JP3658913B2 - 白色ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル組成物およびそれからなる成形品に関するものであり、詳しくはポリエステルに無機粒子および特定のリン化合物を配合してなる溶融熱安定性、粒子分散性に優れるポリエステル組成物および滑り性、耐摩耗性さらには白色性、隠蔽性に優れたポリエステル組成物からなるフィルムなどの成形品に関するものであり、さらに詳しくは、磁気記録媒体用、コンデンサー用、食品包装用、一般工業用、紙代替用などに好適なポリエステル組成物およびフィルムなどの成形品に関するものであり、特には印画紙、X線増感紙、受像紙、磁気記録カード、ラベル、宅配便などの配送伝票、表示板、白板などの基材として好適なポリエステル組成物およびフィルムなどの成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルは優れた物理的、化学的特性を有しており、繊維、フィルム、その他の成形品として広く使用されている。これらの成形品の中で、フィルムは磁気記録媒体用、コンデンサー用、食品包装用、一般工業用、紙代替用等として使用されているが、これらの加工製品の取扱い性、品質特性向上のため、あるいはフィルムを製造工程する際、もしくはその加工工程における工程通過性のために、ポリエステル中に無機粒子などの微粒子を含有させることによって、フィルムの表面に適度の凹凸を形成させ、フィルムあるいは加工製品に滑り性や耐摩耗性を付与することが知られている。例えば特公昭53−21712号公報ではコンデンサー用ポリエチレンテレフタレートフィルムに適したポリエステルの製造法として、ホスホン酸系のリン化合物と無機粒子とを併用添加したり、特開平4−220454号公報では、特定のリン化合物で表面改質した無機粒子を含有する配向ポリエステルフィルムが知られている。
【0003】
しかしながら、これらの従来の方法では、得られるポリエステル組成物の溶融熱安定性に劣り、得られるフィルムは、滑り性、耐摩耗性が十分でなく、コンデンサー、磁気記録媒体用等として十分な性能を満足できるものではない。
【0004】
一方、フィルムの用途の中で、特に受像紙、磁気記録カード、ラベル、宅配便などの配送伝票、表示板、白板などの基材として白色フィルムが使用されており、この白色フィルムを得るために白色の無機粒子を多量にポリエチレンテレフタレートに含有させたフィルムが知られている。例えば、特公昭56−4901号公報では酸化チタンと硫酸バリウムを多量に添加したり、特公昭60−30930号公報では硫酸バリウムを多量に添加したり、さらには特公昭43−12013号公報では多量の炭酸カルシウムを添加すること、また特開昭61−209260号公報には白色無機顔料を高濃度に混練する方法などが知られている。
【0005】
しかし、上記従来技術の単にポリエステルに無機粒子を添加したり、混練する方法によって得られる無機粒子含有ポリエステル組成物は、
▲1▼ポリエステル組成物中の無機粒子の粒子の分散性に劣り、無機粒子の粗大粒子あるいは凝集粒子によって、該ポリエステル組成物を使用してフィルム等の成形品を成形加工する場合には、延伸製膜時にフィルム破れが多発する
▲2▼ポリエステルフィルムなどの成形品に成形する際の溶融工程時に、無機粒子の粒子表面活性によって、粒子とポリエステルとの相互作用が生じ、異物の発生や発泡するなど耐熱性に劣る
などの欠点があるとともに、得られるフィルムなどの成形品は、白度、隠蔽性に劣る。
【0006】
また、上記した欠点を解決するために特開昭62−207337号公報では、ポリエステルと炭酸カルシウムおよびリン化合物の混合物を単に溶融押出した後、フィルムを製造する方法、特開昭63−66222号公報ではポリエステルの反応系に炭酸カルシウムおよびリン化合物を添加する方法、さらに特開平7ー316404号公報、特開平7ー331038号公報では、通常のポリエステルと炭酸カルシウムおよびリン化合物を混練する方法が開示されている。しかし、これらの方法でもポリエステルに炭酸カルシウムを効率よく高濃度に含有させることが困難であったり、粒子の分散性が十分でなかったり、また、ポリマが高温滞留した場合には発泡したり、異物が発生したり、得られるポリエステル組成物の結晶性に変化が生じ、フィルムなどの成形品の延伸製膜性に劣るなどの問題が生じるとともに、得られるフィルムには十分な白度、隠蔽性、光沢性を兼備させるのが困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、無機粒子の粒子分散性、溶融熱安定性、成形加工性が良好で、かつ滑り性、耐摩耗性、白色性、隠蔽性に優れたフィルムを得ることにあり、無機粒子と特定のリン化合物を配合したポリエステル組成物およびフィルムによって、上記した従来の欠点を解決することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、ポリエステルに5重量%以上の炭酸カルシウム粒子および下記式(I)で示されるリン化合物を配合してなることを特徴とするポリエステル組成物からなる白色ポリエステルフィルムによって達成できる。
【0009】
【化2】
