JP3662709B2 - 混合装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は重質油等の流体とその重質油を気化させる触媒等の高温の粒体とを混合する混合装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
粒子状の固体を触媒または熱媒体とし、反応物と接触させる反応系は古くから知られている。このような反応系の内の一つである流動床式反応器の中には例えば濃厚流動層(気泡流動層)を用いるもの、高速移動層(高速流動層)を用いるものがある。このうち、固体と気体の接触時間を短くする必要のある反応(短接触時間反応)には高速移動層が用いられている。現在、重質油等を原料油としてガソリンを製造する流動接触分解装置においてはライザーと呼ばれる上昇流型高速移動層反応器が主流となって用いられている。この反応器は触媒性能の向上に伴い接触時間を短くすることが可能であり、これによってガソリン等の好ましい生成物の選択性が上がり、好ましくない過分解反応を抑制することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年においてはガソリンのさらなる選択性の向上あるいは軽質オレフィンの選択性の向上が要求要望されるようになり、上昇流型高速移動層反応器の特性である触媒の逆混合現象が、これらの選択性向上に悪影響を及ぼしていることから、逆混合現象が発生しない下降流型高速移動層反応器が検討され始めている。
既存の上昇流型高速移動層反応器を持つ、重質油等を原料油としてガソリンを製造している流動接触分解装置における接触反応時間は数秒であるが、軽質オレフィンを指向する場合の接触反応時間は0.1〜1.5秒程度に短くする必要がある。このような短接触時間反応を行うには反応器入口において原料油と触媒の迅速な混合・気化が不可欠となる。さらに、反応時間の短縮に伴う転化率の低下を補うために触媒循環量の増加が余儀なくされる。このような背景から反応器入口において原料油と触媒の迅速な混合・気化が行え、しかも既存の上昇流型高速移動層反応器を持つ、重質油等を原料油としてガソリンを製造している流動接触分解装置の触媒循環量(cat/oil比5〜8)の数倍の触媒循環量を可能とする原料油・触媒供給混合装置が要望されている。
そこで、本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、流体と固体粒子からなる粒体を迅速に均一混合することが可能となる混合装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の混合装置は、反応器内で重質油等の原料油などの流体とその重質油を気化させる触媒等の粒体とを混合する装置において、前記反応器の上部に環状の固体供給口を形成し、該反応器の上部に、前記粒体を環状に分布させつつ容器内の上方から下方に連続的に落下させて粒体の高速円筒状移動層を形成する粒体移動層形成器を設け、かつ反応器内に形成された円筒状移動層の上部外周にその周方向全域に亙って前記流体を噴射する外部流体供給部を設けると共に、その流体が噴射される円筒状移動層の内周にその周方向全域に亙って前記流体を噴射する内部流体供給部を設けたものである。
【0005】
前記粒体移動層形成器が、前記粒体を流動化させて流動層を形成させ粒体の水平方向の密度を均一にする流体密度調整部と、重力方向に沿って延在する円筒状の貫通路を有し、その貫通路の上端が流動層の上部に配置されると共に下端が前記反応器の固体供給口に接続される円筒成型部とからなることが好ましい。また、前記粒体移動層形成器が、前記粒体が下降移動する垂直円筒状通路を有すると共に、その通路内にその高さ方向に所定の間隔をおいて粒体の流れの向きを変えて粒体をその周方向に均一に分散させる邪魔板を複数配設してなる流体密度調整部と、重力方向に沿って延在する円筒状の貫通路を有し、その上端が流体密度調整部の下部に接続され、下端が前記反応器の固体供給口に接続された円筒成型部とからなることが好ましい。
