JP3661319B2 - ナットがインサート成形された樹脂成形体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばボルトなどが取り付けられるナットがインサート成形された樹脂成形体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえばユニットバスやシステムトイレなどの底面に用いられる防水パンとしては、従来より、シート状の不飽和ポリエステル樹脂成形材料(以下、SMCともいう)を圧縮成形法により形成するものや、繊維強化材を配合した熱硬化性プラスチック(以下、FRPともいう)を用いて成形するものが知られている。
【0003】
ところが、SMCにより形成された防水パンは、きわめて脆いので、防水パンに他の部品を取り付けるためにタッピングネジやテクスネジを用いると、欠けや割れが生じるという問題があった。また、SMCから成る防水パンにボス部を一体に成形することは困難であった。
【0004】
一方、防水パンをFRPで成形するには、ハンドレイアップ法などを用いる必要があり、その成形作業が煩雑であるので、防水パンの剛性を高めるためのリブを形成することが困難で、また防水パンを複雑な形状に成形することもきわめて困難であった。
【0005】
また、特開平6−128993号公報に示すように、床置き式の防水パンの下面には、レベル調整用ボルトの上端が取り付けられ、防水パンの水平度が調整される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の防水パンは、SMCまたはFRPで構成してあったため、ナットを一体成形することが困難であり、防水パンの成形後に、ナットを接着剤などで接着していた。そのため、ナットが外れ易いと共に、ナットを取り付けるための作業が煩雑であった。
【0007】
なお、FRP製防水パンでは、ナットを一体成形したものも開発されているが、ナットの背後の成形体内部に、レベル調節用ボルトの上端が収容される背後空間を形成する必要があり、その成形が困難であった。
【0008】
また、防水パン以外の用途でも、樹脂成形体にナットをインサート成形したい場合がある。ところが、ナットに螺合するボルトの取付長さを調節するためには、ナットの背後の成形体内部に、ボルトの上端が収容される背後空間を形成する必要がある。したがって、この場合でも、背後空間の成形が困難であった。そこで、比較的細長いナットをインサート成形することも考えられるが、その場合には、細長いナットと成形体との一体化が不十分になり易く成形が困難であるという課題を有する。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、ナットに取り付けられるボルトなどの取付長さを調節することが可能であり、しかも、ナットと成形体との一体化が容易な構造を持つ樹脂成形体を提供することを目的とする。また本発明は、樹脂成形体と一体成形されたナットの背後の成形体内部に、ボルトなどの上端が収容される背後空間を、きわめて容易に形成することができる樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るナットがインサート成形された樹脂成形体は、ナットのネジ孔の第1端が樹脂成形体の外側に開口し、ナットのネジ孔の第2端側が前記樹脂成形体の内部に埋め込まれ、前記樹脂成形体の内部には、前記ナットのネジ孔の第2端に連通する背後空間が形成してある。
【0011】
また、本発明に係るナットがインサート成形された樹脂成形体の製造方法は、ナットのネジ孔の第1端が金型のキャビティ内周面側に接するように、ナットを金型のキャビティ内の所定位置に配置し、ナットのネジ孔の第2端には、背後空間形成部材の一部を密封状態で挿入し、その後、金型のキャビティ内で射出成形を行い、ナットがインサートされた樹脂成形体を成形し、次に、樹脂成形体に一体化されたナットのネジ孔の第1端側から、前記背後空間形成部材を成形体外部に取り出し、ナットの背後の樹脂成形体内部に、ネジ孔に連通する背後空間を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明では、前記ナットの軸方向長さは、特に限定されないが、好ましくは10〜50mm、さらに好ましくは20〜40mm程度に短くすることができる。また、ナットのネジ孔の大きさは、特に限定されないが、好ましくはM3〜M16である。
【0013】
前記背後空間形成部材としては、発泡体、ポリエチレンなどのブロー成形品などが例示される。これらの部材は、成形体にインサートされたナットのネジ孔を通して取り出される。その際に、これらの部材は、成形体の成形後に、ネジ孔を通過できる程度に粉砕または潰して、取り出したり、タップでネジをさらう、あるいは溶媒などで溶かして取り出される。その他の背後空間形成部材としては、スタッドボルトなどを例示することができる。このスタッドボルトは、成形体の成形後に、インサート成形されたナットのネジ孔を通して取り出される。
