JP3662563B2 - 耐熱性およびガス遮断性に優れたプラスチック容器用飽和ポリエステル組成物の製造方法 - Google Patents

耐熱性およびガス遮断性に優れたプラスチック容器用飽和ポリエステル組成物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気・電子部品材料や食品、医薬品等の包装材料として幅広く使用されている飽和ポリエステルに関するもので、詳しくは、耐熱性および酸素や炭酸ガスなどのガス遮断性を格段に向上し得たプラスチック容器用飽和ポリエステル組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飽和ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレートなどのように主鎖にエステル結合を有する直鎖状の熱可塑性ポリマーである。このような構造を有する飽和ポリエステルは、寸法安定性、耐候性、表面平滑性に優れ、かつ透明で光沢のある外観を有することから、合成繊維、フィルム、食品および医薬品等の容器やハウジング類などの成型品の材料として幅広く使用されている。
【0003】
しかし、飽和ポリエステルは、ガラス転移温度(Tg)が低いため、内容物が高温となる場合には形状安定性が得られず、また酸素ガスや炭酸ガスを透過させ易く内容物を酸化させ易いなどの問題から、各種果汁飲料、ビール、お茶、米飲料などの容器には不向きであった。
【0004】
このような問題を解決する手段として、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂あるいはポリエチレンナフタレートとポリエチレンテレフタレートとを混合したポリマーが提案されており、特定分野においては商用化するに至っている。しかしながら、PEN樹脂はPET樹脂に比べて高価であり、またPET樹脂とPEN樹脂とを混合したポリマーからそれぞれを厳密に分別するのは困難であり、さらにPENの含有量によってはその物性から再生コストがかかるなどリサイクルにも不都合が多い。
【0005】
上記問題点を解決する他の手段として、PETボトル等を成型する際に、所定温度の金型、ブローエアーにより、2軸延伸を施して、結晶化度を高め、耐熱性および透明度を向上させる方法がある(特許文献1)。しかし、このように成形条件の適正化のみでは結晶化度を40%以上に高めることは困難であるため、92℃以上の高温下での充填作業が必要となる飲料等の容器には使用できないことが知られている。一方、低温下で充填作業を行う場合には、内容物充填後に外部より加熱殺菌する必要があり、この操作を含めることにより工程数が増加するため生産性が低下するといった問題がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−290457号公報、特許請求の範囲など
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱性および酸素ガス遮断性に優れたプラスチック容器用飽和ポリエステル樹脂の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明は、シリカ粒子を含有し、芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールとを主要原料とする飽和ポリエステル組成物を製造する方法において、前記主要原料である芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールのエステル交換反応を行った後、重縮合反応前に、平均粒径が3nm以上、100nm以下のシリカ粒子をエチレングリコール中に濃度3〜30質量%で含有するスラリーを重合反応器に添加して溶融重合し、さらに固重合することによりシリカ粒子含有飽和ポリエステル組成物を製造する製造方法である。
【0009】
前記シリカ粒子の使用量は、ポリマー基準に0.005質量%以上、10質量%とするのが好ましい。
【0010】
