JP3660775B2 - 内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内視鏡を大腸深部や小腸へ挿入し易くするために用いられる内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具に関する。
【0002】
【従来の技術】
大腸や小腸の内視鏡検査を行う際に、内視鏡を肛門から単に挿入すると、肛門のすぐ先のS字結腸部分がたわんで深部まで挿入するのが困難な場合が少なくない。そこで、S字結腸を短縮、直線化するために、一般にスライディングチューブと呼ばれる挿入補助具が用いられる。
【0003】
図16は、従来のスライディングチューブ90を示している。スライディングチューブ90は、内視鏡の挿入部を挿通することができる太さで、ある程度の可撓性を有する長さ40cm程度の単純なパイプ状のものであり、手元口金91部分は、肛門内に入り込まないように少し太く形成されている。
【0004】
また、手元口金91内には、潤滑剤を含浸させて中央にスリット92が形成されたスポンジ材93が配置されていて、内視鏡挿入部はスリット92部分を押し広げて通過するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図17は、スライディングチューブ90を用いて、患者の肛門から大腸内に内視鏡の挿入部2を挿入している状態を示している。
【0006】
一般的手技として、まず挿入部2をガイドとして結腸部分を直線化させる状態にスライディングチューブ90を配置した後、スライディングチューブ90内に通された挿入部2を、押し引きしながら徐々に奥へ押し込んでいく。
【0007】
そのようにして大腸内に挿入部2を挿入していくためには、内視鏡に設けられた送気システムにより大腸内に空気を送って、大腸をある程度膨らませる必要があるので、大腸内は圧力が高くなる。
【0008】
その結果、肛門とスライディングチューブ90との間の隙間や、スライディングチューブ90と挿入部2との間の隙間を通って、大腸内の空気がおならのように吹き出る。そのような時に大腸内から空気を出さないと、患者は大きな苦痛を感じるので、腸内から空気を出すことは避けられないことである。
【0009】
しかし、そのようにして肛門部から空気が吹き出すと、下剤等に溶けて液状になった糞便が空気と一緒に噴出する。空気が吹き出す際には、図18に示されるように、スポンジ材93のスリット92部分が開いて、そこから空気が一瞬にして噴出するので、それに混じった糞便が広い範囲に飛び散る場合が少なくない。
【0010】
また、挿入部2を押し引きすると、引き出された部分には、スポンジ材93から移った潤滑剤に糞便も混じるので、術者の手が汚れる。内視鏡検査が終了して挿入部2を肛門から引き出す際にも、同様にして術者の手が糞便で汚れる。
【0011】
そのような場合、術者は一般にゴム手袋を着用しているので問題ないが、そのようにして糞便で汚れた手(手袋)で周囲の機器に触れざるを得ない場合が多いので、周囲の機器を汚染してしまうことになる。
【0012】
そこで本発明は、肛門から大腸へ内視鏡を挿入する際に、糞便による周辺の汚染を大幅に軽減して、内視鏡検査を衛生的に行うようにすることができる内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具は、軟性の内視鏡挿入部を挿通して案内するために肛門から結腸内に差し込まれる可撓性のあるパイプ状の内視鏡挿入補助具の手元側口元部付近に、吸水性のある汚液吸収部材を着脱自在に保持するための内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具であって、弾性材によって馬蹄形の断面形状に形成され、上記挿入補助具の外壁面との間に上記汚液吸収部材を挟み込んだ状態で自己の弾性によって上記挿入補助具の外壁面を外側から挟み付けた状態で固定されることを特徴とする。
【0014】
なお、上記汚液吸収部材が柔軟な部材で形成されていてもよく、上記汚液吸収部材がガーゼ状の部材であってもよい。
また、指掛け用の突起が外面に突設されていてもよく、その場合、上記指掛け用突起が、外面の途中から突設されていてもよく、上記指掛け用突起が、外面の端部から突設されていてもよい。
【0015】
なお、留め具が上記挿入補助具の軸線方向に移動するのを規制するための内方に向かう突起が前後両端に形成されていてもよく、留め具が上記挿入補助具の軸線方向に移動するのを規制するための段部が上記挿入補助具側に形成されていてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図3は、スライディングチューブ10を示している。スライディングチューブ10は、ある程度の可撓性を有する長さ40cm程度の単純なパイプ状に形成されて、その手元側端部に手元口金13が取り付けられた構造になっている。
【0017】
可撓性パイプ状の部分は、例えばステンレス鋼帯を隙間をあけて一定の直径で螺旋状に巻いて形成された螺旋管11の内外両面に、可撓性被覆12を密着させて形成されている。
【0018】
可撓性被覆12は、例えばポリウレタン樹脂チューブなどのような可撓性を有するチューブによって形成されていて、図4に拡大図示されるように、先端部分10aにおいて、一つのチューブを折り返して形成されている。
【0019】
手元口金13は、金属製又は硬いプラスチック製であり、手元口金13の内側部分には、可撓性被覆12の内径と真っ直ぐに通じる孔が軸線方向に貫通して穿設されている。
【0020】
手元口金13の直径は、可撓性被覆12によって外装された可撓性パイプ状部分の外径よりある程度大きく形成されていて、使用中に肛門内に入り込まないようになっている。
【0021】
図1は、肛門から噴出する汚液を吸収するための吸水性のある部材からなる汚液吸収部材30が、手元口金13の外周部分に着脱自在に取り付けられた状態を示している。