【0014】
背後空間形成部材により成形体内部に形成される背後空間の大きさは、特に限定されず、ナットのネジ孔と略同等以上の内径を有し、ナットの軸方向長さに対して、100〜150%程度の軸方向長さを有することが好ましい。
【0015】
本発明では、樹脂成形体としては、射出成形により成形される樹脂であれば特に限定されないが、反応射出成形体であることが好ましい。
【0016】
反応射出成形に用いる反応原液としては、特に限定されないが、ウレタン系、ウレア系、ナイロン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系、フェノール系および、ノルボルネン系などが挙げられ、一般的成形条件としては、反応原液温度は20〜80°C、反応原液の粘性は、たとえば、30°Cにおいて、5cps〜3000cps好ましくは100cps〜1000cps程度である。
かかる成形においては、補強材を予め金型内に設置しておき、その中に反応液を供給して重合させることにより強化ポリマー(成形品)を製造することができる。
【0017】
補強材としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、金属繊維、ポリプロピレン繊維、アルミコーティングガラス繊維、木綿、アクリル繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、アルミナ繊維などを挙げることができる。これらの補強材は、長繊維状またはチョップドストランド状のものをマット化したもの、布状に織ったもの、チョップ形状のままのものなど、種々の形状で使用することができる。これらの補強材は、その表面をシランカップリング材等のカップリング剤で処理したものが、樹脂との密着性を向上させる上で好ましい。配合量は、特に制限はないが、成形品全重量の通常10重量%以上、好ましくは20〜60重量%である。
【0018】
また、酸化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、発泡剤、難燃剤、摺動付与剤、エラストマー、ジシクロペンタジエン系熱重合樹脂およびその水添物など種々の添加剤を配合することにより、得られるポリマーの特性を改質することができる。酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系など各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤がある。充填剤にはミルドガラス、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、雲母などの無機質充填剤がある。エラストマーとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などがある。
【0019】
添加剤は、通常、予め反応液のいずれか一方または双方に混合しておく。
反応射出成形に用いる金型は、必ずしも剛性の高い高価な金型である必要はなく、金属製金型に限らず、樹脂製金型、または単なる型枠を用いることができる。反応射出成形は、低粘度の反応液を用い、比較的低温低圧で成形できるためである。重合反応に用いる成分類は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で貯蔵し、かつ操作することが好ましい。また、金型のキャビティ内に反応原液を注入する前に、キャビティ内を窒素ガスなどの不活性ガスで置換することが好ましい。
【0020】
金型温度は、好ましくは、10〜150℃、より好ましくは、30〜120℃、さらに好ましくは、50〜100℃である。金型圧力は通常0〜100Kg/cm2 の範囲である。重合時間は、適宜選択すればよいが、通常、反応液の注入終了後、20秒〜20分程度である。
【0021】
【作用】
本発明に係るナットがインサート成形された樹脂成形体では、ナットに取り付けられるボルトの上端が、成形体の内部に形成された背後空間に入り込むことが可能にしてあるので、ボルトのねじ込み深さを調節することで、ボルトの取付長さを調節することが可能である。また、背後空間を形成することで、成形体と一体化されるナットの軸方向長さを短くすることができるので、ナットと成形体との一体化が容易である。さらに、成形の際に、ナットのネジ孔は、背後空間形成部材により封止されるので、成形体となる原液がネジ孔に入り込み難くなり、ネジ孔に生じるおそれがある樹脂バリを低減またはなくすことができる。
【0022】