さらに、前記外部流体供給部が、前記反応器の固体供給口の外周に臨ませて設けられると共にその周方向に沿って所定の間隔をおいて配置され、円筒状移動層に向けて流体を水平方向に対して下向き15〜75度で噴射する複数の外部噴射ノズルからなり、かつ、前記内部流体供給部が、前記反応器の固体供給口の内周に臨ませて設けられると共にその周方向に沿って所定の間隔をおいて配置され、円筒状移動層に向けて流体を水平方向に対して下向き15〜75度で噴射する複数の内部噴射ノズルからなることが好ましい。
さらにまた、前記粒体が300℃以上の高温である前記外部及び内部流体供給部の外側に、噴射される流体への高温粒体の熱影響を防止すべく外部及び内部流体供給部を囲繞するように断熱手段を設けることが好ましい。
【0006】
ところで、短接触時間反応を行うには反応器入口において例えば原料油と粒体(触媒)の迅速な均一混合・気化が不可欠である。そのためには原料油を微細な液滴(噴霧体)とすること、および触媒である固体粒子群から成る粒体の均一分散を行うことが前提条件となる。次に噴霧体と均一混合が行われなければならない。この均一混合を行うには広い空間があれば可能となるが限られた空間内においては十分には行えない。このため、それに代わる手段を得るために研究開発した結果、次のような結論に至った。
すなわち、噴射ノズル等によりある程度の液滴の微細化を行い、次にこの噴射体を粒体に衝突させ、その衝撃力によりさらなる微細化を行い、同時に粒体との均一混合を行うことである。この場合、粒体の表面積を限られた空間内においてできるだけ大きくして、その全面に噴射体を衝突させることが重要である。それでは限られた空間において大きい表面積を持つ粒体形状とはどのような形状であるのかを説明する。
粒体の量を制御して下向きに流す基本的な反応器(反応管)を図9、図11、図13に示した。なお、図10、図12、図14は対応する各図の反応管50、51、52の断面(平面図)である。反応管の横断面内の粒体形状は図からわかるように単純な形状をとる。まず、均一混合に適していると判断される形状は図10(c)、図12、図14に示す3つのものである。図10(a)および(b)に示したものは粒体53が反応管50断面の一方向に偏っているために不適当である。次に迅速混合に適している粒体形状、すなわち外表面の大きい形状としては、図14に示す円筒状のものが最も外表面が大きく、迅速混合に適している粒体形状であると判断できる。これらから、粒体の量を制御しながら円管状の反応管内で迅速に均一混合できる粒体形状は円筒状がもっとも適していると言える。
【0007】
したがって、反応器の上部に固体供給口を形成し、この反応器の上部に粒体移動層形成器を設け、かつ外部流体供給部及び内部流体供給部を設けることにより、反応器内には上部から下方に粒体が移動する高速円筒状移動層が形成されると共に、この移動層の上部に、その外周及び内周のそれぞれの周方向全域に亙るように流体が噴射されるので、流体例えば原料油と粒体例えば触媒粒子の迅速な均一混合が可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1〜図3において、1は反応器2内で重質油等の原料油などの流体とその重質油を気化させる触媒等の粒体とを混合させる混合装置を示す。
反応器は竪形円筒状の反応管(垂直下降流反応管)2であり、その上部には環状の固体供給口3が開口されている。この反応管2の上部には、粒体を環状に分布させつつ管3内の上部から下方に連続的に落下させて粒体の高速円筒状移動層(図4参照)4を形成する粒体移動層形成器5が設けられている。
粒体移動層形成器5は、反応管2内に粒体の高速円筒状移動層4が形成されるならばどのように構成してもよく、例えば図1に示す例では流動層を利用するものである。この粒体移動層形成器5は、粒体を流動化させて流動層6を形成させ粒体の密度を調整する粒体密度調整部7と、重力方向に沿って延在する円筒状の貫通路8を有する円筒成型部9とにより主になる。
【0009】