(但し、式中、R1 ,R2 ,R3 は炭素数1以上の炭化水素基、R4 は水素又は炭素数1以上の炭化水素基を示し、R1 ,R2 ,R3 ,R4 は、同じであってもよく、異なっていてもよい。XおよびYは、酸素、カルボニル基、エステル基のいずれかを示し、XおよびYのいずれか一方はカルボニル基、エステル基である。m,n,o,pは、0または1であり、n,pのいずれか一方は1である。)
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステルはジカルボン酸成分とグリコール成分から構成されたものであり、例えばジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化もしくはエステル交換反応ならびに引続く重縮合反応によって製造される。ポリエステルの種類についてはフィルムなどの成形品に成形しうるものであれば特に限定されない。フィルムなどの成形品に成形しうる好適なポリエステルとしてはジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸を使用したものがよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボキシレート、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボキシレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。もちろんこれらのポリエステルはホモポリエステルであっても、コポリエステルであってもよく、その際の共重合成分としては上記したポリエステルを構成する酸成分およびグリコール成分以外の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸および脂環族ジカルボン酸等の酸成分、芳香族グリコール、脂肪族グリコールおよび脂環族グリコール等のグリコール成分を挙げることができる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸を挙げることができる。また、グリコール成分としてはエチレングリコール,1,4−ブタンジオール,1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環族グリコールなどを挙げることができる。上記した酸成分、グリコール成分は、一種のみ用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、これらの共重合成分は、ポリエステルを製造する際に副生するものであってもよい。
【0011】
本発明のポリエステルに配合する無機粒子としては、特に限定されることはなく、例えば炭酸金属塩、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩、硫酸バリウム、硫化亜鉛、二酸化チタン、乾式法あるいは湿式法、コロイド状シリカなどの二酸化珪素、酸化アルミニウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウムなどを挙げることができ、中でもフィルムの滑り性、耐摩耗性、あるいは白色フィルムとした場合の白色性、隠蔽性、耐熱性の点から、炭酸金属塩、ケイ酸塩、二酸化チタン、硫酸バリウム、二酸化珪素、酸化アルミニウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウムよりなる群の中から選ばれた少なくとも一種の無機粒子が好ましい。特に得られるフィルムの滑り性、あるいは白色フィルムとした場合の白色性、隠蔽性の点から、炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムは天然品、合成品のいずれであってもよく、またその結晶形態としてはカルサイト、アラゴナイト、バテライトなどいずれであってもよいが、フィルムの白色性、隠蔽性の点から天然品が好ましく、結晶形態としてはカルサイトが好ましい。また他の金属化合物、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等が含まれていてもよい。さらに炭酸カルシウム以外に他の無機粒子を配合してもよい。
【0012】
本発明における無機粒子のポリエステルへの配合量は、特に限定されるものではないが、0.0001重量%以上が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上であり、さらに好ましくは1重量%以上である。特に表面光沢性、白色性、機械特性に優れたフィルム等の成形品を得るためには5重量%以上が好ましく、さらに好ましくは10重量%以上である。一方、配合量の上限は特に限定されるものではないが、得られるポリエステル組成物の熱安定性、粒子分散性の点から好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下である。無機粒子の配合量が0.0001重量%未満であるとフィルム成形した場合、フィルムへの滑り性付与効果や白色フィルムとした場合の白色性、隠蔽性に劣る場合がある。
【0013】
