JP5199636B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents
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Description
一方で、化石原料や石油資源の枯渇、二酸化炭素の増大が問題視されているため、脂肪族ポリエステルなどの生分解性樹脂や植物を原料として合成する樹脂の研究開発も活発に行われており、脂肪族ポリエステルの中でも特に、優れた成形性を有するポリ乳酸は、とうもろこし等の穀物資源から発酵により得られる乳酸を原料とする、植物由来の樹脂として注目されている。
これを解決する手段としてガラスファイバーやカーボンファイバー、タルク、シリカ等の副資材による補強も行われるが、結晶性を有する樹脂においては結晶化を促進することにより、耐熱性の大幅な向上を図ることが可能である。
例えば、ポリ乳酸に対する検討として、特許文献1には核剤としてリン酸エステル金属塩、含水珪酸マグネシウム等の添加が効果的であると記載されている。しかしながら、その様な核剤を用いた場合、透明性が損なわれるという欠点がある。また、一般的に用いられるタルクは、結晶化速度の観点のみならば実用範囲内であるが、そのためには添加量が1%以上必要となる場合が多く、ポリ乳酸本来の特性である透明性を損なう欠点がある。
前記ナノシリカ(B)は、一次粒径が1〜50nmであり、一次凝集のサイズが50〜500nmであることが好ましい。
。
前記結晶核剤(C)はカルボン酸アミドであることが好ましく、該カルボン酸アミドは、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスカプリン酸アミド、ヘキサメチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビスカプリン酸アミド、m-キシリレンビスラウリン酸アミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスオレイン酸アミドおよびm-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましい。
<熱可塑性樹脂(A)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂としては、(結晶性を有するもの)であれば特に限定されない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、乳酸系樹脂(A’)、(ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、PTFE等のフッ素樹脂および液晶性ポリマー(LCP))などが挙げられる。これらの中では、乳酸系樹脂(A’)が好ましい。なお、以下において、熱可塑性樹脂として乳酸系樹脂(A’)を含む場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物を「乳酸系樹脂組成物」と称することがある。
D-乳酸単位を少なくとも50モル%以上、好ましくは75モル%以上含有する重合体を
主成分とする重合体組成物を意味するものであり、乳酸の重縮合や乳酸の環状二量体であるラクチドの開環重合によって合成される。
ン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジグリムなどのエーテル系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,1,2,2,−テトラクロロエタン、ブロモベンゼン、o−ジブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などが用いられる。
系触媒、塩化チタン、チタンテトライソプロポキシド等のチタン系触媒、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛系触媒が挙げられる。これらの中では、好ましくはスズ系触媒、より好ましくはオクタン酸スズである。触媒の使用量は、乳酸やラクタイド等のモノマー100重量部に対して、0.001〜5重量部、好ましくは0.003〜1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.1重量部である。
本発明において用いられるナノシリカは、いわゆる市販のナノシリカで良いが、本発明の特徴である、35%以上の高結晶化度における高透明性を発現するためには、一次粒径が1〜50nmであり、一次凝集のサイズが50〜500nmであることが好ましい。
また、これらのナノシリカの嵩比重は30〜200g/Lの範囲にあることが好ましい。
一般的にシリカは、その表面にシラノール基が存在するため親水性であるが、本発明においては用いる場合、その表面がシランカップリング剤で修飾され疎水性となっていても、また無修飾のまま親水性であっても構わない。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、必要に応じ透明核剤(C)を含有する。ここで「透明核剤」とは、特定の構造を有する熱可塑性樹脂に添加した場合、結晶化の際に核剤となるもので、かつ透明性を付与するものである。
N-オレイルパルミチン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリ
ン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-
ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミドのようなN-置換脂肪族モノカルボン酸アミド類;
メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビスオレイン酸アミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスベヘニン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミドのような脂肪族ビスカルボン酸アミド類;
N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’-ジステアリルテレフタル酸アミドのようなN-置換脂肪族カルボン酸ビスアミド類;
N-ブチル-N’-ステアリル尿素、N-プロピル-N’-ステアリル尿素、N-ステアリル-N’-ステアリル尿素、N-フェニル-N’-ステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスラウリル尿素のようなN-置換尿素類が挙げられる。
ン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビスラウリン酸アミド、m-キシリレンビスオレイン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドが好ましい。さらに、分子内に芳香環を有しないエチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドが、結晶化速度が優れるという点で好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、目的(例えば、成形性、二次加工性、分解性、引張強度、耐熱性、保存安定性、耐候性、難燃性等の向上)に応じて、上記成分(A)、(B)および(C)以外の他の樹脂もしくは重合体や各種添加剤を添加してもよい。
他の樹脂、重合体または添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて適宜選択される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、公知の製造方法を適宜採用することができる。例えば、高速撹拌機または低速撹拌機等を用いて、各成分を予め均一に混合した後、樹脂の融点以上において十分な混練能力のある一軸もしくは多軸の押出機で溶融混練する方法、溶融時に混合混練する方法、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などを採用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、十分に結晶化が進行した状態で透明性に優れるという点が大きな特徴である。ここで、本発明における「透明性」とは、一定の厚さのシートを十分に結晶化させた後の「ヘイズ」によって示されるものであり、その数字が小さいほど透明性が高く、且つ非晶状態のヘイズ値と十分に結晶化を進行させた後のヘイズ値の差が小さいほど、結晶化による透明性の阻害が小さく、添加するナノシリカの効果が高いことを示す。
本発明の成形体は、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物、好ましくは乳酸系樹脂組成物からなる。本発明の成形体は、公知公用の方法、たとえば、以下のような方法で製造することができる。
(2)射出成形においては、本発明の熱可塑性樹脂組成物のペレットを溶融軟化させて金型に充填し、成形サイクル20〜300秒で成形体が得られる。
れた予備成形体をオーブン(加熱炉)中で再加熱した後、一定温度に保持された金型内に入れて、圧力空気を送出してブローすることによりブローボトルを成形することができる。
nの昇温速度で昇温し220℃まで昇温する。結晶化エンタルピー(ΔHc)、結晶融解エンタルピー(ΔHm)を測定し、[[(ΔHm−ΔHc)/(ΔH0)]×100]を求
め、これを結晶化度とする。ここで、ΔH0は完全理想結晶融解エンタルピーを表し、た
とえば、ポリ乳酸のΔH0は93J/gである。また、本発明における「ヘイズ」は、ヘ
イズメーターで測定した値である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した種々の成形加工方法により成形することができ、特に限定されることなく様々な用途に好適に使用することができる。また、これらの成形品は、自動車部品、家電材料部品、電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材および日用品、各種フィルム、通気性フィルムやシート、一般産業用途及びレクリエーション用途に好適な発泡体、糸やテキスタイル、医療又は衛生用品などの各種用途に利用することができ、好ましくは耐熱性、耐衝撃性が必要とされる自動車材料部品、家電材料部品、電気・電子材料部品あるいは耐熱性および透明性が求められる日用品に利用することができる。
<結晶化度>
DSC(島津製作所製「DSC−60」)により求めた。プレス成形によって得られた無配向フィルムを105℃のオーブンで所定時間熱処理し、処理後のフィルム5〜6mgを秤量し、窒素シールしたパンに計り込み、窒素シールされた予め25℃に設定されたDSC測定部に装入した後、10℃/minの昇温速度で220℃まで昇温した。結晶化エ
ンタルピー(ΔHc)、結晶融解エンタルピー(ΔHm)を測定し、[[(ΔHm−ΔH
c)/(ΔH0)]×100]を求め、これを結晶化度とした。ここで、ΔH0は完全理想
結晶融解エンタルピーを表し、ポリ乳酸の数値93J/gを使用した。
JISK7105に基づきヘイズメーター(日本電色社製「NDH2000」)により求めた。
TEM(日立製作所製 透過型電子顕微鏡 H7650により観察を行い、目視によりおおよそのサイズを求めた。
Nanotrac UPA−UT151(Microtrac社製 粒度分析計)において、動的光散乱法により求めた。