粒体密度調整部7を構成する流動層炉10は、竪型の横断面円形状、多角形状、矩形状等に形成され、好ましくは円筒状に形成され、この内部下方に多孔板型ガス分散器、パイプグリッド型ガス分散器等の分散器例えば多孔板11が設けられている。流動層炉10の上部中央には粒体口12が設けられ、この粒体口12に高温の粒体(例えば固体粒子径が1〜500μmの高温(450〜700℃)のシリカアルミナ触媒粒子)が供給される供給管13が接続されている。流動層炉10内の上方であって粒体口12の下方には粒体を受ける粒体受皿14が配設されており、供給管13からの粒体が粒体口12から受皿14に落下し、そして受皿14から溢流(オバーフロー)して多孔板11上に落下する。流動層炉10の下部には流動ガス供給管15が接続されており、空気や不活性ガス等の流動ガスが多孔板11を介して炉10内に供給され、粒体が流動化して粒体の流動層6が形成される。
流動層炉10の底部中央にはその同軸上に円筒成型部である成型管9が接続され、この成型管9の先端は多孔板11を貫通している。成型管9は内筒(内管)16と外筒(外管)17とが同軸上に配置された2重管構造に形成され、内管16と外管17との間が円筒状の貫通路8として形成されている。内管16は前記粒体受皿14の近傍まで垂直方向に沿って延在し、そこから水平方向に直角に曲って流動層炉10の側壁を貫通してポンプ等の重質油供給装置(図示せず)等に接続される。一方、外管17の先端は、多孔板11上より所定の高さ高い位置まで延出し、この外管17が堰として作用し、流動層6の層高が高くなると粒体が貫通路8内に溢流して、成型管9を通る間に高速円筒状の移動層が形成されるようになっている。成型管9の貫通路8(外管17)の長さは高速円筒状の移動層が形成される任意の長さに設定されることは勿論である。
【0010】
また、流動層炉10を図2に示すように形成してもよい。すなわち、流動層炉18の側壁に、粒体を供給する供給管19を接続して、粒体が直接多孔板11上に供給されるようにすると共に、成型管9の内管16を直線状の管で形成して流動層炉18の上部を貫通させるようにしてもよい。このように構成しても、粒体の流動層6を形成することが可能となる。
成型管9の内管16及び外管17の下端は、図1に示すように、前記固体供給口3を区画形成する内周壁20及び外周壁21にそれぞれ接続され、貫通路8を通った粒子が反応管2の上部から下方に移動して、反応管2内に粒体の高速円筒状移動層4が形成されるようになっている。成型管9(外管17)の径は、粒体の供給量により任意に決められ、例えば図1及び図2に示すように反応管2の径より小さく形成してもよい。また、図3に示すように触媒の供給量が非常に多い場合にも対応できるように反応管2の径より大きく形成してもよい。内管16の径も粒体の供給量に応じて任意に決められる。
【0011】
反応管2の固体供給口3を区画形成する外周壁21には、図1〜図3に示すように、反応管2内に形成された円筒状移動層4の上部の外周であってその周方向全域に亙って流体を噴射する外部流体供給部22が設けられていると共に、内周壁20には、その円筒状移動層4の内周であってその周方向全域に亙って流体を噴射する内部流体供給部23が設けられている。これら外部及び内部流体供給部22、23は重質油等の原料油などの液体を移動層4の外周及び内周全域に亙って噴射するものならばどのような構造のものでもよく、例えば図4や図5に示すようにしてもよい。
【0012】
図4は噴射ノズルを用いる例えば原料油の噴霧がノズル線速を大きくすることで得られる噴霧効果、いわゆる油圧噴霧方式により行われるものである。これは噴霧用媒体であるアトマイジングスチームは使用していない。具体的には、反応管2の固体供給口3を区画形成する外周壁21上に、その周方向に沿って外周壁21を囲繞するように環状の原料油の供給室25が反応管2に一体的に設けられている。なお、この供給室25は反応管2に個別に設けるようにしてもよい。供給室25の内周壁(固体供給口3を区画形成する外周壁21)には供給室25内の原料油を円筒状移動層4の粒体に向けて噴射する外部噴射ノズル(噴射孔)26が設けられている。噴射ノズル26は円筒状粒体の外表面全域に噴霧体が噴射(衝突)されるように内周壁にその周方向に所定の間隔をおいて複数配設されている。噴射ノズル26の噴射角度は、噴射された液体が粒体と衝突してその衝撃力によりさらなる微細化が行えるならばどのように設定してもよく、好ましくは水平方向に対して下向き15〜75°であり、図示例では水平方向に対して下向き45度である。なお、噴射ノズル26の個数は円筒状粒体の外表面全域に液体が噴射されるならば任意に決められる。