本発明における無機粒子の粒子径および比表面積は特に限定されることはないが、粒子径は平均粒子径で10μm以下が好ましく、より好ましくは0.01〜10μmであり、特に平均粒子径が0.02〜5μmであることが、フィルムへの滑り性付与効果、さらには白色フィルムとした場合の白色性、隠蔽性、光沢性等の点で好ましい。比表面積は0.5〜500m2 /gが好ましく、より好ましくは1〜400m2 /g、であり、特に2〜400m2 /gであることがポリエステル中での無機粒子の粒子分散性、フィルムの滑り性や耐摩耗性、さらには白色フィルムとした場合の白色性、隠蔽性、光沢性等の点で好ましい。無機粒子の粒子径が平均粒子径で10μmを越えたり、比表面積が0.5m2 /g未満であると、フィルムの耐摩耗性や、白色フィルムとした場合、白色性、隠蔽性に劣ったりするなど好ましくない場合がある。一方、比表面積が500m2 /gを越えると、得られるポリエステル組成物は溶融熱安定性が低下したり、得られるフィルムの滑り性付与効果が十分でなかったり、白色フィルムとした場合、白色性、隠蔽性に劣る場合がある。
【0014】
本発明における無機粒子のポリエステルへの配合方法は、特に限定されるものではなく、▲1▼無機粒子とポリエステルとを直接、あるいは予めブレンダー、ミキサーなどで混合した後、通常の一軸、二軸押出し機を用いて溶融混練する配合方法、▲2▼無機粒子とポリエステルとを直接、あるいは予めブレンダー、ミキサーなどで混合した後、通常のベント式の一軸、二軸押出し機を用いて溶融混練する配合方法、▲3▼ポリエステルの製造反応工程で無機粒子を添加する配合方法などを挙げることができる。中でも無機粒子をポリエステルに効率よく高濃度に含有させる、あるいは無機粒子の粒子分散性、得られるフィルムの品質安定性、溶融製膜時の熱安定性などの点から、▲1▼又は▲2▼の無機粒子とポリエステルとを溶融混練によって配合する方法が好ましく、特には▲2▼の無機粒子とポリエステルとをベント式の一軸あるいは二軸押出し機を用いて溶融混練する配合方法が好ましい。
【0015】
また、この際に使用するポリエステルは特に限定されないが、無機粒子をポリエステルに効率よく高濃度に含有させるために、また得られるポリエステル組成物中の無機粒子の粒子分散性、得られるポリエステル組成物の溶融熱安定性、フィルムなどに成形加工する際の延伸製膜性の点で、ポリエステル微粉末を含むポリエステルとすることが好ましい。全ポリエステルに対するポリエステル微粉末の割合は特に限定されないが、得られる無機粒子含有ポリエステル組成物中の無機粒子の粒子分散性、ポリエステル組成物の熱安定性(無機粒子に起因するポリマの発泡、異物の発生)、フィルムなどに成形加工する際の延伸製膜性の点で、後述するポリエステル微粉末を好ましくは1重量%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、特に好ましくは、50重量%以上であり、全てのポリエステルが微粉末であってもよい。
【0016】
ポリエステル微粉末の量が1重量%未満のポリエステルを使用した場合には、得られる無機粒子含有ポリエステル組成物中の無機粒子の粒子分散性およびポリエステル組成物の熱安定性、延伸製膜性に劣ったりする場合がある。
【0017】
ここで言う、ポリエステル微粉末とは、微粉末であれば特に限定されるものではないが、得られるポリエステル組成物中の無機粒子の粒子分散性、溶融成形時の熱安定性、無機粒子に起因する異物発生、発泡の点から、JIS標準ふるいで8メッシュ以下の粒度(JIS Z8801規格標準網ふるいでふるい目開きが2.38mmのふるいを通過する粒度)であることが好ましく、より好ましくは14メッシュ以下(JIS Z8801規格標準網ふるいでふるい目開きが1.19mmのふるいを通過する粒度)であり、さらに好ましくは20メッシュ以下(JIS Z8801規格標準網ふるいでふるい目開きが0.84mmのふるいを通過する粒度)であり、特に好ましくは28メッシュ以下(JIS Z8801規格標準網ふるいでふるい目開きが0.59mmのふるいを通過する粒度)である。ポリエステル微粉末の粒度がJIS標準ふるいで8メッシュを越えると、得られるポリエステル組成物中の無機粒子の粒子分散性に劣ったり、ポリエステル組成物を成形加工する場合に、溶融成形時の熱安定性に劣り、無機粒子に起因する異物発生、発泡が生じ、安定した溶融成形ができず、例えば溶融製膜でフィルムを得る場合にはフィルム破れが発生するなど好ましくない場合がある。
【0018】
ポリエステル微粉末を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えばポリエステルの重縮合反応によって得られたポリエステルポリマの板状、角状、円柱状、塊状等のポリマを物理的に粉砕することによって得られる。
【0019】
その粉砕方法は、公知の粉砕機を使用することができ、例えばロールミル、高速回転式粉砕機、ジェトミル等を挙げることができる。その際、ポリエステルポリマはそのまま粉砕してもよく、さらには粉砕しやすいように予めポリエステルポリマを結晶化させた後に粉砕してもよく、特に限定されるものではない。
【0020】
本発明におけるポリエステル組成物は、ポリエステルに下記式(I)リン化合物を配合する必要がある。
【0021】
【化3】
(但し、式中、R1 ,R2 ,R3 は炭素数1以上の炭化水素基、R4 は水素又は炭素数1以上の炭化水素基を示し、R1 ,R2 ,R3 ,R4 は、同じであってもよく、異なっていてもよい。XおよびYは、酸素、カルボニル基、エステル基のいずれかを示し、XおよびYのいずれか一方はカルボニル基、エステル基である。m,n,o,pは、0または1であり、n,pのいずれか一方は1である。)
【0022】
