JP3659627B2 - 湿式吹付施工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種高温窯炉等に使用される、耐火材料又は断熱材料の湿式吹付法、および、それを用いた耐火又は断熱構造に関するものである。さらに詳しくは本発明は、改良された凝集剤溶液を使用する耐火材料又は断熱材料の湿式吹付法、および、それを用いた耐火又は断熱構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
不定形耐火物は、熟練作業を必要とせず、施工の自動化、省力化も比較的容易に可能であることもあり、各種窯炉に幅広く適用されている。特に、吹付工法は、枠が不要のためその適用範囲は広い。しかし、一般的には乾式吹付施工体は気孔率が高く、耐用性が流し込み材に比較して低く内張りへの適用は少なかった。
【0003】
しかし、近年、湿式吹付工法が従来乾式吹付工法に比較し、耐用性の向上、リバウンドロス低減、無発塵と従来吹付の欠点が大幅に改善されてきている。そのため、樋、混銑車、溶銑鍋、溶鋼鍋、タンディッシュ、RH等の溶融金属の容器や処理炉等、あるいは、廃棄物焼却炉、溶融炉、セメントキルンやその付帯設備等の内張りや補修用として、湿式吹付法が広く適用されるようになっている。湿式吹付工法とは、特開平9−315872、特開平9−241080、特開平9−26267、特開平9−250880、特開平10−111083、特開平10−194853、特許第2934620、特許第2972179、特許第2965958等に詳述されている技術であり、その要点は、耐火材料をそのポンプ圧送のためための適量水分にて混練し、適度な柔らかさの混練物とし、ポンプを用いて混練物を圧送しノズル部まで供給し、ノズル部で圧縮エアーと凝集剤(急結剤、硬化剤等とも呼ばれる)を加えて混練物を吹付ける方法の総称である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
湿式吹付工法で通常使用される凝集剤は、例えば特開平9−315872で使用しているようなSiO2/アルカリ金属酸化物のモル比:2.0〜3.3、15℃のボーメ度が40以上のJIS規格の珪酸ソーダ溶液である。しかし、この珪酸ソーダ溶液では、耐火材料を凝集させるために必要な添加量が、実際には0.5%から時には1%以上必要となる。このため、耐食性の低下や使用中の過焼結が進行し剥離の原因ともなる。また、含有アルカリ成分が多いこともこれらの傾向を増進させる。また、アルカリ成分が多いため吹付時に瞬時にセメント硬化が開始されるため、施工された耐火物組織が稼働面に向かって層状に形成され、稼働中の剥離を誘発する等の問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、混練した耐火材料をポンプ圧送して施工する湿式吹付法に用いられる凝集剤、および、それを用いた吹付施工方法について日々研究を重ねた結果、アルカリ成分の少ない珪酸アルカリ溶液を凝集剤として適用することで耐食性の向上、亀裂や剥離の抑制に効果があることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明の第一は、混練した耐火又は断熱材料をポンプ圧送し、珪酸アルカリを主成分とする凝集剤溶液と合流させて吹付けて施工する湿式吹付法において、該凝集剤溶液に用いられる珪酸アルカリのSiO2/アルカリ金属酸化物モル比が3.3を超えるものであり該凝集剤溶液の比重が15℃のボーメ度として45以下であることを特徴とする湿式吹付方法、を提供する。
また本発明は、上記第一の発明に記載の施工方法を用いた窯炉等のライニング構造や断熱構造、を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
湿式吹付工法の材料は、従来のポンプ圧送可能な流し込み材と何ら変わることがない。典型的には、耐火骨材、超微粉材料、その他調整剤や添加物等からなる。湿式吹付法に用いられる耐火材料は、通常はアルミナセメントキャスタブルと類似の不定形耐火物であって、粒度を規定、調整した耐火原料にセメント成分を加え、セメントの硬化により結合強度を得るものである。
【0008】
