化した樹脂を捏ねるだけであった。また、更に、その温度を上げても、樹脂が金属上に焼け付くだけで、金属光沢を持つほどの、完全な分離は得られなかった。一方、誘導加熱による急速加熱では、樹脂の内外部に温度差が生じる。その結果、接合部の接着力の消失と同時に、樹脂表面では温度が低いため、樹脂の軟化はそれほど起こっておらず、表皮のような役割を果たしている。そのため、ワイヤブラシ等で掻き取るだけで、樹脂を剥離することができることが確認された。
【0027】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材の分離方法、その装置、上記複合体の再資源化方法及び再利用方法に係るものである。本発明により、以下のような作用効果が奏される。
(1)上記複合部材から簡便な操作で樹脂又はゴムと金属を分離し、回収することができる。
(2)従来、埋め立て以外に処分方法が無かった廃棄機械部品等の樹脂又はゴムと金属の複合部材を、迅速に、かつ低エネルギー及び低コストで分離し、回収することができる。
(3)それらの処理時には、有毒性のガス、騒音等は発生せず、極めて安全な分離が可能である。
(4)上記複合部材を構成する樹脂又はゴムと金属をリサイクルあるいはリユースすることが可能である。
(5)上記複合部材のトータル・リサイクル・システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】廃棄複合部材の誘導加熱手段、1対のロールから成る圧延手段を含む樹脂又はゴムと金属の分離装置の模式図を示す。
【図2】ベアリングシール複合部材を構成するゴム及び鋼板の分離の一例を示す。
【図3】ベアリングシール材用ゴムの熱重量分析の結果を示す。
【図4】自動車窓シール複合部材を構成する樹脂及びアルミニウムの分離の一例を示す。
【図5】自動車窓シール複合部材用樹脂の熱重量分析の結果を示す。
【図6】自動車外装用複合部材を構成する樹脂とステンレスの分離の一例を示す。

Claims (4)

  1. 樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材から、当該複合部材を構成する成分の一部又は全部を分離する方法において、
    (1)上記複合部材の金属部分を、誘導加熱によって加熱する、
    (2)金属表面のガス化可能な樹脂又はゴムを部分的にガス化させる、
    )金属表面から部分的にガス化させて剥離した樹脂又はゴムを分離する、
    ことを含むことを特徴とする上記複合部材の分離方法。
  2. 樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材から、樹脂又はゴムを部分的にガス化させて剥離し、分離することで回収された上記複合部材を構成する成分の一部又は全部を用いて所定の製品を再生したことを特徴とするリサイクル製品。
  3. 樹脂又はゴムと金属が接合して成る複合部材から、当該複合部材を構成する成分の一部又は全部を分離する上記複合部材の処理装置において、
    (1)上記複合部材の金属部分を、誘導加熱によって加熱して金属表面のガス化可能な樹脂又はゴムを部分的にガス化させるための高周波加熱コイルを有する誘導加熱手段、
    (2)金属表面から部分的にガス化させて剥離した樹脂又はゴムを分離する分離手段、
    (3)処理条件調節機構、
    (4)分別・回収装置、
    を含むことを特徴とする上記複合部材の処理装置。
  4. 上記分離手段が、1対の圧延ローラーを含むことを特徴とする請求項に記載の処理装置。
JP2002065028A 2002-03-11 2002-03-11 樹脂又はゴムと金属より成る複合部材の分離方法及びその装置 Expired - Lifetime JP3663438B2 (ja)

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