サンプルはエタノールに分散させ、分散処理無しおよび超音波バスによる分散処理を行った後に測定した。
市販のポリ乳酸(A)[三井化学(株)製、登録商標LACEA、グレードH−100、Mw=Mw=17.3万]100重量部に対して、市販のナノシリカ(B)[旭化成ワッカーシリコーン(株)製、登録商標 HDK H20]1部、および結晶核剤(EBL:エ
チレンビスラウリン酸アミド)0.5部とを、ラボプラストミルを用いて、温度200℃
、時間5分および回転数50rpmの条件で混練した。
また、その嵩比重は40g/Lであった。
超音波による分散処理を行う前後で大きな差はなく、二次凝集はほとんど無い事が判明した。
尚、測定の際の分散溶媒は、エタノールで行った。
実施例1におけるナノシリカの使用量を5重量部に変えた以外は同様にして、厚さ100μmのフィルムを得た。また、このフィルムを105℃のオーブンに20秒間および60秒間入れて熱処理(アニール)を行い、アニール前後の結晶化度および透明性(ヘイズ)を、上記のようにして測定した。結果を表1に示す。
実施例1におけるナノシリカの使用量を10重量部に変えた以外は同様にして、厚さ100μmのフィルムを得た。また、このフィルムを105℃のオーブンに20秒間および60秒間入れて熱処理(アニール)を行い、アニール前後の結晶化度および透明性(ヘイズ)を、上記のようにして測定した。結果を表1に示す。
実施例1におけるポリ乳酸(A)を[三井化学(株)製、登録商標LACEA、グレードH−400、Mw=Mw=24.6万]100重量部に変えた以外は同様にして、厚さ100μmのフィルムを得た。また、このフィルムを105℃のオーブンに20秒間および60秒間入れて熱処理(アニール)を行い、アニール前後の結晶化度および透明性(ヘイズ)を、上記のようにして測定した。結果を表1に示す。
市販のポリ乳酸(A−1)[三井化学製、登録商標LACEA、グレードH−100、Mw=Mw=17.3万]100重量部に対して、ナノシリカを用いずに、結晶核剤(EBL:エチレンビスラウリン酸アミド)を0.5部用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ100μmのフィルムを得た。また、このフィルムを105℃のオーブンに20秒間および60秒間入れて熱処理(アニール)を行い、アニール前後の結晶化度および透明性(ヘイズ)を、上記のようにして測定した。結果を表1に示す。
実施例2におけるナノシリカを、市販のシリカ((株)アドマテックス社製、商品名 ア
ドマファインSO−C1)5重量部に変えた以外は同様にして、厚さ100μmのフィルムを得た。また、このフィルムを105℃のオーブンに20秒間および60秒間入れて熱処理(アニール)を行い、アニール前後の結晶化度および透明性(ヘイズ)を、上記のようにして測定した。結果を表1に示す。
尚、測定の際の分散溶媒は、エタノールで行った。
実施例2におけるナノシリカを、市販のシリカ((株)アドマテックス社製、商品名 アドマファインSO−C2)5重量部に変えた以外は同様にして、厚さ100μmのフィルムを得た。また、このフィルムを105℃のオーブンに20秒間および60秒間入れて熱処理(アニール)を行い、アニール前後の結晶化度および透明性(ヘイズ)を、上記のようにして測定した。結果を表1に示す。
尚、測定の際の分散溶媒は、エタノールで行った。
これに対し、実施例1ではナノシリカ1%を添加しただけで、38.6%の結晶化度において、6.74%のヘイズに留まっている。
を行ってもナノシリカよりは大きい事が分かる、このアドマファインを用いた場合、透明性の指標であるHAZEはシリカを添加しない比較例1とほぼ同等か、粒径が大きい比較例2に至っては多少大きくなっている事が分かる。
Claims (7)
- 乳酸系樹脂(A’)および超音波の照射による分散処理を5分〜60分行った時の動的光散乱法による粒度分布が、累積10%までの粒径が0.1μm〜0.22μmの範囲、累積50%までの粒径が0.23μm〜0.34μmの範囲、累積90%までの粒径が0.35μm〜0.90μmの範囲にあるナノシリカ(B)を必須として含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 乳酸系樹脂(A’)および超音波の照射による分散処理を5分〜60分行った時の動的光散乱法による粒度分布が、累積10%までの粒径が0.1μm〜0.22μmの範囲、累積50%までの粒径が0.23μm〜0.34μmの範囲、累積90%までの粒径が0.35μm〜0.90μmの範囲にあるナノシリカ(B)を必須として含み、結晶核剤(C)含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 前記乳酸系樹脂(A’)100重量部に対して、ナノシリカ(B)を0.1〜100重量部の量で含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記乳酸系樹脂(A’)100重量部に対して、ナノシリカ(B)を0.1〜100重量部、結晶核剤(C)を0.1〜10重量部の量で含むことを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記乳酸系樹脂(A’)がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記結晶核剤(C)がカルボン酸アミド類であることを特徴とする請求項2、4および5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなり、厚み100μmでのヘイズが0.1〜15%であり、かつ結晶化度が35%以上であることを特徴とする成形体。
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