特に、樹脂成形体を反応射出成形体(特にノルボルネン系モノマーの反応射出成形体)で構成した場合には、樹脂成形体は、きわめて破壊し難く、衝撃性に優れ、しかも成形性にも富んでいるなどの利点を有する。
【0023】
本発明に係る樹脂成形体の製造方法では、ナットの背後に位置する成形体内部に、ボルトの上端が収容される背後空間を容易に形成することができる。
【0024】
本発明に係るナットがインサート成形された樹脂成形体の具体的用途は、特に限定されないが、ユニットバス、システムトイレ、洗面台やトイレを備えたシステムバスなど、各種システムに用いられる防水パン、あるいはレベル合せを必要とする成形品などとして用いられる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る防水パンおよび製造方法を、図面に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の一実施形態に係る樹脂成形体としての防水パンを示す平面図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3はナットがインサート成形された部分の要部断面図、図4はボルトにより支持された部分の防水パンの要部断面図、図5,6は本発明の実施形態に係る防水パンの製造過程を示す要部断面図、図7は本発明のさらにその他の実施形態に係る防水パンの製造過程を示す要部断面図である。
【0027】
図1,2に示すように、本実施形態の樹脂成形体としての防水パン10は、ユニットバスに用いられる防水パンであって、平面側から見て(図1参照)、矩形状に形成してあり、浴槽30を載置する浴槽パン部1と、入浴者の洗い場となる洗い場パン部2とを有する。
【0028】
本実施形態の防水パン10は、床置き式の防水パンであり、図2に仮想二点鎖線で示すコンクリート床面50上に、レベル調節用ボルト60,60,…を用いて載置される。ボルト60,60,…の取付部の詳細については後述する。
【0029】
図1に示すように、洗い場パン部2の裏面には、防水パン10自体の剛性を高めるためのリブ6,6,…が、当該防水パン10の外周縁部5に対して30゜〜60゜、好ましくは40゜〜50゜、より好ましくは45゜の角度をもって形成してある。本実施形態の防水パン10は、ゲートが設けられる外周縁部5に対して直角に反応液が注入されるので、このようにリブ6を略45゜に傾斜させることにより、リブ形成部分に対する反応液の回り込みをより円滑に行うことができる。また、洗い場パン部2には、その表面に幅6mm程度の溝7aと、その裏面にリブ7bを有する目じり部7が形成してある。
【0030】
一方、浴槽パン部1には、図2に仮想二点鎖線で示される浴槽30が載置されるが、そのための載置部8が一般面より上方に隆起して形成してある。また、浴槽パン部1と洗い場パン2部との境界部分には、エプロン20を取り付けるための隆起部3が形成されている。エプロン20とは、浴槽30の周縁部31と防水パン10との隙間を隠蔽するための化粧板であって、浴槽30の周縁部31から隆起部3に向かって湾曲して垂れ下がるように取り付けられる。このエプロン20を取り付けるために、本実施形態の防水パン10においては、隆起部3の両端に、取付フランジ4が防水パン10と一体に形成されている。すなわち、反応射出成形を行う際に隆起部3と取付フランジ4とが一体的に形成される。そして、この取付フランジ4と浴槽30の周縁部31との間にエプロン20を取り付け、テクスネジなどをエプロン20及び取付フランジ4に貫通させ、これにより当該エプロン20を固定する。
【0031】
なお、図1,2において、符号「9」は排水口、符号「70」は壁材である。
【0032】
このような本実施形態の防水パン10は、ノルボルネン系モノマーの反応射出成形により製造することができる。
【0033】
この反応射出成形に際して好ましく使用するノルボルネン系モノマーは、例えば、ジシクロペンタジエンやジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン等のノルボルネン環を有するシクロオレフィンである。
【0034】
ノルボルネン系モノマーを用いた反応射出成形において使用することができるメタセシス触媒は、例えば、六塩化タングステン、トリドデシルアンモニウムモリブデート、トリ(トリデシル)アンモニウムモリブデート等のモリブデン酸有機アンモニウム塩等のノルボルネン系モノマーの塊状重合用触媒として公知のメタセシス触媒であれば特に制限はないが、モリブデン酸有機アンモニウム塩が好ましい。
【0035】
活性剤(共触媒)としては、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライド、アルコキシアルキルアルミニウムハライド、有機スズ化合物等が挙げられる。