【0013】
反応管2の固体供給口3を区画形成する内周壁21は実質的には成型管9の内管16の下端部であって内管16内が燃料油供給室27として形成されており、内管16の下端部(チップ)が下方にいくにつれて縮径された円錐状に形成され、このチップに原料油を円筒状移動層4の粒体に向けて噴射する内部噴射ノズル(噴射孔)28が設けられている。噴射ノズル28は円筒状粒体の内表面全域に噴霧体が噴射(衝突)されるようにチップにその周方向に所定の間隔をおいて複数配設されている。噴射ノズル28の噴射角度は、噴射された液体が粒体と衝突してその衝撃力によりさらなる微細化が行えるならばどのように設定してもよく、好ましくは水平方向に対して下向き15〜75°であり、図示例では水平方向に対して下向き45度である。なお、噴射ノズル28の個数は円筒状粒体の内表面全域に液体が噴射されるならば任意に決められる。外部流体供給部22と内部流体供給部23との流体の噴射割合は円筒状粒体の外内表面全域に流体が噴射されるならばどのようにしてもよいが、好ましくは概略1:1〜3:1になるようにする。
【0014】
外部及び内部流体供給部22、23の外側には、噴射される流体への高温粒体の熱影響を防止(例えば高温(450〜700℃)の触媒からの熱伝導による原料油のコーキングを防止)すべく外部及び内部流体供給部22、23を囲繞するように断熱手段30が設けられている。断熱手段30は噴射される流体への高温粒体の熱影響を防止するものならばどのような構造のものでもよく、例えば断熱材を用いたり、空気、スチーム等の流体を利用したりしてもよい。図示例では、供給室25の上部と下部に空間(クリアランス)を設け、このクリアランスに断熱用スチームを流すことにより行われている。具体的には、供給室25の上部には、その周方向に沿って環状の上部スチーム供給室31が設けられていると共に、供給室25と成型管9との間には成型管9を囲繞するようにスチーム供給室31に連通する僅かなクリアランス32が設けられている。このクリアランス32の固体供給口3側端部が開口され、上部スチーム供給室31に供給されたスチームがクリアランス32を通って反応管2内に下向きに注入され、供給室25の上部側が断熱されるようになっている。また、供給室25の下部には、その周方向に沿って環状の下部スチーム供給室33が設けられていると共に、供給室33と反応管2との間にはスチーム供給室33に連通する僅かなクリアランス34が設けられている。このクリアランス34の反応管2側端部が開口され、下部スチーム供給室33に供給されたスチームがクリアランス34を通って反応管2内に水平方向に平行に注入され、供給室25の下部側が断熱されるようになっている。さらに、成型管9の内管16の管壁内には、管16に沿って僅かなクリアランス35が設けられている。つまり、内管16は二重管構造に形成されている。このクリアランス35の下端が開口され、スチームがクリアランス35を通って反応管2内に下向きに注入され、内管16を通って噴射される流体が断熱されるようになっている。
【0015】
図5は流体例えば原料油の噴霧を噴霧媒体(気体、アトマイジングスチーム)で行うものであり、いわゆる媒体噴霧方式の外部噴射ノズルおよび内部噴射ノズルの一例を示している。なお、図5は分かりやすいように図3に対応して示されている。
外部流体供給部22は図4のものとは異なり、原料油が独立して供給されるタイプの噴射ノズル36であり、この噴射ノズル36が周方向に所定の間隔をおいて複数配設されて、円筒状粒体の外表面全域に亙って噴霧体が衝突するようになっている。この噴射ノズル36は、その中心に原料油が流れ、その外側をアトマイジングスチームが流れる、いわゆる内部混合方式のものであり、断熱は外側を流れるアトマイジングスチームの一部を噴射ノズル先端まで流すことにより行うように構成されている。
内部流体供給部23も内部混合方式に形成され、内部の混合室37に噴霧効果を上げるべくアトマイザー38が取り付けられている。アトマイザー38下部のチップの円周上に、その周方向に所定の間隔を隔てて噴射ノズル39が複数配設され、円筒状粒体の内表面全域に亙って液体が噴射(衝突)されるようになっている。断熱手段は外部噴射ノズル36と同じようにアトマイジングスチームの一部を利用すべく、混合室37の外周にスチームが通るスチーム通路40が形成されている。