上記式(I)で示されるリン化合物を配合することにより、ポリエステルに併用配合する無機粒子のポリエステル中における粒子分散性に優れ、無機粒子をポリエステルに効率よく高濃度に含有させることができ、更にフィルムなどの溶融成形時の熱安定性、フィルムなどに成形加工する際の延伸製膜性、フィルム製品の耐摩耗性、および白色フィルムとした場合の白色性等の品質特性などに優れたものとなる。
【0023】
本発明におけるリン化合物は、式(I)で示される化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばトリメチルホスホノフォメート、トリエチルホスホノフォメート、トリメチルホスホノアセテート、メチルジエチルホスホノアセテート、エチルジメチルホスホノアセテート、トリエチルホスホノアセテート、トリエチル3−ホスホノプロピオネート、トリエチル2−ホスホノプロピオネート、トリエチル2−ホスホノブチレート、ジイソプロピル(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、tert−ブチルジエチルホスホノアセテート、ジエチルホスホノ酢酸、トリメチル2−ホスホノアクリレート、トリエチル4−ホスホノクロトネート、アリールジエチルホスホノアセテート、ジメチル(2−オキソプロピル)ホスホネート、ジメチル(3−フェニキシアセトニル)ホスホネート、ジエチル(2−オキソプロピル)ホスホネート、ジエチル(2−オキソ−2−フェニルエチル)ホスホネート、ジエチル(ヒドロキシメチル)ホスホネート等を挙げることができる。これらのリン化合物は、二種以上を併用してもよい。これらのリン化合物の中では、下記式(II)で示される化合物が好ましく、
【化4】
(但し、式中、R1 ,R2 は炭素数1以上の炭化水素基、R3 は水素又は炭素数1以上の炭化水素基を示し、R1 ,R2 ,R3 は、同じであってもよく、異なっていてもよい。Xは、カルボニル基、エステル基のいずれかを示す。mは0または1である。)
【0024】
さらに好ましくは、下記式(III )である。
【0025】
【化5】
(但し、式中、R1 ,R2 は、炭素数1以上の炭化水素基を示し、同じであってもよく、異なっていてもよい。R3 は、水素、又は炭素数1以上の炭化水素基を示す。mは0または1である。)
【0026】
なお、本発明のリン化合物以外にポリエステル組成物には、他のリン化合物を使用してもよい。それらのリン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体などが挙げられる。具体的にはリン酸、亜リン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノあるいはジメチルエステル、ジメチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステルなど、またリン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸マンガン等のリン酸金属塩類、さらにはリン酸アンモニウム等のリン化合物を挙げることができる。
【0027】
本発明におけるリン化合物のポリエステルへの配合量は、特に限定されるものではないが、0.0005重量%以上が好ましく、より好ましくは0.001重量%以上であり、さらに好ましくは0.005重量%以上である。一方、配合量の上限は特に限定されるものではないが、得られるポリエステル組成物の熱安定性、粒子分散性の点から好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。リン化合物の配合量が0.0005重量%未満であるとフィルム成形した場合、フィルムへの滑り性付与効果や白色フィルムとした場合の白色性、隠蔽性に劣る場合がある。
【0028】
本発明におけるリン化合物をポリエステルに配合する方法は、特に限定されるものでなく、例えば▲1▼リン化合物および無機粒子とをポリエステルの製造反応工程の任意の段階で添加する配合方法、▲2▼リン化合物をポリエステルの製造反応工程で添加する配合方法によって、リン元素含有ポリエステルを製造し、該リン元素含有ポリエステルに無機粒子を溶融混練する配合方法、▲3▼リン化合物および無機粒子とをポリエステルに溶融混練する配合方法、▲4▼リン化合物を配合・処理した無機粒子をポリエステルに溶融混練する配合方法等を挙げることができる。中でも無機粒子をポリエステルに効率よく高濃度に含有させるため、あるいは無機粒子の粒子分散性、溶融製膜時の熱安定性、フィルムなどに成形加工する際の延伸製膜性、フィルムの滑り性、あるいは白色フィルムとした場合の白色性等の品質特性などの点から、リン化合物を配合・処理した無機粒子をポリエステルに溶融混練する配合方法が好ましく、特にはリン化合物で表面処理した無機粒子をポリエステルに溶融混練する配合方法が特に好ましい。
【0029】
この際の、無機粒子の表面処理に使用する本発明のリン化合物量は、特に限定されるものではないが、無機粒子に対して0.001重量%以上が好ましく、より好ましくは0.05重量%〜20重量%、さらに好ましくは0.5重量%〜15重量%である。無機粒子に対して0.001重量%未満であると、無機粒子の分散性が劣ったり、ポリエステル組成物の高温滞留時に異物発生、発泡が生じたり、フィルムの耐摩耗性、あるいは白色フィルムとした場合の白色性に劣ったりして好ましくない場合がある。
【0030】