キャスタブルと異なる点は、超微粉原料やアルミナセメントなどの微粉バインダーを水で混練することによって分散させ流動性を与え、この混練物をポンプで圧送し、ノズル部で凝集剤を添加して、エアーと共にノズルから吹き出して、被施工面上で超微粉が凝集して、あるいはバインダーの成分との反応を急激に生じさせて、流動性を無くすことによって、流れ落ちずに保形させて施工される点である。従って、この技術の成否の要点は、バインダー成分(種類)、超微粉原料の種類、分散剤、およびこれらに極短時間で作用する凝集剤であり、これらの組合せによって、初期の耐火材料混練物の流動性やポンプ圧送性、凝集剤添加後の凝集性や硬化性が決定される。
【0009】
本発明に用いられる湿式吹付用耐火材料の主原料は、従来から耐火物に用いられている既知の各種原料を組み合わせて用いることが出来る。例えば、電融アルミナ、焼結アルミナ、ボーキサイト、バンド頁岩、カイヤナイト、アンダリュサイト、ムライト、ロー石、珪石、アルミナ−マグネシアスピネル、電融マグネシア、焼結マグネシア、クロム鉱、ジルコン、ジルコニア、炭化珪素、黒鉛、ピッチ等が挙げられる。
【0010】
本発明に用いられる湿式吹付用耐火材料の超微粉原料としては、従来からの耐火物の超微粉原料に用いられている、非晶質シリカ、耐火粘土、超微粉シリカ、仮焼アルミナ等の超微粉アルミナ、超微粉チタニア、超微粉ムライト、超微粉ジルコニア、超微粉クロミア、超微粉炭化珪素、超微粉カーボン、などを使用することができる。超微粉原料の微粉サイズは、およそ15μm以下の粒子を主体とすることが望ましい。
【0011】
本発明に用いられる湿式吹付材料には、従来と同様に、各種の調整剤や添加物を加えることが可能である。例えば、爆裂を抑制するための添加剤としてアルミニウムやアルミニウム合金等の金属類やビニロン等の有機繊維、あるいは、耐火材料の硬化時間を調整するためのカルボン酸、カルボン酸塩、炭酸塩等を用いることが出来る。また、施工体を補強するための金属ファイバー類や、施工体に断熱性を付与するためのパーライト、バーミキュライト、スチレンビーズなどの有機、無機の軽量骨材、あるいは吹付物の保形性を高めるためのメチルセルロース等の有機増粘剤やセピオライト、ベントナイト等の無機増粘剤を添加使用することもできる。
【0012】
本発明に用いられる湿式吹付用耐火材料に用いる分散剤としては、一般に低セメントあるいはノンセメントキャスタブルに用いられるリン酸塩系、カルボン酸系、スルホン酸系等を用いることが出来る。本発明に用いられる湿式吹付用耐火材料の結合剤には、アルミナセメントを使用する。アルミナセメント添加量としては、樋、溶銑鍋、トーピードカー、溶鋼取鍋、タンディッシュ等の溶融金属容器やRH、DH等の処理炉の内張り材として使用するには0.2〜15wt%が望ましい。溶融金属を受ける内張り材としてはアルミナセメント0.2wt%以下では強度が不足し、15wt%以上では耐食性の低下が大きくなるため望ましくない。焼却炉、ボイラー、セメントプレヒーター、加熱炉等の雰囲気炉内張り材では、2〜40wt%が望ましい。2wt%以下では強度が不足し、40wt%以上では耐熱的に問題がある。断熱材としては、20〜60wt%が望ましい。軽量骨材、繊維等を使用した場合、20wt%以下では強度的に問題がある。また、60wt%以上は、強度向上の効果は小さく、コスト上昇するだけであるので特に必要はない。
【0013】
本発明に用いられる湿式吹付用耐火材料の凝集剤としては、珪酸アルカリ溶液として、15℃でのボーメ度45以下で、SiO2/アルカリ金属酸化物のモル比が3.3、好ましくはボーメ度40以下、より好ましくは10〜40、さらに好ましくは10〜30、SiO2/アルカリ金属酸化物のモル比4.0以上、より好ましくは4.4以上、さらに好ましくは4.8以上、のアルカリ成分の少ない溶液を用いる。このアルカリ成分の少ない珪酸アルカリ溶液を耐火材料混練物に0.1〜1.5wt%添加することにより、吹付施工可能な接着性と保形性を具備し、低アルカリ、かつ、吹付後の硬化促進を抑えることで施工体の層状化を防止することに成功した。珪酸アルカリ溶液としては具体的には、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム溶液である。
【0014】