【0016】
さて、この混合装置1を用いて原料油(重質油)と高温(450〜700℃)のシリカアルミナ触媒粒子とを接触混合する場合について述べる。
触媒粒子は供給管13から粒体口12を介して受皿14に連続的に落下し、そして受皿14から溢流(オバーフロー)して分散板11上に落下する。分散板11上の触媒粒子は流動ガスにより流動化されて環状の流動層6が形成される。このように環状の流動層6が形成されることにより、一部分に過剰の粒子が供給(落下)されても、つまり、周方向の密度が部分的に多い場合には流動化するうちに少ない部分に粒子が分散して、周方向の粒子密度が均一化される。
【0017】
そして、流動層6の層高が高くなると、堰(成型管の外管17)を越えてその周方向全域から貫通路8内に溢流して、貫通路8内を通る間に高速円筒状の移動層が形成される。
この粒子群が固体供給口3から反応管2内に入り、その上部から下方へ移動して、反応管2内に触媒粒子の高速円筒状移動層4が形成される。
一方、原料油が外部及び内部噴射ノズル26、28から流体の円筒状移動層4の上部の外周及び内周であってその外内周表面の周方向全域に亙って図6に示すように噴射される。この際、外部及び内部流体供給部22、23の外側に図4及び図5に示すように、断熱手段30が設けられているため、噴射される原料油が高温(450〜700℃)の触媒粒子の熱から断熱されるので、原料油はコーキングすることなく触媒粒子に向けて噴射される。噴射された原料油は円筒状触媒粒子と衝突し、その衝撃力によりさらに微細化して飛び散り、別の触媒粒子などとも接触するので、粒子と重質油の混合が良好に行われる。そして、この混合体が反応管2内を下方に移動する。
これによって、本発明の混合装置は既存の上昇流型高速移動層反応器を持つ、重質油等を原料油としてガソリンを製造している流動接触分解装置の触媒循環量(cat/oil比5〜8)の数倍の触媒循環量のcat/oil比50までを可能とする。
【0018】
このように、触媒粒子を円筒状に移動させて、この外周と内周の両方から原料油を接触混合させることにより、効率よく触媒粒子と原料油が接触し、かつ、噴射されて粒子に衝突した液が微細化するので、さらに効率よく固液接触を行え、粒子と重質油の混合を迅速にほぼ均一に行うことができる。また、円筒状粒体の外側と内側の両方から液体を噴霧するので、粒体の割合が大きい場合(粒体重量/液体重量が最大50まで)にも適用することが可能となる。
従って、短接触時間反応をより短時間で行えると共に、反応の均一化も図れるので、例えば接触反応時間を0.1〜1.5秒程度に短くすることが可能となる。これにより、ガソリンを製造する際にはさらに一層好ましくない過分解反応の抑制を図れ、より品質のよいガソリンを製造することが可能となる。
【0019】
図7は粒体密度調整部7の変形例を示す図であり、粒体の周方向の分散(密度の均一化)を流動層ではなく落下分散機構により行うようにしたものである。
すなわち、粒体密度調整部7を構成する調整容器42は竪型の円筒状に形成され、その上部に粒体の供給管13が接続される粒体口12が設けられていると共に、その粒体口12の下方であって内部の上方には粒体を受ける粒体受皿14が配設されている。調整容器42の下部は下方にいくに連れて漸次縮径されたホッパ状に形成され、このホッパ状下部の排出口43に成型管9の外管17の先端が接続されている。成型管9の内管16は前述とほぼ同様に粒体受皿14の近傍まで延在してから水平方向に曲って容器側壁を貫通している。内管16と調整容器42との間は粒体が下降移動する垂直円筒状通路(粒体密度調整室)44として形成され、この通路44内には、その高さ方向に所定の間隔をおいて上方から落下する粒体の流れの向きを変えて粒体をその周方向に均一に分散させる邪魔板(分散板、バッフル)45、46が複数配設されている。邪魔板45、46は、粒体の流れの向きを変えて粒体をその周方向に均一に分散させるものならばどのように形成してもよく、またその数も任意に決められ、図示例では環状の邪魔板45、46が高さ方向に所定の間隔をおいて2つ設けられている。