また、本発明のリン化合物による無機粒子の表面処理方法は特に限定されるものではないが、リン化合物と無機粒子とを物理的に混合する方法を挙げることができ、例えばロールミル、高速回転式粉砕機、ジェトミル等の粉砕機、あるいはナウタミキサー、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機を使用することができる。さらに、この表面処理条件も、温度・時間を適宜本発明の目的に合わせ設定することができる。
【0031】
本発明におけるポリエステル組成物は、溶融熱安定性、フィルムなどに成形加工する際の延伸製膜性、得られるフィルムの滑り性、耐摩耗性、あるいは白色フィルムとした場合の白色性等の点からリン元素を1ppm以上含有することが好ましい。より好ましくは1ppm〜20000ppmであり、さらに好ましくは5ppm〜10000ppm、特に好ましくは10〜10000ppmである。ポリエステル組成物中のリン元素含有量が1ppm未満であると、ポリエステル組成物の熱安定性が低下し、フィルムなどの成形品に溶融成形する際、異物が発生したり、発泡したり、またフィルムなどに成形加工する際の延伸製膜性、得られるフィルムの滑り性、耐摩耗性、あるいは白色フィルムとした場合の白色性等に劣る場合がある。
【0032】
本発明におけるポリエステル組成物は、得られるポリエステル組成物中の無機粒子の粒子分散性、フィルムなどに成形する際の溶融工程時の熱安定性、延伸製膜性の点から、組成物のカルボキシル末端基濃度を50当量/ポリエステル106 g以下とすることが好ましく、より好ましくは40当量/ポリエステル106 g以下であり、さらに好ましくは35当量/ポリエステル106 g以下、特に好ましくは30当量/ポリエステル106 g以下である。ポリエステル組成物のカルボキシル末端基濃度が50当量/ポリエステル106 gを越えると無機粒子の粒子分散性に劣ったり、フィルムなどに成形する際の溶融工程時の熱安定性、延伸製膜性に劣る場合がある。
【0033】
本発明のポリエステル組成物のカルボキシル末端基濃度を50当量/ポリエステル106 g以下とする方法としては、例えば上述したポリエステル組成物を製造する際に、リン化合物および無機粒子のポリエステルへの配合方法、配合条件を適宜変更したり、さらにはポリエステルとしてポリエステル微粉末を使用する方法を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0034】
本発明のポリエステル組成物は、ポリエステルに無機粒子と特定のリン化合物を配合することで、ポリエステル組成物中の無機粒子の粒子分散性、フィルムなどに成形加工する際の溶融熱安定性、延伸性等の成形加工性に優れるとともに、ポリエステル組成物から得られるフィルムの滑り性、耐摩耗性、あるいは白色フィルムとした場合の白色性、隠蔽性等に優れる。この理由は定かではないが、ポリエステル中の無機粒子の粒子表面に、本発明のリン化合物が作用することによって生じた結果と考えられる。
【0035】
本発明のポリエステル組成物から各種の成形品を得る方法は特に限定されるものではないが、溶融紡糸によって繊維、押出し成形あるいは射出成形などによって各種の成型品、また、溶融押出しによってシート状あるいはその後延伸することでフィルムを製造することができる。
【0036】
本発明のポリエステル組成物からなるフィルムの具体的な製造方法を説明するとポリエステル組成物を乾燥後、溶融押出しして、未延伸シートとし、続いて二軸延伸、熱処理し、フィルムにする。二軸延伸は縦、横逐次延伸あるいは二軸同時延伸のいずれでもよく、延伸倍率は特に限定されるものではないが通常は縦、横それぞれ2.0〜5.0倍が適当である。また、二軸延伸後、さらに縦、横方向のいずれかに再延伸してもよい。この際、本発明のポリエステル組成物と各種のポリエステルと混合して無機粒子、リン化合物量を目的に応じて適宜変更することができる。また、混合する各種のポリエステルは本発明のポリエステル組成物のベースとなるポリエステルと同一であっても、異なってもよい。
【0037】
上述の方法でポリエステル組成物から本発明のフィルムを得ることができる。本発明のフィルムは特に限定されないが、磁気記録媒体用、コンデンサー用、食品包装用、一般工業用等のフィルムを得るための好ましい無機粒子の含有量としては、0.0001〜5重量%であり、より好ましくは0.0001〜2重量%、さらに好ましくは0.005〜1重量%である。無機粒子の含有量が0.0001未満であると、得られるフィルムの滑り性に劣る場合がある。一方、無機粒子の含有量が5重量%を越えると、得られるフィルムの耐摩耗性に劣る場合がある。
【0038】
一方、本発明のポリエステル組成物から白色性、隠蔽性に優れた白色フィルムを得るための好ましい無機粒子の含有量としては、5重量%以上であり、より好ましくは5〜90重量%、さらに好ましくは7〜80重量%、特に好ましくは10〜80重量%である。ポリエステル中の無機粒子の含有量が5重量%未満であると白色性、隠蔽性に劣る場合がある。
【0039】
さらに、本発明の白色フィルムは、白色性、隠蔽性の点から、後に定義する白度は60%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。白度が60%未満であると白色性、隠蔽性に劣り好ましくない場合がある。
【0040】