【0022】
汚液吸収部材30は、例えば長方形に形成された柔軟なガーゼ状の部材を重ね合わせたものであり、一端側の近傍が手元口金13からそれに隣接する可撓性被覆12の周囲を上方から囲むように被せられて、手元口金13に隣接する可撓性被覆12の外表面に留め具40によって固定され、そこから手元側に向かって延び出すように取り付けられている。
【0023】
留め具40は、バネ性のある金属又は硬質プラスチック(例えば、ナイロン、デルリン、テフロン、ポリサルフォン、ポリイミドアミド)などを材料として、図2に示されるように断面形状が馬蹄形(又はC字状)に形成されている。
【0024】
留め具40の外面には、直径方向に一対の指掛け用突起41が突出形成されていて、スライディングチューブ10に留め具40を着脱する際に指先を引っ掛け易いようになっている。
【0025】
図2は、汚液吸収部材30がスライディングチューブ10に固定された部分の正面断面図である。留め具40は、スライディングチューブ10の可撓性被覆12の外壁面との間に汚液吸収部材30を挟み込んだ状態で、自己の弾性によって可撓性被覆12の外壁面を外側から挟み付けた状態で固定されている。
【0026】
留め具40を取り付ける際には、スライディングチューブ10の外壁面に汚液吸収部材30をあてがった状態で、その外側(上方)からスライディングチューブ10の軸線に対してほぼ垂直の向きに留め具40を押し当てる。すると、留め具40が弾性変形して広がりながら汚液吸収部材30に被さっていく。この時、指先を指掛け用突起41部分に引っかければ指先が滑らない。
【0027】
留め具40を取り外す際には、指掛け用突起41に指先を掛けて留め具40を外側へ引っ張る。すると、留め具40が弾性変形しながらスライディングチューブ10の外壁面から外れる。そのようにして汚液吸収部材30を取り外し、新しいものと交換することができる。
【0028】
図5は、上述の実施の形態のスライディングチューブ10の使用状態を示しており、手元口金13部分だけを肛門101の外へ残して、結腸102部分を直線化させる状態に配置された後、挿通された内視鏡の挿入部2が押し引きされながら徐々に奥に押し込まれていく。
【0029】
スライディングチューブ10の手元口金13内には、従来のようなスポンジ材は配置されていない。したがって、大腸内から空気が吹き出すときは、スライディングチューブ10とその中に挿通された挿入部2との間の隙間から空気が吹き出す。
【0030】
しかし、手元口金13の口元開口部分と、その手前側に位置する挿入部2の周囲が汚液吸収部材30によって囲まれている。したがって、手元口金13の口元から吹き出す空気に混じっている液状の糞便は、汚液吸収部材30によって吸収され、周囲に飛散しない。
【0031】
また、挿入部2を押し引きする際には、挿入部2の外周面を汚液吸収部材30で拭くことができるので、挿入の際に術者の手が糞便で汚れたままになるのを防止することができる。
【0032】
また、内視鏡検査が終了して、スライディングチューブ10内から挿入部2を引き出す際にも、挿入部2の外周面を汚液吸収部材30で拭くことができるので、術者の手が糞便で汚れたままになるのを防ぐことができる。
【0033】
図6は、本発明の第2の実施の形態を示しており、スライディングチューブ10の手元口金13に留め具40を固定して汚液吸収部材30を保持するようにしたものである。
【0034】
留め具40は、バネ性のある金属又は硬質プラスチックなどによって、図7にVII−VII断面が示されるように、開口幅dが直径Dより小さい(d<D)馬蹄形(又はC字状)に形成されていて、手元口金13の外壁面との間に汚液吸収部材30を挟み込んだ状態で、自己の弾性によって手元口金13の外壁面を外側から挟み付けた状態で固定される。
【0035】
そして、留め具40の軸線方向の前後両端には、汚液吸収部材30を間に挟んだ状態で手元口金13の端面に当接する鍔状のストッパ用突起42が内方に向けて突出形成されている。このストッパ用突起42によって、留め具40の軸線方向移動が規制される。
【0036】
図8は、この留め具40の正面図であり、破線より内側に出ている部分がストッパ用突起42である。指掛け用突起41は、馬蹄形断面の外面の両端部から突出形成されている。
【0037】
図9は、本発明の第3の実施の形態を示しており、第2の実施の形態と同様に、スライディングチューブ10の手元口金13に留め具40を固定して汚液吸収部材30を保持するようにしたものである。
【0038】
留め具40は、図10にX−X断面が図示され、図11に正面図が示されるように、断面形状が馬蹄形に形成されていて、手元口金13の外壁面との間に汚液吸収部材30を挟み込んだ状態で手元口金13の外壁面を外側から挟み付けた状態で固定される。
【0039】
ただし、軸線方向の長さが手元口金13より短く形成されている。そして、フック状に形成されたストッパ用突起42が前後両側に延出形成されていて、その先端部分が内方に向けて突出形成されており、その部分が手元口金13の前後両端面に当接することによって、留め具40の軸線方向移動が規制される。
【0040】
図10に示されるように、馬蹄形の断面形状に形成された留め具40の両側端部は滑らかに外側に曲げられており、スライディングチューブ10に対する着脱をスムーズに行えると共に、その部分が指掛け用突起41になっている。
【0041】
図12は、本発明の第4の実施の形態を示しており、図13にXIII−XIII断面が示されるように、スライディングチューブ10の手元口金13の中間部分の側面両側に平面部13bが形成されていて、留め具40がそれに合わせて直線部を左右に有する馬蹄形に形成されている。留め具40は、やはりバネ性のある材料によって形成されている。
【0042】