つまり、上部邪魔板45は、径方向内方にいくにつれて漸次下方に傾斜する環状に形成され、その外周部が調整容器42の内壁に固定されると共に、内周部と内管16との間に開口部が形成される。下部邪魔板46は、径方向外方にいくにつれて漸次下方に傾斜する環状に形成され、その内周部が内管16の外壁に固定されると共に、調整容器42内壁と外周部との間に開口部が形成される。また、粒体供給口12から粒体と共に気体を供給するようにしてもよい。これは、気体を供給しないで触媒の重力だけで円筒状粒体成型部9に落下させようとすると、触媒供給量が少ない場合には円筒状粒体成型部9をスムーズに通過するが、触媒供給量が多くなると円筒状成型部9に圧力損失が生じ、邪魔板45、46が取り付けられている調整容器42が触媒により充満されることがある。このため、円筒状成型部9における圧力損失に打ち勝つだけの圧力を気体の供給により補うようにする。尚、気体の供給により粒体密度の均一化が促進されることになる。
【0020】
このように構成すると、受皿14から溢流(オバーフロー)した粒体は上部邪魔板45上に落下して、邪魔板45上を径方向内方に移動した後、開口部から下方の下部邪魔板46上に落下して、邪魔板46上を径方向外方に移動する。そして、下部のホッパーに落下する。このように、粒体が邪魔板45、46上を移動する際、周方向の密度が部分的に多い場合には少ない部分に移動するので、邪魔板45、46上を移動するに連れて粒体の周方向の密度が均一化される。
そして、この周方向の密度が均一化された粒体がこのまま貫通路8内に連続的に流れて、前述とほぼ同様に貫通路8内を通る間に高速円筒状の移動層が形成される。
従って、触媒粒子を円筒状に移動させて、この外周と内周の両方から液を接触させることにより、効率よく触媒粒子と液とが接触し、かつ、噴射されて粒子に衝突した液が微細化するので、さらに効率よく固液接触を行え、粒子と液の混合を迅速にほぼ均一にすることができる。
【0021】
図8は図7に示した混合装置の変形例を示す図であり、図7に示した混合装置と異なるところは、反応管2の上方を調整容器42の径とほぼ同じ径に拡径し、この拡径部47に外部液体供給部22を設けると共に、外部液体供給部22からの粒体への噴射角度(外部噴射ノズルの噴射角度)を下向き45度ではなく水平方向に平行に設定した点である。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0023】
実験1
混合装置は図1(混合装置A)、図2(混合装置B)、図7(混合装置C)、図8(混合装置D)、図3(混合装置E)に示す形態のもの5種類を用いた。各混合装置の主要寸法を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
粒体には重質油からガソリンを製造する流動接触分解装置に使用されている触媒を用いた。この触媒の平均粒径は63ミクロン、カサ比重は0.85g/cm3 である。また、ノズルから噴射する流体は原料油の代わりに常温の空気を用いた。
実験条件は実装置において600℃の触媒に原料油を噴射して混合・気化が完了した瞬間で、反応はまだ起こっていない状況を想定して設定した。この設定に基づく実験条件は触媒供給量が10kg/min から100kg/min 、空気量が5m3/hから50m3/hまで変化させ、空気量については外部噴射ノズルと内部噴射ノズルの割合を種々変化させた。尚、すべての混合装置は透明塩ビで製作し、混合状態はビデオ撮影および目視により観察した。
【0026】
(実施例1)
混合装置Aについて上記の種々の条件で実験を行った。触媒供給量が30kg/min以下の場合には流動層の触媒は堰を越えて円筒状粒体成型部を自由落下する。触媒供給量が30kg/minを越えてくると触媒の流動層の液面が高くなり、堰を越えた触媒は流動層の分散用空気により円筒状粒体成型部に押し込まれる状態となる。この現象は円筒状粒体成型部における圧力損失によるものと推察される。しかし、触媒供給量が多い場合にも、また逆に少ない場合にも整った円筒状粒体が成型された。噴射ノズルによる混合状況については外部噴射ノズルだけを使用した場合には反応管部の観察により粒体が反応管の中心部に偏っているのが観察された。逆に内部噴射ノズルだけを使用した場合には粒体が反応管の外管に衝突しているが観察された。外部ノズルと内部ノズルの割合は2:1の場合が最も混合状態が良かった。また、空気量を増加するに伴い混合状態はよくなった。