上述の飽和ポリエステルを用いて得られる耐熱性およびガス遮断性に優れたプラスチック容器も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記のような事情に着目し、耐熱性およびガス遮断性に優れたプラスチック容器用飽和ポリエステル組成物およびその製造方法を確立すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、芳香族ジカルボン酸と多価アルコールとからなる飽和ポリエステル中にナノサイズの平均粒径を有するシリカ粒子を均一に分散させることによって、耐熱性およびガス遮断性を格段に向上し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明のプラスチック容器用飽和ポリエステル組成物は、飽和ポリエステルを第1の必須成分とする。この飽和ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸あるいはそれらのエステル形成誘導体と多価アルコールとを主要出発原料として製造されるものである。ここで芳香族ジカルボン酸を採用するのは、芳香族ジカルボン酸由来のポリエステルは、脂肪族由来のポリエステルに比べ耐熱性が高いからである。具体的な芳香族ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸などが挙げられ、これらのアルキル(例えばメチル)エステル等のエステル形成誘導体も使用可能であり、これらを1種以上使用することができる。多価アルコール成分としてはエチレングリコールを用いるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の飽和ポリエステルを得る際には、上記主要原料の他に、第三原料として、脂肪族ジカルボン酸あるいはそれらのエステル形成誘導体や、エチレングリコール以外の多価アルコールを用いても良い。使用可能な脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。多価アルコール成分としては、エチレングリコールの他に、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
【0014】
本発明の組成物の第2の必須成分は、平均粒径3〜100nmのシリカ粒子である。上記平均粒径を有するナノサイズのシリカ粒子は、得られるPETボトルの耐熱性および酸素などのガス遮断性を向上させるために必要である。シリカ粒子の添加により耐熱性およびガス遮断性が向上するのは、次の効果が総合されるためであると考えられる。まず、(1)シリカ粒子は無機粒子であるので、その添加により耐熱性が向上する。また、(2)このようなナノサイズのシリカ粒子でも結晶核剤として作用するため、容器製造時の結晶化速度が大きくなることで、最終製品であるボトルの結晶化度が高まるのではないかと考えられる。通常、ポリエステルの結晶化度が大きいと耐熱性は向上する。(3)一般に酸素や炭酸ガスなどの気体分子はポリマーの非晶部分のみを通過し、結晶部分は通過しにくいため、結晶化度を向上させることにより、ガス遮断性をより高めることができるのである。さらに、(4)本発明で用いるシリカ粒子がナノサイズの平均粒径を有しており、その表面積が非常に大きいため、元来シリカが有している酸素遮断性能が一層向上するものと考えられる。従って、上記シリカ粒子は、組成物中でその平均粒径を3〜100nmに保持する必要がある。
【0015】
上記効果を発揮させ、最終的に得られるプラスチック容器の透明性を確保するためには、シリカ粒子の平均粒径は3〜100nmでなければならない。シリカ粒子の平均粒径がこの範囲でなければ、上記した耐熱性およびガス遮断性効果が十分に発揮されない。また、平均粒径が100nmを超えると、得られる容器の透明性が極めて悪くなる。一方、3nm未満では、粒子の表面張力が増加して二次凝集が起こり、ポリマー内での分散性が低下するため透明性が悪くなる。より好ましいシリカの平均粒径は60nm以下である。
【0016】
なお、上述のシリカ粒子は、平均粒径がほぼ均一なものが使用可能であるのは勿論のこと、上記範囲の平均粒径を有するものであれば、平均粒径の異なるシリカ粒子を2種以上混合して用いてもかまわない。
【0017】
上記シリカ粒子の使用量は、飽和ポリエステルのポリマーを基準として0.005質量%以上、10質量%以下の範囲が好ましい。使用量が0.005質量%未満では有効な物性改善効果が得られず、一方10質量%を超えると、ポリマー内での分散が不均一となり、粒子が凝集し粗大化するため透明性が低下する。より好ましい下限は0.01質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%、最も好ましくは1質量%である。また好ましい下限は6質量%、より好ましくは5質量%、さらに好ましくは4質量%、最も好ましくは3質量%である。
【0018】
シリカ粒子は超微細なグレード等が市販されており、それを入手して使用すればよい。また、珪酸ナトリウム(Na2Si)を水と反応させて珪酸ソーダを製造した後、陽イオン交換樹脂カラムを通過させて得られるシリカ粒子(平均粒径がおよそ0.5nm〜1nm)を成長させて所望のサイズとして用いてもよい。