また、本発明の白色ポリエステルフィルムは、フィルムの密度が1.50g/cm3 以下が好ましく、より好ましくは1.40g/cm3 以下、さらに好ましくは0.5〜1.35g/cm3 、特には0.6〜1.30g/cm3 である。密度が1.50g/cm3 を越える場合は白色性、隠蔽性に劣り好ましくない場合がある。
【0041】
なお、本発明のポリエステル組成物および成形品には、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等、また各種の添加剤、例えばカルボジイミド、エポキシ化合物などの末端封鎖剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等、さらに、有機粒子、例えばアクリル酸類、スチレンなどを構成成分とする有機粒子も必要に応じて適宜含有していてもよい。
【0042】
また本発明のフィルムは、本発明のポリエステル組成物からなる層と他のポリエステル層からなる複合フィルムであってもよい。その際の積層構成は二層以上であれば特に限定されるものでない。例えば、本発明のポリエステル組成物からなる層の少なくとも片面に他のポリエステルからなる層、例えば透明なポリエステルの層、粗面化層、極性基や親水基を有する層を積層してもよい。これらの層の厚みは特に限定されないが、0.001〜20μmが好ましい。これらの複合フィルムは、白色性に加えて、優れた表面光沢性、逆に粗面化により艶消し性や筆記性が良好となる。
【0043】
さらに、本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの接着性のために、その少なくとも片面に易接着層を設けてもよい。易接着層の種類については特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メチルメタクリレート、メチルアクリレートなどを用いて調整されるアクリル系樹脂、イソフタル酸、アジピン酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどと、ジイソシアネートとから調整されるポリウレタン系樹脂、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸の金属塩、イソフタル酸、アジピン酸、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを用いて調整されるポリエステル系樹脂等を挙げることができ、これらの中でも水分散または水溶性樹脂が接着性、取扱い性の点から好ましい。ポリエステルフィルムの少なくとも片面に易接着層を設ける方法は特に限定されるものではないが、例えばポリエステルフィルムの製造工程中で、上述したアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の水分散または水溶液を従来公知のリバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ワイアーバー法などを用いて塗布することが好ましい。また、易接着層の厚みは特に限定されるものではないが、接着性の点から、0.001〜5.0μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜2.0μm、さらには0.05〜0.5μmが好ましい。
【0044】
【実施例】
以下本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
【0045】
実施例中の特性は次のようにして測定した。
【0046】
A.無機粒子の比表面積、粒子径
比表面積はBET法表面積測定装置で測定し、また、粒子径は堀場製作所製超遠心式粒度分布測定装置 CAPA−700を用いて測定した。
【0047】
B.リン元素量
無機粒子、ポリエステル組成物を酸で湿式分解し、リン−モリブデン酸ブルー比色法で測定した。
【0048】
C.ポリエステルの固有粘度
o−クロロフェノール溶媒を用い、25℃で測定した。
【0049】
D.ポリエステル組成物中の無機粒子分散性
粒子分散性は、無機粒子含有ポリエステル組成物を透過型電子顕微鏡観察によって判定した。
【0050】
○:凝集粒子あるいは粗大粒子は観察されない。
△:凝集粒子あるいは粗大粒子がわずかに観察される。
×:凝集粒子あるいは粗大粒子が多く観察される。
【0051】
E.ポリエステル組成物のカルボキシル末端基濃度
Mauriceの方法に準じた。ポリエステル組成物2gをo−クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)50mlに溶解し、N/20−NaOHメタノール溶液によって滴定し、カルボキシル末端基濃度を測定し、当量/ポリエステル106 gの値で示した。
【0052】
F.ポリエステル組成物の熱安定性
ポリエステル組成物を十分乾燥した後、窒素雰囲気下で300℃、8時間溶融加熱処理し、その時の発泡状態、変色などを観察した。
【0053】
G.フィルムの密度
見掛け密度をASTM−D−1505−68により測定した。
【0054】
H.フィルムの白色性
日立自記分光光度計EPE−2を用いてタングステン光源で測定した450nmおよび550nmの厚さ75μmのフィルム各反射率R450 およびR550 から次式によって算出した。
【0055】
白度(%)=4R450 −3R550
【0056】