【0036】
本実施形態では、図3,4に示すように、防水パン10の下面には、防水パン10を支持するためのレベル調節用ボルト60の上端部が螺合するナット80がインサート成形により一体化してある。ナット80の軸方向長さbは、たとえば10〜50mm程度に短い。ナット80の外径cは、好ましくは6〜40mm、さらに好ましくは8〜30mmである。このナット80のネジ孔82の大きさは、好ましくはM3〜M16のボルトが螺合可能な大きさである。
【0037】
ナット80が埋め込まれるボス部86の最下端の外径dは、好ましくは13〜40mm、さらに好ましくは15〜35mmである。また、ボス部86が形成される部分の防水パン10の肉厚aは、好ましくは3〜10mm、さらに好ましくは4〜8mmである。
本実施形態では、図3,4に示すように、ナット80がインサート成形された防水パン10の内部に、背後空間90が形成してある。背後空間90は、ネジ孔82に連通するように形成してある。背後空間90の大きさは、特に限定されず、ナット80のネジ孔82と略同等以上の内径を有し、ナット80の軸方向長さbに対して、80〜100%程度の軸方向長さb’を有する。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態に係る成形体としての防水パンの製造方法について説明する。
【0039】
本実施形態の防水パンの製造方法では、まず、図5に示すように、金型92,94のキャビティ96内に突出する凸部98を、ナット80のネジ孔82aの下端(第1端)に挿入し、ナット80を金型94のキャビティ96内の所定位置に配置する。その前後に、ナット80のネジ孔82の上端(第2端)には、背後空間形成部材90aの一部を挿入する。背後空間形成部材90aとナット80との間には、グリースなどのシール剤を塗布し、その隙間からネジ孔82a内に樹脂が流入しないようにする。
【0040】
その後、金型92,94のキャビティ96内に反応原液を注入し、ノルボルネン系モノマーの反応射出成形を行い、図6に示すように、背後空間形成部材90aとナットとがインサートされた反応射出成形体から成る防水パン10を成形する。
【0041】
なお、反応射出成形の前準備として、ノルボルネン系モノマー、メタセシス触媒及び活性剤を主材とする反応射出成形用材料を、ノルボルネン系モノマーとメタセシス触媒とよりなるA液と、ノルボルネン系モノマーと活性剤とよりなるB液との安定な2液に分けて、それぞれを別のタンクに入れておく。反応射出成形に際しては、これらの2液をミキシングチャンバー内で混合し、次いで、この混合液を、防水パン10の形状に応じた金型のキャビティに注入する。その際に、金型の内部には、予めナット80が配置してある。次いで、金型のキャビティ内で反応原液を塊状重合させると、ナット80がインサート成形されたポリノルボルネン系樹脂からなる本実施形態の防水パン10を得ることができる。
【0042】
反応射出成形時において、金型の型締め圧力は通常0〜100Kg/cm2 の範囲である。また、重合時間は、適宜選択すればよいが、通常、反応液の注入終了後、30秒〜20分である。
【0043】
金型からナットがインサート成形された成形体を取り出した後、反応射出成形体に一体化されたナット80のネジ孔82の下端側から、背後空間形成部材90aを成形体外部に取り出し、ナット80の背後の成形体内部に、背後空間を形成する。本実施形態では、背後空間形成部材90aは、反応射出成形体と融着しない発泡体またはポリエチレンなどのブロー成形品で構成してあるので、この部材90aは、容易に粉砕または溶媒に溶解させることができ、ナット80のネジ孔82を通して、容易に取り出すことができる。部材90aを取り出した後には、ナット80の背後の成形体内部には、背後空間90が形成される。
【0044】
背後空間には、図2,4に示すレベル調節用ボルト60の上端が、適切な長さで突出することが可能になっている。すなわち、図6に示すように、ナット80自体の長さbが10〜50mm程度に短くとも、背後空間を含む長さb+b’が、十分に長いので、ボルト60のねじ込み深さの調節が可能である。
【0045】
本実施形態に係る防水パン10は、ポリノルボルネン系樹脂で構成してあるので、きわめて破壊し難く、衝撃性に優れ、しかも成形性にも富んでいる。
【0046】
本実施形態に係る防水パン10の下面に一体成形されたナット80のネジ孔82には、図2,4に示すレベル調節用ボルト60の上端がそれぞれねじ込まれ、防水パン10は、コンクリート床面50上に支持される。そして、各ボルト60の上端がナット80のネジ孔82にねじ込まれる深さe(図4参照)を調節することで、防水パン10の水平度が調節可能になっている。レベル調節用ボルト60の長さは、図2に示すように、そのボルト60が取り付けられる位置に応じて決定される。各レベル調節用ボルト60の上端がナット80のネジ孔82にねじ込まれる深さeの調節可能範囲は、ナット80のネジ孔82の長さbと背後空間90の軸方向長さb’とにより決定される。