【0019】
次に、本発明の組成物の好ましい製造方法について説明する。
【0020】
本発明に係る飽和ポリエステルは常法により溶融重合することで製造できるが、具体的な重合法としては、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。このとき酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、チタン化合物などの公知の重合触媒を用いることが好ましい。
【0021】
また、溶融重合法で得られた飽和ポリエステルは、飲料などのプラスチック容器(ボトル)用材料としては強度が不充分であるため、より強度を高めるためにさらに高分子量化することが好ましい。高分子量化するためには、溶融重合をさらに長時間行うことも考えられるが、上記飽和ポリエステルは高温度下に長時間曝すことによって熱分解を起すため、得られる重合体の分子量には限界があり、またポリマーが着色するなどの不良を生じることがある。
【0022】
このような問題を回避するため、ボトル等に用いる飽和ポリエステルは、溶融重合を行った後、固相重合を行うのが好ましい。固相重合は、予め溶融重合で得られたポリマーを、融点より低い温度で空気あるいは不活性ガス気流下、または真空下において、長時間反応させるものである。溶融重合に比べて低温で反応させることができるため、熱分解による着色が少なく、色相が優れ、また得られる重合体をより高分子量化することができる。また、固相重合を行うことで、PETの分解生成物であるアセトアルデヒドや、溶融重合で得られたポリマー中に含まれるオリゴマー成分を低減することもできる。
【0023】
例えばPETを用いて固相重合を行う場合、溶融重合反応の終了したPETを、ストランド状、シート状などの形状として重合槽から排出させた後、冷却切断してペレットとする。このペレットを、不活性ガス雰囲気下、予備結晶化槽にてペレット同士の融着・固着を防止しながら、170℃程度に加熱して0.5時間程度結晶化処理を行い、次いで170〜200℃の加熱下で、水分率が0.005%以下、好ましくは0.001%以下となるまで乾燥させた後、必要に応じて予熱を施して固相重合槽に送る。
【0024】
固相重合槽に送られたペレットを、真空ないし不活性ガス雰囲気下、200〜230℃に加熱し、生成する水、エチレングリコールを系外に排出しながら所望の重合度となるまで反応を続けることで、高分子量化したPETが得られる。このときの好ましいPETの重合度は、固有粘度にして0.6〜0.7dl/gである。
【0025】
シリカ粒子をポリエステル中に均一に分散させて、本発明の組成物を得るには、シリカ粒子をポリエステルの重合時に添加する方法が推奨される。この際に、ポリマー内におけるシリカ粒子の分散性を向上させるため、予めシリカ粒子を、水や、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒に懸濁させたスラリー状態で添加するのが好ましい。このとき使用可能な溶媒としては、シリカ粒子の分散性が良好であれば特に限定されず、例えば上述のアルコール類、水、メタノール、エタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の飽和ポリエステルの原料として用いる多価アルコールをスラリー溶媒に用いれば、ポリエステルの重合時に消費されるため、重合に関与しない不要な成分を系内に添加することが無いので好ましい。しかしながら、使用する溶媒の沸点が低い場合は、溶媒が揮発する際にシリカ粒子が凝集してしまうため、上記多価アルコールの中でもエチレングリコールやブタンジオールのように高沸点を有する溶媒を用いるのが好ましい。特に飽和ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート(PET)を採用する場合は、PETの主要原料として用いるエチレングリコールを用いるのが好ましい。
【0026】
スラリー中のシリカ粒子濃度は、スラリー基準に3質量%以上、30質量%以下とするのが好ましく、より好ましくは、5質量%以上、20質量%以下である。濃度が3質量%未満では、例えば、スラリー溶媒としてエチレングリコール(EG)を用いた場合に反応系内に過剰のEGを添加することになるため、ジエチレングリコール(DEG)の生成、EGの二量化や環化などの副反応を無視できる程度に抑えることができない。一方、30質量%を超えると分散性が悪くなり、粒子が凝集して粗大な粒子が形成され透明性が低下する。一般に、粒子の分散性を向上させるには、粒子サイズが小さい場合には、スラリー中の粒子濃度を低くし、粒子サイズが大きい場合には、スラリー中の粒子濃度を高めればよい。