I.フィルムの隠蔽性
マクベス社透過濃度計TD−504で、厚さ75μmのフィルムの可視光線透過濃度を測定し、隠蔽性とした。ここでいう透過濃度は次式より算出した。
【0057】
O・D=−log(T/100)
ここで O・D;透過濃度[−]
T ;可視光透過率[%]
【0058】
J.フィルムの光沢性
JIS Z84741に従い、60度鏡面光沢を測定し、フィルムの光沢度を測定した。
【0059】
K.フィルムの強度
ヤング率はJIS−Z1702−1976に準じて、幅10mm、長さ100mmの短冊片を試料として、20mm/分の引っ張り速度で測定したフィルムの縦および横方向の平均値。
【0060】
L.フィルムの滑り性
フィルムを1/2インチ幅にスリットし、テープ走行性試験機を使用し、20℃、55RH%雰囲気で走行させ、初期の滑り性(μk)を下記の式より求めた。
【0061】
μk=0.733log(T1/T2)
ここで、T2は入側張力、T1は出側張力である。ガイド径は6mmφであり、ガイド材質はSUS27、巻き付け角は180°、走行速度は3.3cm/秒である。
【0062】
上記μkが0.35以下であるものが滑り性が良好である。ここで、μkが0.35は、フィルム加工時または製品としたときの滑り性が極端に悪くなるかどうかの限界である。
【0063】
M.フィルムの耐摩耗性
フィルムを1/2インチ幅にスリットしたものをテープ走行性試験機を使用してガイドピン(表面粗度Ra100nm)上を走行させる(走行速度300m/分、走行回数1回、巻き付け角60°、走行張力60g)。この時フィルムに入った傷を顕微鏡で観察し、耐摩耗性を判定した。幅2.5um以上の傷がテープ幅あたり3本未満は耐摩耗性が良好で、8本以上は耐摩耗性に劣る。
【0064】
実施例1
平均粒子径1.1μm、比表面積8.0m2 /gのカルサイト型天然炭酸カルシウムの粉体を容器固定型混合機である(株)カワタ製スーパーミキサー内に仕込み、回転翼の回転数760rpmで攪拌しながら昇温し、缶内温度が40℃に達した時点で、リン化合物としてトリエチルホスホノアセテートを炭酸カルシウムに対して4重量%となるように噴霧させながら添加した。その後10分間混合し、表面処理した。得られた炭酸カルシウム中のリン元素量を比色法によって測定したところ8300ppm含まれていた。
【0065】
表面処理した炭酸カルシウム15重量部と固有粘度0.65dl/gのJIS標準ふるいで35メッシュ以下の粒度(JIS Z8801規格標準網ふるいでふるい目開きが0.42mmのふるいを通過する粒度)を有するポリエチレンテレフタレートの微粉末85重量部とを混合した後、フィダーを用いベント式二軸押出機に供給し、ベント口を10torrの真空度に保持し、温度285℃、滞留時間1分で混練し、炭酸カルシウムを15重量%、リン元素を255ppm含有するポリエステル組成物を得た。混練時に異物の発生もなく、発泡も見受けられなかった。また、得られた組成物のカルボキシル末端基濃度は25当量/ポリエステル106 gであり、組成物中の炭酸カルシウムの粒子分散性も良好であった。該ポリエステル組成物を窒素雰囲気下で300℃、8時間溶融加熱処理し、耐熱性を測定した結果、溶融加熱処理時に発泡も認められず、変色も観察されず、耐熱性に優れていた。
【0066】
一方、得られた炭酸カルシウム含有ポリエステル組成物を十分乾燥した後、押出し機に供給して285℃で溶融し、T型口金よりシート状に押し出し、30℃の冷却ドラムで冷却固化せしめ未延伸フィルムを得た。次いで未延伸フィルムを95℃に加熱して縦方向に3.3倍延伸し、さらに120℃に加熱して横方向に3.3倍延伸し、220℃で加熱処理して、延伸製膜を1時間行い、厚さ75μmのフィルムを得た。1時間の延伸製膜の間、フィルム破れなどの発生もなかった。得られたフィルムの特性結果を表3に示す。
【0067】
密度は1.23g/cm3 で白色性、隠蔽性、光沢性、ヤング率ともに優れていた。
【0068】
比較例1
リン化合物で表面処理していない炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステル組成物および該組成物を用いフィルムを得た。表1,2,3に結果を示した。
【0069】
ベント式二軸押出機を用いて無機粒子含有ポリエステル組成物を製造する際に、ポリマ中に発泡が生じ、組成物中の炭酸カルシウムの粒子分散性は劣るものであった。また、該ポリエステル組成物を窒素雰囲気下で300℃、8時間溶融加熱処理し、耐熱性を調査した結果、溶融加熱処理時に発泡が認められ、変色し、耐熱性に劣っていた。該ポリエステル組成物のフィルム溶融製膜時にフィルム中に発泡に起因する気泡が認められたり、異物が確認され、さらにフィルム破れが多発し、満足なフィルムを得ることができなかった。得られたフィルムは白色性、隠蔽性等の特性に劣るものであった。
【0070】
比較例2,3
炭酸カルシウムの表面処理に使用するリン化合物としてジメチルメチルホスホネート、カルボキシエチルホスフィン酸を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステル組成物および該組成物を用いフィルムを得た。表1,2,3に結果を示した。
【0071】