SiO2/アルカリ金属酸化物のモル比が3.3以下では、アルカリ成分が多く過焼結、耐食性の低下、硬化促進による施工体の層状化を起こす。また、ボーメ度45以上では冬期の低温時に増粘しノズルで材料と混合しにくくなり、ときにはゲル化する危険がある。
【0015】
凝集剤の役割としては、混練物とノズルで混合された瞬間の凝集強度発現と吹付後の養生中に起こるセメントの硬化促進効果の2つがある。凝集剤の珪酸アルカリにおけるSiO2/アルカリ金属酸化物のモル比を3.3超、15℃のボーメ度を45以下とすることで凝集強度発現を高め、吹付に必要な凝集剤溶液の添加量を抑えることができる。
【0016】
さらにアルカリ金属の成分比も小さいため、全体として従来より施工体に添加されるアルカリ成分の量が少なくなり、過焼結や耐食性の低下が抑えられる。また、アルカリ成分量が少ないため、吹付後のセメントの硬化促進効果が小さくなり、本発明の範囲外の珪酸アルカリよりもセメント水和による強度発現は遅れる。したがって、吹付直後は、施工体形状を保つために必要な強度しかなく、手で削ることができるほど柔らかく、後から重ね吹きしたときのなじみも良い。そのため、特に大型炉の施工のように一度に全体を吹き付け出来ず、部分々々で短い時間をおいての打ち継ぎ吹付を行うような場合、本発明の範囲外のアルカリ分の多い珪酸アルカリ凝集剤溶液に比較し、継ぎ目からの亀裂抑制に有効である。
【0017】
同様の効果は、溶融金属容器や処理炉、雰囲気炉の内張り材として使用する場合、あるいは断熱材として使用した場合も、施工範囲が広く部分毎の打ち継ぎで施工しなければならない場合でも常に柔らかい施工体の上に吹付していくことが可能であり、なじみが非常によく均一な施工体となり亀裂が入りにくい。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に説明するが、これらに限定されるものではない。
(実施例1〜3)
表1に記載の成分をそこに列記した量(数字は重量部、以下同じ)だけ配合したアルミナ・マグネシア質耐火物混練物を、表1記載の(SiO2/R2O)、(ボーメ度)、(添加量)の珪酸アルカリ溶液とともに、溶鋼取鍋の内張として湿式吹付けを行った。また、これらの施工体について侵食試験及び実炉使用状況の観察を行った。
なお、侵食試験は、回転ドラム侵食法で行った。アークにより1650℃まで加熱し、1時間毎にスラグ(C/S=3)交換しながら合計3時間テストした。
結果を表1に示す。
【0019】
(比較例1及び2)
実施例1に準じて表1記載の配合で湿式吹付け及び流し込み成形を行った。比較例2の成形体は、品質試験の基準とした。これらの結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0003659627
【0021】
(実施例4〜6及び比較例3〜4)
実施例1に準じて、ストーカ式焼却炉のガス冷却室について、表2の配合のシャモット質により湿式吹付け及び流し込み成形を行った。結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
Figure 0003659627
【0023】
(実施例7〜9及び比較例5〜6)
実施例1に準じて、ストーカ式焼却炉のガス冷却室背部について、表3の配合の断熱質により湿式吹付け及び流し込み成形を行った。結果を表3に示す。
【0024】
【表3】
Figure 0003659627
【0025】
【発明の効果】
前記の各実施例及び比較例から明らかなように、本発明の珪酸アルカリ溶液を使用した湿式吹付けにおいては、従来の流し込み法による成形体に匹敵する性状の耐火ライニング又は断熱ライニングを得ることができる。

Claims (3)

  1. 混練した耐火又は断熱材料をポンプ圧送し、珪酸アルカリを主成分とする凝集剤溶液と合流させて吹付けて施工する湿式吹付法において、該凝集剤溶液に用いられる珪酸アルカリのSiO2/アルカリ金属酸化物モル比が3.3を超えるものであり該凝集剤溶液の比重が15℃のボーメ度として45以下であることを特徴とする湿式吹付方法。
  2. 請求項1の湿式吹付方法を用いてなる窯炉内張りのライニング構造。
  3. 請求項1の湿式吹付方法を用いてなる各種室内の断熱構造。
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