(実施例2)
混合装置Bを用いて同様の実験を行い観察した。結果は混合装置Aと同様に円筒状粒体の成型状態および混合状態は共良好であった。但し、混合装置Aで成型される円筒状粒体の直径が60mmであるのに対し、混合装置Bの場合には70mmと大きくなっており、この差による混合状態の違いは判定できなかった。
(実施例3)
混合装置Cを用いて同様の実験を行い観察した。混合装置Cは粒体密度調整室内に触媒密度を均一化させるためのバッフルを備えており、触媒は自由落下して円筒状粒体成型部を通過する機構となっている。このため触媒供給量が20kg/minを越えてくると粒体密度調整室に触媒が溜まり始め、触媒供給量が30kg/minまで増加した場合には触媒調整室は触媒で充満され、上部の触媒供給管の触媒ヘッドの力を借りて円筒状粒体成型部を通過する状態となる。だだし、上部の触媒供給管の途中に空気を注入してやればごの現象は無くなる。いずれの場合にも円筒状粒体の成型状態および混合状態は実施例1と同様に良好であった。
(実施例4)
混合装置Dを用いて実験を行った。混合状態を観察する実験においては、内部噴射ノズルは使用せず外部噴射ノズルだけを使用した。尚、噴射ノズルの打ち出し方向は他のものとは異なり水平方向である。この場合の混合状態はよくなかった。反応管上部の位置において触媒は反応間の中央部に偏って流れる。
(実施例5)
混合装置Eを用いて実施例1と同様の実験を行い観察した。混合装置Eは触媒供給量が非常に多い場合にも対応できるように円筒状触媒成型部の直径を大きくしたものである。この場合には触媒供給量を100kg/minまで増加させても流動層のレベルは増加せず堰を越えた触媒はスムーズに円筒状触媒成型部を通過した。また、円筒状粒体の成型状態および混合状態は実施例1と同様に良好であった。
【0027】
実験2
混合装置は二次元モデルであり、二次元モデルBは図2の混合装置Bに対応するものであり、二次元モデルCは図7の混合装置Cに対応、二次元モデルEは図3の混合装置Eに対応するものである。これらの二次元モデルの寸法は対応する分離器のほぼ1.5倍とし、厚みは10mmとした。また、原料油噴射ノズルは合計4個で外部噴射ノズル1個対内図噴射ノズル1個を下向き噴射角45度で対向噴射させており、この対向噴射は左右2カ所に配置されている。二次元モデルの主要寸法を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
(実施例6)
二次元モデルBを用いて触媒供給量および空気量を種々変化させて円筒状粒体の成型状態および反応管における混合状態を観察した。円筒状粒体(本二次元モデルでは実際は四角柱が内筒の左右に位置しているが表現上円筒状とする)の成型状態は触媒供給量が少ない場合には円筒状の外側の触媒密度が大きくなる傾向が認められた。反応管における混合状態は外部噴射ノズルと内部噴射ノズルの空気量が1対1のときに極めて良好な混合状態が得られた。
(実施例7)
二次元モデルCを用いて同様な実験を行った。この二次元モデルは上部からの供給触媒の密度を均一化するためのバッフルが設置してある。このバッフルの効果による円筒状粒体の成型状態は実施例6(流動層による触媒密度の均一化)と同様に良好であった。また、反応管における混合状態も実施例6と同様に極めて良好であった。
(実施例8)
二次元モデルEを用いて同様な実験を行った。この二次元モデルは触媒供給量が非常に多い場合にも対応できるように円筒状粒体成型部の直径を反応管に比較して大きくした図3の混合装置Eに対応するものである。ここで成型される円筒状粒体の円筒外径は反応管直径より大きい。そのため、外部噴射ノズルと内部噴射ノズルの空気量を1対1とした場合には反応管の外側の触媒密度が大きくなる。また、この状態から外部噴射ノズルの空気量の割合を順次大きしていくと、それに伴い混合状態はよくなり、さらに割合を大きくしていくと、逆に混合状態が悪化する。すなわち、この二次元モデルにおいては外部噴射ノズルと内部噴射ノズルの空気量の割合により最適点があることがわかった。その割合は概略1.5対1であった。尚、この最適点における混合状態は良好であった。