ベント式二軸押出機を用いて無機粒子含有ポリエステル組成物を製造する際に、ポリマ中に発泡が生じ、組成物中の炭酸カルシウムの粒子分散性は劣るものであった。また、該ポリエステル組成物を窒素雰囲気下で300℃、8時間溶融加熱処理し、耐熱性を調査した結果、溶融加熱処理時に発泡が認められ、変色し、耐熱性に劣っていた。該ポリエステル組成物のフィルム溶融製膜時にフィルム中に発泡に起因する気泡が認められたり、異物が確認され、さらにフィルム破れが多発し、満足なフィルムを得ることができなかった。得られたフィルムは白色性、隠蔽性等の特性に劣るものであった。
【0072】
実施例2〜10
炭酸カルシウム粒子の量、リン化合物の種類および量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステル組成物を得、引続き該組成物を用いフィルムを得た。表1、2、3に結果を示した。
【0073】
いずれもベント式二軸押出機を用いた無機粒子含有ポリエステル組成物の製造する際の、ポリマの発泡や異物発生は認められず、無機粒子の粒子分散性も良好であり、該ポリエステル組成物を窒素雰囲気下で300℃、8時間溶融加熱処理し、耐熱性を調査した結果、溶融加熱処理時に発泡、変色も観察されず、耐熱性に優れていた。さらに該ポリエステル組成物を使用したフィルムの延伸製膜性も良好で、得られたフィルム特性にも優れるものであった。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
実施例13
平均粒子径1.1μm、比表面積8.0m2 /gのカルサイト型天然炭酸カルシウムの粉体15重量部と固有粘度0.65dl/gのJIS標準ふるいで35メッシュ以下の粒度(JIS Z8801規格標準網ふるいでふるい目開きが0.42mmのふるいを通過する粒度)を有するポリエチレンテレフタレートの微粉末85重量部とを容器固定型混合機である(株)カワタ製スーパーミキサー内に仕込み、混合撹拌した後、フィダーを用いベント式二軸押出機に供給し、次いで押出機に設置した注入ノズルからリン化合物としてトリエチルホスホノアセテートを炭酸カルシウムに対して4重量%となるように添加した。ベント口を10torrの真空度に保持し、温度285℃、滞留時間1分で混練し、炭酸カルシウムを15重量%、リン元素を320ppm含有するポリエステル組成物を得た。混練時に異物の発生もなく、発泡も見受けられなかった。また、得られた組成物のカルボキシル末端基濃度は20当量/ポリエステル106 gであり、組成物中の炭酸カルシウムの粒子分散性も良好であった。該ポリエステル組成物を窒素雰囲気下で300℃、8時間溶融加熱処理し、耐熱性を測定した結果、溶融加熱処理時に発泡も認められず、変色も観察されず、耐熱性に優れていた。
【0078】
一方、得られたポリエステル組成物を十分乾燥した後、押出し機に供給して285℃で溶融し、T型口金よりシート状に押し出し、30℃の冷却ドラムで冷却固化せしめ未延伸フィルムを得た。次いで未延伸フィルムを95℃に加熱して縦方向に3.3倍延伸し、さらに100℃に加熱して横方向に3.3倍延伸し、200℃で加熱処理して、延伸製膜を1時間行い、厚さ75μmのフィルムを得た。1時間の延伸製膜の間、フィルム破れなどの発生もなかった。得られたフィルムの密度は1.23g/cm3 、白度82%、O・D0.8、光沢度25%、ヤング率3.58GPaと白色性、隠蔽性、機械特性等に優れていた。
【0083】
【発明の効果】
本発明は上述したように、ポリエステルに無機粒子および特定のリン化合物を配合してなるポリエステル組成物およびそれからなるフィルムなどの成形品であり、ポリエステル組成物中の無機粒子の粒子分散性、フィルムなどに成形加工する際の溶融熱安定性、延伸性等の成形加工性に優れるとともに、ポリエステル組成物から得られるフィルムは、滑り性、耐摩耗性に優れるとともに、無機粒子を多量に含有したフィルムは、白色フィルムとして白色性、隠蔽性等に優れる。
【0084】
該フィルムなどの成形品は、磁気記録媒体用、コンデンサー用、食品包装用、一般工業用、紙代替用などの用途に好適に使用することができるとともに、無機粒子を多量に含有した白色フィルムは、印画紙、X線増感紙、受像紙、磁気記録カード、ラベル、宅配便などの配送伝票、表示板、白板などの基材として好適に使用することができる。
Claims (6)
- 炭酸カルシウム粒子の平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の白色ポリエステルフィルム。
- リン化合物の配合量が0.0005重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の白色ポリエステルフィルム。
- 炭酸カルシウム粒子および式(I)で示されるリン化合物の配合が混練であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の白色ポリエステルフィルム。
- 炭酸カルシウム粒子および式(I)で示されるリン化合物の配合がポリエステルの製造工程の任意の段階で添加されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の白色ポリエステルフィルム。
- ポリエステル組成物がリン元素を1ppm以上含有してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の白色ポリエステルフィルム。
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