【0027】
尚、スラリー溶媒としてエチレングリコールなど飽和ポリエステルの原料として用いる多価アルコールを採用する場合、シリカ粒子の分散性を確保するのは勿論のこと、原料としての溶媒の使用量および上述したポリエステルの製造方法などを考慮する必要がある。過剰に添加することで副反応を生じる虞があるからである。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)をエステル交換法(DMT法)によって合成する場合には、エチレングリコールとテレフタル酸あるいはジメチルテレフタレートのモル比(E/T)を1.8〜2.5程度とするのがよく、直接重合法(TPA法)を採用する場合には、(E/T)を1.3〜2.5程度にするのが好ましい。
【0028】
さらに、ポリエステルには、着色などの不都合を防ぐため、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどのMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウムなどのCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガンなどのMg塩、酢酸亜鉛、塩化亜鉛などのZn塩、酢酸コバルト、塩化コバルトなどのCo塩をポリエステルに対して各々金属イオンとして添加することができる。またこれらの金属イオン以外にも、リン酸、リン酸トリメチルエステル(TMP)、リン酸トリエチルエステル(TEP)、リン酸トリフェニルエステル(TPP)などのリン系化合物を添加してもよい。上記、重合触媒以外の金属イオンを用いる場合には、ポリエステルを基準とした金属の含有量が0.005〜0.03質量%程度とするのが良い。またリン酸等を添加する場合には、重合触媒以外の金属イオンとの当量比を考慮して調節すればよく、たとえばポリエステルを基準にしたリン含有量が0.01質量%以上、0.1質量%以下の範囲となるようにするのが好ましい。
【0029】
また、必要に応じて添加剤等を含んでいてもよく、例えば、熱安定剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0030】
このようにして得られた本発明のポリエステル組成物は、通常採用される方法によって所望の形状に成型することができる。たとえば、延伸ブロー成形法によって飲料用のボトルを成型する場合には、溶融樹脂を冷却された金型に射出し、プリフォームを成型した後、縦延伸を行い、ブロー成型によって周方向に横延伸を行ってボトル形状に成型すればよい。なお、飲料用のボトルを成型する際の方法についても、上記方法のみに限定されず、例えばダイレクトブロー成形、インジェクションブロー成形、二軸延伸ブロー成形など、通常使用される方法はいずれも採用することができる。
【0031】
上述の様にして得られた飽和ポリエステル容器は、耐熱性および酸素などのガス遮断性に優れるため、飲料や各種食品の容器として好適に用いることができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0033】
尚、物性値等の評価については、表1〜3の分析方法の欄に記載のASTM(アメリカ材料試験協会)、JIS(日本規格協会)、あるいはEPA(アメリカ環境保護局)の規定に準じて行った。
【0034】
[耐熱性の評価]
耐熱性は、種々の温度の熱水をボトル内に瞬間充填し、ボトルに変形が見られたときの熱水の温度で評価し、その温度を表1〜3に記載した。
【0035】
[酸素ガス透過性]
実施例で作製したボトルの注ぎ口に2つの通気孔を残して、その他の開口部分をエポキシ樹脂で封じた後、一方の通気孔から窒素を一定速度で導入し、同時に他方の通気孔からは気体を排気させてボトル内を窒素で置換した。窒素置換直後のボトル内の酸素濃度を測定すると共に、窒素置換後のボトルを密閉して室温で一日放置した後のボトル内の酸素濃度を測定し、ボトル外部から内部に透過した酸素量を測定した。
【0036】
実験番号1
ジメチルテレフタレート(DMT)100質量部とエチレングリコール(EG)64質量部を反応容器に仕込み、これを攪拌しながら、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水和物0.06質量部と重縮合触媒として三酸化アンチモン0.03質量部をEG3質量部に分散させて反応容器に添加した。この混合溶液を加熱して、130℃から230℃まで昇温させ、4時間エステル交換反応を行い、ビス(β―ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHT)を得た。