【0030】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、液体と固体粒子からなる粒体を迅速に均一混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の混合装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の混合装置の変形例を示す概略図である。
【図3】本発明の混合装置の変形例を示す概略図である。
【図4】本発明の反応管の上部を示す概略図である。
【図5】本発明の反応管の上部の変形例を示す概略図である。
【図6】流体を粒体に向けて噴射した状態を示す上面図である。
【図7】本発明の混合装置の変形例を示す概略図である。
【図8】本発明の混合装置の変形例を示す概略図である。
【図9】粒体を下方に移動する状態を説明するための図である。
【図10】移動管内の粒体の偏りをを説明するための断面図である。
【図11】粒体を下方に移動する状態を説明するための図である。
【図12】図11に示した移動管内の粒体の偏りをを説明するための断面図である。
【図13】粒体を下方に移動する状態を説明するための図である。
【図14】図11に示した移動管内の粒体の偏りをを説明するための断面図である。
【符号の説明】
2 反応器
3 固体供給口
4 円筒状移動層
5 粒体移動層形成器
22 外部流体供給部
23 内部流体供給部
Claims (5)
- 反応器内で重質油等の原料油などの流体とその重質油を気化させる触媒等の粒体とを混合する装置において、
前記反応器の上部に環状の固体供給口を形成し、該反応器の上部に、前記粒体を環状に分布させつつ容器内の上方から下方に連続的に落下させて粒体の高速円筒状移動層を形成する粒体移動層形成器を設け、かつ反応器内に形成された円筒状移動層の上部外周にその周方向全域に亙って前記流体を噴射する外部流体供給部を設けると共に、その流体が噴射される円筒状移動層の内周にその周方向全域に亙って前記流体を噴射する内部流体供給部を設けたことを特徴とする混合装置。 - 前記粒体移動層形成器が、前記粒体を流動化させて流動層を形成させ粒体の水平方向の密度を均一にする流体密度調整部と、重力方向に沿って延在する円筒状の貫通路を有し、その貫通路の上端が流動層の上部に配置されると共に下端が前記反応器の固体供給口に接続される円筒成型部とからなる請求項1記載の装置。
- 前記粒体移動層形成器が、前記粒体が下降移動する垂直円筒状通路を有すると共に、その通路内にその高さ方向に所定の間隔をおいて粒体の流れの向きを変えて粒体をその周方向に均一に分散させる邪魔板を複数配設してなる流体密度調整部と、重力方向に沿って延在する円筒状の貫通路を有し、その上端が流体密度調整部の下部に接続され、下端が前記反応器の固体供給口に接続された円筒成型部とからなる請求項1記載の装置。
- 前記外部流体供給部が、前記反応器の固体供給口の外周に臨ませて設けられると共にその周方向に沿って所定の間隔をおいて配置され、円筒状移動層に向けて流体を水平方向に対して下向き15〜75度で噴射する複数の外部噴射ノズルからなり、かつ、前記内部流体供給部が、前記反応器の固体供給口の内周に臨ませて設けられると共にその周方向に沿って所定の間隔をおいて配置され、円筒状移動層に向けて流体を水平方向に対して下向き15〜75度で噴射する複数の内部噴射ノズルからなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
- 前記粒体が300℃以上の高温であると共に、外部及び内部流体供給部の外側に、噴射される流体への高温粒体の熱影響を防止すべく外部及び内部流体供給部を囲繞するように断熱手段を設けた請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
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