【0047】
本実施形態に係る防水パン10では、ナット80のネジ孔82の長さbと背後空間90の軸方向長さb’とを足した長さの範囲で、レベル調節用ボルト60のねじ込み高さを比較的広範囲に調節することができ、防水パン10の水平度調節機能が良好となる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0049】
たとえば、図7に示すように、背後空間形成部材としてスタッドボルト90bを用い、それをナット80の上端にねじ込んでおき、反応射出成形後に、スタッドボルト90bを成形体から取り出しても良い。
【0050】
また、上述した実施形態では、ナットがインサート成形された樹脂成形体として、防水パンを例示したが、本発明の樹脂成形体の具体的用途は、防水パンには限られない。また、樹脂成形体の材質としては、反応射出成形体に限定されない。
【0051】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明に係るナットがインサート成形された樹脂成形体によれば、ナットに取り付けられるボルトの上端が、成形体の内部に形成された背後空間に入り込むことが可能にしてあるので、ボルトのねじ込み深さを調節することで、ボルトの取付長さを調節することが可能である。また、背後空間を形成することで、成形体と一体化されるナットの軸方向長さを短くすることができるので、ナットと成形体との一体化が容易であると共に、重量の軽減にも寄与する。さらに、成形の際に、ナットのネジ孔は、背後空間形成部材により封止されるので、成形体となる原液がネジ孔に入り込み難くなり、ネジ孔に生じるおそれがある樹脂バリを低減またはなくすことができる。
【0052】
特に、樹脂成形体を反応射出成形体(特にノルボルネン系モノマーの反応射出成形体)で構成した場合には、樹脂成形体は、きわめて破壊し難く、衝撃性に優れ、しかも成形性にも富んでいるなどの利点を有する。
【0053】
本発明に係る樹脂成形体の製造方法では、ナットの背後に位置する成形体内部に、ボルトの上端が収容される背後空間を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る成形体としての防水パンを示す平面図である。
【図2】図2は図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図3はナットがインサート成形された部分の要部断面図である。
【図4】図4はボルトにより支持された部分の防水パンの要部断面図である。
【図5】図5は本発明の実施形態に係る成形体としての防水パンの製造方法を示す要部断面図である。
【図6】図6は同実施形態に係る防水パンの製造方法を示す要部断面図である。
【図7】図7は本発明のさらにその他の実施形態に係る防水パンの製造方法を示す要部断面図である。
【符号の説明】
10… 防水パン(成形体)
60… レベル調節用ボルト
80… ナット
82… ネジ孔
90… 背後空間
90a… 背後空間形成部材
90b… スタッドボルト
92,94… 金型
96… キャビティ
98… 凸部
Claims (2)
- ナットのネジ孔の第1端が金型のキャビティ内周面側に接するように、ナットを金型のキャビティ内の所定位置に配置し、
ナットのネジ孔の第2端には、ノルボルネン系モノマーの反応射出成形体と融着しないブロー成形品で構成される背後空間形成部材の一部を密封状態で挿入し、
その後、金型のキャビティ内でノルボルネン系モノマーの反応射出成形を行い、ナットがインサートされた反応射出成形体を成形し、
次に、反応射出成形体に一体化されたナットのネジ孔の第1端側から、前記背後空間形成部材を成形体外部に取り出し、ナットの背後の反応射出成形体内部に、ネジ孔に連通する背後空間を形成することを特徴とするナットがインサート成形された反応射出成形体の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法により製造され、貫通しているネジ孔を有するナットがインサート成形された反応射出成形体であって、
前記ナットのネジ孔の第1端が前記反応射出成形体の外側に開口し、前記ナットのネジ孔の第2端側が前記反応射出成形体の内部に埋め込まれ、前記反応射出成形体の内部には、前記ナットのネジ孔の第2端に連通する背後空間が形成してあるナットがインサート成形された反応射出成形体。
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