【0037】
次に、平均粒径が50nmのシリカ粒子を、濃度が10質量%となるようにEG中に分散させた後、これを孔径0.5μmのフィルタでろ過してエチレングリコールスラリー(S−1)を作製した。
【0038】
得られたBHTを加熱して235℃程度にし、ここへEG2質量部に溶解したトリメチルホスフェート0.03質量部を加えた後、さらに予め用意しておいた(S−1)20質量部を徐々に添加した。これを孔径3μmのフィルタでろ過して、ろ液を加熱して50分間で235℃から285℃まで昇温させた後、3時間重縮合反応を行い、表1に示すような物性を有するポリマーを得た。これを切断してチップ形状(大きさ0.02g/個)とした。
【0039】
上記液相重合で、得られたポリマーチップを一般固相重合器に入れて、生成する水およびEGを系外に除去しながら加熱して固相重合を行い、表1に示すような物性を有するポリマーを得た。
【0040】
固相重合で得られたポリマーを用いて、耐熱ペットボトル用ブロー装置で、容量500mlの耐熱性ペットボトルを作製した。
【0041】
実験番号2
(S−1)の使用量を1質量部とした以外は、実験番号1と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0042】
実験番号3
平均粒径が50nmのシリカ粒子を用いた(S−1)の代わりに、平均粒径が15nmのシリカ粒子を用いた(S−2)を使用した以外は実験番号1と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0043】
実験番号4
(S−2)の使用量を1質量部とした以外は、実験番号3と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0044】
実験番号5
テレフタル酸(TPA)100質量部とエチレングリコール(EG)75質量部を反応容器に仕込み、これを攪拌しながら、30℃から230℃まで昇温させた後、6時間かけてエステル化反応を行い、BHTを合成した。その後、ここへEGとTPAのモル比が2.0であるスラリー175質量部を2時間かけて添加し、反応溶液の温度を230℃に保持しながら、90分間反応を続けた。
【0045】
得られた反応生成物175質量部を孔径3.0μmのフィルタでろ過した後、ろ液を反応容器に入れ、ここへ、ポリマーを基準に0.02質量%のリン酸を添加し、さらにポリマーを基準に0.015質量%の三酸化アンチモンを添加した。
【0046】
これを加熱して235℃程度としたところへ、実験番号3で作製した平均粒径15nmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリー(S−2)20質量部添加した後、50分間で235℃から285℃まで昇温させ、その後3時間重縮合反応を行い、表1に示すような物性を有するポリマーを得た。これを切断してチップ形状(大きさ0.02g/個)とした。
【0047】
得られたポリマーチップを固相重合器に入れて固相重合を行い、表2に示すような物性を有するポリマーを得た。
【0048】
このポリマーを用いて、耐熱ペットボトル用ブロー装置で、容量500mlの耐熱性ペットボトルを作製した。
【0049】
実験番号6
(S−2)の使用量を1質量部とした以外は、実験番号5と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0050】
実験番号7
平均粒径が15nmのシリカ粒子を用いた(S−2)の代わりに、平均粒径が3nmのシリカ粒子を用いた(S−3)を使用した以外は実験番号5と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0051】
実験番号8
(S−3)の使用量を0.005質量部とした以外は、実験番号7と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0052】
実験番号9
平均粒径が15nmのシリカ粒子を用いた(S−2)の代わりに、平均粒径100nmのシリカ粒子を用いたエチレングリコールスラリー(S−4)50質量部を添加した以外は実験番号5と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0053】
実験番号10
(S−2)の代わりに(S−4)を0.05質量部用いた以外は実験番号5と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0054】
実験番号11