平面部13bは、手元口金13の外面の中間部分にしか形成されておらず、留め具40が軸線方向に移動しようとすると手元口金13側の段部13cにぶつかるので、留め具40の軸線方向への移動が規制される。
【0043】
また、図13に示されるように、留め具40の先端部分44は内側に少し曲げられていて、手元口金13に確実に係止されるようになっている。41は指掛け用突起である。
【0044】
図14は、本発明の第5の実施の形態を示しており、スライディングチューブ10の手元口金13に、軸線方向に間隔をあけて一対の鍔13aを突出して形成し、その間に留め具40を取り付けるようにしたものである。したがって、留め具40の軸線方向移動が鍔13aによって規制される。図15は、そのXV−XV断面を示している。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、内視鏡の挿入補助具の口元から噴出する汚液を吸収するための汚液吸収部材を挿入補助具に容易に着脱することができるので、内視鏡検査中は挿入補助具の口元から糞便等を含む汚液が周囲に飛び散らず、検査終了時には速やかに取り外して清掃或いは廃棄することができ、内視鏡検査を非常に衛生的に行うことができる。
【0046】
そして、内視鏡検査開始時に汚液吸収部材の取り付けを忘れた場合でも、体腔内に挿入した挿入部を引き出すことなく、必要に応じていつでも容易に汚液吸収部材を取り付けることができ、途中で汚液吸収部材の汚染がひどくなった時は新しい汚液吸収部材に容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の留め具がスライディングチューブに取り付けられた使用状態の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のII−II断面図である。
【図3】スライディングチューブの側面断面図である。
【図4】スライディングチューブの部分拡大側面断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の使用状態の略示図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態の留め具がスライディングチューブに取り付けられた使用状態の側面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の留め具のVII−VII断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の留め具の正面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態の留め具がスライディングチューブに取り付けられた使用状態の側面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態のX−X断面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の留め具の正面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態の留め具がスライディングチューブに取り付けられた使用状態の側面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態のXIII−XIII断面図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態の留め具がスライディングチューブに取り付けられた使用状態の側面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態のXV−XV断面図である。
【図16】従来のスライディングチューブの側面断面図である。
【図17】従来のスライディングチューブの使用状態を示す斜視図である。
【図18】従来のスライディングチューブのスポンジ材部分からの空気と汚液の噴出状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
2 挿入部
10 スライディングチューブ
13 手元口金
30 汚液吸収部材
40 留め具
41 指掛け用突起
Claims (5)
- 軟性の内視鏡挿入部を挿通して案内するために肛門から結腸内に差し込まれる可撓性のあるパイプ状の内視鏡挿入補助具の手元側口元部付近に、吸水性のある汚液吸収部材を着脱自在に保持するための内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具であって、
弾性材によって馬蹄形の断面形状に形成され、上記挿入補助具の外壁面との間に上記汚液吸収部材を挟み込んだ状態で自己の弾性によって上記挿入補助具の外壁面を外側から挟み付けた状態で固定されることを特徴とする内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具。 - 指掛け用の突起が外面に突設されている請求項1記載の内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具。
- 上記指掛け用突起が、外面の途中から突設されている請求項2記載の内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具。
- 上記指掛け用突起が、外面の端部から突設されている請求項2記載の内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具。
- 留め具が上記挿入補助具の軸線方向に移動するのを規制するための内方に向かう突起が前後両端に形成されている請求項1ないし4のいずれかの項記載の内視鏡挿入補助具の汚液飛散防止部材留め具。
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