テレフタル酸(TPA)100質量部とエチレングリコール(EG)75質量部を反応容器に仕込み、これを攪拌しながら230℃まで昇温させた後、6時間かけてエステル化反応を行い、BHTを合成した。その後、ここへEGとTPAのモル比が2.0であるスラリー175質量部を2時間かけて添加し、反応溶液の温度を230℃に保持しながら90分間反応を続けた。
【0055】
得られた反応生成物175質量部を孔径3.0μmのフィルタでろ過した後、ろ液を反応容器に入れ、ここへ、ポリマーを基準に0.02質量%のリン酸を添加し、さらにポリマーを基準に0.015質量%の三酸化アンチモンを添加した。これを加熱して、50分間かけて235℃から285℃まで昇温させ、その後3時間重縮合反応を行い、表1に示すような物性を有するポリマーを得た。得られたポリマーを切断してチップ形状(大きさ0.02g/個)とした。
【0056】
このポリマーチップを一般固相重合器に入れて固相重合を行い、表1に示すような物性を有するポリマーを得た。
【0057】
さらにこのポリマーを用いて、耐熱ペットボトル用ブロー装置で、容量500mlの耐熱性ペットボトルを作製した。
【0058】
実験番号12
(S−2)の代わりに、平均粒径が200nmのシリカ粒子を用いたエチレングリコールスラリー(S−5)を5質量部加えた以外は実験番号5と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0059】
実験番号13
(S−5)の使用量を1質量部とした以外は、実験番号12と同様にしてポリマーチップ、ポリマー、耐熱性ペットボトルを製造した。
【0060】
実験番号14
(S−2)の代わりに、平均粒径2nmのシリカ粒子を、濃度が0.001質量%となるようにEG中に分散させたエチレングリコールスラリー(S−6)を用いた以外は実験番号5と同様にして液相重合を行ったが、シリカ粒子がポリマー中に異物として存在することが確認されたため、この段階で重合を中止し、以後の固相重合を行わなかった。
【0061】
実験番号1〜4で得られたポリマーチップ、ポリマーおよび耐熱性ペットボトルの物性を表1に、実験番号5〜10で得られたポリマーチップ、ポリマーおよび耐熱性ペットボトルの物性を表2に、実験番号11〜14で得られたポリマーチップ、ポリマーおよび耐熱性ペットボトルの物性を表3に示した。
【0062】
【表1】
Figure 0003662563
【0063】
【表2】
Figure 0003662563
【0064】
【表3】
Figure 0003662563
【0065】
本発明の規定を満たす実験番号1〜10のポリマーから製造したペットボトルはいずれも優れた耐熱性および酸素ガス遮断性を有していた。これに対して実験番号11で得られたポリマーは、シリカ粒子を含んでいないため、同様の方法で製造し、シリカ粒子を含む実験番号5に比べて耐熱性および酸素遮断性に劣るものであった。実験番号12では、平均粒径が200nmのシリカ粒子を用いたため、同様の方法で得られた実験番号6のペットボトルに比べて透明度が低く、耐熱性および酸素ガス遮断性も劣っていた。実験番号13では、使用したシリカ粒子の量は少なかったが、その平均粒径が200nmと大きいものであったため、耐熱性およびガス遮断性に劣り、またペットボトルの透明度も低かった。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、飽和ポリエステルに平均粒径が3〜100nmのシリカ粒子を均一に分散させることで、耐熱性およびO2のようなガス遮断性を向上できるため、飲料や各種食品等の容器として使用されるプラスチックボトルおよび包装材料などとして好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. シリカ粒子を含有し、芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールとを主要原料とする飽和ポリエステル組成物を製造する方法において、前記主要原料である芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールのエステル交換反応を行った後、重縮合反応前に、平均粒径が3nm以上、100nm以下のシリカ粒子をエチレングリコール中に濃度3〜30質量%で含有するスラリーを重合反応器に添加して溶融重合し、さらに固重合することによりシリカ粒子含有飽和ポリエステル組成物を製造する製造方法。
  2. 前記シリカ粒子の使用量を、生成されるポリマー基準に0.005質量%以上、10質量%以下とする請求項1に記載のシリカ粒子含有飽和ポリエステル組成物の製造方法。
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